(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
当該包装材は、原料パルプを抄紙してなる包装材であって、
上記原料パルプ中のマーセル化パルプの含有率が3質量%以上40質量%以下であり、
表面の算術平均粗さ(Ra)が1.6μm以上4.0μm以下であることを特徴とする包装材である。以下、当該包装材について詳説する。
【0014】
<原料パルプ>
当該包装材は原料パルプを抄紙してなるものである。上記原料パルプはマーセル化パルプを上記の含有率で含み、その他の繊維成分をさらに含むこともできる。
【0015】
「マーセル化」は、アルカリを用いてセルロース繊維を処理することをいう。また、「マーセル化パルプ」は、マーセル化を施したパルプをいう。具体的には、マーセル化パルプは、パルプに含まれるセルロースを水酸化ナトリウム等のアルカリで処理し、セルロース中のグルコース単位の主に6位の−OH基を−ONa基等に変えたアルカリセルロースをいう。
【0016】
マーセル化パルプはマーセル化の影響を受けて繊維間で水素結合を形成し難くなり、マーセル化パルプを原料パルプに配合することで嵩高な紙を抄紙でき、和紙に似た独特の風合い、肌触り、高級感等の特性を発現できる。また、得られた包装材は高強度であり、レーヨン繊維について使用するようなバインダー繊維等の紙力向上成分の使用量を低減することもできる。さらに、マーセル化パルプはレーヨン繊維のような複雑な工程を経ることなく製造されるため、製造コストを低減でき、そのリサイクルも可能である。なお、所望の包装材を得ることができる限り、上記の−OH基の全てがマーセル化されていてもよく、その一部がマーセル化されていてもよい。
【0017】
マーセル化の方法としては、特に限定されず、例えば原料パルプをアルカリ水溶液に浸漬する方法や、噴霧等でアルカリ水溶液を原料パルプに含浸させる方法が挙げられる。アルカリ水溶液も、特に限定されず、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩(水酸化物、酸化物、炭酸化物等)やアンモニア水等が挙げられる。
【0018】
マーセル化パルプの製造方法の一例を挙げれば、原料パルプをアルカリ水溶液中に浸漬し、室温で5分以上48時間以下程度処理する。得られたマーセル化した原料パルプを40℃以上100℃以下で、pHが3以上12以下の温水で洗浄し、次いで遠心脱水等を用いて回収することでマーセル化パルプを得ることができる。また、マーセル化パルプを乾燥に付してもよい。
【0019】
マーセル化パルプは公知の方法に従って製造することもできるが、商業的に入手可能でもある。市販のマーセル化パルプとしては、例えばレヨンニア社製の「SULFATATE」(製品名)、同社製の「ULTRANIER」(製品名)、同社製の「POROSAUIE」(製品名)等が挙げられる。
【0020】
マーセル化パルプの製造に用いるマーセル化用のパルプ繊維は、特に限定されず、例えば公知のパルプ繊維が挙げられる。
【0021】
パルプ繊維は、特に限定されず、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の化学パルプ、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、段ボール古紙、ライナー古紙、雑誌古紙、新聞古紙、地券古紙等から再生した古紙パルプ、上白古紙パルプ、脱墨パルプ等が挙げられる。
【0022】
これらの中では、針葉樹晒クラフトパルプが好ましい。即ち、上記マーセル化パルプはマーセル化針葉樹晒クラフトパルプを含むことが好ましい。マーセル化針葉樹晒クラフトパルプは繊維が長く比較的嵩高いため、和紙に似た独特の風合い、肌触り、高級感等の特性をより容易に発現することができる。
【0023】
上記原料パルプ中のマーセル化パルプの含有率は、3質量%以上40質量%以下であり、好ましくは4質量%以上20質量%以下、より好ましくは4質量%以上15質量%以下である。このように、マーセル化パルプの含有率を上記範囲内とすることで、強度を低下させることなく、上述の和紙調の風合いを効果的に発現することができる。含有率が上記上限を超えると、地合いが低下し包装材として表面に印刷を行った場合の印刷適性が低下したり、強度が低下する。含有率が上記下限未満であると、包装材は和紙調の風合いを効果的に発現することができない。
【0024】
マーセル化パルプのフリーネスは、特に限定されないが、通常550ml以上、好ましくは600ml以上であり、未叩解が特に好ましい。フリーネスが上記範囲であると、和紙調の風合いを効果的に発現することができる傾向がある。フリーネスが550ml未満では和紙調の風合いが低下するおそれがある。
