(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のメサ構造の各々が、前記第2の半導体多層膜反射鏡及び前記活性領域を含む第1のメサと、前記第1の半導体多層膜反射鏡を含むと共に前記第1のメサより外形を大きくされた第2のメサを含む
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の面発光型半導体レーザアレイ。
基板上に形成された、コンタクト層、第1導電型の第1の半導体多層膜反射鏡、活性領域、及び第2導電型の第2の半導体多層膜反射鏡を含む半導体層をエッチングして前記コンタクト層を露出させ前記半導体層の複数のメサ構造を形成する工程と、
前記複数のメサ構造の各々の間の前記コンタクト層を覆って形成されると共に一部が第1導電型の電極パッドとされる第1の金属層を成膜する工程と、
前記第1の金属層上でかつ前記複数のメサ構造の各々の上面を除く領域に絶縁膜を成膜する工程と、
前記絶縁膜上でかつ前記複数のメサ構造の各々の上面の一部を含む領域に形成されると共に一部が第2導電型の電極パッドとされる第2の金属層を成膜する工程と、
を含む面発光型半導体レーザアレイの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、絶縁膜−金属膜の層構造で配線層を形成する場合と比較して、駆動電圧の低減が可能でかつ複数接続がし易い配線構造を有する面発光型半導体レーザアレイ及び面発光型半導体レーザアレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の面発光型半導体レーザアレイは、基板上に形成されたコンタクト層と、前記コンタクト層上に形成された、第1導電型の第1の半導体多層膜反射鏡、前記第1の半導体多層膜反射鏡上の活性領域、及び前記活性領域上の第2導電型の第2の半導体多層膜反射鏡を含む複数のメサ構造と、前記複数のメサ構造の各々の
間の前記コンタクト層を覆って形成されると共に一部が第1導電型の電極パッドとされた第1の金属層と、前記第1の金属層上でかつ前記複数のメサ構造の各々の上面を除く領域を覆って形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上でかつ前記複数のメサ構造の各々の上面の一部を含む領域を覆って形成されると共に一部が第2導電型の電極パッドとされた第2の金属層と、を含むものである。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2導電型の電極パッドが、前記コンタクト層上に成膜された前記第1の金属層、及び前記第1の金属層上に成膜された前記絶縁膜を含む積層体上に形成されたものである。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2導電型の電極パッドが、前記コンタクト層上に成膜された前記絶縁膜上に形成されたものである。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記
複数のメサ構造
の各々が、前記第2の半導体多層膜反射鏡及び前記活性領域を含む第1のメサと、前記第1の半導体多層膜反射鏡を含むと共に前記第1のメサより外形を大きくされた第2のメサを含むものである。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記第1の金属層が、前記第1の半導体多層膜反射鏡の側面及び前記第1の半導体多層膜反射鏡の上面の一部をさらに覆って形成されたものである。
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項6に記載の面発光型半導体レーザアレイの製造方法は、基板上に形成された、コンタクト層、第1導電型の第1の半導体多層膜反射鏡、活性領域、及び第2導電型の第2の半導体多層膜反射鏡を含む半導体層をエッチングして前記コンタクト層を露出させ前記半導体層の複数のメサ構造を形成する工程と、前記複数のメサ構造の各々の
