特許第6176510号(P6176510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6176510
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】シリコン材料及び二次電池の負極
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/02 20060101AFI20170731BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   C01B33/02 Z
   H01M4/38 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-523147(P2016-523147)
(86)(22)【出願日】2015年5月26日
(86)【国際出願番号】JP2015002651
(87)【国際公開番号】WO2015182123
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-110827(P2014-110827)
(32)【優先日】2014年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】毛利 敬史
(72)【発明者】
【氏名】仲西 正孝
(72)【発明者】
【氏名】大島 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】原田 正則
(72)【発明者】
【氏名】合田 信弘
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/009073(WO,A1)
【文献】 特開2010−170832(JP,A)
【文献】 特開2014−022319(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/163417(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/066669(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
H01M 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドギャップが1.2eV以上かつ1.7eV以下の範囲にあることを特徴とするシリコン材料。
【請求項2】
ナノサイズのシリコン結晶子を含む請求項1に記載のシリコン材料。
【請求項3】
前記シリコン結晶子は、結晶子サイズが0.5nm〜300nmである請求項2に記載のシリコン材料。
【請求項4】
非晶質シリコン、酸化ケイ素(SiO,0<x<2)、又はケイ素化合物の少なくとも一種をさらに含む複合体粒子である請求項2又は3に記載のシリコン材料。
【請求項5】
前記シリコン結晶子は、非晶質シリコン、酸化ケイ素(SiO,0<x<2)、又はケイ素化合物の少なくとも一種の表面及び/又は内部に存在する請求項4に記載のシリコン材料。
【請求項6】
前記シリコン結晶子は、非晶質シリコンを主とするマトリクス中に島状に分散、又は、非晶質シリコンを主とする粒子の表面に島状に付着する請求項4又は5に記載のシリコン材料。
【請求項7】
BET比表面積が3〜100m/gである請求項1〜6のいずれかに記載のシリコン材料。
【請求項8】
含まれる酸素量が20質量%以下である請求項1〜7のいずれかに記載のシリコン材料。
【請求項9】
組成におけるSi/O原子比が1/0.5を超えかつ1/0.1以下の範囲にある請求項1〜8のいずれかに記載のシリコン材料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のシリコン材料からなることを特徴とする負極活物質。
【請求項11】
請求項10に記載の負極活物質を含むことを特徴とする負極。
【請求項12】
請求項11に記載の負極を有することを特徴とする二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの負極活物質として用いられるシリコン材料、そのシリコン材料を含む負極活物質、その負極活物質を用いた二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、充放電容量が高く、高出力化が可能な二次電池である。現在、主として携帯電子機器用の電源として用いられており、更に、今後普及が予想される電気自動車用の電源として期待されている。リチウムイオン二次電池は、リチウム(Li)を挿入および脱離することができる活物質を正極及び負極にそれぞれ有する。そして、両極間に設けられた電解液内をリチウムイオンが移動することによって動作する。
【0003】
リチウムイオン二次電池には、正極の活物質として主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としては多層構造を有する炭素材料が主に用いられている。リチウムイオン二次電池の性能は、二次電池を構成する正極、負極、セパレータ、および電解液の材料に左右される。なかでも活物質を形成する活物質材料の研究開発が活発に行われている。例えば負極活物質材料として炭素よりも高容量なケイ素またはケイ素酸化物が検討されている。
