特許第6176475号(P6176475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6176475
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】シェードのガイド保持装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/02 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
   B60J7/02 B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-61966(P2013-61966)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-184895(P2014-184895A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】木谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】松下 淳
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−186901(JP,A)
【文献】 特開2005−186892(JP,A)
【文献】 実公昭52−025851(JP,Y2)
【文献】 特表2001−527374(JP,A)
【文献】 特開平09−300974(JP,A)
【文献】 実開昭63−188220(JP,U)
【文献】 特開2007−261336(JP,A)
【文献】 実開平06−085109(JP,U)
【文献】 実開昭59−037126(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェード部材の一端が取り付けられ、車両の窓部に延在するように配置される一対のガイドレールに沿って移動するガーニッシュを前記一対のガイドレールに保持するガイド保持装置であって、
前記ガーニッシュは、前記一対のガイドレールに対向する端部に、前記ガーニッシュの長手方向に延在する保持孔であって、前記一対のガイドレールが延在する方向と異なる方向に第一の幅をもって対向する一対の第一の内面を有する保持孔を備え、
前記ガイド保持装置は、
前記一対のガイドレールのそれぞれにおいて、摺動面に沿って摺動するように前記ガイドレール内に収容される摺動部を一端に有するベース部であって、その一端から反対側の他端に向かって延在し、前記保持孔の前記一対の第一の内面と対向するようにその他端から前記保持孔に挿入可能なベース部と、
前記保持孔の前記一対の第一の内面と対向する前記ベース部の両面のそれぞれに取り付けられる弾性力を有する一対の押圧部であって、その一対の押圧部のそれぞれは前記ベース部の前記両面からの高さが最も高い最頂部から高さが徐々に低くなるように前記ベース部の前記一端と前記他端とのそれぞれの方向に向かって延在する外形面を有する前記一対の押圧部とを備え、
前記一対の押圧部のそれぞれの最頂部間の幅は前記保持孔の前記第一の幅より大きく、
前記一対の押圧部が前記一対の第一の内面と対向するように前記他端から前記ガーニッシュの前記保持孔に挿嵌された状態において、前記一対の押圧部のそれぞれの外形面は、3点での接触で、前記一対の第一の内面のうち対向する面を押圧して前記ガーニッシュを保持し、
前記外形面は、前記最頂部から離れて前記ベース部の前記一端側に配置される第一の肩部と、前記最頂部から離れて前記ベース部の前記他端側に配置される第二の肩部とを有し、前記一対の押圧部のそれぞれにおいて、前記ベース部から前記第一の肩部までの区間の肉厚および前記ベース部から前記第二の肩部までの区間の肉厚は、それぞれ、前記第一の肩部から前記第二の肩部までの区間の肉厚より厚いガイド保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガイド保持装置であって
前記3点での接触は、前記一対の押圧部のそれぞれにおいて、前記最頂部と前記第一の肩部との間および前記最頂部と前記第二の肩部との間に隙間をもって、前記最頂部と前記第一の肩部と前記第二の肩部とが前記一対の第一の内面のうち対向する面に接触するものであるガイド保持装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガイド保持装置であって、
