【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0051】
実施例1:発現ベクターの製造
1−1:PCR反応液及び条件
本発明で利用する各種遺伝子を収得してベクターを製造するためのPCR反応液の組成とPCR実行条件は下記のとおりである。
先に、PCR反応液は2.5mM dNTP mix 5ul、5X PrimeSTAR緩衝液10ul、100μM正・逆方向プライマー各々1ulずつ、100ng/uLの鋳型DNA 1ul、2.5U/uL PrimeSTAR重合酵素0.5ul及び蒸溜水31.5ulを含み、計50ulで製造した。
前記製造したPCR反応液を98℃で10秒、68℃で1分のサイクルを29回繰り返すtwo−step PCRを進めた。PCR完了したサンプルは4℃に保管した。
【0052】
1−2:BAP−sortase−LPETG−target(VL)製造
先に、プライマー1_sfi(5’−ccgtg gcc cag gcg gcc GCA AGC AGC GGC CTG AAC GAC ATC TTC GAG GCC−3’:配列番号19)または、プライマー1(5’−ATGT CAT ATG GCA AGC AGC GGC CTG AAC GAC ATC TTC GAG GCC−3’:配列番号20)、及びプライマー2(5’−CTG CAT TTC GTG CCA CTC GAT CTT CTG GGC CTC GAA GAT GTC GTT−3’:配列番号21)を利用してBAP(biotin acceptor peptide)をコードするDNA配列をPCRで増幅した。
【0053】
プライマー3(5’−ATC GAG TGG CAC GAA ATG CAG GCT AAG CCG CAG ATT CCG−3’:配列番号22)及びプライマー4(5’−GCC GGT CTC GGG AAG CTT CTT GAC CTC GGT AGC GAC AAA−3’:配列番号23)を利用して黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus,S.aureus)由来SrtA(GenBank Accession No.AF162687)の60乃至206番目アミノ酸配列をコードするDNA配列をPCRで増幅した。
【0054】
プライマー5(5’−CAG TAA GCT TCC CGA GAC CGG CGA TAT CCA GAT GAC TCA GAGC−3’:配列番号24)、プライマー6(5’−ACT CGA ACC CGC CGT ACG TTT TAT CTC TAC CTT TGT−3’:配列番号25)及び鋳型標的(VL)を利用してLPETG−target(VL)をコードする2次DNA配列をPCRで増幅した。
【0055】
その後、前記三つのPCR産物を共に混合した後、プライマー1_sfiまたはプライマー1及びプライマー7(5’−taatggccggcctggcc GCG GCC GCT TAA AGA TCT TCT TCA CTA ATT AACTT−3’:配列番号26)を使ってSrtAc−LPETG及び標的(target)をコードする配列の間にHindIIIsiteがある融合タンパク質であるBAP−SrtA−kLPETG−target(VL)をコードするDNA配列をPCRで増幅した。
【0056】
結果として出てきたDNA断片をNdeI及びNotIで切断して、目的タンパク質をcytoplasmで発現誘導するpET23aベクター(Novagen)にライゲーションして、SfiIで切断後、融合タンパク質であるBAP−sortase−LPETG−target−myc(
図1のI)をperiplasmで発現誘導するベクターであるpCom3xでライゲーションした。
【0057】
1−3:Target(VL)−kLPETG−リンカー−Sortase−H9製造
プライマー8(5’−ATG TCA TAT GGA CAT TCA GAT GAC ACA GAGT−3’:配列番号27)及びプライマー9(5’−ggaaccaccgccggtctcgggaag AAG ATC TTC TTC ACT AAT TAAC−3’:配列番号28)を利用して、リンカー(7A.A.)(GGSSRSS:配列番号5)が連結されたtarget−LPETG−リンカー(7A.A.)をコードするDNA配列をPCRで増幅した。
【0058】