【0004】
ケイ素を負極活物質として用いることにより、炭素材料を用いるよりも高容量の電池とすることができる。しかしながらケイ素は、充放電時のLiの吸蔵・放出に伴う体積変化が大きい。よって、ケイ素を負極活物質として用いた二次電池においては、ケイ素が充放電中に構造変化を起こし、集電体から脱落または剥離するため、電池の充放電サイクル寿命が短いという問題点がある。そこでケイ素酸化物を負極活物質として用いることにより、ケイ素よりも充放電時のLiの吸蔵・放出に伴う体積変化を抑制する技術が検討されている。
【0005】
例えば、負極活物質として、酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.5程度)の使用が検討されている。SiOxは熱処理されると、SiとSiO2とに分解することが知られている。これは不均化反応といい、固体の内部反応によりSi相とSiO2相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。また、Si相を覆うSiO2相が電解液の分解を抑制する働きをもつ。したがって、SiとSiO2とに分解したSiOxからなる負極活物質を用いた二次電池は、サイクル特性に優れる。
【0006】
上記したSiOxのSi相を構成するシリコン粒子が微細であるほど、それを負極活物質として用いた二次電池はサイクル特性が向上する。そこで特許第3865033号(特許文献1)には、金属シリコンとSiO2を加熱して昇華させて酸化珪素ガスとし、それを冷却してSiOxを製造する方法が記載されている。
【0007】
また特開2009-102219号公報(特許文献2)には、シリコン原料を高温のプラズマ中で元素状態まで分解し、それを液体窒素温度まで急冷してシリコンナノ粒子を得、このシリコンナノ粒子をゾルゲル法などでSiO2-TiO2マトリクス中に固定する製造方法が記載されている。
【0008】
ところが特許文献1に記載の製造方法では、原料が昇華性の材料に限られる。さらにSi相を覆うSiO2相がLi吸蔵時にケイ酸リチウムに変化することで、負極に不可逆なLiを生成することが知られており、正極に余剰の活物質を加える必要がある。また特許文献2に記載の製造方法では、プラズマ放電のために高いエネルギーが必要となり、生産プロセスの消費エネルギーも大きく、結果として経済的な生産性が乏しい。
【0009】
ところで近年、半導体、電気・電子等の各分野への利用が期待されるシリコン材料が開発されている。例えばPhysical Review B(1993),vol.48, PP.8172-8189(非特許文献1)には、塩化水素(HCl)と二ケイ化カルシウム(CaSi2)とを反応させることで層状ポリシランを合成する方法が記載され、こうして得られる層状ポリシランは、発光素子などに利用できることが記載されている。
【0010】
またMaterials Research Bulletin, Vol.31, No.3, pp.307-316, 1996(非特許文献2)には、塩化水素(HCl)と二ケイ化カルシウム(CaSi2)とを反応させることで得られた層状ポリシランを900℃で熱処理して板状シリコン結晶を得たことが記載されている。
【0011】
そして特開2011-090806号公報(特許文献3)には、層状ポリシランを負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3865033号公報
【特許文献2】特開2009-102219号公報
【特許文献3】特開2011-090806号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Physical Review B(1993),vol.48, PP.8172-8189
【非特許文献2】Materials Research Bulletin, Vol.31, No.3, pp.307-316, 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
リチウムイオン二次電池などの二次電池において、負極活物質としてシリコンやSiOxを用いることで高容量とすることができる。しかし、負極活物質としてシリコンやSiOxを用いる二次電池は、初期効率などが不十分な場合があり、実用化までには至っていない。
【0015】
そこで上記したシリコン材料を二次電池の負極活物質として用いる場合に、初期効率の向上と寿命の延長とを両立させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願発明者らは、層状シリコン化合物を熱処理することで得られたシリコン材料を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の特性を鋭意調査した。すると、電池特性の初期効率と寿命にシリコン材料のバンドギャップが大きく影響することを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち上記課題を解決する本発明のシリコン材料の特徴は、バンドギャップが1.1eVを超えかつ1.7eV以下の範囲にあることにある。
