【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の貼付剤は、支持体と、上記支持体の一面に積層一体化されてなる粘着剤層とを含んでいることを特徴とする。
【0009】
[粘着剤層]
粘着剤層は、アクリル系粘着剤、このアクリル系粘着剤に相溶せず且つ40℃で固体状である固体樹脂、可塑剤、及び薬物を含んでいる。
【0010】
可塑剤を用いることにより、アクリル系粘着剤を可塑化して、皮膚表面に対する粘着剤層の投錨性を向上させることができる。これにより、貼付剤を貼付する際に、皮膚に対して粘着剤層が優れたタックを発揮することができ、貼付剤を皮膚に確実に貼り付けることができる。さらに、固体樹脂を用いることにより、粘着剤層の凝集力を向上させることができる。これにより、人体の繰り返される動きに伴う粘着剤層の破壊が低減されて、人体の動きに貼付剤が追随することが可能となる。したがって、貼付剤を皮膚に貼付している間における、貼付剤の剥離を低減できる。このように、固体樹脂と可塑剤とを組み合わせて用いることにより、粘着剤層のタックと凝集力との両立を可能とし、貼付時に皮膚に対して優れたタックを発揮できると共に、貼付中に皮膚からの剥がれが低減された貼付剤を提供することが可能となる。
【0011】
さらに、固体樹脂と可塑剤とを組み合わせて用いることにより、薬物の投与後に、貼付剤を剥離除去する際に加わる高速の大きな剥離力に対しては抵抗が低く、皮膚刺激を起こさないように貼付剤を容易に剥離除去することも可能となる。
【0012】
(アクリル系粘着剤)
アクリル系粘着剤としては、アルキル(メタ)アクリレートを含有する単量体を重合させてなるアクリル系重合体が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。アクリル系重合体は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、1〜16が好ましく、1〜14がより好ましく、2〜14が特に好ましく、2〜12が最も好ましい。
【0014】
アルキル基の炭素数が1〜16のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びヒドロシキプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、n−オクチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)クリレートは、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
【0015】
アクリル系重合体としては、アルキル基の炭素数が3〜16のアルキル(メタ)アクリレートを含むアルキル基の炭素数が1〜16のアルキル(メタ)アクリレートの共重合体が好ましい。
【0016】
アルキル基の炭素数が3〜16のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、及びトリデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、ドデシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0017】
アクリル系共重合体としては、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートを含む単量体を共重合させてなるアクリル系共重合体が好ましく、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びドデシル(メタ)アクリレートを含む単量体を共重合させてなるアクリル系共重合体がより好ましく、ドデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、及び2−エチルヘキシルメタクリレートを含む単量体を共重合させてなるアクリル系共重合体が特に好ましい。
【0018】
アクリル系共重合体中におけるアルキル基の炭素数が1〜16のアルキル(メタ)アクリレート成分の含有量は、40重量%以上が好ましく、45〜95重量%がより好ましい。
【0019】
アクリル系共重合体中におけるアルキル基の炭素数が3〜16のアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、60重量%未満が好ましく、5〜55重量%がより好ましい。
【0020】
アクリル系共重合体の単量体は、アルキル(メタ)アクリレート以外の、他のモノマーを含有していてもよい。他のモノマーとしては、例えば、1−ビニル−2−ピロリドン、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニルなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0021】
アクリル系重合体の重合方法としては、従来公知の方法にて行なえばよい。例えば、重合開始剤の存在下で、上述した単量体を重合する方法が挙げられる。具体的には、所定量の単量体、重合開始剤、重合溶媒、及び必要に応じて架橋剤を反応器に供給し、60〜80℃の温度で4〜48時間に亘って加熱して、単量体をラジカル重合させる。
【0022】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−(2,4’−ジメチルバレロニトリル)などのアゾビス系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド(LPO)、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチルやトルエンなどが挙げられる。更に、重合反応は、窒素ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0023】
