(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、(A1)前記一般式(1)〜(3)から選ばれる1種以上のシラン化合物を少なくとも含むシラン化合物を加水分解および縮合させることにより得られるポリシロキサン、および(B)溶剤を含むことを特徴とするシロキサン組成物である。なお、本発明におけるインキ用とは、印刷法を利用して膜や印刷パターンを形成するためのインキに供される用途をいう。
【0018】
本発明に用いられる(A1)ポリシロキサンは、多環式芳香族環を有する。このポリシロキサンを含有するシロキサン組成物は、印刷版に塗布した際に、組成物のハジキが抑制され、印刷版への塗布性が良好であり、さらに、対象基材(被印刷基材)への印刷パターンの転写が良好であるという特長を有する。これは、樹脂中の高いπ電子密度をもつ多環式芳香族基の存在により、溶剤中の水素原子と芳香族環の間の相互作用が増強され、溶剤とポリシロキサンとの親和性が増大するためであると考えられる。さらに、本発明の用組成物から形成された硬化被膜は、耐薬品性が損なわれることなく、高い可視光透過率を有する。これは、多環式芳香族基の有する耐薬品性やかさ高さに由来すると考えられる。
【0019】
(A1)のポリシロキサンは、下記一般式(1)〜(3)から選ばれる1種以上のシラン化合物を少なくとも含むシラン化合物を、酸または塩基触媒により加水分解することによって、シラノール基を有するシラノール化合物を生成した後、該シラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができる。一般式(1)〜(3)から選ばれるシラン化合物を2種以上用いてもよいし、後述する一般式(4)〜(6)のいずれかで表されるシラン化合物や式一般式(7)、一般式(8)で表されるシラン化合物をさらに用いてもよい。
【0020】
まず一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0021】
R
02−nR
1nSi(OR
9)
2 (1)
R
0はケイ素原子に直結しており、水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。R
1は1価の基であり多環式芳香族基またはその置換体を表す。R
9は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。nは1または2である。nが2の場合、複数のR
1は同一でも異なっていてもよい。
【0022】
R
0がアルキル基の場合、炭素数としては1から20の範囲が好ましく、アルケニル基の場合、炭素数としては1から20の範囲が好ましく、フェニル基またはその置換体としては炭素数1から20の範囲が好ましい。R
0の好ましい具体例として、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、ブチル基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、フェニル基等が挙げられる。
【0023】
ここで多環式芳香族基は、芳香族環が2個以上縮合または連結した基を意味する。多環式芳香族基の好ましい例として、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ベンズ(a)アントラセン、ベンゾ(c)フェナントレン、ペンタセン、ピレン、フルオレン、フルオレノン、インデン、アズレン、アセナフテン、アセナフチレン、カルバゾール、ビフェニル、ターフェニル等に単結合を有する1価基が挙げられる。多環式芳香族基の置換体の好ましい例として、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボン酸基、酸無水物基、ウレイド基、イソシアネート基、アクリル基、メタアクリル基、フッ素基などで置換されたものが挙げられる。硬化被膜の耐熱性と透明性の点から、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、フルオレン、フルオレノン、インデン、アセナフテン、アセナフチレン、ビフェニル、ターフェニルの構造を有する1価基が好ましい。
【0024】
一般式(1)で表されるシラン化合物の好ましい例として、ジ(1−ナフチル)ジメトキシシラン、ジ(1−ナフチル)ジエトキシシラン、ジ(1−ナフチル)ジ−n−プロポキシシラン、ジ(1−ナフチル)ジメトキシシラン、ジ(1−ナフチル)ジメトキシシラン、ジ(2−ナフチル)ジメトキシシラン、1−ナフチルメチルジメトキシシラン、1−ナフチルエチルジメトキシシラン、1−ナフチルフェニルジメトキシシラン、ジ(1−アントラセニル)ジメトキシシラン、ジ(9−アントラセニル)ジメトキシシラン、ジ(9−フェナントレニル)ジメトキシシラン、ジ(9−フルオレニル)ジメトキシシラン、ジ(2−フルオレニル)ジメトキシシラン、ジ(2−フルオレノンイル)ジメトシキシラン、ジ(1−ピレニル)ジメトキシシラン、ジ(2−インデニル)ジメトキシシラン、ジ(5−アセナフテニル)ジメトキシシラン、ジ(4−ビフェニル)ジメトキシシラン、ジ(2−ビフェニル)ジメトキシシラン、ジ(4−p−ターフェニル)ジメトキシシラン、ジ(4−m−ターフェニル)ジメトキシシラン、ジ(4−o−ターフェニル)ジメトキシシラン、等が挙げられる。
【0025】
次に一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0026】
R
2Si(OR
10)
3 (2)
R
2は多環式芳香族基またはその置換体を表す。R
10は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。多環式芳香族基およびその置換体の説明は上記と同様である。
【0027】
一般式(2)で表されるシラン化合物の好ましい具体例として、1−ナフチルトリメトキシシラン、1−ナフチルトリエトキシシラン、1−ナフチルトリ−n−プロポキシシラン、2−ナフチルトリメトキシシラン、1−アントラセニルトリメトキシシラン、9−アントラセニルトリメトキシシラン、9−フェナントレニルトリメトキシシラン、9−フルオレニルトリメトキシシラン、2−フルオレニルトリメトキシシラン、2−フルオレノンイルトリメトシキシラン、1−ピレニルトリメトキシシラン、2−インデニルトリメトキシシラン、5−アセナフテニルトリメトキシシラン、4−ビフェニルトリメトキシシラン、2−ビフェニルトリメトキシシラン、4−p−ターフェニルトリメトキシシラン、4−m−ターフェニルトリメトキシシラン、4−o−ターフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
次に一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0029】
(R
11O)
mR
43−mSi−R
3−Si(OR
12)
lR
53−l (3)
R
3は2価の多環式芳香族基またはその置換体を表す。R
4およびR
5は、ケイ素原子に直結した1価基であり、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはそれらの置換体を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
11およびR
12は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mおよびlはそれぞれ独立に1〜3の整数である。多環式芳香族基およびその置換体の説明は上記と同様である。
【0030】
一般式(3)で表されるシラン化合物の好ましい具体例を下記に示す。
【0032】
本発明において、(A1)ポリシロキサンは、前記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物とともに、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物を加水分解および縮合させることにより得られうるものであることが好ましい。一般式(4)〜(6)で表されるシラン化合物は2種以上用いてもよい。
【0033】
R
6Si(OR
13)
3 (4)
R
6は水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。R
13は、水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。
【0034】
R
7R
8Si(OR
14)
2 (5)
R
7およびR
8はそれぞれケイ素原子に直結した1価基であり、それぞれ独立に、水素、アルキル基、アルケニル基、フェニル基またはそれらの置換体を表す。R
14は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。
【0035】
Si(OR
15)
4 (6)
R
15はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、同一でも異なっていてもよい。
【0036】
一般式(4)および(5)における置換体の好ましい例として、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボン酸基、酸無水物基、ウレイド基、イソシアネート基、アクリル基、メタアクリル基、フッ素基などで置換されたものが挙げられる。
【0037】
一般式(4)で表されるシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、4-メチルフェニルメトキシシラン、4−メチルフェニルエトキシシラン、4−メトキシフェニルメトキシシラン、4−メトキシフェニルエトキシシラン、フェニルエチニルトリメトキシシラン、フェニルエチニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリ(メトキシエトキシ)シラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−エチル−3−[3−(トリメトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン、アリルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、得られる塗膜のクラック耐性の観点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、およびフェニルトリエトキシシランが好ましい。