【0018】
そして本発明の二次電池の特徴は、本発明のシリコン材料を用いた負極活物質を含む負極を有することにある。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシリコン材料は、非水電解液を用いた二次電池の負極活物質として有用である。そして本発明のシリコン材料を負極活物質として用いることによって、二次電池の初期効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】層状シリコン化合物のラマンスペクトルである。
図2】バンドギャップと初期効率との関係を示すグラフである。
図3】バンドギャップと容量維持率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<シリコン材料>
本発明のシリコン材料は、バンドギャップが1.1eVを超えかつ1.7eV以下の範囲にある。バンドギャップが1.2eV〜1.6eVの範囲にあることが特に望ましい。前述した非特許文献2には、シリコン材料のバンドギャップを算出したことが記載され、層状シリコン化合物のアニール条件によってシリコン材料のバンドギャップが変化することが記載されている。しかし同文献には、バンドギャップと電池特性との関係に関しては、記載も示唆もない。
【0022】
本願発明者らは、バンドギャップが概ね2.4eVを示す層状シリコン化合物を焼成して、バンドギャップを1.1eVを超えかつ1.7eV以下の範囲となるように調製して作成したシリコン材料を負極活物質として用いることで、その二次電池は初期効率が向上することを見出した。なおバンドギャップは、シリコン材料の光吸収スペクトルの吸収端波長から算出した。
【0023】
本発明のシリコン材料は、シリコン結晶子を含むことが好ましい。シリコン結晶子は、結晶子サイズが0.5nm〜300nmであるのが好ましく、1nm〜30nmであることがさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲が特に望ましい。結晶子サイズが300nmを超えると、二次電池の負極活物質として用いたときに寿命低下を引き起こす場合がある。なおこの結晶子サイズは、X線回折測定結果の(111)面の回折ピーク(2θが27°〜30°の位置に存在)の半値幅からシェラーの式より算出されたものである。
【0024】
本発明のシリコン材料は、シリコン結晶子に加えて、非晶質シリコン、酸化ケイ素(SiOx,0<x<2)、又はケイ素化合物の少なくとも一種をさらに含む複合体粒子であってもよい。この複合体粒子においては、シリコン結晶子は非晶質シリコン、酸化ケイ素(SiOx,0<x<2)、又はケイ素化合物の少なくとも一種の表面及び/又は内部に存在する。例えばシリコン結晶子は、非晶質シリコンを主とするマトリクス中に島状に分散していてもよいし、非晶質シリコンを主とする粒子の表面に島状に付着していてもよい。
【0025】
複合体粒子におけるシリコン結晶子濃度が低すぎると、二次電池の負極活物質として用いたときに初期容量が低くなってしまう。またシリコン結晶子の濃度が高すぎると活物質全体の膨張収縮量が多くなってしまい、寿命(サイクル特性)が悪くなってしまう場合がある。
【0026】
本発明のシリコン材料(複合体粒子)の粒径は特に制限されないが、二次電池の負極活物質として用いる場合には、2μm〜20μmの範囲に分級されたものを用いるのが好ましい。
【0027】
本発明のシリコン材料は、二次電池の負極活物質として用いた場合の電池特性を考慮すると、BET比表面積が3〜100m2/gであることが好ましく、4〜80m2/gであることが望ましく、7〜60m2/gであることが特に望ましい。また本発明のシリコン材料は、含まれる酸素量が20質量%以下であることが望ましい。例えば非特許文献1,2に記載の層状シリコン化合物を熱処理することで得られたシリコンの酸素量は約33質量%と大きいが、本発明の製造方法で製造された層状シリコン化合物を熱処理することで得られたシリコン材料の酸素量は30質量%以下と小さい。
【0028】
<シリコン材料の製造方法>
本発明のシリコン材料は、酸とCaSi2とを反応させて得られた層状シリコン化合物を非酸化性雰囲気にて350℃〜950℃程度で熱処理することで製造することができる。用いる酸としては、非特許文献2に記載されたように塩酸(HCl)を用いてもよいし、少なくともアニオンにフッ素を含む酸を用いてもよい。少なくともアニオンにフッ素を含む酸を用いることで、層状シリコン化合物及びシリコン材料に含まれる酸素(O)量を低減することができる。またフッ素(F)を含むことで、塩素(Cl)量をゼロ若しくは低減できる。したがって本発明のフッ素を含むシリコン材料をリチウムイオン二次電池の負極活物質などに用いた場合には、初期効率及び初期容量が好適に向上する。
【0029】
