(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6177054
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】編機のための経糸の積極送り装置及び編機
(51)【国際特許分類】
D04B 15/48 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
D04B15/48
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-178438(P2013-178438)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-48536(P2015-48536A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】芦辺 伸介
(72)【発明者】
【氏名】マルチン ワルドマン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフガング トゥルンパー
(72)【発明者】
【氏名】チョクリ シェリフ
【審査官】
山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−040411(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第01212978(GB,A)
【文献】
特開2002−348761(JP,A)
【文献】
実開昭53−122455(JP,U)
【文献】
特開昭49−057151(JP,A)
【文献】
特表2010−537062(JP,A)
【文献】
特開昭52−066760(JP,A)
【文献】
特開平06−210141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 3/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸を通して編機の歯口へ供給する経糸パイプを複数備え、編地のウェール方向に沿って、経糸を編目を形成させずに挿入する、横編機または丸編機のための経糸の積極送り装置において、
複数の経糸の糸源から、1個当たりで少なくとも1本の経糸を所要長引き出して積極的に送り出す駆動ローラを、複数有する動力ローラ機構と、
前記経糸パイプ内に空気流を吹き込むことにより、前記動力ローラ機構により引き出した経糸を編機の歯口へ供給する空気噴射機構と、
を備え、
前記所要長は、編目を形成しない領域では0で、編目を形成する領域では編目の1コース当たりで編目1目分の丈方向サイズとされていることを特徴とする、編機のための経糸の積極送り装置。
【請求項2】
編成に応じて所要長の経糸を前記駆動ローラが送り出すように、前記動力ローラ機構を制御する、制御手段がさらに設けられていることを特徴とする、請求項1の編機のための経糸の積極送り装置。
【請求項3】
前記空気噴射機構は経糸パイプ内へ空気を噴射する空気パイプを複数有し、
前記駆動ローラは1個当たりで複数の経糸を送り出し、送り出された複数の経糸がそれぞれの経糸パイプへ挿通されるように構成されていることを特徴とする、請求項1または2の編機のための経糸の積極送り装置。
【請求項4】
前記空気噴射機構には、編地の少なくともコース方向に沿って横糸を編目を形成させずに挿入する際に、横糸を押さえ込むように、歯口へ上方から空気を吹き込む横糸用の空気パイプが、さらに設けられていることを特徴とする、請求項3の編機のための経糸の積極送り装置。
【請求項5】
前記空気パイプから前記経糸パイプへ、パルス的な空気流を繰り返し吹き込むように構成されていることを特徴とする、請求項3の、編機のための経糸の積極送り装置。
【請求項6】
前記編機が立体編地を編成する際、所要長の経糸が積極的に歯口へ供給されるように、前記動力ローラ機構が制御されるように構成されている、ことを特徴とする、請求項2〜5のいずれかの、編機のための経糸の積極送り装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの、編機のための経糸の積極送り装置を備えている横編機または丸編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は編機のための経糸の積極送り装置に関し、所要長の経糸が編地内に送り込まれるようにする装置と、この装置を用いた編機とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3(JP2013−40411A,US2005/123715A,WO97/21860)は、ニット組織に経糸を挿入した編地を編成することを開示している。