(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板の一方面側に配置され、複数の第1導体線を交差させることで形成された複数の第1電極セル及び隣り合う前記第1電極セルの前記第1導体線同士を電気的に接続する少なくとも1本の導体線からなる第1接続線を有する第1電極と、
前記基板の一方面側に前記第1電極と交差するように配置され、複数の第2導体線を交差させることで形成された複数の第2電極セル及び隣り合う前記第2電極セルの前記第2導体線同士を電気的に接続する接続部材を有する第2電極と、を備えたタッチパネルの製造方法であって、
前記基板の一方面側に、
前記第1導体線と、前記第2導体線と、前記第1接続線と、前記第1電極及び前記第2電極をそれぞれ外部回路に電気的に接続する導体線からなる第1配線及び第2配線と、を同時に形成する導体線形成工程、
前記第1接続線の上方又は下方に配置される絶縁層を形成する絶縁層形成工程、
前記第1接続線との間に前記絶縁層が介される前記接続部材を形成する接続部材形成工程、を備え、
前記接続部材は、少なくとも1本の導体線からなる第2接続線により構成され、前記第1接続線及び前記第2接続線によって網目が形成され、
前記第1接続線の線幅及び前記第2接続線のうち、一方の接続線の線幅が前記第1導体線及び前記第2導体線の線幅よりも太く、他方の接続線の線幅が前記第1導体線及び前記第2導体線の線幅よりも細いタッチパネルの製造方法。
前記第1電極及び前記第2電極セルの隙間に、前記第1導体線及び前記第2導体線同士を電気的に接続しない補助線が設けられ、前記第1導体線、前記第2導体線、前記第1接続線、前記第2接続線及び前記補助線によって網目が形成されている請求項1に記載のタッチパネルの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のタッチパネルでは、基板の一方面に網目状の第1電極が形成された第1面状体と、基板の一方面に網目状の第2電極が形成された第2面状体とを重ね合わせた構造であるため、タッチパネル全体の厚みが厚くなる。近年、タッチパネルは、薄型・軽量化が求められているところ、特許文献2のタッチパネルでは軽薄の要求に不利であるという問題がある。また、2枚の基板にそれぞれ電極や配線などを形成する必要があるため、タッチパネル製造のための工程が多くなり、タッチパネルを効率よく製造することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、低抵抗な網目状の電極を備えたタッチパネルにおいて、薄型化・軽量化を実現するとともに、効率よくタッチパネルを製造できるタッチパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、基板の一方面側に配置され、複数の第1導体線を交差させることで形成された複数の第1電極セル及び隣り合う前記第1電極セルの前記第1導体線同士を電気的に接続する少なくとも1本の導体線からなる第1接続線を有する第1電極と、前記基板の一方面側に前記第1電極と交差するように配置され、複数の第2導体線を交差させることで形成された複数の第2電極セル及び隣り合う前記第2電極セルの前記第2導体線同士を電気的に接続する接続部材を有する第2電極と、を備えたタッチパネルの製造方法であって、前記基板の一方面側に、前記第1導体線と、前記第2導体線と、前記第1接続線と、前記第1電極及び前記第2電極をそれぞれ外部回路に電気的に接続する導体線からなる第1配線及び第2配線と、を同時に形成する導体線形成工程、前記第1接続線の上方又は下方に配置される絶縁層を形成する絶縁層形成工程、前記第1接続線との間に前記絶縁層が介される前記接続部材を形成する接続部材形成工程、を備えるタッチパネルの製造方法によって達成される。
【0009】
上記構成のタッチパネルの製造方法においては、前記導体線形成工程、前記絶縁層形成工程及び前記接続部材形成工程の順序で行われることが好ましいが、前記接続部材形成工程、前記絶縁層形成工程及び前記導体線形成工程の順序で行われてもよい。
【0010】
また、前記第1導体線、前記第2導体線及び前記第1接続線の電気抵抗率は、1.6×10
−8Ω・m〜1.0×10
−4Ω・mであることが好ましい。
【0011】
また、前記第1導体線、前記第2導体線及び前記第1接続線の線幅は、3μm〜50μmであることが好ましく、3μm〜25μmであることがより好ましく、3μm〜10μmがより好ましい。
【0012】
また、前記第1導体線、前記第2導体線及び前記第1接続線は、黒化処理により形成された黒化層を有していることが好ましい。
【0013】
また、前記接続部材は、少なくとも1本の導体線からなる第2接続線により構成され、前記第1接続線及び前記第2接続線によって網目が形成されていることが好ましい。
