(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バネ状部材が前記検査検出器に案内されたことを検知する検知手段を更に備え、前記表面特性検査装置は、前記検知手段による検知信号に基づいて、前記交流ブリッジ回路からの出力信号を抽出することを特徴とする請求項1に記載の表面特性検査選別装置。
良品と判断され選別されたバネ状部材を回収または搬送するための良品回収手段と、不良品と判断され選別されたバネ状部材を回収するための不良品回収手段と、を更に備えたことを特徴とする請求項3に記載の表面特性検査選別システム。
前記搬送手段は、搬送ベルトと、前記搬送ベルトの、バネ状部材を載置する位置を区画する区画部材と、を備えることを特徴とする請求項3に記載の表面特性検査選別システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術は、局所的な測定であるため、渦電流の集中による発熱の影響が生じやすく、表面処理部全体を検査しようとすると多大な時間を要する。弁バネなどのバネ状部材は、ギヤなどの大型の部材と比べ、表面処理に要する時間(タクトタイム)が短いため、表面特性の検査、良品と不良品との選別にかかる時間の方が長くなってしまい、検査・選別工程が全体の工程を律速するという問題があった。また、良否判断した後のバネ状部材を短時間で効率的に選別する具体的な構成は提案されておらず、選別作業にも多大な時間を要し、効率的な検査、選別を行うことができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ショットピーニング処理や熱処理、窒化処理などの表面処理を施したバネ状部材の表面特性を評価し、良否を判断し、良品と不良品とを選別する工程を効率的に行い、タクトタイムが短いバネ状部材の検査・選別に好適に適用することができる表面特性検査選別装置、表面特性検査選別システム及び表面特性検査選別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、表面処理装置によって表面処理が施されたバネ状部材の表面特性を評価し、良品と不良品とを選別する表面特性検査選別装置であって、交流ブリッジ回路と、前記交流ブリッジ回路に交流電力を供給する交流電源と、前記交流ブリッジ回路からの出力信号に基づいてバネ状部材の表面特性を評価する評価装置と、を備え、前記交流ブリッジ回路は、第1の抵抗と第2の抵抗とに分配比が可変に構成された可変抵抗と、交流磁気を励起可能なコイルを備えバネ状部材に渦電流を励起するように当該コイルを配置可能に形成された検査検出器と、前記検査検出器からの出力と比較する基準となる基準状態を検出する基準検出器とを有し、前記第1の抵抗、前記第2の抵抗、前記基準検出器及び前記検査検出器はブリッジ回路を構成し、前記評価装置は、前記交流ブリッジ回路に交流電力が供給され、前記検査検出器が前記バネ状部材の電磁気特性を検出し、前記基準検出器が基準状態を検出している状態における前記交流ブリッジ回路からの出力信号に基づいて、前記バネ状部材の表面特性を評価する表面特性検査装置と、前記表面処理装置から搬送されたバネ状部材が停止することなく前記検査検出器を通過するように、バネ状部材を案内する案内部材と、前記検査検出器によって表面特性を評価された後のバネ状部材を良品と不良品とに選別する選別手段と、を備え、前記表面特性検査装置は、
1つのバネ状部材が前記検査検出器を通過している間に前記交流ブリッジ回路から出力される出力信号
全体を積分し、この積分値に基づいて、バネ状部材の表面特性を評価し良否を判断する、という技術的手段を用いる。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、検査検出器のコイルによりバネ状部材に渦電流を励起し、交流ブリッジ回路から出力された出力信号に基づいてバネ状部材の表面特性を評価することができる。これにより、簡単な回路構成で高精度の表面状態の検査が可能である。
また、バネ状部材を検査検出器内に停止させずに、通過させて、表面特性検査装置によりバネ状部材の表面特性を評価し良否を判断するため、バネ状部材の表面特性を評価し良否を判断する時間を短縮することができる。これにより、短いタクトタイムに対応して、バネ状部材の表面特性の評価、良否の判断を行うことができる。そして、選別手段によりバネ状部材を良品と不良品とに確実に選別することができる。
なお、表面特性とは、「バネ状部材の最表面から内面の影響層までの特性」のことをいう。
また、出力信号の積分値に基づいて良否を判断すると、バネ状部材の検査検出器内の通過状態などに起因する値のばらつきを小さくすることができるので、より正確な測定、良否の判断が可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の表面特性検査選別装置において、バネ状部材が前記検査検出器に案内されたことを検知する検知手段を更に備え、前記表面特性検査装置は、前記検知手段による検知信号に基づいて、前記交流ブリッジ回路からの出力信号を抽出する、という技術的手段を用いる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、検知手段により、バネ状部材が案内部材を通過し、検査検出器内に案内されたことを確実に検知し、これをトリガーとしてバネ状部材の表面特性の評価、良否の判断を行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、