特許第6177508号(P6177508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6177508
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】立坑用円形ケーシング
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/20 20060101AFI20170731BHJP
   E21D 1/06 20060101ALI20170731BHJP
   E21D 5/012 20060101ALI20170731BHJP
   E21D 5/10 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   E21B7/20
   E21D1/06
   E21D5/012
   E21D5/10
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-177316(P2012-177316)
(22)【出願日】2012年8月9日
(65)【公開番号】特開2014-34828(P2014-34828A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141956
【氏名又は名称】株式会社コプロス
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 薫
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−179280(JP,A)
【文献】 特開2000−104335(JP,A)
【文献】 特開2008−045342(JP,A)
【文献】 特許第4865111(JP,B1)
【文献】 欧州特許出願公開第00362424(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 7/20
E21D 1/06
E21D 5/012−5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製円形ケーシング本体の管壁に、中心軸と平行方向にスリットが形成され、このスリットに、前記管壁の厚みと略同じ外径の滑材供給用の鋼管が埋め込まれ、
前記鋼製円形ケーシング本体の管壁の端面における鋼管の両側に、上下2段に配置した前記鋼製円形ケーシング本体をそれぞれの前記管壁の端面同士を当接させてその接合面を溶接する時に溶接金属で埋められる切欠きであって前記管壁の端面を前記管壁の厚み方向に横断し前記管壁の端面より凹んだ形状の切欠きを設けたことを特徴とする立坑用円形ケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道工事、地下構造物建設工事、井戸掘削工事、場所打杭工事等の立坑構築に用いる立坑用円形ケーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
揺動式または旋回式の立坑掘削機で、立坑用円形ケーシング(以下、単に「円形ケーシング」ということがある。)を揺動または旋回にて圧入して立坑を掘削する場合、地盤に対する円形ケーシングの揺動・旋回と圧入の抵抗を減らすために、円形ケーシングの外周面にベントナイト等の滑材を注入する方法が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、最下段の円形ケーシングの外壁に滑材噴出口を設け、他の各段の円形ケーシングには円形ケーシングと同長で両端に管継手を持つ滑材供給管を配管し、地上では可撓性ホースをこの滑材供給管と滑材ポンプに接続して、この滑材供給管に滑材を供給する揺動式立坑掘削機の滑材供給装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−081847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1に記載された従来の円形ケーシングは、円形ケーシング内面に沿わせるように滑材供給管を設けており、さらに円形ケーシングの内面において、滑材供給管には保護カバーを取り付けている。しかし、この円形ケーシングの構造では、内面に滑材供給管や保護カバーといった突起があるために、円形ケーシングを揺動または旋回するときに抵抗になるとともに、グラブバケットで円形ケーシング内部の土砂を排出するときに邪魔になる。
【0006】
そこで本発明は、滑材供給手段を備えながら、内面に突出物がなく、円形ケーシングを揺動または旋回するときに抵抗になったり、グラブバケット等で内部の土砂を排出するときに邪魔になったりすることがなく、円滑な立坑掘削作業ができる立坑用円形ケーシングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の立坑用円形ケーシングは、鋼製円形ケーシング本体の管壁に、中心軸と平行方向にスリットが形成され、このスリットに、前記管壁の厚みと略同じ外径の滑材供給用の鋼管が埋め込まれ
前記鋼製円形ケーシング本体の管壁の端面における鋼管の両側に、上下2段に配置した前記鋼製円形ケーシング本体をそれぞれの前記管壁の端面同士を当接させてその接合面を溶接する時に溶接金属で埋められる切欠きであって前記管壁の端面を前記管壁の厚み方向に横断し前記管壁の端面より凹んだ形状の切欠きを設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、滑材供給用の鋼管が円形ケーシングの管壁に埋め込まれており、円形ケーシングの内面には突出物がないので、円形ケーシングを揺動または旋回して地盤中に立坑を掘削するときに、円滑に揺動または旋回することができ、またグラブバケット等で内部の土砂を排出するときに邪魔になることがなく、円滑な立坑掘削作業ができる。
【0009】
この円形ケーシングを製造する際には、鋼製円形ケーシング本体の管壁に、中心軸と平行方向にスリットを設け、スリット内部に円形ケーシングの板厚とほぼ同じ外径の鋼管を設置し、鋼管を鋼製円形ケーシングに溶接し、鋼製円形ケーシングと鋼管を一体とすることにより製造することができる。
【0010】
ここで、前記鋼製円形ケーシング本体の管壁の端面における鋼管の両側に、上下の鋼製円形ケーシング本体溶接時に溶接金属で埋められる切欠きを設け、この切欠きを溶接金属で埋めることによりケーシングに栓をするような形になり、鋼管の接合面でケーシングの端面全体に滑材が回ることを防止する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋼管の肉厚とほぼ同じで、鋼管内部や外部に滑材を注入するポートができるため、内面に突起がなく、ケーシングを揺動または旋回するときに抵抗にならない。また、グラブバケットでケーシング内部の土砂を排出するときに邪魔にならない。
