(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の絶縁樹脂フィルムと、その表面に設けられた第1の金属箔とを有する第1の片面金属箔張積層板に対し、前記第1の絶縁樹脂フィルムの裏面を被覆する第1の接着剤層と、前記第1の接着剤層上に積層された第1の保護フィルムとを有する第1の接着保護層を形成する工程と、
前記第1の接着保護層および前記第1の絶縁樹脂フィルムを部分的に除去して、底面に前記第1の金属箔が露出した第1の有底ビアホールを形成する工程と、
印刷手法を用いて、前記第1の有底ビアホール内に導電ペーストを充填する工程と、
前記第1の接着剤層から前記第1の保護フィルムを剥離して、前記第1の有底ビアホールに充填された導電ペーストの一部を前記第1の接着剤層から突出させ、それにより、第1の配線基材を得る工程と、
第2の絶縁樹脂フィルムと、その表面および裏面にそれぞれ設けられた第2および第3の金属箔とを有する両面金属箔張積層板に対し、前記第2の金属箔をパターニングして第1の穿孔加工用マスクおよび第1の受けランドを形成するとともに、前記第3の金属箔をパターニングして第2の穿孔加工用マスクおよび第2の受けランドを形成する工程と、
片面に微粘着層が形成された第1の粘着性保護フィルムを、前記微粘着層が前記第2の絶縁樹脂フィルムの表面に接し且つ前記パターニングされた第2の金属箔を埋設するように、前記両面金属箔張積層板に張り合わせる工程と、
片面に微粘着層が形成された第2の粘着性保護フィルムを、前記微粘着層が前記第2の絶縁樹脂フィルムの裏面に接し且つ前記パターニングされた第3の金属箔を埋設するように、前記両面金属箔張積層板に張り合わせる工程と、
前記第1の粘着性保護フィルムおよび前記第2の絶縁樹脂フィルムを部分的に除去して、途中に前記第1の穿孔加工用マスクが露出し且つ底面に前記第2の受けランドが露出した第1の有底ステップビアホールを形成する工程と、
前記第2の粘着性保護フィルムおよび前記第2の絶縁樹脂フィルムを部分的に除去して、途中に前記第2の穿孔加工用マスクが露出し且つ底面に前記第1の受けランドが露出した第2の有底ステップビアホールを形成する工程と、
印刷手法を用いて、前記第1の有底ステップビアホール内に導電ペーストを充填する工程と、
印刷手法を用いて、前記第2の有底ステップビアホール内に導電ペーストを充填する工程と、
前記第2の絶縁樹脂フィルムから前記第1の粘着性保護フィルムを剥離して、前記第1の有底ステップビアホールに充填された導電ペーストの一部を前記第1の穿孔加工用マスクから突出させ、前記第2の絶縁樹脂フィルムから前記第2の粘着性保護フィルムを剥離して、前記第2の有底ステップビアホールに充填された導電ペーストの一部を前記第2の穿孔加工用マスクから突出させ、それにより、第2の配線基材を得る工程と、
第3の絶縁樹脂フィルムと、その裏面に設けられた第4の金属箔とを有する第2の片面金属箔張積層板に対し、前記第3の絶縁樹脂フィルムの表面を被覆する第2の接着剤層と、前記第2の接着剤層上に積層された第2の保護フィルムとを有する第2の接着保護層を形成する工程と、
前記第2の接着保護層および前記第3の絶縁樹脂フィルムを部分的に除去して、底面に前記第4の金属箔が露出した第2の有底ビアホールを形成する工程と、
印刷手法を用いて、前記第2の有底ビアホール内に導電ペーストを充填する工程と、
前記第2の接着剤層から前記第2の保護フィルムを剥離して、前記第2の有底ビアホールに充填された導電ペーストの一部を前記第2の接着剤層から突出させ、それにより、第3の配線基材を得る工程と、
前記第1の配線基材の第1の有底ビアホールに充填された導電ペーストの突出部と、前記第2の配線基材の第1の有底ステップビアホールに充填された導電ペーストの突出部とが当接し、かつ、前記第3の配線基材の第2の有底ビアホールに充填された導電ペーストの突出部が前記第2の配線基材の前記第2の受けランドに当接するように、前記第1〜第3の配線基材を積層し、前記積層された第1〜第3の配線基材を加熱して一体化する工程と、
を備えることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、さらなる信号速度の増加や伝送線路の長延化により、従来の伝送損失を許容することが困難になっている。そこで、伝送線路を構成している絶縁層(誘電体)の厚みを増やし且つ信号線幅を太くすることで、特性インピーダンスを一定に維持しつつ伝送損失を低減する手法が採られてきた。しかしながら、この手法をもっても伝送損失を許容できなくなりつつある。
【0012】
そこで、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)がフレキシブルプリント配線板の絶縁層に適用され始めている。液晶ポリマーは誘電率および誘電正接(tanδ)が低いため、誘電体損失が小さく、伝送損失を低減することが可能である。
【0013】
なお、誘電体損失は、誘電率および誘電正接と式(2)の関係にある。
【数2】
【0014】
ここで、Loss:誘電体損失、ε:誘電率、tanδ:誘電正接である。
【0015】
絶縁層として実用的に使用可能な材料のうち、液晶ポリマーは誘電率および誘電正接が最も低い材料の一つである。このため、液晶ポリマーの特性で得られる伝送損失よりも小さい伝送損失を要求された場合には、やはり上記のように、信号線幅を太くし絶縁層を厚くして、伝送損失を低減する必要がある。
【0016】
しかしながら、液晶ポリマーは、厚さ方向の熱膨張係数が従来のフレキシブルプリント配線板で使用される絶縁材料(ポリイミド等)に比べて大きい。このため、層間接続路として従来一般的に用いられるめっきスルーホールとの熱膨張係数の差が大きく、液晶ポリマーの絶縁層を厚くした場合、温度サイクル等に対する信頼性を十分に確保できないおそれがある。
