特許第6176293号(P6176293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6176293
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】近接センサーの防護カバー構造
(51)【国際特許分類】
   H01H 36/00 20060101AFI20170731BHJP
   H03K 17/945 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   H01H36/00 P
   H03K17/945 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-149453(P2015-149453)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2017-33648(P2017-33648A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2015年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】511120037
【氏名又は名称】黄 耀徳
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】黄 耀徳
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−171750(JP,A)
【文献】 特開平11−317139(JP,A)
【文献】 実開昭58−154543(JP,U)
【文献】 実開昭58−053338(JP,U)
【文献】 実開昭61−169929(JP,U)
【文献】 特開2010−216863(JP,A)
【文献】 特許第2999913(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 36/00
H03K 17/945
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接センサーの防護カバーであって、前記防護カバーは非磁性材料から成形製造され
前記防護カバーの第1端に設けられて、近接センサーの検出端外部に覆設される覆合部、および、
前記防護カバーの第2端に貫設されるとともに、検出物を貫通させて前記近接センサーの検出端を検出により作動させるよう、前記近接センサーの検出領域内に位置する貫通延伸部、を含み、
前記防護カバーの外表面を前記近接センサーの検出領域の外部に位置させることによって、飛散した金属異物の前記近接センサーの検出領域内への付着を防止することを特徴とする、防護カバー
【請求項2】
前記防護カバーはプラスチック材料又はゴム材料を射出成形して製造される請求項1記載の近接センサーの防護カバー
【請求項3】
前記防護カバーの覆合部は内側へ凹孔状とされる請求項1記載の近接センサーの防護カバー
【請求項4】
前記防護カバーの覆合部は、緊合するよう押し込まれる形で近接センサーの検出端外部に覆設される請求項3記載の近接センサーの防護カバー
【請求項5】
前記防護カバーの貫通延伸部は切欠き溝状とされ、検出物を貫通させる請求項1記載の近接センサーの防護カバー
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に、近接センサーの検出領域内における金属異物の付着を効果的に回避することで、誤作動を大幅に低減可能であるとともに、構造が簡易で製造及び組み付けが容易な防護カバー構造を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在、近接センサー(Proximity Sensor)は多くの自動機、半導体デバイス又は工作機械等に広く応用されている。近接センサーは、制御装置に検出物の数量情報や現在の機構の位置情報を取得させるべく、主として非接触方式で当該検出物が存在するか否かを検出する。図1を参照して、誘導型(Inductive)の近接センサー10は、内部LC及びトランジスタ回路を用いて発振することで、センサー先端の検出端11における検出領域Aに高周波電磁界を発生させる。そして、磁性金属(鉄やニッケル等)がコイル先端の平面に接近すると、誘導コイル内の磁気渦が変化して発振回路の出力電圧が変更される。この出力電圧の変化から、検出物の有無又は距離の遠近が検出される。当該誘導型近接センサー10は電磁効果による検出が必須なため、検出可能な検出物は磁性を有する金属物体でなければならない。また、発振コイル周辺の磁力線範囲は周囲の物体から影響を受けることがあるため、当該誘導型近接センサー10の近傍に他の磁性物や他の近接センサーがある場合には検出誤差が生じやすく、誤作動が起こってしまう。工作機械の場合には、工作機械が主として金属加工物を加工することから、加工過程で多くの金属屑が発生する。この金属屑は非常に容易に飛散して近接センサー10先端の検出端11における検出領域A内に付着するため、当該近接センサー10が検出誤差を生じ、誤作動が起こってしまう。