【0038】
一般式(5)で表されるシラン化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジ(メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、3−メトクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち、得られる塗膜に可とう性を付与させる目的には、ジメチルジアルコキシシラン、ジフェニルジアルコキシシランが好ましく用いられる。
【0039】
一般式(6)で表される4官能性シラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられる。
【0040】
本発明における(A1)ポリシロキサン中の全ケイ素原子数100モル%中、一般式(1)から(3)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物に由来するケイ素原子は、5モル%以上、70モル%以下であることが好ましい。一般式(1)から(3)のシラン化合物を併用する場合、ケイ素原子の量は、(1)〜(3)のシラン化合物に由来するケイ素原子の和を意味する。印刷パターンの転写性をより向上させるために、10モル%以上が好ましく、さらに15モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上が好ましい。また、硬化被膜の耐薬品性をより高めるために、60モル%以下が好ましく、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは、40モル%以下が好ましい。ポリシロキサン溶液状態でのモル分率は、
1H−NMR、
13C−NMR、
29Si−NMRにより分析することが可能であり、硬化膜のモル分率は、固体
1H−NMR、固体
13C−NMR、固体
29Si−NMRにより、分析することが可能である。
【0041】
本発明の好ましいポリシロキサンの構成成分において、一般式(4)〜(6)のシラン化合物の中でも、ビニル基、エポキシ基またはオキセタニル基を有することがより好ましい。これらの官能基は、π電子または環状エーテル上の酸素を有しており、絶縁膜上へのレジストや半導体塗液の塗布性を良好にすることができ、またゲート絶縁膜形成用として利用する場合、ヒステリシスが小さい優れたTFTが得られる。
【0042】
そして好ましいポリシロキサンとしては(A2)一般式(1)〜(3)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物および一般式(7)で表されるシラン化合物を含むシラン化合物を加水分解および縮合させることにより得られるポリシロキサンである。
【0043】
本発明に用いられるビニル基、エポキシ基、オキセタニル基から選ばれる1種以上の置換基を含むシラン化合物としては、下記、一般式(7)で表されるシラン化合物が好ましく使用される。
【0044】
R
9aSi(OR
16)
4−a (7)
R
9は、ビニル基、エポキシ基、オキセタニル基の少なくとも1つを含む炭素数2〜20の有機基を表す。それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
16は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。aは1〜3の整数である。
【0045】
一般式(7)で表されるシラン化合物の具体例を下記に示す。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−エチル−3−[3−(トリメトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン、アリルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0046】
これらのうち、架橋密度を上げ、耐薬品性と絶縁特性を向上させるために、エポキシ基を有するものが好ましく、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランを用いることが好ましい。また、量産性の観点から、R
16がメチル基であるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシランを用いることが特に好ましい。
【0047】
ここで、ビニル基、エポキシ基、オキセタニル基のいずれかひとつを含む含有シラン化合物に由来する構成単位のケイ素の含有量は、ポリシロキサンの共重合成分であるシラン化合物の全構成単位のケイ素原子に対して0.1モル%〜40モル%であることが好ましい。0.1モル%以上であれば、下地との密着性のより良好な硬化被膜を得ることができ、1モル%以上がより好ましい。一方、40モル%以下であれば、ポリシロキサンの溶剤への良好な溶解性を得ることができ、35モル%以下がより好ましい。ポリシロキサン溶液時のモル分率、硬化膜のモル分率は上述の各種核のNMRにより、分析することが可能である。
【0048】
本発明に用いられるポリシロキサンは、フェニル基をさらに有することがより好ましい。これにより、印刷パターンの転写性をより精密に制御することができる。そのようなポリシロキサンは、一般式(1)〜(3)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物とともに、フェニル基を含むシラン化合物を加水分解および縮合させることにより得られる。
【0049】
本発明に用いられるフェニル基を含むシラン化合物としては、下記、一般式(8)で表されるシラン化合物が好ましい。
【0050】
R
10bSi(OR
17)
4−b (8)
R
10は、フェニル基を含む炭素数3〜20の有機基を表す。それぞれ同一でも異なっていてもよい。R
17は水素、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。bは1〜3の整数である。
【0051】
一般式(8)で表されるシラン化合物の具体例を下記に示す。フェニルトリメトシキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、4-メチルフェニルメトキシシラン、4−メチルフェニルエトキシシラン、4−メトキシフェニルメトキシシラン、4−メトキシフェニルエトキシシラン、フェニルエチニルトリメトキシシラン、フェニルエチニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0052】
ここで、フェニル基含有シラン化合物に由来する構成単位の含有量は、ポリシロキサンの共重合成分であるシラン化合物の全構成単位に対して5モル%〜60モル%であることが好ましい。5モル%以上であれば、転写性が良好で、高解像度パターン被膜を得ることができ、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上が、さらに好ましくは20モル%が好ましい。一方、60モル%以下であれば、ポリシロキサン溶液中での良好な保存安定性を得ることができ、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは、30モル%以下がより好ましい。ポリシロキサン溶液のモル分率は
1H−NMR、
13C−NMR、
29Si−NMRにより、分析することが可能である。硬化膜のモル分率は、固体
1H−NMR、固体
13C−NMR、固体
29Si−NMRにより、分析することが可能である。
【0053】
本発明でさらに好ましいポリシロキサンは、(A3)一般式(1)〜(3)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物、一般式(7)で表されるシラン化合物および一般式(8)で表されるシラン化合物を少なくとも含むシラン化合物を加水分解および縮合させることにより得られるポリシロキサンである。
【0054】
この組み合わせにすることにより印刷性が良好となり、高解像度のパターンが実現できるので好ましい。ポリシロキサンの共重合成分であるシラン化合物の全構成単位に対して、一般式(1)〜(3)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物のケイ素原子、一般式(7)で表されるビニル基、エポキシ基およびオキセタニル基から選ばれる官能基を有する1種以上シラン化合物のケイ素原子、一般式(8)で表されるフェニル基を含むシラン化合物のケイ素原子の好ましい比率は、5〜70モル%/0.1〜40モル%/5〜60モル%、より好ましくは、10〜50モル%/1〜20モル%/10〜50モル%、さらに好ましくは、20〜40モル%/5〜15モル%/10〜30モル%であることが良い。
【0055】
本発明のシロキサン組成物における(a)ポリシロキサンの含有量は、溶剤を除く固形分全量に対して10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。この範囲で(a)ポリシロキサンを含有することにより、塗膜の透過率と耐クラック性をより高めることができる。
【0056】
(A1)ポリシロキサンは、前記一般式(1)から(3)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物、さらに必要により一般式(4)〜(6)のいずれかで表されるシラン化合物を、好ましくは溶剤中、酸または塩基触媒により加水分解することによって、シラノール化合物を生成した後、該シラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができる。
【0057】
また(A2)(A3)ポリシロキサンは、前記一般式(1)から(3)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物、さらに必要により(7)および/または(8)のシラン化合物を、好ましくは溶剤中、酸または塩基触媒により加水分解することによって、シラノール化合物を生成した後、該シラノール化合物を縮合反応させることによって得ることができる。
【0058】
