(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6177579
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】体内挿入用機器
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
A61M25/092 510
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-97713(P2013-97713)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-217523(P2014-217523A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】597089576
【氏名又は名称】株式会社リバーセイコー
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸
(72)【発明者】
【氏名】西村 誠
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−502186(JP,A)
【文献】
特開平11−239619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する長尺状のシースと、該シースの先端に先端が固定されて前記シース内に内挿された一対の操作ワイヤーと、先端側に指掛け部を有し前記シースの後側を先端側に取り付ける筒状のスライド筒部と、該スライド筒部に軸方向に形成された溝内を移動自在に配置され前記一対の操作ワイヤーの後端が取り付けられるワイヤー固定部と、該ワイヤー固定部と固定され、前記スライド筒部の外周を軸方向に移動自在な操作ワイヤー保持ハンドルとを備え、前記スライド筒部の指掛け部と前記操作ワイヤー保持ハンドルとの相対的距離を変化させることにより前記シース先端を湾曲させる体内挿入用機器であって、
前記スライド筒部が、筒状内部の後端側に円板状のプーリーを回動自在に支持し、
前記ワイヤー固定部がシース先端から直線的に延びる一方の操作ワイヤーの後端を固定すると共に前記シース先端から直線的に延び且つ前記プーリーの外周を旋回した他方の操作ワイヤーの後端を固定し、
前記操作ワイヤー保持ハンドルは筒状であって、内側に段差部を有しており、
前記段差部より遠位における前記操作ワイヤー保持ハンドルの内径は、前記段差部よりも近位における前記操作ワイヤー保持ハンドルの内径よりも小さいものであり、
前記ワイヤー固定部は、前記操作ワイヤー保持ハンドル内であって、前記段差部よりも近位側に配置されており、
前記指掛け部と操作ワイヤー保持ハンドルとの間隔を軸方向に移動させることによって前記シースの先端を2方向に湾曲させることを特徴とする体内挿入用機器。
【請求項2】
前記プーリーは、外周縁に前記他方の操作ワイヤーを旋回させるための深溝を有することを特徴とする請求項1記載の体内挿入用機器。
【請求項3】
前記指掛け部と前記操作ワイヤー保持ハンドルとの間隔が大きくなるように軸方向に拡げたとき、前記一方の操作ワイヤーの後端がシース先端を牽引し、該牽引により生じた他方の操作ワイヤーの弛みが前記プーリーの深溝により吸収されることを特徴とする請求項2記載の体内挿入用機器。
【請求項4】
前記指掛け部と前記操作ワイヤー保持ハンドルとの間隔が小さくなるように軸方向に接近させたとき、前記他方の操作ワイヤーの後端がシース先端を牽引することを特徴とする請求項2又は3記載の体内挿入用機器。
【請求項5】
前記スライド筒部の先端に、シースの軸方向位置を調整するためのシース位置調整部を備えることを特徴とする請求項1から4何れかに記載の体内挿入用機器。
【請求項6】
前記スライド筒部の先端に、シースの根元折れを防止するための折れ止め部材を備えたことを特徴とする請求項1から5何れかに記載の体内挿入用機器。
【請求項7】
可撓性を有する長尺状のシースと、該シースの先端に先端が固定されてシース内に内挿された一対の操作ワイヤーと、先端側に指掛け部を有し前記シースの後側を先端側に取り付けると共に筒状内部の後端側に円板状のプーリーを回動自在に支持するスライド筒部と、該スライド筒部の軸方向に形成された溝内を移動自在に配置され、前記シース先端から直線的に延びる一方の操作ワイヤーの後端を固定すると共に前記シース先端から直線的に延び且つ前記プーリーの外周を旋回した他方の操作ワイヤーの後端を固定するワイヤー固定部と、前記ワイヤー固定部と固定され、スライド筒部の外周を軸方向に移動自在に覆うカバー部と、該カバー部の先端側を被う筒状の操作部握部と、前記スライド筒部の先端側においてシースの軸方向位置を調整するためのシース位置調整部と備え、前記指掛け部とカバー部との相対的距離を変化させることによりシース先端を湾曲させる体内挿入用機器の組み立て方法であって、
