特許第6177692号(P6177692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6177692結合組織増殖因子(CTGF)をターゲティングするアンチセンス化合物を用いた、ケロイドまたは肥厚性瘢痕の治療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6177692
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】結合組織増殖因子(CTGF)をターゲティングするアンチセンス化合物を用いた、ケロイドまたは肥厚性瘢痕の治療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20170731BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20170731BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20170731BHJP
   A61K 47/34 20170101ALN20170731BHJP
   A61K 47/36 20060101ALN20170731BHJP
   A61K 47/28 20060101ALN20170731BHJP
   A61K 47/12 20060101ALN20170731BHJP
   A61K 47/22 20060101ALN20170731BHJP
   A61K 47/14 20060101ALN20170731BHJP
   A61K 47/18 20060101ALN20170731BHJP
   A61K 47/26 20060101ALN20170731BHJP
   A61K 47/42 20170101ALN20170731BHJP
   A61K 9/127 20060101ALN20170731BHJP
   A61K 9/14 20060101ALN20170731BHJP
   A61K 9/10 20060101ALN20170731BHJP
   A61K 9/06 20060101ALN20170731BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20170731BHJP
【FI】
   A61K31/7088ZMD
   A61K48/00
   A61P17/02
   !A61K47/34
   !A61K47/36
   !A61K47/28
   !A61K47/12
   !A61K47/22
   !A61K47/14
   !A61K47/18
   !A61K47/26
   !A61K47/42
   !A61K9/127
   !A61K9/14
   !A61K9/10
   !A61K9/06
   !C12N15/00 GZNA
【請求項の数】25
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2013-552625(P2013-552625)
(86)(22)【出願日】2012年2月2日
(65)【公表番号】特表2014-505704(P2014-505704A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】US2012023620
(87)【国際公開番号】WO2012106508
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2015年2月2日
(31)【優先権主張番号】61/527,821
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/488,666
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/438,879
(32)【優先日】2011年2月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513196223
【氏名又は名称】エクスカリアード・ファーマシューティカルズ,インク
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ディーン,ニコラス・エム
(72)【発明者】
【氏名】フォークス,ジェイ・ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ハーディー,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ジュエル,マーク
(72)【発明者】
【氏名】クロックマル,リンカーン
(72)【発明者】
【氏名】オドネル,ニール
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,リロイ
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/042281(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/027830(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/027831(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/034784(WO,A1)
【文献】 特表2008−525460(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/107952(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7088
A61K 48/00
A61P 17/02
A61K 9/06
A61K 9/10
A61K 9/127
A61K 9/14
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/18
A61K 47/22
A61K 47/26
A61K 47/28
A61K 47/34
A61K 47/36
A61K 47/42
C12N 15/113
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要がある被験体において、直線状のケロイドを治療するか、あるいは皮膚への直線状の傷害後のケロイドの形成、再形成、または成長を防止するための組成物であって、
配列番号9のヌクレオチド553〜611、718〜751、1388〜1423、1457〜1689、2040〜2069、2120〜2147、2267〜2301、1394〜1423、1469〜1508、1559〜1605、1659〜1689、2100〜2129および1399〜1423、並びに、配列番号10の2728〜2797より選択される領域内に存在するヌクレオチドに相補的である、12〜30の連結ヌクレオシド、少なくとも12核酸塩基配列部分からなる修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含み、そして、
ケロイドまたは皮膚への傷害の部位で、1またはそれより多いスレッディング注射によって、該ケロイドに対する該オリゴヌクレオチドの不規則な効果を減ずる又は防止するのに有効な量で被験体に投与される、ここにおいて、有効量はケロイドまたは皮膚への傷害の直線センチメートルあたりの注射あたり0.1〜50mgの修飾オリゴヌクレオチドである、
前記組成物。
【請求項2】
必要がある被験体において、直線状の肥厚性瘢痕を治療するか、あるいは皮膚への直線状の傷害後の肥厚性瘢痕の形成、再形成、または成長を防止するための組成物であって、
配列番号9のヌクレオチド553〜611、718〜751、1388〜1423、1457〜1689、2040〜2069、2120〜2147、2267〜2301、1394〜1423、1469〜1508、1559〜1605、1659〜1689、2100〜2129および1399〜1423、並びに、配列番号10の2728〜2797より選択される領域内に存在するヌクレオチドに相補的である、12〜30の連結ヌクレオシド、少なくとも12核酸塩基配列部分からなる修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含み、そして、
肥厚性瘢痕または皮膚への傷害の部位で、1またはそれより多いスレッディング注射によって、該肥厚性瘢痕に対する該オリゴヌクレオチドの不規則な効果を減ずる又は防止するのに有効な量で被験体に投与される、ここにおいて、有効量は肥厚性瘢痕または皮膚への傷害の直線センチメートルあたりの注射あたり0.1〜25mgの修飾オリゴヌクレオチドである、前記組成物。
【請求項3】
必要がある被験体において、皮膚への直線状の傷害部位での瘢痕またはケロイドの形成、再形成、または成長を減少させるか、あるいは皮膚への既存の直線状の瘢痕またはケロイドを治療するための組成物であって、
線維症に関与するタンパク質をコードする核酸をターゲティングする修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含み、そして、
皮膚への直線状の傷害部位あるいは皮膚への既存の直線状の瘢痕またはケロイドの部位で、1またはそれより多いスレッディング注射によって、該タンパク質の発現を阻害し、そしてそれによって該瘢痕またはケロイドに対する該オリゴヌクレオチドの不規則な効果を減ずる又は防止するのに有効な量で、被験体に投与される、
前記組成物。
【請求項4】
1またはそれより多い注射が、瘢痕あたり多数回の皮内スレッディング注射を含む、請求項1〜3のいずれか1項の組成物
【請求項5】
必要がある被験体において、皮膚への直線状の傷害部位での線維性病変の形成、再形成、または成長を減少させるか、あるいは皮膚への既存の直線状の線維性病変を治療するための組成物であって、
線維症に関与するタンパク質をコードする核酸をターゲティングする修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含み、そして
皮膚への傷害部位または皮膚への既存の線維性病変の部位で、1またはそれより多いスレッディング注射によって、該タンパク質の発現を阻害し、そしてそれによって該線維性病変に対する該オリゴヌクレオチドの不規則な効果を減ずる又は防止するのに有効な量で、被験体に投与される、
前記組成物。
【請求項6】
線維症に関与するタンパク質が結合組織増殖因子である、請求項3−5のいずれか1項の組成物。