【0003】
この点に鑑みて、発明者は長年従事してきた関連業界における研究開発及び製造経験に基づき、現在直面している課題を深く研究するとともに、長期にわたり研究及び試作に努力を重ねた結果、近接センサーの誤作動を効果的に回避可能であり、且つ構造が簡易で製造及び組み付けが容易な防護カバー構造を開発した。これが、即ち本発明における設計の主旨である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の目的は、防護カバーが非磁性材料から成形製造され、当該防護カバーの第1端に、近接センサーの検出端外部に覆設されるとともに、当該防護カバーの外表面を当該近接センサーの非検出領域に位置させるための覆合部が設けられ、当該防護カバーの第2端には貫通した貫通延伸部が設けられ、当該貫通延伸部は、検出物を貫通させて近接センサーを検出により作動させるよう近接センサーの検出領域内に位置する、近接センサーの防護カバー構造を提供することである。これにより、当該防護カバーの貫通延伸部を利用して近接センサーを正常な検知により動作させられるだけでなく、当該防護カバーの外表面を利用して、金属異物が飛散して近接センサーの検出領域内に付着することを効果的に防止可能であるため、近接センサーの誤作動が大幅に低減される。
【0005】
本発明の第2の目的は、防護カバーが非磁性材料から成形製造され、当該防護カバーの第1端に、近接センサーの検出端外部に覆設されるとともに、当該防護カバーの外表面を当該近接センサーの非検出領域に位置させるための覆合部が設けられ、当該防護カバーの第2端には貫通した貫通延伸部が設けられ、当該貫通延伸部は、検出物を貫通させて近接センサーを検出により作動させるよう近接センサーの検出領域内に位置する、近接センサーの防護カバー構造を提供することである。これにより、当該防護カバーは構造が簡易で製造が容易であるほか、近接センサーの検出端外部への組み付けが容易となり、実用的効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、従来の近接センサーを示す図である。
図2図2は、本発明の防護カバーの外観を示す図である。
図3図3は、本発明の防護カバーを近接センサーに組み付けた際の外観を示す図である。
図4図4は、本発明の防護カバーを近接センサーに組み付けた際の断面を示す図である。
図5-1】図5−1は、本発明における第1検出物の検出を示す図(1)である。
図5-2】図5−2は、本発明における第1検出物の検出を示す図(2)である。
図5-3】図5−3は、本発明における第1検出物の検出を示す図(3)である。
図6-1】図6−1は、本発明における第2検出物の検出を示す図(1)である。
図6-2】図6−2は、本発明における第2検出物の検出を示す図(2)である。
図6-3】図6−3は、本発明における第2検出物の検出を示す図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明について更に審査官の理解を促すべく、好ましい実施例を挙げるとともに図面を組み合わせ、以下に詳細に述べる。
【0008】
図2図3図4を参照して、本発明の防護カバー20は非磁性材料から成形製造される。本実施例において、当該防護カバー20はプラスチック材料又はゴム材料を用いた射出成形により製造されるため、当該防護カバー20の製造が容易となっている。当該防護カバー20の第1端には、近接センサー30の検出端31外部に覆設されて、当該防護カバー20の外表面21を近接センサー30の検出領域B以外の領域(非検出領域)に位置させるための覆合部22が設けられている。本実施例において、当該覆合部22は内側へ凹孔状とされる。当該覆合部22は近接センサー30の検出端31の外部寸法に対応しており、緊合するよう押し込まれる形で近接センサー30の検出端31外部に固定覆設される。これにより、当該防護カバー20が近接センサー30の検出端31の外部に容易に組み付けられる。また、当該防護カバー20の第2端には貫通した貫通延伸部23が設けられている。当該貫通延伸部23は、検出物を貫通させて当該近接センサー30の検出端31を正常な検出により作動させるよう、近接センサー30の検出領域B内に位置する。本実施例では、当該貫通延伸部23は切欠き溝状とされる。当該貫通延伸部23の幅は、検出物の貫通寸法に対応し、且つ当該貫通延伸部23と検出物との間に小さな隙間が維持される範囲とされる。本発明の防護カバー20は構造が簡易なだけでなく、近接センサー30における検出端31の外部に組み付けられると、貫通延伸部23が近接センサー30の検出領域Bに位置するほか、当該防護カバー20の外表面21全体が近接センサー30の非検出領域に位置する。更に、当該防護カバー20の外表面21を用いて、金属異物が飛散して近接センサー30の検出領域B内に付着することを効果的に防止可能なため、近接センサー30の誤作動が大幅に低減される。
