特許第6176459号(P6176459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6176459外壁温度が低い容器の予備成形体の加熱方法および予備成形体の加熱ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6176459
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】外壁温度が低い容器の予備成形体の加熱方法および予備成形体の加熱ユニット
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/64 20060101AFI20170731BHJP
   B29B 13/02 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   B29C49/64
   B29B13/02
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-516414(P2014-516414)
(86)(22)【出願日】2012年6月18日
(65)【公表番号】特表2014-520015(P2014-520015A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】FR2012051366
(87)【国際公開番号】WO2012175854
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年5月22日
(31)【優先権主張番号】1155561
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513287989
【氏名又は名称】シデル パーティシペイションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】フェイロレイ,ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ベレック,キャロライン
(72)【発明者】
【氏名】メイロット,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】デリアン,ミカエル
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−034827(JP,A)
【文献】 特開平06−198726(JP,A)
【文献】 特開平07−068633(JP,A)
【文献】 特開2011−104934(JP,A)
【文献】 特表2010−513081(JP,A)
【文献】 特開昭56−142024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C49/00−49/80
B29B13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備成形体(2)から成形により中空体を製造するための、プラスチック材料製予備成形体(2)の加熱方法であって、
− 赤外線を放出する単色または疑似単色の電磁放射線源(9)を備えた炉(7)に、前記予備成形体(2)を挿入すること;
− 所定の放出力に調節した前記放射線源(9)からの放射線に、前記予備成形体(2)を所定の曝露時間にわたって曝露すること;
− 前記炉(7)の出口に配置された温度プローブ(15)により、前記予備成形体(2)の外壁(16)の温度(Text)を測定すること
からなる作業工程を含む、方法において、
− 前記炉(7)の出口で測定した前記外壁(16)の前記温度(Text)が、Tから1.8・T(Tは原料のガラス転移温度)の範囲外である限り、曝露時間および/または放出力を調整することからなる作業工程を含み、
前記予備成形体(2)の内壁(17)の温度(Tint)が、前記外壁(16)の温度(Text)よりも高いこと、を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記温度測定は、温度カメラ(15)を用いて前記予備成形体(2)の外壁の温度特性を作成することからなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記曝露時間の変更は、いくつかの放射線源(9)を切るか、あるいは放射線源(9)のグループ(13)を切ることによって実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記曝露時間の変更は、前記炉(7)内を移動する前記予備成形体(2)の速度を変更することによって実施されることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