間の前記コンタクト層を覆って形成されると共に一部が第1導電型の電極パッドとされる第1の金属層を成膜する工程と、前記第1の金属層上でかつ前記複数のメサ構造の各々の上面を除く領域に絶縁膜を成膜する工程と、前記絶縁膜上でかつ前記複数のメサ構造の各々の上面の一部を含む領域に形成されると共に一部が第2導電型の電極パッドとされる第2の金属層を成膜する工程と、を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1及び請求項6に記載の発明によれば、絶縁膜−金属膜の層構造で配線層を形成する場合と比較して、駆動電圧の低減が可能でかつ複数接続がし易い配線構造を有する面発光型半導体レーザアレイ及び面発光型半導体レーザアレイの製造方法が提供される、という効果が得られる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、第2導電型の電極パッドを、コンタクト層上に成膜された絶縁膜上に形成させる場合と比較して、表面の段差が少なくされる、という効果が得られる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、第2導電型の電極パッドを、コンタクト層上に成膜された第1の金属層、及び第1の金属層上に成膜された絶縁膜を含む積層体上に形成させる場合と比較して、ボンディングワイヤ時のリーク電流が抑制される、という効果が得られる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、メサ構造を1つのメサで形成する場合と比較して、第1の半導体多層膜反射鏡の側面及び第1の半導体多層膜反射鏡の上面の一部に第1の金属層を成膜し易い、という効果が得られる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、第1の金属層を、コンタクト層のみを覆って形成させる場合と比較して、放熱性が向上する、という効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
図1ないし
図5を参照して、本実施の形態に係る面発光型半導体レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)アレイ10について説明する。
【0021】
図1(a)は、本実施の形態に係るVCSELアレイ10の構成の一例を示す縦断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の要部をより詳細に示す図である。なお、本実施の形態では、GaAs基板を用いたGaAs系の面発光型半導体レーザアレイを例示して説明するが、これに限られず、InGaAsP系や、AlGaInP系、InGaN/GaN系材料等を用いた面発光型半導体レーザアレイに適用した形態としてもよい。また、本実施の形態では、n型バッファ層を用いる形態を例示して説明するが、これに限られず、p型バッファ層を用いてもよい。その場合には、以下の説明において、n型とp型を逆に読み替えればよい。
【0022】
図1(a)に示すように、VCSELアレイ10は、基板12、バッファ層14、下部DBR(Distributed Bragg Reflector)16、共振器24、電流狭窄層32、上部DBR26、出射保護膜38、及び多層金属層Mを含んで構成されている。バッファ層14上に形成された、下部DBR16、共振器24、電流狭窄層32、及び上部DBR26はメサ状に加工され、発光部としてのポストPを形成している。
VCSELアレイ10は、このポストPを複数含んで構成されている。
【0023】
本実施の形態に係る基板12には、一例として半絶縁性のGaAs基板を用いている。
半絶縁性のGaAs基板とは、不純物がドーピングされていないGaAs基板であり、抵抗率が非常に高く、そのシート抵抗値は数MΩ程度の値を示す。なお、半絶縁性基板に代えて導電性基板や絶縁性基板を使用してもよい。この場合、一例として、VCSELアレイ10をGaAs基板上で形成した後にGaAs基板とVCSELアレイ10を分離し、分離したVCSELアレイ10を絶縁性のAlN基板や導電性のCu基板など熱伝導性の高い基板に張り付けた構造としてもよい。
【0024】