よって、シリコン材料の製造方法としては、少なくともアニオンにフッ素を含む酸が含まれた薬液とCaSi2を反応させて得られた層状シリコン化合物を非酸化性雰囲気にて350℃以上で熱処理するのが好ましい。
【0030】
少なくともアニオンにフッ素を含む酸としては、フッ化水素酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロヒ素酸、フルオロアンチモン酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロゲルマン酸、ヘキサフルオロスズ(IV)酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸などが例示される。
【0031】
上記した酸から選ばれる少なくとも一種を含んでいれば、他の酸を含んでいてもよい。他の酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、蟻酸、酢酸などが例示される。
【0032】
少なくともアニオンにフッ素を含む酸が含まれた薬液とCaSi2との反応は、非特許文献1,2に記載された条件と同様の条件で行うことができる。室温以下の低温で反応させることが好ましく、氷浴上で行うのが望ましい。得られた層状シリコン化合物は、非特許文献1,2に記載された方法で得られた層状シリコン化合物に比べて、酸素量が少なく、フッ素を含んでいる。
【0033】
以下、層状シリコン化合物を製造する工程を層状シリコン化合物製造工程ということがある。
層状シリコン化合物製造工程において、少なくともアニオンにフッ素を含む酸としてフッ化水素酸(HF)を用いる場合は、塩酸(HCl)を混合して用いることが好ましい。フッ化水素酸(HF)のみを用いた場合でも層状シリコン化合物が得られるものの、得られる層状シリコン化合物は活性が高く微量の空気によって酸化され、酸素量が増大するため好ましくない。また塩酸(HCl)のみを用いた場合は、非特許文献1,2と同様であり、酸素量が多い層状シリコン化合物しか得られない。
【0034】
フッ化水素酸(HF)と塩酸(HCl)との組成比は、モル比でHF/HCl=1/1〜1/100の範囲が望ましい。フッ化水素酸(HF)の量がこの比より多くなるとCaF2、CaSiO系などの不純物が多く生成する場合があり、この不純物と層状シリコン化合物とを分離するのが困難であるため好ましくない。またフッ化水素酸(HF)の量がこの比より少なくなると、フッ化水素酸(HF)によるSi-O結合に対するエッチング作用が弱く、得られる層状シリコン化合物に酸素が多く残存する場合がある。
【0035】
フッ化水素酸(HF)と塩酸(HCl)の混合物と、二ケイ化カルシウム(CaSi2)との配合比は、当量より酸を過剰にすることが望ましい。また反応雰囲気は、真空下又は不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。なおこの層状シリコン化合物製造工程によれば、非特許文献1,2の製造方法に比べて反応時間が短くなることも明らかとなった。反応時間が長すぎるとSiとHFがさらに反応してSiF4が生じてしまうため、反応時間は0.25〜24時間程度で充分である。反応によりCaCl2などが生成するが、水洗によって容易に除去することができ、層状シリコン化合物の精製は容易である。
【0036】
層状シリコン化合物製造工程において、少なくともアニオンにフッ素を含む酸として例えばテトラフルオロホウ酸(HBF4)を用いる場合は、塩酸(HCl)を混合する必要がなく、テトラフルオロホウ酸(HBF4)のみと二ケイ化カルシウム(CaSi2)とを反応させることができる。反応条件は、上記と同様に行うことができる。この方法によれば、得られる層状シリコン化合物及びシリコン材料に酸素(O)が含まれないので、本発明のシリコン材料を負極活物質として用いた場合に不可逆容量をさらに低減することができる。
【0037】
上記した層状シリコン化合物製造工程において得られる層状シリコン化合物は、ラマンスペクトルにおいてラマンシフトの330±20cm-1、360±20cm-1、498±20cm-1、638±20cm-1、734±20cm-1にピークが存在する。この層状シリコン化合物は、ケイ素原子で構成された六員環が複数連なった構造をしていると考えられる。
【0038】
上記層状シリコン化合物製造工程に次いで、得られた層状シリコン化合物に対して熱処理を行う。熱処理は、非酸化性雰囲気で行う。非酸化性雰囲気としては、減圧雰囲気、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気が例示される。また熱処理温度は、高すぎると得られるシリコン材料のBET比表面積が低下しすぎ、低すぎるとシリコン結晶子が成長しない場合がある。よって熱処理温度は、350℃以上かつ950℃未満の範囲が好ましく、400℃以上800℃以下の範囲が特に好ましい。
【0039】
酸とCaSi2とを反応させて得られた層状シリコン化合物を非酸化性雰囲気下にて熱処理することにより、シリコン材料が得られる。条件によっては、ナノサイズのシリコン結晶子を含むシリコン材料が得られる。熱処理時間は熱処理温度によって異なるが、500℃以上の熱処理であれば1時間〜48時間、好ましくは2時間〜12時間とすることができる。