【請求項7】
有効量が、皮膚への傷害または既存の瘢痕の部位の直線センチメートルあたりの注射あたり0.1〜25mgの修飾オリゴヌクレオチドである、請求項3、4、または6のいずれか1項の組成物。
【請求項8】
修飾オリゴヌクレオチドが、2週ごとに少なくとも1回、少なくとも4週間、投与される、請求項1〜7のいずれか1項の組成物。
【請求項9】
修飾オリゴヌクレオチドが、配列番号9のヌクレオチド553〜611、718〜751、1388〜1423、1457〜1689、2040〜2069、2120〜2147、2267〜2301、1394〜1423、1469〜1508、1559〜1605、1659〜1689、2100〜2129および1399〜1423、並びに、配列番号10の2728〜2797より選択される領域内に存在するヌクレオチドに相補的である、12〜30の連結ヌクレオシド、あるいは、少なくとも12核酸塩基配列部分からなる、請求項6の組成物。
【請求項10】
修飾オリゴヌクレオチドの少なくとも12核酸塩基配列部分が、配列番号28、30、39、40、43、44、45、50、51、52、56、78、125、または166に示す配列いずれかに示す核酸塩基配列内に存在する、請求項1、2、または6のいずれか1項の組成物。
【請求項11】
修飾オリゴヌクレオチドが一本鎖オリゴヌクレオチドである、請求項1〜10のいずれか1項の組成物。
【請求項12】
修飾オリゴヌクレオチドが少なくとも1つのオリゴデオキシリボヌクレオチドを含む、請求項1〜10のいずれか1項の組成物。
【請求項13】
修飾オリゴヌクレオチドが、配列番号28、30、39、40、43、44、45、50、51、52、56、78、125、または166に示す配列いずれか1つの部分に、その全長に渡って100%同一である配列を有する、請求項10の組成物。
【請求項14】
修飾オリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間連結を含む、請求項1〜13のいずれか1項の組成物。
【請求項15】
少なくとも1つのヌクレオシドが修飾糖を含む、請求項1〜13のいずれか1項の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つのヌクレオシドが修飾核酸塩基を含む、請求項1〜13のいずれか1項の組成物。
【請求項17】
修飾オリゴヌクレオチドが:
(a)連結デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
(b)連結修飾ヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;および
(c)連結修飾ヌクレオシドからなる3’ウィングセグメント
を含む
ここで、ギャップセグメントが5’ウィングセグメントおよび3’ウィングセグメント間に配置され、そして各ウィングセグメント内の各修飾ヌクレオシドが修飾糖を含む、
請求項1〜13のいずれか1項の組成物。
【請求項18】
修飾オリゴヌクレオチドが:
(a)13の連結デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
(b)2つの連結修飾ヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;および
(c)5つの連結修飾ヌクレオシドからなる3’ウィングセグメント
を含む
ここで、ギャップセグメントが5’ウィングセグメントおよび3’ウィングセグメント間に配置され、各ウィングセグメント内の各修飾ヌクレオシドが2’−O−メトキシエチル糖を含み;そして各ヌクレオシド間連結がホスホロチオエート連結である
請求項17の組成物。
【請求項19】
核酸塩基の配列が配列番号39に示す配列である、請求項10の組成物。
【請求項20】
さらに、第二の化合物が被験体に投与される、請求項1〜19のいずれか1項の組成物。
【請求項21】
修飾オリゴヌクレオチドが、化合物の被験体内への取り込みを増進し、そして/または被験体における滞留時間を増加させる部分とのコンジュゲート中に存在し、滞留時間が7〜60日間である、請求項1〜20のいずれか1項の組成物。
【請求項22】
皮膚への傷害が、外科的切開、生検、皮膚貫通、皮膚除去、火傷、または創傷の結果である、請求項1〜21のいずれか1項の組成物。
【請求項23】
有効量が、ケロイド、肥厚性瘢痕、皮膚への傷害、傷害部位、既存の瘢痕、または既存の線維性病変の直線センチメートルあたりの注射あたり約5mgの修飾オリゴヌクレオチドである、請求項1〜22のいずれか1項の組成物。
【請求項24】
修飾オリゴヌクレオチドが皮内投与される、請求項1〜23のいずれか1項の組成物。
【請求項25】
修飾オリゴヌクレオチドが、スレッディング技術によって皮内投与される、請求項1〜23のいずれか1項の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第61/527,821号、2011年8月26日出願、第61/488,666号、2011年5月20日出願、および第61/438,879号、2011年2月2日出願の優先権を請求し、これらの内容は本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、本出願の一部として2012年2月2日に出願されたテキストファイル中に含有される、サイズ62キロバイトであり、そしてMS−Windowsとオペレーティングシステム適合性を有するIBM−PCマシンフォーマットの「120202_5056_81583_A_PCT_Sequence_Listing_BI.txt」と称されるファイル中に存在するヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を援用する。
【0003】
本出願全体で、多様な特許および刊行物に言及する。これらの特許および刊行物の開示は、本発明が関連する当該技術分野の状態をより完全に記載するため、その全体が、本出願に援用される。
【0004】
発明の分野
本発明は、ケロイドおよび肥厚性瘢痕などの皮膚瘢痕を含む、線維性病変の形成を防止するかまたは該病変を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
アンチセンス化合物は、特定の遺伝子産物の発現を減少させるのに有効な手段であり、そしてこれは、多くの療法適用において、例えば線維症に関与するタンパク質、例えば結合組織増殖因子(CTGF)の発現を調節するためにユニークに有用でありうる(Gaardeらに対する米国特許第6,965,025B2を参照されたい)。
【0006】
アンチセンス化合物は、ターゲット核酸(例えばターゲットmRNA分子)にハイブリダイズ可能であり、そしてターゲット核酸の発現を阻害可能である、オリゴマー化合物である。
【0007】
CTGFの発現を調節するための、そしてCTGFの発現に関連する疾患を治療するための、アンチセンス化合物、組成物、および方法が、米国特許第6,965,025B2に開示される。しかし、CTGF発現の阻害増進、ならびに他の好適な特性を提供可能な、さらなるこうした化合物に関する必要性が依然としてある。
【0008】
結合組織増殖因子(CTGF;また、ctgrofact、線維芽細胞誘導性分泌タンパク質、fisp−12、NOV2、インスリン様増殖因子結合タンパク質関連タンパク質2、IGFBP−rP2、IGFBP−8、HBGF−0.8、Hcs24、およびエコゲニン(ecogenin)としても知られる)は、最初に同定されたファミリーメンバー、結合組織増殖因子、システイン−リッチ(CYR61)、および腎芽腫過剰発現(NOV)にちなむ、モジュラータンパク質のCCN(CTGF/CYR61/NOV)ファミリーのメンバーであるが、該ファミリーにはまた、タンパク質、ELM−1(低転移性細胞で発現される)、WISP−3(Wnt−1誘導性分泌タンパク質)、およびCOP−1(WISP−2)も含まれる。CCNタンパク質は、分泌細胞外マトリックス会合タンパク質であることが見出されてきており、接着、遊走、有糸分裂誘発、分化、生存、血管新生、アテローム性動脈硬化、軟骨形成、創傷治癒、腫瘍形成、ならびに強皮症のような血管および線維性疾患(LauおよびLam, Exp. Cell Res., 1999, 248,44−57)などの細胞プロセスを制御する。結合組織増殖因子タンパク質は、DNA合成を刺激し、そして線維芽細胞の走化性を促進することが示された(Bradhamら, J. Cell Biol., 1991, 114, 1285−1294)。
【0009】
結合組織増殖因子は、細胞外マトリックス(ECM)産生およびリモデリングを伴う正常分化プロセス中、線維芽細胞において発現される。結合組織増殖因子はまた、全身性硬化症、限局性皮膚硬化症、ケロイド、瘢痕組織、好酸球性筋膜炎、結節性筋膜炎、およびデュピュイトラン拘縮などの線維性皮膚障害においてもしばしば過剰発現される。結合組織増殖因子mRNAまたはタンパク質レベルは、肝臓、腎臓、肺、心臓血管系、膵臓、腸、目、および歯肉を含む、主要臓器および組織の線維性病変においても上昇する。重大な結合組織関与によって特徴付けられる、乳房、膵臓、および線維組織球腫瘍においては、結合組織増殖因子は、間質区画で過剰発現される。
【0010】
ケロイド疾患におけるCTGFの役割
ケロイド疾患(KD)は、細胞外マトリックスタンパク質が過剰に集積し、過剰なコラーゲン形成を導くことによって特徴付けられる、良性皮膚線維増殖性腫瘍である。異常な皮膚瘢痕は、遺伝的に感受性である個体において、傷害後に生じうる。KDはまた、家族性状態である可能性もあり、より暗い色の皮膚を持つ民族で、より一般的に生じる。ケロイドの最高発生率は黒人集団において見られ、黒人アフリカ人のランダムな試料において、ほぼ4〜6%、そして最高16%と概算されてきている。KDに関しては、常染色体劣性遺伝から、常染色体優性遺伝まで、遺伝の多様な様式が提唱されており、臨床浸透性は不完全であり、そして多様な発現を伴う。ケロイドの大部分は、かなりの美容上の欠陥につながる可能性もあるが、また、十分に大きく成長して、変形を引き起こすかまたは関節可動性を限定することによって、症候性になる可能性もある。
【0011】
