特許第6176883号(P6176883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6176883
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】薄板の保持治具
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20170731BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170731BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   C09J7/02 Z
   C09J201/00
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-532837(P2016-532837)
(86)(22)【出願日】2014年7月9日
(86)【国際出願番号】JP2014068318
(87)【国際公開番号】WO2016006058
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2016年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】大出 祥子
(72)【発明者】
【氏名】田中 清文
【審査官】 齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−216534(JP,A)
【文献】 特開2012−256666(JP,A)
【文献】 特開2012−209522(JP,A)
【文献】 特開2011−222828(JP,A)
【文献】 特開2008−270345(JP,A)
【文献】 特開2007−250790(JP,A)
【文献】 特開2004−266179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C09J 7/02
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板を保持する保持治具であって、
キャリアと、
前記キャリアの表面に形成された複数のスペーサと、
前記複数のスペーサの表面を覆うように少なくとも前記キャリアの周辺に接着された粘着フィルムであって、フィルム基材と、前記フィルム基材の前記キャリアと反対側にあって前記薄板を載置する第1粘着剤層と、前記フィルム基材の前記キャリアの側の第2粘着剤層とを有する前記粘着フィルムと、
前記スペーサが形成されていない領域において前記キャリアの表面に前記第2粘着剤層を接着する、前記スペーサの高さよりも小さい厚みの接着部とを備え、
載置された前記薄板を前記第1粘着剤層から剥離するとき、前記第2粘着剤層が前記スペーサから離間するように前記第1粘着剤層よりも低い粘着性を有することを特徴とする保持治具。
【請求項2】
さらに、前記スペーサが形成されていない領域において前記キャリアの表面に前記粘着フィルムの前記第2粘着剤層が接着されることにより前記粘着フィルムの前記第1粘着剤層に反映される凹部にそれを平坦にするために充填され、前記第2粘着剤層と実質的に同程度であって前記第1粘着剤層よりも低い粘着性を有する粘着抑制剤部を備えることを特徴とする請求項1に記載の薄板の保持治具。
【請求項3】
前記第1及び第2粘着剤層がそれぞれフィラーを含有し、前記第2粘着剤層が前記第1粘着剤層よりも高い前記フィラーの含有量を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の保持治具。
【請求項4】
前記フィラーが、無機フィラーであるシリカ、タルク、クレー、マイカ、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、グラファイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸、及び金属酸化物、並びに、有機フィラーであるシリコ―ン樹脂、フェノ―ル樹脂、フッ素樹脂、及びポリイミド樹脂のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3に記載の保持治具。
【請求項5】
前記フィラーがシリカを含むことを特徴とする請求項4に記載の保持治具。
【請求項6】
前記フィルム基材がシリコーンゴムを含み、前記第1及び第2粘着剤層が縮合系シリコーンエラストマーを含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の保持治具。
【請求項7】
前記第1粘着剤層の前記フィラーが、前記第1粘着剤層内の前記フィラー以外の固形分の重量に対して、1.0重量%〜2.5重量%の範囲の含有量を有することを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の保持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄板の保持治具に係り、たとえば、半導体チップ、半導体ウェーハ等を保持する薄板の保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の保持治具は、たとえば、下記特許文献1あるいは2に開示されているものが知られている。