【0017】
そこで、液晶ポリマーを絶縁層としたプリント配線板に対して、めっきスルーホールに代えて、導電ペーストを用いた導電ビアを層間接続路に適用する提案がなされている(特許文献2、特許文献3)。導電ペーストは、エポキシ等の樹脂バインダーに、銅粒子や銀粒子等の金属粒子を混合したものである。
【0018】
しかしながら、特許文献2および特許文献3では、配線層と同じ数の配線基材を積層して多層プリント配線板を作製している。このため、配線基材を準備するための各種工程(レーザ加工による穿孔、デスミア処理、導電ペーストの印刷など)が多くなり、また、工程の増加に伴って必要な材料の準備も煩雑となる。その結果、多層プリント配線板の製造コストが高くなるという課題があった。
【0019】
また、積層する配線基材の数が多い場合、各配線基材の伸縮ばらつきと、積層時の積層ばらつきとの合計である位置ずれ量が累積的に大きくなり、歩留まりが悪化するという課題があった。これに対して位置ずれに対するマージンを大きく取ると、今度は多層プリント配線板の高密度化が困難になるという課題がある。
【0020】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、その目的は、製造コストを削減できるとともに、高密度化の容易な多層プリント配線板を歩留まり良く提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様に係る多層プリント配線板の製造方法は、
第1の絶縁樹脂フィルムと、その表面に設けられた第1の金属箔とを有する片面金属箔張積層板に対し、片面に微粘着層が形成された粘着性保護フィルムを、前記微粘着層が前記第1の絶縁樹脂フィルムの裏面に接するように張り合わせる工程と、
前記粘着性保護フィルムおよび前記第1の絶縁樹脂フィルムを部分的に除去して、底面に前記第1の金属箔が露出した有底ビアホールを形成する工程と、
印刷手法を用いて、前記有底ビアホール内に導電ペーストを充填する第1印刷工程と、
前記第1の絶縁樹脂フィルムから前記粘着性保護フィルムを剥離して、前記有底ビアホールに充填された導電ペーストの一部を前記第1の絶縁樹脂フィルムから突出させ、それにより、第1の配線基材を得る工程と、
第2の絶縁樹脂フィルムと、その表面および裏面にそれぞれ設けられた第2および第3の金属箔とを有する両面金属箔張積層板に対し、前記第2の金属箔をパターニングして、穿孔加工用マスクを形成する工程と、
前記第2の絶縁樹脂フィルムの表面を被覆し前記パターニングされた第2の金属箔を埋設する接着剤層と、前記接着剤層上に積層された保護フィルムとを有する接着保護層を形成する工程と、
前記接着保護層および前記第2の絶縁樹脂フィルムを部分的に除去して、途中に前記穿孔加工用マスクが露出し且つ底面に前記第3の金属箔が露出した有底ステップビアホールを形成する工程と、
印刷手法を用いて、前記有底ステップビアホール内に導電ペーストを充填する第2印刷工程と、
前記接着剤層から前記保護フィルムを剥離して、前記有底ステップビアホールに充填された導電ペーストの一部を前記接着剤層から突出させ、それにより、第2の配線基材を得る工程と、
前記第1の配線基材の有底ビアホールに充填された導電ペーストの突出部と、前記第2の配線基材の有底ステップビアホールに充填された導電ペーストの突出部とが当接するように、前記第1の配線基材および前記第2の配線基材を積層し、前記積層された第1および第2の配線基材を加熱して一体化する積層工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、片面金属箔張積層板を出発材料とし、有底ビアホールに充填された導電ペーストの一部を第1の絶縁樹脂フィルムから突出させた第1の配線基材と、両面金属箔張積層板を出発材料とし、有底ステップビアホールに充填された導電ペーストの一部を接着剤層から突出させた第2の配線基材とを、第1の配線基材の有底ビアホールに充填された導電ペーストの突出部と、第2の配線基材の有底ステップビアホールに充填された導電ペーストの突出部とが当接するように積層する。
【0023】
このようにして2枚の配線基材を積層することにより、導電ビアで互いに電気的に接続された3つの配線層を有する多層プリント配線板が得られる。
【0024】
このように3つの配線層に対して2枚の配線基材で足りるため、多層プリント配線板の製造に必要な材料を削減できるとともに、製造工程も簡略化することができる。したがって、製造コストを削減でき、多層プリント配線板を安価に提供することができる。
【0025】
さらに、2枚の配線基材を積層するだけでよいことから、位置ずれによる歩留まりの悪化を回避できるとともに、位置ずれマージンを大きく確保する必要がないため、多層プリント配線板の高密度化にも有利である。
【0026】
よって、本発明によれば、製造コストを削減できるとともに、高密度化の容易な多層プリント配線板を歩留まり良く提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は原則として繰り返さない。また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0029】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、
図1A〜
図3Bを参照して説明する。
【0030】
本実施形態に係る多層プリント配線板30は、
図3Aおよび
図3Bからわかるように、2つの配線基材(配線基材10と配線基材20)を積層したものとして構成されている。
【0031】
まず、
図1Aおよび