【0014】
また、前記第1接続線の線幅及び/又は前記第2接続線の線幅が、前記第1導体線及び前記第2導体線の線幅と異なることが好ましい。
【0015】
また、前記第1導体線及び前記第2導体線の少なくとも一部の線幅が、前記第2接続線の線幅と同じであることが好ましい。
【0016】
また、前記第1電極及び前記第2電極セルの隙間に、前記第1導体線及び前記第2導体線同士を電気的に接続しない補助線が設けられ、前記第1導体線、前記第2導体線、前記第1接続線、前記第2接続線及び前記補助線によって網目が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の導体線を交差させることで網目状の第1電極及び第2電極を形成しているので、希少金属であるインジウムの使用を避けることができ、ITOを用いるよりも基板上に形成される電極パターンの低抵抗化を図ることができ、かつ、電極パターンの視認性も向上させることができるので、静電容量式のタッチパネルとして好適に用いることができる。また、第1電極及び第2電極のいずれもが基板の一方面に形成されているので、タッチパネルの構造の簡略化と全体的な厚み・重さの軽減(薄型化・軽量化)を実現できるという優位性を有する。さらに、第1電極及び第2電極を構成する各導体線や第1接続線、さらには各配線を同時に一括して基板の一方面上に形成しているので、タッチパネル製造のための工程を少なくすることができ、タッチパネルを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。尚、各図面は、構成の理解を容易にするため、実寸比ではなく部分的に拡大又は縮小されている。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造されたタッチパネルの平面図である。
図2及び
図3は、
図1のタッチパネル1の一部分を拡大して示す概略断面図である。
図4は、
図1のタッチパネル1の一部分を拡大して示す概略平面図である(第1電極セル30及び第2電極セル40の導体線L1,L2を一部省略)。
図1のタッチパネル1は静電容量式のタッチパネルであり、透明な基板2と、基板2の一方面S側に設けられた複数の帯状の第1電極3及び複数の帯状の第2電極4と、第1電極3及び第2電極4が交差する部分に設けられる絶縁層7と、を備えている。
【0021】
第1電極3は、基板2の一方面Sの第1方向(X方向)に所定間隔をあけて配置されており、隣接する第1電極3間は電気的に絶縁されている。一方、第2電極4は、基板2の一方面Sの前記第1方向(X方向)と垂直に交差する第2方向(Y方向)に所定間隔をあけて配置されており、隣接する第2電極4間が電気的に絶縁されている。第1電極3及び第2電極4には、線状の第1配線5及び第2配線6がそれぞれ接続されている。各配線5,6は、基板2の端縁まで延びるように配線されており、その先端部が静電容量検出回路(図示省略)に接続されている。各配線5,6は、その距離や幅を考慮して低抵抗とすることが好ましい。なお、本実施形態では、第1方向(X方向)及び第2方向(Y方向)は直交しているが、直交しない角度で基板2の一方面S上に第1電極3及び第2電極4を配置することもできる。
【0022】
基板2は、誘電体基板である。基板2の材料は、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレートなどの透明材料が挙げられる。基板の厚みは10μm〜2000μm程度が好ましい。また、これらの材料を多層に積層してもよい。また、基板2の表面及び裏面に、表面及び裏面の保護のためのハードコート層や、反射防止層、防汚層、アンチブロッキング層、受容層などの機能層を設けたり、プラズマ処理などを施したりしてもよい。
【0023】
第1電極3は、複数の第1電極セル30と、隣接する第1電極セル30を電気的に接続する第1接続線31とを備えている。また、第2電極4は、複数の第2電極セル40と、第1接続線31上に絶縁層7が介された状態で配置され、隣接する第2電極セル40を電気的に接続する接続部材8とを備えている。
【0024】
複数の第1電極セル30は、基板2の一方面Sの第2方向(Y方向)に等間隔で配置されている。第1電極セル30は、複数の第1導体線L1を交差させることによって網目状に形成されており、複数の格子Kが組み合わされた形状である。格子Kは、図示例では正方形状である。第1導体線L1の線幅は、例えば3μm〜50μm程度であり、好ましくは3μm〜25μm程度であり、より好ましくは3μm〜10μm程度である。また、第1導体線L1のピッチは、例えば100μm〜1000μm程度である。また、第1導体線L1の厚みは、例えば0.01μm〜10μm程度であり、さらに好ましくは0.05μm〜5μm程度である。このような寸法を有する第1電極セル30は、第1導体線L1の線幅が非常に細く、線幅に対するピッチが十分に大きいため目立ちにくい。