【0040】
本発明のシリコン材料は、その組成におけるSi/O原子比が1/0.5を超えかつ1/0.1以下の範囲にあるものを好ましく用いることができる。Si/O原子比が1/0.4〜1/0.2の範囲にあることがより望ましい。Si/O原子比が1/0.1を超えるシリコン材料を製造するのは難しく、Si/O原子比が1/0.5以下では、そのシリコン材料を負極活物質として用いた二次電池の初期容量及び初期効率が低下する場合がある。なおSi/O原子比は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)から算出することができる。
【0041】
<二次電池の負極>
本発明のシリコン材料は、リチウムイオン二次電池などの二次電池における負極活物質として用いることができる。この場合、本発明のシリコン材料の表面に炭素層を形成させたものを用いてもよい。本発明のシリコン材料を用いて、例えば非水系二次電池の負極を作製するには、本発明のシリコン材料を含む負極活物質粉末と、炭素粉末などの導電助剤と、バインダーと、適量の有機溶剤を加えて混合しスラリーにしたものを、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの方法で集電体上に塗布し、バインダーを乾燥あるいは硬化させることによって作製することができる。
【0042】
なおスラリーに含まれる負極活物質粉末は、粒径が2μm〜20μmの範囲に分級されたものを用いるのが好ましい。粒径が2μm未満のものが含まれると、電解液との接触界面が増加し、二次電池として使用時に電解液の分解生成物が増大する場合がある。また粒径が20μmを超える粒子は最外殻の応力が増大し、負極活物質層の破壊や脱落が生じる場合がある。また負極活物質層の厚みが負極活物質の粒径に依存し、厚みの制御が困難となる場合がある。分級方法は、公知の方法を用いることができる。
【0043】
バインダーは、なるべく少ない量で活物質等を結着させることが求められるが、その添加量は活物質、導電助剤、及びバインダーを合計したものの0.5質量%〜50質量%が望ましい。バインダーが0.5質量%未満では電極の成形性が低下し、50質量%を超えると電極のエネルギー密度が低くなる。
【0044】
バインダーとしては、溶剤系バインダー及び水系バインダーのいずれも用いることができる。溶剤系バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride:PVdF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が例示される。
【0045】
水系バインダーとは、水にバインダーを分散又は溶解させた状態で活物質と混合して用いるバインダーを意味し、代表的なものとしてポリアクリル酸(PAA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウムを用いることができる。これらのバインダーにカルボキシメチルセルロース(CMC) を混合したものを水系バインダーとすることもできるし、SBR及び/又はPAAに替えてCMC単独で水系バインダーとして用いることもできる。また、水系バインダーとして、水溶性高分子の架橋体を用いることも可能で、CMC架橋体等の水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン/アクリル酸グラフト重合体等を用いることができる。
【0046】
バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを用いると負極の電位を下げることができ二次電池の電圧向上が可能となる。またバインダーとしてポリアミドイミド(PAI)又はポリアクリル酸(PAA)を用いることで初期効率と放電容量が向上する場合がある。
【0047】
集電体は、放電或いは充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体のことである。集電体は箔、板等の形状を採用することができるが、目的に応じた形状であれば特に限定されない。集電体として、例えば銅箔やアルミニウム箔を好適に用いることができる。
【0048】
負極活物質として、本発明のシリコン材料に、グラファイト、ハードカーボン、ケイ素、炭素繊維、スズ(Sn)、酸化ケイ素など公知のものを混合することもできる。
【0049】
中でもSiOx(0.3≦x≦1.6)で表されるケイ素酸化物が特に好ましい。このケイ素酸化物粉末の各粒子は、不均化反応によって微細なSiと、Siを覆うSiO2とからなる。xが下限値未満であると、Si比率が高くなるため充放電時の体積変化が大きくなりすぎてサイクル特性が低下する。またxが上限値を超えると、Si比率が低下してエネルギー密度が低下する。xの範囲は0.5≦x≦1.5の範囲が好ましく、0.7≦x≦1.2の範囲がさらに望ましい。
【0050】