図1Bを参照して配線基材10の製造方法について説明した後、
図2Aおよび
図2Bを参照して配線基材20の製造方法について説明する。その後、
図3Aおよび
図3Bを参照して多層プリント配線板30の製造方法について説明する。
【0032】
まず、
図1A(1)に示すように、絶縁樹脂フィルム1と、その表面1aに設けられた金属箔2とを有する片面金属箔張積層板3を準備する。絶縁樹脂フィルム1は、液晶ポリマー(LCP)等からなる絶縁フィルム(例えば100μm厚)である。金属箔2は、例えば、銅箔(例えば12μm厚)である。なお、金属箔2は、銅以外の金属(銀、アルミニウムなど)からなるものでもよい。
【0033】
次に、
図1A(2)に示すように、公知のフォトファブリケーション手法により金属箔2をパターニングして、受けランド2aおよび配線2bを形成する。受けランド2aの径は、例えば、φ250μm程度にする。
【0034】
次に、粘着性保護フィルム4を用意する。この粘着性保護フィルム4は、PET等からなる絶縁フィルム(例えば20μm厚)の片面に微粘着層(例えば10μm厚)が形成されたものである。
【0035】
次に、
図1A(3)に示すように、片面金属箔張積層板3に対し、片面に微粘着層(図示せず)が形成された粘着性保護フィルム4を、微粘着層が絶縁樹脂フィルム1の裏面1bに接するように張り合わせる。
【0036】
次に、
図1B(4)に示すように、粘着性保護フィルム4および絶縁樹脂フィルム1を部分的に除去して、底面に金属箔2が露出した有底ビアホール(有底導通用孔)5を形成する。有底ビアホール5の径は、例えばφ150μm〜200μmである。
【0037】
有底ビアホール5は、例えばレーザ加工により形成する。本工程で用いるレーザとしては、加工容易性の観点から、炭酸ガスレーザ等の赤外線レーザが好ましい。炭酸ガスレーザを用いる場合、ビーム径を有底ビアホール5の所望の穴径に略等しくする。UV−YAGレーザ等の他のレーザを用いて有底ビアホール5を形成してもよい。
【0038】
ここでは、三菱電機(株)製の炭酸ガスレーザ加工機(ML605GTXIII-5100U2)を用いた。所定のアパーチャー等でビーム径を150μmに調整し、パルス幅を10μSec、1パルスあたりのエネルギーを5mJとし、5ショットで1つの有底ビアホール5を形成した。
【0039】
レーザパルスを照射した後、デスミア処理を行って、絶縁樹脂フィルム1と金属箔2(受けランド2a)との境界における樹脂残渣、および金属箔2の裏面の処理膜を除去する。ここで、金属膜2の裏面の処理膜とは、銅箔等の金属箔2と絶縁樹脂フィルム1との密着性を向上させる等の目的で、片面金属箔張積層板3の製造時に設けられた膜(例えばNi/Cr膜)である。
【0040】
次に、
図1B(5)に示すように、印刷手法を用いて、有底ビアホール5内に導電ペースト6を充填する(第1印刷工程)。より詳しくは、スクリーン印刷等の印刷手法により、粘着性保護フィルム4を印刷マスクとして有底ビアホール5内に導電ペースト6を充填する。ここで、導電ペースト6は、ペースト状の熱硬化性樹脂である樹脂バインダーに金属粒子を分散させたものである。
【0041】
次に、
図1B(6)に示すように、絶縁樹脂フィルム1から粘着性保護フィルム4を剥離し、これにより、有底ビアホール5に充填された導電ペースト6の一部(突出部6a)を絶縁樹脂フィルム1から突出させる。突出部6aの高さは、粘着性保護フィルム4の厚みにほぼ等しい。
【0042】
ここまでの工程により、
図1B(6)に示す配線基材10を得る。
【0043】
次に、
図2Aおよび
図2Bを参照して、配線基材20の製造方法について説明する。
【0044】
まず、
図2A(1)に示すように、絶縁樹脂フィルム11と、その表面11aおよび裏面11bにそれぞれ設けられた金属箔12および金属箔13とを有する両面金属箔張積層板14を用意する。絶縁樹脂フィルム11は、液晶ポリマー等からなる絶縁フィルム(例えば100μm厚)である。金属箔12,13は、例えば、銅箔(例えば12μm厚)である。なお、金属箔12,13は、銅以外の金属(銀、アルミニウムなど)からなるものでもよい。
【0045】
次に、
図2A(2)に示すように、両面金属箔張積層板14に対し、公知のフォトファブリケーション手法により金属箔12をパターニングして、穿孔加工用マスク12a、受けランド12bおよび配線(図示せず)を形成する。穿孔加工用マスク12aの径は、例えばφ350μm程度にする。受けランド12bの径は、例えばφ250μm程度にする。同様に、金属箔13をパターニングして、受けランド13aおよび配線13bを形成する。受けランド13aの径は、例えば、φ250μm程度にする。
【0046】
穿孔加工用マスク12aと受けランド13aとの間の位置決め精度は、露光精度により決まるため、従来のように2枚の片面基板を積層する場合に比べて、比較的容易に高い位置決め精度(例えば±10μm)を得ることができる。
【0047】
次に、
図2A(3)に示すように、パターニングされた金属箔12を被覆し保護する接着保護層17を、両面金属箔張積層板14上に形成する。この接着保護層17は、接着剤層15と、接着剤層15上に積層された保護フィルム16とを有する。接着剤層15は、絶縁樹脂フィルム11の表面11aを被覆するとともに、パターニングされた金属箔12を埋設する。
【0048】
接着保護層17は、例えば、次の2通りの方法で形成することが可能である。一つ目の方法は、まず、絶縁樹脂フィルム11上に接着剤層15を形成する。例えば、厚さ15μmのローフローボンディングシートを絶縁樹脂フィルム11にラミネートする。その後、接着剤層15上に保護フィルム16を積層する。例えば、PET等からなる保護用の保護フィルム16(例えば厚さ20μm厚)を接着剤層15に貼り合わせる。