前記ガイド保持装置が前記ガーニッシュの前記保持孔に挿嵌される前の状態では、前記一対の押圧部の前記第一の肩部間の幅と前記第二の肩部間の幅とは、それぞれ、前記第一の幅より大きいガイド保持装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のガイド保持装置であって、
前記一対の押圧部は、前記ガイド保持装置が前記ガーニッシュの前記保持孔に挿嵌された状態において、前記第一の肩部と前記第二の肩部とが前記一対の第一の内面のうち対向する面に接触するそれぞれ箇所において、
前記最頂部側の面が前記一対の第一の内面のうち対向する面となす傾斜角度は、前記最頂部と反対側の面が前記一対の第一の内面のうち対向する面となす傾斜角度よりも大きいガイド保持装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載のガイド保持装置であって、
前記ベース部は矩形の平板形状であって、
前記一対の押圧部は、前記ベース部の2つの長辺側の長手方向に沿って、それぞれ2個ずつ並んで配置されるガイド保持装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のガイド保持装置であって、
前記ガーニッシュの長手方向に延在する保持孔は、前記第一の内面と角度をなし第二の幅をもって互いに対向する一対の第二の内面を備え、
前記ベース部は、前記一対の第二の内面のそれぞれの面と対向して前記ベース部の長手方向に沿って延在する一対のリブ構造を有し、
その一対のリブ構造同士の最外幅は、前記第二の幅であるガイド保持装置。
【請求項7】
車両の窓部でシェード部材により遮光量を調節するシェード装置であって、
車両の窓部に延在する一対のガイドレールと、
前記シェード部材の一端が取り付けられ、前記一対のガイドレールに沿って移動するガーニッシュであって、前記ガーニッシュは前記一対のガイドレールに対向する端部に前記ガーニッシュの長手方向に延在する保持孔であって、前記一対のガイドレールが延在する方向と異なる方向に第一の幅をもって対向する一対の第一の内面を有する保持孔を有する前記ガーニッシュと、
請求項1から5のいずれか一項に記載のガイド保持装置とを備えるシェード装置
【請求項8】
請求項7に記載のシェード装置であって、
前記ガーニッシュの長手方向に延在する保持孔は、前記第一の内面と角度をなし第二の幅をもって互いに対向する一対の第二の内面を備え、
前記ガイド保持装置は、前記一対の第二の内面のそれぞれの面と対向して前記ベース部の長手方向に沿って延在する一対のリブ構造を前記ベース部に有し、その一対のリブ構造同士の最外幅は前記第二の幅であるシェード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のシェード装置のシェードを保持して摺動するガーニッシュをガイドレールに保持するガイド保持装置と、それを用いたシェード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、図1に示すように、自動車または電車等(以下、「車両」とよぶ)の窓22の室内側には、遮光のためのロール型シェード装置が配置される。
このようなシェード装置では、たとえば、窓に沿って、一対のガイドレール20が平行に延在するように配置される。ガイドレール20の一端側近傍には、その一対のガイドレール20のそれぞれに対して、垂直に延在するようにシェード巻取り装置24が配置される。遮光するシェード部材23の一端はシェード巻取り装置24に取り付けられ、その他端はガイドレール20のそれぞれに垂直に延在するガーニッシュ21の保持部21aに取り付けられる。ガーニッシュ21は、ガイドレール20に対して垂直の状態を保持しながら、ガイドレール20に沿って摺動可能である。
車両の室内への遮光の際に、シェード装置を使用するユーザは、ガーニッシュ21を図1の矢印方向に引き上げる、または引き下げることで、窓22からの遮光量を調整することができる。
【0003】
このようなシェード装置では、遮光量を調節できるように、ガーニッシュ21は、ユーザが所望する位置まで手動または自動で移動し、その位置で停止可能なように保持される。特許文献1では、ガーニッシュ21をガイドレール20に沿って滑らかに摺動可能とするとともに、所望の位置で停止させるためのガーニッシュ21のガイド保持装置の様々な形態が提案されている。図8および図9は、特許文献1に実施の形態として提案されている従来のガイド保持装置を示している。ここで、図8および図9は、シェード装置にガーニッシュ21のガイド保持装置が適用されている部位(図1の丸で囲んだ位置)を拡大した一部断面図である。