【0025】
マーセル化パルプの繊維長(平均繊維長)は、特に限定されないが、通常1mm以上6mm以下、好ましくは1.5mm以上5.5mm以下である。繊維長が上記範囲内であると、包装材は和紙調の独特の風合いを有する傾向がある。繊維長が上記上限を超えると、地合いが低下し印面のカスレが酷くなるおそれや、結束を生じるおそれがある。繊維長が上記下限未満であると、包装材は和紙調の独特の風合いが低下するおそれがある。
【0026】
<その他の繊維成分>
原料パルプはマーセル化パルプ以外のその他の繊維成分を含むこともできる。この場合、包装材は、マーセル化パルプに由来する特性のみならず、その他の繊維成分に由来する特性も併せて有することができる。
【0027】
その他の繊維成分としては、特に限定されず、例えば上記のようなマーセル化を施す前のパルプ繊維、公知の合成繊維、水溶性の化学繊維等が挙げられる。
【0028】
合成繊維としては、特に限定されず、例えばアセテート等のセルロース系繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等のセルロース系再生繊維等が挙げられる。また、本発明の効果を損なわない範囲で水溶性の合成繊維としてビニロン繊維も用いることができる。
【0029】
これらの中でも、上記原料パルプは針葉樹晒クラフトパルプを含むことが好ましい。包装材の強度をより高めることができる。
【0030】
上記原料パルプ中のその他の繊維成分の含有率は、好ましくは60質量%以上97質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上96質量%以下、さらに好ましくは85質量%以上96質量%以下である。含有率が上記範囲内であると、包装材の強度を高めることができる傾向がある。含有率が上記上限を超えると、包装材は和紙に似た独特の風合いを有さないおそれがある。含有率が上記下限未満であると、包装材の強度が低下するおそれや、地合いが低下し印面のカスレが酷くなるおそれがある。
【0031】
その他の繊維成分のフリーネスは、特に限定されず、通常350ml以上700ml以下、好ましくは400ml以上650ml以下である。フリーネスが上記範囲内であると、包装材は和紙調の独特の風合いを保ちながら強度を高めることができる。フリーネスが上記上限を超えると、包装材の強度が低下するおそれがある。フリーネスが上記下限未満であると、密度が高くなり、包装材は和紙調の独特の風合いが低下するおそれがある。
【0032】
なお、原料パルプ中のパルプ配合率と包装材中のパルプ含有率とは略同一である。
【0033】
マーセル化パルプとその他の繊維成分との組み合わせとしては、マーセル化針葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプとの組み合わせが好ましい。和紙調の風合い及び強度をより向上させることができる。
【0034】
フリーネスが550ml以上のマーセル化針葉樹パルプの含有率が3質量%以上40質量%以下であり、さらに、フリーネスが350ml以上700ml以下の針葉樹晒クラフトパルプの含有率が60質量%以上97質量%以下であることにより、さらに容易に和紙の風合いを有しながらも強度に優れる包装材を得ることができる。
【0035】
<抄紙方法>
包装材は原料パルプを抄紙して得ることができる。抄紙方法は、特に限定されず、公知の方法に従って行うことができる。抄紙方法としては、特に限定されず、例えば酸性抄紙法、中性抄紙法、アルカリ性抄紙法等が挙げられる。抄紙機としても、特に限定されず、例えば長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等が挙げられる。
【0036】
抄紙は、本発明の効果を損なわない範囲で、抄紙用薬剤の存在下に行うこともできる。製紙用薬剤としては、特に限定されず、例えば界面活性剤、ワックス、サイズ剤、填料、防錆剤、導電剤、消泡剤、分散剤、粘性調整剤、凝集剤、凝結剤、紙力向上成分、歩留まり向上剤、紙粉脱落防止剤、嵩高剤、増粘剤等が挙げられる。
【0037】
これらの中では、増粘剤、紙力向上成分のいずれかの存在下に抄紙を行うことが好ましい。
【0038】
具体的には、増粘剤を使用すると、スラリーの粘度が好適なものとなる。その結果、マーセル化パルプ繊維が均一に分散されてワイヤー上で薄く均一に広がり、より和紙に似た独特の風合いを容易に形成できる。
【0039】