加水分解反応は、(1)から(3)のいずれかで表される1種以上のシラン化合物、さらに必要により添加される(7)および/または(8)のシラン化合物が有するケイ素原子に直結したアルコキシ基が水により、アルコールを副生しながら水酸基を生じるものである。加水分解反応は、シラン化合物の溶液に酸触媒または塩基触媒、および水を1〜180分間かけて添加した後、室温〜150℃で1〜180分間行うことが好ましい。このような条件で加水分解反応を行うことにより、急激な反応を抑制することができる。反応温度は、より好ましくは40〜115℃である。
【0059】
一般的な縮合反応は、水酸基を有するシラン化合物(シラノール化合物)と水酸基を有する別のシラン化合物とが反応し、脱水しながら、シロキサン結合を生じる反応である。条件によってはアルコキシ基を有するシラン化合物と水酸基を有するシラン化合物とが反応し、アルコールを副生しながら、シロキサン結合を生じるものもある。
【0060】
縮合により得られるポリシロキサンは、完全にアルコキシ基および水酸基が消滅している必要はない。逆にポリシロキサンがアルコキシ基または水酸基を有しているのが普通である。
【0061】
縮合反応は、加水分解反応後、反応液を50℃以上、溶剤の沸点以下で1〜100時間加熱し、縮合反応を行うことが好ましい。ポリシロキサンの重合度を上げるために、再加熱もしくは触媒の再添加を行うことも可能である。また、シラン化合物の部分縮合物を得た後に、(4)〜(6)ならびに(7)および(8)のいずれかで表されるシラン化合物を混合してもよい。
【0062】
加水分解反応および縮合反応における各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して、たとえば触媒濃度、反応温度、反応時間などを設定することによって、目的とする用途に適した物性を得ることができる。
【0063】
加水分解反応および縮合反応に用いる酸触媒としては、塩酸、酢酸、蟻酸、硝酸、蓚酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂などの酸触媒が挙げられる。特に蟻酸、酢酸またはリン酸を用いた酸性水溶液が好ましい。また、塩基触媒としては、無機アルカリである水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどや有機塩基化合物であるトリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア水、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アミノ基を有するアルコキシラン、アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられるが、アルカリ金属は、電子デバイスなどで誤作動を引き起こすため、塩基触媒としては有機塩基が好ましい。
【0064】
これら触媒の好ましい含有量としては、加水分解反応時に使用される全シラン化合物100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下である。ここで、全シラン化合物量とは、シラン化合物、その加水分解物およびその縮合物の全てを含んだ量のことを言い、以下同じとする。
【0065】
加水分解反応および縮合反応に用いられる溶剤は特に限定されないが、好ましくはアルコール性水酸基を有する化合物が用いられる。アルコール性水酸基を有する化合物の具体例としては、アセトール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールなどが挙げられる。なお、これらのアルコール性水酸基を有する化合物は、単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
その他の溶剤を含有してもよい。その他の溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシ−1−ブチルアセテート、アセト酢酸エチルなどのエステル類、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、などのエーテル類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、炭酸プロピレン、N−メチルピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどが挙げられる。
【0067】
また、加水分解反応終了後または縮合反応終了後に、さらに溶剤を添加することにより、組成物として適切な濃度に調整することも好ましい操作である。また、加水分解反応後または縮合反応後に加熱および/または減圧することにより生成したアルコール等の全量あるいは一部を留出、除去してもよい。その後好適な溶剤を添加してもよい。
【0068】
加水分解反応時に使用される溶剤の量は、全シラン化合物100質量部に対して、好ましくは80質量部以上であり、また、好ましくは1000質量部以下である。また、加水分解反応に用いる水としては、イオン交換水が好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、シラン化合物1モルに対して、1.0〜4.0モルの範囲で用いることが好ましい。
【0069】
本発明のシロキサン組成物は、(B)溶剤を含有する。(B)溶剤の量としては、ポリシロキサン100質量部に対して、50質量部以上、10000質量部以下が好ましい。
【0070】
(B)溶剤としては、ポリシロキサンを溶解または良好に分散させることが可能であり、かつ加熱処理によって揮発するものであれば特に限定されない。溶剤として単独で用いても複数を混合して用いてもよいが、印刷版への塗布性と、対象基材への転写性の観点から、遅乾性溶剤と速乾性溶剤との混合溶剤であることが好ましい。
【0071】
ここで遅乾性溶剤とはASTM D3539に定める蒸発速度(日本語訳を見たければ、”塗料の流動と塗膜形成”、中道敏彦著、技報堂出版社、1995年発行、107〜109頁参照)が0.8以下の溶剤であり、好ましくは0.5以下の溶剤である。具体的には、(i)ドデカン、ウンデカンなどの炭化水素類、(ii)キシレン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、(iii)n−ブタノール、ヘキサノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、(iv)ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸アミルなどのエーテル/エステル類、(v)ジイソブチルケトン、エチルアミルケトン、2−ヘプタノン、2−ヘキサノン、2−オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、(vi)N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトムアミドなどのアミド類、(vii)γ−ブチロラクトンなどのラクトン類が例示される。
【0072】
速乾性溶剤とはASTM D3539による蒸発速度が0.8より大きい溶剤であり、好ましくは1.0以上の溶剤である。具体的には(i)n−ヘキサン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサンなどの炭化水素、(ii)トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素、(iii)メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、などのアルコール、(iv)ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル、(v)酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチルなどのエステル、(vi)アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−ブチルケトンメチルイソブチルケトン、などのケトンが例示される。
【0073】
これらの溶剤はポリシロキサンの重縮合反応に使用した溶剤を用いても、後から添加してもよい。また遅乾性溶剤と速乾性溶剤の比率は遅乾性溶剤/速乾性溶剤=100/0〜0/100から選ばれる任意の質量比でよいが、塗布性と転写性のバランスから遅乾性溶剤/速乾性溶剤=10/90〜10/90の質量比であることが好ましい。遅乾性溶剤の比率が少ないと塗布したインキが版上で乾燥しすぎてタック性がなくなってしまい、対象基材へ転写されにくい。一方、速乾性溶剤の比率が少ないと版に塗布したインキの流動性が大きすぎ、パターン形状が潰れて不良となりやすい。
【0074】
微細パターンの形状は、印刷基材への濡れ性が重要な因子となり、1種以上の非プロトン性溶剤を用いることが好ましく、保存安定性の観点から、1種以上のプロトン性溶剤を用いることが好ましい。両者を踏まえ、1種以上の非プロトン性溶剤の溶剤および1種以上のプロトン性溶剤を用いることが好ましい。プロトン性溶剤として、前述のアルコール、アミド類が挙げられるが、好ましくは、アセトール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールなどが挙げられる。
【0075】
また、非プロトン性溶剤として、前述の炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ケトンが挙げられるが、好ましくは、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸アミルなどが挙げられる。
【0076】
本発明のインキ用組成物は、さらに下記一般式(9)で表される熱架橋性基を有する(C)熱硬化剤を含有してもよい。
【0077】
−(CH
2−OR
18) (9)
上記一般式(9)中、R
18は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。樹脂組成物の経時安定性と熱硬化剤の反応性の観点から、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0078】
本発明のインキ用組成物は、(C)熱硬化剤を含有することにより、高いヒートサイクル耐性が得られ、繰り返し熱負荷後の耐クラック性に優れた硬化被膜を形成することができる。本発明における(C)熱硬化剤は、前記一般式(9)で表される熱架橋性基を有すれば特に限定されないが、可視光透過率をより向上させることができる点で、下記一般式(10)で表される熱架橋性基を有するものがより好ましい。