【0025】
複数の第2電極セル40は、基板2の一方面Sの第1方向(X方向)に等間隔で配置されている。第1電極セル30及び第2電極セル40の外形は、本実施形態では菱形状であり、第2電極セル40は、基板2の一方面S上に設けられた第1電極セル30と重ならないように第1電極セル30が存在しない空いたスペースを埋めるように設けられる。これにより、基板2の一方面Sは、複数の第1電極セル30及び複数の第2電極セル40が敷き詰められた状態となる。第2電極セル40も、第1電極セル30と同様に、複数の第2導体線L2を交差させることによって網目状に形成されており、第2導体線L2が第1電極3とは接続されないように隙間をあけて配線されている。この第2導体線L2は、第1導体線L1と同じ線幅、ピッチ、厚みであり、第2電極セル40は、第1電極セル30と同形状の格子Kが複数組み合わされた形状である。第2導体線L2は、第1導体線L1と同じ材料で形成されている。これにより、第2導体線L2を、第1導体線L1と一括して基板2の一方面S上に形成できるので、効率よく形成することが可能である。なお、第1電極セル30及び第2電極セル40の外形は、必ずしも菱形状である必要はなく、第1電極セル30と第2電極セル40との間で絶縁性が確保され、指などの接触ポイントを検出可能である限り、任意の形状とすることができる。
【0026】
第1接続線31は、隣り合う第1電極セル30の第1導体線L1同士を互いに接続する線状のものであり、隣り合う第1電極セル30の間に1本又は複数本設けられている。第1接続線31の形状は、一方向に延びる直線的な形状であってもよいし、1箇所又は複数箇所で屈曲した形状(L字状、ジグザグ状など)であってもよい。第1接続線31は、直線的に延びている場合には、第1導体線L1と同方向(U方向又はV方向)を向いており、屈曲している場合には、それぞれ直線的に延びる構成部分31Aが第1導体線L1と同方向(U方向又はV方向)を向いていることが好ましい。また、第1接続線31(第1接続線31が屈曲している場合には、直線的に延びる各構成部分31A)は、いずれかの第1導体線L1の延長上に位置して、当該第1導体線L1と1本の線状となっていることが好ましい。第1接続線31は、第1導体線L1及び第2導体線L2と同じ材料で形成されている。これにより、第1接続線31を、第1導体線L1及び第2導体線L2と一括して基板2の一方面S上に形成できるので、効率よく形成することが可能である。
【0027】
基板2の一方面S上には、少なくとも第1接続線31を覆うようにして、絶縁層7が設けられている。絶縁層7は、透明でかつ導電性がない絶縁材料であれば、材料は特に限定されないが、その下方及び上方に配置される第1接続線31及び接続部材8との密着性が高いものが望まれ、エポキシ系やアクリル系などの一般的な熱硬化性透明樹脂や光硬化性透明樹脂などを用いることができる。このような透明樹脂を公知のコーティング法やスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などで第1接続線31を覆うように塗布することで、絶縁層7を形成できる。また、酸化珪素などの無機絶縁材料を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD法や、CVD法などにより、絶縁層7を形成することができる。また、感光性を有する透明な絶縁材料を用い、フォトリソグラフィによっても絶縁層7を形成できる。その他、ポリエステル系樹脂の透明性フィルムなどを少なくとも第1接続線31を覆うように基板2の一方面S上に貼り付けることによっても、絶縁層7を形成できる。絶縁層7の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば0.1μm〜50μm程度とすることができる。また、絶縁層7の外形は、
図4では矩形状であるが、これに限られることなく、例えば多角形状や円形状など、種々の形状とすることができる。
【0028】