【0003】
特許文献1には、キャリアと、該キャリアの表面を覆い該キャリアの周辺に接着された粘着フィルムと、を有し、該粘着フィルムに、ウェーハを貼り付けることができるようにしたウェーハ保持ジグが記載され、該粘着フィルムの材料として、それ自身が粘着性を有するポリオレフィン系エラストマーやウレタンゴム等、あるいは、それ自身は粘着性を示さないフィルム上にアクリル系粘着剤を塗布したものが用いられている。また、特許文献1は、キャリアと粘着フィルムとの間に複数のスペーサを設け、スペーサ間の領域にスペーサの高さと同じ厚さで接着剤を塗布して粘着フィルムのキャリアからの高さを均一にし、粘着フィルムの上面にはエンボス加工等の非粘着加工部を設けた例が開示されている。
【0004】
特許文献2には、支持基板と、該支持基板の表面を覆い該表面に部分的に形成された接着領域において接着される粘着保持層と、を有し、該粘着保持層に、複数の半導体チップを粘着保持させる半導体チップ用保持具が記載され、該粘着保持層の材料として、たとえば自己粘着性を有するポリオレフィン系エラストマーやウレタンゴム、耐熱性に優れるシリコーン系やフッ素系のエラストマー等が用いられている。
【0005】
特許文献1あるいは2に開示された保持治具は、半導体ウェーハあるいは半導体チップ等の薄板を粘着させる粘着フィルムあるいは粘着保持層(以下、粘着フィルムと称する)を有するが、このような粘着フィルムとしては、次のような性質を有するものが好適となる。
(1)耐熱性を有する。この種の保持治具は半田リフロー(約250℃)等の耐熱プロセスに用いられることから、耐熱性を必要とする。
(2)粘着後の薄板を剥離がし易い。剥離の際に該薄板が破損してしまうのを回避させるためである。
【0006】
しかし、粘着フィルムとして、耐熱性に優れたシリコーンゴムやフッ素系ゴムを用いた場合、リフロー後の粘着度が増大してしまい、薄板を剥離する際に該薄板が破損してしまうという不都合を有する。また、一般的な付加タイプのシリコーンゴムのみを用いた場合、粘着力を調整することが困難となり、反応残渣の問題から耐熱性も不十分であるという不都合を有する。そして、縮合系のシリコーンエラストマーのみを用いた場合、耐熱性は改善されるものの強度が弱く裂け易くなってしまうという不都合を有する。
【0007】
また、特許文献1に開示されたように、キャリアと粘着フィルムとの間に設けられた複数のスペーサ間の領域にスペーサの高さと同じ厚さで接着剤を塗布して粘着フィルムのキャリアからの高さを均一にした場合、粘着フィルムに薄板が全面で密着することを防いで剥離が困難とならないようにするため、粘着フィルムの上面にエンボス加工等の非粘着加工部を設けるなどの処理が必要となり、製造の工数やコストが増加するという課題があった。さらに、薄板をより一層薄化した場合、剥離が困難になる可能性も懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−256666号公報
【特許文献2】特開2012−209522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐熱性を有し、粘着させた半導体チップあるいは半導体ウェーハ等の薄板を、たとえ半田リフローに投入した後でも、容易に剥離でき、これらの作業を繰り返して行うことのできる薄板の保持治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の薄板の保持治具は、キャリアと、前記キャリアの表面に形成された複数のスペーサと、前記複数のスペーサの表面を覆うように少なくとも前記キャリアの周辺に接着された粘着フィルムであって、フィルム基材と、前記フィルム基材の前記キャリアと反対側にあって前記薄板を載置する第1粘着剤層と、前記フィルム基材の前記キャリアの側の第2粘着剤層とを有する前記粘着フィルムと、前記スペーサが形成されていない領域において前記キャリアの表面に前記第2粘着剤層を接着する、前記スペーサの高さよりも小さい厚みの接着部とを備え、載置された前記薄板を前記第1粘着剤層から剥離するとき、前記第2粘着剤層が前記スペーサから離間するように前記第1粘着剤層よりも低い粘着性を有することを特徴とする。
【0011】
(2)本発明の薄板の保持治具は、(1)の構成において、さらに、前記スペーサが形成されていない領域において前記キャリアの表面に前記粘着フィルムの前記第2粘着剤層が接着されることにより前記粘着フィルムの前記第1粘着剤層に反映される凹部にそれを平坦にするために充填され、前記第2粘着剤層と実質的に同程度であって前記第1粘着剤層よりも低い粘着性を有する粘着抑制剤部を備えることを特徴とする。
【0012】
(3)本発明の薄板の保持治具は、(1)又は(2)の構成において、前記第1及び第2粘着剤層がそれぞれフィラーを含有し、前記第2粘着剤層が前記第1粘着剤層よりも高い前記フィラーの含有量を有することを特徴とする。
【0013】