低レベルのCTGFが正常な皮膚で発現されるが、CTGFは、皮膚傷害後に上方制御され、そしてケロイドまたは全身性硬化症におけるように、瘢痕が重症である場合に、持続して過剰発現されるようになる。肥厚性瘢痕、ケロイド、および強皮症病変両方から培養される線維芽細胞は、増加した基礎CTGFを発現し(Exp. Cell Res. 2000, 259:213−224)、そして肥厚性瘢痕およびケロイドから培養される細胞は、基礎的により多くのCTGFを発現し、そしてまたTGF−βでの刺激に反応してより多くのCTGFを生産することが示された(Plast. Reconstr. Surg. 2005, 116:1387−90)。同様に、血清刺激後のCTGFの転写は、細胞培養中の正常線維芽細胞に対してケロイドにおいて、有意により高かった(Ann. Surg. 2007, 246(5):886−95)。
【0012】
ケロイド組織において、CTGF mRNAを発現する線維芽細胞は、病変全体に分布し、特に末梢領域に分布することが見出された(J. Invest. Derm. 1996, 106:729−723)。CTGF mRNA発現レベルが、正常皮膚、ケロイド瘢痕、肥厚性瘢痕、および成熟瘢痕において比較されてきている。CTGF mRNAは、ケロイドのすべての症例で強く検出されるが、成熟瘢痕では検出されなかった。ケロイドおよび正常皮膚において見られるレベル間で有意な相違があった(J. Japan Soc. Plastic Reconstr. Surg. 2002, 22:560−565)。最近のデータはまた、正常線維芽細胞に比較して、ケロイド瘢痕線維芽細胞は、外因性TGF−β1に反応して、正常線維芽細胞の100〜150倍多いCTGFを合成することも示唆する(Plast. Reconstr. Surg. 2005, 116:1387−1390)。正常皮膚に比較した際、ケロイド表皮の基底層に、増加したCTGF局在が見られ、そしてケロイド組織抽出物では、CTGFのより高い発現が観察された(J. Cell Physiol. 2006, 208(2):336−43)。CTGF発現阻害がケロイド成長を阻害することを示すことによって、ケロイド疾患におけるCTGFの役割を検証するデータは、以前には得られていなかった。
【0013】
現在、ケロイド治療または術後のケロイド成長の防止のための有効な単一療法措置は確立されてきていない。現存する療法アプローチには、密封包帯、圧迫療法、病変内ステロイド注射、凍結手術、外科的切除、レーザー治療、放射線療法、ケナログ(トリアムシノロン)、インターフェロン療法、ブレオマイシン、5−フルオロウラシル、ベラパミル、イミキモド・クリーム、およびその組み合わせが含まれる。シリコンに基づくおよびシリコンに基づかない密封包帯はどちらも、最近30年、ケロイドのために広く用いられる選択肢であったが、これらの方法はすべて、非常に限定された有効性しか生じず、そしてケロイドのための新規療法が緊急に必要であることが広く理解されている。
【0014】
ケロイドに関する単一療法として、放射療法の多様な型が試みられてきているが、治療後の発癌性の事例報告があるため、非常に議論の余地があるままである。アルゴン、CO、およびパルス色素を用いたレーザー療法が、最近40年の間、繰り返し試みられてきているが、このいずれも有効とは証明されていない。レーザー療法の3つの型はすべて、多数の研究によれば、最大90%の再発率を有し、ほとんどまたはまったく利益を示さない。凍結療法が単一療法として用いられてきている。しかし、このアプローチに付随する副作用には、療法部位での疼痛、および色素脱失または色素増加が含まれる。コルチコステロイドの一つのタイプである、トリアムシノロンアセトン病変内注射は、しばしば、ケロイドの治療のための第一選択療法として用いられるが、やはり実際に報告される臨床的有効性は非常に多様である。さらに、注射の疼痛、皮膚萎縮症、毛細血管拡張症、および色素沈着改変の副作用とともに、多数回の注射が必要であることが、臨床医および研究者が他の治療手段を探し続ける原因になっている。
【0015】
その結果、ケロイド、肥厚性瘢痕、および他のタイプの線維性病変の形成を有効に防止し、ならびにケロイド、肥厚性瘢痕および線維性病変を治療して、これらを除去するかまたは減少させ、そして/または再発を防止するための、さらなる方法および剤に対する長く感じられてきた必要性が、依然としてある。本明細書記載の臨床的結果は、CTGFをターゲティングするアンチセンスオリゴヌクレオチドが、術後のケロイドの成長および重症度を減少させることが可能であることを初めて明らかに立証する。
【0016】
皮膚内へのアンチセンス投薬
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、皮膚内への投薬後、側方に非常に遠くには拡散しないこともまた初めて立証されており(実施例2を参照されたい)、これによって、投薬が単一のボーラス型投与として行われている場合、直線切開/治癒瘢痕またはケロイドに対するこの種の薬剤の不規則な効果を導き、発展しつつある瘢痕の長さに沿ってアンチセンスの多様な濃度が生じうる。この欠点を克服するため、皮内スレッディング技術によってアンチセンスオリゴヌクレオチドを送達するための方法が開発されてきている。この技術は、瘢痕の全長に沿って一定量のアンチセンス薬剤を有効に送達し、そして瘢痕またはケロイド全長に沿った有効でそして一定の瘢痕減少を生じる。
【0017】
皮内スレッディングは、できる限り皮膚に平行な角度で針を真皮内に導入し、そして典型的には1〜5cmの間の距離で、真皮内を、そして真皮に沿って針を通していくことからなる。この時点で、針を引き抜き、そして針が引き抜かれる際に針の通路全長に沿って真皮内に薬剤が注入され、その結果、等量および等体積の薬剤が、針の通路の全長に沿って沈着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第6,965,025B2
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】LauおよびLam, Exp. Cell Res., 1999, 248,44−57
【非特許文献2】Bradhamら, J. Cell Biol., 1991, 114, 1285−1294
【非特許文献3】Exp. Cell Res. 2000, 259:213−224
【非特許文献4】Plast. Reconstr. Surg. 2005, 116:1387−90
【非特許文献5】Ann. Surg. 2007, 246(5):886−95
【非特許文献6】J. Invest. Derm. 1996, 106:729−723
【非特許文献7】J. Japan Soc. Plastic Reconstr. Surg. 2002, 22:560−565
【非特許文献8】J. Cell Physiol. 2006, 208(2):336−43
【発明の概要】
【0020】
本発明は、必要がある被験体において、ケロイドを治療するか、あるいは皮膚への傷害後のケロイドの形成、再形成、または成長を防止するための方法であって、ケロイドまたは皮膚への傷害の部位で、1またはそれより多い注射によって、配列番号9のヌクレオチド553〜611、718〜751、1388〜1423、1457〜1689、2040〜2069、2120〜2147、2728〜2797、2267〜2301、1394〜1423、1469〜1508、1559〜1605、1659〜1689、2100〜2129および1399〜1423より選択される領域内に存在する12〜30の連結ヌクレオシド、少なくとも12核酸塩基配列部分からなる修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含む組成物を、ケロイドを治療するか、あるいはケロイドの形成、再形成、または成長を防止するのに有効な量で被験体に投与する工程を含み、有効量がケロイドまたは皮膚への傷害の直線センチメートルあたりの注射あたり0.1〜50mgの修飾オリゴヌクレオチドである、前記方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、必要がある被験体において、肥厚性瘢痕を治療するか、あるいは皮膚への傷害後の肥厚性瘢痕の形成、再形成、または成長を防止するための方法であって、肥厚性瘢痕または皮膚への傷害の部位で、1またはそれより多い注射によって、配列番号9のヌクレオチド553〜611、718〜751、1388〜1423、1457〜1689、2040〜2069、2120〜2147、2728〜2797、2267〜2301、1394〜1423、1469〜1508、1559〜1605、1659〜1689、2100〜2129および1399〜1423より選択される領域内に存在する12〜30の連結ヌクレオシド、少なくとも12核酸塩基配列部分からなる修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含む組成物を、肥厚性瘢痕を治療するか、あるいは肥厚性瘢痕の形成、再形成、または成長を防止するのに有効な量で被験体に投与する工程を含み、有効量が肥厚性瘢痕または皮膚への傷害の直線センチメートルあたりの注射あたり0.1〜25mgの修飾オリゴヌクレオチドである、前記方法も提供する。
【0022】
本発明はさらに、必要がある被験体において、皮膚への傷害部位での瘢痕またはケロイドの形成、再形成、または成長を減少させるか、あるいは既存の瘢痕またはケロイドを治療する方法であって、傷害部位あるいは既存の瘢痕またはケロイドの部位で、1またはそれより多いスレッディング注射によって、線維症に関与するタンパク質をコードする核酸をターゲティングする修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含む組成物を、該タンパク質の発現を阻害し、そしてそれによって傷害部位での瘢痕またはケロイド形成、再形成、または成長を減少させるか、あるいは既存の瘢痕またはケロイドを治療するのに有効な量で、被験体に投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0023】
本発明はなおさらに、必要がある被験体において、傷害部位での線維性病変の形成、再形成、または成長を減少させるか、あるいは既存の線維性病変を治療する方法であって、傷害部位または既存の線維性病変部位で、1またはそれより多いスレッディング注射によって、線維症に関与するタンパク質をコードする核酸をターゲティングする修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含む組成物を、該タンパク質の発現を阻害し、そしてそれによって傷害部位での線維性病変の形成、再形成、または成長を減少させるか、あるいは既存の線維性病変を治療するのに有効な量で、被験体に投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、2’MOE含有アンチセンスオリゴヌクレオチドが、皮内注射によって投与された際、ウサギ皮膚において、比較的短い距離(〜0.5−1.0cm)に渡って拡散することを示す(実施例2に記載する)。