また負極活物質として、SiOxに対し炭素材料を1〜50質量%で複合化したものを用いることもできる。炭素材料を複合化することで、二次電池のサイクル特性が向上する。炭素材料の複合量が1質量%未満では導電性向上の効果が得られず、50質量%を超えるとSiOxの割合が相対的に減少して負極容量が低下してしまう。炭素材料の複合量は、SiOxに対して5〜30質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲がさらに望ましい。SiOxに対して炭素材料を複合化するには、CVD法などを利用することができる。
【0051】
ケイ素酸化物粉末は平均粒径が1μm〜10μmの範囲にあることが望ましい。平均粒径が10μmより大きいと非水系二次電池の耐久性が低下し、平均粒径が1μmより小さいと凝集して粗大な粒子となるため同様に非水系二次電池の耐久性が低下する場合がある。
【0052】
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、天然黒鉛、造粒黒鉛、人造黒鉛、難燃性黒鉛、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)等を単独でまたは二種以上組み合わせて添加することができる。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、本発明のシリコン材料からなる活物質100質量部に対して、1〜100質量部程度とすることができる。導電助剤の量が1質量部未満では効率のよい導電パスを形成できず、100質量部を超えると電極の成形性が悪化するとともにエネルギー密度が低くなる。なお炭素材料が複合化されたケイ素酸化物を活物質として用いる場合は、導電助剤の添加量を低減あるいは無しとすることができる。
【0053】
有機溶剤には特に制限はなく、複数の溶剤の混合物でも構わない。例えばN-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンとエステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等)との混合溶媒、あるいはN-メチル-2-ピロリドンとグライム系溶媒(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)
との混合溶媒でも構わない。
【0054】
本発明の二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、負極にはリチウムをプリドーピングすることもできる。負極にリチウムをドープするには、例えば対極に金属リチウムを用いて半電池を組み、電気化学的にリチウムをドープする電極化成法などを利用することができる。リチウムのドープ量は特に制約されない。
【0055】
本発明の二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、特に限定されない公知の正極、電解液、セパレータを用いることができる。正極は、リチウムイオン二次電池で使用可能なものであればよい。正極は、集電体と、集電体上に結着された正極活物質層とを有する。正極活物質層は、正極活物質と、バインダーとを含み、さらには導電助剤を含んでも良い。正極活物質、導電助材およびバインダーは、特に限定はなく、リチウムイオン二次電池で使用可能なものであればよい。
【0056】
正極活物質としては、金属リチウム、LiCoO2、LixNiaCobMncO2、LixCobMncO2、LixNiaMncO2、LixNiaCobO2及びLi2MnO3(但し0.5≦x≦1.5、0.1≦a<1、0.1≦b<1、0.1≦c<1)から選ばれるLi化合物又は固溶体、Li2MnO3、硫黄などが挙げられる。集電体は、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼など、リチウムイオン二次電池の正極に一般的に使用されるものであればよい。導電助剤は上記の負極で記載したものと同様のものが使用できる。
【0057】
電解液は、有機溶媒に電解質であるリチウム金属塩を溶解させたものである。有機溶媒として、非プロトン性有機溶媒、たとえばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる一種以上を用いることができる。また、溶解させる電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiI、LiClO4、LiCF3SO3等の有機溶媒に可溶なリチウム金属塩を用いることができる。
【0058】
電解液として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの有機溶媒にLiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等のリチウム金属塩を0.5mol/Lから1.7mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を使用することができる。
【0059】
セパレータは、非水系二次電池に使用できるものであれば特に限定されない。セパレータは、正極と負極とを分離し電解液を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い微多孔膜を用いることができる。