基板12上に形成されたバッファ層14は、一例としてSi(シリコン)がドープされたGaAs層によって形成されており、発光部(ポストP)に共通に負電位を供給する層である。すなわち、第1金属層M1がバッファ層14上の一部の領域に形成され、n型の下部DBR16がバッファ層14上に形成されており、第1金属層M1の一部であるカソード電極パッドKPを電源の負極に接続することにより、バッファ層14を介して発光部に負電位が供給される。なお、本実施の形態に係るバッファ層14は、サーマルクリーニング後、基板表面の結晶性を良好にする機能も兼ねているが、これに限られず、この層とは別に設けてもよい。
【0025】
バッファ層14上に形成されたn型の下部DBR16は、VCSELアレイ10の発振波長をλ’、媒質(半導体層)の屈折率をnとした場合に、膜厚がそれぞれ0.25λ’/nとされかつ屈折率の互いに異なる2つの半導体層(例えば、AlGaAs層)を交互に繰り返し積層して構成される多層膜反射鏡である。なお、本実施の形態に係るVCSELアレイ10では、発振波長λ’を、一例として780nmとしている。以下、λ=λ’/nを媒質内波長という。
【0026】
下部DBR16上に形成された共振器24は、図示しない下部スペーサ層、量子井戸活性層、及び上部スペーサ層を、基板12側からこの順に積層して構成されている。共振器24は、下部DBR16と下部スペーサ層との界面を一方の反射面とし、上部DBR26と上部スペーサ層との界面を他方の反射面として構成されている。下部スペーサ層は、量子井戸活性層と下部DBR16との間に配置されることにより、上部スペーサ層は、量子井戸活性層と上部DBR26との間に配置されることにより、共振器の長さを調整する機能とともに、キャリアを閉じ込めるためのクラッド層としての機能も有している。
【0027】
共振器24上に設けられた電流狭窄層32は、図示しない電流注入領域及び選択酸化領域を含んで構成されている。選択酸化領域はVCSELアレイの製造工程における酸化工程において酸化されたポストPの周囲の領域であり、酸化されないで残された領域が電流注入領域である。電流注入領域は、円形又は円形に近い形状をなしており、この電流注入領域により、VCSELアレイ10の発光部を流れる電流が絞られ、例えば発光部の発振における横モードが制御される。
【0028】
電流狭窄層32上に形成された上部DBR26は、膜厚がそれぞれ0.25λとされかつ屈折率の互いに異なる2つの半導体層(例えば、AlGaAs層)を交互に繰り返し積層して構成された多層膜反射鏡である。上部DBR26の上面には、図示しないp型コンタクト層が設けられている。
【0029】
多層金属層Mは、基板12側からこの順に成膜された第1金属層M1、層間絶縁膜I、第2金属層M2を含んで構成されている。第1金属層M1は、VCSELアレイ10カソード電極の配線層を構成し、第2金属層M2は、アノード電極の配線層を構成している。
【0030】
すなわち、
図1(a)に示すように、第1金属層M1は、バッファ層14の表面、下部DBR16の側面及び表面の一部にかけて形成されており、一部がカソード電極パッドKPとされている。そして、カソード電極パッドKPを電源の負極に接続することにより、発光部に負電位が付与される。第1金属層M1は、
図1(a)に示すバッファ層14との接触領域であるn側コンタクト領域NCにおいて、バッファ層14との間のオーミック性接触を形成している。
【0031】
層間絶縁膜Iは、ポストPを含む半導体層の周囲を覆って設けられた、半導体層が外部の水分等に晒されることを防ぐ等の機能を有する保護膜である。層間絶縁膜Iは、例えば、シリコン酸窒化膜(SiON)、シリコン窒化膜(SiN)等を用いて形成されている。本実施の形態に係る層間絶縁膜Iは、第1金属層M1と第2金属層M2との間に設けられ、両者を電気的に分離している。
【0032】
一方、
図1(a)に示すように、第2金属層M2は、層間絶縁膜I上であって、バッファ層14上、下部DBR16の側面と上部DBR26の側面、及び上部DBR26の上面の一部に沿って形成されており、一部がアノード電極パッドAPとされている。そして、アノード電極パッドAPを電源の正極に接続することにより、発光部に正電位が付与される。第2金属層M2は、
図1(a)に示すp側コンタクト領域PCにおいて、上部DBR26上の図示しないp型コンタクト層との間のオーミック性接触を形成している。