図2図2は、動物モデルにおけるケロイドのCTGFアンチセンスオリゴヌクレオチドでの処置が、マウスに移植した損なわれていないヒトケロイド組織において、CTGF(図2A)およびCol3a1(図2B)mRNA発現の両方の減少を生じたことを示す(実施例3に記載する)。
図3図3は、CTGFアンチセンスオリゴヌクレオチド(EXC 001または配列番号39)での処置が、ヒトにおいて瘢痕修正手術の24週後、肥厚性瘢痕およびケロイド両方の成長を阻害することを示す。図の各セットの下のスコアは、プラセボおよびEXC 001処置ケロイド間の改善の度合いを表す。負のスコアは、EXC 001処置から生じる瘢痕における改善を表す。図3Aは、瘢痕修正手術の24週後のプラセボおよびEXC 001処置した肥厚性瘢痕を示す。図3Bは、瘢痕修正手術の24週後のプラセボおよびEXC 001処置したケロイド瘢痕を示す(実施例4に記載する)。
図4図4は、CTGFアンチセンスオリゴヌクレオチド(EXC 001または配列番号39)での処置が、腹部形成術の12週後、肥厚性瘢痕の形成および成長を阻害することを示す。図の下のスコアは、プラセボおよびEXC 001処置瘢痕間の改善の度合いを表す。負のスコアは、EXC 001処置から生じる瘢痕における改善を表す(実施例5に記載する)。
図5図5は、瘢痕に隣接して投薬した際のEXC 001の限定された拡散を示す(実施例5に記載する)。瘢痕右側の腹部形成術瘢痕(垂直な線の右側)部分を、EXC 001で処置し、一方、垂直な線の左の瘢痕にはいかなる処置も行わなかった。明らかに、右側の瘢痕重症度は左側より低い。本例は、EXC 001療法利益が、皮内スレッディングによる薬剤送達部位にすぐ隣接した瘢痕領域に限定されていることを立証する。したがって、薬剤は、投与部位から離れると限定された拡散しか示さないようであり、そして例えば皮内スレッディングによって、潜在的な瘢痕部位にすぐ隣接し、そしてその全長に沿って投与する必要があるであろう。
図6図6は、EXC 001が肥厚性瘢痕の成長および形成を減少させる能力の例を示す(実施例6に記載する)。この例では、2つのマッチする2cm腹部瘢痕を示し、一方を5mg/cm EXC 001で処置し、そして一方をプラセボで処置した。EXC 001処置瘢痕の重症度は、プラセボ処置瘢痕より低い。これらの2つの瘢痕の組織学的分析はまた、CTGFタンパク質の発現がEXC 001仲介性に減少することもまた明らかにし(免疫組織化学による)、EXC 001が、意図されるターゲット(CTGF)の発現を減少させる機能を果たすことを明らかに立証する。
図7-1】図7は、多様な時点の処置での多様な遺伝子の腹部瘢痕におけるmRNA発現に対するEXC 001の影響を示す(実施例6に記載する)。図7Aは、CTGF mRNA発現を抑制する際のEXC 001の影響を示す。図7Bは、コラーゲンIII−a1(Col3A1)mRNA発現を抑制する際のEXC 001の影響を示す。図7Cは、エラスチン(ELASF)mRNA発現を抑制する際のEXC 001の影響を示す。図7DおよびEは、プラセボに比較した際、EXC 001によって、SMAD3またはTGF−β1 mRNA発現いずれの有意な阻害もなかったことを示す。
図7-2】図7は、多様な時点の処置での多様な遺伝子の腹部瘢痕におけるmRNA発現に対するEXC 001の影響を示す(実施例6に記載する)。図7Aは、CTGF mRNA発現を抑制する際のEXC 001の影響を示す。図7Bは、コラーゲンIII−a1(Col3A1)mRNA発現を抑制する際のEXC 001の影響を示す。図7Cは、エラスチン(ELASF)mRNA発現を抑制する際のEXC 001の影響を示す。図7DおよびEは、プラセボに比較した際、EXC 001によって、SMAD3またはTGF−β1 mRNA発現いずれの有意な阻害もなかったことを示す。
図7-3】図7は、多様な時点の処置での多様な遺伝子の腹部瘢痕におけるmRNA発現に対するEXC 001の影響を示す(実施例6に記載する)。図7Aは、CTGF mRNA発現を抑制する際のEXC 001の影響を示す。図7Bは、コラーゲンIII−a1(Col3A1)mRNA発現を抑制する際のEXC 001の影響を示す。図7Cは、エラスチン(ELASF)mRNA発現を抑制する際のEXC 001の影響を示す。図7DおよびEは、プラセボに比較した際、EXC 001によって、SMAD3またはTGF−β1 mRNA発現いずれの有意な阻害もなかったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、必要がある被験体において、ケロイドを治療するか、あるいは皮膚への傷害後のケロイドの形成、再形成、または成長を防止するための方法であって、ケロイドまたは皮膚への傷害の部位で、1またはそれより多い注射によって、配列番号9のヌクレオチド553〜611、718〜751、1388〜1423、1457〜1689、2040〜2069、2120〜2147、2728〜2797、2267〜2301、1394〜1423、1469〜1508、1559〜1605、1659〜1689、2100〜2129および1399〜1423より選択される領域内に存在する12〜30の連結ヌクレオシド、少なくとも12核酸塩基配列部分からなる修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含む組成物を、ケロイドを治療するか、あるいはケロイドの形成、再形成、または成長を防止するのに有効な量で被験体に投与する工程を含み、有効量がケロイドまたは皮膚への傷害の直線センチメートルあたりの注射あたり0.1〜50mgの修飾オリゴヌクレオチドである、前記方法を提供する。
【0026】
本発明はまた、必要がある被験体において、肥厚性瘢痕を治療するか、あるいは皮膚への傷害後の肥厚性瘢痕の形成、再形成、または成長を防止するための方法であって、肥厚性瘢痕または皮膚への傷害の部位で、1またはそれより多い注射によって、配列番号9のヌクレオチド553〜611、718〜751、1388〜1423、1457〜1689、2040〜2069、2120〜2147、2728〜2797、2267〜2301、1394〜1423、1469〜1508、1559〜1605、1659〜1689、2100〜2129および1399〜1423より選択される領域内に存在する12〜30の連結ヌクレオシド、少なくとも12核酸塩基配列部分からなる修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含む組成物を、肥厚性瘢痕を治療するか、あるいは肥厚性瘢痕の形成、再形成、または成長を防止するのに有効な量で被験体に投与する工程を含み、有効量が肥厚性瘢痕または皮膚への傷害の直線センチメートルあたりの注射あたり0.1〜25mgの修飾オリゴヌクレオチドである、前記方法も提供する。
【0027】
本発明はさらに、必要がある被験体において、皮膚への傷害部位での瘢痕またはケロイドの形成、再形成、または成長を減少させるか、あるいは既存の瘢痕またはケロイドを治療する方法であって、傷害部位あるいは既存の瘢痕またはケロイドの部位で、1またはそれより多いスレッディング注射によって、線維症に関与するタンパク質をコードする核酸をターゲティングする修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含む組成物を、該タンパク質の発現を阻害し、そしてそれによって傷害部位での瘢痕またはケロイド形成、再形成、または成長を減少させるか、あるいは既存の瘢痕またはケロイドを治療するのに有効な量で、被験体に投与する工程を含む、前記方法を提供する。本発明はなおさらに、必要がある被験体において、傷害部位での線維性病変の形成、再形成、または成長を減少させるか、あるいは既存の線維性病変を治療する方法であって、傷害部位または既存の線維性病変部位で、1またはそれより多いスレッディング注射によって、線維症に関与するタンパク質をコードする核酸をターゲティングする修飾オリゴヌクレオチド、あるいはその塩またはエステルを含む組成物を、該タンパク質の発現を阻害し、そしてそれによって傷害部位での線維性病変の形成、再形成、または成長を減少させるか、あるいは既存の線維性病変を治療するのに有効な量で、被験体に投与する工程を含む、前記方法を提供する。
【0028】
先行する方法の1つの態様において、1またはそれより多いスレッディング注射は、瘢痕あたり多数回の皮内スレッディング注射を含む。
【0029】
先行する方法において、線維症に関与するタンパク質は、結合組織増殖因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ−1、マザーズ・アゲインスト・デカペンタプレジック相同体−3、初期増殖反応−1、単球走化性タンパク質−1、コラーゲン、またはエラスチンであってもよい。適切なコラーゲンの例は、コラーゲン3A1、コラーゲン1A2、およびコラーゲン1A1である。
【0030】
本発明の方法の特定の態様において、有効量は、皮膚への傷害または既存の瘢痕の部位の直線センチメートルあたりの注射あたり0.1〜50mg、例えば0.1〜25mgの修飾オリゴヌクレオチドである。
【0031】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、2週ごとに少なくとも1回、少なくとも4週間、すなわち少なくとも2回投与する。
【0032】
他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、3週ごとに少なくとも1回、少なくとも6週間、すなわち少なくとも2回投与する。
【0033】
さらに他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、4週ごとに少なくとも1回、少なくとも8週間、投与する。さらに他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、8週ごとに少なくとも1回、少なくとも16週間、投与する。
【0034】
現在、修飾オリゴヌクレオチドを、少なくとも9週間の期間に渡って、例えば少なくとも26週間の期間に渡って投与することが好ましい可能性もあると意図される。