【0004】
たとえば、図8の形態では、ガーニッシュ21の内部に、ガイド保持装置たるシュー部材30が挿嵌される。シュー部材30は、シュー部材30に配置された単純な曲面形状を有する板ばね状の弾性片34a,34b,34c,34dがガーニッシュ21の内面に押し付けられて、摩擦力でガーニッシュ21内に固定される。シュー部材30にはガード20のガイド面20aおよび20bに対向するように第一挟込部31が配置されている。第一挟込部31には中央部に孔が穿設されている。その孔から第二挟込部32の取り付け部32aがばね33によってシュー部材30の内部に引き込まれるように固定されることで、第二挟込部32が第一挟込部31に向かって付勢するように取り付けられる。ガイドレール20のガイド面20aおよび20bは、第一挟込部31と第二挟込部32との間に挟持される。これにより、第一挟込部31と第二挟込部32とは、ガイドレール20のガイド面20aおよび20bとの間に一定の動摩擦力をもって、ガーニッシュ21がガイドレールに沿って摺動するとともに、所定の位置でのガーニッシュ21の位置の保持を可能としている。
【0005】
図9は、簡素化された形状で樹脂により成型された樹脂製のシュー部材40をガーニッシュ21の内部に挿嵌する形態を示している。ここで提案されている形態では、シュー部材40は、抜止係止片41がガーニッシュ21の内部の所定の位置に配置される係止溝に係合して固定される。シュー部材40が所定の位置に係合されている状態において、シュー部材40に対して固定されている走行部42の走行面42aが、ガイドレール20のガイド面20aおよび20bに押し付けられる。これにより、走行面42aとガイドレール20のガイド面20aおよび20bとの間に、一定の摩擦力をもって、ガーニッシュ21がガイドレール20に沿って摺動するとともに、所定の位置でのガーニッシュ21の位置の保持を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4369744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、上記で説明したようなシェード装置では、ガーニッシュ21がガイドレール20に対して所定の摩擦力を保って摺動するように、ガーニッシュ21がガイドレール20に対して垂直な状態で剛性を保ちながら摺動することが理想である。
しかし一方、ガーニッシュ21はある程度延性をもつように設計され、これにより車両の振動を吸収する構造とすることが一般的である。
そのため、ユーザが車両室内を遮光する際に、ガーニッシュ21の引き上げまたは引き下げを行なうと、そのガーニッシュ21の移動方向に撓みが生じる。このようなガーニッシュ21の撓みは、以下の不都合を生じる。
【0008】
図10図9の断面IV−IVを示した図であって、ガーニッシュ21が撓んだ状態におけるガイドレール20のガイド面20aとシュー部材40の走行面42aとの関係を示した図である。図10(a)に示すように、ガーニッシュ21が理想的にガイドレール20に対して垂直を保って移動する限りは、シュー部材40の走行面42aはその全面がガイドレール20のガイド面20aに接しており、動摩擦係数力に抗して安定に移動する状態を保つ。
【0009】
しかし、前記のとおり、ガーニッシュ21が撓みを生じると、図10(b)に示すようにガイドレール内を斜行する。ガーニッシュ21の撓み量の変化により、シュー部材40の走行面42aとガイドレール20のガイド面20aとのなす角が大きくなると、いわゆる、「噛み付き現象」が発生する。すなわち、それまで走行面42aとガイド面20aとの間に動摩擦係数力が安定的に生じながら摺動していた走行部42に、走行面42aとガイド面20aとの間のなす角度の変化や、走行面42aと反対側の部分が干渉することで、突然大きな静止摩擦力が加わって、走行部42の摺動が急に停止することがある。このとき、ガーニッシュ21の引き上げまたは引き下げ動作が継続され、ガーニッシュ21に依然として力が付加されていると、抜止係止片41の係合力ではシュー部材40の保持ができず、シュー部材40がガーニッシュ21から抜けてしまう問題がある。
【0010】