処理ユニットのメモリに保存され、かつ/または処理ユニットの読み出し器で読み出し可能な記憶媒体に保存されるようになっているコンピュータプログラム製品であって、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の方法を実施するための命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項6】
プラスチック材料製の中空予備成形体(2)の加熱装置であって、
− 前記予備成形体(2)を所定の放出力で所定の曝露時間にわたって加熱するための、赤外線を放出する単色または疑似単色の複数の電磁放射線源(9)を備えた炉(7)、
− 前記炉(7)の出口に配置され、前記予備成形体(2)の外壁(16)の温度(Text)を測定するように配列された温度プローブ(15);
を備える加熱装置において、
− 前記温度(Text)が、Tから1.8・T(Tは原料のガラス転移温度)の範囲外である限り、放出力および/または曝露時間を調整するようにプログラムされた制御ユニット(14)をさらに備え
前記予備成形体(2)の内壁(17)の温度(Tint)が、前記外壁(16)の温度(Text)よりも高いこと、を特徴とする、加熱装置(1)。
【請求項7】
前記電磁放射線源(9)は、レーザーであることを特徴とする、請求項6に記載の加熱装置(1)。
【請求項8】
前記電磁放射線源(9)は、レーザーダイオードであることを特徴とする、請求項7に記載の加熱装置(1)。
【請求項9】
前記電磁放射線源(9)は、VCSELタイプのレーザーダイオードであることを特徴とする、請求項8に記載の加熱装置(1)。
【請求項10】
前記電磁放射線源(9)は、出力を個別に調整できる列(13)に編成されることを特徴とする、請求項7〜9のうちいずれか一項に記載の加熱装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器のなかでもとりわけ瓶、小瓶を、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック材料製の予備成形体から成形することによる製造に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の文では、第1のブローイングに供された中間容器であって、最終容器を得るために第2のブローイングに供されることになっている中間容器を指すことがあっても、予備成形体はプリフォームであると仮定する。
【0003】
容器の製造は、主に2工程からなる:赤外線を放出する電磁放射線源に予備成形体を曝露する加熱工程、およびこれに続く成形工程で、このように加熱した予備成形体に加圧流体を注入して容器の最終形状を作る工程である。
【0004】
プリフォームの壁厚は一般に数ミリメートルであるのに対し、最終容器の厚みは1ミリメートル未満(通常は約10分の数ミリメートル)である。よって、(軸方向と径方向の2軸延伸を受ける)原料の変形率は、プリフォームの厚み部分によって異なることがわかる。さらに正確には、プリフォームの内壁の延伸率は、外壁の延伸率よりも高く、その割合は、ブローイング時の壁面の変化と一致する。
【0005】
仕上がり容器の形状が複雑であり、そのために容器の内壁および外壁の最終面積を算出しにくくなることから、対象となる壁の径方向の延伸率と軸方向の延伸率との積で規定される、壁ごとの二方向の延伸率を算出して、原料の変形率を推定する。
【0006】
27g、外径Dextが22.26mm、内径Dintが14.56mm、首部から下の外側の高さLextが85mm、首部から下の内側の高さLintが79mmのプリフォームであって、平均直径Dが65.5mm(容器の内径と外径との差は無視してよい)で、首部から下の高さの平均Lが243mmである容量0.5lの容器を形成することになっているプリフォームの例を挙げる。
【0007】
外壁の径方向延伸率TDextおよび軸方向延伸率TAextは、以下のように算出される。
【0008】
【数1】
【0009】
したがって、BOextと表記する外壁の二方向の延伸率は、以下のように算出される。
BOext=TDext×TAext=2.95×2.86=8.44
【0010】
内壁の径方向延伸率TDintおよび軸方向延伸率TAintは、以下のように算出される。
【0011】
【数2】
【0012】
したがって、BOextと表記する外壁の二方向の延伸率は、以下のように算出される。
BOint=TDint×TAint=4.5×3.08=13.86
【0013】
前述の計算から、内壁の双方向率BOintと外壁の双方向率BOextとの比Rが求められる。
【0014】
【数3】
【0015】
換言すれば、プリフォームの内壁の二方向の延伸率は、外壁の二方向の延伸率よりもおよそ65%高い。
【0016】
このように内壁と外壁との間に延伸の差があることで、壁間の原料に問題が生じ、これによって容器の型を取るのが困難になり、ひいては容器を正しく成形することが困難になる。