接続部材8は、絶縁層7の上面を横切るようにして、隣り合う第2電極セル40の第2導体線L2同士を電気的に接続している。よって、第1接続線30と接続部材8とは、間に絶縁層7が配置されることで、基板2の一方面S上で交差する際に互いに絶縁されている。本実施形態の接続部材8は、線状の第2接続線41により構成され、第2接続線41が隣り合う第2電極セル40の間に1本又は複数本設けられている。第2接続線41の形状は、第1接続線31と同様に、一方向に延びる直線的な形状であってもよいし、屈曲した形状(L字状、ジグザグ状など)であってもよい。第2接続線41は、直線的に延びている場合には、第2導体線L2と同方向(U方向又はV方向)を向いており、屈曲している場合には、それぞれ直線的に延びる構成部分41Aが第2導体線L2と同方向(U方向又はV方向)を向いていることが好ましい。また、第2接続線41(第2接続線41が屈曲している場合には、直線的に延びる各構成部分41A)は、いずれかの第2導体線L2の延長上に位置して、当該第2導体線L2と1本の線状となっていることが好ましい。第2接続線41は、第1導体線L1及び第2導体線L2、第1接続線31と同じ材料で形成されていても異なる材料で形成されていてもよい。
【0029】
本実施形態では、第1接続線31及び第2接続線41は、タッチパネル1を上方又は下方から見た場合に、交差することによって複数の格子Kが組み合わされた網目を形成するように配線されている。第1接続線31は絶縁層7の下方に、第2接続線41は絶縁層7の上方に、それぞれ形成されているために互いに非接触であるが、見かけ上、網目状となるように配線されることにより、第1電極3と第2電極4とが交差する部分に、周りの第1電極セル30及び第2電極セル40を構成する格子Kと同形状の複数の格子Kが一様に配置される。これにより、基板2の一方面S上に、第1電極セル30、第2電極セル、第1接続線31及び第2接続線41により見た目が全体的に均一な網目状パターンが形成されるので、第1電極3及び第2電極4のパターン形状を目立ちにくくすることができ、タッチパネル1の視認性を向上させることができる。
【0030】
さらに、本実施形態では、第1電極セル30の4つの辺部のうち、第2電極セル40と対向する辺部に、対向する第2電極セル40に向けて第1導体線L1が張り出す張出部32が複数設けられているとともに、第2電極セル30の4つの辺部のうち、第1電極セル30と対向する辺部にも、対向する第1電極セル30に向けて第2導体線L2が張り出す張出部42が複数設けられている。これらの張出部32,42は、互い違いとなるよう交互に設けられるのが好ましいが、必ずしも互い違いである必要はない。これらの張出部32,42が、第1電極セル30及び第2電極セル40の第1導体線L及び第2導体線L2と格子Kを形成することで、第1電極セル30及び第2電極セル40の隙間が格子Kで敷き詰められる。よって、第1電極セル30及び第2電極セル40の境界が目立たなくなるので、タッチパネル1の視認性をより一層向上させることができる。
【0031】
なお、上記した説明及び以下の説明において、網目状とは、第1導体線L1、第2導体線L2、第1接続線31、第2接続線41などの線と線とが見かけ上も含め交点を有するように交差していることに加えて、線が交わる部分において少なくとも一方の線が断続しているために線と線とが交点を有さないが交差していることも含んでいる。
【0032】
次に、上記構成のタッチパネル1を製造する方法を説明する。まず、基板2を洗浄などし、第1電極3や第2電極4が形成できるように準備する。基板2は、必要に応じて所望の形状にカットする。
【0033】
そして、
図5に示すように、基板2の一方面S上に、第1電極セル30の第1導体線L1及び第1接続線31と、第2電極セル40の第2導体線L2とを形成する(導体線形成工程)。第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2の形成方法としては、フォトリソグラフィを使用することができる。例えば、基板2の一方面S上に銅や銀などの金属薄膜を成膜した後、金属薄膜の表面に感光性レジストを薄く塗布し加熱する。レジストの塗布面にパターンマスクを配置し、その上から紫外線を所定時間照射して露光することで、露光された部分と露光されていない部分からなるパターンを作製する。そして、現像液を用いて未露光の部分のレジストを除去してレジストパターンを形成し、金属薄膜の露出部分に対してエッチングを行って基板2上から除去し、基板2上に第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2の配線パターンを形成する。その後、金属薄膜上の余分なレジストを除去することで、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2が形成される。金属薄膜の成膜は、スパッタリングや真空蒸着などの成膜方法で行われる。また、エッチングは、酸や酸化剤などによる湿式エッチング、又は、レーザーアブレーションや腐食性ガスを用いた乾式エッチングで行われる。
【0034】