【0035】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号9のヌクレオチド553〜611、718〜751、1388〜1423、1457〜1689、2040〜2069、2120〜2147、2728〜2797、2267〜2301、1394〜1423、1469〜1508、1559〜1605、1659〜1689、2100〜2129および1399〜1423からなる群より選択される領域内に存在する12〜30の連結ヌクレオシド、少なくとも12核酸塩基配列部分からなる。
【0036】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドの少なくとも12核酸塩基配列部分は、配列番号28、30、39、40、43、44、45、50、51、52、56、78、125、または166に示す配列いずれかに示す核酸塩基内に存在する。
【0037】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは、少なくとも14、例えば20の連結ヌクレオシドからなる。
【0038】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは一本鎖オリゴヌクレオチドである。他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは二本鎖オリゴヌクレオチドである。
【0039】
さらに他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのオリゴデオキシリボヌクレオチドまたは少なくとも1つのオリゴリボヌクレオチドを含む。
【0040】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号28、30、39、40、43、44、45、50、51、52、56、78、125、または166に示す配列いずれか1つの部分に、その全長に渡って100%同一である配列を有する。
【0041】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間連結、例えばいくつかまたはすべてのヌクレオシド間連結がホスホチオエートヌクレオシド間連結であってもよいように、ホスホチオエートヌクレオシド間連結を含む。
【0042】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチド中の少なくとも1つのヌクレオシドは修飾糖、例えば二環糖を含む。いくつかのこうした態様において、修飾糖の少なくとも1つは2’−O−メトキシエチルを含む。
【0043】
他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのテトラヒドロピラン修飾ヌクレオシドを含み、ここでテトラヒドロピラン環はフラノース環を置換する。
【0044】
いくつかのこうした態様において、少なくとも1つのテトラヒドロピラン修飾ヌクレオシドは、構造:
【0045】
【化1】
【0046】
式中、Bxは場合によって保護された複素環塩基部分である
を有する。
【0047】
特定の態様において、少なくとも1つのヌクレオシドは、修飾核酸塩基、例えば修飾デオキシヌクレオシド、リボヌクレオシド、または5’−メチルシトシンを含む。
【0048】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは:
(a)連結デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
(b)連結修飾ヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;および
(c)連結修飾ヌクレオシドからなる3’ウィングセグメント
を含む
ここで、ギャップセグメントが5’ウィングセグメントおよび3’ウィングセグメント間に配置され、そして各ウィングセグメント内の各修飾ヌクレオシドが修飾糖を含む。
【0049】
特定の現在好ましい態様において、修飾オリゴヌクレオチドは:
(a)13の連結デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
(b)2つの連結修飾ヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;および
(c)5つの連結修飾ヌクレオシドからなる3’ウィングセグメント
を含む
ここで、ギャップセグメントが5’ウィングセグメントおよび3’ウィングセグメント間に配置され、各ウィングセグメント内の各修飾ヌクレオシドが2’−O−メトキシエチル糖を含み;そして各ヌクレオシド間連結がホスホロチオエート連結である。
【0050】
特定の態様において、核酸塩基の配列は配列番号39に示す配列である。
【0051】
他の態様において、核酸塩基の配列は配列番号40に示す配列である。
【0052】
さらに他の態様において、核酸塩基の配列は配列番号45に示す配列である。
【0053】
さらに他の態様において、核酸塩基の配列は配列番号52に示す配列である。
【0054】
さらに他の態様において、核酸塩基の配列は配列番号166に示す配列である。
【0055】
特定の態様において、組成物は修飾オリゴヌクレオチドまたはその塩、および薬学的に許容されうるキャリアーまたは希釈剤を含む。
【0056】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは、ケロイドを治療するか、ケロイドの形成、再形成、または成長を防止するか、肥厚性瘢痕を治療するか、肥厚性瘢痕の形成、再形成、または成長を防止するか、傷害部位での瘢痕形成を減少させるか、既存の瘢痕を治療するか、傷害部位での線維性病変の形成を減少させるか、あるいは既存の線維性病変を治療するために、コラーゲンまたはエラスチンあるいは両方の発現を直接または間接的に阻害する。
【0057】
先行する方法は、第二の化合物を被験体に投与する工程をさらに含むことが現在意図される。
【0058】
特定の態様において、第二の化合物は、同じまたは異なる配列をターゲティングするアンチセンス化合物であってもよく、そして修飾オリゴヌクレオチドおよび第二の化合物を同時にまたは連続して投与してもよい。
【0059】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは、化合物の被験体内への取り込みを増進し、そして/または被験体における化合物の滞留時間を増加させる部分とのコンジュゲート中に存在し、滞留時間が好ましくは7〜60日間である。コンジュゲート部分は、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、コレステロール、アダマンチン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O−(ヘキサデシル)グリセロール、ヘキサデシルグリセロール、ヘキサデシルアミン、ゲラニルオキシヘキシル、パルミチン酸、ミリスチン酸、スペルミン、スペルミジン、葉酸、ビタミンE、炭水化物クラスター、ペプチド(アンテナペディアらせん、HIV Tat断片、インテグリン結合ペプチドを含む)、トランスポーチン、またはポルフィリンである。
【0060】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、化合物の被験体内への取り込みを増進し、そして/または被験体における滞留時間を増加させ、滞留時間が好ましくは7〜60日間である、送達系中で投与する。送達系は、陽イオン性脂質、リポソーム、マイクロ粒子、ナノ粒子、即時放出のために溶液中に薬剤を含むもしくは含まない懸濁粒子、または粒子(特にPLGAおよびポリArg粒子)中の薬剤デポを含む、液体配合物、熱硬化性/反応性液(例えばプルロニックジェル)などの注射後にゲル化する液体配合物、溶媒が体液によって希釈された際に沈降する生体適合性溶媒(例えばアトリジェル(atrigel))中のポリマーおよび薬剤を含有する液体、ゲル、ヒドロゲルなどの半固体配合物(マトリックス裏打ちを含むかまたはスプレー溶液として)、手術中にまき散らされる粉末、吸収性縫合糸、あるいは迅速溶解ゲルまたはポリマー片を含む。
【0061】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、ケロイド、瘢痕、または線維性病変の外科的切除後に、被験体に投与する。
【0062】
特定の態様において、皮膚への傷害は、外科的切開、生検、皮膚貫通、皮膚除去、火傷、または創傷の結果である。
【0063】
特定の態様において、有効量は、ケロイド、肥厚性瘢痕、皮膚への傷害、傷害部位、既存の瘢痕、または既存の線維性病変の直線センチメートルあたりの注射あたり約5mgの修飾オリゴヌクレオチドである。
【0064】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを最長6ヶ月間投与する。他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを最長1年間投与する。
【0065】
特定の態様において、先行する方法は、別の療法剤を被験体に投与する工程をさらに含み、こうした別の療法剤は、ステロイド、シリコンラップ、TGF−β3(すなわちJuvista)、コラゲナーゼ(すなわちXyflex)、17β−エストラジオール(すなわちZesteem)、IL−10(すなわちPrevascar)、マンノース6リン酸(すなわちJuvidex)、平滑筋弛緩剤(すなわちAZX100、24アミノ酸合成ペプチド)、幹細胞療法(すなわちGBT009)、血清アミロイドタンパク質、インテグリンαvβ6、CTGF、TGFβ、またはALK−4および/またはALK−5(TGFベータ受容体)の活性を阻害する分子をターゲティングする抗体、TNF活性を遮断するように設計された任意の阻害剤(例えばエタネルセプト)、密封包帯、圧迫療法、凍結手術、外科的切除、レーザー治療、放射線療法、インターフェロン療法、ブレオマイシン、5−フルオロウラシル、ベラパミル、イミキモド・クリーム、創傷治癒を促進可能なもの、例えばDermagraft、Apligraf、PDGF(すなわちRegranex)、電気刺激、カテゴリーとしての「増殖因子」、カテゴリーとしての包帯剤、小腸粘膜下層(SIS)、Promogran、高圧酸素、あるいはその組み合わせであってもよい。
【0066】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、配合、超音波、エレクトロポレーション、イオントフォレーシスまたはマイクロニードルによって投与する。