前記シースを直線状とし且つワイヤー固定部が移動可能な両側距離が均等となる位置に配置したニュートラル状態に設定する第1工程と、
該ニュートラル状態において一方の操作ワイヤーの後端をワイヤー固定部に固定すると共に他方の操作ワイヤーの後端をプーリーの深溝に旋回させてワイヤー固定部を用いて固定する第2工程と、
前記ニュートラル状態のシース先端側からシース位置調整部を挿入する第3工程と、
前記ニュートラル状態のスライド筒部の外周をカバー部により覆って固定する第4工程と、
前記ニュートラル状態のシース先端側から操作部握部及び指掛け部を挿入固定する第5工程とを行うことを特徴とする体内挿入用機器の組み立て方法。
【請求項8】
前記プーリーが外周縁に前記他方の操作ワイヤーを旋回させるための深溝を有し、前記ニュートラル状態の第2工程において他方の操作ワイヤーの他端を前記プーリーの深溝の奥位置に挿入して旋回させる工程を含むことを特徴とする請求項7記載の体内挿入用機器の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に挿入されるシースの先端を湾曲操作することがでる体内挿入用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にガイドカテーテルや心臓カテーテル等の体内挿入用機器は、例えば、長尺状のシースと、シースの先端部を湾曲操作する操作部とを備える。
【0003】
この体内挿入用機器が記載された文献としては、下記の特許文献が挙げられる。下記特許文献1には、カテーテル本体(シースに相当)に内挿され先端がカテーテル本体の先端側に連結された操作ワイヤーと、略円筒形状で内挿した操作ワイヤーの基端側に連結された操作ワイヤー保持ハンドルと、操作ワイヤー保持ハンドルに一部が内挿され、操作ワイヤー保持ハンドルの軸方向に相対的にスライド自在であってカテーテル本体の基端側に連結されたカテーテル本体保持ハンドルとを備え、前記カテーテル本体保持ハンドルと前記操作ワイヤー保持ハンドルとを相対的にスライド操作することにより、前記カテーテル本体内の操作ワイヤーが前記軸方向にスライドしてカテーテル本体の先端近傍部分が湾曲するように構成された心臓カテーテルにおいて、カテーテル保持ハンドルに対するカテーテル本体の連結位置を外部から調整する調整手段を備えた心臓カテーテルが記載されている。また、下記特許文献2には、先端可撓部分を有するカテーテルチューブと、カテーテルチューブの先端に固定された先端電極と、カテーテルチューブの先端可撓部分を第1方向に撓ませるための第1操作用ワイヤーと、カテーテルチューブの先端可撓部分を第2方向に撓ませるための第2操作用ワイヤーと、第1操作用ワイヤーの先端部の周りにのみ装着されたコイルチューブとを備え、先端部分の形状を左右非対称に変化させることができる先端偏向操作可能カテーテル技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4877547号公報
【特許文献2】特開2012−147971公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1に記載された体内挿入用機器は、軸方向に操作ワイヤー保持ハンドルを移動させることによるニュートラル(基準)位置からの一方向移動しか許容されないために先端部を一方向にしか湾曲することができない課題を有し、特許文献2には、先端部を2方向に湾曲させることができるものの、一対の回転レバーを回転させることにより2本の操作ワイヤーの牽引及び引き込みを行うため、回転操作レバーの回転操作が必要となり、施術者の操作が煩雑であるという課題があった。
【0006】