プライマー8及びプライマー10(5’−GGA AGA TCT AGA GGA ACC ACC CCC ACC ACC GCC CGA GCC ACC GCC ACC GGA TGA GCC GGT CTC GGG AAG AAG AT−3’:配列番号29)及び前記PCR産物であるtarget−LPETG−リンカー(7A.A.)を利用してリンカー(18A.A.)(SSGGGGSGGGGGGSSRSS:配列番号6)が連結されたtarget−LPETG−リンカー(18A.A.)をコードするDNA配列をPCRで増幅した。
【0059】
プライマー11(5’−gag acc ggc ggt ggt tcc tct aga tct tcc cag gct aag ccg cag att−3’:配列番号30)及びプライマー12(5’−taat GC GGC CGC tta atgatggtg ATG GTG ATG ATG ATG ATGGC−3’:配列番号31)を利用してリンカー(7A.A.)−SrtA(60−206)をコードするDNA配列をPCRで増幅した。
【0060】
プライマー13(5’−gtggttcctctagatcttcc TCG AAG GTC GCG GGA TAT ATT−3’:配列番号32)及びプライマー14(5’−taatggccggcctggcctta atgatggtg ATG GTG ATG ATG ATG ATG GC−3’:配列番号33)を利用してリンカー(18A.A.)−SrtA(60−206)をコードするDNA配列をPCRで増幅した。
【0061】
プライマー15(5’−GGT TCC TCT AGA TCT TCC GGA AGC cag gct aag ccg cag att−3’:配列番号34)及びプライマー14を利用してリンカー(20A.A.)(SSGGGGSGGGGGGSSRSSGS:配列番号7)が連結されたリンカー(20A.A.)−SrtA(60−206)をコードするDNA配列をPCRで増幅した。
【0062】
プライマー15、プライマー16(5’−ATG ATG ATG GCG AGA GCT ACG GCT GCT GCC GCC CTT GAC CTC GGT AGC GAC AAA GA−3’:配列番号35)及びプライマー17(5’−TAA TGC GGC CGC TTA ATG ATG GTG ATG GTG ATG ATG ATG ATG GCG AGA GCT ACG GCT−3’:配列番号36)を利用してリンカー(20A.A.)(SSGGGGSGGGGGGSSRSSGS:配列番号7)がN末端に連結されてリンカー(7A.A.)(GGSSRSS:配列番号5)がC末端に連結されたリンカー(20A.A.)−SrtA(60−206)−リンカー(7A.A.)をコードするDNA配列をPCRで増幅した。
【0063】
プライマー15、プライマー18(5’−ACG ACG ACG ACG GCG CTC CAG TGC CTT AGC AGC GGC TTC CTT AGC AGC AGC CTC CTT AGC AGC TGC TTC TTT CGC TGC GGC TTC CGC TTC CAA CGC TTT C−3’:配列番号37)及びプライマー19(5’−TAA TGC GGC CGC TTA ACG GCG ACG ACG GCG ACG ACG ACG ACG GCG CTC CAG T−3’:配列番号38)を利用してリンカー(20A.A.)(SSGGGGSGGGGGGSSRSSGS:配列番号11)がN末端に連結されて(H4)2Lリンカー(50A.A.)(配列番号1)がC末端に連結されたリンカー(20A.A.)−SrtA(60−206)−(H4)2Lリンカー(50A.A.)をコードするDNA配列をPCRで増幅した。
【0064】
プライマー15及びプライマー20(5’−GTG CCC GCG TCT TGA CCT CGG TAG CGA CAA AGA TCTT−3’:配列番号39)を利用してPCRでリンカー(20A.A.)(SSGGGGSGGGGGGSSRSSGS:配列番号7)がN末端に連結されてCHリンカー(32 A.A.)