この対策として、シュー部材40をガーニッシュ21の内部に隙間なく挿嵌する方法が考えられるが、図9の形態は、シュー部材40は樹脂により簡易な形状に成型するものであるので、ガーニッシュ21の内部に隙間なくシュー部材40の大きさを調整することが困難である。また、図8に示した形態のように、弾性片34a,34b,34c,34dを付加することも考えられるが、単なる曲面形状の弾性片34a,34b,34c,34dによる押圧のみでは押圧力が不足し、引き抜き現象を防ぐことはできない。そこで、ガーニッシュ21が撓みを生じながら摺動した場合であっても、シュー部材40の引き抜きが生じないように、シュー部材40をガーニッシュ21の内部に十分な保持力をもって保持できれば好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を背景として、本発明は、一対のガイドレールのそれぞれにおいて、摺動面に沿って摺動するように前記ガイドレール内に収容される摺動部を一端に有し、反対側の他端まで延在するベース部と、前記ベース部の両面に取り付けられ、弾性力を有する一対の押圧部であって、その一対の押圧部のそれぞれは前記ベース部からの高さが最も高い最頂部から高さが徐々に低くなるように前記一端と他端とのそれぞれの方向に向かって延在する外形面を有する前記押圧部とを備え、前記一対の押圧部が一対の第一の内面と対向するように前記他端から前記ガーニッシュの前記保持孔に挿嵌された状態において、前記一対の押圧部のそれぞれの外形面は、3点での接触で、前記一対の第一の内面のうち対向する面を押圧して前記ガーニッシュを保持するガイド保持装置およびそれを用いたシェード装置を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0012】
樹脂成型によって製造したシュー部材であっても、ガーニッシュに撓みによりシュー部材に生じる引き抜き力に抗して、ガーニッシュ内に十分保持することができる効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】シェード装置の外観図を示した図である。
図2】本発明におけるガイド保持装置を示した図である。
図3】本発明におけるガイド保持装置の側面を示した図である。
図4】本発明におけるシェード装置のガイド保持装置部分を拡大した部分断面図である。
図5図4の断面II−IIを示した断面図であって、シェード装置のガイド保持装置部分をガーニッシュの側面からみた図である。
図6図4の断面III−IIIを示した断面図であって、シェード装置のガイド保持装置部分をガーニッシュの長手軸方向からみた図である。
図7】ガイド保持装置の押圧部の形状の概略を模式的に示した図である。(a)は押圧部における肩部がガーニッシュの保持孔の内面に接した状態を拡大した図であり、(b)は、押圧部における最頂部と肩部との押し下げ量の関係を模式的に示した図である。
図8】従来のガイド保持装置の一形態を示した図である。
図9】従来のガイド保持装置の別の一形態を示した図である。
図10図9の断面IV−IVの部分を示した図であって、従来のガイド保持装置の不都合な態様を説明した図である。(a)は理想的にガイド保持装置が動作している状態を、(b)はガイド保持装置が斜行することにより、いわゆる噛み付き現象を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図7を参照して、本発明のガイド保持装置の実施の形態について説明する。図1は、シェード装置の全体を示した図である。図2は、本発明のガイド保持装置たるシュー部材1を示した図である。図3は、シュー部材1を側面からみた図である。
図1に示すように、シェード装置は、一対のガイドレール20と、ガーニッシュ21と、シェード23と、シェード巻取り装置24とを有する。そして、一対のガイドレール20は、窓22に沿って延在するように配置される。たとえば、一対のガイドレール20のそれぞれは、代表的には平行に配置されるが、必ずしも平行である必要はない。
ガーニッシュ21は、一対のガイドレール20のそれぞれに対して、ガイドレール20が延在する方向と異なる方向に延在するように配置される。ガーニッシュ21は、代表的には、ガイドレール20の延在する方向と垂直な方向に延在するように配置される。すなわち、一対のガイドレール20は窓22に沿って平行に配置されその間にガーニッシュ21がガイドレール20のそれぞれと垂直に延在するように配置されることが代表的であるが、必ずしもこの関係である必要はない。一対のガイドレール20が延在し、その間にガーニッシュ21が一対のガイドレール20のそれぞれの延在する方向と垂直な方向に配置されればよい。シェード23は、遮光性能を有する生地部材であって、その一端はガーニッシュ21の長手方向に延在する保持部21aに固定される。すなわち、ガーニッシュ21は、シェード部材の幅方向に延在する。一対のガイドレール20の一端部には、シェード23を収納するためのシェード巻取り装置24が配置される。シェード23の他端部は、シェード巻取り装置24に取り付けられ、シェード23の巻き取りを行なう。