表面特性検査選別システムが、請求項1または請求項2に記載の表面特性検査選別装置と、表面処理装置にて表面処理が施されたバネ状部材を表面特性検査選別装置に搬送する搬送手段と、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項3に記載の発明のように、表面特性検査選別装置と、表面処理装置にて表面処理が施されたバネ状部材を表面特性検査装置に搬送する搬送手段とを組み合わせることにより、バネ状部材の搬送、評価、選別、搬出を連続して行うことができる表面特性検査選別システムを構築することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の表面特性検査選別システムにおいて、良品と判断され選別されたバネ状部材を搬送するための良品回収手段と、不良品と判断され選別されたバネ状部材を回収するための不良品回収手段と、を更に備えた、という技術的手段を用いる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、良品回収手段により良品を速やかに次工程に搬送することができるとともに、不良品回収手段により不良品のみを選別して回収することができるので、選別作業を効率的に行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項3に記載の表面特性検査選別システムにおいて、前記搬送手段は、搬送ベルトと、前記搬送ベルトの、バネ状部材を載置する位置を区画する区画部材と、を備える、という技術的手段を用いる。
【0015】
請求項5に記載の発明のように、搬送手段の搬送ベルトを区画部材により区画することにより、バネ状部材を所定のタイミングで1つずつ確実に搬送することができる。また、バネ状部材を表面特性検査選別装置に配置する前に貯留するための部材を設ける必要がなく、装置を簡素化することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、表面特性検査選別方法であって、請求項1または請求項2に記載の表面特性検査選別装置を用意し、前記表面処理装置にて表面処理が施されたバネ状部材が停止することなく前記検査検出器を通過するように、バネ状部材を前記案内部材によって案内し、バネ状部材が前記検査検出器を通過している間の出力信号から求めた
前記積分値をあらかじめ設定したしきい値と比較することにより、前記表面特性検査装置により良否を判断し、前記表面特性検査装置による良否の判断に基づいて、バネ状部材を良品と不良品とに選別する、という技術的手段を用いる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、表面特性検査選別装置を用いて、バネ状部材を検査検出器内に停止させずに、通過させて、表面特性検査装置によりバネ状部材の表面特性を評価し良否を判断するため、バネ状部材の表面特性を評価し良否を判断する時間を短縮することができる。これにより、短いタクトタイムに対応して、バネ状部材Mの表面特性の評価、良否の判断を行うことができる。そして、選別手段によりバネ状部材を良品と不良品とに確実に選別することができる。
【0020】
請求項
7に記載の発明では、請求項
6に記載の表面特性検査選別方法において、前記良否を判断する工程は、表面特性を評価するバネ状部材と同一構造の基準検体を前記基準検出器に配置した状態で行われる、という技術的手段を用いる。
【0021】
請求項
7に記載の発明によれば、基準検出器において基準状態を検出するために、表面特性を評価するバネ状部材と同一構造の基準検体を用いているため、温度、湿度、磁気などの検査環境の変化により出力値が変動しても、その影響は被検体と同等になる。これにより、温度、湿度、磁気などの検査環境の変化による出力値の変動をキャンセルすることができ、測定精度を向上させることができる。ここで、「同一構造」とは、材質、形状が同一のことを意味し、表面処理の有無を問わない。
【0022】
請求項
8に記載の発明では、請求項6
又は7に記載の表面特性検査選別方法において、前記評価装置は、各バネ状部材の識別情報と該バネ状部材の表面特性の検査データとを関連付けて記憶する記憶手段を更に備える、という技術的手段を用いる。
【0023】
請求項
8に記載の発明によれば、ロット、製造番号、履歴などの各被検体の識別情報を、測定値、良否判断結果、測定日時、検査状態などの検査データと関連付けて記憶させておくことができるので、検査したバネ状部材の表面処理の状態を流通後に追跡可能な状態にすることができ、トレーサビリティを担保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
表面特性検査選別装置1は、ショットピーニング装置などの表面処理装置により表面処理が行われ、搬送手段により搬送されたバネ状部材Mの表面特性を評価し、良否を判断し、その判別結果に基づいて良品と不良品とに選別して搬出する装置である。
図1に示すように、表面特性検査選別装置1は、後述する表面特性検査装置2と、バネ状部材Mの表面特性を測定する測定部材40と、バネ状部材Mを良品と不良品とに選別する選別手段50と、を備えている。なお、
図1においては説明のため、検査検出器23はバネ状部材Mが内部を通過する状況がわかりやすいように透視図とし、表面特性検査装置2及び制御装置60は、模式的に接続状態を示している。
【0026】