なお、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2の形成時には、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2の経年劣化を防止するために防錆層を表面に設けることが好ましい。防錆層は、例えば、基板2の一方面S上に金属薄膜を形成する際に、金属薄膜の表面にニッケル銅(NiCu)などの防錆作用を有する金属を薄膜として堆積させることで、形成することができる。
【0035】
また、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2の形成時には、メッシュ状にパターニングされる第1、第2電極セル30,40(第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2)のインビジブル性(電極有無の差異が不可視)を悪化させる金属光沢を抑えるために黒化処理を行うことが好ましい。この黒化処理は、例えば、基板2の一方面S上に金属薄膜を形成する際に、基板2の一方面S又は基板2の一方面Sに成膜された金属薄膜の表面を、黒色などの光の反射を抑制可能な低反射色に変色させることで行うことができる。基板2の一方面Sや金属薄膜の表面は、例えば金属薄膜をスパッタリングや真空蒸着などで基板2の一方面Sに成膜する時に、酸素や窒素などのガスをチャンバー内に流し、金属の酸化や窒化により生成される生成物質を薄膜として、金属薄膜の最下層又は最表層に堆積させることで、黒色などの低反射色に変色させることができる。これにより、エッチング及びレジスト除去後の第1導体線L1、第2導体線L2及び第1接続線31は、黒化処理により形成された黒化層を、その表面又は裏面(基板2との境界面)に有する。その結果、第1導体線L1、第2導体線L2及び第1接続線31の金属光沢を抑えることができるので、第1導体線L1、第2導体線L2及び第1接続線31のインビジブル性を良好とすることができる。なお、金属薄膜を基板2の一方面Sに成膜する時に、光反射率の低い金属を金属薄膜の表面又は裏面(基板2との境界面)に堆積することで、基板2の一方面Sや金属薄膜の表面を黒色などの低反射色に変色させてもよい。
【0036】
また、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2の形成後、もしくは、後述する第2接続線41の形成後、硫酸や水酸化ナトリウム水溶液などの薬液に各導体線L1,L2及び各接続線31,41の表面を浸漬させて、黒色などの低反射色に変色させることでも、黒化処理を行うことができる。その他、めっきなどにより、各導体線L1,L2及び各接続線31,41上に、酸化銅などの光反射率が低い酸化物などを堆積させることでも、黒化処理を行うことができる。
【0037】
なお、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2の形成方法としては、上記以外のフォトリソグラフィを使用してもよい。例えば、銀インクのような感光性を有する導電性インクを用いたフォトリソグラフィによっても、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2を形成することができる。また、フォトリソグラフィによる方法に限定されず、銀、金、白金、パラジウム、銅、カーボンなどの極微細な導電性粒子を含む導電性インクや、PEDOT・PSSのような透明導電性樹脂を基板2上にスクリーン印刷やグラビア印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法を用いて細線パターン状に印刷することでも、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2を形成することもできる。
【0038】
各配線5,6は、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2と一緒に上記方法で基板2の一方面S上に形成してもよいし、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2を形成した後、配線印刷用の導電インクを例えばスクリーン印刷などの公知の印刷方法を用いて基板2の一方面S上に細線状に印刷することで形成してもよい。ただし、各配線5,6を、第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2と同じ材料で一括して基板2の一方面S上に形成すれば、効率よく形成することが可能である。
【0039】
導体線形成工程の後、
図6に示すように、絶縁層7を、基板2の一方面Sの少なくとも第1接続線31を覆うようにして設ける(絶縁層形成工程)。絶縁層7の形成方法としては、上記したスクリーン印刷やフォトリソグラフィなどによる方法を用いることができる。
【0040】
絶縁層形成工程の後、