のN末端のTRA−をコードするDNA配列を増幅してプライマー21(5’−GCT GTC CAA GGA GCT GCA GGC GGC GCA GGC CCG GCT GGG CGC GGA CAT G−3’:配列番号40)、プライマー22(5’−GCG GTA CTG CAC CAG GCG GCC GCA CAC GTC CTC CAT GTC CGC GCC CAG CCGG−3’:配列番号41)及びプライマー23(5’− GAG GTC AAG ACG CGG GCA CGG CTG TCC AAG GAG CTG CAG−3’:配列番号42)及びプライマー24(5’− TAA T GC GGC CGC TTA ATG ATG CTG ATG GTG ATG GCC GCGGTA CTG CAC CAG GC−3’:配列番号43)を利用してCHリンカーの部分を増幅してリンカー(20A.A.)(SSGGGGSGGGGGGSSRSSGS:配列番号7)がN末端に連結されてCHLリンカー(32A.A.)(TRARLSKELQAAQARLGADMEDVCGRLVQYRG:配列番号2)がC末端に連結されたリンカー(20A.A.)−SrtA(60−206)−CHLリンカー(32A.A.)をコードするDNA配列をプライマー15、24及び前記PCR産物(リンカー(20A.A.)−SrtA(60−206)−CHL(TRA−))及びCHLリンカー(32A.A.)(TRARLSKELQAAQARLGADMEDVCGRLVQYRG:配列番号2)の混合物を利用してoverlapping PCRで増幅した。
【0065】
プライマー15及びプライマー25(5’−CGG ATC ACC CTT GAC CTC GGT AGC GAC AAA GAT CTT−3’:配列番号44)を利用してリンカー(20A.A.)(SSGGGGSGGGGGGSSRSSGS:配列番号11)がN末端に連結されてAHリンカー(45A.A.)のN末端のKEQ−をコードするDNA配列を増幅してプライマー26(5’−GAG GTC AAG GGT GAT CCG AAA GCT GAC AAC AAA TTC−3’:配列番号45)及びプライマー27(5’− GTG ATG ATG ATG ATG GTG AGC TTT TGG TGC TTG TGC ATC AT−3’:配列番号46)を利用してpIG20 vectorをtemplateで使ってAHリンカーを増幅した。AHリンカー(45A.A.)(KEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNGFIQSLKDDPSQSAN LLAEAKKL:配列番号3)がC末端に連結されたリンカー(20A.A.)−SrtA(60−206)−AHLリンカー(45A.A.)をコードするDNA配列をプライマー15、プライマー28(5’−TAA TGC GGC CGC TTA ATG ATG GTG ATG GTG ATG ATG ATG ATG GTG AGC TTT TGG−3’:配列番号47)及び前記PCR産物(リンカー(20A.A.)−SrtA(60−206)−AHL(KEQ−))及びAHLリンカー(45A.A.)(KEQQNAFYEILHLPNLNEEQRNGFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKL:配列番号3)の混合物を利用してoverlapping PCRで増幅した。
【0066】
最後に、target(VL)−LPETG−リンカー(7A.A.)−Sortase−H9(
図1のII)をプライマー8、プライマー12及び前記PCR産物(target−LPETG−リンカー(7A.A.)及びリンカー(7A.A.)−SrtA)の混合物を利用してoverlapping PCRで増幅した。
【0067】
target(VL)−LPETG−リンカー(18A.A.)−Sortase−H9(
図1のIII)をコードする遺伝子をプライマー8、プライマー14及び前記PCR産物(target−LPETG−リンカー(18A.A.)及びリンカー(18A.A.)−SrtA)の混合物を利用してoverlapping PCRで増幅した。
【0068】
target(VL)−LPETG−リンカー(20A.A.)−Sortase−H9(
図1のIV)をコードする遺伝子をプライマー8、プライマー14及び前記PCR産物(target−LPETG−リンカー(20A.A.)及びリンカー(20A.A.)−SrtA)の混合物を利用してoverlapping PCRで増幅した。
【0069】
target(VL)−LPETG−リンカー(20A.A.)−Sortase−リンカー(7A.A.)−H9(
図2のI)をコードする遺伝子をプライマー8、プライマー17及び前記PCR産物(target−LPETG−リンカー(20A.A.)及びリンカー(20A.A.)−SrtA−リンカー(7A.A.))の混合物を利用してoverlapping PCRで増幅した。