測定部材40には、表面特性検査装置2が備える検査検出器23と、バネ状部材Mを検査検出器23に案内する案内部材41と、検査検出器23から排出されたバネ状部材を選別手段50に案内する搬出部材42と、バネ状部材Mが案内部材41を通過し、検査検出器23内に案内されたことを検知するための検知手段43と、を備えている。
【0027】
検査検出器23は、
図2(B)に示すように、バネ状部材M全体を覆うように形成された円筒状のコア23aと、コア23aの外周面に巻回されたコイル23bと、を備えている。コア23aは非磁性材料、例えば、樹脂からなり、内部をバネ状部材Mが通過可能に形成されている。このコイル23bは、バネ状部材の表面特性検査領域を囲むように対向されて巻回されている。ここで、バネ状部材の表面特性検査領域を囲むとは、少なくとも表面特性検査領域の一部を包囲する(包むよう囲む)ことで、表面特性検査領域に渦電流を励起することを含むことを意味している。また、コイル23bの長さは、バネ状部材Mが検査検出器23を通過する速度に応じて、出力値の抽出を適切に行うことができるように、適宜設定されている。
【0028】
検査検出器23は、後述する
図2(A)に示す回路を構成する。検査検出器23は、渦電流の反応を高精度に捉えて表面特性を評価することを特徴としているため、表面特性を検査したい領域に渦電流が流れるように、バネ状部材Mに対して配置することが好ましい。
つまり、コイル23bの巻方向が渦電流を流したい方向と同方向となるように配置することが好ましい。コイル23bの巻方向がバネ状部材Mの軸とほぼ直交するようにコイル23bを配置するとよい。これにより、バネ状部材Mの巻方向に磁界ループが発生するため、効率よく渦電流を励起させることができ、バネ状部材M全体の表面特性を一度に検査することができる。
【0029】
図1(B)に示すように、案内部材41は、コイル状部材Mを検査検出器23に滑らかに案内できるように、コイル状部材Mの形状に合わせ、コア23aの内周面の一部と略同一の曲面形状を備えた形状に形成されている。ここで、案内部材41は、検査検出器23の一部として一体的に形成することもできる。
【0030】
検知手段43として、例えば、レーザ式位置センサを用いることができる。検知手段43は、後述する表面特性検査装置2の判断手段36と接続されており、バネ状部材Mが案内部材41を通過し、検査検出器23内に案内されたことを検知する検知信号を送出することができる。
【0031】
選別手段50として、本実施形態では、圧縮エアの噴射によりバネ状部材Mを吹き飛ばし、搬送方向を変更することができる噴射ノズルを用いた。
【0032】
制御装置60は、表面特性検査装置2の判断手段36と接続されており、判断手段36におけるバネ状部材Mの表面処理状態の良否の判断結果に基づいて選別手段50の動作を制御する。
【0033】
図1に示すように、表面特性検査選別装置1は、ピーニング装置などの表面処理装置で処理されたバネ状部材Mを表面特性検査選別装置1に向かって搬送する搬送手段100、選別手段50により良品として選別されたバネ状部材Mを回収または次工程に搬送する良品回収手段110、選別手段50により不良品として選別されたバネ状部材Mを回収する不良品回収手段120などと組み合わせて、表面特性検査選別システムSYSを構成することができる。ここで、表面特性検査選別装置1は、バネ状部材Mが自重で測定部材40を案内部材41、検査検出器23、搬出部材42の順で移動可能なように搬送方向から斜め下方に向かって傾斜して配置されている。
【0034】
搬送手段100として、搬送ベルト101と、搬送ベルト101の、バネ状部材Mを載置する位置を区画する区画部材である複数のピン102が設けられ、隣接するピン102とピン102との間にバネ状部材Mを1つずつ配置し搬送する構成を好適に用いることができる。これにより、バネ状部材Mを所定のタイミングで1つずつ確実に搬送することができる。また、バネ状部材Mを表面特性検査選別装置1に配置する前に貯留するための部材を設ける必要がなく、装置を簡素化することができる。ここで、案内部材41は、搬送ベルト101が反転する位置近傍に配置される。
【0035】
良品回収手段110は良品を回収する回収箱やベルトコンベアなどで構成され、搬出部材42の延長方向の下方に設けられている。不良品回収手段120は、不良品を貯留する貯留箱などで構成され、良品回収手段110より手前下方に設けられている。
【0036】
このような表面特性検査選別システムSYSによれば、搬送手段100を備えているので、バネ状部材Mの搬送、評価、選別、搬出を連続して行うことができる表面特性検査選別システムとして構築することができる。また、良品回収手段110により良品を回収する、または、速やかに次工程に搬送することができるとともに、不良品回収手段120により不良品のみを選別して回収することができるので、選別作業を効率的に行うことができる。
【0037】
(表面特性検査装置)
次に表面特性検査装置2の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、本発明の実施形態による表面特性検査装置2は、交流電源10、交流ブリッジ回路20及び評価装置30を備えている。
【0038】
交流電源10は、交流ブリッジ回路20に周波数が可変の交流電力を供給可能に構成されている。
【0039】
交流ブリッジ回路20は、可変抵抗21、バネ状部材Mに渦電流を励起するようにコイルを配置可能に形成された検査検出器23、検査検出器23と同様の構成であって、バネ状部材Mと同一構造の基準検体Sを配置可能に形成され、検査検出器23からの出力と比較する基準となる基準状態を検出する基準検出器22を備えている。ここで、「バネ状部材Mと同一構造」とは、材質、形状が同一のことを意味し、表面処理の有無を問わない。
