特許第6177654号(P6177654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6177654
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】配管継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/025 20060101AFI20170731BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20170731BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   F16L19/025
   F16L5/02 B
   F02M55/02 330C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-213361(P2013-213361)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-75208(P2015-75208A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 健一
(72)【発明者】
【氏名】福永 恭子
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−053761(JP,U)
【文献】 特開2001−271818(JP,A)
【文献】 特開2007−261329(JP,A)
【文献】 特開2002−089407(JP,A)
【文献】 特開2005−002806(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0210980(US,A1)
【文献】 特開平05−238251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/025
F02M 55/02
F16L 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続すべき一方の管端に回動自在に外嵌装着されたソケット型のユニオンナットを、他方の管端に形成したプラグ型の雄ネジ部に締め込むことにより、前記一方の管端を前記他方の管端に突き合わせて接続するようにしたユニオン継手形式を採用し、その継手箇所がガスシールのベルマウス状のリップ部を貫通して配置され且つ前記ユニオンナットが締結時に前記ガスシールのリップ部を押し拡げながら該リップ部の窄まり方向へ押し込まれて気密が保持されるように構成された配管継手構造において、前記ユニオンナットの先端に前記ガスシールのリップ部の拡張前の初期径より小さな外径を成すストレート部を形成すると共に、該ストレート部に続き反先端側へ徐々に拡径して前記リップ部を押し拡げ得る外径となるテーパ部を形成したことを特徴とする配管継手構造。
【請求項2】
エンジンのシリンダヘッドの内部に装備されるインジェクションパイプの管端を一方の管端とし、前記シリンダヘッドの外部に搭載したコモンレール側の配管の管端を他方の管端として、これら両管端同士を前記シリンダヘッドの開口部にてガスシールを介し気密を保持した状態で接続したものであることを特徴とする請求項1に記載の配管継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスシールのベルマウス状のリップ部を貫通して配置されるユニオン継手形式の配管継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年におけるディーゼルエンジンでは、コモンレールに燃料を蓄圧して燃料噴射制御を電子制御で行うようにしているが、各気筒のインジェクタに燃料を導くインジェクションパイプがシリンダヘッドの内部に装備されているのに対し、コモンレールはシリンダヘッドの外部に搭載されるようになっているため、コモンレール側の配管とインジェクションパイプとをシリンダヘッドを貫通させて接続する必要がある。
【0003】
この際、シリンダヘッドの内部には、ディーゼルエンジンの圧縮行程と爆発行程においてピストンリングの間隙よりクランクケースへ漏れ出るブローバイガスが多くのオイルミストを含んだ状態で充満しているため、このブローバイガスが大気放出されないようシリンダヘッドの開口部にガスシールを介在させることで気密を保持した状態にしてコモンレール側の配管とインジェクションパイプとを接続させるようにしている。
【0004】