【0033】
図2に、多層金属層Mの平面図を示す。
図2(a)は、第1金属層M1、すなわちカソード電極の配線層を示しており、
図2(b)は、第2金属層M2、すなわちアノード電極の配線層を示している。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、第1金属層M1、及び第2金属層M2は、各々ポストPの周囲の領域を覆ってほぼ前面に形成されている。
図2(c)は、VCSELアレイ10を平面視した場合、第1金属層M1、層間絶縁膜I、及び第2金属層M2が重なっている、つまり、基板12側から、第1金属層M1−層間絶縁膜I−第2金属層M2がこの順で形成されている領域(以下、この領域を「M1−I−M2領域」という場合がある)である。
【0034】
出射保護膜38は、上部DBR26上の図示しないp型コンタクト層上に設けられた、光の出射面を保護する保護膜である。
【0035】
以上の説明から明らかなように、本実施の形態に係るVCSELアレイ10内の、ポストPの単位で構成された複数の発光部は、並列に接続されている。
【0036】
ところで、上記のようなVCSELアレイは、基板に垂直な方向にレーザ出力を取り出せ、さらに2次元集積によるアレイ化が容易であることなどから、光通信用光源や、電子機器用の光源、例えば電子写真システムの書き込み用光源として利用されている。また、大きな光量を要求されるトナー画像定着やインク乾燥、さらには照明の分野でもVCSELアレイが利用されている。
【0037】
大きな光量を要求される用途に使用されるVCSELアレイでは、アノード電極、カソード電極の双方を基板の同一面側(VCSELアレイの表面側)に配置することが求められる場合がある。複数のVCSELアレイの接続(直列、並列、直並列)のし易さから、また、VCSELアレイの裏面に放熱体を設ける必要性からの要請である。また、当該分野では、同時に、VCSELアレイの低駆動電圧化が要求される場合も多いが、低駆動電圧化の観点からは、VCSELアレイ内の各発光部が並列に接続され、例えばダイオード1個分の駆動電圧で駆動されることが望ましい。以下、この点に関し、
図8に示す比較例を参照してより詳細に説明する。
【0038】
図8(a)は、第1の比較例に係るVCSELアレイ100aである。VCSELアレイ100aでは、半絶縁性の基板12上に、n型のバッファ層14、n型の下部DBR16、共振器24、p型の上部DBR26、及び出射保護膜38が順次形成されてポストPを構成している。基板12の表面の一部、及びポストPの側面には層間絶縁膜34が形成されており、層間絶縁膜34上に単層の電極配線36が形成され、電極配線36の一端にカソード電極パッドKP、他端にアノード電極パッドAPが設けられている。
【0039】
しかしながら、このような構成のVCSELアレイ100aでは、カソード電極パッドKP、アノード電極パッドAPの双方が基板の同一面に設けられているものの、ポストPごとの複数の発光部が直列に接続される。従って、VCSELアレイ100aでは、直列接続された発光部の個数分の順方向電圧以上の電圧をカソード電極パッドKP、アノード電極パッドAP間に印加しなければならず、駆動電圧が高くなってしまう。
【0040】
図8(b)は、第2の比較例に係るVCSELアレイ100bである。VCSELアレイ100bでは、n型の基板12上に、n型の下部DBR16、共振器24、p型の上部DBR26、及び出射保護膜38が順次形成されてポストPを構成している。基板12の表面の一部、及びポストPの側面には層間絶縁膜34が形成されており、層間絶縁膜34上に単層の電極配線36が形成され、電極配線36の一端にアノード電極パッドAPが設けられている。基板12の裏面には、カソード電極30が設けられている。
【0041】
しかしながら、このような構成のVCSELアレイ100bでは、ポストPごとの各発光部は並列に接続されるので駆動電圧は低いが、カソード電極パッドKP、アノード電極パッドAPが基板12の異なる面に設けられ、上記の要請に適合しない。
【0042】