【0070】
target(VL)−LPETG−リンカー(20A.A.)−Sortase−(H4)2Lリンカー(50A.A.)−H9(
図2のII)をコードする遺伝子をプライマー8、プライマー19及び前記PCR産物(target−LPETG−リンカー(20A.A.)及びリンカー(20A.A.)−SrtA−(H4)2Lリンカー(50A.A.))の混合物を利用してoverlapping PCRで増幅した。
【0071】
target(VL)−LPETG−リンカー(20A.A.)−Sortase−CHLリンカー(32A.A.)−H9(
図3のI)をコードする遺伝子をプライマー8、プライマー24及び前記PCR産物(target−LPETG−リンカー(20A.A.)及びリンカー(20A.A.)−SrtA−CHLリンカー(32A.A.))の混合物を利用してoverlapping PCRで増幅した。
【0072】
target(VL)−LPETG−リンカー(20A.A.)−Sortase−AHLリンカー(45A.A.)−H9(
図3のII)をコードする遺伝子をプライマー8、プライマー28及び前記PCR産物(target−LPETG−リンカー(20A.A.)及びリンカー(20A.A.)−SrtA−AHLリンカー(45A.A.))の混合物を利用してoverlapping PCRで増幅した。
【0073】
結果として出てきたDNA断片をNdeI及びNotIで切断して、融合タンパク質であるtarget−LPETG−他のリンカー−Sortase−R9、target−LPETG−他のリンカー−Sortase−H6、またはtarget−LPETG−他のリンカー−Sortase−H9を発現するベクターであるpET23aベクター(Novagen)でライゲーションした。
【0074】
融合タンパク質であるtarget−LPETG−他のリンカー−Sortase−R9、target−LPETG−他のリンカー−Sortase−H6、またはtarget−LPETG−他のリンカー−Sortase−H9は標的及びLPETG−他のリンカー−Sortase−R9、LPETG−他のリンカー−Sortase−H6、またはLPETG−他のリンカー−Sortase−H9をコードする配列の間にHindIIIsiteがある。その後、発現のために、すべての遺伝子作製物をNdeI及びHindIIIで切断して、pET23a−LPETG−他のリンカー−Sortase−R9、pET23a−LPETG−他のリンカー−Sortase−H6、またはpET23a−LPETG−他のリンカー−Sortase−H9にライゲーションした。
【0075】
実施例2:水溶性発現確認
すべての発現実験は、E.coli Origami2(DE3)またはBL21(DE3)を利用して行った。100mg/lのアンピシリン及び0.5%(w/v)のグルコースを含むdYT培地(30ml)に単一バクテリアコロニーを接種して、37℃で夜中培養した。LB、SB、またはdYT medium(100mg/lのアンピシリン、50mM K
2HPO
4)0.3lに前培養(preculture)を接種して37℃で培養した(バッフルがある1lフラスコ、1l flask with baffles、200rpm)。OD600値が0.6である時IPTGを最終濃度0.5mMになるべく添加して発現を誘導した。培養を18時間18℃に維持した。細胞を遠心分離で収集して(10,000rpm、10分、4℃)、30mlの50mM Tris−HCl(pH8.0)及び150mM NaClで懸濁して、超音波(sonication)で破砕した。組抽出を遠心分離して(10,000rpm、30分、4℃)、上澄み液を0.2mmフィルターでろ過して、下記実施例3のNi FFクロマトグラフィーに直接適用した。
【0076】
実施例3:Ni−NTA精製
溶解物の上澄み液を5mlのNi−NTA(GE)コラムにロードして、20倍コラム体積のバッファーA(50mM Tris−Cl、pH8.0、150mM NaCl、30mMイミダゾール、及び5mM BME)で洗浄後、5倍コラム体積のバッファーB(50mM Tris−Cl、pH8.0、150mM NaCl)で洗浄した。洗浄後、タンパク質−結合レジンのaliquoteを切断バッファー(5mM CaCl
2及び5mM tri−Glyを含むバッファーB)で平衡化させた後、25℃で1時間反応させた。