【0049】
2つ目の方法は、保護フィルム16の片面に接着剤層15を設けたフィルムを絶縁樹脂フィルム11に貼り合わせる方法である。
【0050】
いずれの方法においても、接着剤層15、あるいは保護フィルム16の片面に接着剤層15を設けたフィルムをラミネートする際、パターニングされた金属箔12を充填するとともに後述の積層工程の際に必要な接着性が残るように、接着剤層15の熱硬化温度よりも低い温度でラミネートすることが必要である。
【0051】
なお、接着保護層17を形成する前に、金属箔12の粗化処理を行ってもよい。これにより、金属箔12と接着剤層15の接着強度を向上させることができる。ここでは、荏原ユージーライト(株)製のネオブラウンプロセスNBDシリーズを用いて、金属箔12としての銅箔の粗化処理を行った。
【0052】
次に、
図2B(4)に示すように、接着保護層17および絶縁樹脂フィルム11を部分的に除去して、途中に穿孔加工用マスク12aが露出し、且つ底面に金属箔13(受けランド13a)が露出した有底ステップビアホール18aを形成する。
【0053】
また、本工程において、
図2B(4)に示すように、有底ステップビアホール18aの他、有底ビアホール18b,18dおよび有底ステップビアホール18cを形成する。有底ビアホール18bは、接着保護層17を厚さ方向に貫通し、底面に受けランド12bが露出した有底のビアホールである。有底ステップビアホール18cは、有底ステップビアホール18aと同様の構成の有底のステップビアホールである。有底ビアホール18dは、接着保護層17および絶縁樹脂フィルム11を厚さ方向に貫通し、底面に受けランド13aが露出した有底のビアホールである。
【0054】
なお、有底ステップビアホール18aの径は、後述の積層工程時の位置合せずれを考慮して、有底ビアホール5の径よりも大きくすることが好ましく、例えばφ250μm〜300μmとする。
【0055】
ここでは、前述の炭酸ガスレーザ加工機を用いて、所定のアパーチャー等でビーム径を250μmに調整し、パルス幅を10μSec、1パルスあたりのエネルギーを5mJとし、6ショットで1つの有底ステップビアホール18aを形成した。有底ビアホール18bについては、ビーム径を200μmとし、パルス幅を10μSec、1パルスあたりのエネルギーを5mJとし、2ショットで1つの有底ビアホール18bを形成した。有底ビアホール18dについては、ビーム径を250μmとし、パルス幅を10μSec、1パルスあたりのエネルギーを5mJとし、6ショットで1つの有底ビアホール18dを形成した。
【0056】
レーザパルスを照射した後、有底ステップビアホール18a,18dおよび有底ビアホール18b,18dについてデスミア処理を行う。これにより、絶縁樹脂フィルム11と金属箔13(受けランド13a)との境界における樹脂残渣、および金属箔13の裏面の処理膜を除去するとともに、絶縁樹脂フィルム11と金属箔12(穿孔加工用マスク12a)との境界における樹脂残渣、および金属箔12の表面(上面)の粗化処理で形成された皮膜を除去する。
【0057】
次に、
図2B(5)に示すように、印刷手法を用いて、有底ステップビアホール18a,18dおよび有底ビアホール18b,18d内に導電ペースト19を充填する(第2印刷工程)。より詳しくは、スクリーン印刷等の印刷手法により、保護フィルム16を印刷マスクとして有底ステップビアホール18a,18dおよび有底ビアホール18b,18d内に導電ペースト19を充填する。ここで、導電ペースト19は、ペースト状の熱硬化性樹脂である樹脂バインダーに金属粒子を分散させたものである。
【0058】
次に、
図2B(6)に示すように、接着剤層15から保護フィルム16を剥離し、これにより、有底ステップビアホール18a,18dおよび有底ビアホール18b,18d内に充填された導電ペースト19の一部(突出部19a)を接着剤層15から突出させる。突出部19aの高さは、保護フィルム16の厚みにほぼ等しい。
【0059】
ここまでの工程により、
図2B(6)に示す配線基材20を得る。
【0060】
次に、
図3Aおよび
図3Bを参照して、多層プリント配線板30の製造方法について説明する。
【0061】
図3Aに示すように、配線基材10と配線基材20を対向させて位置合せを行い、導電ペースト6の突出部6aと、導電ペースト19の突出部19aとが当接するように、配線基材10および配線基材20を積層する。積層された配線基材10と配線基材20(以下、「積層体」ともいう。)を加熱することにより、配線基材10と配線基材20とを一体化する(積層工程)。
【0062】
具体的には、真空プレス装置または真空ラミネータ装置を用いて、積層体に対して加熱および加圧を行う。例えば、積層体を200℃程度に加熱するとともに、数MPa程度の圧力で加圧する。なお、この温度は液晶ポリマーの軟化温度より50℃以上低い。
【0063】
真空プレス装置を用いる場合、例えば、上記の加熱・加圧条件で30分〜60分程度、積層体を保持する。これにより、接着剤層15の熱硬化、および導電性ペースト6,19のバインダー樹脂の熱硬化が完了する。
【0064】
真空ラミネータ装置を用いる場合、加熱・加圧時間は数分程度であり、その終了時点で熱硬化反応は未だ完了していない。このため、真空ラミネータ装置からオーブン装置に積層体を移送し、ポストキュア処理を行う。ポストキュア処理では、例えば、200℃前後の温度で60分程度、積層体を加熱する。これにより、接着剤層15の熱硬化、および導電性ペースト6,19のバインダー樹脂の熱硬化が完了する。
【0065】
