特許第6177196号(P6177196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6177196
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】配管の再生方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/00 20060101AFI20170731BHJP
   B23K 37/06 20060101ALI20170731BHJP
   F16L 55/162 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   F16L1/00 L
   B23K37/06 E
   B23K37/06 L
   F16L55/162
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-122946(P2014-122946)
(22)【出願日】2014年6月14日
(65)【公開番号】特開2016-3677(P2016-3677A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年6月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314008781
【氏名又は名称】株式会社サンケン
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】池下 兼明
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−210286(JP,A)
【文献】 特開2002−122287(JP,A)
【文献】 特開2004−205020(JP,A)
【文献】 特開平1−79486(JP,A)
【文献】 特開昭62−278398(JP,A)
【文献】 特許第4965730(JP,B1)
【文献】 特開2003−329170(JP,A)
【文献】 特開2005−226819(JP,A)
【文献】 特開2008−51207(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0313283(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/162
F16L 1/00
B23K 37/06
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の内周の必要箇所に純粋炭素繊維の不織布からなる炭素繊維マットを予め設置しておき、配管内にその内径よりも小さくなるように巻回され前記配管の内周に略等しい長さを有する一定幅の複数の金属板を装入して当該金属板を前記配管の内周に沿う位置へ展開変形させて、前記金属板の周方向両端部と金属板の幅方向両端部を前記炭素繊維マット上に位置させ、互いに近接する前記周方向両端部を突合せ溶接によって結合するとともに、配管内で同様に展開変形した他の金属板と隣接する前記金属板の幅方向端部を、当該他の金属板の幅方向端部と互いに突合せ溶接により結合することを特徴とする配管の再生方法。
【請求項2】
前記金属板は、自身の弾性復元力で前記配管の内周に沿った位置に展開変形するものであり、前記配管内にその内径よりも小さくなるように外周を拘束され巻回されて装入され、その後拘束を解かれて展開させられる請求項1に記載の配管の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は老朽化した配管内周を金属板で覆って配管を再生する配管再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の配管の再生方法が特許文献1や特許文献2に開示されている。その概要を図6図10で説明する。老朽化した金属の配管1(図6)内にこれよりも小径に巻回された一定幅のステンレス鋼板等の金属板7を複数装入する。そして、これら金属板7を、ジャッキ等を使用して配管1の内周面に押し拡げ、各金属板7の周方向両端部71,72を互いに重ねて(重ね継手)隅肉溶接73を行っている(図7)。そしてこの場合、配管1への損傷を防止するために重ね継手部の背後にガラス繊維等の耐火断熱材74を裏当てとして配設している。
【0003】
また、隣接する各金属板7の幅方向端部73,74に生じる間隙は、図8に示すように、間隙を塞ぐように配管1の内方から一定幅のゴムや樹脂のシールリング8を配設して漏洩を防止している。なお、シールリング8にはその内周面に金属製のリング状固定板81を当接させてそのバネ力でシールリング8を配管内周方向へ押圧保持している。
【0004】
配管1の継ぎ手部11では、隣接する配管1の内周面にそれぞれ配設された金属板7の幅方向端部73,74図10間を、配管1の内方から広幅のゴム製シールリング6で塞ぎ、シールリング6の幅方向両端縁にそれぞれリング状固定板61を当接させてシールリング6を配管内周方向へ押圧保持している。固定板61の両端部611,612は、図9に示すように互いに重ねられ、積層構造の連結板62で内周側から押さえられている。連結板62は、その長穴621内に挿入したボルト63を固定板61の一方の端部612にねじ込み、長穴621内に樹脂材を注入して固定されている。なお、上記固定板81の両端部も同様の構造で連結板によって内周側から押さえられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−122287
【特許文献2】特開2004−205020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、再生された配管は流体の円滑な流通を確保するために流通抵抗を極力従来と同じにすることが求められるが、配管内方へ突出する多数のシールリングを設ける必要があるため、流通抵抗の大幅な増大が避けられないという問題があった。また、従来のガラス繊維等の耐火断熱材では1700℃程度の溶接熱を直接受けることができないため上述のように重ね継手として隅肉溶接を行う必要があり、重ね継手部が配管内方への突出部となって流通抵抗の増大の原因になるとともに、隅肉溶接は十分な強度が確保できないという問題があった。さらに、シールリングや固定板の製造・保管や配管内への搬入等に手間を要するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、再生後の配管の流通抵抗の増大を抑えて流体の円滑な流通を保証できるとともに作業の手間も軽減できる配管の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本第1発明では、配管(1)の内周の必要箇所に純粋炭素繊維の不織布からなる炭素繊維マット(4)を予め設置しておき、配管(1)内にその内径よりも小さくなるように巻回され前記配管(1)の内周に略等しい長さを有する一定幅の複数の金属板(2)を装入して当該金属板(2)を前記配管(1)の内周に沿う位置へ展開変形させて、前記金属板(2)の周方向両端部(21,22)と金属板(2)の幅方向両端部(23,24)を前記炭素繊維マット(4)上に位置させ、互いに近接する前記周方向両端部(23,24)を突合せ溶接(5)によって結合するとともに、配管(1)内で同様に展開変形した他の金属板(2)と隣接する前記金属板(2)の幅方向端部(23)を、当該他の金属板(2)の幅方向端部(24)と互いに突合せ溶接(5)により結合する。