【0077】
該当過程は、
図5及び
図8に示した図式図のように進行される。
図5は、
図1のIの既存C末端にSortase Aを結合させた融合タンパク質を精製する過程を示し、
図8は、本発明のN末端にSortase Aを結合させた融合タンパク質を精製する過程を示す。
タンパク質純度は、SDS−PAGEゲルをクマシーブルー染色法で分析した。また、一部サンプルに対して発現及び精製の有無をウェスタンブロッティングで確認した。
【0078】
実施例4:Sortase融合タンパク質発現及び精製確認
前記融合タンパク質の構造面で目的タンパク質を基準として全体融合タンパク質のN末端またはC末端に目的タンパク質が連結された場合、精製効率の変化を確認した。
【0079】
図1のIに該当する融合タンパク質をpET21b、pET23a、及びpLICに挿入して得た発現ベクターで形質転換した宿主細胞(大腸菌、E.coli)から、前記実施例2によって収得した細胞溶解物で発現の有無を確認した。これを実施例3を介してNi−NTA(GE)コラムに結合させて精製を行って、コラムに結合した状態にあるタンパク質を確認した。
【0080】
前記発現及び精製は、クマシーブルー染色と目的タンパク質に結合されているMycタグを利用してウェスタンブロッティングを介して確認した。
【0081】
図6から分かるように、融合タンパク質はベクターを問わずよく発現して、
図7から分かるようにC末端に目的タンパク質を含む融合タンパク質はコラムに結合できず、また精製活性もほとんど確認できなかった(
図7のBの5、6lane)。
【0082】
目的タンパク質の位置が精製効率に及ぼす影響を確認するために、目的タンパク質の位置がN末端とC末端とで異なる場合に、融合タンパク質精製効率を比較した。これは実施例2及び実施例3に係る実験を介して確認した。
【0083】
図15で確認できるように、C末端に目的タンパク質が位置する場合には、切断されたタンパク質が発見されなかった(Cleaved)。それに比べて、N末端に目的タンパク質が位置する場合には、切断されたタンパク質が非常に高純度で存在するのを確認することができた。これは各場合にLS lane及びFT lane(flow through lane)の比較とコラムに残存するタンパク質(bound protein)を介して確認できるように、C末端に目的タンパク質が位置する場合には、融合タンパク質がコラムにほとんど結合をできないことに比べて、N末端に目的タンパク質が位置する場合には、融合タンパク質の結合率が非常に高くて結合されたタンパク質はほぼ切断されるのを確認することができる。
【0084】
実施例5:リンカー最適化実験
5−1:リンカーの長さ最適化
図1のII乃至IVに該当する融合タンパク質を発現するベクターをOrigami2(DE3)またはBL21(DE3)に形質転換して、これをLB、SBまたはdYT培地で培養して前記実施例2の方法を介して収得した細胞溶解物で発現の有無を確認した。これを実施例3に開示された通り、Ni_NTA(GE)コラムに結合させて精製を行って、コラムに結合した状態にあるタンパク質を確認した。
【0085】
前記発現及び精製は、クマシーブルー染色と目的タンパク質は、VHの場合にはHAタグ抗体、VLの場合にはmycタグ抗体を利用したウェスタンブロッティングを介して確認した。
【0086】
図9で確認できるように宿主細胞(Origami2またはBL21)間に差を見せずよく発現するのを確認した。
【0087】
また、
図10で確認できるように、細胞を培養する培養液間に大きい差を見せず融合タンパク質がよく発現するのを見ることができる(LS lane、Loading sample lane、33kDa位置)。また、コラムに結合されたタンパク質はほぼ全部が切断された(すべてのBP lane(bound protein lane)に33kDaバンドなし)。
【0088】
一方、リンカーの長さを異なるようにしたところ、7A.A.リンカー(GGSSRSS、配列番号5)、及び18A.A.リンカー(SSGGGGSGGGGGGSSRSS、配列番号6)ではタグが除去されたタンパク質(CP lane、cleaved protein lane、15kDa位置)が僅かに存在するのを確認することができる。その反面、20A.A.リンカー(SSGGGGSGGGGGGSSRSSGS、配列番号7)でタグが除去されたタンパク質が高純度で多量収得されるのを確認することができる。