【0060】
本発明の二次電池はその形状に特に限定はなく、円筒型、積層型、コイン型等、種々の形状を採用することができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極にセパレータを挟装させ電極体とし、正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後、この電極体を電解液とともに電池ケースに密閉して電池となる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例により本発明の実施態様を具体的に説明する。
【0062】
(実施例1)
濃度36質量%のHCl水溶液65mlを氷浴中で0℃とし、アルゴンガス気流中にてそこへ3.3gの二ケイ化カルシウム(CaSi2)を加えて撹拌した。発泡が完了したのを確認した後に室温まで昇温し、室温でさらに2時間撹拌した後、蒸留水20mlを加えてさらに10分間撹拌した。このとき黄色粉末が浮遊した。得られた混合溶液を濾過し、残渣を10mlの蒸留水で洗浄した後、10mlのエタノールで洗浄し、真空下で12時間乾燥して3.5gの層状シリコン化合物を得た。
【0063】
この層状シリコン化合物のラマンスペクトルを図1に示している。ラマンシフトの330±10cm-1、360±10cm-1、498±10cm-1、638±10cm-1、734±10cm-1にピークが存在している。
【0064】
この層状シリコン化合物を2g秤量し、O2の量が1体積%以下のアルゴンガス中にて500℃で12時間保持する熱処理を行い、褐色のシリコン材料1.45gを得た。このシリコン材料のBET比表面積は7.6m2/gであった。
【0065】
得られたシリコン材料に対してCuKα線を用いたX線回折測定(XRD測定)を行った。XRDチャートには、シリコン結晶子由来の三つのピークが存在した。そして(111)面の回折ピーク(2θが27°〜30°の位置に存在)の半値幅からシェラーの式より算出される結晶子サイズがnmオーダーであり、ナノサイズのシリコン結晶子を含むシリコン材料であった。
【0066】
このシリコン材料について、拡散反射吸収スペクトルを測定し、その吸収端波長からバンドギャップを算出したところ、表1にも示すように1.6eVであった。
【0067】
(実施例2)
実施例1と同様に製造された層状シリコン化合物を用い、熱処理温度を700℃としたこと以外は実施例1と同様にしてシリコン材料を得た。
【0068】
このシリコン材料について、実施例1と同様にしてバンドギャップを算出したところ、表1にも示すように1.4eVであった。
【0069】
(実施例3)
実施例1と同様に製造された層状シリコン化合物を用い、熱処理温度を800℃としたこと以外は実施例1と同様にしてシリコン材料を得た。
【0070】
このシリコン材料について、実施例1と同様にしてバンドギャップを算出したところ、表1にも示すように1.4eVであった。
【0071】
(実施例4)
実施例1と同様に製造された層状シリコン化合物を用い、熱処理温度を900℃としたこと以外は実施例1と同様にしてシリコン材料を得た。
【0072】
このシリコン材料について、実施例1と同様にしてバンドギャップを算出したところ、表1にも示すように1.3eVであった。
【0073】
(実施例5)
濃度46質量%のHF水溶液2mlと、濃度36質量%のHCl水溶液63mlとの混合溶液を氷浴中で0℃とし、アルゴンガス気流中にてそこへ3.3gの二ケイ化カルシウム(CaSi2)を加えて撹拌した。発泡が完了したのを確認した後に室温まで昇温し、室温でさらに2時間撹拌した後、蒸留水20mlを加えてさらに10分間撹拌した。このとき黄色粉末が浮遊した。
【0074】
得られた混合溶液を濾過し、残渣を10mlの蒸留水で洗浄した後、10mlのエタノールで洗浄し、真空乾燥して2.5gの層状シリコン化合物を得た。
【0075】
この層状シリコン化合物を2g秤量し、O2の量が1体積%以下のアルゴンガス中にて500℃で12時間保持する熱処理を行い、褐色のシリコン材料1.22gを得た。
【0076】
このシリコン材料について、実施例1と同様にしてバンドギャップを算出したところ、表1にも示すように1.6eVであった。
【0077】
(実施例6)
実施例5と同様に製造された層状シリコン化合物を用い、熱処理温度を700℃としたこと以外は実施例5と同様にしてシリコン材料を得た。
【0078】
このシリコン材料について、実施例1と同様にしてバンドギャップを算出したところ、表1にも示すように1.4eVであった。
【0079】
(実施例7)
実施例5と同様に製造された層状シリコン化合物を用い、熱処理温度を900℃としたこと以外は実施例5と同様にしてシリコン材料を得た。
【0080】
このシリコン材料について、実施例1と同様にしてバンドギャップを算出したところ、表1にも示すように1.2eVであった。
【0081】
(比較例1)
実施例1と同様に製造された層状シリコン化合物を用い、熱処理温度を300℃としたこと以外は実施例1と同様にしてシリコン材料を得た。