このような編地では、経糸をパイプから編機の歯口へ供給し、留糸を編機の針でニット組織に編成する。そして経糸はニット組織内に挿入される。また横糸(緯糸)をインレイあるいはタック等によりニット組織に挿入し、例えば経糸と横糸及び留糸からなる編地とする。そして経糸と横糸にカーボンファイバー、グラスファイバー、アラミド糸等の高剛性の糸を用いると、丈夫な編地となる。また経糸、横糸、留糸のいずれか、例えば留糸を熱可塑性樹脂の糸とし、編成後にこの糸を一部溶融させると、編地の形状が固定される。
【0003】
他の先行技術を示す。特許文献4(JP3603031B)は、所要長の編糸を糸源から駆動ローラにより積極的に歯口側へ供給することを開示している。このようにすると、目標通りのサイズの編地を編成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2013−40411A
【特許文献2】US2005/123715A
【特許文献3】WO97/21860
【特許文献4】JP3603031B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、ニット組織に経糸を挿入した編地を、平坦な長尺状に編成するほか、所望の立体形状に編成することを検討している。特に立体的な形状の編地を編成するためには、引き返し編成、スムース編み、等が好ましい。引き返し編成(以下単に「引き返し」)では、次の編目を形成する編目も形成しない編目も、針に係止したままで、次の編目を形成する針に給糸して、次の編目を形成する。スムース編みでも、同様に一部の針にのみ給糸して、次の編目を形成する。キャリッジの1回の移動で編目を形成する方向をコース方向(幅方向)、これに直角な方向をウェール方向(丈方向)と呼ぶと、引き返しやスムース編み等では編地のウェール方向の長さ、即ち丈が場所によって変化し、立体的な編地も編成できる。また編地は巻下げローラにより下方へ引き下げるが、引き返しやスムース編み等では全ての編目に適切な引き下げ力を加えることが難しい。
【0006】
発明者は、経糸をニット組織に挿入する編地を引き返しで編成すると、経糸がニット組織内に十分挿入されないことを経験した。これは、引き返しやスムース編み等では編地の丈が不均一になるため、引き下げ力が不十分になりやすいことと、巻下げローラからの引き下げ力は留糸には加わっても、経糸には加わりにくいこと、とによるものであった。そして経糸の挿入が不十分になると、該当部分で編地の丈が不足し、所望の形状の編地にならない。
【0007】
この発明では、編地内にコース数の差が発生し、編地が巻下げローラにより適切に引き下げられないため、所要量の経糸を挿入できないとの課題を解決する。
この発明の課題は、所要長の経糸をニット組織内に挿入できる、編機のための経糸の積極送り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、経糸を通して編機の歯口へ供給する経糸パイプを複数備え
、編地のウェール方向に沿って、経糸を編目を形成させずに挿入する、横編機または丸編機のための経糸の積極送り装置において、複数の経糸の糸源から、1個当たりで少なくとも1本の経糸を所要長引き出して積極的に送り出す駆動ローラを、複数有する動力ローラ機構と、前記経糸パイプ内に空気流を吹き込むことにより、前記動力ローラ機構により引き出した経糸を編機の歯口へ供給する空気噴射機構、とを備え
、前記所要長は、編目を形成しない領域では0で、編目を形成する領域では編目の1コース当たりで編目1目分の丈方向サイズとされていることを特徴とする。
【0009】
この発明では、駆動ローラにより糸源から所要長の経糸を引き出し、積極的に送り出すことと、経糸パイプ内へ空気流を吹き込み、前記経糸を経糸パイプ内で出口側へ進めることとの組合せにより、経糸をニット組織内に挿入する。発明者の経験では、これらの一方のみでは所要長の経糸を挿入することはできないが、双方を用いると所要長の経糸をニット組織に挿入することができる。駆動ローラは糸源から経糸を引き出し、所要長の経糸を経糸パイプへ送り出す。そして経糸パイプ内に空気流を吹き込むことにより、経糸をパイプ内で出口側へ進め、ニット組織に挿入できる。なお本発明を特許文献4と組合せ、所要長の留糸、あるいは所要長の留糸と横糸を、駆動ローラにより引き出し積極的に送り出すと、所望のサイズの編地を精度良く編成できる。