図8(c)は、第3の比較例に係るVCSELアレイ100cである。VCSELアレイ100cでは、半絶縁性の基板12上に、n型のバッファ層14、n型の下部DBR16、共振器24、p型の上部DBR26、及び出射保護膜38が順次形成されてポストPを構成している。基板12の表面の一部、及びポストPの側面には層間絶縁膜34が形成されており、層間絶縁膜34上に単層の電極配線36が形成されている。電極配線36の一部はバッファ層14に接続され、カソード電極パッドKPが設けられている。電極配線36の他の一部はp型の上部DBR26に接続され、アノード電極パッドAPが設けられている。
【0043】
このような構成のVCSELアレイ100cでは、カソード電極パッドKP、アノード電極パッドAPの双方が基板の同一面に設けられている。また、ポストPごとの各発光部は並列に接続されているので、駆動電圧も低い。しかしながら、VCSELアレイ100cでは、各発光部にn型のバッファ層14を介して電力が供給されるため、カソード電極パッドKPと発光部との距離によって、あるいはアノード電極パッドAPと発光部との距離によって、発光部とカソード電極パッドKPとの間のバッファ層14の抵抗値、あるいは発光部とアノード電極パッドAPとの間のバッファ層14の抵抗値が異なるので、発光部によってこの抵抗値がばらつき、各発光部に均一に電力が供給されない。
【0044】
そこで、本発明では、基板上にn型のバッファ層(コンタクト層)を設け、このバッファ層によって各発光部に共通に負電位を付与することにより基板表面にカソード電極パッドが配置される構成とし、さらに、金属膜−絶縁膜−金属膜からなる配線層によりアノード側の電源系とカソード側の電源系とを分離して接続することとした。このことにより、各電源系が独立に接続できるので、駆動電圧の低減が可能でかつ複数接続がし易い配線構造を有する面発光型半導体レーザアレイ及び面発光型半導体レーザアレイの製造方法の提供が可能となった。また、本発明では、アノード側の電源配線及びカソード側の電源配線が、各々面発光型半導体レーザアレイの表面のほぼ全体を覆って形成されているため配線抵抗が小さい。そのため、照明用途のように大電流を流しても電圧降下が少なくてすむ。
【0045】
次に、
図3を参照して、本実施の形態に係るVCSELアレイ10の放熱構造について説明する。照明等の用途では、大きな電力が要求されるため接続されるVCSELアレイの個数も多くなり、VCSELアレイで発生した熱を効率よく放散させることが求められる。そのため、VCSELアレイ10では、2段メサ構造を採用している。
【0046】
図3(a)は、本実施の形態に係るVCSELアレイ10の1つのポストPを示した図であり、
図3(b)は、従来技術に係るVCSELアレイ100dの1つのポストP示した図である。基板12は、双方とも半絶縁性基板である。なお、上記で説明した構成と同じ構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0047】
図3(a)に示すように、本実施の形態に係るVCSELアレイ10のポストPは、mesa1及びmesa2の2段のメサで構成されている。このような2段メサ構造を採用しているので、VCSELアレイ10のポストPでは、カソード電極の配線層である第1金属層M1をバッファ層14の表面のみならず、n型の下部DBR16の側面及び表面の一部が覆われるように形成される。このため、第1金属層M1と、ポストP(発光部)との接触面積を大きくすることができるので、ポストPで発生する熱が効率よく集められ、例えば、基板12、あるいはカソード電極パッドKP等を介して、この集められた熱が効率よく放散される。
【0048】
この点、従来技術に係るVCSELアレイ100dでは、ポストPの下部DBR16に電極配線36を蒸着しようとすると、共振器24、あるいは上部DBR26にも電極配線36が蒸着されてしまう可能性があるので、短絡等の不具合が発生し易く、また生産性も悪い。
【0049】
なお、上記実施の形態では、2段メサを形成したポストPを用いる形態を例示して説明したが、これに限られない。カソード電極の配線層である第1金属層M1をバッファ層14の表面のみに形成し、下部DBR16に沿う領域には形成しない形態の場合には、1段メサの(mesa1のみの)ポストPを用いる形態としてもよい。
【0050】
次に、
図4及び