【0067】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、ケロイド、肥厚性瘢痕、皮膚への傷害、傷害部位、既存の瘢痕、または既存の線維性病変に隣接して投与する。
【0068】
他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、ケロイド、肥厚性瘢痕、皮膚への傷害、傷害部位、既存の瘢痕、または既存の線維性病変の全長に沿って投与する。
【0069】
さらに他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、ケロイド、肥厚性瘢痕、皮膚への傷害、傷害部位、既存の瘢痕、または既存の線維性病変の各側に沿って投与する。
【0070】
さらに他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、ケロイド、肥厚性瘢痕、皮膚への傷害、傷害部位、既存の瘢痕、または既存の線維性病変内に直接投与する。
【0071】
特定の態様において、被験体は、ケロイドまたは肥厚性瘢痕あるいは両方の形成に遺伝的に素因がある。
【0072】
特定の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを皮内投与する。
【0073】
他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを、スレッディング技術によって皮内投与する。
【0074】
さらに他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを皮下投与する。
【0075】
さらに他の態様において、修飾オリゴヌクレオチドを局所投与する。
【0076】
本発明はまた:
a.修飾オリゴヌクレオチドを含む組成物があらかじめ充填されているデバイス;および
b.使用のための説明書
を含む、キットも提供する。
【0077】
特定の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ターゲット部位1396〜1424に渡って広がる活性オリゴヌクレオチドによってターゲティングされるCTGF領域部分に相補的である。これは、オリゴ418899、412295および412294/EXC 001(それぞれ、配列番号166、40および39)によってターゲティングされる配列空間である。
【0078】
本発明はまた、少なくとも12、好ましくは少なくとも14の連結ヌクレオシドであって、その核酸塩基配列が、配列番号28、30、39、40、43、44、45、50、51、52、56、78、125、または166に示す核酸塩基配列の1つの部分である前記ヌクレオシドを含む修飾オリゴヌクレオチドも提供する。
【0079】
本明細書記載のアンチセンス化合物は、12〜30、12〜20、そして好ましくは14〜20の連結ヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドを含んでもよい。
【0080】
本発明の1つの態様において、修飾オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドであってもよい。
【0081】
本発明は、線維症に関与するタンパク質をコードする核酸分子の機能を調節し、産生されるタンパク質の量を最終的に調節する際に使用するために、オリゴマー化合物、特にアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する。これは、線維症に関与するタンパク質をコードする1またはそれより多い核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物を提供することによって達成される。本明細書において、用語「ターゲット核酸」および「結合組織増殖因子をコードする核酸」は、線維症に関与するタンパク質をコードするDNA、こうしたDNAから転写されるRNA(プレmRNAおよびmRNA)、およびまた、こうしたRNAから得られるcDNAを含む。
【0082】
オリゴマー化合物とターゲット核酸の特異的ハイブリダイゼーションは、該核酸の正常機能に干渉する。特異的にハイブリダイズする化合物によるターゲット核酸の機能のこの調節は、一般的に「アンチセンス」と称される。干渉されるDNAの機能には、複製および転写が含まれる。干渉されるRNAの機能には、重要な機能、例えばタンパク質翻訳部位へのRNAの転位置、RNAからのタンパク質の翻訳、1またはそれより多いmRNA種を生じるためのRNAのスプライシング、およびRNAにおいて関与しうるまたはRNAによって促進されうる触媒活性が含まれる。ターゲット核酸機能へのこうした干渉の総合的な影響は、結合組織増殖因子の発現調節である。本発明の背景において、「調節」は、遺伝子発現の増加(刺激)または減少(阻害)のいずれかを意味する。本発明の背景において、阻害が遺伝子発現調節の好ましい型であり、そしてmRNAが好ましいターゲットである。
【0083】
ターゲット核酸、ターゲット領域およびヌクレオチド配列
アンチセンスのため、特定の核酸をターゲティングすることが好ましい。本発明の背景において、特定の核酸に対するアンチセンス化合物の「ターゲティング」は、多工程プロセスである。
【0084】
本明細書に含有される実施例中の各配列番号に示す配列は、糖部分、ヌクレオシド間連結、または核酸塩基に対するいかなる修飾からも独立であると理解される。こうしたものとして、配列番号によって定義されるアンチセンス化合物は、独立に、糖部分、ヌクレオシド間連結、または核酸塩基に対する1またはそれより多い修飾を含むことも可能である。Isis番号(Isis No)によって記載されるアンチセンス化合物は、核酸塩基配列およびモチーフの組み合わせを示す。
【0085】
1つの態様において、ターゲット領域は、核酸の構造的に定義される領域である。例えば、ターゲット領域は、3’UTR、5’UTR、エクソン、イントロン、コーディング領域、翻訳開始領域、翻訳終結領域、または他の定義される核酸領域を含んでもよい。核酸に関して構造的に定義される領域を、NCBIなどの配列データベースから、寄託番号によって得ることも可能であり、そしてこうした情報は、本明細書に援用される。他の態様において、ターゲット領域は、ターゲット領域内の1つのターゲットセグメントの5’ターゲット部位から、ターゲット領域内の別のターゲットセグメントの3’ターゲット部位までの配列を含んでもよい。
【0086】
ターゲティングには、望ましい影響が生じるような、アンチセンス化合物がハイブリダイズする少なくとも1つのターゲットセグメントの決定が含まれる。特定の態様において、望ましい影響は、mRNAターゲット核酸レベルにおける減少である。他の態様において、望ましい影響は、ターゲット核酸によってコードされるタンパク質のレベルの減少、またはターゲット核酸に関連する表現型変化である。
【0087】
ターゲット領域は、1またはそれより多いターゲットセグメントを含有してもよい。ターゲット領域内の多数のターゲットセグメントは、重複していてもよい。あるいは、これらは重複していなくてもよい。1つの態様において、ターゲット領域内のターゲットセグメントは、約300ヌクレオチドを超えずに分離している。他の態様において、ターゲット領域内のターゲットセグメントは、ターゲット核酸上で、約250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、または10ヌクレオチドを超えずに分離されている。別の態様において、ターゲット領域内のターゲットセグメントは、ターゲット核酸上で、約5ヌクレオチドを超えずに分離されている。さらなる態様において、ターゲットセグメントは連続性である。
【0088】
適切なターゲットセグメントは、5’UTR、コーディング領域、3’UTR、イントロン、またはエクソン内に見出されうる。開始コドンまたは停止コドンを含有するターゲットセグメントもまた、適切なターゲットセグメントである。適切なターゲットセグメントは、特異的に、開始コドンまたは停止コドンなどの、特定の構造的に定義される領域を排除しうる。
【0089】
適切なターゲットセグメントの決定には、ゲノム全体の他の配列に、ターゲット核酸の配列を比較することを含んでもよい。例えば、BLASTアルゴリズムを用いて、異なる核酸の間で類似性領域を同定してもよい。この比較は、選択したターゲット核酸以外の配列(すなわち非ターゲットまたはオフターゲット配列)に、非特異的な方式でハイブリダイズ可能なアンチセンス化合物配列の選択を防止しうる。
【0090】
活性ターゲット領域内のアンチセンス化合物には、活性の変動がありうる(例えばターゲット核酸レベルの減少パーセントによって定義されるようなもの)。1つの態様において、CTGF mRNAレベルの減少は、CTGF発現阻害の指標である。CTGFタンパク質レベルの減少はまた、ターゲットmRNA発現阻害の指標でもある。さらに、表現型変化は、CTGF発現阻害の指標である。
【0091】
アンチセンス化合物
本発明の背景において、用語「オリゴヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)あるいはその擬似体のオリゴマーまたはポリマーを指す。この用語には、天然存在核酸塩基、糖および共有ヌクレオシド間(主鎖)連結で構成されるオリゴヌクレオチド、ならびに同様に機能する非天然存在部分を有するオリゴヌクレオチドが含まれる。こうした修飾または置換オリゴヌクレオチドは、しばしば、天然型よりも好ましく、これは例えば細胞取り込み増進、核酸ターゲットに対するアフィニティの増進およびヌクレアーゼの存在下での安定性増加などの望ましい特性を有するためである。
【0092】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンス化合物の好ましい型であるが、本発明は、限定されるわけではないが、オリゴヌクレオチド擬似体を含む、他のオリゴマーアンチセンス化合物を包含する。
【0093】
アンチセンス化合物は、水素結合を通じてターゲット核酸に対するハイブリダイゼーションを経ることが可能なオリゴマー化合物を意味する。アンチセンス化合物には、限定されるわけではないが、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、オリゴヌクレオチド類似体、オリゴヌクレオチド擬似体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、RNAi、リボザイム、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド(オリゴザイム)、およびターゲット核酸にハイブリダイズし、そしてその発現を調節する他のオリゴヌクレオチドが含まれる。