粘着剤層中におけるアクリル系粘着剤の含有量は、45〜90重量%が好ましく、50〜85重量%がより好ましく、55〜80重量%が特に好ましい。アクリル系粘着剤の含有量が低いと、粘着剤層のタックが低下することがある。アクリル系粘着剤の含有量が高いと、必要な量で薬物や可塑剤を粘着剤層に添加できないことがある。
【0024】
(固体樹脂)
粘着剤層は、上述したアクリル系粘着剤に相溶せず、且つ40℃で固体状である固体樹脂を含んでいる。なお、固体状とは、流動性を有しない状態をいう。
【0025】
アクリル系粘着剤の溶解性パラメーター(SP
A)と固体樹脂の溶解性パラメーター(SP
S)との差(|SP
S−SP
A|)は、0.5(cal/cm
3)
1/2以上が好ましく、0.8(cal/cm
3)
1/2以上がより好ましく、0.8〜3(cal/cm
3)
1/2が特に好ましく、1〜3(cal/cm
3)
1/2が最も好ましい。溶解性パラメーターの差を上記範囲内とすることによって、アクリル系粘着剤に相溶しない固体樹脂を得ることができる。
【0026】
固体樹脂はアクリル系粘着剤に相溶しないため、粘着剤層中では、アクリル系粘着剤と固体樹脂とが、混じり合って単一相を形成せずに、それぞれが相分離して独立した相として存在している。
【0027】
溶解性パラメーター(solubility parameter)とは、J. H. Hildebrandによって定義された、分子間の凝集エネルギーの単位体積あたりの密度の平方根である。具体的には、溶解性パラメーターδは、下記式(1)によって求められる。
δ=(E/V)
1/2 (1)
(式中、δは溶解性パラメーターであり、Eはモル凝集エネルギーであり、Vはモル容積である。)
【0028】
また、溶解性パラメーターは、例えば、「溶解性パラメーター適用事例集」(谷口彰敏、(株)情報機構、2007年3月15日、p.276〜282)などに記載されている値を参照することもできる。
【0029】
なお、アクリル系粘着剤の溶解性パラメーターは、各モノマーの重量百分率と各モノマーの溶解性パラメーターを二乗した値とを掛け、これにより得られた値の和の平方根とする。具体的には、下記式(2)によって求められる。
δ
A=[(φ
1×δ
12+φ
2×δ
22+・・・+φ
n×δ
n2)/100]
1/2 (2)
(式中、δ
Aはアクリル系粘着剤の溶解性パラメーターであり、φ
nは全モノマー中のn種目のモノマーの重量百分率(重量%)であり、δ
nはn種目のモノマーの溶解性パラメーターであり、nはモノマーの種類数を表す整数である。)
【0030】
固体樹脂としては、アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、スチレン系ブロック共重合体、セルロース誘導体、及び脂環族炭化水素樹脂などが挙げられる。固体樹脂は、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
アミノアルキル(メタ)アクリレートコポリマーとしては、例えば、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルの共重合体(例えば、BASF社製 商品名「EUDRAGIT(登録商標)RS」シリーズ)、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体(例えば、BASF社製 商品名「EUDRAGIT(登録商標)E」シリーズ)などが挙げられる。
【0032】
スチレン系ブロック共重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、及びスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体などが挙げられ、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。
【0033】
セルロース誘導体としては、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられ、エチルセルロースが好ましい。
【0034】
脂環族炭化水素樹脂は、脂環族飽和炭化水素樹脂及び脂環族不飽和炭化水素樹脂を含む。
【0035】
脂環族飽和炭化水素樹脂としては、例えば、水添テルペン系樹脂(ヤスハラケミカル社製 クリアロン(登録商標)P、M、Kシリーズなど)、水添ロジン及び水添ロジンエステル系樹脂(荒川化学工業(株)製 ペンセル(登録商標)A、荒川化学工業(株)製 エステルガム(登録商標)H、HPなど)、水添テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製 YSポリスターUHなど)、芳香族変性水添テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製 クリアロンM,K)、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3−ペンタジエンなどのC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂の水添加樹脂である水添ジシクロペンタジエン系樹脂(エクソンモービル社製 エスコレッツ(登録商標)5300、5400シリーズ、イーストマンケミカルジャパン(株)製 Eastotac(登録商標) Hシリーズ)、部分水添芳香族変性ジシクロペンタジエン系樹脂(エクソンモービル社製 エスコレッツ(登録商標)5600シリーズ)、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α−またはβ−メチルスチレンなどのC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂の水添樹脂(荒川化学工業(株)製 アルコン(登録商標)P及びMシリーズ)、上記したC5留分とC9留分の共重合石油樹脂の水添樹脂(出光興産(株)製 アイマーブ(登録商標)シリーズ)が挙げられ、C9系石油樹脂の水添樹脂が好ましい。