真空プレス装置および真空ラミネータ装置のいずれを用いた場合も、所定の積層プロセス温度での加熱により、導電ペースト6,19に含まれる金属粒子が互いに金属結合するとともに、金属箔2,12,13(受けランド2a,12b,13a、穿孔加工用マスク12a)と金属結合する。これにより、
図3Bに示すように、層間接続用の導電ビア31〜34が形成される。さらに、この加熱により、導電ペースト6,19に含まれる樹脂バインダーの熱硬化反応、および接着剤層15の熱硬化反応がいずれも実質的に終了する。
【0066】
なお、積層プロセス温度(例えば200℃程度)の加熱により、導電ペースト6,19に含まれる金属粒子同士が金属結合するためには、金属粒子の融点が積層プロセス温度以下であることが好ましい。このような低融点金属として、例えば、In、SnIn、SnBiが挙げられる。よって、前述の導電ペーストの印刷工程(第1印刷工程および/または第2印刷工程)において、これらの低融点金属のいずれかからなる金属粒子を含む導電ペーストを用いることが好ましい。
【0067】
また、金属箔1,12,13が銅箔である場合には、前述の導電ペーストの印刷工程(第1印刷工程および/または第2印刷工程)において、Sn、Zn、Al、Ag、Ni、Cu、又はこれらの合金からなる金属粒子を含む導電ペーストを用いることが好ましい。これにより、積層プロセス温度(例えば200℃程度)の加熱により、導電ペースト6,19に含まれる金属粒子が銅箔と合金層を形成して金属結合する。
【0068】
上記積層工程の後、必要に応じて、外側に露出した配線層の表面処理、ソルダーレジスト等の形成、および外形加工を行う。
【0069】
上記の工程を経て、
図3Bに示すように、受けランド2aおよび配線2bを含む配線層(第1の配線層)と、穿孔加工用マスク12aおよび受けランド12bを含む内側の配線層(第2の配線層)と、受けランド13aおよび配線13bを含む配線層(第3の配線層)とを有する多層プリント配線板30を得る。
【0070】
図3Bに示すように、多層プリント配線板30は、絶縁樹脂フィルム11と、絶縁樹脂フィルム11の下面に設けられた受けランド13aと、絶縁樹脂フィルム11の上面に設けられた穿孔加工用マスク12aと、穿孔加工用マスク12aを埋設する接着剤層15を介して、絶縁樹脂フィルム11の上面に積層された絶縁樹脂フィルム1と、絶縁樹脂フィルム1の上面に設けられた受けランド2aと、導電ビア31〜34とを備えている。
【0071】
導電ビア31は、絶縁樹脂フィルム11、接着剤層15および絶縁樹脂フィルム1を厚さ方向に貫通するように設けられており、受けランド13a、受けランド2aおよび穿孔加工用マスク12aを互いに電気的に接続している。このように導電ビア31は、第1〜第3の配線層の全てを電気的に接続する。
【0072】
これに対し、導電ビア32は、第1の配線層と第2の配線層を電気的に接続するものであり、導電ビア33は、第2の配線層と第3の配線層を電気的に接続するものであり、導電ビア34は、第1の配線層と第3の配線層を電気的に接続するものである。このように、全ての組み合わせの層間接続を得ることができる。
【0073】
図3Bに示すように、導電ビア31は、より詳しくは、絶縁樹脂フィルム1を厚さ方向に貫通するように設けられた上側導電ビア部31aと、接着剤層15および絶縁樹脂フィルム11を厚さ方向に貫通するように設けられた下側導電ビア部31bとを有する。上側導電ビア部31aと下側導電ビア部31bとは、絶縁樹脂フィルム1と接着剤層15との界面において当接している。
【0074】
上側導電ビア部31aは、底面に受けランド2aが露出した有底ビアホールに充填された導電ペーストを硬化させてなり、下側導電ビア部31bは、途中に穿孔加工用マスク12aが露出し且つ底面に受けランド13aが露出した有底ステップビアホールに充填された導電ペーストを硬化させてなる。
【0075】
また、導電ビア32は、導電ビア部32aと導電ビア部32bとが絶縁樹脂フィルム1と接着剤層15との界面において当接して形成されている。導電ビア34は、導電ビア部34aと導電ビア部34bとが絶縁樹脂フィルム1と接着剤層15との界面において当接して形成されている。
【0076】
なお、上記の多層プリント配線板30の製造方法では、配線基材10と配線基材20を積層し一体化する積層工程の前に、金属箔2および金属箔13をパターニングして所定の配線パターンを形成しておいたが、本発明はこれに限らない。即ち、積層工程の後に金属箔2および金属箔13をパターニングして、所定の配線パターンを形成してもよい。これにより、第2の配線層と位置合せした状態でのパターニングが可能になり、第1および第3の配線層をより高精度に形成することができる。また、この方法は、積層工程での配線基材10,20の寸法の収縮ばらつきが大きい場合にも有効である。
【0077】
また、両面同時露光を行うことにより、金属箔2および金属箔13を同時にパターニングしてもよい。これにより、配線基材10と配線基材20とを積層する際の位置合わせ精度(積層精度)よりも高い精度で、第1の配線層と第3の配線層との間の位置合わせを行うことができる。
【0078】
なお、粘着性保護フィルム4および保護フィルム16の厚みは、導電ペースト6,19の突出部6a,19aの高さ(導電ペーストの飛び出し量)を規定することになる。よって、これらのフィルムが厚すぎる場合は、突出部6a,19aが突出しすぎるために積層工程において接着剤層15により多層プリント配線板30の凹凸を吸収しきれず、多層プリント配線板30の平坦度が損なわれるおそれがある。一方、これらのフィルムが薄すぎる場合、突出部6a,19aが低すぎるために積層工程で積層体を加圧しても導電ビア部(例えば導電ビア部31aと導電ビア部31b)同士の圧着が弱く、導電ビア31,32,34の接続信頼性を十分に確保できないおそれがある。したがって、粘着性保護フィルム4および保護フィルム16の厚さは、好ましくは20±10μmの範囲にあり、より好ましくは20±5μmの範囲にある。