【0080】
一般式(10)中、R
19、R
20は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。組成物の経時安定性と熱硬化剤の反応性の観点から、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0081】
また、上記(C)熱硬化剤は、硬化被膜の可視光透過率をより向上させるため、フェノール性水酸基を含まないものが好ましい。
【0082】
(C)熱硬化剤の具体例を以下に示す。
【0084】
上記の中でも、一般式(10)で表される熱架橋性基を有する“NIKALAC” (登録商標。以下同じ。)MX−290,“NIKALAC”MX−280,“NIKALAC”MX−270(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)は、硬化被膜の可視光透過率をより向上させることができ好ましい。
【0085】
本発明において、(c)熱硬化剤の含有量は、組成物中の固形分中0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。また、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0086】
また、本発明の組成物に硬化促進性を付与するため、光硬化剤を含有してもよい。例えば、(D)光酸発生剤または光塩基発生剤を含有することにより、光硬化促進を付与することができる。
【0087】
(D)光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物などを例として挙げることができる。これら光酸発生剤の具体例としては、特開2007−246877号公報や米国特許明細書7374856B2に例示した化合物やSI−100、SI−101、SI−105、SI−106、SI−109、PI−105、PI−106、PI−109、NAI−100、NAI−1002、NAI−1003、NAI−1004、NAI−101、NAI−105、NAI−106、NAI−109、NDI−101、NDI−105、NDI−106、NDI−109、PAI−01、PAI−101、PAI−106、PAI−1001(以上商品名、みどり化学(株)製)、SP−077、SP−082(以上商品名、(株)ADEKA製)、TPS−PFBS(以上商品名、東洋合成工業(株)製)、CGI−MDT(以上商品名、ヘレウス(株)製)、WPAG−281、WPAG−336、WPAG−339、WPAG−342、WPAG−344、WPAG−350、WPAG−370、WPAG−372、WPAG−449、WPAG−469、WPAG−505、WPAG−506(以上商品名、和光純薬工業(株)製)を挙げることができ、光酸発生剤を2種以上含有してもよい。光酸発生剤の含有量は、ポリシロキサンの総量100質量部に対して0.01〜20質量部が一般的である。
【0088】
本発明の組成物には、組成物の固形分の硬化を促進させる、あるいは硬化を容易ならしめる、(C)、(D)成分以外の架橋剤や硬化剤、硬化助剤を含有しても良い。具体例としては、シリコーン樹脂硬化剤、金属アルコレート、金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、多官能アクリル樹脂、熱により強酸が発生する熱酸発生剤等を挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。なかでも熱酸発生剤が好ましい。熱酸発生剤としては、例えば、“サンエイド”(登録商標)SI−200、SI−210、SI−220、SI−300(以上、商品名、三新化学(株)製)等が挙げられる。
【0089】
また、金属アルコレートの好ましい具体的な例としては、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、ジルコニアテトラ(n−ブトキシド)、ジルコニアテトラ(t−ブトキシド)、ハフニウムテトライソプロポキシド、チタンテトライソプロポキシドなどが挙げられる。金属キレート化合物は、金属アルコキシド化合物にキレート化剤を反応させることにより容易に得ることができる。金属キレート化剤の例としては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン、アセト酢酸エチル、ベンゾイル酢酸エチルなどのβ−ケト酸エステルなどを用いることができる。具体的には、例えばエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミニウムキレート化合物、エチルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートマグネシウムモノイソプロピレート、マグネシウムビス(アセチルアセトネート)等のマグネシウムキレート化合物、ジルコニアテトラキス(エチルアセトアセテート)、ジルコニアテトラキス(アセチルアセトネート)等ジルコニアキレート化合物、チタンテトラキス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラキス(アセチルアセトネート)等のチタンキレート化合物が挙げられる。
【0090】
これらの金属化合物は単独で用いてもよく、また2種以上の金属化合物を混合して用いてもよい。金属化合物の含有量は、ポリシロキサンの0.1質量%〜30質量%であることが好ましい。含有量が0.1質量%以下であれば、硬化が十分進行し、良好な耐薬品性や絶縁性を有する硬化被膜が得られる。一方、30質量%以下であれば、インキ用組成物として保存安定性が良好となる。これらの金属化合物はポリシロキサンの硬化剤として働き、硬化被膜の架橋による耐久性の向上、および移動度やオンオフ比などのTFT特性の向上の効果を得ることができる。
【0091】
本発明のインキ用組成物は、表面調整剤を含有することが好ましい。ここで表面調整剤とは溶液に添加することにより該溶液の表面張力を制御できる界面活性剤のことを指し、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アルキル系界面活性剤および極性基変性シリコーンなどが挙げられるが、表面張力を大きく低下させる観点からフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、極性基変性シリコーンが好ましい。
【0092】
フッ素系界面活性剤としては例えば“メガファック”(登録商標)F−444、同F−472、同F−477、同F−552、同F−553、同F−554、同F−555、F−443、同F−470、同F−470、同F−475、同F−482、同F−483、同F−489、同R−30(以上 DIC(株)製)、“エフトップ”(登録商標)EF301、同303、同352(以上 新秋田化成(株)製)、“フロラード”(登録商標)FC−430、同FC−431(以上 住友スリーエム(株)製)、“アサヒガード”(登録商標)AG710、“サーフロン”(登録商標)S−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上 旭硝子(株)製)、BM−1000、BM−1100(以上 裕商(株)製)、NBX−15、FTX−218(以上 (株)ネオス製)を挙げることができる。
【0093】
シリコーン系界面活性剤としては例えばBYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−344、BYK−370、BYK375(以上 ビックケミー・ジャパン(株))、FZ−2110、FZ−2166、FZ−2154、FZ−2120、L−720、L−7002、SH8700、L−7001、FZ−2123、SH8400、FZ−77、FZ−2164、FZ−2203、FZ−2208(以上 東レ・ダウコーニング(株))、KF−353、KF−615A、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、KF−6011、KF−6015、X−22−2516、KF−410、X−22−821、KF−412、KF−413、KF−4701(以上 信越化学(株))を挙げることができる。
【0094】
極性基変性シリコーンとしては、下記一般式(11)を繰り返し単位に持つポリアルキルシロキサンの飽和炭化水素基の一部を、極性基を有する炭化水素基に変換したものである。極性基変性されていないシリコーンはポリシロキサンまたは溶剤との相互作用が小さいため、相分離が起きやすいなどの問題がある。極性基を含有する官能基に変換する部位は、主鎖末端、主鎖中、側鎖のいずれでもよい。また、変性基当量は通常500〜10、000g/molであるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
xは2以上の整数である。R
21およびR
22はそれぞれ独立に炭素数1〜10の飽和炭化水素基を表す。表面張力低下性の観点から、R
21およびR
22の全体の50モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0097】
ここで、極性基とは、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基などが例示される。これらの極性基はシロキサン主鎖に直接結合していてもよいし、アルキレン基、アリーレン基などの炭素鎖を介して結合していてもよい。また、一分子に二種以上の極性基を有していてもよい。これらの中で比較的少量で塗布性の向上に効果があることから、アミノ基変性シリコーン、メルカプト基変性シリコーンが好ましく用いられる。具体的にはFZ−3760、BY16−849、BY16−892、FZ−3785、BY16−891、FZ−3789(以上 東レ・ダウコーニング(株))、KF−868、KF−860、X−22−3939A、KF−2001、KF−8010、X−22−161B、KF−8012、X−22−167B(以上 信越化学(株))が例示される。
【0098】