【0036】
脂環族不飽和炭化水素樹脂は、不飽和結合を有する脂環族炭化水素樹脂を意味する。脂環族不飽和炭化水素樹脂としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、カンフル、ジペンテンなどの環状テルペンを共重合したテルペン樹脂(未水添、ヤスハラケミカル社製 YSレジン(登録商標)PX、PXNシリーズ、ピノーバ社製 ピコライト(登録商標)など)、テルペンフェノール樹脂(未水添、ヤスハラケミカル社製 YSポリスター(登録商標)U,T,S,G,N、Kシリーズなど)、芳香族変性テルペン樹脂(未水添、ヤスハラケミカル社製 YSレジンTO、TRなど)、石油ナフサの熱分解で生成するC5留分から抽出した1,3−ペンタジエンを重合して得られる石油樹脂(JX日鉱日石エネルギー社製 ネオポリマー(登録商標)など)が挙げられ、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
【0037】
固体樹脂としては、スチレン系ブロック共重合体、セルロース誘導体、及び、脂環族炭化水素樹脂が好ましく、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、エチルセルロース、C9系石油樹脂の水添樹脂、テルペン樹脂、及び、テルペンフェノール樹脂がより好ましく、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、エチルセルロース、及び、テルペン樹脂が特に好ましい。これらの固体樹脂によれば、タックの低下を抑制しつつ優れた凝集力を粘着剤層に付与することができる。
【0038】
粘着剤層中における固体樹脂の含有量は、アクリル系粘着剤100重量部に対して、1〜25重量部が好ましく、1〜20重量部がより好ましく、5〜20重量部が特に好ましく、7〜20重量部が最も好ましい。固体樹脂の含有量が低いと、粘着剤層に十分な凝集力を付与できないことがある。また、固体樹脂の含有量が高いと、粘着剤層のタックを低下させることがある。
【0039】
(可塑剤)
粘着剤層は、可塑剤を含んでいる。可塑剤は、アクリル系粘着剤及び固体樹脂の双方に相溶できることが好ましい。
【0040】
可塑剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、アジピン酸イソプロピルなどのエステル類;ミリスチルアルコール、セタノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコールなどの1価アルコール類;オクタンジオールなどの2価アルコール類;オレイン酸、ステアリン酸などの酸類;流動パラフィンなどが挙げられる。なかでも、ミリスチン酸イソプロピル、オクチルドデカノール、及び流動パラフィンが好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、2−オクチルドデカノール及び流動パラフィンがより好ましい。なお、可塑剤は、単独で用いられても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
可塑剤は、アクリル系粘着剤や固体樹脂との組み合わせに応じて選択して用いることが好ましい。固体樹脂としてエチルセルロース及び/又はスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いる場合には、可塑剤は、オクチルドデカノールを少なくとも含んでいることが好ましく、オクチルドデカノールと、ミリスチン酸イソプロピル又は流動パラフィンとを組み合わせて含んでいることがより好ましく、2−オクチルドデカノールと流動パラフィンとを組み合わせて含んでいることが特に好ましい。
【0042】
粘着剤層中における可塑剤の含有量は、アクリル系粘着剤100重量部に対して、5〜80重量部が好ましく、10〜80重量部がより好ましく、20〜70重量部が特に好ましく、20〜35重量部が最も好ましい。可塑剤の含有量が低いと、粘着剤層のタックを低下させることがある。また、可塑剤の含有量が高いと、粘着剤層からの可塑剤の滲み出しや、粘着剤層のコールドフローを招くことがある。
【0043】
(薬物)
粘着剤層は、薬物を含んでいる。薬物としては、経皮吸収可能であればよく、例えば、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン、及びメマンチンなどのアルツハイマー治療薬;セレギリン及びロチゴチンなどのパーキンソン病治療薬;メチルフェニデートなどの注意欠陥・多動性障害治療薬;ジクロフェナク、インドメタシン、及びサリチル酸エチルなどの抗炎症薬などが挙げられる。
【0044】
薬物は、30℃で液体状であり且つ可塑化効果を有している液状薬物であることが好ましい。このような液状薬物としては、リバスチグミン、セレギリン、及びサリチル酸エチルなどが挙げられる。これらの液状薬物によれば、アクリル系粘着剤を可塑化して、皮膚表面に対する粘着剤層の投錨性をさらに向上させることができる。これにより、貼付剤を貼付する際に、皮膚に対して粘着剤層がより優れたタックを発揮することができる。なお、液体状とは、液体及び流動性を有する状態をいう。