増粘剤としては、特に限定されず、セルロース系誘導体、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリアクリル酸誘導体、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)等が挙げられる。
【0040】
これらの中では、マーセル化パルプの均一な分散をより高め、和紙調の風合いをより高めることができるため、ポリエチレンオキサイド系増粘剤が好ましい。
【0041】
増粘剤の使用割合は、特に限定されないが、通常0.01kg/t以上1kg/t以下、好ましくは0.05kg/t以上0.3kg/t以下である。なお、「kg/t」はパルプ固形分1tあたりの固形分での質量(kg)をいう。
【0042】
紙力向上成分を使用すると、包装材の強度が向上する。このため、本発明の効果を損なわない範囲で、上記包装材は紙力向上成分を含むことが好ましい。
【0043】
紙力向上成分としては、特に限定されず、例えば紙力向上剤、バインダー繊維等が挙げられる。
【0044】
紙力向上剤は、特に限定されず、例えばカチオン化デンプン、ポリアクリルアミド等の乾燥紙力増強剤、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(PAE)等の湿潤紙力増強剤等が挙げられる。
【0045】
これらの中では、得られた包装材の水中での離解性に優れ、包装材の強度をより高めることができるため、乾燥紙力増強剤が好ましく、ポリアクリルアミド系乾燥紙力増強剤がより好ましい。
【0046】
バインダー繊維としては、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリビニルアルコール繊維等の水溶性合成繊維を含有することもできるが、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート系繊維等の合成繊維は、抄紙時のドライヤーの熱で溶融して接着し得られた包装材は水中での離解が困難になるおそれがある。
【0047】
紙力向上成分の使用割合は、特に限定されず、通常0.02kg/t以上4kg/t以下、好ましくは0.2kg/t以上1kg/t以下である。なお、「kg/t」はパルプ固形分1tあたりの固形分での質量(kg)をいう。
【0048】
<包装材>
包装材は、原料パルプがマーセル化パルプを含むために、抄紙後、和紙調の風合いを有する。「和紙調の風合い」は、書道用紙、半紙、障子紙、襖紙、壁紙等のような、和紙に似た柔らかな雰囲気を醸し出す外観や風合いを有する紙をいう。上記のような外観や風合いは紙を目視することで確認できる。
【0049】
上記包装材はその表面に凹凸を有し、和紙に似た独特の風合いや表面に印刷した場合に和紙に印刷したような適度な印刷カスレを有するため、包装材表面の算術平均粗さ(Ra)は、1.6μm以上4.0μm以下、好ましくは1.7μm以上3.0μm以下である。算術平均粗さ(Ra)が上記範囲内であると、包装材は嵩高さだけでなく、和紙に似た独特の風合い、肌触り、高級感等の特性をより容易に発現できる。算術平均粗さ(Ra)が上記上限を超えると、表面の凹凸が大きくなりすぎ包装材に印刷を施す場合、印刷時のカスレが酷くなるおそれや、包装材の強度が低下するおそれがある。算術平均粗さ(Ra)が上記下限未満であると、包装材は和紙調の風合いを有さないおそれや、包装材に印刷を施す場合、和紙に印刷したような適度なカスレを発現できないおそれがある。本形態において、包装材表面の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、原料の種類、配合質量割合や、フリーネス等を変化させることによって調節することができる。
【0050】
マーセル化パルプの含有率を3質量%以上40質量%以下にすることに加え、さらに包装材表面の算術平均粗さ(Ra)を1.6μm以上4.0μm以下とすることにより、より和紙の風合いが強く、強度に優れる包装材を得ることができる。
【0051】
上記包装材の坪量は、特に限定されないが、通常5g/m
2以上50g/m
2以下、好ましくは9g/m
2以上40g/m
2以下である。坪量が上記範囲内であると、包装材は和紙調の風合いを有しながらも強度に優れる傾向がある。坪量が上記上限を超えると、包装材の厚さが厚くなりすぎ、包装材として用いた場合に包装しづらくなるおそれがある。坪量が上記下限未満であると、包装材の強度が低下するおそれがある。
【0052】
上記包装材の密度は、特に限定されないが、通常0.35g/cm
3以上0.60g/cm
3以下、好ましくは0.40g/cm
3以上0.55g/cm