【0009】
本第1発明においては、金属板の周方向両端部に加えて幅方向両端部を突合せ溶接によって結合することができるから、配管内方へ突出する多数のシールリングを設ける必要がなく、配管内の流通抵抗が大幅に増大することが避けられる。また、重ね継手部を廃止できるから、これによっても配管内の流通抵抗の大幅増大を避けることができる。さらに、重ね継手部の隅肉溶接が廃止できるから十分な強度が確保される。また、従来のようなシールリングや固定板の製造・保管や配管内への搬入等の手間も削減される。
【0010】
本第2発明では、前記金属板(2)は、自身の弾性復元力で前記配管(1)の内周に沿った位置に展開変形するものであり、前記配管(1)内にその内径よりも小さくなるように外周を拘束され巻回されて装入され、その後拘束を解かれて展開させられる。
【0011】
本第2発明によれば、金属板は自身の弾性復元力によって配管の内周に沿った位置へ展開するから、従来のようにジャッキ等を使用して金属板を押し拡げる必要が無くなり、金属板の設置作業が大幅に軽減される。
【0012】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の配管の再生方法によれば、再生後の配管の流通抵抗の増大を抑えて流体の円滑な流通を保証できるとともに作業の手間も軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示す、本発明の方法で再生された配管の破断概略側面図である。
図2】巻回結束され、および結束を解消された金属板の斜視図である。
図3】本発明の方法で再生された配管内周の部分拡大斜視図である。
図4図3のIV−IV線に沿った断面図である。
図5図3のV−V線に沿った断面図である。
図6】従来の方法で再生された配管の破断概略側面図である。
図7図6のVII−VII線に沿った断面図である。
図8図6のVIII−VIII線に沿った部分断面平面図である。
図9】固定板の端部連結部の正面図および断面図である。
図10図6のX−X線に沿った部分断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
図1には本発明の方法で再生させた配管の一例を破断側面図で示す。図1において、既設の金属管や強化プラスチック複合管(FRPM)等の配管1内にはその長手方向へ、金属板2が隣接して配設されている。本実施形態で使用する上記金属板2としては弾性復元力に富むバネ材を使用する。一例としては2.5mm厚のSUS304 1/2Hのステンレス鋼板が好適に使用できる。このような金属板2は配管の内周に略等しい長さを有し、その幅は配管の長さを金属板2の設置枚数(本実施形態では4枚(図1))で分割した数値とする。
【0017】
上記各金属板2は図2(1)に示すように、配管1の内径の1/3程度の外径(例えば600mmφ)となるように巻回され公知の結束部材3で結束拘束されて、配管1内に装入される。そして配管1内の互いに隣接する所定位置で各金属板2の結束部材3の結束を解消し拘束を解くと、金属板2は図2(2)に示すように、自身の弾性復元力でその外径が3倍ほどに拡径変形する。したがって、わずかの補助を与えることによって金属板2は配管1の内周に沿った位置へ展開させられる。これにより、従来のようにジャッキ等を使用して金属板2を押し拡げる必要が無くなり、金属板2の設置作業が大幅に軽減される。
【0018】
ところで、上記各金属板2の設置作業に先立って、配管1の内周の所定領域、すなわち配管1の内周に沿うように展開した金属板2の周方向の両端部21,22が互いに近接して位置する領域と、隣接する金属板2同士の幅方向の左右の端部23,24が互いに近接する領域には、図3に示すように裏当てマットとして炭素繊維マット4を接着配設しておく。
【0019】
この炭素繊維マット4は、特許第4965730号にその製造方法が開示されている、以下に説明するような方法で製造されたもので、樹脂材等を含有しない純粋炭素繊維からなる不織布であることから、その耐熱温度は通常の炭素繊維マットが250℃以下であるのに対して3000℃程度の高温まで耐えることができる。
【0020】
このような炭素繊維マット4の製造の一例は以下のようなものである。すなわち、炭素繊維束を10cm程度の長さに切断して短繊維化し、これを混打機でほぐして繊維の方向が揃った所定の大きさの粗綿とする。この粗綿を開繊シリンダにて開繊した後、開繊シリンダと同期して回転する吸引ケージとの間に形成された空気室で浮遊させ、吸引ケージに吸引して均一に積層させてフリース状繊維マットとする。そして、これをニードルパンチで整形し裁断して不織布マットとし、その後、必要な大きさに裁断して炭素繊維マットとする。
【0021】
このような炭素繊維マット4を上述のように、金属板2の周方向の両端部21,22が互いに近接して位置する領域、および隣接する金属板2の幅方向端部23,24が互いに近接して位置する領域に配設して溶接時の裏当てとする。この場合の炭素繊維マットの厚みの一例は5mmであり、目付は300Kg/m2である。
【0022】
このような構造としたことによって、溶接時の発熱(1700℃程度)が炭素繊維マット4によって配管1へ伝達するのが防止されるから、金属板2の周方向両端部21,22間を図3に示すように突合せ溶接5によって結合することができる。さらに、隣接する金属板2の互いに近接した幅方向両端部23,24も従来のようなシールリングを使用することなく図5に示すように突合せ溶接5によって直接結合することができる。
【0023】
なお、配管1の継ぎ手部11では、従来と同様に、隣接する配管1の内周面にそれぞれ配設された金属板2の幅方向端部間を、図1に示すように広幅のシールリング6と固定板61で塞いでいる。
【0024】
このように本実施形態の配管の再生方法によれば、隣接する金属板2の互いに近接する幅方向両端部23,24を突合せ溶接5で結合してこの部分に設けられていた多数のシールリング(図6参照)を廃止することができ、さらに各金属板2の周方向両端部21,22間も、従来のような重ね溶接ではなく、突合せ溶接5で結合できるから、配管1内への突出部分が大幅に少なくなる。この結果、配管1の流通抵抗の増大を小さく抑えることができる。また漏洩を確実に防止することもできる。
【符号の説明】
【0025】
1…配管、2…金属板、21,22…周方向端部、23,24…幅方向端部、3…結束部材、4…炭素繊維マット、5…突合せ溶接。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10