【0079】
なお、上記の第1および第2の印刷工程においては、エアボイドの混入を防止する観点から、真空環境下で導電ペースト6,19の印刷を行うことが好ましい。例えば、スクリーン印刷用の真空印刷機を用いることが好ましい。これにより、印刷中にボイド(導電ペーストで充填されない領域)が発生しても、真空状態の解放時に大気圧により当該ボイドは押し潰されて消失するため、エアボイドの発生を防止することができる。ただし、有底ビアホール5や有底ステップビアホール18aの径が比較的小さい場合には、エアボイドの発生確率が小さいので、真空環境下で印刷することは必ずしも必要ではない。
【0080】
以上説明したように、第1の実施形態では、2枚の配線基材(配線基材10と配線基材20)を積層することにより、導電ビアで互いに電気的に接続された3つの配線層を有する多層プリント配線板30を作製する。
【0081】
このように3つの配線層に対して2枚の配線基材で足りるため、多層プリント配線板の製造に必要な材料を削減できるとともに、製造工程も簡略化することができる。したがって、製造コストを削減でき、多層プリント配線板30を安価に提供することができる。
【0082】
さらに、2枚の配線基材を積層するだけでよいことから、位置ずれによる歩留まりの悪化を回避できる。また、位置ずれマージンを大きく確保する必要がないため、多層プリント配線板の高密度化にも有利である。
【0083】
よって、第1の実施形態によれば、製造コストを削減できるとともに高密度化の容易な多層プリント配線板を歩留まり良く提供することができる。
【0084】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、
図4、
図5Aおよび
図5Bを参照して説明する。第2の実施形態と第1の実施形態との相違点の一つは、配線層の数である。第1の実施形態に係る多層プリント配線板30の配線層数が3つであったのに対し、第2の実施形態に係る多層プリント配線板50の配線層数は4つである。
【0085】
本実施形態に係る多層プリント配線板50は、
図5Aおよび
図5Bからわかるように、3つの配線基材(配線基材10、配線基材20および配線基材40)を積層したものとして構成されている。
【0086】
配線基材10および配線基材20の製造方法については、第1の実施形態と同様であるため詳しい説明を省略する。
【0087】
図4を参照して配線基材40の製造方法について説明する。
【0088】
まず、
図4(1)に示すように、絶縁樹脂フィルム21と、その裏面21bに設けられた金属箔22とを有する片面金属箔張積層板23を準備する。絶縁樹脂フィルム21(例えば100μm厚)は液晶ポリマー(LCP)等からなり、金属箔22は銅箔等(例えば12μm厚)である。なお、金属箔22は、銅以外の金属(銀、アルミニウムなど)からなるものでもよい。
【0089】
次に、
図4(2)に示すように、片面金属箔張積層板23に対し、公知のフォトファブリケーション手法により金属箔22をパターニングして、受けランド22aおよび配線22bを形成する。受けランド22aの径は、例えばφ250μm程度にする。
【0090】
次に、
図4(2)に示すように、片面金属箔張積層板23の表面21a上に接着保護層26を形成する。接着保護層26は、絶縁樹脂フィルム21の表面21aを被覆する接着剤層24と、接着剤層24上に積層された保護フィルム25とを有する。接着保護層26の形成方法は、第1の実施形態の接着保護層17と同様であるため説明を省略する。
【0091】
次に、
図4(3)に示すように、接着保護層26および絶縁樹脂フィルム21を部分的に除去して、底面に金属箔22(受けランド22a)が露出した有底ビアホール27を形成する。有底ビアホール27の形成方法は、第1の実施形態の有底ビアホール18d等と同様であるため説明を省略する。
【0092】
次に、
図4(4)に示すように、印刷手法を用いて、有底ビアホール27内に導電ペースト28を充填する。導電ペースト28の充填方法は、第1の実施形態の導電ペースト6等の充填方法と同様であるため説明を省略する。
【0093】
次に、
図4(4)に示すように、接着剤層24から保護フィルム25を剥離し、これにより、有底ビアホール27に充填された導電ペースト28の一部(突出部28a)を接着剤層24から突出させる。
【0094】
ここまでの工程により、
図4(4)に示す配線基材40を得る。
【0095】
次に、
図5Aおよび
図5Bを参照して、多層プリント配線板50の製造方法について説明する。
【0096】
図5Aに示すように、配線基材10、配線基材20および配線基材40を対向させて位置合せを行い、導電ペースト6の突出部6aと、導電ペースト19の突出部19aとが当接し、かつ、導電ペースト28の突出部28aが配線基材20の受けランド13aに当接するように、配線基材10、配線基材20および配線基材40を積層する。積層された配線基材10、配線基材20および配線基材40を加熱することにより、配線基材10と配線基材20と配線基材40とを一体化する(積層工程)。積層工程は第1の実施形態と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0097】
上記の工程を経て、
図5Bに示すように、第1〜第4の配線層を有する多層プリント配線板50を得る。ここで、第1〜第3の配線層は第1の実施形態と同様であり、第4の配線層は受けランド22aおよび配線22bを含む下側の配線層をいう。
【0098】