3以下である。密度が上記範囲内であると、包装材は好適な嵩高さを有する傾向がある。密度が上記上限を超えると、包装材は和紙調の嵩高さを有さないおそれがある。密度が上記下限未満であると、包装材に印刷を施す場合、印刷時のカスレが酷くなるおそれがある。本形態において、密度は、例えば、原料の種類、配合質量割合や、フリーネス等を変化させることによって調節することができる。
【0053】
上記包装材の縦方向の引張強度は、特に限定されないが、通常0.5kN/m以上5.2kN/m以下、好ましくは0.6kN/m以上4.0kN/m以下である。引張強度が上記範囲内であると、包装材は和紙調の風合いを有しながらも強度に優れる傾向がある。引張強度が上記上限を超えると、包装材は和紙調の嵩高さを有さないおそれがある。引張強度が上記下限未満であると、強度が低すぎ包装材として使用が難しくなるおそれがある。本形態において、引張強度は、例えば、坪量、原料の種類、配合質量割合や、フリーネス等を変化させることによって調節することができる。
【0054】
上記包装材の表面の平滑度は、特に限定されないが、通常20秒以上350秒以下、好ましくは30秒以上250秒以下である。平滑度が上記範囲内であると、包装材は和紙調の風合いを有しながらも強度に優れる傾向がある。平滑度が上記上限を超えると、和紙調の風合いが低下するおそれや、包装材に印刷を施す場合、和紙に印刷したような適度なカスレを発現できないおそれがある。平滑度が上記下限未満であると、包装材に印刷を施す場合、印刷時のカスレが酷くなるおそれがある。本形態において、平滑度は、例えば、原料の種類、配合質量割合や、フリーネス等を変化させることによって調節することができる。
【0055】
JIS−P8220(1998)「パルプ−離解方法」に準拠して上記包装材を離解した離解パルプのフリーネスは、特に限定されないが、通常400ml以上780ml以下、好ましくは500ml以上780ml以下である。フリーネスが上記範囲内であると、包装材は、和紙調の風合いを有しながらも強度に優れる傾向がある。フリーネスが上記上限を超えると、包装材の強度が低下するおそれがある。フリーネスが上記下限未満であると、包装材の密度が高くなり、和紙調の風合いが低下するおそれや、包装材に印刷を施す場合、和紙に印刷したような適度なカスレを発現できないおそれがある。本形態において、上記包装材を離解した離解パルプのフリーネスは、例えば、原料の種類、配合質量割合や、フリーネス等を変化させることによって調節することができる。
【0056】
マーセル化パルプの含有率を3質量%以上40質量%以下とし、包装材表面の算術平均粗さ(Ra)を1.6μm以上4.0μm以下とすることに加え、JIS−P8220(1998)「パルプ−離解方法」に準拠して上記包装材を離解した離解パルプのフリーネスを400ml以上780ml以下とすることにより、さらに和紙の風合いが強く、強度に優れる包装材を得ることができる。
【0057】
JIS−P8220(1998)「パルプ−離解方法」に準拠して上記包装材を離解した離解パルプの繊維長は、特に限定されないが、通常1mm以上6mm以下、好ましくは1.5mm以上5.5mm以下である。繊度が上記範囲内であると、包装材は和紙調の独特の風合いを有する傾向がある。繊維長が上記上限を超えると、地合いが低下し印面のカスレが酷くなるおそれや、結束を生じるおそれがある。繊維長が上記下限未満であると、包装材は和紙調の独特の風合いが低下するおそれがある。本形態において、上記包装材を離解した離解パルプの繊維長は、例えば、原料の種類、配合質量割合や、フリーネス等を変化させることによって調節することができる。
【0058】
上記包装材は、本発明の効果を損なわない範囲で、紙の表面に塗工層や印刷層を設けて模様紙、光沢紙や化粧紙とすることもできる。また、その他の紙と積層させて使用することもできる。上記包装材は単層であってよく、多層であってもよい。
【0059】
<その他>
抄紙工程における温度、圧力、時間、設備等の工程条件は、特に限定されず、使用原料等に従って適宜設定される。抄紙工程の段階数も、特に限定されず、1段階で行ってもよく、多段階で行ってもよい。また、使用する原料は、単独で用いてもよく、複数種の原料を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
当該包装材は和紙調の風合いを有しながらも安価かつリサイクル可能で強度に優れる。このため、当該包装材は上記特性が求められる用途、例えば食品用包装材、包装紙、化粧紙、壁紙等として幅広く使用でき、特に食品用包装材として好適に使用できる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0062】
(算術平均粗さ(Ra))