これらの表面調整剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、表面調整剤のインキ用組成物における含有量はハジキのない均質な塗布面を形成する観点から、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、さらに好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上がよい。また、良好な転写性を保ちかつ形成した塗膜の機能に悪影響を及ぼさないという観点から30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0099】
本発明の組成物においてポリシロキサンは、硬化被膜の成分となり、不揮発性成分である。不揮発成分とは、組成物の被膜を200℃以上の温度で1時間加熱処理した後に、気化することなく残存する成分である。硬化されたポリシロキサンがそのまま残存していてもよく、その他、上で説明したの熱硬化剤や光酸発生剤、熱酸発生剤、表面調整剤などが残っていてもいい。さらに加熱硬化、または光硬化時に生成したものが残存してもよい。
【0100】
本発明のインキ用組成物に対する不揮発性成分の含有量は、塗布性と膜形成性の観点から1〜90質量%であることが好ましく、5〜70質量%であることがより好ましい。含有量が低すぎると塗膜が薄くなりすぎて膜厚ムラが大きくなる。また含有量が多すぎると流動性の低下により塗膜のレベリングが起こりにくく塗布ムラが発生したり、塗布膜厚の均一性がなく、微細なパターン硬化被膜を実現できなかったり、などの不具合が生じる。
【0101】
次に、本発明の硬化被膜について説明する。本発明の硬化被膜は、本発明の組成物を用いて、グラビア印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、反転オフセット印刷法、剥離オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法などのいずれかを用いて被印刷物にパターン被膜を印刷し、これをオーブンまたはホットプレートで100〜400℃の範囲で熱処理、またはPLAなどの紫外可視露光機を用い、10〜20000J/m
2程度(波長365nmでの測定露光量)を全面に露光して光硬化することにより得ることができる。印刷被膜の微細パターンが形成できる観点から、反転オフセット印刷法、剥離オフセット印刷法、マイクロコンタクト印刷法がより好ましい。
【0102】
本発明の組成物を用いて作製した硬化被膜は、波長400nmにおける膜厚1μmあたりの光透過率が90%以上であることが好ましく、さらに好ましくは92%以上である。光透過率が90%より低いと、液晶表示素子のTFT基板用平坦化膜として用いた場合、バックライトが通過する際に色変化が起こり、白色表示が黄色味を帯びる。
【0103】
前記の波長400nmにおける膜厚1μmあたりの透過率は、以下の方法により求めることができる。組成物をテンパックスガラス板にスピンコーターを用いて、所望の膜厚がえられる回転数でスピンコートし、ホットプレートを用いて100℃で2分間プリベークする。オーブンを用いて空気中220℃で1時間熱硬化して膜厚1μmの硬化被膜を作製する。得られた硬化被膜の紫外可視吸収スペクトルを(株)島津製作所製“MultiSpec”(登録商標)−1500を用いて測定し、波長400nmでの透過率を求める。
【0104】
印刷の例として、特許文献1〜3または非特許文献1に記載の方法に従って行うことができる。
【0105】
本発明のシロキサン組成物をインキとして用いた印刷方法の一例について説明する。
図1は印刷方法の一例である反転オフセット印刷法の概略図である。
図1(a)に示すようにブランケット胴1に巻き付けたシリコーンブランケット2上にインキコーター3を用いてインキ4を塗布する。次に
図1(b)に示すようにシリコーンブランケット2に除去凸版5を押し当てて、非画線部インキ4”を除去する。次に
図1(c)に示すようにシリコーンブランケット2上に残った画線部インキ4’を被印刷物6に転写し、印刷パターン7を形成する。
【0106】
図2は別の一例である剥離オフセット印刷の概略図である。
図2(a)に示すように支持体8上に少なくとも親インキ層9とインキ剥離層10をこの順に有する印刷版原版をパターン加工することにより、インキ剥離性部位と親インキ性部位を形成した印刷版を得る。
図2(b)に示すように印刷版の全面にブレードコーター11を用いてインキ4を塗布する。
図2(c)に示す要因転写胴1に巻き付けたシリコーンブランケット2を印刷版に押し当ててインキ剥離性部位上のインキ(画線部インキ4’)を選択的に転写する。ここで、インキ剥離性部位上のインキ(画線部インキ4’)を選択的に転写するとは、非画線部インキ4”を実質的に転写せず、実質的にインキ剥離性部位上のインキ(画線部インキ4’)のみを転写することを意味する。(d)シリコーンブランケット2上に転写されたインキ(画線部インキ4’)を被印刷物6に再転写し、印刷パターン7を形成する。
【0107】
図3はさらに別の一例であるマイクロコンタクト印刷法の概略図である。
図3(a)に示すようにポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる凸版12をインキスタンプ台13に押し当てる。
図3(b)および
図3(c)に示すように凸版の凸部に画線部インキ4’をのせた凸版12を被印刷物6に押し当てる。(d)PDMS凸版12を取り外して印刷パターン7を形成する。
【0108】
本発明に用いられる被印刷物は特に限定されるものではないが、電子または光学デバイス用途において印刷物の熱処理が必要になる場合には、耐熱性のある材料が好ましい。このような材料として、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリアラミド、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマーなどの耐熱プラスチックのフィルムまたはシート、ソーダライムや石英などのガラス板、シリコンウエハーなどが挙げられる。
【0109】
また、基板上に他の方法により何らかのパターンを形成したのち、その上に本発明の組成物を用いて印刷してもよい。例えば薄膜トランジスタの製造においてゲート電極の上にゲート絶縁膜を形成する場合、液晶ディスプレイの製造において画素TFT上に層間絶縁膜や平坦化膜を形成する場合、タッチセンサーの製造において、ITOパターン上に絶縁膜や保護膜を形成する場合等が挙げられる。
【0110】
本発明の硬化被膜はTFTのゲート絶縁膜として好適に用いることができる。本発明のTFTの半導体は多結晶シリコン、非晶質シリコン、有機半導体、酸化物半導体のいずれでもよい。またトップゲート型やボトムゲート型等のいずれの構成でもよい。
【0111】
また、本発明の硬化被膜は、電子または光学デバイスに好適に用いることができる。電子デバイスとは、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示素子、半導体素子、太陽電池、カラーフィルター、タッチセンサーなどが挙げられる。光学デバイスとは、例えば反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルターや、イメージセンサー等に用いられるマイクロレンズアレイなどが挙げられる。ただしいずれもこれらに限られるものではない。本発明の硬化被膜の具体的な用途としては、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示素子におけるTFT用平坦化膜や半導体素子における層間絶縁膜、カラーフィルターのオーバーコート、フォトスペーサー、タッチセンサーの保護膜や絶縁膜、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルターの反射防止層(最表層)などである。また、マイクロレンズアレイや太陽電池の最表層に用いることもできる。
【実施例】
【0112】
以下に実施例を用いて本発明を説明する。
【0113】
<ポリシロキサン溶液(a)の調製>
メチルトリメトキシシラン54.48g(0.40モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン74.51g(0.30モル)、フェニルトリメトキシシラン59.49g(0.30モル)、ジアセトンアルコール(以下、DAA)176.36gをセパラブルフラスコに入れ、水54.00gにリン酸0.56gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらに、バス温度115℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(a)を得た。ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率について、
1H−NMR、
13C−NMR、
29Si−NMRの測定を行い、全体の積分値から、それぞれのオルガノシランに対する積分値の割合を算出して、比率を計算した。その結果、メチルトリメトキシシラン由来の構造が、40モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来の構造が30モル、フェニルトリメトキシシラン由来の構造が30モル%であった。
29SiNMRの 測定条件を以下に示す。試料(液体)は直径10mm の“テフロン(登録商標)”製 NMR サンプル管に注入し測定に用いた。
装置:日本電子社製 JNM GX-270、測定法:ゲーテッドデカップリング法
測定核周波数:53.6693 MHz(
29Si 核)、スペクトル幅:20000 Hz
パルス幅:12μsec(45°パルス)、パルス繰り返し時間:30.0 sec
基準物質:テトラメチルシラン、測定温度:室温、試料回転数:0.0 Hz。
【0114】
<ポリシロキサン溶液(b)の調製>
メチルトリメトキシシラン81.72g(0.60モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン74.51g(0.30モル)、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン24.46g(0.10モル)、3−メトキシブタノール(以下、MB)165.36gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.54gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度115℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(b)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が60モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来の構造が30モル%、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が10モル%であった。