【0089】
20A.A.リンカーを含むタンパク質が7A.A.または18A.A.リンカーを含むタンパク質より目的タンパク質の収得率が顕著に高い原因として、先に発現量を比較しすると(LS lane)、7A.A.リンカーを含む場合に比べては融合タンパク質が過発現する程度が高いと確認されるが、18A.A.リンカーを含む場合は発現自体は20A.A.リンカーを含む場合とほとんど差がなく過発現が起きるのを確認することができる。それに対して、各場合にLS lane及びFT lane(flow through lane)を比較すると分かるように、20A.A.の場合のみに厚く過発現した融合タンパク質(約33kDa)のバンドがコラムを通りながらFT laneでは消えることから、融合タンパク質がコラムに付着する比率が顕著に高いのを確認することができた。これは、コラムに残ったタグを含む除去されたタンパク質の部分(BP lane、Bound protein lane、20kDa位置)が20A.A.で顕著に高いことからも確認することができた。
【0090】
これにより、リンカー20A.A.が自己切断部位とSortaseとの間に挿入される構造が目的タンパク質の収得率を顕著に高めることを確認した。
【0091】
5−2:リンカーの追加による収得率変化の有無
リンカーがSortase AドメインのN末端の部分の他にもC末端の部分にも存在する場合、収得率に変化があるかを確認するために、Sortase AドメインとHisタグとの間にリンカーを追加で挿入した融合タンパク質を利用して比較した。
【0092】
図13では(1)目的タンパク質(VH)−HA−LPETG−リンカー(20A.A.)−Sortase A−His6の構造を持つ融合タンパク質を発現するベクターで形質転換した場合と(2)目的タンパク質(VH)−HA−LPETG−リンカー(20A.A.)−Sortase A−リンカー(7A.A.)−His6の構造を持つ融合タンパク質を発現するベクターで形質転換した場合を比較した。
【0093】
(1)と(2)の差は、Sotase A後にリンカー(7A.A.、GGSSRSS)の有無の差である。二つの融合タンパク質の発現、及びコラム結合程度は、クマシーブルー染色を介して確認した。
【0094】
図13で確認できるように、1または2の場合にいずれも融合タンパク質の部分(33kDa)に強いバンドができるのを確認することができた。しかし1の場合には、僅かながらコラムに結合するのが確認できるが(Bound proteins)、比較される2のコラムに結合したタンパク質は殆ど確認することができなかった。すなわち、Sortase AのC末端にリンカー(7A.A.)を追加するのは、融合タンパク質のコラム結合の妨げになった。
【0095】
5−3:リンカーの交換
前記多数のグリシン(Glycine)とセリン(Serine)と、一つのアルギニン(Arginine)からなるリンカーをドメイン間に干渉を減らすことができる多くの種類のリンカーに交換して、これによるコラム結合率または収得率を確認した。
【0096】
先に、螺旋形リンカー(helical linker)に交換した。螺旋形リンカーはA(EAAK)nA(n=2−5)の一般式を持つのを使って、特にnが4である(H4)2リンカー(LEA(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4ALE、50A.A.、配列番号1)を利用して
図2のI及びIIの構造を持つ融合タンパク質を発現して結合率を確認した。
【0097】
図12から分かるように、該当融合タンパク質は過発現は起きたが、コラムにほとんど結合しないことを確認することができる。このことから該当融合タンパク質に使われた螺旋形リンカーは結合率を増加させる効果を持つことができないと確認された。
【0098】
次に、正電荷性リンカー(CHL、TRARLSKELQAAQARLGADMEDVCGRL VQYRG、配列番号2)または負電荷性リンカー(AHL、KEQQNAFYEILHLPNLNEE QRNGFIQSLKDDPSQSANLLAEAKKL、配列番号3)に交換した。これらを利用した融合タンパク質の構造は、
図3のI及びIIに図式化されている。二つの融合タンパク質の結合率及び収得率を確認した。
【0099】
図14から分かるように、該当二つの融合タンパク質のうち正電荷性リンカーを含む場合には(CHL、
図14のA)、発現が非常に僅かになり、コラムに結合するタンパク質は殆どなかった。反面、負電荷性リンカーを含む場合には(AHL、