図5を参照して、本実施の形態に係るVCSELアレイ10の製造方法の一例について説明する。
【0051】
まず、
図4(a)に示すように、基板12上に、バッファ層14、下部DBR16、共振器24、及び上部DBR26が順次結晶成長(エピ成長)されたエピウエハを準備する。上部DBR26の内部には、後述する電流狭窄層32を形成するためのAlAs層(図示省略)が含まれ、上部DBR26上には、p側電極配線とのオーミック性接触を形成するためのp型コンタクト層(図示省略)が形成されている。以下、このエピウエハの製造方法について説明する。
【0052】
図2(a)に示すように、まず半絶縁性GaAsの基板12上に、有機金属気相成長(MOCVD)法等を用い、一例として、キャリア濃度約2×10
18cm
−3、膜厚500nm程度のn型GaAsによるバッファ層14を積層する。
【0053】
次に、バッファ層14上に、各々の膜厚が0.25λとされた、Al
0.3Ga
0.7As層とAl
0.9Ga
0.1As層とを交互に47.5周期積層してn型の下部DBR16を形成する。この際、Al
0.3Ga
0.7As層のキャリア濃度及びAl
0.9Ga
0.1As層のキャリア濃度は、各々約2×10
18cm
−3とし、下部DBR16の総膜厚は約4μmとする。n型のキャリアは、一例としてSiを用いる。
【0054】
次に、下部DBR16上に、ノンドープのAl
0.6Ga
0.4As層による下部スぺーサ層と、ノンドープの量子井戸活性層と、ノンドープのAl
0.6Ga
0.4As層による上部スぺーサ層と、で構成される共振器24を形成する。量子井戸活性層は、一例として、Al
0.3Ga
0.7As層による4層の障壁層、及び各障壁層の間に設けられたAl
0.111Ga
0.89Asによる3層の量子井戸層で構成されている。この際、Al
0.3Ga
0.7Asによる障壁層の膜厚は各々約5nmとし、Al
0.111Ga
0.89Asによる量子井戸層の膜厚は各々約9nmとし、共振器24全体の膜厚は媒質内波長λとする。
【0055】
次に、上部スペーサ層上にp型のAlAs層(図示省略)を形成し、このAlAs層上に、各々の膜厚が0.25λとされた、Al
0.3Ga
0.7As層とAl
0.9Ga
0.1As層とを交互に25周期積層してp型の上部DBR26を形成する。この際、Al
0.3Ga
0.7As層のキャリア濃度及びAl
0.9Ga
0.1As層のキャリア濃度は、各々約2×10
18cm
−3とし、上部DBR26の総膜厚は約3μmとする。p型のキャリアは、一例としてC(カーボン)を用いる。上部DBR26上には、キャリア濃度が約1×10
19cm
−3で、膜厚が10nm程度のp型GaAsのp型コンタクト層(図示省略)を形成する。
【0056】
次に、エピ成長以降の本実施の形態に係るVCSELアレイ10の製造方法について説明する。
【0057】
まず、ウエハ面上に出射保護膜となる材料を成膜した後、該材料を例えばフォトリソグラフィによるマスクを用いてエッチングし、
図4(b)に示すように、出射保護膜38を形成する。出射保護膜38の材料としては、一例として、SiN膜を用いる。
【0058】
次に、ウエハ面上にマスク材を形成した後、該マスク材を例えばフォトリソグラフィにより加工してマスクを形成し、該マスクを用いてウエハをエッチングし、
図4(c)に示すように、ポストPのメサmesa1を形成する。
【0059】
次に、ウエハに酸化処理を施して上部DBR26内のAlAs層(図示省略)を側面から酸化し、
図4(d)に示すように、ポストP内に電流狭窄層32を形成する。電流狭窄層32は、電流注入領域及び選択酸化領域を含んで構成され、選択酸化領域が上記酸化処理により酸化されたポストPの周囲の領域であり、酸化されないで残された領域が電流注入領域である。
【0060】
次に、ウエハ面上にマスク材を形成した後、該マスク材を例えばフォトリソグラフィにより加工してマスクを形成し、該マスクを用いてウエハをエッチングし、
図5(a)に示すように、メサmesa1の下部にメサmesa2を形成する。
【0061】
次に、ウエハ面上に電極材料を成膜した後、該電極材料を例えばフォトリソグラフィによるマスクを用いてエッチングし、