【0010】
この発明では、引き返し、スムース編み等により様々な形状の編地を編成でき、かつ引き返し、スムース編み等を行っても所望のサイズの編地を編成できる。以下、引き返し、スムース編み等による立体的な編成を、立体編成という。また巻下げローラに頼らずに編地を編成できるが、編機は巻下げローラを備えていても良い。立体編成以外の編成箇所では、駆動ローラによる経糸の積極送りと空気流の吹き込みとがなくても、ほぼ所望の形状に編成できるので、これらを省略しても良い。しかし編地を所望の形状に編成するため、立体編成以外の編成箇所でも、駆動ローラによる経糸の積極送りと空気流の吹き込みとを行うことが好ましい。さらに空気パイプからの空気流を用いると、経糸パイプに経糸を通してセットすることが容易になる。なお経糸パイプを左右方向に移動可能にすると、インレイあるいはタックにより挿入する横糸のキャリア等を兼ねることができ、経糸専用のパイプを設ける必要はない。複数の駆動ローラを独立して制御できるので、編地の必要個所の必要なだけの経糸を挿入できる。
【0011】
好ましくは、編成に応じて所要長の経糸を前記駆動ローラが送り出すように、前記動力ローラ機構を制御する、制御手段がさらに設けられている。例えば編機が引き返し編成、スムース編み等を行う際に、制御手段は、所要長の経糸を送り出す。経糸の送り出しは、好ましくは引き返し編成、スムース編み等の1コース毎、あるいは2コース毎等に行う。経糸の所要長は、例えば編成データから求めることができる。またこの時、空気パイプから経糸パイプ内へ空気流を吹き込む。このようにして新たな編目を形成する領域に所要長の経糸が挿入され、経糸は空気流により経糸パイプ内を前進する。なお編目を形成しない領域では、経糸の所要長は例えば0であり、編目を形成する領域では、例えば経糸の所要長は編目1目分の丈方向サイズである。ここで仮にニット、ミス、ニットの順に編成すると、両側がニットなのでミスの位置も編目を形成する領域に含まれ、ミスの位置にも経糸を供給する。駆動ローラの制御データ、及び空気の吹き込みの要否等のデータは、例えば編地の編成データを解析することにより得られるが、手動でこれらのデータを設定しても良い。
【0012】
好ましくは、前記空気噴射機構は経糸パイプ内へ空気を噴射する空気パイプを複数有し、前記駆動ローラは1個当たりで複数の経糸を送り出し、送り出された複数の経糸がそれぞれの経糸パイプへ挿通されるように構成されている。駆動ローラ1個に対して、経糸を1本送り出すようにしても良いが、多数の経糸を用いるので、経糸の本数と同じ数の駆動ローラを設けると、動力ローラ機構が占めるスペースが大きくなる。そこで例えば隣接する複数の経糸、例えば2本ないし5本の経糸を、1個の駆動ローラから、例えば隣接する複数の経糸パイプへ送り出すと、動力ローラ機構の数を減らすことができる。
【0013】
好ましくは、空気噴射機構には、コース方向に沿って横糸を挿入する際に、横糸を押さえ込むように、歯口へ上方から空気を吹き込む横糸用の空気パイプが、さらに設けられている。このようにすると、横糸(実施例のインレイ糸等)が歯口から浮き上がることを防止できる。
【0014】
好ましくは、前記経糸パイプと前記空気パイプとが各々複数設けられ、複数の空気パイプへ、例えば5本〜50本の空気パイプへ、一括して空気流を供給する空気流の配管がさらに設けられている。このようにすると配管の数とバルブの数を減らすことができる。
【0015】
発明者の経験によると、経糸を経糸パイプから歯口へ送り込む際に、空気流をパルス的に、即ち間欠的に、繰り返し吹き込む方が、一定の流量で空気を連続的に空気を吹き込むよりも、効率的に経糸を挿入できる。また空気パイプから経糸パイプへ空気流を連続的に常時吹き込んでも良いが、経糸の送り込みをせず、ニット組織の編成もしていない場合、空気流を止めても良い。なお経糸を送り込む個所では空気流を強め、経糸を送り込まない個所では空気流を弱めると、経糸を歯口の奧から直立させ、針床の針に干渉しないようにできる。ここでパルス的に送気する場合、経糸を送り込む個所では平均流量を増し、送り込まない場所では平均流量を小さくする。
【0016】
好ましくは、前記編機が立体編地を編成する際、所要長の経糸が積極的に歯口へ供給されるように、前記動力ローラ機構が制御される。立体編地の編成時に所要長の経糸が確実に供給されるので、所望の形状の立体編地を編成できる。
【0017】