【0115】
<ポリシロキサン溶液(c)の調製>
メチルトリメトキシシラン54.48g(0.4モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン124.18g(0.50モル)、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン24.46g(0.10モル)、DAA192.67gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.61gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度115℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(c)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が40モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が50モル%、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が10モル%であった。
【0116】
<ポリシロキサン溶液(d)の調製>
メチルトリメトキシシラン54.48g(0.4モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン99.34g(0.40モル)、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン24.46g(0.10モル)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン66.97g(0.10モル)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(以下、PGEE)147.67gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.61gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度115℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(d)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来の構造40モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が40モル%、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が10モル%、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が10モル%であった。
【0117】
<ポリシロキサン溶液(e)の調製>
メチルトリメトキシシラン27.24g(0.2モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン173.85g(0.70モル)、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン24.46g(0.10モル)、DAA220.09gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.61gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度115℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(e)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来の構造20モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が70モル%、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が10モル%であった。
【0118】
<ポリシロキサン溶液(f)の調製>
メチルトリメトキシシラン54.48g(0.4モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン74.51g(0.3モル)、フェニルトリメトキシシラン39.66g(0.20モル)、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン24.46g(0.10モル)、DAA180.44gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.58gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度115℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(f)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来の構造40モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が30モル%、フェニルトリメトキシシラン由来の構造が20モル%、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン由来の構造が10モル%であった。
【0119】
<ポリシロキサン溶液(g)の調製>
メチルトリメトキシシラン54.48g(0.40モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン74.51g(0.30モル)、フェニルトリメトキシシラン39.66g(0.20モル)、ビニルトリメトキシシラン14.82g(0.10モル)、DAA160.44gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.58gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度105℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(g)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来の構造40モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が30モル%、フェニルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が20モル%、ビニルトリメトキシシラン由来の構造が10モル%であった。
【0120】
<ポリシロキサン溶液(h)の調製>
メチルトリメトキシシラン47.67g(0.35モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン124.18g(0.50モル)、ビニルトリメトキシシラン22.23g(0.15モル)、DAA185.44gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.58gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度105℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(h)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が35モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が50モル%、ビニルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が15モル%であった。
【0121】
<ポリシロキサン溶液(i)の調製>
メチルトリメトキシシラン54.48g(0.40モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン74.51g(0.30モル)、フェニルトリメトキシシラン39.66g(0.20モル)、3−エチル−3−[3−(トリメトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン27.84g(0.10モル)、DAA160.44gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.58gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度105℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(i)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が40モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が30モル%、フェニルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が20モル%、3−エチル−3−[3−(トリメトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン由来のケイ素原子が10モル%であった。
【0122】
<ポリシロキサン溶液(j)の調製>