(4)本発明の薄板の保持治具は、(3)の構成において、前記フィラーが、無機フィラーであるシリカ、タルク、クレー、マイカ、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、グラファイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸、及び金属酸化物、並びに、有機フィラーであるシリコ―ン樹脂、フェノ―ル樹脂、フッ素樹脂、及びポリイミド樹脂のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0014】
(5)本発明の薄板の保持治具は、(4)の構成において、前記フィラーはシリカを含むことを特徴とする。
【0015】
(6)本発明の薄板の保持治具は、(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記フィルム基材がシリコーンゴムを含み、前記第1及び第2粘着剤層が縮合系シリコーンエラストマーを含むことを特徴とする。
【0016】
(7)本発明の薄板の保持治具は、(3)ないし(5)のいずれかの構成において、前記第1粘着剤層の前記フィラーが、前記第1粘着剤層内の前記フィラー以外の固形分の重量に対して、1.0重量%〜2.5重量%の範囲の含有量を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した薄板の保持治具によれば、耐熱性を有し、粘着させた半導体チップあるいは半導体ウェーハ等の薄板を、たとえ半田リフローに投入した後でも、容易に剥離でき、これらの作業を繰り返して行うことができるようになる。また、高温下で使用されるテスターやプラズマ洗浄装置に対するハンドリング治具としても、利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】本発明の薄板の保持治具の実施形態を示す構成図であって、その平面図である。
図1B図1Aのb−b線の断面図である。
図2】本発明の薄板の保持治具に用いられる粘着フィルムの断面図である。
図3A】本発明の薄板の保持治具に半導体チップを載置した状態を示す図であって、半導体チップを粘着させた場合を示した図である。
図3B図3Aの半導体チップを剥離しようとする場合を示した図である。
図4A】本発明の薄板の保持治具に半導体ウェーハを載置した状態を示す図であって、半導体ウェーハを粘着させた場合を示した図である。
図4B図4Aの半導体ウェーハを剥離しようとする場合を示した図である。
図5】本発明の薄板の保持治具の実施例6を示す断面図である。
図6】比較例6の薄板の保持治具を示す断面図である。
図7】比較例7の薄板の保持治具を示す断面図である。
図8】比較例8の薄板の保持治具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1A及び1Bは、本発明の薄板の保持治具1の実施形態を示す構成図である。図1Aは平面図、図1B図1Aのb−b線の断面図である。図1A及び1Bにおいて、まず、平面視で円形状からなるキャリア10を有する。該キャリア10は、たとえばシリコンウェーハあるいはガラスウェーハ等の基板によって構成されている。キャリア10の表面には、平面視で矩形状からなるスペーサ11が縦横に並設されて形成されている。これにより、キャリア10の表面において、該スペーサ11が形成されていない領域は、格子状の溝12が形成される領域となっている。
【0020】
スペーサ11は、キャリア10の表面に厚さを有する材料層を印刷で積層させることによって構成するようにしても、キャリア10の表面を選択エッチングで前記溝12を形成することによって構成してもよい。なお、キャリア10の表面の選択エッチングでスペーサ11を形成する場合、各スペーサ11の表面にマット加工、ヘアライン加工、ブラスト加工等の非粘着処理を施すことが好ましい。
【0021】
そして、スペーサ11が形成されたキャリア10の表面には、粘着フィルム13が各スペーサ11を覆って配置され、キャリア10の周辺及び該スペーサ11を囲む溝12の内部に塗布された接着剤(接着部ともいう。)14を介して接着されている。接着剤14としては、たとえば縮合系シリコーンエラストマーが用いられ、スペーサ11の高さよりも小さい厚みで形成されている。粘着フィルム13は、その拡大した断面図である図2に示すように、フィルム基材13Bと、フィルム基材13Bのキャリア10と反対側の面に形成される第1粘着剤層131と、フィルム基材13Bのキャリア10の側の面に形成される第2粘着剤層132と、を有する。
【0022】