【0017】
このような理由から、外壁よりも高い変形能力を内壁に与える必要があることは明らかである。この枠組みでは、内壁温度Tintが外壁温度Textよりも高くなるように、つまり、温度差ΔT(ΔT=Tint−Text)が正になるように、加熱プロセスを適応させることが知られている。実際、従来の(とりわけハロゲンランプによる)加熱プロセスでは、温度差ΔTは、最初は負で、外壁温度Textが内壁温度Tintよりも高い。
【0018】
仏国特許第2935924号明細書(SIDEL)(特許文献1)に説明されているように、このような正の温度差を得るために、本質的に2つのパラメータを利用する。1つは、外壁を冷却するようにプリフォームに送風することであり、もう1つは、熱伝導によって温度が均衡するように、加熱終了後にプリフォームの温度を安定させる時間である。
【0019】
しかしながら、温度差を細かく制御することは困難である。
【0020】
さらに、エネルギー収支が比較的悪い。実際、内部温度を所望の値にもっていくのに必要な放射線出力が大きいだけでなく(これに比例して多くの電力が必要になる)、電力を余分に費やして外壁に送風し、外壁温度を下げる必要もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】仏国特許第2935924号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】「Modelisation et optimisation numerique de l’etape de chauffage infrarouge pour la fabrication de bouteilles en PET par injection−soufflage(射出ブロー成形でPETボトルを製造するための赤外加熱工程のデジタル式モデル化および最適化)」、M.Bordival、Ecoledes Mines de Paris、2009年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
第1の目的は、内壁と外壁との間の温度差をよりよく制御して、容器の成形能力を改善することである。
【0024】
第2の目的は、最終容器の質を維持しながらも(好ましくは改善しながらも)、加熱のエネルギー収支を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このようにするために、第一に、予備成形体から成形により中空体を製造するための、プラスチック材料製予備成形体の加熱方法であって、
− 赤外線を放出する単色または疑似単色の電磁放射線源を備えた炉に、予備成形体を挿入すること;
− 所定の放出力に調節した放射線源からの放射線に、予備成形体を所定の曝露時間にわたって曝露すること;
− 予備成形体の外壁の温度を測定すること;
− 炉の出口で測定した予備成形体の温度Textが、Tから1.8・T(Tは原料のガラス転移温度)の範囲外である限り、曝露時間および/または放出力を調整すること
からなる作業工程を含む、方法を提供する。
【0026】
これらの条件では、予備成形体の内壁温度は、外壁温度よりも高いまま、つまり温度差は正であることを確認した。その結果、比較的少ない消費電力の為に、予備成形体のブローイングがさらに良好になり、とりわけ最終製品に残る問題が少なくなる。
【0027】
温度測定は、スポット測定とすることができ、あるいは温度カメラを用いて予備成形体の外壁の温度特性を作成することによるものであってもよい。
【0028】
曝露時間の変更は、いくつかの放射線源を切るか、あるいは放射線源グループを切るか、またあるいは炉内を移動する予備成形体の速度を変更することによって実施することができる。
【0029】
第二に、処理ユニットのメモリに保存され、かつ/または処理ユニットの読み出し器で読み出し可能な記憶媒体に保存されるようになっているコンピュータプログラム製品であって、上記に提起した作業を実施するための命令を含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0030】
第三に、プラスチック材料製の中空予備成形体の加熱装置であって、
− 予備成形体を所定の放出力で所定の曝露時間にわたって加熱するための、赤外線を放出する単色または疑似単色の複数の電磁放射線源を備えた炉、
− 炉の出口に配置され、予備成形体の外壁温度を測定するように配列された温度プローブ;
− 炉の出口で測定した予備成形体の温度Textが、Tから1.8・T(Tは原料のガラス転移温度)の範囲外である限り、放出力および/または曝露時間を調整するようにプログラムされた制御ユニット
を備える、加熱装置を提供する。
【0031】