【0094】
特定の態様において、アンチセンス化合物は、5’から3’方向に書いた際、ターゲティングするターゲット核酸のターゲットセグメントの逆相補体を含む、核酸塩基配列を有する。特定のこうした態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’から3’方向に書いた際、ターゲティングするターゲット核酸のターゲットセグメントの逆相補体を含む、核酸塩基配列を有する。
【0095】
特定の態様において、核酸をターゲティングするアンチセンス化合物は、長さ12〜30サブユニットである。言い換えると、アンチセンス化合物は、12〜30の連結サブユニットである。他の態様において、アンチセンス化合物は、8〜80、12〜50、15〜30、18〜24、19〜22、または20の連結サブユニットである。特定のこうした態様において、アンチセンス化合物は、長さ8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、または80、あるいは上記値の任意の2つによって定義される範囲の連結サブユニットである。いくつかの態様において、アンチセンス化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、そして連結サブユニットはヌクレオチドである。
【0096】
本発明の1つの好ましい態様において、化合物は、20または少なくとも14の連結ヌクレオシドを含み、ここで修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号28、30、39、40、45、52、56、78、125、または166に示す配列の1つに100%同一である配列を有する。別の好ましい態様において、関心対象のリード化合物は、配列番号39に示す配列を有する(ISIS 412294)。
【0097】
特定の態様において、核酸をターゲティングする短縮または一部切除(truncated)アンチセンス化合物は、5’端から(5’一部切除)、あるいは3’端から(3’一部切除)欠失した単一のサブユニットを有する。核酸をターゲティングする短縮または一部切除アンチセンス化合物は、アンチセンス化合物の5’端から欠失した2つのサブユニットを有してもよいし、あるいは3’端から欠失した2つのサブユニットを有してもよい。あるいは、欠失ヌクレオシドは、アンチセンス化合物全体に分散していてもよく、例えば5’端から欠失した1つのヌクレオシドおよび3’端から欠失した1つのヌクレオシドを有してもよい。
【0098】
延長したアンチセンス化合物中に単一のさらなるサブユニットが存在する場合、さらなるサブユニットは、アンチセンス化合物の5’または3’端に位置してもよい。2またはそれより多いさらなるサブユニットが存在する場合、付加されるサブユニットは、互いに隣接していてもよく、例えばアンチセンス化合物の5’端に付加された(5’付加)、あるいは3’端に付加された(3’付加)2つのサブユニットを有してもよい。あるいは、付加されるサブユニットは、アンチセンス化合物全体に分散していてもよく、例えば5’端に付加された1つのサブユニットおよび3’端 に付加された1つのサブユニットを有してもよい。
【0099】
活性を除去することなく、アンチセンス化合物、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドの長さを増加させるかまたは減少させ、そして/またはミスマッチ塩基を導入することが可能である。例えば、Woolfら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7305−7309, 1992)において、卵母細胞注入モデルにおいて、ターゲットRNAの切断を誘導する能力に関して、長さ13〜25核酸塩基の一連のアンチセンスオリゴヌクレオチドが試験された。アンチセンスオリゴヌクレオチドの末端近くに8または11ミスマッチ塩基を含む、長さ25核酸塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ミスマッチをまったく含有しないアンチセンスオリゴヌクレオチドより低い度合いではあったが、ターゲットmRNAの特異的切断を導くことが可能であった。同様に、1または3ミスマッチを含むものを含めて、13核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、ターゲット特異的切断が達成された。
【0100】
Gautschiら(J. Natl. Cancer Inst. 93:463−471, March 2001)は、bcl−2 mRNAに100%相補性を有し、そしてbcl−xL mRNAに3つのミスマッチを有するオリゴヌクレオチドが、bcl−2およびbcl−xLの両方の発現をin vitroおよびin vivoで減少させる能力を立証した。さらに、このオリゴヌクレオチドは、in vivoで強力な抗腫瘍活性を立証した。
【0101】
MaherおよびDolnick(Nuc. Acid. Res. 16:3341−3358, 1988)は、一連のタンデム14核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびにそれぞれ2または3のタンデムアンチセンスオリゴヌクレオチドで構成される28および42核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチドを、ウサギ網状赤血球アッセイにおいて、ヒトDHFRの翻訳を抑止する能力に関して試験した。28または42核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチドよりも穏やかなレベルではあったが、3つの14核酸塩基アンチセンスオリゴヌクレオチドは各々、単独で、翻訳を阻害可能であった。
【0102】
Bhanotら(PCT/US2007/068401)は、長さ8〜16モノマーの化学的に修飾された高アフィニティモノマーを含む化合物を含む、短いアンチセンス化合物を提供した。これらの短いアンチセンス化合物は、細胞、組織、および動物において、増加した強度および改善された療法指標で、ターゲット核酸および/またはタンパク質を減少させるのに有用であることが示された。短いアンチセンス化合物は、先に記載されたアンチセンス化合物よりも低い用量で有効であり、毒性および治療コストを減少させることが可能であった。さらに、記載される短いアンチセンス化合物は、経口投薬に関してより大きな潜在能力を有する。
【0103】
ハイブリダイゼーション
1またはそれより多いターゲット部位が同定されたら、ターゲットに十分に相補的である、すなわち十分によく、そして十分な特異性でハイブリダイズして、望ましい効果を生じるオリゴヌクレオチドを選択する。
【0104】
本発明の背景において、「ハイブリダイゼーション」は、相補性ヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基間のワトソン−クリック、フーグスティーンまたは逆フーグスティーン水素結合であってもよい水素結合を意味する。例えば、アデニンおよびチミンは、水素結合の形成を通じて対形成する相補的核酸塩基である。
【0105】
同一性
本明細書に提供するアンチセンス化合物はまた、特定のヌクレオチド配列、配列番号、または特定のオリゴ(Isis)番号によって示される化合物に対して、定義される同一性パーセントも有しうる。本明細書において、アンチセンス化合物は、同じ核酸塩基対形成能を有する場合、本明細書開示の配列に同一である。例えば、開示するDNA配列中のチミジンの代わりにウラシルを含有するRNAは、ウラシルおよびチミジンはどちらもアデニンと対形成するため、DNA配列と同一と見なされるであろう。本明細書記載の短縮および延長型のアンチセンス化合物、ならびに本明細書に提供するアンチセンス化合物と比較して、非同一塩基を有する化合物もまた意図される。非同一塩基は、互いに隣接していてもよいし、またはアンチセンス化合物全体に分散していてもよい。アンチセンス化合物の同一性パーセントは、比較中の配列に比較して、同一である塩基対を有する塩基の数にしたがって計算される。
【0106】
1つの態様において、アンチセンス化合物は、本明細書に開示するアンチセンス化合物または配列番号、あるいはその一部の1またはそれより多くに、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である。
【0107】
修飾
本発明の特定の態様において、アンチセンス化合物に対する修飾は、ヌクレオシド間連結、糖部分、または核酸塩基に対する置換または変化を含む。
【0108】
本発明の1つの態様において、化合物は、修飾ヌクレオシド間連結、修飾糖、および修飾核酸塩基からなる群より選択される少なくとも1つの修飾を含む。
【0109】
多様な修飾ヌクレオシド間連結を含有するアンチセンスオリゴヌクレオチドが使用可能であるが、現在好ましい修飾ヌクレオシド間連結は、1またはそれより多いヌクレオシド間のホスホチオエート連結であるか、あるいはすべてのヌクレオシド間連結がホスホチオエートヌクレオシド間連結であるものである。
【0110】
一般的に、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つのそして典型的には1より多い修飾糖を含有し、該糖が二環糖であることもまた望ましい。多様な修飾糖を使用可能であるが、現在、2’−O−メトキシエチル糖を使用することが好ましい。
【0111】
さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチド中に含有される少なくとも1つのそして典型的には1より多い核酸塩基が5−メチルシトシンなどの修飾ヌクレオチドであろう。
【0112】
ヌクレオシドは、塩基−糖の組み合わせである。ヌクレオシドの核酸塩基(塩基としても知られる)部分は、通常、複素環塩基部分である。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合するリン酸基をさらに含むヌクレオチドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドに関しては、リン酸基を糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分に連結してもよい。隣接ヌクレオシドを互いに共有連結させることによって、オリゴヌクレオチドを形成し、直鎖ポリマー性オリゴヌクレオチドを形成する。オリゴヌクレオチド構造内で、リン酸基は、一般的に、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間連結を形成すると称される。