図14のB)、ある程度過発現になり、コラムにも一定量結合すると見られるが、切断されたタンパク質(Cleavage)が殆どないことを確認した。これらのことから、該当融合タンパク質に使われた電荷性リンカーは、結合率または収得率を増加させる十分な効果を持つことができないと確認された。
【0100】
実施例6:切断反応最適条件化
ソルターゼAが切断配列(LPXTG)を認識して切断機能をするためには、カルシウム及び/またはトリグリシン(triglycine)がなければならないと知られている。本発明では、切断反応の最適条件を確認するために、カルシウムまたはトリグリシンの有無と濃度条件を異なるようにして切断タンパク質収得率を確認した。
【0101】
具体的には、カルシウムとトリグリシンジュンの中一方の濃度を5mMに固定して、他方濃度を0、0.2、1、5mMの濃度で混合した切断−バッファーによる切断タンパク質収得率を両方とも入れなかった陰性対照群と比較した。
【0102】
図11で確認できるように、陰性対照群では、切断タンパク質を全く観察できず(約15kDa)、二つのうち一つでも入った場合には、切断タンパク質を観察することができた。但し、トリグリシン5mMを含みカルシウムの濃度を0乃至5mMに調節した場合には収得される切断タンパク質の量が差が殆どないことに比べて、カルシウム5mMを含みトリグリシンの濃度を0乃至5mMに調節した場合には、トリグリシンを含まなかった場合に切断タンパク質が少なく収得されるのを確認することができる(
図11のB)。しかし、トリグリシンが入った場合には収得される切断タンパク質量の差が殆どなかった。
【0103】
これはまさに、切断−バッファーに含まれたトリグリシンがソルターゼの切断機能に重要な役割をすることを意味して、濃度差は大きい意味を持たないことを意味する。
【0104】
実施例7:治療用抗体−薬物結合体製造の最適化
7−1:濃度最適化
本実施例では、効率的な薬物の接合に必要なトリグリシンの最適濃度条件を確立した。薬物としてはトリグリシンが融合したビオチンを使って、その濃度をそれぞれ0、10nM、100nM、500nM、1μM、10μM、100μM、500μM、1mMで反応バッファー(50mM Trisバッファー、pH8.0/150mM NaCl/5mM CaCl
2)と混合して反応させた後、目的タンパク質とビオチンの接合を陰性対照群と比較した。陰性対照群は、三つの条件(1:50mM Trisバッファー、pH8.0/2:50mM Trisバッファー、pH8.0+500μMトリグリシン−ビオチン/3:反応バッファー)を使った。目的タンパク質−ビオチンの接合反応は、ウェスタンブロットを利用して目的タンパク質に結合されているMycタグを利用して目的タンパク質の総濃度を確認して、ストレプトアビジンを利用して目的タンパク質とビオチンの接合反応度を確認した。
【0105】
その結果、三つ条件の陰性対照群では、目的タンパク質とビオチンの接合(約45kDa)が全く観察されず、500μM及び1mMのトリグリシン−ビオチンの濃度で飽和された接合反応が観察できて、100μMのトリグリシン−ビオチンの濃度で多量の接合反応を観察することができたが、500μM及び1mMの濃度でよりは反応度が低いことを確認することができた(
図16A)。
【0106】
7−2:反応時間最適化
前記実施例7−1で確立されたトリグリシン−ビオチンの濃度を利用して、最適反応時間条件を分析した。目的タンパク質の濃度は、500μM及び1mMの二つの濃度に固定して、時間を0、30分、1、2、3、4、6時間及び16時間で反応させた後、目的タンパク質とビオチンの接合を陰性対照群と比較した。
【0107】
実施例7−1のようにウェスタンブロットで分析した結果、陰性対照群では目的タンパク質とビオチンの接合が観察されず、500μMトリグリシン−ビオチンの濃度では4〜6時間で多量の接合反応が観察されて16時間接合反応で最も良い効率を示した。また、1mMトリグリシン−ビオチンの濃度では、4〜6時間及び16時間接合反応でいずれも優秀な接合効率を確認することができた(
図16B)。
【0108】
前記結果をまとめると、目的タンパク質−LPETG−リンカー(20A.A.)−Sortase−タグの構造を持つ融合タンパク質が優秀なコラム結合力及び優秀なSortase A自己切断活性で非常に高収得率を持つことが分かり、これを利用した治療用抗体−薬物結合体を製造したことが分かる。