メチルトリメトキシシラン48.86g(0.30モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン124.18g(0.50モル)、3−エチル−3−[3−(トリメトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン55.68g(0.20モル)、DAA215.8gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.58gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度105℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(j)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が30モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が50モル%、3−エチル−3−[3−(トリメトキシシリル)プロポキシメチル]オキセタン由来のケイ素原子が20モル%であった。
【0123】
<ポリシロキサン溶液(k)の調製>
メチルトリメトキシシラン13.62g(0.10モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン198.68g(0.80モル)、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン24.64g(0.10モル)、DAA222.12gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.68gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度105℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(k)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が10モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が80モル%、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が10モル%であった。
【0124】
<ポリシロキサン溶液(l)の調製>
1−ナフチルトリメトキシシラン124.18g(0.50モル)、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン24.46g(0.50モル)、DAA239.44gをセパラブルフラスコに入れ、水63.80gにリン酸0.74gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度105℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(l)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が50モル%、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が50モル%であった。
【0125】
<ポリシロキサン溶液(m)の調製>
1−ナフチルトリメトキシシラン49.67g(0.20モル)、フェニルトリメトキシシラン39.66g(0.70モル)、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン24.46g(0.10モル)、DAA160.44gをセパラブルフラスコに入れ、水55.80gにリン酸0.64gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度105℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(m)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、1−ナフチルトリメトキシシラン由来の構造が20モル%、フェニルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が70モル%、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が10モル%であった。
【0126】
<ポリシロキサン溶液(n)の調製>
メチルトリメトキシシラン53.12g(0.39モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン99.34g(0.40モル)、フェニルトリメトキシシラン1.98g(0.01モル)、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン49.28g(0.20モル)、DAA191.40gをセパラブルフラスコに入れ、水57.80gにリン酸0.58gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度115℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(n)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来の構造39モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が40モル%、フェニルトリメトキシシラン由来の構造が1モル%、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が20モル%であった。
【0127】
<ポリシロキサン溶液(o)の調製>
メチルトリメトキシシラン53.12g(0.39モル)、1−ナフチルトリメトキシシラン2.48g(0.01モル)、フェニルトリメトキシシラン79.32g(0.40モル)、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン49.28g(0.20モル)、DAA168.44gをセパラブルフラスコに入れ、水57.80gにリン酸0.58gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度115℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(o)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来の構造39モル%、1−ナフチルトリメトキシシラン由来の構造が1モル%、フェニルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が40モル%、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子が20モル%であった。
【0128】
<ポリシロキサン溶液(p)の調製>
メチルトリメトキシシラン136.20g(1.00モル)、DAA88.37gをセパラブルフラスコに入れ、水54.00gにリン酸0.41gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度105℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(p)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、メチルトリメトキシシラン由来のケイ素原子は100モル%であった。
【0129】
<ポリシロキサン溶液(q)の調製>
フェニルトリメトキシシラン198.30g(1.00モル)、DAA160.44gをセパラブルフラスコに入れ、水54.00gにリン酸0.59gを溶かしたリン酸溶液をバス温度40℃にて30分間かけて添加した。得られた溶液をバス温度70℃にて1時間加熱撹拌し、さらにバス温度105℃にて3時間加熱撹拌し、加水分解による副生成物であるメタノール、水を留去しつつ反応させた。反応終了後、氷冷した。重合溶液をアルミカップに秤量し、250℃で30分間加熱乾燥後の重量を秤量して固形分濃度を計算し、固形分濃度 50%のポリシロキサン溶液(q)を得た。
参考例1と同様に、ポリシロキサン中のオルガノシラン構造の比率を測定し、フェニルトリメトキシシラン由来のケイ素原子100モル%であった。
【0130】
<<
参考例1>>
<インキ用組成物の調製>
ポリシロキサン溶液(a) 20gとアルミニウムトリスアセチルアセトネート(以下、 Al(acac))0.1g(ポリシロキサンに対して1質量%)をDAA8g、酢酸イソプロピル(以下、IPAc) 64gに加え撹拌した(DAA/IPAc=20/80)。これに、界面活性剤BYK−333(ビックケミー・ジャパン株式会社製)0.5g(ポリシロキサンに対して5質量%)を加えてさらに撹拌し、インキ用組成物Aを得た。
【0131】
<印刷パターンの転写性の評価>
10cm四方のシリコーンゴムブランケット(商品名:“シルブラン”(登録商標)、(株)金陽社製)上に、インキ用組成物Aをバーコーター(#6、松尾産業(株)製)を用いて、全面に厚み0.5μmにて製膜した。その後、この塗膜を、ライン/スペース=15μm/15μm、高さ10μmのパターンが形成してあるシリコンウエハ上に押し付け、ブランケット上からローラーで1往復圧力をかけた。その後、1分間放置した後、ブランケットをシリコンウエハから引き離した。このとき、シリコンウエハの凸の部分(ライン部分)にシリコンブランケット上の膜が転写され、シリコーンゴムブランケット上にパターン膜が形成された。その後、シリコーンゴムブランケット上にガラス基板上に1分間押し付け、パターン形成された膜をガラス基板上に転写させ、ライン/スペース=15μm/15μmのパターンを反転オフセット印刷法により印刷した。印刷されたガラス基板を250℃で1時間加熱処理して、印刷されたインキ用組成物の膜を硬化させた。その後、光学顕微鏡で硬化膜のパターンを観察し、下記の基準に従って評価した。評価結果を表3に示す。
【0132】
S:所望のライン/スペースのパターンが全面に再現されている
A:パターンが再現されているが、一部のパターンにゆがみがある
B:全面にパターンにゆがみもしくはぎざぎざがある。またはピンホール状のハジキが見られる
C:転写不良またはハジキにより、パターンが潰れている
D:パターンができていない。
【0133】