図4に示すように、絶縁層7の表面に接続部材8として第2接続線41を形成する(接続部材形成工程)。第2接続線41の形成方法としては、銀、金、白金、パラジウム、銅、カーボンなどの極微細な導電性粒子を含む導電性インクや、PEDOT・PSSなどのような透明導電性樹脂を、例えばスクリーン印刷やグラビア印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法を用いて細線パターン状に印刷することで形成できる。その他、銀インクのような感光性を有する導電性インクを用いたフォトリソグラフィによっても第2接続線41を形成することができる。また、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細導電炭素繊維、あるいは、Agナノワイヤーなどの極細導電繊維をバインダーとして機能するポリマー材料に分散させた複合材を塗布することによっても第2接続線41を形成することができる。
【0041】
以上のように製造されるタッチパネル1において、タッチ位置の検出方法は、従来の静電容量式のタッチパネルと同様であり、第1電極セル30及び第2電極セル40の接触位置において人体の静電容量に基づく電圧等の変化を検出することによって、接触位置の座標が演算される。
【0042】
本実施形態に係るタッチパネル1の製造方法においては、複数の導体線L1,L2を交差させることで網目状の電極3,4を形成しているので、希少金属であるインジウムの使用を避けることができ、ITOを用いるよりも基板2上に形成される電極パターンの低抵抗化を図ることができ、かつ、電極パターンの視認性も向上させることができるので、静電容量式のタッチパネルとして好適に用いることができる。また、第1電極3及び第2電極4のいずれもが基板2の一方面Sに形成されているので、タッチパネル1の構造の簡略化と全体的な厚み・重さの軽減(薄型化・軽量化)を実現できるという優位性を有する。
【0043】
さらに、各電極3,4を構成する第1導体線L1、第1接続線31及び第2導体線L2に加えて、各電極3,4を静電容量検出回路(図示省略)に接続する各配線5,6を同時に一括して基板2の一方面S上に形成しているので、タッチパネル製造のための工程を少なくすることができ、タッチパネル1を効率よく製造することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態においては、導体線形成工程、絶縁層形成工程及び接続部材形成工程の順序で行われている、つまり、基板2の一方面S上に、第1電極セル30及び第2電極セル40の第1導体線L1及び第2導体線L2と第1接続線31とを形成した後、絶縁層7、第2接続線41を順次設けている。これに対して、基板2の一方面S上に、第2接続線41を設けた後、第2接続線41上に絶縁層7を設け、絶縁層7上に第1接続線31が位置するとともに、第2接続線41により隣り合う第2電極セル40の第2導体線L2同士が電気的に接続されるように、第1電極セル30及び第2電極セル40の第1導体線L1及び第2導体線L2と第1接続線31とを形成する、つまりは、接続部材形成工程、絶縁層形成工程及び導体線形成工程の順序で行うようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、第2接続線41は、接続する第2電極セル40の第2導体線L2の延長上に位置して、当該第2導体線L2と1本の線状となるように配置されているが、隣り合う第2電極セル40の第2導体線L2同士が接続され、また、絶縁層7上に設けられて第1電極セル30の第1導体線L1や第1接続線31と絶縁されていれば、多少、ずれた位置に配置されたとしても動作上の問題は生じない。また、第2接続線41は第2電極セル40の各第2導体線L2と同方向(U方向又はV方向)が好ましいが、動作上又は視認性に問題ない範囲で角度が多少ずれていても構わない。
【0046】
また、上記実施形態においては、第1導体線L1、第2導体線L2、第1接続線31及び第2接続線41の線幅が同じに形成されているが、第1接続線31や第2接続線41の線幅を、第1導体線L1及び第2導体線L2の線幅と異なるように形成されてもよい。例えば、第2接続線41の線幅が第1導体線L1及び第2導体線L2の線幅よりも太く形成される場合に、第1接続線31の線幅を第1導体線L1及び第2導体線L2の線幅よりも細くしてもよい。この実施形態によると、電極パターンの電極セル部分の網目領域と、電極セル3,4を接続する接続部分の網目領域との光線透過率の差を小さくすることができるので、より一層、電極のパターン形状を目立ちにくくすることができ、タッチパネル1の視認性を向上させることができる。なお、第2接続線41の線幅が第1導体線L1及び第2導体線L2の線幅よりも細く形成される場合は、第1接続線31の線幅を第1導体線L1及び第2導体線L2の線幅よりも太くすることで、上記と同様に視認性を向上することができる。