図5(b)に示すように、第1金属層M1を形成する。本実施の形態では、露出したバッファ層14の表面、下部DBR16の側面及び上面の一部に第1金属層M1を形成する。形成した第1金属層M1の一部によりカソード電極パッドKPが構成される(
図2(a)参照)。第1金属層M1は、一例として、Au膜を用いて形成する。
【0062】
次に、
図5(c)に示すように、上部DBR26の上面を除くウエハ全面に層間絶縁膜Iを成膜する。層間絶縁膜Iは、一例として、SiN膜を用いて形成する。
【0063】
次に、ウエハ面上に電極材料を成膜した後、該電極材料を例えばフォトリソグラフィによるマスクを用いてエッチングし、
図5(d)に示すように、第2金属層M2を形成する。本実施の形態では、層間絶縁膜I上、及び上部DBR26の上面の一部に第2金属層M2を形成する。形成した第2金属層M2の一部によりアノード電極パッドAPが構成される(
図2(b)参照)。第2金属層M2は、一例として、Au膜を用いて形成する。
【0064】
次に、図示しないダイシング領域においてダイシングし、VCSELアレイ10を分離して個片化する。以上の工程により、VCSELアレイ10が製造される。
【0065】
[第2の実施の形態]
図6を参照して、本実施の形態に係るVCSELアレイ10aについて説明する。VCSELアレイ10aは、VCSELアレイ10において、アノード電極パッドAPの構造を変えた形態である。従って、VCSELアレイ10と同じ構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0066】
図1に示すように、VCSELアレイ10におけるアノード電極パッドAPは、M1−I−M2構造で構成されていたが、
図6に示すように、VCSELアレイ10aにおけるアノード電極パッドAPaは、バッファ層14上に形成された、層間絶縁膜I及び第2金属層M2から構成されている(I−M2構造)。VCSELアレイ10aでは、このI−M2構造を採用することにより、ボンディングワイヤ等による実装時の衝撃に対する耐性を向上させている。
【0067】
VCSELアレイ10においては、ボンディングワイヤを用いてVCSELアレイ10同士を接続した場合、あるいはボンディングワイヤを用いてパッケージに実装した場合に、アノード電極パッドAP部分においてリーク電流が発生し、歩留まりが低下する場合があった。これは、ボンディングワイヤ時に、ウエッジ等によってアノード電極パッドAPに強い衝撃が加えられて、下層の第1金属層M1が撓み、このことによって層間絶縁膜Iにひび割れが発生し、第2金属層M2と第1金属層M1が接触することによって、あるいは、第2金属層M2と第1金属層M1がリークする程度に近接したことによって発生したものと推測される。
【0068】
そこで、本実施の形態に係るVCSELアレイ10aでは、アノード電極パッドAPの領域において撓みの原因となる下層側の第1金属層M1を除き、上記のI−M2構造を採用した。このI−M2構造では、ボンディングワイヤによる実装時のリーク不良が抑制されることを確認している。なお、VCSELアレイ10aのI−M2構造は、アノード電極パッドAPのボンディング時の衝撃が特に懸念される場合に採用し、アノード電極パッドAPのボンディング時の衝撃に特に配慮しなくてもよい実装方式、例えば、ボール半田によるフェースダウン実装等を用いる場合には、VCSELアレイ10のM1−I−M2構造を採用するようにしてもよい。
【0069】
[第3の実施の形態]
図7を参照して本実施の形態に係るVCSELアレイ10bについて説明する。VCSELアレイ10bは、VCSELアレイ10aにおいて、第1金属層M1の形成領域を変えたものである。従って、VCSELアレイ10aと同じ構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0070】
図7に示すように、VCSELアレイ10bでは、第1金属層M1をバッファ層14上のみに形成し、下部DBR16に沿う領域には形成していない。接続されるVCSELアレイ10bの個数が少ない等、放熱に格別の配慮を要しない場合には、第1金属層M1をこのように形成してもよい。第1金属層M1をこのように形成することにより、金等の配線材料が節約され、低コスト化に寄与する。