図5Bに示すように、多層プリント配線板50は、導電ビア51〜53を備えている。導電ビア51,52は、第1〜第4の配線層の全てを電気的に接続する。導電ビア53は、第2の配線層をスキップして、第1の配線層、第3の配線層および第4の配線層を電気的に接続する。
【0099】
導電ビア51は、導電ビア部51a,51bおよび51cからなる。導電ビア52は、導電ビア部52a,52bおよび52cからなる。導電ビア53は、導電ビア部53a,53bおよび53cからなる。
【0100】
なお、
図3Bおよび
図5Bからわかるように、第1〜第4の配線層の2以上の任意の配線層を接続する導電ビアを形成することが可能である。
【0101】
以上説明したように、第2の実施形態では、3枚の配線基材(配線基材10、配線基材20および配線基材40)を積層することにより、導電ビアで互いに電気的に接続された4つの配線層を有する多層プリント配線板50を作製する。
【0102】
第2の実施形態によれば、4つの配線層に対して3枚の配線基材で足りるため、多層プリント配線板の製造に必要な材料を削減できるとともに、製造工程も簡略化することができる。
【0103】
さらに、3枚の配線基材を積層するだけでよいことから、位置ずれによる歩留まりの悪化を回避できる。また、位置ずれマージンを大きく確保する必要がないため、多層プリント配線板の高密度化にも有利である。
【0104】
よって、第2の実施形態によれば、製造コストを削減できるとともに高密度化の容易な多層プリント配線板を歩留まり良く提供することができる。
【0105】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、
図6〜
図9Bを参照して説明する。第3の実施形態は第2の実施形態と同様、4つの配線層を有する多層プリント配線板である。第3の実施形態と第2の実施形態との相違点の一つは、穿孔加工用マスクの配置である。即ち、第2の実施形態では、絶縁樹脂フィルム11の一方の主面にのみ穿孔加工用マスク12aを形成したが、第3の実施形態では、高密度化を図るため、径の大きいランド(穿孔加工用マスク)を絶縁樹脂フィルムの両面に形成する。
【0106】
本実施形態に係る多層プリント配線板60は、
図9Aおよび
図9Bからわかるように、3つの配線基材(配線基材10A、配線基材20Aおよび配線基材40A)を積層したものとして構成されている。
【0107】
まず、
図6を参照して配線基材10Aの製造方法について説明した後、
図7を参照して配線基材20Aの製造方法について説明し、その後、
図8を参照して配線基材40Aの製造方法について説明する。そして、
図9Aおよび
図9Bを参照して多層プリント配線板60の製造方法について説明する。
【0108】
図6を参照して配線基材10Aの製造方法について説明する。
【0109】
まず、第1の実施形態で説明した片面金属箔張積層板3を準備する。そして、
図6(1)に示すように、公知のフォトファブリケーション手法により金属箔2をパターニングして、受けランド2aおよび配線2bを形成する。
次に、
図6(1)に示すように、片面金属箔張積層板3の裏面1b上に接着保護層9Aを形成する。接着保護層9Aは、絶縁樹脂フィルム1の裏面1bを被覆する接着剤層7Aと、接着剤層7A上に積層された保護フィルム8Aとを有する。接着保護層9Aの形成方法は、第1の実施形態の接着保護層17と同様であるため説明を省略する。
【0110】
次に、接着保護層9Aおよび絶縁樹脂フィルム1を部分的に除去して、底面に金属箔2(受けランド2a)が露出した有底ビアホールを形成する。そして、印刷手法を用いて、当該有底ビアホール内に導電ペースト6Aを充填する。
【0111】
次に、
図6(3)に示すように、接着剤層7Aから保護フィルム8Aを剥離し、これにより、導電ペースト6Aの一部を接着剤層7Aから突出させる。
【0112】
ここまでの工程により、
図6(3)に示す配線基材10Aを得る。
【0113】
次に、
図7を参照して配線基材20Aの製造方法について説明する。
【0114】
まず、第1の実施形態で説明した両面金属箔張積層板14を用意する。そして、
図7(1)に示すように、両面金属箔張積層板14に対し、公知のフォトファブリケーション手法により金属箔12をパターニングして、穿孔加工用マスク12a、受けランド12bおよび配線12cを形成する。同様に、金属箔13をパターニングして、受けランド13a、配線13bおよび穿孔加工用マスク13cを形成する。このように、第3の実施形態では、両面金属箔張積層板14の両面に穿孔加工用マスクを形成する。
【0115】
次に、
図7(1)に示すように、片面に微粘着層(図示せず)が形成された粘着性保護フィルム35を、当該微粘着層が絶縁樹脂フィルム11の表面11aに接し且つパターニングされた金属箔12(穿孔加工用マスク12a、受けランド12bおよび配線12c)を埋設するように、両面金属箔張積層板に張り合わせる。
【0116】
また、
図7(1)に示すように、片面に微粘着層が形成された粘着性保護フィルム36を、当該微粘着層(図示せず)が絶縁樹脂フィルム11の裏面11bに接し且つパターニングされた金属箔13(受けランド13a、配線13bおよび穿孔加工用マスク13c)を埋設するように、両面金属箔張積層板14に張り合わせる。
【0117】
次に、
図7(2)に示すように、粘着性保護フィルム35および絶縁樹脂フィルム11を部分的に除去して、途中に穿孔加工用マスク12aが露出し且つ底面に受けランド13aが露出した有底ステップビアホールを形成し、その後、印刷手法を用いて、当該有底ステップビアホール内に導電ペースト19Cを充填する。
【0118】
また、