【0015】
ガーニッシュ21は、ガイド保持装置たるシュー部材1により、ガイドレール20に固定される。ガーニッシュ21は、ガイドレール20側の両端部に、ガーニッシュ21の長手方向に延在する矩形の保持孔を備えている。この保持孔の内面は、互いに対向する一対の内面(以下、第一の内面)を有する。代表的には、第一の内面は互いに平行な面であるが、必ずしも平行な面である必要はない。また、第一の内面はガイドレール20が延在する方向と異なる方向に代表距離としての所定の幅(第一の幅)をもって並んでいる。すなわち、第一の内面をなす面間距離が所定の幅を有し、その第一の幅の方向はガイドレール20が延在する方向と角度をなす。最も代表的な例では、第一の内面は互いに平行な面であり、その面間距離が所定の幅を有する。第一の内面は互いに平行な面ではない場合には、たとえば、その面間距離の平均値を代表距離とする所定の幅を有することになる。また、さらに、別の代表的な態様では、ガイドレール20が延在する方向と垂直な方向に所定の幅(第一の幅)をもつように設定する、すなわち第一の内面はガイドレール20が延在する方向に延在するように設定することができる。しかし、第一の内面のそれぞれはガイドレール20が延在する方向と異なる方向に延在すればよく、必ずしも、第一の内面はガイドレール20が延在する方向と垂直である必要はない。
また、この保持孔の内面には、第一の内面と角度をなすように、互いに対向する一対の他の内面(以下、第二の内面)を有する。代表的には、第二の内面は、第一の内面に垂直に延在する平行な面とすることができる。この場合には、第一の内面と第二の内面とが構成する保持孔の断面形状は、長方形または正方形を構成する。ただし、第二の内面は、第一の内面に垂直に延在する平行な面でなくとも、第一の内面と角度をなすように、互いに対向する一対の他の内面として設定することができる。この場合には、第一の内面と第二の内面とが構成する保持孔の断面形状は、平行四辺形または台形などの四角形を構成する。第二の内面の面間距離は、所定の幅(第二の幅)を有する。
シュー部材1は、ガーニッシュ21のこの保持孔の中に挿入される部材であって、樹脂により一体的に成型される部材である。シュー部材1は、押圧部2,3,4,5と、摺動部6と、ベース部7と、リブ構造9a,9bとを具備する。ベース部7は、矩形の平板形状の部材であって、その短辺側である一端に摺動部6が配置される。本実施の形態では、摺動部6はベース部7と一体として構成する形態で説明しているが、ベース部7と別部材として形成させてもよい、摺動部6の形状は、たとえば、ベース部7の短辺側方向に、ベース部7の短辺の長さを超えて、短辺方向に沿って延在するように、細長い形状とできる。そして、摺動部6の断面は、短辺方向に沿って延在する面は、ベース部7の長手方向に対して垂直であることが好ましい。代表的な断面形状は、正方形または長方形とすることができるが、この形状には限られない。
【0016】
ベース部7の上面および下面には、アーチ形状の外面を有する押圧部2,3,4,5が、ベース部7の上面および下面から立ち上がるように配置される。押圧部2,3,4,5は、図2に示すように、ベース部7の上面側に押圧部2,3がベース部7の2つの長辺側に沿って並ぶように、ベース部7の下面側に押圧部4,5がベース部7の2つの長辺側に沿って並ぶように配置される。
図2では、最も好ましい配置の例として、ベース部7に全部で8個の押圧部2,3,4,5が配置される例を示しているが、その配置位置および個数は、ここに示した例に限らない。均一な押圧力を形成するように、ベース部7の長手方向に沿って対称であり、または一対の押圧部2および4のように、ベース部7の上下面で対称に形成することが好ましい。また、押圧部2,3,4,5の形状を異なるようにすることも可能であるが、ベース部7に対して上側と下側で対称となる押圧部2,4、ベース部7の長手方向に沿って対称となる押圧部は、それぞれ同じ形状とすることが好ましい。
【0017】