【0012】
さらに、鋼製円形ケーシングの端面で、鋼管の両側に切欠きを設け、上下のケーシングを溶接で接合するときに、この切欠きを溶接で埋めることにより鋼管端面全体に滑材が回るのを防止でき、滑材の漏れ注意箇所を少なくすることができるので、滑材の漏れ管理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る円形ケーシング(1段目)を示すものであり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る円形ケーシング(1段目)の上端部の形状を示すものであり、(a)は要部拡大正面図、(b)は要部拡大平面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る円形ケーシング(1段目)の滑材ポート部を示すもので、(a)は拡大断面図、(b)は拡大側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る円形ケーシング(2段目)を示すものであり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は継手部の断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る円形ケーシング(2段目)の下端部の形状を示すものであり、(a)は要部拡大正面図、(b)は要部拡大底面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る円形ケーシング(2段目)の継手部の拡大断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る上下の円形ケーシングの接合部を示すものであり、(a)は拡大正面図、(b)は拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係る円形ケーシング(1段目)10は、図1図3に示すように、鋼製円形ケーシング本体(以下、「ケーシング本体」と言うことがある。)11の側部に、ケーシング本体11の中心軸に平行で上端から下部中途位置まで達するスリット12を設け、このスリット12内部に、ケーシング本体11の板厚とほぼ同じ外径の鋼管13を設置し、鋼管13をケーシング本体11に溶接し、ケーシング本体11と鋼管13を一体化して円形ケーシング10を製造する。図中14は溶接金属からなる溶接部、15は下端の掘削刃である。スリット12の下端には、鋼管13に供給された滑材を円形ケーシング10の外側に排出するための滑材ポート16が設けられている。
【0015】
滑材ポート16は、図3に示されているように、滑材排出溝17aが設けられた円形の基板17が、スリット12の下端に開けられた円形の穴12aに溶接により固定され、滑材排出溝17aを覆うようにボルト19でばね板18の下部を固定することにより形成されている。ばね板18の下部はボルト19で基板17に固定されているが、上部は自由端であり、鋼管13内を圧送される滑材の圧力で外側に開き、滑材を地盤と円形ケーシング10の間に供給する。
ケーシング本体11の上端の鋼管13の両側には、半円形の切欠き11aが形成されている。
【0016】
本発明の実施の形態に係る円形ケーシング(2段目)20は、図4図6に示すように、鋼製円形ケーシング本体(以下、「ケーシング本体」と言うことがある。)21の側部に、ケーシング本体21の中心軸に平行で上部中途位置から下端まで達するスリット22を設け、このスリット22内部に、ケーシング本体21の板厚とほぼ同じ外径の鋼管23を設置し、鋼管23をケーシング本体21に溶接し、ケーシング本体21と鋼管23を一体化して円形ケーシング20を製造する。図中24は溶接金属からなる溶接部である。
【0017】
円形ケーシング20では、鋼管23の上端はスリット22の上端から内側に曲げられ、滑材を供給するための供給管(図示せず)を接続する継手25が設けられている。
ケーシング本体21の下端の鋼管23の両側には、半円形の切欠き21aが形成されている。
【0018】
図7は、1段目の円形ケーシング10と2段目の円形ケーシング20の接合部を示すものであり、1段目の円形ケーシング10の上端と、2段目の円形ケーシング20の下端との接合面30を、溶接により接合する。このとき、切欠き11a、21aを溶接金属からなる溶接部31で埋める。すなわち、上下の円形ケーシング10,20を溶接で接合する場合は、内側と外側から溶接する場合と、内側からのみ、または外側からのみ溶接する場合がある。片側からのみ溶接する場合は、切欠き11a,21aが無いと漏れを防止するのは困難である。また内、外の両側溶接の場合でも、掘削作業時にケーシング端面全周にわたり、滑材が回るので、漏れのチエック箇所が増えることになる。本実施の形態では、切欠き11a、21aを設けることにより円形ケーシング10,20の端面全体に滑材が回るのを防止でき、滑材の漏れ注意箇所を少なくすることができる。
【0019】
このように、本実施の形態においては、滑材供給用の鋼管13,23が円形ケーシング10,20の管壁に埋め込まれており、円形ケーシング10,20の内面には突出物がないので、円形ケーシング10,20を揺動または旋回して地盤中に立坑を掘削するときに、円滑に揺動または旋回することができ、またグラブバケット等で内部の土砂を排出するときに邪魔になることがなく、円滑な立坑掘削作業ができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、滑材供給手段を備えながら、内面に突出物がなく、円形ケーシングを揺動または旋回するときに抵抗になったり、グラブバケット等で内部の土砂を排出するときに邪魔になったりすることがなく、円滑な立坑掘削作業ができる立坑用円形ケーシングとして、下水道工事、地下構造物建設工事、井戸掘削工事、場所打杭工事等の立坑構築の分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 円形ケーシング(1段目)
11 鋼製円形ケーシング本体(ケーシング本体)
11a 切欠き
12 スリット
12a 穴
13 鋼管
14 溶接部
15 掘削刃
16 滑材ポート
17 基板
17a 滑材排出溝
18 ばね板
19 ボルト
20 円形ケーシング(2段目)
21 鋼製円形ケーシング本体(ケーシング本体)
21a 切欠き
22 スリット
23 鋼管
24 溶接部
25 継手
30 接合面
31 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7