【0040】
可変抵抗21は、抵抗R
Aを抵抗R1と抵抗R2とに分配比γを可変に分配することができるように構成されている。抵抗R1、抵抗R2は、基準検出器22及び検査検出器23とともにブリッジ回路を構成している。本実施形態では、抵抗R1と抵抗R2とを分配する点A及び基準検出器22と検査検出器23との間の点Bが評価装置30の交流電源10に接続され、抵抗R1と基準検出器22との間の点C及び抵抗R2と検査検出器23との間の点Dが増幅器31に接続されている。また、ノイズの低減のため、基準検出器22及び検査検出器23側が接地されている。
【0041】
評価装置30は、交流ブリッジ回路20から出力される電圧信号を増幅する増幅器31、全波整流を行う絶対値回路32、直流変換を行うローパスフィルタ(LPF)33、交流電源10から供給される交流電圧と増幅器31から出力される電圧の位相を比較する位相比較器34、交流電源10から供給される交流電圧の周波数を調整する周波数調整器35、R1とR2の分配を最適化する非平衡調整を行うとともに、LPF33からの出力に基づいてバネ状部材Mの表面状態の良否を判断する判断手段36及び判断手段36による判断結果を表示、警告する表示手段37、評価位置の温度を検出する温度測定手段38を備えている。また、判断手段36内部または図示しない領域に記憶手段を備えている。
【0042】
増幅器31は、点C及び点Dに接続され、点Cと点Dとの間の電位差が入力される。また、絶対値回路32、LPF33の順に判断手段36に接続されている。位相比較器34は、交流電源10、増幅器31及び判断手段36に接続されている。周波数調整器35は、交流電源10及び増幅器31に接続されている。また、判断手段36は、制御信号を出力することにより、交流ブリッジ回路20の点Aの位置、即ち、抵抗R1と抵抗R2の分配比γを変更することができるように構成されており、これにより、後述する可変抵抗設定工程が実行される。
【0043】
温度測定手段38は、非接触式の赤外センサや熱電対などからなり、バネ状部材Mの表面の温度信号を判断手段36に出力する。判断手段36は、温度測定手段38で検出されたバネ状部材Mの温度が所定範囲内である場合に、バネ状部材Mの表面処理状態の良否を判断し、温度測定手段38で検出された温度が所定範囲外である場合に、バネ状部材Mの表面処理状態の良否の判断を行わない。これにより、バネ状部材Mの温度が検査の精度に影響を及ぼすような場合にバネ状部材の表面処理状態の良否の判断を行わないようにすることができるので、精度の高い検査を行うことができる。ここで、熱電対などで評価位置Tsの温度を測定し、バネ状部材Mの表面の温度を代表する温度としてバネ状部材Mの表面処理状態の良否を判断するか否かの判断を行う構成を採用することもできる。
【0044】
交流電源10によりコイル23bに所定の周波数の交流電力を供給し、コイル23bがバネ状部材Mの検査対象面に対向するように、バネ状部材Mを検査検出器23を通過させると交流磁界が発生し、バネ状部材Mの表面に交流磁界に交差する方向に流れる渦電流が励起される。渦電流は残留応力層の電磁気特性に応じて変化するため、残留応力層の特性(表面処理状態)に応じて増幅器31から出力される出力波形(電圧波形)の位相及び振幅(インピーダンス)が変化する。この出力波形の変化により表面処理層の電磁気特性を検出し、検査を行うことができる。
【0045】
図2(B)に示すように、検査検出器23の外方であってバネ状部材Mを囲んで配置される磁気シールド23cを設けることもできる。磁気シールド23cを用いると、外部磁気を遮蔽することができるため、電磁気特性の検出感度を向上させることができ、表面処理状態に対応する電磁気特性の検出感度が向上するので、バネ状部材Mの表面処理状態をより精度良く評価することができる。
【0046】
(交流ブリッジ回路からの出力)
次に、非平衡状態に調整された交流ブリッジ回路20からの出力について、
図3の等価回路を参照して説明する。基準検出器22には基準出力を出力するための基準検体Sが近接され、検査検出器23には表面処理状態の良否を判断すべきバネ状部材Mが近接されている。ここで、基準検体Sはバネ状部材Mと同一構造であり、好ましくは表面処理を行っていない未処理品を用いる。
【0047】
可変抵抗R
Aの分配比をγとした場合、抵抗R1はR
A/(1+γ)、抵抗R2はR
Aγ/(1+γ)となる。基準検出器22のインピーダンスをR
S+jωL
S、検査検出器23のインピーダンスをR
T+jωL
Tとする。また、点Aの電位をEとし、基準検出器22、検査検出器23に各検体(基準検体S、バネ状部材M)を近接させていないときのブリッジの各辺に流れる励磁電流をそれぞれi
1、i
2、各検体を基準検出器22、検査検出器23に近接させることにより磁気量が変化し、その変化量に応じて流れる電流をそれぞれiα、iβとする。このときの基準検出器22及び検査検出器23の電位E1、E2及び励起電流i
1、i
2は以下の式(1)〜(4)で表される。
【0052】
増幅器31に出力される電圧はE1、E2の差分であり、次式で表される。
【0054】
式(3)〜(5)より次式が導かれる。
【0056】
式(6)の右辺を次の成分A、Bに分けて差分電圧の各成分について考える。
成分A:
成分B:
【0057】
成分Aは、各検出器成分:(R
S+jωL
S)、(R
T+jωL