図3から図7を参照して、以下、押圧部2,3,4,5の形状を説明する。図4は、ガイドレール20とガーニッシュ21との間に、シュー部材1が適用されている部位I(図1の丸で囲んだ位置)を拡大した一部断面図である。図5および図6は、それぞれ、図4のガーニッシュ21の側部断面II−IIとガーニッシュ21の軸方向断面III−IIIを示した図である。
押圧部2,3,4,5の外面は、それぞれ、弾力性をもったアーチ形状を有するように、ベース部7と一体として樹脂により成型されている。押圧部2,3,4,5のアーチ形状としては、様々な形態を選択することができる。一の曲率を有する曲面のみとして形成してもよいし、また複数の曲面が連続するような組み合わせとして選択して形成してよい。また、必ずしも曲面のみから形成されるアーチ形状でなくてもよい。曲面と直線の組み合せ、または複数の直線の集合から選択される近似的なアーチ形状としてもよい。本明細書では、押圧部2,3,4,5のなすアーチ形状につき、この直線の集合から選択される近似的なアーチ形状をも含むものとして使用する。
【0018】
押圧部2,3,4,5の外面は、それぞれのアーチ形状において、ベース部7の面から最も距離が高い最頂部2a,3a,4a,5aを有している。押圧部2,3,4,5のそれぞれのアーチ形状は、最頂部2a,3a,4a,5aを中心に、ベース部7の長手方向に向かって、ベース部7から高さが低くなる形状であって、最頂部2a,3a,4a,5aを中心に、ベース部7の長手方向に向かって対称である。また、ベース部7に対して、上下対称となる押圧部2,4の組および押圧部3,5の組において、最頂部2aと4aとの位置、および最頂部3aと5aとの位置は、それぞれ、ベース部7の厚さ方向の中心線に対して対称となっている。すなわち、最頂部2aおよび4aの距離と、最頂部3aおよび5aの距離が、ベース部7の面外方向(ガーニッシュに挿嵌された際にガイドレール20の延在する方向と垂直方向)の最大幅をなし、そこからベース部7の長手方向に向かってその幅は小さくなる。以下、押圧部の形状につき、押圧部2を代表例として、詳細に説明する。
【0019】
押圧部2の外面には、押圧部2の最頂部2aからベース部7の長手方向に離れた両側のある任意の箇所に、肩部2b(第一の肩部)および肩部2c(第二の肩部)を有している。肩部2bは最頂部2aに対して摺動部6の側に、肩部2cは最頂部2aに対して摺動部6と反対側のベース部の端部の側に配置される。肩部2bおよび肩部2cは、ベース部7の長手方向に一定の幅を持っている。肩部2bおよび肩部2cは、押圧部2,3,4,5の外面をなすアーチ形状面から外側に突出する形状である。シュー部材1がガーニッシュ21に挿入される前の自由な状態においては、肩部2b,2cは、図3に示すようにベース部7に平行な面を有する突起としても、またベース部7に対して角度をなすような突起を有する構造としてもよい。押圧部2,3,4,5の外面において、最頂部2aから肩部2bまでのアーチ形状面と、肩部2bから押圧部2の根元のベース部7までのアーチ形状面の曲率は不連続である。押圧部2の最頂部2aから肩部2bまでの区間の距離と、押圧部2の最頂部2aから肩部2cまでの区間の距離は、同一としても、異なっていても良い。押圧部2の最頂部2aから詳細には、後述するように、押圧部2,3,4,5の押圧量とアーチ形状によって定まる形状を有している。
【0020】
押圧部2の外面は、さらに、次のような形状を有するように設定される。シュー部材1がガーニッシュ21に挿入される前においては、押圧部2と押圧部4の最頂部2aと4aとの距離は、ガーニッシュ21の内部の保持孔の第一の内面のなす距離よりも大きい。すなわち、押圧部2と押圧部4の最頂部2aと4aとの距離(最大幅)を本明細書ではHwとすると、シュー部材1がガーニッシュ21に挿入される前においては、Hwはガーニッシュ21の内部の保持孔の第一の内面がなす距離hpよりも大きくなっている。
シュー部材1がガーニッシュ21に挿入されると、弾力性をもった押圧部2と押圧部4は、ガーニッシュ21の内部の保持孔の第一の内面に挟持され、ベース部7に近づくように最頂部2aと4aとが押し下げられる。さらに、シュー部材1がガーニッシュ21に挿嵌されると、最頂部2aと4aとの距離は縮まり、押圧部2と押圧部4の最頂部2aと4aとがガーニッシュ21の内部の保持孔の第一の内面に接すると共に、肩部2bと2cがガーニッシュ21の内部の保持孔の第一の内面に接する。すなわち、シュー部材1がガーニッシュ21に完全に挿嵌された状態では、最頂部2aと肩部2bと肩部2cとの3点が第一の内面に接する。