JIS−B0601(1994)「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語、定義及び表面性状パラメータ」に準拠して、株式会社小坂研究所製「粗さ解析装置サーフコーダーSE30K」を用いて、包装材の表面の算術平均粗さ(Ra)(単位:μm)を測定し、表面粗さとした。算術平均粗さ(Ra)は、包装材の表面の横方向について、カットオフ値λc0.8mm、評価長さ5.0mmで測定した。
【0063】
(坪量)
坪量(単位:g/m
2)は、JIS−P8124(2011)「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠して測定した。
【0064】
(密度)
密度(単位:g/cm
3)は、JIS−P8118(1998)「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0065】
(引張強度)
引張強度(単位:kN/m)は、JIS−P8113(2006)「紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法」に準拠して包装材の縦方向について測定した。
【0066】
(平滑度)
平滑度(単位:秒)は、JIS−P8119(1998)「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠して包装材の表面について測定した。
【0067】
(フリーネス)
フリーネス(単位:ml)は、JIS−P8121(1995)「パルプ−ろ水度試験方法」に準拠して測定した。なお、包装材を離解したパルプのフリーネスは、JIS−P8220(1998)「パルプ−離解方法」に準拠した方法で離解した包装材をJIS−P8121(1995)「パルプ−ろ水度試験方法」に準拠して測定した。
【0068】
(平均繊維長(質量加重平均繊維長))
平均繊維長(単位:mm)は、メッツォオートメーション製「カヤーニFiberLab繊維長測定機」を用いて質量加重平均繊維長を測定した。
【0069】
(和紙調の風合い(外観))
20名が表面を目視し、和紙調に見えるか否かを判断した。
◎:90%以上の人が和紙調の風合いがあると評価した。
○:70%以上90%未満の人が、和紙調の風合いがあると評価した。
△:50%以上70%未満の人が、和紙調の風合いがあると評価した。
×:和紙調の風合いを有すると評価した人が50%未満であった。
【0070】
(離解性試験)
得られた包装材を1.5cm角に裁断し、これをTAPPI標準離解機に1.2%濃度となるように投入した後、3000rpmで10分間離解した。こうして得られた試料分散液から手抄きシートを作製し、目視にてシート中に未離解物が見られないものを離解性良好(○)、未離解物が残存しているものを離解性不良(×)とした。
【0071】
実施例1
原料として、未叩解のマーセル化針葉樹晒クラフトパルプ(フリーネス750ml、平均繊維長3.1mm)を10質量%、フリーネス600mlに叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を90質量%配合した原料スラリーを調製した。この原料スラリーに対し、ポリエチレンオキサイド系増粘剤(明成化学工業株式会社製、製品名「アルコックス」)を対原料固形分あたりの固形分質量基準で0.1kg/t、ポリアクリルアミド系乾燥紙力増強剤(ハリマ化成株式会社製社製、製品名「ハーマイドC−10」)を対原料固形分あたりの固形分質量基準で0.6kg/t添加した。上記原料スラリーを用いて、円網抄紙機にて抄紙し、ヤンキードライヤー(表面温度105℃)で乾燥させて実施例1の包装材を得た。
【0072】
得られた包装材の坪量は17g/m
2、密度は0.40g/cm
3、は、引張強度(縦)は1.15kN/m、平滑度(表)は79秒、算術平均粗さ(表面粗さ)Ra(表)は2.7μm、平均繊維長は2.7mmであった。また、得られた包装材を離解したパルプのフリーネスは615mlであった。
【0073】
実施例2から実施例8、比較例1から比較例6は、実施例1の原料を表1のようにしたこと以外は、実施例1と同様に行った。ただし、実施例5、実施例6は坪量を表1のとおりとした。また、比較例6では、繊度3dtex、長さ5mmのレーヨン繊維を用い、バインダーとしてビニロンバインダーを針葉樹晒クラフトパルプとレーヨン繊維の合計固形分に対し、固形分質量基準で2質量%配合した。
【0074】
実施例及び比較例の原料、品質等を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1より実施例で得られた紙は、比較例のものと比べて引張強度、和紙調の風合い等に優れることが分かる。