T)、各検出器に各検体が近接したときに変化する電流量:iα、iβにより構成される。iα、iβは各検体の透磁率、導電率などの電磁気特性に起因する検体を通る磁気量によって大きさが変化する。このため各検出器から発生する磁気量を左右する励磁電流i
1、i
2を変えることでiα、iβの大きさを変化させることができる。また、式(3)、式(4)より、励磁電流i
1、i
2は可変抵抗の分配比γによって変わるので、可変抵抗の分配比γを調整することにより成分Aの大きさを変化させることができる。
【0058】
成分Bは、各検出器成分:(R
S+jωL
S)、(R
T+jωL
T)、可変抵抗の分配比γで分けられた抵抗のパラメーターにより構成される。このため、成分A同様に可変抵抗の分配比γの調整により成分Bの大きさを変化させることができる。
【0059】
交流電源10により検査検出器23のコイル23bに所定の周波数の交流電力を供給し、バネ状部材Mがコイル23b内を通過すると、バネ状部材Mの表面に交流磁界に交差する方向に流れる渦電流が励起される。渦電流は残留応力層の電磁気特性に応じて変化するため、残留応力層の特性(表面処理状態)に応じて増幅器31から出力される出力波形(電圧波形)の位相及び振幅(インピーダンス)が変化する。この出力波形の変化により残留応力層の電磁気特性を検出し、表面処理状態の検査を行うことができる。
【0060】
ブリッジの増幅器31から出力される信号は、基準検出器22及び検査検出器23の電圧波形の差分面積を抽出した信号であり、検出器を流れる電流(励磁電流)を一定にする回路構成になっているので、抽出された電圧信号は電力信号として考えることができる。また、検出器へ供給する電力は常に一定であり、バネ状部材Mへ供給する磁気エネルギーも一定とすることができる。
【0061】
(表面特性検査方法)
次に、表面特性検査装置2によるバネ状部材Mの表面特性検査方法について
図4を参照して説明する。
【0062】
まず、準備工程S1では、表面特性検査装置2と基準検体Sと、を用意する。
【0063】
次に、可変抵抗設定工程S2を行う。可変抵抗設定工程S2では、まず、交流電源10から交流ブリッジ回路20に交流電力を供給する。この状態で、表面特性検査装置2による検体の検出感度が高くなるように、可変抵抗21の分配比γを調整する。即ち、検査検出器23に検体を近接させずに、交流ブリッジ回路20の出力信号が小さくなるように、可変抵抗21の分配比γを調整する。このように可変抵抗21を設定しておくことにより、検査検出器23に近接したバネ状部材Mの表面処理状態が不良である場合と、表面処理状態が良好である場合の出力信号の差異が大きくなり、検出精度を高くすることができる。
具体的には、オシロスコープなど波形表示機能を持つ表示装置(例えば、判断手段36が備えている)にて交流ブリッジ回路20からの出力信号の電圧振幅、またはLPF33からの電圧出力をモニターし、出力が小さくなるように分配比γを調整する。好ましくは、出力が最小値又は極小値(局所平衡点)をとるように、可変抵抗21の分配比γを調整して、設定する。
【0064】
可変抵抗21の分配比γの調整は、差分電圧(E2−E1)を小さくすることにより表面状態の差異に応じた出力差を増大させ、検査精度を向上させるために行われる。上述したように成分A、Bは分配比γを調整することにより変化するため、基準検出器22、検査検出器23のインピーダンス(R
S+jωL
S)、(R
T+jωL
T)に応じて、可変抵抗21の分配比γを調整し、交流ブリッジ回路20からの出力である差分電圧(E2−E1)を小さくすることができる。これにより、基準検出器22と検査検出器23との特性の違いを軽減して、バネ状部材Mの本来の特性を少しでも大きく抽出することができるので、検査精度を向上させることができる。
【0065】
周波数設定工程S3では、基準検体Sを検査検出器23に近接させた状態で、交流電源10から交流ブリッジ回路20に交流電力を供給し、周波数調整器35により交流ブリッジ回路20に供給する交流電力の周波数を変化させて交流ブリッジ回路20から電圧振幅出力またはLPF33からの電圧出力をモニターする。
【0066】
周波数調整器35は、周波数調整器35において設定された初期周波数f1になるように交流電源10へ制御信号を出力し、周波数f1における増幅器31からの出力電圧Ef1が周波数調整器35に入力され、記憶される。続いて、周波数f1よりも所定の値、例えば100Hz高い周波数f2になるように交流電源10へ制御信号を出力し、周波数f2における増幅器31からの出力電圧Ef2が周波数調整器35に入力され、記憶される。
続いて、Ef1とEf2との比較を行い、Ef2>Ef1であれば、周波数f2よりも所定の値高い周波数f3になるように制御信号を出力し、周波数f3における増幅器31からの出力電圧Ef3が周波数調整器35に入力され、記憶される。そして、Ef2とEf3との比較を行う。これを繰り返し、Efn+1<Efnとなったときの周波数fn、つまり出力が最大となる周波数fnを、しきい値設定工程S4及び交流供給工程S5で用いる周波数として設定する。これにより、表面処理状態、形状などが異なりインピーダンスが異なるバネ状部材Mに対応して交流ブリッジ回路20からの出力を大きくする周波数を一度の操作により設定することができる。最適な周波数は、バネ状部材Mの材料、形状、表面処理状態により、変化することとなるが、これがあらかじめわかっている場合、周波数の設定は不要である。これにより、表面処理状態の変化に出力が敏感に対応し、検査の感度を向上させることができる。