このような課題に鑑みて、本発明は、前述の従来技術による課題を解決しようとするものであり、操作ワイヤー保持ハンドルの軸方向移動によって2方向に先端を湾曲させることができる体内挿入用機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために本発明は、可撓性を有する長尺状のシースと、該シースの先端に先端が固定されて前記シース内に内挿された一対の操作ワイヤーと、先端側に指掛け部を有し前記シースの後側を先端側に取り付ける筒状のスライド筒部と、該スライド筒部に軸方向に形成された溝内を移動自在に配置され前記一対の操作ワイヤーの後端が取り付けられるワイヤー固定部と、該ワイヤー固定部と固定され、前記スライド筒部の外周を軸方向に移動自在な操作ワイヤー保持ハンドルとを備え、前記スライド筒部の指掛け部と前記操作ワイヤー保持ハンドルとの相対的距離を変化させることにより前記シース先端を湾曲させる体内挿入用機器であって、前記スライド筒部が、筒状内部の後端側に円板状のプーリーを回動自在に支持し、前記ワイヤー固定部がシース先端から直線的に延びる一方の操作ワイヤーの後端を固定すると共に前記シース先端から直線的に延び且つ前記プーリー外周を旋回した他方の操作ワイヤーの後端を固定し、前記指掛け部と操作ワイヤー保持ハンドルとの間隔を軸方向に移動させることによって前記シースの先端を2方向に湾曲させることを第1の特徴とする。
【0008】
また、本発明は、第1の特徴の体内挿入用機器において、前記プーリーは、外周縁に前記他方の操作ワイヤーを旋回させるための操作ワイヤー旋回径より深く刻設された深溝を有することを第2の特徴とし、該第2の特徴の体内挿入用機器において、前記指掛け部と前記操作ワイヤー保持ハンドルとの間隔が大きくなるように軸方向に拡げたとき、前記一方の操作ワイヤーの後端がシース先端を牽引し、該牽引により生じた他方の操作ワイヤーの弛みが前記プーリーの深溝により吸収されることを第3の特徴とする。
【0009】
また、本発明は、第2又は第3の特徴の体内挿入用機器において、前記指掛け部と前記操作ワイヤー保持ハンドルとの間隔が小さくなるように軸方向に接近させたとき、前記他方の操作ワイヤーの後端がシース先端を牽引することを第4の特徴とし、前記何れかの特徴の体内挿入用機器において、前記スライド筒部の先端に、シースの軸方向位置を調整するためのシース位置調整部を備えることを第5の特徴とし、前記何れかの特徴の体内挿入用機器において、前記スライド筒部の先端に、シースの根元折れを防止するための折れ止め部材を備えたことを第6の特徴とする。
【0010】
更に、本発明は、可撓性を有する長尺状のシースと、該シースの先端に先端が固定されてシース内に内挿された一対の操作ワイヤーと、先端側に指掛け部を有し前記シースの後側を先端側に取り付けると共に筒状内部の後端側に円板状のプーリーを回動自在に支持するスライド筒部と、該スライド筒部の軸方向に形成された溝内を移動自在に配置され、前記シース先端から直線的に延びる一方の操作ワイヤーの後端を固定すると共に前記シース先端から直線的に延び且つ前記プーリー外周を旋回した他方の操作ワイヤーの後端を固定するワイヤー固定部と、前記ワイヤー固定部と固定され、スライド筒部の外周を軸方向に移動自在に覆うカバー部と、前記スライド筒部の先端側においてシースの軸方向位置を調整するためのシース位置調整部と備え、前記指掛け部とカバー部との相対的距離を変化させることによりシース先端を湾曲させる体内挿入用機器の組み立て方法であって、前記シースを直線状とし且つワイヤー固定部が移動可能な両側距離が均等となる位置に配置したニュートラル状態に設定する第1工程と、該ニュートラル状態において一方の操作ワイヤーの後端をワイヤー固定部に固定すると共に他方の操作ワイヤーの後端をプーリーの深溝に旋回させてワイヤー固定部を用いて固定する第2工程と、前記ニュートラル状態のシース先端側からシース位置調整部を挿入する第3工程と、前記ニュートラル状態のスライド筒部の外周をカバー部により覆って固定する第4工程と、前記ニュートラル状態のシース先端側から操作部握部及び指掛け部を挿入固定する第5工程とを行うことを第7の特徴とする。
【0011】
また、本発明は、第7の特徴の体内挿入用機器の組み立て方法において、前記プーリーが外周縁に前記他方の操作ワイヤーを旋回させるための操作ワイヤー旋回径より深く刻設された深溝を有し、前記ニュートラル状態の第2工程において他方の操作ワイヤーの他端を前記プーリーの深溝の奥位置に挿入して旋回させる工程を含むことを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による体内挿入用機器は、一方の操作ワイヤーの直線状に延びた後端と他方の操作ワイヤーの直線状に延びてプーリーにより旋回した後端とをワイヤー固定部に固定して操作ワイヤーを操作スライド筒部の中で細長のループ状に配置し、操作ワイヤー保持ハンドル、すなわち一対の操作ワイヤーを連結するワイヤー固定部の軸方向位置と、シースの後端が固定されたスライド筒部の指掛け部との軸方向の相対的間隔を、指掛け部と操作ワイヤー保持ハンドルにより調整可能に構成し、シースを直線状としたニュートラル状態から前記間隔を広げる又は狭めることにより一方の操作ワイヤーの他端を牽引してシースの先端を2方向に湾曲させることができる。