またこの発明は、上記の経糸の積極送り装置を備えている編機にある。編機は針床と、針床上を移動して針を操作するキャリッジ、あるいは針毎のリニアモータ等を備え、キャリアから留糸を供給し、横糸を挿入する場合、横糸用のキャリアから供給する。そして編機は横編機でも丸編機でも良い。この編機は巻下げローラを備えていなくても良く、経糸を挿入した編地を所望の形状に編成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例の経糸の積極送り装置と横編機とを示すブロック図
【
図3】実施例での経糸の給糸アルゴリズムを示すフローチャート
【
図4】実施例での経糸の積極送りタイミングを示す図で、1)は積極送り装置等のハードウェアを、2)は糸送りローラの動作を、3)は空気の吹き込みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0020】
図1〜
図7に、実施例の経糸の積極送り装置4(以下「送り装置4」)と、これを備えている横編機2とを示し、横編機に代えて丸編機を用いても良い。横編機2は例えば前後一対の針床6,針床上6上を往復走行して、針床6の針を操作し、編地のニット組織を編成するキャリッジ8とを備えている。10は横編機2のコントローラで、編地の編成データに基づき、キャリッジ8等を制御する。12,14はキャリアで、12は編地のニット組織を形成する留糸(編糸)のキャリア、14はインレイあるいはタックにより編地に挿入する横糸用のキャリアである。キャリア12,14は、キャリッジ8に連行されて、もしくはキャリッジ8と同期して走行し、図示しない糸源からキャリア12,14のパイプを通すように、留糸あるいは横糸を、針床6,6間の歯口へ供給する。なお針床6が1枚の場合、針床の先端で針が進退し編目を形成する領域が歯口となる。
【0021】
動力ローラ機構18は、ステッピングモータあるいはサーボモータ等のモータ20により回転する駆動ローラ22と、駆動ローラ22もしくはモータ20の回転数を監視するエンコーダ21とを備え、他に駆動ローラ22に経糸26を掛け渡すための従動ローラ23,24を備えている。そして例えば3個の糸源25(コーン、ボビン等)からの経糸26を同じ駆動ローラ22に巻き掛けて、所要長の経糸を引き出し、ローラ28,29等を介して、パイプアセンブリー36の経糸パイプへ送り出す。動力ローラ機構18は複数の駆動ローラ22を備え、それらを独立して制御するので、編成箇所毎に必要な長さの経糸を糸源25から引き出すことができる。30はコンプレッサで、圧縮空気を発生させ、タンク32に圧縮空気を蓄え、バルブ33を介して、配管34からパイプアセンブリー36の空気パイプ41,42へ供給する。これらの内で、空気パイプ41は横糸用で、空気パイプ42は経糸用である。なお駆動ローラ22と従動ローラとの間に経糸26を挟み込んでも良く、駆動ローラ22に対して経糸26が滑らないようにして、駆動ローラ22を目標の回転角だけ回転させればよい。
【0022】
図2にパイプアセンブリー36を示し、経糸パイプ40が例えば21本、一般的には10〜100本、ベース44に取り付けられている。同数の経糸用の空気パイプ42がベース45に取り付けられて、経糸パイプ40の上端よりもやや上方から経糸パイプ40内へ圧縮空気の気流を吹き込み、経糸26をパイプ40内で前進させる。横糸用の空気パイプ41は、図示しない横糸を押さえ付け、横糸が浮き上がることを防止するため、歯口内へ圧縮空気を吹き込む。そしてパイプアセンブリー36毎に、配管34から圧縮空気を供給し、パイプアセンブリー36毎に圧縮空気の吹き込みをオン/オフする。また経糸26は3本ずつ同じ駆動ローラ22により引き出されて、3本の経糸パイプ40へ送り込まれる。このため編地のパターンは、経糸3本を単位として変化させることが好ましい。なおタンク32と横糸用の空気パイプ41とは設けなくても良い。またパイプアセンブリー36は、複数本の経糸パイプ40と、空気パイプ41,42を配列したもので、構造は任意である。パイプアセンブリー36を1個〜複数個、針床6に沿って配置する。
【0023】