即ち、図3及び図4に拡大して示す如く、インジェクションパイプ1の管端とコモンレール(図示せず)側の配管2の管端とのシリンダヘッド3を貫通して行われる接続には、以下に詳述する如きユニオン継手形式が採用されており、この種のユニオン継手形式にあっては、インジェクションパイプ1の管端に回動自在に外嵌装着されたソケット型のユニオンナット4(図中の符号4’はユニオンナット4の雌ネジ部を示す)を、コモンレール側の配管2の管端に形成したプラグ型の雄ネジ部5に締め込むことにより、前記インジェクションパイプ1の管端を前記コモンレール側の配管2の管端に突き合わせて接続する形式となっている。
【0005】
そして、インジェクションパイプ1の管端とコモンレール側の配管2の管端との継手箇所が、シリンダヘッド3の開口部3aに介装されたガスシール6におけるベルマウス状のリップ部7を貫通して配置されていると共に、前記ユニオンナット4が前記ガスシール6のリップ部7を押し拡げながら該リップ部7の窄まり方向(図中の左方向)へ締め込まれて気密が保持されるようにしてある。
【0006】
更に、前記インジェクションパイプ1の先端から所要長さ後退した位置には、ユニオンナット4の抜け止めを図る鍔部8が形成されており、コモンレール側の配管2の管端に形成したプラグ型の雄ネジ部5に前記ユニオンナット4を締め込んだ際に、ワッシャ9を介し鍔部8がユニオンナット4の後端部に係止されてインジェクションパイプ1の先端が前記雄ネジ部5の先端に押圧されるようになっている(図4参照)。
【0007】
ここで、鍔部8とユニオンナット4の後端部との間に介装されているワッシャ9は、インジェクションパイプ1を前記ユニオンナット4の軸心位置に正しい姿勢で保持するように機能するものである。
【0008】
また、前記インジェクションパイプ1の鍔部8から先端にかけての範囲に先細りのテーパ形状が付されていると共に、コモンレール側の配管2における雄ネジ部5の先端には、前記インジェクションパイプ1の先端を対峙方向から受ける擂り鉢状の凹部10が形成されており、該凹部10に対し前記インジェクションパイプ1の先端が押圧された際に楔作用により両者の緊密な接触が図られるようにしてある。
【0009】
尚、この種の配管継手構造に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−122454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、斯かる従来構造においては、コモンレール側の配管2の管端に形成したプラグ型の雄ネジ部5に前記ユニオンナット4を締め込むにあたり、図3に示す如きユニオンナット4の締め始めの段階からガスシール6のリップ部7に突き当たり、これを押し拡げながら締め込まなければならなかったため、その締め込み時にリップ部7側との摩擦力が大きな抵抗として加わることで初期手締め時の作業者の負担が大きくなるという問題があり、しかも、雄ネジ部5側との噛み合い状態を探る手加減が作業者に判り難いことから、ユニオンナット4が雄ネジ部5に対し斜めに締め込まれてしまっているのに、これに気づかないまま強引に締め込みを続けることでネジ山やリップ部7を損傷してしまう虞れもあった。
【0012】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、ユニオンナットの締め始めの抵抗を少なくして初期手締め時の作業者の負担を軽減し且つ締め始めの段階における雄ネジ部側との噛み合い状態を探る手加減を作業者に判り易くしてユニオンナットを確実に正しい姿勢で締め込み得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、接続すべき一方の管端に回動自在に外嵌装着されたソケット型のユニオンナットを、他方の管端に形成したプラグ型の雄ネジ部に締め込むことにより、前記一方の管端を前記他方の管端に突き合わせて接続するようにしたユニオン継手形式を採用し、その継手箇所がガスシールのベルマウス状のリップ部を貫通して配置され且つ前記ユニオンナットが締結時に前記ガスシールのリップ部を押し拡げながら該リップ部の窄まり方向へ押し込まれて気密が保持されるように構成された配管継手構造において、前記ユニオンナットの先端に前記ガスシールのリップ部の拡張前の初期径より小さな外径を成すストレート部を形成すると共に、該ストレート部に続き反先端側へ徐々に拡径して前記リップ部を押し拡げ得る外径となるテーパ部を形成したことを特徴とするものである。
【0014】
而して、このようにすれば、他方の管端に形成したプラグ型の雄ネジ部にユニオンナットを締め込むにあたり、該ユニオンナットの締め始めの段階で先端のストレート部をガスシールのリップ部の内側に大きな抵抗なく差し入れて雄ネジ部との噛み合わせを図ることが可能となり、また、このようにしてユニオンナットを雄ネジ部と正常に噛み合わせた後に更に締め込むことでテーパ部により徐々にガスシールのリップ部を押し拡げ、該リップ部をユニオンナットの外周部に密着させて気密を保持させることが可能となる。
【0015】