フィルム基材13Bはシリコーンゴムシートからなり、第1粘着剤層131はフィラーが比較的少なく含有された縮合系シリコーンエラストマーからなり、第2粘着剤層132はフィラーが比較的多く含有された縮合系シリコーンエラストマーからなっている。フィラーは、増量作用、補強作用、マット作用等の役割を担っている。フィラーの種類は、特に限定されず、たとえばシリカ、タルク、クレー、マイカ、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、グラファイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸、金属酸化物等の無機フィラー、及び、シリコ―ン樹脂、フェノ―ル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂等の有機フィラーを、単独又は複数用いることができる。これらのうち、コスト、機械強度の点から、シリカが特に好ましい。また、フィラーの形状は、特に限定されず、使用することができる。ここで、第1粘着剤層131のフィラーの含有量は、第1粘着剤層131内の前記フィラー以外の固形分(例えば、縮合系シリコーンエラストマー)の重量に対して、1.0重量%〜2.5重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0023】
第1粘着剤層131は、フィラーを比較的少なく含有させることにより粘着層として機能させることができ、第2粘着剤層132は、フィラーを比較的多く含有させることにより粘着抑制層として機能させることができる。スペーサ11が形成されたキャリア10の表面を覆って該キャリア10に形成された溝12内の接着剤14によって接着される粘着フィルム13は、該溝12(スペーサ11が形成されていない領域)によって反映される凹部に粘着抑制材(粘着抑制剤部ともいう)15が充填(塗布)されている。粘着フィルム13の表面の平坦化を図るためである。該粘着抑制材15は、第2粘着剤層132のフィラーの含有率とほぼ等しい含有率のフィラーを含有して構成されている。
【0024】
このように構成された薄板の保持治具1は、図3Aに示すように、面積の比較的小さな半導体チップ(ワーク)20を粘着フィルム13に載置して粘着させることができる。この場合、半導体チップ20は、スペーサ11の上方の粘着フィルム13の表面に粘着され、溝12の上方の粘着抑制材15が塗布された部分には粘着されないことになる。図3Bは、半導体チップ20を剥がそうとして該半導体チップ20を保持治具1から上方に持ち上げた場合を示した図である。粘着フィルム13のスペーサ11との当接面は粘着抑制面となっているため、この部分における粘着フィルム13は半導体チップ20とともに上方に持ち上げられるよう離間する。しかし、粘着フィルム13の半導体チップ20との粘着面は、上述したように第1粘着剤層131(図2参照)となっており、フィラーが適当な量(第1粘着剤層131内の前記フィラー以外の固形分の重量に対して、1.0重量%〜2.5重量%)で含有されることによって第1粘着剤層131自体の粘着性が相対的に低く抑制され、半導体チップ20は該粘着フィルム13から容易に剥がれるようになる。
【0025】
図4Aは、平面視でキャリア10とほぼ同じ大きさの半導体ウェーハ(ワーク)30を粘着フィルム13に粘着させた場合を示した図である。図3Aで示したと同様に、半導体ウェーハ30は、スペーサ11の上方の粘着フィルム13の表面に粘着され、溝12の上方の粘着抑制材15が塗布された部分には粘着されないようになる。図4Bは、半導体ウェーハ30を剥がそうとして該半導体ウェーハ30を保持治具1から上方に持ち上げた場合を示した図である。粘着フィルム13のスペーサ11との当接面は粘着抑制面となっているため、この箇所における粘着フィルム13は半導体ウェーハ30とともに上方に持ち上げられるようになる。そして、図3Bに示したと同様に、第1粘着剤層131自体の粘着性が相対的に低く抑制されたものとなっているため、半導体ウェーハ30は該粘着フィルム13から容易に剥がれるようになる。この場合、粘着フィルム13は半導体ウェーハ30との粘着面に粘着抑制材15が格子状に塗布されているため、この粘着抑制材15によっても半導体ウェーハ30は該粘着フィルム13から容易に剥がれるようになる。
【0026】
以下に、保持治具1の実施例1〜6について、比較例1〜8と対比しつつ説明する。
【0027】
<実施例1>
第1粘着剤層131を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))0.2gをトルエン7gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第1粘着剤層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφのベタ版を用いて、前記第1粘着剤層用エラストマー溶液をシリコーンゴムシート13B(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm厚)にスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。
【0028】
第2粘着剤層132を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))1gをトルエン9gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第2粘着剤層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφのベタ版を用いて、第1粘着剤層を印刷したシリコーンゴムシート13Bの裏面に前記第2粘着剤層用エラストマー溶液をスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。以上により、第1粘着剤層131、シリコーンゴムシート13B及び第2粘着剤層132を含む粘着フィルム13を得た。