また、最上層にあるシリコーンゴム層をインキ反発層とする水なし平版(商品名:“東レ水なし平版”(登録商標) TAN−E(ネガタイプ)、東レ(株)製、10cm四方)を用いて、露光、現像により、ライン/スペース=15μm/15μmのシリコーンゴム層のパターンを形成した。ラインにはシリコーンゴム層があり、スペースにはシリコーンゴム層がない。パターンが形成された平版上に、インキ用組成物Aをバーコーター(#6、松尾産業(株)製)を用いて、全面に製膜した。製膜した平版に、上記で用いたものとおなじシリコーゴムブランケットに押し付け、ローラーで1往復圧力をかけた。その後、1分間放置した後、シリコーンゴムブランケットを平版から引き離した。このとき、前記平版の凸の部分(ライン部分)の膜が転写され、シリコーンゴムブランケット上にパターン膜が形成された。その後、パターン膜を有するシリコーンゴムブランケットをガラス基板上に1分間押し付けた。シリコーンゴムブランケットを取り外し、ガラス基板上にライン/スペース=15μm/15μmのインキ用組成物の膜のパターンを剥離オフセット印刷法により印刷した。以外は上記の方法と同様にして硬化被膜を作製し、上記と同じ基準で評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0134】
また、シリコンエラストマー(商品名:“Sylgard”(登録商標)184 Silicone Elastamer、東レ・ダウコーニング(株)製)をライン/スペース=15μm/15μm、高さ10μmのパターンが形成してあるシリコンウエハ上に流し込み、脱気し、150℃10分間加熱硬化させて、全面にシリコンエラストマーが形成され、凸部の高さが10μmであるポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンプを形成した。このPDMSスタンプに上に、インキ組成物Aをバーコーター(#6、松尾産業(株)製)を用いて、全面に製膜した。このPDMSスタンプをガラス基板に押し付け、マイクロコンタクト印刷法によりガラス基板上にライン/スペース=15μm/15μmのインキ用組成物の膜のパターンをマイクロコンタクト印刷法により印刷した。その後上記の方法と同様にして硬化被膜を作製し、上記と同じ基準で評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0135】
<硬化被膜の密着性試験>
上述の反転オフセット印刷で、ガラス基板上全面に硬化被膜を作製し、1mm×1mmの100マスにクロスカットし、その後、テープ剥離試験(クロスカット法:JIS
K5400(日本工業規格))を行った。剥離後のマス目の評価について、下記に従い評価を行った。
【0136】
5B:剥がれの面積が5%未満
4B:剥がれの面積が5%以上15%未満
3B:剥がれの面積が15%以上35%未満
2B:剥がれの面積が35%以上65%未満
1B:剥がれの面積が65%以上95%未満
0B:剥がれの面積が95%以上100%以下。
【0137】
実施例にて使用した化合物について、略号を下記する。
ジアセトンアルコール:DAA
3−メトキシブタノール:MB
プロピレングリコールモノエチルエーテル:PGEE
イソプロピルアルコール:IPA
酢酸ブチル:BAc
酢酸イソプロピル:IPAc
ジプロピレングリコールジメチルエーテル:DMM
アルミニウムトリスアセチルアセトネート:Al(acac)
チタントリスアセチルアセトネート:Ti(acac)
ジルコニウムトリスアセチルアセトネート:Zr(acac)
アルミニウムトリイソプロポキシド:AlIP
光酸発生剤CGI−MDT(ヘレウス(株)製):CGI−MDT
熱酸発生剤“サンエイド”(登録商標)SI−200(三新化学(株)製):SI−200
界面活性剤BYK−333(ビックケミー・ジャパン株式会社製):BYK−333
界面活性剤BYK−307(ビックケミー・ジャパン株式会社製):BYK−307
界面活性剤X−22−161B(信越化学(株)):X−22−161B
界面活性剤“メガファック”(登録商標)F−554(DIC(株)製)):F−554。
【0138】
<<実施例2〜
15、17〜39、比較例1〜2
、参考例16>>
実施例2〜
15、17〜39、比較例1〜2
、参考例16のインキ用組成物について、表1〜2に示したとおりとし、それ以外は
参考例1と同様に行った。評価結果を表3に示す。
【0139】
表3からも分かるように、多環式芳香族基を含有するシロキサン化合物をインキ用のポリシロキサン組成物に含むことで、印刷パターンの転写性および密着性が良好であることが分かる。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
<<実施例40>>
<CNT複合体分散液の作製>
共役系重合体であるポリ−3−ヘキシルチオフェン(数平均分子量(Mn):13000、以下P3HT)0.10gをクロロホルム5mlの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール20mlと0.1規定塩酸10mlの混合溶液の中に0.5mlずつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを4フッ化エチレン製0.1μm孔径のメンブレンフィルター(PTFE社製)によって濾別捕集し、メタノールでよくすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
【0143】
単層CNT(CNI社製の単層カーボンナノチューブ、純度95%)1.0mgと、上記P3HT1.0mgを10mlのクロロホルム中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX−500)を用いて出力250Wで30分間超音波撹拌した。超音波照射を30分間行った時点で一度照射を停止し、上記P3HTを1.0mg追加し、さらに1分間超音波照射することによって、CNT複合体分散液A(溶媒に対するCNT濃度0.1g/l)を得た。
【0144】
CNT複合体分散液A中で、P3HTがCNTに付着しているかどうかを調べるため、分散液A5mlをメンブレンフィルターを用いてろ過を行い、フィルター上にCNTを捕集した。捕集したCNTを、溶媒が乾かないうちに素早くシリコンウエハー上に転写し、乾燥したCNTを得た。このCNTを、X線光電子分光法(XPS)を用いて元素分析したところP3HTに含まれる硫黄元素が検出された。従って、CNT複合体分散液A中のCNTにはP3HTが付着していることが確認できた。
【0145】
上記CNT複合体分散液Aにo−ジクロロベンゼン(沸点180℃、以下o−DCB)5mlを加えた後、ロータリーエバポレーターを用いて、低沸点溶媒であるクロロホルムを留去し、溶媒をo−DCBで置換し、CNT複合体分散液Bを得た。次に分散液Bをメンブレンフィルター(孔径3μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いてろ過を行い、長さ10μm以上のCNTを除去した。得られたろ液にo−DCBを加えて希釈し、CNT複合体分散液C(溶媒に対するCNT濃度0.06g/l)とした。
【0146】
<TFTの作製と評価>
図4に示す形態のTFTを作製した。ガラス製の基板14(厚み0.7mm)上に、抵抗加熱法により、メタルマスクを介して、クロムを厚み5nm、続いて金を厚み50nmで真空蒸着し、ゲート電極15を形成した。次に
参考例1で調製したインキ用組成物を用いて反転オフセット印刷法により印刷物を形成し、これを窒素気流下220℃、1時間加熱処理することによって、膜厚が500nmのゲート絶縁膜を得て、ゲート絶縁層16を形成した。このゲート絶縁層が形成された基板上に、金を厚み50nmになるように真空蒸着した。次に、ポジ型レジスト溶液を滴下し、スピナーを用いて塗布した後、90℃のホットプレートで乾燥し、レジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、露光機を用いて、フォトマスクを通して紫外線照射を行った。続いて、基板をアルカリ水溶液に浸漬し、紫外線照射部を除去し、電極形状にパターン加工されたレジスト膜を得た。得られた基板を金エッチング液(アルドリッチ社製、Gold etchant,standard)中に浸漬し、レジスト膜が除去された部分の金を溶解・除去した。得られた基板をアセトン中に浸漬し、レジストを除去した後、純水で洗浄し、100℃のホットプレートで30分間乾燥した。このようにして、電極の幅(チャネル幅)0.2mm、電極の間隔(チャネル長)20μm、厚み50nmの金ソース電極18およびドレイン電極19を得た。
【0147】
次に、電極が形成された基板上に、調製したCNT複合体分散液Cをインクジェット法により塗布し、ホットプレート上で窒素気流下、150℃、30分間の熱処理を行い、CNT複合体分散膜を活性層17とするTFTを作製した。この際、インクジェット装置に、簡易吐出実験セットPIJL−1(クラスターテクノロジー株式会社製)を用いた。
【0148】
このようにして作製したTFTについて、ゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)−ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定した。測定には半導体特性評価システム4200−SCS型(ケースレーインスツルメンツ株式会社製)を用い、大気中で測定した。Vg=+30〜−30Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、0.5cm
2/Vsecであった。また、このときのIdの最大値と最小値の比からオンオフ比を求めたところ1×10
6であった。また、ヒステリシスについて、Id=10
−9Aにおけるゲート電圧を正から負にスイープした場合のゲート電圧(Vg1)と負から正にスイープした場合のゲート電圧(Vg2)を測定し、その差をヒステリシスと定義して算出したところ、10Vであった。
【0149】
<<実施例40〜45>>
インキ用組成物を表4に示すものに変更した以外は実施例40と同様にしてTFTの作製、評価を行った。結果を表4に示す。
【0150】
<<比較例3>>
表2に記載している比較例1で調整したインキ用組成物Z1を用いて実施例26と同様にしてTFTの作製を行ったが、パターンが形成できなかった。
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】