このとき、最頂部2aと肩部2bとの間、最頂部2aと肩部2bとの間には、僅かに隙間が生じるようなアーチ形状とすることで、シュー部材1がガーニッシュ21に完全に挿嵌された状態において、押圧部2の外面が3点でガーニッシュ21の内面を押圧する。シュー部材1がガーニッシュ21に完全に挿嵌された状態において、押圧部2が3点でガーニッシュ21の内面を押圧する限り、単なるアーチ形状とした場合の1点押圧時よりも、押圧の点数を増やして押圧面積を増加させることができる。押圧点数が増加したことにより、シュー部材1とガーニッシュ21の内面との間の摩擦力が大きくなり、樹脂成型により製造された簡易な構造のシュー部材1であっても、従前のシュー部材40より、シュー部材1の引き抜き力に対抗できる大きな摩擦力を得ることができる効果を有する。
【0021】
図7(a)は、シュー部材1がガーニッシュ21に完全に挿嵌された状態において、ガーニッシュ21の内面に、押圧部2の最頂部2aと肩部2bとが接している部分を拡大した図である。肩部2bの形状は、シュー部材1がガーニッシュ21に完全に挿嵌された状態において、肩部2bにおいて押圧部2の最頂部2a側の面がなす傾斜角度(図7(a)のα)は、肩部2bにおいて押圧部2の最頂部2a側と反対側(ベース部7の取付点側)の面がなす傾斜角度(図7(a)のβ)よりも、大きくなるように設定することができる。特に、シュー部材1がガーニッシュ21に挿入される前において、肩部2bにおいて押圧部2の最頂部2a側の面がなす傾斜角度(α)が、シュー部材1がガーニッシュ21に挿入される前よりも大きくなっており、肩部2bにおいて押圧部2の最頂部2a側と反対側(ベース部7の取付点側)の面がなす傾斜角度(β)はシュー部材1がガーニッシュ21に挿入される前よりも小さくなっていると更に効果的である。これにより、シュー部材1がガーニッシュ21に挿入される過程において、肩部2bは最頂部2a側に向かって内側に移動するため、肩部2bの最頂部2aと反対側の面が、ガーニッシュ21の保持孔の第一の内面に対して、より押し付けられて接触面積が増加しやすい。これにより、より高い押圧力を付与できる。
【0022】
押圧部2の外面は、さらに、詳しくは、次のような形状を有するように設定することもできる。シュー部材1がガーニッシュ21に挿入される前においては、最頂部2aに対して、肩部2bと肩部2cのベース部7からの高さは低い。すなわち、ベース部7の上下面に対称に配置される押圧部2,4において、肩部2bと対称な位置になる肩部4bと距離、および肩部2cと対称な位置になる肩部4cとの距離は、押圧部2と押圧部4の最頂部2aと4aとの距離Hwよりも小さい。しかし、シュー部材1がガーニッシュ21に挿入された後において、肩部2bと肩部2cも、所定の圧力で、ガーニッシュ21の内面を押圧するためには、シュー部材1がガーニッシュ21に挿入される前において、肩部2bと対称な位置になる肩部4bと距離、および肩部2cと対称な位置になる肩部4cとの距離は、ガーニッシュ21の内部の保持孔の第一の内面がなす距離hpよりも大きくなっている必要がある。
【0023】
シュー部材1がガーニッシュ21に完全に挿嵌された状態で、最頂部2aと肩部2bと肩部2cとの3点がガーニッシュ21の第一の内面に接して押圧する押圧力は、様々な形で設定できる。たとえば、以下のように、決定することができる。図7(b)は、シュー部材1がガーニッシュ21に完全に挿嵌される前後の状態を、それぞれ実線と破線で示したものである。
シュー部材1がガーニッシュ21に完全に挿嵌された状態では、肩部2bがガーニッシュ21の第一の内面に接して押圧する押圧力は、ベース部7から肩部2bまでの部分の撓み量により決まる。この部分の弾性係数をkaとして、シュー部材1がガーニッシュ21に完全に挿嵌された状態で、肩部2bがd1だけ押し下げられるとすると、肩部2bがガーニッシュ21の第一の内面に接して押圧する押圧力P1は、P1=ka・d1となる。肩部2cについても同様である。
一方、シュー部材1がガーニッシュ21に完全に挿嵌された状態で、最頂部2aの押し下げによる弾性力のほとんどを、押圧部2の肩部2bと肩部2cとの間の区間で補うとして、この弾性係数をkbとする。ここで、肩部2bがd1だけ押し下げられたd1分を差し引いて、最頂部2aが押し下げられる量をd2とすると、最頂部2aがガーニッシュ21の第一の内面に接して押圧する押圧力P2は、P2=kb・d2となる。