【0029】
キャリア10を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))1gをイソホロン(T980(セイコーアドバンス社製商品名))7.3gに分散させた。この分散溶液にポリエステル・メラミン系インキ(1400N(セイコーアドバンス社製商品名))を20g添加し、分散させ、スペーサ用インキ溶液を作製した。そして、スクリーン印刷法を用いて、前記スペーサ用インキ溶液を200mmのシリコンウェーハ(750μm厚)の鏡面側に2.5mm角パターン、5mmピッチで印刷し、150℃で30分間恒温オーブン内に静置し、硬化させ、28μm厚のスペーサを形成した。
【0030】
粘着フィルム13のキャリア10への固定を次のように行った。まず、該粘着フィルム13を200mmのSUSフレームに貼り付け、200mm対応ウェハーエキスパンダー(TEX−218(テクノビジョン社製))で7.2%延伸させ、200mmグリップリングに嵌合した。そして、グリップリング周囲の粘着フィルム13を切り取った。そして、スペーサ11を形成したキャリア10上に縮合系シリコーン系エラストマー(KE3417(信越化学工業社製商品名))を格子状(2mmラインパターン、5mmピッチ、18μm厚)にスクリーン印刷し、10分間静置した。その後、グリップリングで嵌合したフィルムを貼り付け、常温下でフィルム上面から加圧し(24時間)、キャリア10に格子状に接着した。そして、キャリア10の周囲の粘着フィルム13の余剰部分を切り取った。
【0031】
粘着抑制材15を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))1gをトルエン8.3gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、粘着抑制材用エラストマー溶液を作製した。そして、スクリーン印刷法を用いて、キャリア10に固定された粘着フィルム13の表面に前記粘着抑制材用エラストマー溶液を格子状(たとえば、2mmラインパターン、5mmピッチ、10μm厚)に印刷し、常温下で硬化させた。印刷の際はキャリア10のノッチを基準にして、位置決めをした。
【0032】
<実施例2>
第1粘着剤層131を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))0.3gをトルエン7gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第1粘着剤層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφベタ版を用いて、前記第1粘着剤層用エラストマー溶液をシリコーンゴムシート(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm厚)にスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。その他の構成は、実施例1の場合と同様とした。
【0033】
<実施例3>
粘着フィルム13を次のように調製した。実施例2と同様の方法で作成した粘着フィルム13に複数の穿孔(表面カット)を形成するようにした。粘着フィルム13の適当な個所に該穿孔を形成することにより、粘着フィルム13とキャリア10の間に外気を流入させることができる。このようにした場合、キャリア10と粘着フィルム13との界面が真空になってしまうことを回避でき、ワークの粘着フィルム13からの剥離性を向上させる効果を奏する。その他の構成は、実施例2の場合と同様とした。
【0034】
<実施例4>
第1粘着剤層131を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))0.4gをトルエン7gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第1粘着剤層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφのベタ版を用いて、前記第1粘着剤層用エラストマー溶液をシリコーンゴムシート(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm厚)にスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。その他の構成は、実施例1の場合と同様とした。
【0035】
<実施例5>