【0013】
また、本発明による体内挿入用機器の組み立て方法は、第1工程によりシースを直線状とし且つワイヤー固定部が移動可能な両側距離が均等となる位置に配置したニュートラル状態において第2工程により一方の操作ワイヤーの後端をワイヤー固定部に固定すると共に他方の操作ワイヤーの後端をプーリーの深溝に旋回させてワイヤー固定部を用いて固定し、次いで第3から第5工程によりシース先端側からシース位置調整部とカバー部と操作部握部とを挿入固定することによって、ワイヤー固定部が取り付けられたカバー部と指掛け部との軸方向の距離を変化させたときにシース先端が2方向に湾曲するように組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態による体内挿入用機器の操作装置を示す図。
【
図3】本実施形態による体内挿入用機器の動作を説明するための図。
【
図4A】本実施形態による体内挿入用機器の組み立てを説明するための図。
【
図4B】本実施形態による体内挿入用機器の組み立てを説明するための図。
【
図5】本実施形態による体内挿入用機器の先端部分の拡大図。
【
図6】本実施形態による体内挿入用機器の使用方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による体内挿入用機器の一実施形態を、心臓カテーテル等を処置箇所へ誘導するためのガイドカテーテルを例として詳細に説明する。
【0016】
[構造]
本実施形態による体内挿入用機器(ガイドカテーテル)は、
図6に示すように、例えば先端に電極を有する電極カテーテル2をシース1に内挿して心臓内の目標部位に誘導するものであり、シース1に内挿された操作ワイヤーを手元側の操作ワイヤー保持ハンドル7と、スライド筒部8に設けられた指掛け部6との相対的位置を軸方向に変化させることにより、シース1の先端付近を湾曲させることができるように構成されているものであって、一対の操作ワイヤーの先端をシース1の円筒内壁先端の対称位置(筒状の内周の180度対称位置)に固定し、前記操作ワイヤーの後端(手元側)に連結され、操作部握部9及び後端側のカバー部7aを含む操作ワイヤー保持ハンドル7と、前記シース1の後端側に連結され、指掛け部6を有するスライド筒部8とを備え、操作ワイヤー保持ハンドル7と指掛け部6とを相対的に移動させることによってシース1の先端を2方向(図面上下方向)に湾曲させるように構成されている。
【0017】
この本実施形態によるガイドカテーテル(体内挿入用機器)の詳細構造は、
図1(a)及び
図5に示すように、先端の対称位置に一端が固定された一対の操作ワイヤー4a及び4bを内挿し、後述するスライド筒部8の内部の位置に設けられた孔から操作ワイヤー4a及び4bを突出させる可撓性の長尺円筒状のシース1と、操作ワイヤー4aを直線状に延ばした後端を固定すると共に直線状に延ばした操作ワイヤー4bの後端をプーリー50の外周深溝に架けることにより旋回して操作ワイヤー4a後端と前後逆方向から固定するワイヤー固定部42と、後端側においてワイヤー固定部42を円筒内で軸方向に移動可能に保持すると共に前記プーリー50を保持するプーリー保持部55を有し、先端側に段差を介した細長状の筒部を形成し、先端側にシース取付け部材38を用いてシース1を取り付け、操作者の指をかけるように外周方向に突出した指掛け部6を有するスライド筒部8と、前記スライド筒部8の外周を軸方向にスライド可能であって、段差部分後方を被う円筒状のカバー部7aと、該円筒状のカバー部7aの先端側の段差部分を被う段差付筒状の操作部握部9と、該操作部握部9の内壁に段差を有して接する円筒状の中間部93と、該中間部93とスライド筒部8外周との間に配置される弾性円環状のパッキン91及び摺動板92と、シース取付け部材38の外周に後端側が螺回され、締管32によってスライド筒部8及び指掛け部6に取り付けられる円筒状のシース位置調整部33と、前記シース位置調整部33の先端外周に嵌合し、シース1の根元折れを防止するための折れ止め部材10とを備え、指掛け部6と操作部握部9間の距離を変化させるように軸方向にスライドされたとき、操作ワイヤー4a又は4bの一方が牽引されることによりシース1の先端が2方向に湾曲するように構成されている。尚、前記スライド筒部8の段差部分の操作部握部9及び後端まで延びるカバー部7aが操作ワイヤー保持ハンドル7を形成している。