ここで、周波数設定工程S3は、可変抵抗設定工程S2よりも先に実施することもできる。
【0067】
しきい値設定工程S4では、バネ状部材Mの表面状態の良否を判断するために用いるしきい値を設定する。ここでは、バネ状部材Mの検査に用いるためあらかじめ設定しておくしきい値の設定方法について説明する。
しきい値設定工程S4では、基準検体Sを基準検出器22に近接させ、周波数設定工程S3において設定された周波数の交流電力を交流電源10から交流ブリッジ回路20に供給し、基準検体Sを検査検出器23内に通過させる。このとき、基準検体Sの通過速度は、実際の検査時の通過速度と合わせることが望ましく、例えば、案内部材41に基準検体Sを置いて、自重により検査検出器23内を移動させたりすることができる。交流ブリッジ回路20から出力された電圧出力は、増幅器31で増幅され、絶対値回路32において全波整流を行い、LPF33において直流変換を行い、判断手段36へ出力される。
【0068】
図5に、バネ状部材Mが検査検出器23を通過するときの交流ブリッジ回路20からの出力値の変化を模式的に示す。交流ブリッジ回路20からの出力値は、所定のサンプリング間隔で抽出され記憶される。サンプリング間隔はバネ状部材Mの通過時間を考慮して定める。例えば、通過中に10点以上計測可能な間隔を設定する。ここでは、バネ状部材Mの通過時間、つまり、測定時間が1秒、サンプリング間隔が0.1秒で、出力値の抽出を行う場合について示す。ここで、バネ状部材Mが検査検出器23内にある領域が大きくなるほど出力が上昇するため、測定時間の中央部が最も出力値が大きくなる。
【0069】
記憶された出力値をサンプリング間隔で時間積分し、出力の積分値Σを算出し、判断手段36に記憶させておく。ここでは、サンプリング間隔が0.1秒であるので、各サンプリングタイムでの出力値をE(1)、E(2)・・・E(9)とすると、
Σ=E(1)×0.1+E(2)×0.1+・・・E(9)×0.1
と算出される。
【0070】
未処理のバネ状部材と表面状態が良好である表面処理後のバネ状部材とをそれぞれ10〜数10個程度用意し、積分値の分布データを取得する。
【0071】
しきい値Σthiは、検査検出器23に未処理のバネ状部材Mを通過させたときの出力信号の積分値ΣA及び検査検出器23に表面状態が良好である表面処理後のバネ状部材Mを通過させたしたときの出力信号の積分値ΣBに基づいて、それぞれの出力信号のばらつきを考慮し、次式により求め、設定する。
図7に未処理のバネ状部材の出力信号の積分値ΣA及び表面処理後のバネ状部材の出力信号の積分値ΣBの分布を模式的に示す。
【0072】
(数7)
Σthi=(ΣAav・σB+ΣBav・σA)/(σA+σB)
ΣAav:積分値ΣAの平均値、ΣBav:積分値ΣBの平均値、σA:積分値ΣAの標準偏差、σB:積分値ΣBの標準偏差
【0073】
これにより、少ない測定数により精度の高い適切なしきい値を設定することができる。このしきい値Σthiをしきい値として設定し、判断手段36に記憶させておく。ここで、しきい値Σthiは、積分値ΣAの最大値ΣAmax及び積分値ΣBの最小値ΣBminとの間に、
ΣAmax<Σthi<ΣBmin
の関係を持つ。
なお、上記関係が成立しない場合にも、積分値ΣA及び積分値ΣBのばらつき、分布から大きく外れた特異的な測定値がないか、など考慮して、適切なしきい値Σthiを設定することができる。例えば、同じバネ状部材の未処理状態、表面処理状態を複数個測定し、これを用いてしきい値Σthiを再度算出する等の方法がある。
【0074】
交流供給工程S5では、周波数設定工程S3において設定された周波数の交流電力を交流電源10から交流ブリッジ回路20に供給する。ここで、基準検体Sは検査検出器23に近接している。
【0075】
次いで、配置工程S6では、表面処理状態の良否を判断すべきバネ状部材Mを検査検出器23を通過させ、バネ状部材Mに渦電流を励起する。このとき、交流ブリッジ回路20から電圧出力信号が出力され、出力信号は、増幅器31で増幅され、絶対値回路32において全波整流され、LPF33において直流変換される。
【0076】
温度測定手段38は、バネ状部材Mが検査検出器23を通過する前、またはバネ状部材Mの通過時にバネ状部材Mの表面の温度を測定し、バネ状部材Mの表面の温度信号を判断手段36に出力する。
【0077】
検査状態判断工程S7では、位相比較器34により交流電源10から供給される交流電力の波形と交流ブリッジ回路20から出力される交流電圧波形を比較し、それらの位相差を検出する。この位相差をモニターすることにより、検査状態が良好である(例えば、検査検出器23とバネ状部材Mの位置ずれがない)か否かを判断することができる。交流ブリッジ回路20からの出力が同じであっても、位相差が大きく変化した場合には、検査状態に変化があり、検査が適正に行われていない可能性があると判断することができる。また、判断手段36は、温度測定手段38で検出されたバネ状部材Mの温度が所定範囲内である場合に、バネ状部材Mの表面処理状態の良否を判断し、温度測定手段38で検出された温度が所定範囲外である場合に、バネ状部材Mの表面処理状態の良否の判断を行わない。ここで、所定の温度範囲は、バネ状部材Mの温度変化が検査に実質的に影響を及ぼさない温度範囲であり、例えば、0〜60℃と設定することができる。バネ状部材Mの表面の温度が所定の温度範囲外であった場合には、バネ状部材Mが所定の温度範囲内になるまで待機する、バネ状部材Mにエアを吹き付ける、バネ状部材Mの検査を行わず別のラインに移動させる、などを行うことができる。