また、本発明の配管継手構造をより具体的に実施するにあたっては、例えば、エンジンのシリンダヘッドの内部に装備されるインジェクションパイプの管端を一方の管端とし、前記シリンダヘッドの外部に搭載したコモンレール側の配管の管端を他方の管端として、これら両管端同士を前記シリンダヘッドの開口部にてガスシールを介し気密を保持した状態で接続したものに適用することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明の配管継手構造によれば、ユニオンナットの締め始めの段階で先端のストレート部をガスシールのリップ部の内側に大きな抵抗なく差し入れて雄ネジ部との噛み合わせを図ることができるので、ユニオンナットの締め始めの抵抗を少なくして初期手締め時の作業者の負担を大幅に軽減することができ、しかも、ユニオンナットの雄ネジ部側との噛み合い状態を探る手加減を作業者に判り易くさせることができるので、ユニオンナットを確実に正しい姿勢で締め込むことができ、ユニオンナットが雄ネジ部に対し斜めに締め込まれてしまっているのに気づかずに強引に締め込みを続けてネジ山やリップ部を損傷してしまうといった事態を未然に防止することができる等種々の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
図2図1のユニオンナットを最後まで締め込んだ状態を示す断面図である。
図3】従来例を示す断面図である。
図4図3のユニオンナットを最後まで締め込んだ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図3及び図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0020】
図1図2に示す如く、本形態例においては、図3及び図4の従来例の場合と同様に、インジェクションパイプ1の管端(一方の管端)とコモンレール側の配管2の管端(他方の管端)とをユニオン継手形式で接続する場合を示しており、インジェクションパイプ1の管端に回動自在に外嵌装着されたソケット型のユニオンナット4(図中の符号4’はユニオンナット4の雌ネジ部を示す)を、コモンレール側の配管2の管端に形成したプラグ型の雄ネジ部5に締め込むことにより、前記インジェクションパイプ1の管端を前記コモンレール側の配管2の管端に突き合わせて接続するようにしている。
【0021】
そして、インジェクションパイプ1の管端とコモンレール側の配管2の管端との継手箇所が、シリンダヘッド3の開口部3aに介装されたガスシール6におけるベルマウス状のリップ部7を貫通して配置されるようになっていて、前記ユニオンナット4が前記ガスシール6のリップ部7を押し拡げながら該リップ部7の窄まり方向(図中の左方向)へ締め込まれて気密が保持されるようにしてあるが、前記ユニオンナット4の先端に前記ガスシール6のリップ部7の拡張前の初期径より小さな外径を成すストレート部11を形成すると共に、該ストレート部11に続き反先端側へ徐々に拡径して前記リップ部7を押し拡げ得る外径となるテーパ部12を形成したところを特徴としている。
【0022】
而して、このようにすれば、図1に示す如く、コモンレール側の配管2の管端に形成したプラグ型の雄ネジ部5にユニオンナット4を締め込むにあたり、該ユニオンナット4の締め始めの段階で先端のストレート部11をガスシール6のリップ部7の内側に大きな抵抗なく差し入れて雄ネジ部5との噛み合わせを図ることが可能となり、また、図2に示す如く、このようにしてユニオンナット4を雄ネジ部5と正常に噛み合わせた後に、更に締め込むことでテーパ部12により徐々にガスシール6のリップ部7を押し拡げ、該リップ部7をユニオンナット4の外周部に密着させて気密を保持させることが可能となる。
【0023】
従って、上記形態例によれば、ユニオンナット4の締め始めの段階で先端のストレート部11をガスシール6のリップ部7の内側に大きな抵抗なく差し入れて雄ネジ部5との噛み合わせを図ることができるので、ユニオンナット4の締め始めの抵抗を少なくして初期手締め時の作業者の負担を大幅に軽減することができ、しかも、ユニオンナット4の雄ネジ部5側との噛み合い状態を探る手加減を作業者に判り易くさせることができるので、ユニオンナット4を確実に正しい姿勢で締め込むことができ、ユニオンナット4が雄ネジ部5に対し斜めに締め込まれてしまっているのに気づかずに強引に締め込みを続けてネジ山やリップ部7を損傷してしまうといった事態を未然に防止することができる。
【0024】
尚、本発明の配管継手構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、必ずしもインジェクションパイプの管端とコモンレール側の配管の管端との接続に限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 インジェクションパイプ
2 コモンレール側の配管
4 ユニオンナット
5 雄ネジ部
6 ガスシール
7 リップ部
8 鍔部
11 ストレート部
12 テーパ部
図1
図2
図3
図4