したがって、肩部2bと肩部2cのそれぞれの箇所における押圧力P1と、最頂部2aにおける押圧力P2との比が所望の比となるように、弾性係数ka,kbおよび押し下げ量d1,d2を決定する。また、最頂部2aと肩部2bと肩部2cとの3点における押圧量をほぼ等しくすることが好ましい場合には、P2=2×P1として、これらの比から決定する。弾性係数ka,kbおよび押し下げ量d1,d2は、押圧部の肉厚と、アーチ形状とによって定まる。一般に、樹脂を一様にする限り、押圧量の比は、樹脂材料には依存しないので、樹脂材料は成型性のよいものを選択して、アーチ形状による押し下げ量を調整することで、押圧値を調整する方法をとることができる。
これらもって、最頂部2aと肩部2bと肩部2cとの3点がガーニッシュ21の第一の内面に接して押圧する押圧力を決定すればよい。一般的には、ガーニッシュ21の第一の内面の面間距離は大きくないため、肩部2bと肩部2cとのそれぞれの押し下げ量は、最頂部2aの押し下げ量よりも少なくなる。したがって、ベース部7から肩部2bまで、ベース部7から肩部2cまでの押圧部2の肉厚を、押圧部2の肩部2bから肩部2cまでの間の区間の肉厚よりも厚めにするとよい。
【0024】
前記のとおり、押圧部2を代表例として、押圧部2の外形のアーチ形状について説明したが、他の押圧部3,4,5のそれぞれにおいて、アーチ形状の選択の仕方、最頂部3aおよび肩部3bおよび肩部3cと、最頂部4aおよび肩部4bおよび肩部4cと、最頂部5aおよび肩部5bおよび肩部5cについて、押圧部2の場合と全く同様に決定することができる。
【0025】
前記のとおり、ガーニッシュ21の第一の内面に対して、シュー部材1が押圧して、シュー部材1のガーニッシュ21からの引き抜きを防止することができる。さらに、本発明では、ガーニッシュ21の第二の内面に対して、シュー部材1の引き抜きを防止する構造を有している。図6を参照して、これを説明する。
【0026】
ベース部材7は、その長辺側の両縁に、シュー部材1の長手方向に沿って細長く延在するようにリブ構造9a,9bを有している。リブ構造9a,9bは、ベース部材7の長手方向の全域に亘って配設するとよい。また、リブ構造9a,9bは、シュー部材1をガーニッシュ21に挿入した際に、ガーニッシュ21の保持孔の第二の内面にリブ構造9a,9bがほぼ接するような大きさで配置する。シュー部材1は、樹脂による一体成型であるため、成型時における完成品の外形寸法公差をあまり小さくすることができない。しかし、樹脂成型で達成可能な公差範囲で、リブ構造9a,9bをガーニッシュ21の第二の内面にほぼ接するような大きさとすれば目的が達成できる。すなわち、リブ構造9a,9bの最外面間の距離をガーニッシュ21の保持孔の第二の内面のそれぞれの間の距離(第二の幅)とすることで、ガーニッシュ21の保持孔の第二の内面との間の隙間を少なくすることができる。
【0027】
リブ構造9a,9bにより、ベース部材7の長手方向の撓みが大きく減少するとともに、ガーニッシュ21の第二の内面との間のほぼ接するような大きさで配置すれば、ガーニッシュ21に、その移動方向の撓みが生じても、ガーニッシュ21の第二の内面とリブ構造9a,9bとの隙間の大きさは、ガーニッシュ21の撓み量よりも小さくなるので、引き抜きを防止することができる。前記のとおり、肩部を配置した押圧部2,3,4,5により、ガーニッシュ21の第一の内面に対しての押圧力は、従前よりも大きできるので、リブ構造9a,9bとガーニッシュ21の第二の内面との隙間を少なくすることは、ガーニッシュ21の第一の内面に対しての押圧力をさらに補助することにつながり、前記の押圧部2,3,4,5を有する場合のシュー部材1において大きな効果を奏するものである。
さらに、ベース部7には、摺動部6と反対側に端部8を配置する。端部8のガーニッシュ21の第一の内面に対して幅を、端部8のガーニッシュ21の第一の内面に接するように設定する。ここでも、樹脂成型で達成可能な公差範囲で設定すればよく、端部8のガーニッシュ21の第一の内面にきつく挿嵌される程度の大きさとしてもよい。これにより、リブ構造9a,9bに併せて、ガーニッシュ21の第一の内面との間で、摩擦力を大きくとることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 シュー部材(ガイド保持装置)
2,3,4,5 押圧部
2a,3a,4a,5a 最頂部
2a,2b,3a,3b,4a,4b,5a,5b 肩部
6 摺動部
7 ベース部
8 端部
9 リブ構造
20 ガイドレール
21 ガーニッシュ
22 窓部
23 シェード部材
24 シェード巻き取り装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10