第1粘着剤層131を次のように調製した。まず、フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))0.5gをトルエン7gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第1粘着剤層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφのベタ版を用いて、前記第1粘着剤層用エラストマー溶液をシリコーンゴムシート(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm厚)にスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。その他の構成は、実施例1の場合と同様とした。
【0036】
<実施例6>
粘着フィルム13を次のように調製した。まず、実施例1と同様の材料を用いた。キャリア10の製造方法の他の実施例として、200mmシリコンウェーハ(750μm厚)の鏡面側に2mmラインパターン、5mmピッチでエッチングを行い、スペーサの上面にはブラスト処理を行った。その他の構成は、実施例1の場合と同様とした。なお、図5は、図1Bと対応づけて描いた図であり、スペーサの上面にブラスト処理(図中αで示す)がなされていることを示している。
【0037】
<比較例1>
第1粘着剤層131を次のように調整した。トルエン7gに縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第1粘着剤層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφのベタ版を用いて、前記第1粘着剤層用エラストマー溶液をシリコーンゴムシート(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm厚)にスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。その他の構成は、実施例1の場合と同様とした。
【0038】
<比較例2>
第1粘着剤層131を次のように調整した。フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))0.1gをトルエン7gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第1粘着剤層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφのベタ版を用いて、前記第1粘着剤層用エラストマー溶液をシリコーンゴムシート(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm)にスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。その他の構成は、実施例1の場合と同様とした。
【0039】
<比較例3>
第1粘着剤層131を次のように調整した。フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))0.6gをトルエン7gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第1粘着剤層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφのベタ版を用いて、前記第1粘着剤層用エラストマー溶液をシリコーンゴムシート(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm)にスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。その他の構成は、実施例1の場合と同様とした。
【0040】
<比較例4>
第1粘着剤層131を次のように調整した。フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))0.8gをトルエン7gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第1粘着剤層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφのベタ版を用いて、前記第1粘着剤層用エラストマー溶液をシリコーンゴムシート(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm)にスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。その他の構成は、実施例1の場合と同様とした。
【0041】
<比較例5>
第1粘着剤層131を次のように調整した。フィラーとして、シリカ(マット剤(セイコーアドバンス社製商品名))1gをトルエン7gに分散させた。この分散溶液に縮合系シリコーンエラストマー(X−31−2658(信越化学工業社製商品名))を20g添加し、分散させ、第1粘着剤層用エラストマー溶液を作製した。そして、350mmφのベタ版を用いて、前記第1粘着剤層用エラストマー溶液をシリコーンゴムシート(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm)にスクリーン印刷し、常温下で硬化させた。その他の構成は、実施例1の場合と同様とした。
【0042】
<比較例6>