電磁放射線源は、出力を個別に調整できる列に編成されるものであることが好ましく、例えばレーザーであり、とりわけレーザーダイオードである。特定の一実施形態によれば、電磁放射線源は、VCSELタイプのレーザーダイオードである。
【0032】
本発明のその他の目的および利点は、添付の図面を参照して以下に記載した好適な実施形態についての説明に照らし合わせることで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】点状の赤外線源を張り巡らした壁を備える加熱装置であって、プリフォームが前を移動する加熱装置を部分的に示す斜視図である。
図2図1の加熱装置の横断面図である。
図3】プリフォームの壁厚における様々な温度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および図2には、容器の予備成形体2の加熱装置1を概略的に示している。予備成形体2は、この場合はプリフォームであるが、成形の一時的作業を経た中間容器であって、1つまたは複数の最終作業を経て最終容器を得るようになっている中間容器のことであってよい。
【0035】
ポリエチレンテレフタレート(PET)などの熱可塑性原料で作製された各プリフォーム2は、首部であって、加熱に供されない(またはほとんど供されない)ために形状が最終的なものである首部3、および胴部であって、首部3の反対側で半球状(場合によっては円錐状)の底部5が端部になっている胴部4を備えている。
【0036】
首部3と胴部4との間の接合部に、プリフォーム2は、フランジ6を有し、このフランジによってプリフォーム2は、容器の様々な製造工程で懸架された状態になる。
【0037】
ただし、加熱装置1内では、プリフォーム2は、回転台と呼ばれる回転支持体に固定され、この回転台は、プリフォーム2を主軸A周りに回転させて、首部から下の部分(胴部4および底部5を合わせた部分)を熱に曝露させる。各回転台は、円盤によって駆動されるチェーンに固定され、チェーンまたはベルトなどの固定式または可動式の噛み合い手段と噛み合うピニオンを備えており、これによって、プリフォーム1の周縁にある各点が、プリフォーム2の軌道上にサイクロイドを描き、このサイクロイドの周期は、プリフォーム2が軸A周りを完全に1回転するのにたどる距離に等しい。
【0038】
図1および図2には、首部3を上向きにしたプリフォーム2を示したが、この表示は任意で説明的なものであり、プリフォーム2の首部を下に向けてもよい。
【0039】
加熱装置1は、少なくとも1つの放射式の壁8を有する炉7を備え、プリフォーム2は、この壁に対面する形で移動する。この壁8には、複数の電磁放射線源9が張り巡らされ、電磁放射線源は、単色(または疑似単色)であると同時に指向的にプリフォーム2に向かって赤外領域の放射線を放出している。
【0040】
変形例では、加熱装置は、放射線源を張り巡らした複数の穴を備え、この穴にプリフォームを収容して個別に加熱する。
【0041】
理論的には、単色放射線源が、単一周波数の正弦波を放出する理想の放射線源である。換言すれば、単色放射線源の周波数スペクトルは、スペクトル幅がゼロの単一のスペクトル線で構成される(ディラック)。
【0042】
実際には、このような放射線源は存在せず、実際の放射線源は最良の状態でも準単色、つまりその周波数スペクトルは、スペクトル幅が小さいがゼロではない帯域に広がり、放射線強度が最大である主要周波数上に集中している。しかし、言葉を誤用して、このような実際の放射線源を単色と称するのが慣わしである。また、異なる主要周波数に集中している複数の狭帯域を含む離散スペクトルに、準単色状態で放射する放射線源を「疑似単色」と称する。マルチモード源ともいう。
【0043】
実際、放射線源9は、隣接配置と積層配置で編成されてマトリクス10を形成する。例えばこれは、レーザー源9であり、好ましくはレーザーダイオード源である。好適な実施形態によれば、放射線源9は、垂直共振器面発光レーザーダイオード(VCSEL)であり、各ダイオード9は、例えば、公称単位電力が数十ミリワットで、波長が例えば約1μmの短赤外線および中赤外線の範囲内にあるレーザービーム11を放出する。
【0044】
プリフォーム2の規模では、ダイオード9を点光源と考えることができ、この点光源それぞれが、指向性の放射線を放出する、つまり、円錐状の光ビーム11の形態で、円錐頂点の立体角度の半分が封鎖され、好ましくは10°から60°の間で放出する(頂点の角度の半分が10°であるビーム11を示した図2を参照)。ビーム11は、回転対称性であってもよいし(すなわち断面が円形)、あるいは回転対称性でなくてもよい(例えば断面が楕円形)。
【0045】
吸収板12(または反射板)は、放射式の壁8とプリフォーム2との間の間隙で、フランジ6の高さに水平に配置されて、首部3を赤外線から保護する。
【0046】