【0047】
さらに、例えば、第2接続線41の線幅が第1導体線L1及び第2導体線L2の線幅よりも太く(細く)形成された場合において、第1導体線L1及び第2導体線L2の少なくとも一部(所々)の線幅を、第2接続線41の線幅と同じく太く(細く)するようにしてもよい。これにより、線幅が太く(細く)なった箇所が均一に配置されると、電極パターンの電極セル部分の網目領域と、電極セル3,4を接続する接続部分の網目領域との光線透過率の差を小さくしたうえで、見た目もより均一にできるため、より一層、電極のパターン形状を目立ちにくくすることができ、タッチパネル1の視認性を向上させることができる。第1接続線31の線幅が第1導体線L1及び第2導体線L2の線幅と異なる場合も同様の構成が可能である。なお、第1電極セル30の第1導体線L1の線幅と第2電極セル40の第2導体線L2の線幅は厳密に同一でなくてもよいが、見た目の均一性の観点から略等しい線幅とすることが望ましい。
【0048】
また、上記実施形態においては、接続部材8を線状の第2接続線41で構成しているが、
図7に示すように、透明導電膜80で構成してもよい。接続部材8を透明導電膜80で構成する場合には、
図8に示すように、第1電極セル30の第1導体線L1及び第1接続線31と、第2電極セル40の第2導体線L2とを基板2の一方面S上に形成した後(導体線形成工程)、
図9に示すように、絶縁層7を、基板2の一方面Sの少なくとも第1接続線31を覆うようにして設け(絶縁層形成工程)、
図7に示すように、絶縁層7上を横切るようにして絶縁層7よりも幅は短いが長さが長い透明導電膜80を設けることで、透明導電膜80により隣り合う第2電極セル40の第2導体線L2同士を電気的に接続している(接続部材形成工程)。第1接続線31及び透明導電膜80は、間に絶縁層7が配置されることで、基板2の一方面S上で交差する際に互いに絶縁されている。
【0049】
接続部材8として透明導電膜80を用いる場合には、隣り合う第1電極セル30の第1導体線L同士を電気的に接続する複数の第1接続線31が、複数の格子Kが組み合わされた網目を形成するように配線されるのが好ましい。すなわち、第1電極3及び第2電極4が交差する部分に、周りの第1電極セル30及び第2電極セル40を構成する格子Kと同形状の複数の格子Kが一様に配置されるのが好ましい。これにより、基板2の一方面S上に、第1電極セル30及び第2電極セル40と、第1接続線31とにより見た目が全体的に均一な網目状パターンが形成される。よって、第1電極3及び第2電極4のパターン形状を目立ちにくくすることができ、タッチパネル1の視認性を向上させることができる。
【0050】
なお、第1接続線31の網目パターンは、
図7に示すように、第1接続線31と第2電極セル40の第2導体線L2との隙間がまとまって現れるように形成すると、隙間が集中して目立ってしまい、タッチパネル1の視認性の悪影響を与える。よって、第1接続線31と第2電極セル40の第2導体線L2との隙間が集中せず、より目立ちにくいように多少ばらけて現れるように第1接続線31の網目パターンを形成することが好ましい。
【0051】
透明導電膜80の材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系、酸化亜鉛、スズ酸化膜などの透明導電材料、あるいは、スズ、銅、アルミニウム、ニッケル、クロムなどの金属材料、金属酸化物材料を例示することができ、これら2種以上を複合して形成してもよい。また、酸やアルカリに弱い金属単体でも透明導電膜80の材料として採用することができる。また、カーボンナノチューブやカーボンナノホーン、カーボンナノワイヤ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細導電炭素繊維、あるいは、銀素材からなる極細導電繊維をバインダーとして機能するポリマー材料に分散させた複合材を、透明導電膜80の材料として用いることもできる。ここでポリマー材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリp−フェニレン、ポリ複素環ビニレン、PEDOT・PSSなどのような導電性ポリマーを採用することができる。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂などの非導電性ポリマーを採用することができる。
【0052】