図1に戻り、送り装置4のコントローラ38は、モータ20,コンプレッサ30,バルブ33を制御する。コントローラ38は、横編機のコントローラ10から、次のコース(キャリッジ8の次のストローク)で、どの経糸を挿入するかを示すデータを受け取り、挿入する経糸を駆動ローラにより所要長引き出し、挿入する経糸のあるパイプアセンブリー36へ空気を吹き込むように制御する。このデータは挿入する経糸を明示したものでも、あるいは編目を形成する針を示して、これからコントローラ38が必要な経糸を判断するものでも良い。編地の端部以外では、経糸の所要長は、編目1目分の丈で定まり、編み始めと編み終わりでは、1目分の丈から変化することがある。経糸の所要長は編地の編成データで指定され、コントローラ10は経糸の所要長をコントローラ38へ適宜の手法で送出する。なおコントローラ38を設けず、横編機のコントローラ10により、モータ20,コンプレッサ30,バルブ33を制御しても良い。編地の丈方向の長さに応じて、編糸を引き出す長さを駆動ローラ22単位で制御する。なお駆動ローラ22が1本ずつ経糸を引き出すようにすると、経糸毎に編地に挿入する長さを変化させることが出きる。また経糸を送り出すタイミングは、経糸を挿入するニット組織の1コース毎に送り出す、あるいは2コース毎に送り出す等とする。
【0024】
図3,
図4に、経糸26の給糸アルゴリズムを示す。ステップ1で、次のコースでの経糸26の所要長を求め、経糸パイプ40へキャリッジ8が接近すると(ステップ2)、経糸26の送り出しと空気の吹き込みとを行う(ステップ3,4)。駆動ローラ22による経糸26の送り出しは、経糸26の両側での編目の形成と同時に行うことが好ましいが、経糸26を3本ずつ送り出すので、経糸26の周囲での編目の形成が終わるまでに実行する。空気の吹き込みも、経糸26の両側での編目の形成と同時に行うことが好ましいが、パイプアセンブリー36単位で空気の吹き込みをオン/オフするので、それよりも長い期間に渡って空気を吹き込む。そして空気を一定量ずつ吹き込むよりも、
図4の右下に示すように、パルス的にオン/オフさせる方が、少ない空気量で確実に経糸26を歯口へ送り込むことができる。またキャリッジが通過すると、空気の吹き込みを停止するか、空気の吹き込みを弱める(ステップ5,6)。
【0025】
図5に編成した編地の例を示し、
図6にこの編地60の要部を示す。62は引き返しを行わずに通常の編成を行う通常部、64は引き返しを行う引き返し部64である。ライン65,65は境界等ではなく、編地60上の同じ位置を示し、同様にライン66,66も同じ位置を示す。例えばライン65,65の間で、編目は針に係止されたままで、編成は行われない。そして
図6の下から上へ編成するものとして、下側のラインを通過すると編成を休止し、上側のラインを通過すると編成を再開する。引き返しにより、
図5での上向きの突起が編成される。
【0026】
編地60の構造を、領域67について、
図6の下部に示す。経糸26以外に横糸68がキャリア14から供給されて、インレイあるいはタックにより編地60に挿入される。そして図示しない留糸によりニット組織が編成されて、経糸26と横糸68とが例えば留糸との摩擦力により編地60に固定されている。なお横糸68は挿入しなくても良い。またライン65,65の上下で経糸26は直接つながっており、鎖線の区間では経糸は実際には存在しない。編丈に合わせて、
図6の左3本の経糸が、右3本の経糸よりも、長く供給されていることが分かる。
【0027】
図7は、横糸用のキャリア14を停止させることにより、横糸72を丈方向にも配置した編地70を示す。この例では横糸用のキャリア14は、経糸パイプ40と同様のパイプと、横糸72を丈方向に送り出すために圧縮空気を吹き込む空気パイプとを備え、横糸72用の動力ローラ機構から所要長の横糸を供給される。この場合、コース方向の編幅を丈方向の位置によって変化させることができる。また横糸用のキャリア14を固定すると、経糸の給糸に兼用できる。
【0028】
実施例では、編地の各編成箇所において、正確に所要長の経糸26を編地内に挿入できるので、丈方向に正確なサイズの編地を編成できる。そして引き返しにより、3次元形状等の所望の形状の編地を編成できる。また経糸と横糸と留糸の材質を選択することにより、所望の強度、耐熱性、弾性率等を備える編地を得ることができる。編地は横糸と経糸とを備えるマルチレイヤ編地でも、立体的な編地でも、あるいは単層で平面的な編地でも良い。立体編成は、引き返し以外にスムース編みでも、同様にして横糸と経糸を挿入しながら編成できる。
【符号の説明】
【0029】
2 横編機
4 経糸の積極送り装置
6 針床
8 キャリッジ
10 コントローラ
12,14 キャリア
18 動力ローラ機構
20 モータ
21 エンコーダ
22 駆動ローラ
23,24 従動ローラ
25 糸源
26 経糸
28,29 ローラ
30 コンプレッサ
32 タンク
33 バルブ
34 配管
36 パイプアセンブリー
38 コントローラ
40 経糸パイプ
41 横糸用の空気パイプ
42 経糸用の空気パイプ
44,45 ベース
60 編地
62 通常部
64 引き返し部
65,66 ライン
68 横糸
70 編地
72 横糸