図7(2)に示すように、粘着性保護フィルム36および絶縁樹脂フィルム11を部分的に除去して、途中に穿孔加工用マスク13cが露出し且つ底面に受けランド12bが露出した有底ステップビアホールを形成し、その後、印刷手法を用いて、当該有底ステップビアホール内に導電ペースト19Dを充填する。
【0119】
なお、導電ペースト19C,19Dの印刷は、両面金属箔張積層板14の両面に有底ステップビアホールを形成した後に行ってもよい。
【0120】
次に、
図7(3)に示すように、絶縁樹脂フィルム11から粘着性保護フィルム35を剥離し、これにより、導電ペースト19Cの一部を穿孔加工用マスク12aから突出させる。同様に、絶縁樹脂フィルム11から粘着性保護フィルム36を剥離し、これにより、導電ペースト19Dの一部を穿孔加工用マスク13cから突出させる。
【0121】
ここまでの工程により、
図7(3)に示す配線基材20Aを得る。
【0122】
次に、
図8を参照して配線基材40Aの製造方法について説明する。
【0123】
まず、第2の実施形態で説明した片面金属箔張積層板23を用意する。そして、
図8(1)に示すように、この片面金属箔張積層板23に対し、公知のフォトファブリケーション手法により金属箔22をパターニングして、受けランド22aおよび配線22bを形成する。
【0124】
次に、
図8(1)に示すように、片面金属箔張積層板23の表面21a上に接着保護層9Bを形成する。接着保護層9Bは、絶縁樹脂フィルム21の表面21aを被覆する接着剤層7Bと、接着剤層7B上に積層された保護フィルム8Bとを有する。接着保護層8Bの形成方法は、第1の実施形態の接着保護層17と同様であるため説明を省略する。
【0125】
次に、
図8(2)に示すように、接着保護層9Bおよび絶縁樹脂フィルム21を部分的に除去して、底面に金属箔22(受けランド22a)が露出した有底ビアホールを形成し、その後、印刷手法を用いて、当該有底ビアホール内に導電ペースト28Aを充填する。
【0126】
次に、
図8(3)に示すように、接着剤層7Bから保護フィルム8Bを剥離し、これにより、導電ペースト28Aの一部を接着剤層7Bから突出させる。
【0127】
ここまでの工程により、
図8(3)に示す配線基材40Aを得る。
【0128】
次に、
図9Aおよび
図9Bを参照して、多層プリント配線板60の製造方法について説明する。
【0129】
図9Aに示すように、配線基材10Aの導電ペースト6Aの突出部と、配線基材20Aの導電ペースト19Cの突出部とが当接し、かつ、配線基材40Aの導電ペースト28Aの突出部が配線基材20Aの受けランド13aに当接するように、配線基材10A、配線基材20Aおよび配線基材40Aを積層する。このようにして積層された配線基材10A、配線基材20Aおよび配線基材40Aを加熱することにより、配線基材10Aと配線基材20Aと配線基材40Aとを一体化する(積層工程)。積層工程は第1の実施形態と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0130】
上記の工程を経て、
図9Bに示すように、第1〜第4の配線層を有する多層プリント配線板60を得る。ここで、第1〜第4の配線層は第2の実施形態で説明した第1〜第4の配線層と同様である。
【0131】
図9Bに示すように、多層プリント配線板60は、導電ビア61〜63を備えている。導電ビア61,62は、第1〜第4の配線層の全てを電気的に接続する。導電ビア63は、第2の配線層をスキップして、第1の配線層、第3の配線層および第4の配線層を電気的に接続する。
【0132】
導電ビア61は、導電ビア部61a,61bおよび61cからなる。導電ビア62は、導電ビア部62a,62bおよび62cからなる。導電ビア63は、導電ビア部63a,63bおよび63cからなる。
【0133】
なお、
図3Bおよび
図9Bからわかるように、第1〜第4の配線層の2以上の任意の配線層を接続する導電ビアを形成することが可能である。
【0134】
以上説明したように、第3の実施形態では、3枚の配線基材(配線基材10A、配線基材20Aおよび配線基材40A)を積層することにより、導電ビアで互いに電気的に接続された4つの配線層を有する多層プリント配線板60を作製する。
【0135】
第3の実施形態によれば、4つの配線層に対して3枚の配線基材で足りるため、多層プリント配線板の製造に必要な材料を削減できるとともに、製造工程も簡略化することができる。
【0136】
また、3枚の配線基材を積層するだけでよいことから、位置ずれによる歩留まりの悪化を回避できる。また、位置ずれマージンを大きく確保する必要がないため、多層プリント配線板の高密度化にも有利である。
【0137】
さらに、第3の実施形態では、径の大きい穿孔加工用マスクを絶縁樹脂フィルムの両面に形成することにより、絶縁樹脂フィルム11の表面および裏面のパターン密度を平均化し、多層プリント配線板全体として高密度化を図ることができる。
【0138】
よって、第3の実施形態によれば、製造コストを削減できるとともに高密度化の容易な多層プリント配線板を歩留まり良く提供することができる。
【0139】
以上、本発明に係る3つの実施形態について説明した。これらの実施形態では、3層ないし4層の配線層を有する多層プリント配線板について説明したが、本発明は、5層以上の配線層を有する多層プリント配線板についても適用可能である。
【0140】
なお、上記の絶縁樹脂フィルム1,11,21は、液晶ポリマーフィルムに限られるものではなく、例えば、ポリイミドフィルムやポリエチレンテレフタレート等のフレキシブルプリント配線板に使用される絶縁樹脂フィルムであってもよいし、あるいはガラスエポキシのような硬質の絶縁樹脂からなるものであってもよい。
【0141】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。