透明導電膜80の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などのPVD法や、CVD法、塗工法、公知の印刷法などを例示することができる。また、透明導電膜80の厚みは、材料や形成方法により異なるが、塗工法や印刷法などを用いた場合は50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0053】
なお、上記した説明では、導体線形成工程、絶縁層形成工程及び接続部材形成工程の順序で行われている、つまり、基板2の一方面S上に、第1電極セル30の第1導体線L1及び第1接続線31と、第2電極セル40の第2導体線L2とを形成した後、絶縁層7及び透明導電膜80を設けているが、接続部材形成工程、絶縁層形成工程及び導体線形成工程の順序で行われてもよい。具体的には、基板2の一方面S上に、透明導電膜80を設けた後、透明導電膜80上に絶縁層7を設け、絶縁層7上に第1接続線31が位置するとともに、透明導電膜80により隣り合う第2電極セル40の第2導体線L2同士が電気的に接続されるように、第1電極セル30の第1導体線L1及び第1接続線31と、第2電極セル40の第2導体線L2とを形成するようにしてもよい。
【0054】
この
図7に示す実施形態においても、第1導体線L1及び第2導体線L2の線幅と、第1接続線31の線幅とを、同じに形成してもよいし、異なるように形成してもよい。
【0055】
また、第1接続線31の線幅を第1導体線L1及び第2導体線L2の線幅よりも太く又は細く形成した場合において、第1導体線L1及び第2導体線L2の少なくとも一部(所々)の線幅を、第1接続線31の線幅と同じく太く又は細くするようにしてもよい。また、第1電極セル30の第1導体線L1の線幅と第2電極セル40の第2導体線L2の線幅も厳密に同一でなくてもよいが、見た目の均一性の観点から略等しい線幅とすることが望ましい。
【0056】
また、上記した
図4及び
図7のいずれの実施形態においても、絶縁層7を、基板2の一方面Sの少なくとも第1接続線31を覆うようにして設けているが、
図10に示すように、基板2の一方面Sのほぼ全面に絶縁層7を設けるようにしてもよい。
図10の例では、基板2の一方面S上に、第1電極セル30の第1導体線L1及び第1接続線31と、第2電極セル40の第2導体線L2とを形成した後(
図11)、絶縁層7を第1接続線31を含めた基板2の一方面Sのほぼ全面を覆うようにして設ける。ただし、この際には、第2電極セル40のX方向両側の一部分、つまり、隣り合う第2電極セル40と接続される側の一部分については第2導体線L2が露出するように、絶縁層7に開口Hを設ける(
図12)。そして、絶縁層7上に透明導電膜80を配備し、開口Hを介して透明導電膜80により隣り合う第2電極セル40の第2導体線L2同士を電気的に接続する。この実施形態によると、基板2の一方面Sのほぼ全面に透明な絶縁層7を形成することで、タッチパネル1の色目の均一化を図ることができるので、より視認性が向上したタッチパネル1を形成することができる。なお、
図10の例では、透明導電膜80により、隣り合う第2電極セル40の第2導体線L2同士を電気的に接続しているが、第2接続線41により第2電極セル40同士を接続してもよい。
【0057】
また、上記した
図4、
図7及び
図10のいずれの実施形態においても、第1電極セル30及び第2電極セル40の各導体線L1,L2や各接続線31,41は、真っ直ぐな直線状であるが、波のような形の波形状や、のこぎりの歯のような形の鋸歯状などの繰り返し形状や、ランダムな線状など、種々の形状とすることができる。
【0058】
また、上記した
図4、
図7及び
図10のいずれの実施形態においても、各電極3,4の両端部間での導通性を阻害しない範囲で、各電極セル30,40の各導体線L1,L2に対して、導体線L1,L2を切断する切断部を部分的に設けてもよい。導体線L1,L2同士、第1接続線31及び導体線L2の間には隙間が形成されているため、各電極セル30,40の各導体線L1,L2に切断部を設けることにより、電極パターン全体に対して一様に導体線L1,L2が途切れる断続部(空白部)が発生する。よって、光線透過率が向上するとともに、電極パターンの見た目をより均一にできるので、視認性をさらに向上させることができる。
【0059】
また、上記した
図4、
図7及び
図10のいずれの実施形態においても、第1電極セル30と第2電極セル40との隙間に、電極パターンとは電気的に独立した補助線を設けることができる。補助線は、第1導体線L1及び第2導体線L2同士を電気的に接続しないが、第1導体線L1、第2導体線L2、第1接続線31、第2接続線41及び補助線によって網目が形成されるように配線され、均一な網目状となるように第1電極セル30と第2電極セル40との隙間を補完されることで、第1電極3及び第2電極4のパターン形状を目立ちにくくすることができる。