【0082】
このシリコン材料について、実施例1と同様にしてバンドギャップを算出したところ、表1にも示すように2.1eVであった。
【0083】
(比較例2)
市販の結晶シリコン(レアメタリック社製)を比較例2とした。この結晶シリコンのバンドギャップは、表1にも示すように1.1eVであった。
【0084】
(比較例3)
市販のSiOx(x=0.5〜1.6)を比較例3とした。このSiOxについて、実施例1と同様にしてバンドギャップを算出したところ、表1にも示すように1.8eVであった。
【0085】
<電池の製造>
Ar雰囲気下、800℃で各シリコン材料にプロパンガスを通気させて、各シリコン材料の粒子表面に炭素層を形成させた。炭素層を形成させた各シリコン材料をそれぞれの実施例及び比較例のシリコン材料として用いて、以下のとおり、実施例1〜7、比較例1〜3のリチウム二次電池を製造した。
各実施例及び各比較例のシリコン材料それぞれ45質量部と、天然黒鉛粉末40質量部と、アセチレンブラック5質量部と、バインダー溶液33質量部とを混合してそれぞれのスラリーを調製した。バインダー溶液には、ポリアミドイミド(PAI)樹脂がN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に30質量%溶解した溶液を用いている。これらのスラリーを、厚さ約20μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いてそれぞれ塗布し、乾燥して銅箔上に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを100℃で2時間真空乾燥し、負極活物質層の目付け量が2.0mg/cm2、電極密度が1.0g/cm3の負極をそれぞれ形成した。
【0086】
上記の手順で作製した負極を評価極として用い、リチウム二次電池(ハーフセル)をそれぞれ作製した。対極は金属リチウム箔(厚さ500μm)とした。
【0087】
対極をφ13mm、評価極をφ11mmに裁断し、セパレータ(ヘキストセラニーズ社製ガラスフィルター及びCelgard社製「Celgard2400」)を両者の間に介装して電極体電池とした。この電極体電池を電池ケース(CR2032型コイン電池用部材、宝泉株式会社製)に収容した。電池ケースには、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:1(体積比)で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解した非水電解液を注入し、電池ケースを密閉してそれぞれのリチウム二次電池を得た。
【0088】
<電池特性試験>
各実施例及び各比較例のリチウム二次電池について、電流:0.1C、電圧:0.01-1.0Vの条件で、それぞれ50サイクルの充放電試験を行った。初期の充電容量と放電容量を測定し、初期効率(100×放電容量/充電容量)を算出した結果を表1に示す。また初期の放電容量に対する50サイクル後の放電容量の割合である容量維持率を算出し、寿命として表1に示す。さらに、バンドギャップと初期効率との関係を図2に、バンドギャップと容量維持率との関係を図3に示す。
【0089】
なお図2,3において、黒丸は酸種に塩酸(HCl)のみを用いて得られたシリコン材料を用いたもの、白丸は酸種に塩酸(HCl)とフッ化水素酸(HF)の混合物を用いて得られたシリコン材料を用いたものを示している。×はSi又はSiOxを示している。
【0090】
【表1】
【0091】
表1及び図2より、バンドギャップが小さくなるほど初期効率が向上する傾向が認められ、バンドギャップが1.1eVを超えかつ1.7eV以下の範囲にあることで初期効率が65%以上となることが明らかである。なお比較例2のリチウムイオン二次電池は、初期効率及び初期容量は好適であったものの、容量維持率が著しく低かった。また比較例3のリチウムイオン二次電池は、初期容量が著しく小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のシリコン材料は、二次電池、電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタなどの蓄電装置の負極活物質として利用できる。そして比表面積が大きく、含まれる酸素量が少ないことから、本発明のシリコン材料を負極活物質として用いた二次電池は、電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用、パソコン、携帯通信機器、家電製品、オフィス機器、産業機器などに利用される非水系二次電池として有用であり、特に、大容量、大出力が必要な電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用に最適に用いることができる。
【0093】
また本発明のシリコン材料は、熱処理温度の自由度が高く比表面積の大きさを制御して他の材料と複合化できることから、半導体材料、例えばCMOS、半導体メモリ、太陽電池材料、光触媒材料などとしても利用することができる。
図1
図2
図3