【0018】
前記ワイヤー固定部42は、
図1(b)のz−z断面である
図2(b)又は
図3(f)に示すように、上端及び下端が上下に突出し、スライド筒部8に軸方向に形成された溝内を移動可能且つカバー部7aの後側円筒の内壁凹部に嵌合され、中央にシース1を配置可能な空き領域を構成し、該シース1の上側において操作ワイヤー4a及び4bの後端を水平方向に取り付ける形状に形成されている。
【0019】
前記スライド筒部8の後端側は、
図1(b)のx−x断面である
図2(c)又は
図3(d)(e)に示すように、中心にシース1を貫通する貫通孔を形成し且つシース1の貫通位置と干渉しないように偏芯して左右に2片に分割されている。そして、分割された一方片55aにプーリー50を嵌入するための溝及びプーリー50の回転軸を嵌入するための孔を開口し、嵌入されたプーリー50を他方片55bによって蓋をして固定することによりプーリー保持部55を形成している。前記プーリー50は、幅を有する円板状であって該幅に操作ワイヤー4を架けるための深溝(操作ワイヤー旋回径より深く刻設された深溝)が円周に沿って刻設され、該深溝に操作ワイヤー4が深溝の表面側又は奥側を通るように構成されている。
【0020】
前記スライド筒部8の段差部分には、
図1(b)及び
図2(f)に示すように、段差部分を被う段差付筒状の操作部握部9と、該操作部握部9の内壁に接する段差を有する円筒状の中間部93と、該中間部93とスライド筒部8外周との間に配置される弾性円環状のパッキン91及び摺動板92とが配置され、該中間部93の突出部93aが操作部握部9に嵌合して回転止めを形成し、スライド筒部8の中間部分においても
図2(e)に示すように、シース1を貫通させたシース取付け部材38の外周から2(上下)方向に突出した突出部38aが回転止めを形成している。尚、
図2(a)は
図1(b)のw−w断面図を示し、
図2(d)は
図1(b)のy−y断面を示している。
【0021】
[動作]
このように構成された体内挿入用機器は、
図1(a)に示すように、操作者がスライド筒部8の指掛け部6の凸部に親指をかけ、他の4本指で操作部握部9及びカバー部7aを握り、両者の間隔が最も拡がる(間隔L2)ように移動させることにより、シース1の先端を
図1の上方向に湾曲させた状態とし、
図1(c)に示すように、操作者が指掛け部6の凸部に親指をかけ、他の4本指で操作部握部9を握り、両者の間隔が最も接近するように移動させることにより、シース1の先端を
図1の下方向に湾曲させた状態とし、
図1(b)に示すように、操作者が指掛け部6と操作部握部9との間隔を前記
図1(a)と
図1(c)の中間状態(間隔L)に位置させることによりシース1を直線状に保持する基準状態(ニュートラル状態)にすることができる。
【0022】
このシース1先端の湾曲動作について
図3を参照して説明する。本実施形態による体内挿入用機器は、
図3(b)に示すように、操作者が指掛け部6に親指をかけ、他の4本指で操作部握部9に握り、両者の間隔が中間状態である距離Lに位置させたとき、操作ワイヤー4a及び4bが両者共にぴんと張り詰めた状態である緊張状態となってシース1を直線状に保持する基準状態(ニュートラル状態)とすることができる。尚、このときのプーリー50に架けられた部分の操作ワイヤー4bは、プーリー50が相対的に図中右方向に引かれることにより外周溝の奥側に位置する。
【0023】
この状態から操作者が指掛け部6の凸部に親指をかけ、他の4本指で握った操作部握部9を後方(図中右方向)に移動させて両者の間隔を距離L2に位置させたとき、カバー部7aと連動するワイヤー固定部42も後方に移動して操作ワイヤー4aを後方に牽引すると共にプーリー50の深溝に架けられた操作ワイヤー4bが緩んで
図3(d)に示すようにプーリー50の外周溝の表面側に位置することにより、操作ワイヤー4aが緊張状態、操作ワイヤー4bがやや緩んだ状態となってシース1の先端を
図3(a)に示す上方向に湾曲させる湾曲状態とすることができる。
【0024】
前記基準状態から操作者が指掛け部6の凸部に親指をかけ、他の4本指で握った操作部握部9を前方(図中左方向)に移動させて両者の間隔を最小に位置させたとき、プーリー50の深溝に架けられた操作ワイヤー4bが緊張し、
図3(e)に示すように、深溝の奥側に位置した状態で牽引されると共に操作ワイヤー4aが弛んだ弛み状態となってシース1の先端を