本出願の目的は、レーザーダイオード9のマトリクス10の構造を詳細に説明することではない。そのため、マトリクス10を簡易にプレートの形態で図示しており、ダイオード9は点の形態で見えている。
【0047】
図1に示した好適な実施形態によれば、マトリクスは、ダイオード9の複数の隣接し独立したグループ13に分割され、各グループ13は、マトリクス10の部分集合体を形成するダイオードの列で構成される。ダイオード9の列13同士は、同じ幅であっても異なる幅であってもよい。異なる場合、この幅は、プリフォーム2の軌道に沿って縮小(または逆に増大)することができる。
【0048】
この構造にすることで、所定の1つまたは複数のグループ13のダイオード9から放出される出力を調整するか、所定の1つまたは複数のグループ13のダイオード9を切る(つまり消す)かして、ダイオード9から放出される放射線の出力(強度のことでもある)を調整することができる。
【0049】
変形例では、または補足的に、加熱装置1は、プリフォーム2の移動速度、つまりプリフォーム2が放射線に曝露される時間を調整できるように構成することができる。
【0050】
したがって、放出される放射線の出力を調整し、かつ/またはプリフォーム2が炉7内を移動する速度を調整して、プリフォーム2が受ける放射線の出力を調整することも可能である。
【0051】
ダイオード9の各列13の出力を調整することは、コンピュータに搭載されこのためにプログラムされたプロセッサ形態の制御装置14を用いて、電子的に実現される。ダイオード9の電力は、制御モニタ上で可視化できるものであり、所定の最小値Pmin(例えばゼロ)と、例えばダイオード9の公称電力に相当する最大値Pmaxとの間である。制御装置14は、点灯または消灯すべき(つまり値Pminに調節すべき)ダイオード9のグループ13の選択も命令するとともに、この場合はプリフォーム2の移動速度も命令する。このようにするために、制御装置14は、例えば歯車に接続され、この歯車上をプリフォーム2駆動用のチェーンまたはベルトが回る。
【0052】
図1に示したように、加熱装置1は、制御装置14に接続された温度プローブ15を具備しており、プローブ15が炉の中にあっても、あるいは図1に示したように炉の外部にあっても、炉7の出口でプリフォーム2の外壁16の温度Textを測定することができる(その結果、プローブ15が測定した温度は、プリフォーム2が炉7から出る瞬間の外壁16の実際の温度と比較的正確に一致する)。
【0053】
温度Textの測定は、(例えばプリフォーム2の半分の高さの所で行うスポット測定とすることができ、この場合プローブ15は、単なる温度センサである。しかし、好ましくは、温度測定は、フランジ6の下にある胴部4の少なくとも一部(および場合によっては全部)に対する外壁16の温度プロファイルを作成するためのものである。この場合、プローブ15は、胴部4に対面して垂直に分散する一連のセンサを備えるか、あるいは、図1に示したように、外壁16の完全なサーモグラフィを実現するように配置された温度カメラ(赤外線カメラ)の形態をとることができる。
【0054】
測定値(または温度カメラの場合はサーモグラフィデータ)は、制御装置14に通信され、このようにして測定された温度またはこのように作成された温度プロファイルに応じて、制御装置は、
− ダイオード9のいくつかのグループ13を部分的に消灯し、かつ/またはプリフォーム2の移動速度を適応させることで、プリフォーム2を放射線源9からの赤外線に曝露する時間を調整すること、
− および/または、放射線源に供給される電力(よって放射線源9から放出される出力も)を全体または部分的に調整し、かつ好ましくは、列13ごとに、プリフォーム2の外壁16の温度Textを、下限が原料のガラス転移温度T(Tと表記)で上限が1.8・Tである所定範囲内:
≦Text≦1.8・T
に維持するように調整すること
を命令するようにプログラムされる。
【0055】
制御装置14は、温度が[T;1.8・T]の範囲外である限り、放射線源9の点灯もしくは消灯、プリフォーム2の移動速度、および/または放射線源9の出力に対して調整を実施する。
【0056】
好適な実施形態によれば、[T;1.8・T]の範囲内にある指定温度Tが、制御装置14内でプログラムされ、この制御装置は、温度Textが指定温度Tに等しくない限り(または、例えば約数度の所定公差を除いて実質的に等しくない限り)、調整を実施する。
【0057】
温度をスポット測定する場合、問題となる温度Textは、単なる温度センサに単純化したプローブ15で測定した温度である。
【0058】
カメラ15を用いて実施するサーモグラフィ用の測定の場合、温度Textは、外壁16のすべての点で測定した温度を指し、つまり、外壁16で測定した温度すべてに対して上記の不均等を確認しなければならないということである。処理時間を節約するため、制御装置14をプログラムして、値全体の最小値Tminおよび最大値Tmaxを測定した温度プロファイルを引き出すことができ、これによって、以下の2つの条件を確認するだけでよい:
min≧T
max≦1.8・T
【0059】
外壁のガラス転移温度Tを超えると、定義上、熱可塑性ポリマーは破損せずに変形可能であることがわかる。
【0060】
この場合、外壁16の温度Textが事実上ガラス転移温度Tを上回っているだけでは十分ではなく、外壁16の反対側にあるプリフォーム2の内壁17の温度も同じようにならなければならない。ところが、意外なことに、内壁17の温度(Tintと表記)は、以下の作業条件においては、外壁16の温度Textよりも高いことを確認した:
− プリフォーム2が曝露される放射線が、赤外線かつ単色である(または、説明したように、疑似単色である);
− プリフォーム2の材料が、赤外領域の半透明ポリマーである、つまりこの領域の放射線を部分的にしか通さない;
− 外壁の温度が、上記に示した限度(Tおよび1.8・T)内に維持されている。
【0061】
半透明の環境をさらに詳細に定義するために、以下の論文を参照するとよいだろう:「Modelisation et optimisation numerique de l’etape de chauffage infrarouge pour la fabrication de bouteilles en PET par injection−soufflage(射出ブロー成形でPETボトルを製造するための赤外加熱工程のデジタル式モデル化および最適化)」、M.Bordival,Ecole des Mines de Paris、2009年(非特許文献1)。PETは、典型的な半透明ポリマーである。
【0062】
これらの条件下では、温度は、外壁15と内壁16との間であるプリフォーム2の厚みによって変化し(図3に実線で表示)、内壁で著しく上昇することも確認した。
【0063】
このことから、プリフォーム2の厚み部分で熱が分散するということであり、このプリフォームは、以下の点で公知の方法によるプリフォームとは異なる:
− 温度差(ΔT=Tint−Text)が負であれば、温度は外壁と内壁との間で低下する(図3の長い一点鎖線)ということであるから、これは制御していない従来の加熱に相当する。
− 温度差が正であれば、温度は外壁と内壁との間で平均して上昇するということであるが、厚み部分にピークがあるため(図3の短い一点鎖線)、これは、強制的な送風手段を用いて外壁を冷却することによる制御を試みる従来の加熱に相当する。
【0064】
本発明の場合、プリフォームの厚み部分の温度は厳密に上昇し、これによって、容器形成時に生じる問題が最小になっている間にブローイングを実施することができ、温度差(ΔT=Tint−Text)が正であり、外壁15と内壁16との間に温度ピークがないことで、両壁15、16の間に生じる延伸率の差が相殺される。その結果、材料から型を取る能力が増大する(よって容器成形能力も増大する)。
【0065】
さらに、温度差が正の状態で、所望の温度プロファイルを得るために供給する必要があるエネルギー量は、外壁を高温で加熱して内壁への十分なエネルギー転移を行ったのちに外壁に送風し温度を下げて温度差を得るという公知の技術を適用して供給する必要のあるエネルギー量よりも少ない。したがって、エネルギー消費量が節約されることになる。
【0066】
出力および/または曝露時間のパラメータ制御は、制御装置14で実施する。
【0067】
さらに詳細には、外壁15の温度がガラス転移温度よりも低いという仮定では、制御装置14は、
− 例えば、1つまたは複数の列12に対して局所的に、あるいはマトリクス10全体に対して所定の出力割合を増やして、放射線源9が放出する出力を増大させること;
− かつ/または点灯しているダイオード9のグループ13の数を増やすこと;
− かつ/または炉7内を移動するプリフォーム2の速度を減速すること
を命令する。
【0068】
したがって、外壁15の温度Textが1.8・Tよりも高いという逆の仮定では、制御装置14は、
− 例えば、1つまたは複数の列12に対して局所的に、あるいはマトリクス10全体に対して所定の出力割合を下げて、放射線源9が放出する出力を低減すること;
− かつ/または点灯しているダイオード9のグループ13の数を減らすこと;
− かつ/または炉7内を移動するプリフォーム2の速度を加速すること
を命令する。
【0069】
この2つの作業のうちの一方のみを、制御装置13によって命令することができる。
【0070】
生産効率を維持することが優先であれば、好適な選択肢は、生産効率を調整せずに出力を調整することである。出力を維持することが優先であれば(例えばエネルギー節約を実現することが目的の場合)、好適な選択肢は、移動速度を調整することである。
【0071】
しかし、(最小にしたい)消費出力と(最大にした)生産効率との間の妥協点を得るために、制御装置14が2つの作業を同時に命令することを検討してもよい。
図1
図2
図3