【0078】
良否判断工程S8では、LPF33において直流変換された信号が判断手段36に入力され、判断手段36は、入力された信号に基づいてバネ状部材Mの表面状態の良否を判断する。つまり、本工程は交流ブリッジ回路20から出力された出力信号に基づいて、バネ状部材の表面特性を評価する評価工程である。判断手段36による判断結果は、表面特性検査選別装置1の制御装置60に出力される。また、表示手段37により表示し、表面状体が不良である場合には警告することもできる。
【0079】
バネ状部材Mの表面処理状態の良否の判断は、LPF33からの出力値から出力特性の代表値(本実施形態では、後述する積分値Σs)を求め、しきい値設定工程S4において設定されたしきい値と比較することにより行われる。判断手段36は代表値がしきい値を超えている場合には、表面状態が良好であると判断し、代表値がしきい値以下である場合には、表面状態が不良であると判断する。
【0080】
測定値、良否判断結果、測定日時、検査状態(温度、湿度、後述する差分電圧ΔEなど)などの検査データは、ロット、製造番号、履歴などの各バネ状部材Mの識別情報と関連付けて評価装置30の判断手段36、または、図示しない記憶手段に記憶され、必要に応じて呼び出すことができる。すなわち、バネ状部材には、それぞれの測定データと対応付けられる識別表示が直接若しくは間接的に付与されるようにしてもよい。例えば、測定データに対応付けられたバーコードや製品管理番号をバネ状部材に直接的に表したり、間接的に表したりしてもよい。このように、バーコード、製品管理番号等の識別表示に測定データが対応付けられることにより、表面特性検査装置2により検査したバネ状部材の表面処理の状態を流通後に追跡可能な状態にすることができ、トレーサビリティを担保することができる。
【0081】
以上の工程により、バネ状部材Mの表面処理状態の良否を簡単かつ高精度に検査することができる。バネ状部材Mの検査を連続して行うには、配置工程S6、検査状態判断工程S7、良否判断工程S8を繰り返し行うことになる。バネ状部材Mの種類、表面処理の種類などを変更する場合には、再度、可変抵抗設定工程S2、周波数設定工程S3、しきい値設定工程S4を実施する。
【0082】
検査検出器23は、バネ状部材Mの表面を流れる渦電流の変化を捉えることにより、表面抵抗変化を間接的に捉えている。ここで、表面処理としてショットピーニング処理を行った場合には、渦電流の流量が変化する要因としてはショットピーニングによる歪みや組織の微細化、転位が挙げられるが、これらは測定環境の温度変化(0℃〜40℃)程度ではほぼ一定である。検査検出器23で検出する磁気変化は、渦電流の反磁界の変化によるものであり、渦電流が変化する要因が、測定環境の温度変化の影響を受けにくいことから、温度変化による検査精度への影響を小さくすることができる。
基準検出器22において基準状態を検出するために、バネ状部材Mと同一構造の基準検体Sを用いているため、温度、湿度、磁気などの検査環境の変化により出力値が変動しても、その影響はバネ状部材Mと同等になる。これにより、温度、湿度、磁気などの検査環境の変化による出力値の変動をキャンセルすることができ、測定精度を向上させることができる。特に、基準検体Sとして表面処理を行っていない未処理品を用いると、バネ状部材Mとの表面状態の差に基づいた出力を大きくすることができるので、更に測定精度を向上させることができるとともに、しきい値を設定しやすく、好ましい。
【0083】
検査状態判断工程S7を実施しない場合には、表面特性検査装置2は位相比較器34を省略することができる。例えば、レーザ変位計などの位置検知手段にて検査検出器23とバネ状部材Mの位置関係の検出を行い、検査検出器23の軸とバネ状部材Mの軸とのずれが所定の範囲内であるか否かを光電センサ(レーザ)等で判定する、などを行う構成とすることができる。また、位相比較器34、周波数調整器35または表示手段37は、判断手段36に内蔵させるなど一体的に設けることもできる。
【0084】
バネ状部材Mの測定時の交流ブリッジ回路20からの出力が十分に大きい場合には、可変抵抗設定工程S2、周波数設定工程S3を省略することもできる。周波数設定工程S3を省略する場合には、表面特性検査装置2は周波数調整器35を省略することができる。
【0085】
(表面特性検査選別方法)
次に、表面特性検査選別装置1を用い、バネ状部材Mを良品と不良品とに選別する表面特性検査選別方法について
図7を参照して説明する。
【0086】
まず、ステップS11では、搬送ベルト101により搬送されてきたバネ状部材Mが、案内部材41により検査検出器23に案内される。このとき、検知手段43は、バネ状部材Mが案内部材41を通過し、検査検出器23に案内されたことを検知する。
【0087】
検知手段43によりバネ状部材Mが検査検出器23に案内されたことが検知されると、検知手段43が送出する検知信号をトリガーとしてバネ状部材Mの表面特性の評価を行う。
まず、続くステップS12では、所定のサンプリング間隔で、検査検出器23からの出力値を抽出し、記憶する。ここでは、バネ状部材Mの通過時間、つまり、測定時間が1秒で、0.1秒間隔でサンプリングを行う場合について示す(
図5)。
【0088】
続くステップS13では、しきい値設定工程S4と同様に、記憶された出力値を時間積分し、出力の積分値Σsを算出する。
【0089】
続くステップS14では、この積分値Σsをしきい値設定工程S4で設定したしきい値と比較し、バネ状部材Mの良否を判断する(良否判断工程S8)。