【0009】
図5−1を参照して、本実施例の検出物40は回転しながら近接センサー30の検出領域Bに進入する。当該検出物40は金属磁性材料であり、回転ホイール41の外縁に取り付けられている。いうまでもなく、当該検出物40と当該回転ホイール41は、当該検出物40が回転ホイール41の外縁から直接突状に延伸するよう一体成形されていてもよい。回転ホイール41が検出物40を近接センサー30の検出領域Bに進入させるよう回転していない場合には、検出領域Bが元々有する電磁効果は変化しないため、当該近接センサー30が検出により作動することはない。図5−2を参照して、回転ホイール41が回転して検出物40を防護カバー20の貫通延伸部23から近接センサー30の検出領域Bに進入させると、当該検出物40は検出領域Bが元々有する電磁効果を変化させる。よって、当該近接センサー30は検出により作動し、制御装置に検出信号を出力する。図5−3を参照して、回転ホイール41が回転して検出物40が防護カバー20の貫通延伸部23から近接センサー30の検出領域Bを離脱すると、検出領域Bは元々有する電磁効果を回復する。よって、当該近接センサー30は作動を停止して、制御装置への検出信号の出力を停止する。本発明の防護カバー20は、近接センサー30を正常な検出により作動させるべく、貫通延伸部23によって検出物40を回転させつつ近接センサー30の検出領域Bに貫入可能なだけでなく、防護カバー20の外表面21全体が近接センサー30の非検出領域に位置している。よって、当該防護カバー20の外表面21を用いて近接センサー30の検出領域Bに対し防護カバーを形成可能であり、金属異物が飛散して近接センサー30の検出領域B内に付着することが効果的に防止できるので、近接センサー30の誤作動が大幅に低減される。
【0010】
図6−1を参照して、本実施例の検出物50は直線移動しながら近接センサー30の検出領域Bに進入する。当該検出物50は金属磁性材料であり、平行移動台51の上方に取り付けられている。平行移動台51が検出物50を近接センサー30の検出領域Bに進入させるよう平行移動していない場合には、検出領域Bが元々有する電磁効果は変化しないため、当該近接センサー30が検出により作動することはない。図6−2を参照して、平行移動台51が平行移動して検出物50を防護カバー20の貫通延伸部23から近接センサー30の検出領域Bに進入させると、当該検出物50は検出領域Bが元々有する電磁効果を変化させる。よって、当該近接センサー30は検出により作動し、制御装置に検出信号を出力する。図6−3を参照して、平行移動台51が平行移動して検出物50が防護カバー20の貫通延伸部23から近接センサー30の検出領域Bを離脱すると、検出領域Bは元々有する電磁効果を回復する。よって、当該近接センサー30は作動を停止して、制御装置への検出信号の出力を停止する。同様に、本発明の防護カバー20は、近接センサー30を正常な検出により作動させるべく、貫通延伸部23によって検出物50を平行移動させつつ近接センサー30の検出領域Bに貫入可能なだけでなく、防護カバー20の外表面21全体が近接センサー30の非検出領域に位置している。よって、当該防護カバー20の外表面21を用いて近接センサー30の検出領域Bに対し防護カバーを形成可能であり、金属異物が飛散して近接センサー30の検出領域B内に付着することが効果的に防止できるため、近接センサー30の誤作動が大幅に低減される。
【0011】
以上より、本発明の防護カバーは、金属異物が飛散して近接センサーの検出領域内に付着することを外表面により効果的に防止可能なため、近接センサーの誤作動が大幅に低減されるだけでなく、構造が簡易であり製造と組み付けが容易である。よって、実用的且つ進歩的設計を十分に備えるとともに、同様の製品及び刊行物による開示はこれまでに存在しない。従って、発明特許出願の要件を十分に満たしており、法に基づき出願する。
【符号の説明】
【0012】
10 近接センサー
11 検出端
A 検出領域
20 防護カバー
21 外表面
22 覆合部
23 貫通延伸部
30 近接センサー
31 検出端
B 検出領域
40 検出物
41 回転ホイール
50 検出物
51 平行移動台
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】