【0045】
粘着剤層中における薬物の含有量は、アクリル系粘着剤100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、1〜30重量部がより好ましく、5〜25重量部が特に好ましい。薬物の含有量が低いと、薬物血中濃度を所望の範囲まで向上できないことがある。また、薬物の含有量が高いと、過剰の薬物が無駄となることがある。
【0046】
粘着剤層中において、固体樹脂(S)と、可塑剤(P
1)及び可塑化効果を有している液状薬物(P
2)の総量との重量比[(P
1+P
2)/S]は、1.5〜25が好ましく、2〜25がより好ましく、2.5〜15が特に好ましく、2.5〜10が最も好ましい。重量比[(P
1+P
2)/S]が低いと、粘着剤層のタックが低下したり、可塑化効果を有している液状薬物が経皮吸収されるにつれて粘着剤層の粘着力が低下することがある。重量比[(P
1+P
2)/S]が高いと、粘着剤層に十分な凝集力を付与できないことがある。
【0047】
(他の添加剤)
粘着剤層は、それぞれ上述したアクリル系粘着剤、固体樹脂、及び可塑剤以外にも、他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、吸収促進剤、安定化剤、充填剤などが挙げられる。
【0048】
充填剤は、粘着剤層の形状保持性を調整するために用いられる。充填剤としては、例えば、無水ケイ酸、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機充填剤;炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの有機金属塩類;乳糖、結晶セルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられる。
【0049】
粘着剤層中における充填剤の含有量は、アクリル系粘着剤100重量部に対して、15重量部以下が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。充填剤の含有量が高いと、粘着剤層のタックを低下させることがある。
【0050】
粘着剤層の厚みは、特に制限されないが、10〜250μmが好ましく、20〜200μmがより好ましく、40〜150μmが特に好ましい。薄い粘着剤層では、十分な量の薬物を含有できないことがある。また、厚い粘着剤層では、凝集力が低下することがある。
【0051】
[支持体]
本発明の貼付剤では、上述した粘着剤層は支持体の一面に積層一体化される。支持体は、粘着剤層中の薬物の損失を防ぎ、貼付剤に自己保持性を付与するための強度を有することが求められる。このような支持体としては、樹脂フィルム、不織布、織布、編布、アルミニウムシートなどが挙げられる。
【0052】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、酢酸セルロース、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート、可塑化酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。なかでも、揮散性のある薬物であっても粘着剤層からの薬物の損失を防げることから、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0053】
不織布を構成する素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、レーヨン、綿などが挙げられ、ポリエステルが好ましい。なお、これらの素材は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
支持体は、単層であっても、複数層が積層一体化された積層シートであってもよい。積層シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートシートと、不織布や柔軟な樹脂シートとが積層一体化された積層シートが挙げられる。
【0055】
支持体の厚みは、特に制限されないが、2〜200μmが好ましく、2〜100μmがより好ましい。
【0056】
[剥離ライナー]
本発明の貼付剤では、粘着剤層の一面に、剥離ライナーが剥離可能に積層一体化されていてもよい。剥離ライナーは、粘着剤層中の薬物の損失防止や粘着剤層を保護するために用いられる。
【0057】
剥離ライナーとしては、例えば、紙及び樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。剥離ライナーの粘着剤層と対向させる面には離型処理が施されていることが好ましい。
【0058】
[貼付剤の製造方法]
本発明の貼付剤の製造方法としては、例えば、(1)アクリル系粘着剤、固体樹脂、可塑剤、薬物、及び溶剤を含む粘着剤層溶液を、支持体の一面に塗工した後に乾燥させることにより、支持体の一面に粘着剤層を積層一体化し、必要に応じて、粘着剤層に剥離ライナーを、剥離ライナーの離型処理が施された面が粘着剤層に対向した状態となるように積層する方法、(2)上記粘着剤層溶液を剥離ライナーの離型処理が施された面上に塗工し、乾燥させることにより、剥離ライナー上に粘着剤層を形成し、この粘着剤層に支持体を積層一体化させる方法などが挙げられる。
【0059】
粘着剤層溶液は、アクリル系粘着剤、固体樹脂、可塑剤、薬物、及び溶剤を均一に撹拌することにより得られる。溶剤としては、アクリル系粘着剤と固体樹脂を溶解できるものであれば限定されないが、例えば、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、及び酢酸エチルが好ましい。