図3(c)に示す下方向に湾曲させる湾曲状態とすることができる。
【0025】
このように本実施形態による体内挿入用機機器は、シース1の先端の対称位置に先端を固定した操作ワイヤー4aの直線状に延びた後端と操作ワイヤー4bの直線状に延びてプーリー50により旋回した後端とをワイヤー固定部42に固定して操作ワイヤーをスライド筒部8の中で細長のループ状に配置し、指掛け部6と操作部握部9との相対的間隔、言い換えると、操作ワイヤー4a及び4bを連結し且つ操作ワイヤー4a及び4bを操作ワイヤー保持ハンドル7に固定するワイヤー固定部42の軸方向位置と、シース1の後端が取り付けられたスライド筒部8に設けられた指掛け部6との軸方向の相対的間隔を調整可能に構成したことによって、
図1(b)及び
図3(b)に示したニュートラル状態から
図1(a)及び
図3(a)に示したように前記間隔を広げることにより上側の操作ワイヤー4aがシースの先端を牽引してシースの先端を図中上方向に湾曲させ、前記ニュートラル状態から
図1(c)及び
図3(c)に示したように前記間隔を狭めることにより下側の操作ワイヤー4bがシースの先端を牽引してシースの先端を図中下方向に湾曲させることができる。
【0026】
特に本実施形態においては、ワイヤー固定部42と指掛け部6との軸方向の相対的間隔を動かしたとき、一対の操作ワイヤーの先端がシース先端に対して固定状態にあるため2本の操作ワイヤー4a及び4b並びにワイヤー固定部42が形成するループの後端側が緩んでプーリー50から外れることを防止するため、プーリー50の外周に設けた溝を操作ワイヤー旋回径に比して深く刻設した深溝とし、シース1の先端を上方向に湾曲させた状態においては前記ループの弛み(プーリー50に巻かれる操作ワイヤー4bの弛み)をプーリー50の深溝に吸収させると共に、シース1の先端を下方向に湾曲させた状態においては前記ループの弛み(直線状に延びる操作ワイヤー4bの弛み)をスライド筒部8内で弛ませることによって吸収することができる。
【0027】
[製造方法]
次に本実施形態による体内挿入用機器の組み立て方法を
図4A及び
図4Bを参照して説明する。
まず、本実施形態による体内挿入用機器は、
図4A(a)及び(b)に示すように、スライド筒部8の軸面方向に分割した一方片55aに対し、シース1を直線状とし且つワイヤー固定部42の位置を両側距離がLとなる位置(移動可能な両側距離が均等となる位置)に配置したニュートラル状態において操作ワイヤー4aの後端をワイヤー留め口金41を使用してワイヤー固定部42に取り付けると共に操作ワイヤー4bの後端をプーリー50の深溝の奥位置に挿入して旋回させてワイヤー留め口金41(図示せず)を使用してワイヤー固定部42に取り付ける工程と、シース1の先端側からスライド筒部8の先端側にシース位置調整部33を挿入し且つ該シース位置調整部33の先端を被うように締管32をネジ止めして仮組み立てを行う工程と、
図4A(c)及び(d)に示すように、前記スライド筒部8の段差の後端側を覆う裏蓋となる他方片55bをビス61を用いて取り付ける工程と、
図4B(e)に示すように、締管32を取り外す工程と、
図4B(f)に示すように、スライド筒部8後端側にカバー部7aを被せ、パッキン91とストッパ92と円筒状の段差付の中間部93とを先端側から挿入し、操作部握部9を被せる工程と、
図4B(g)に示すように、シース1の先端から指掛け部6を挿入し、次いで締管32及び折れ止め部材10を装着する工程とにより組み立てることによって、ワイヤー固定部42が取り付けられた操作ワイヤー保持ハンドル7と、指掛け部6との軸方向の距離を変化させたときにシース先端が2方向に湾曲するように組み立てることができる。
なお、本実施形態では、指掛け部6と締管32とを締管32によって同時にネジ止めしたが、指掛け部6と締管32を別々に固定して仮組み立てを行う工程を省くようにしてもよい。
【0028】
また、前述の実施形態においては体内挿入用機器としてガイドカテーテルを例に挙げて説明したが、本発明による体内挿入用機器はこれに限られるものではなく、例えば内視鏡用の各種処置具、電極カテーテル、内視鏡などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 シース
4a及び4b 操作ワイヤー
6 指掛け部
7 操作ワイヤー保持ハンドル
7a カバー部
8 スライド筒部
9 操作部握部
10 折れ止め部材
32 締管
38a 突出部
33 シース位置調整部
41 ワイヤー止め口金、
42 ワイヤー固定部
50 プーリー
55 プーリー保持部