【0090】
続くステップS15では、バネ状部材Mを良品と不良品とに選別する。ステップS14でバネ状部材Mが良品と判断されると、選別手段50は作動せず、バネ状部材Mは、搬出部材42の延長上の下方に配置された良品回収手段110により回収される、または次工程に搬送される。
【0091】
ステップS14でバネ状部材Mが不良品と判断されると、判断手段36により制御装置60に判断結果が入力される。制御装置60は、選別手段50を作動させ、搬出部材42を通過したバネ状部材Mに対し圧縮エアを噴射させてバネ状部材Mの搬送方向を変更し、バネ状部材Mを不良品回収手段120に送る。
【0092】
上記操作が連続して行われることより、バネ状部材Mの表面特性を連続して評価し、良否を判断し、バネ状部材Mを良品と不良品とに選別することができる。
【0093】
表面特性検査選別装置1によれば、バネ状部材Mを検査検出器23内に停止させずに、通過させて、表面特性検査装置2によりバネ状部材Mの表面特性を評価し良否を判断するため、バネ状部材Mの表面特性を評価し良否を判断する時間を短縮することができる。これにより、短いタクトタイムに対応して、バネ状部材Mの表面特性の評価、良否の判断を行うことができる。そして、選別手段50によりバネ状部材Mを良品と不良品とに確実に選別することができる。
【0094】
(変更例)
選別手段50として圧縮エアを噴射するノズルを用いたが、これに限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、バネ状部材Mが通過可能な孔部51aが形成された選別部材51とこの選別部材51を移動させる移動手段(図示せず)を備えたものを採用することができる。選別部材51は、搬出部材42の下流であって、孔部51aをバネ状部材Mが通過可能な状態(
図8(A))で配置される。判断手段36がバネ状部材Mを良品と判断した場合には、選別部材51はそのままの位置で保持され、バネ状部材Mは孔部51aを通過して、良品回収手段110により回収される、または次工程に搬送される。バネ状部材Mが不良品と判断されると、
図8(B)に示すように、選別部材51は移動手段によりバネ状部材Mが孔部51aを通過できない位置に移動する。これにより、バネ状部材Mは選別部材51に衝突し、不良品回収手段120に送られる。
【0095】
また、
図9に示すように、搬出部材42を二股に分岐させ、分岐点に選別部材52を設ける構成を採用することもできる。
図9は測定部材40を上方から見た平面図である。
図9(A)には、バネ状部材Mが良品と判断された場合の選別手段52の状態、
図9(B)には、バネ状部材Mが不良品と判断された場合の選別手段52の状態を示す。これによれば、良否の判断結果に応じて、選別手段52によりバネ状部材Mを搬出する方向を切り替えて、バネ状部材Mを良品と不良品とに選別することができる。
【0096】
複数個の検査検出器23を用意し、搬送手段100から複数個の、または分岐した案内手段により、複数個のバネ状部材Mを並行して案内し、検査を行う構成を採用することもできる。ここで、評価装置30は1つの評価装置30を共用することができる。
【0097】
本実施形態では、測定部材40は、バネ状部材Mが自重で移動する構成を示したが、これに限定されるものではなく、案内部材41、搬出部材42がベルトコンベアなどの搬送機構を備えた構成などを採用することができる。
【0098】
本実施形態では、検知手段43がバネ状部材Mを検知したときに出力値の抽出を開始する構成を示したが、出力値を常時モニターし、出力値の上昇が検出されたときに出力値の抽出を開始する構成を採用することもできる。
【0099】
本実施形態では、しきい値(Σthi)及びしきい値(Σthi)と比較する代表値として出力値の積分値(Σs)を用いたが、出力値のピーク値(最大値)を用いることもできる。なお、しきい値及びしきい値と比較する代表値として、出力値の積分値を用いた場合には、バネ状部材Mの検査検出器23内の通過状態などに起因する値のばらつきを小さくすることができるので、より正確な測定、良否の判断が可能となる。
【0100】
制御装置60は判断手段36とは別々に設けなくてもよく、一体で構成することもできる。
【0101】
[実施形態の効果]
本発明の表面特性検査選別装置1及び表面特性検査方法によれば、検査検出器23のコイル23bによりバネ状部材Mに渦電流を励起し、交流ブリッジ回路20から出力された出力信号に基づいてバネ状部材Mの表面特性を評価することができる。これにより、簡単な回路構成で高精度の表面状態の検査が可能である。
表面特性検査選別装置1によれば、バネ状部材Mを検査検出器23内に停止させずに、通過させて、表面特性検査装置2によりバネ状部材Mの表面特性を評価し良否を判断するため、バネ状部材Mの表面特性を評価し良否を判断する時間を短縮することができる。これにより、短いタクトタイムに対応して、バネ状部材Mの表面特性の評価、良否の判断を行うことができる。そして、選別手段50によりバネ状部材Mを良品と不良品とに確実に選別することができる。
また、本発明の表面特性検査選別システムSYSによれば、搬送手段100を備えているので、バネ状部材Mの搬送、評価、選別、搬出を連続して行うことができる表面特性検査選別システムとして構築することができる。また、良品回収手段110により良品を速やかに回収する、または次工程に搬送することができるとともに、不良品回収手段120により不良品のみを選別して回収することができるので、選別作業を効率的に行うことができる。