シリコーンゴムシート(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm)に対して、第1粘着剤層131を形成することなく、第2粘着剤層132のみを形成するようにした。第2粘着剤層132、およびその他の構成は、粘着抑制材15が形成されていないことを除いて実施例1の場合と同様とした。なお、図6は、図1Bと対応づけて描いた図であり、粘着フィルム13の上面に第1粘着剤層131、粘着抑制材15が形成されていないことを示している。
【0043】
<比較例7>
シリコーンゴムシート(KE−151K−U(信越化学工業社製商品名)をシーティングしたもの、200μm)に対して、第2粘着剤層132を形成することなく、第1粘着剤層131のみを形成するようにした。第1粘着剤層131、およびその他の構成は、実施例1の場合と同様とした。なお、図7は、図1Bと対応づけて描いた図であり、粘着フィルム13の下面に第2粘着剤層132が形成されていないことを示している。
【0044】
<比較例8>
スペーサ11の高さおよび該スペーサ11の溝12に充填される接着剤14の高さを同じにした。この場合のスペーサ11の高さ、接着剤14の高さを18μmとした。なお、図8は、図1Bと対応づけて描いた図であり、スペーサ11の高さおよび該スペーサ11の溝12内の接着剤14の高さが同じになっていることを示している。このため、粘着フィルム13の平坦化が図れることから、粘着抑制材15を不要としている。
【0045】
表1は、上述した実施例1〜6、比較例1〜8の各構成要素の対比を明確に把握できるように示したものとなっている。
【表1】
【0046】
そして、上記した実施例1〜6及び比較例1〜8について、以下の試験1、試験2を行った。
【0047】
<試験1>
ワークの保持治具1に対する常温下での密着性、剥離性の確認を行った。具体的には、実施例1〜6、比較例1〜8で作製した保持治具1に半導体ウェーハ30(200mmφ、50μm厚)を積載して、密着保持できるかを確認した。そして、積載した半導体ウェーハ30を剥離できるかを確認した。同様の方法で、半導体チップ20(8mm角、50μm厚)も保持治具1に積載し、密着性と剥離性の確認を行った。
【0048】
実施例1〜6及び比較例1〜8に対し上述の試験1を行った結果を表2に示す。ここで、ワークとしては、200mmφ、50μm厚のシリコンウェーハ、8mm角、50μm厚のシリコンチップを使用した。
【表2】
【0049】
表2から明らかとなるように、実施例1〜6で作製した保持治具1はワークの密着保持性と剥離性が良好であった。一方、比較例1、2では実施例よりも第1粘着剤層にフィラーとして配合されたシリカが少ないために、密着力が過大となり、ワークを剥離することが困難であった。比較例3〜5では実施例よりも第1粘着剤層にフィラーとして配合されたシリカが多いために、シリコーンの粘着性を発揮することができず、ワークを密着保持することができなくなった。比較例6では、付加型シリコーンゴム由来の粘着性により、密着性が過大であり、ワークを剥離できなかった。比較例7では、粘着フィルム13の裏面印刷がなされていないことから、キャリア10に粘着フィルム13が密着してしまい、撓むことができなくて、ワークを剥離できなかった。比較例8では、スペーサ11と接着剤14の厚みが同じであることから、粘着フィルム13が平坦であり、ワークが全面で密着することから、剥離できなかった。
【0050】
<試験2>
実施例3で作製した保持治具を用いて、半導体チップ20のリフロー試験を行った。具体的には、半導体チップ20(10mm角 0.095mm厚)の鏡面側を保持治具の粘着フィルム13に向かい合わせて、積載した。バキュームピンセットで少し押さえて、半導体チップ20が保持治具に密着保持されていることを確認し、保持治具をリフロー炉に投入した。リフロー炉から取り出した後、常温に戻るまで放冷した。保持治具をチャックテーブルに載せ、背面から吸引保持したまま、半導体チップ20を剥離することが可能かを確認した。この試験を10回繰り返した。なお、試験ごとに半導体チップ20は新しいものを用い、毎回同じ箇所に積載した。リフロープロファイルはリニア型温度プロファイルで、250℃以上で30秒保持、230℃以上で50秒保持するように設定した。
【0051】
リフロー試験を10回繰り返して行った結果、半導体チップ20の密着保持力は安定し、剥離も容易にすることができた。
【0052】
以上説明したことから明らかなように、本発明の薄板の保持治具1によれば、耐熱性を有し、粘着させた半導体チップ20あるいは半導体ウェーハ30等の薄板を、たとえ半田リフローに投入した後でも、容易に剥離でき、これらの作業を繰り返して行うことができるようになる。
【0053】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0054】
1……保持治具、10……キャリア、11……スペーサ、12……溝、13……粘着フィルム、13B……フィルム基材(シリコーンゴムシート)、131……第1粘着剤層、132……第2粘着剤層、14……接着剤、15……粘着抑制材、20……半導体チップ、30……半導体ウェーハ
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8