【0113】
アンチセンス化合物に対する修飾は、ヌクレオシド間連結、糖部分、または核酸塩基への置換または変化を含む。修飾アンチセンス化合物は、しばしば、天然型よりも好ましく、これは例えば細胞取り込み増進、核酸ターゲットに対するアフィニティの増進およびヌクレアーゼの存在下での安定性増加、または阻害活性増加などの望ましい特性を有するためである。
【0114】
また、短縮または一部切除アンチセンスオリゴヌクレオチドの、そのターゲット核酸に対する結合アフィニティを増加させるため、化学的修飾ヌクレオシドを使用してもよい。その結果、こうした化学的修飾ヌクレオシドを有するより短いアンチセンス化合物で、しばしば匹敵する結果が得られうる。
【0115】
修飾ヌクレオシド間連結
RNAおよびDNAの天然存在ヌクレオシド間連結は、3’から5’のホスホジエステル連結である。1またはそれより多い修飾された、すなわち非天然存在のヌクレオシド間連結を有するアンチセンス化合物は、しばしば、天然存在ヌクレオシド間連結を有するアンチセンス化合物よりも選択され、これは例えば細胞取り込み増進、ターゲット核酸に対するアフィニティの増進、およびヌクレアーゼの存在下での安定性増加などの望ましい特性を有するためである。
【0116】
修飾ヌクレオシド間連結を有するオリゴヌクレオチドには、リン原子を保持するヌクレオシド間連結、ならびにリン原子を持たないヌクレオシド間連結が含まれる。代表的なリン含有ヌクレオシド間連結には、限定されるわけではないが、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホロアミデート、およびホスホロチオエートが含まれる。リン含有および非リン含有連結の調製法が周知である。
【0117】
1つの態様において、CTGF核酸をターゲティングするアンチセンス化合物は、1またはそれより多い修飾ヌクレオシド間連結を含む。いくつかの態様において、修飾ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエート連結である。他の態様において、アンチセンス化合物の各ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0118】
当該技術分野に知られるように、ヌクレオシドは塩基−糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は、通常、複素環塩基である。こうした複素環塩基の2つの最も一般的なクラスは、プリンおよびピリミジンである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドに関しては、リン酸基を糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分に連結してもよい。オリゴヌクレオチドを形成する際、リン酸基は互いに、隣接するヌクレオシドと共有結合して、直鎖ポリマー性化合物を形成する。
【0119】
次に、この直鎖ポリマー性構造のそれぞれの端をさらに連結して、環状構造を形成してもよいが、開放直鎖構造が一般的には好ましい。オリゴヌクレオチド構造内で、リン酸基は一般的に、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間主鎖を形成すると称される。RNAおよびDNAの正常な連結または主鎖は、3’から5’へのホスホジエステル連結である。
【0120】
本発明で有用な好ましいアンチセンス化合物の特定の例には、修飾主鎖または非天然ヌクレオシド間連結を含有するオリゴヌクレオチドが含まれる。本明細書に定義するように、修飾主鎖を有するオリゴヌクレオチドには、主鎖中にリン原子を保持するもの、および主鎖中にリン原子を持たないものが含まれる。本明細書の目的のため、そしてときに当該技術分野において言及されるように、ヌクレオシド間主鎖中にリン原子を持たない修飾オリゴヌクレオチドもまた、オリゴヌクレオシドと見なされうる。
【0121】
好ましい修飾オリゴヌクレオチド主鎖には、例えばホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデートを含むホスホロアミデート、チオノ−ホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、正常3’−5’連結を有するセレノホスフェートおよびボラノホスフェート、これらの2’−5’連結類似体、ならびに1またはそれより多いヌクレオチド間連結が、3’から3’、5’から5’または2’から2’連結である反転極性を有するものが含まれる。反転極性を有する好ましいオリゴヌクレオチドは、最も3’のヌクレオチド間連結で単一の3’から3’連結、すなわち無塩基性(核酸塩基が失われているか、またはヒドロキシル基がその代わりにある)であってもよい、単一の反転ヌクレオシド残基を含む。多様な塩、混合塩および遊離酸型もまた含まれる。
【0122】
上記リン含有連結の調製を解説する代表的な米国特許には、限定されるわけではないが、米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;第5,194,599号;第5,565,555号;第5,527,899号;第5,721,218号;第5,672,697号および第5,625,050号が含まれ、このうち特定のものが、本出願と共同所有され、そしてこれらは各々、本明細書に援用される。
【0123】
リン原子を含まない好ましい修飾オリゴヌクレオチド主鎖は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間連結、混合ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルヌクレオシド間連結、あるいは1またはそれより多い短鎖ヘテロ原子または複素環ヌクレオシド間連結によって形成される主鎖を有する。これらには、モルホリノ連結(部分的にヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;リボアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖;ならびに混合N、O、SおよびCH構成要素部分を有する他のものを有するものが含まれる。
【0124】
上記オリゴヌクレオシドの調製を解説する代表的な米国特許には、限定されるわけではないが、米国特許第5,034,506号;第5,166,315号;第5,185,444号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,235,033号;第5,264,562号;第5,264,564号;第5,405,938号;第5,434,257号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,541,307号;第5,561,225号;第5,596,086号;第5,602,240号;第5,610,289号;第5,602,240号;第5,608,046号;第5,610,289号;第5,618,704号;第5,623,070号;第5,663,312号;第5,633,360号;第5,677,437号;第5,792,608号;第5,646,269号および第5,677,439号が含まれ、このうち特定のものが、本出願と共同所有され、そしてこれらは各々、本明細書に援用される。
【0125】
他の好ましいオリゴヌクレオチド擬似体において、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間連結、すなわち主鎖の両方が、新規基によって置換される。塩基単位を、適切な核酸ターゲット化合物とのハイブリダイゼーションのために維持する。1つのこうしたオリゴマー化合物、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド擬似体は、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖−主鎖は、アミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置換される。核酸塩基は保持され、そして直接または間接的に、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に結合する。PNA化合物の調製を解説する代表的な米国特許には、限定されるわけではないが、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号が含まれ、これらは各々、本明細書に援用される。PNA化合物のさらなる解説は、Nielsenら, Science, 1991, 254, 1497−1500にさらに見出されうる。
【0126】
本発明の最も好ましい態様は、ホスホロチオエート主鎖を持つオリゴヌクレオチドおよびヘテロ原子主鎖を持つオリゴヌクレオシドであり、そして特に、上に引用する米国特許第5,489,677号の−CH−NH−O−CH−、−CH−N(CH)−O−CH−(メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として知られる)、−CH−O−N(CH)−CH−、−CH−N(CH)−−N(CH)−CH−および−O−N(CH)−CH−CH−(天然ホスホジエステル主鎖は−O−P−O−CH−として示される)、ならびに上に引用する米国特許第5,602,240号のアミド主鎖を持つものである。やはり好ましいのは、上に引用する米国特許第5,034,506号のモルホリノ主鎖構造を有するオリゴヌクレオチドである。
【0127】
修飾糖部分
修飾オリゴヌクレオチドはまた、1またはそれより多い置換糖部分を含有しうる。例えば、置換基での置換、二環核酸「BNA」を形成する架橋、ならびに本明細書にその全体が援用される、Sethらに対する米国特許第7,399,845号に記載されるようなSまたはN(R)などのヘテロ原子での4’−Oの置換を含む、多くの方法でフラノシル糖環を修飾可能である。BNAの他の例は、本明細書にその全体が援用される、公開国際特許出願第WO2007/146511号に記載される。
【0128】
本発明のアンチセンス化合物は、場合によって、修飾糖部分を有する1またはそれより多いヌクレオチドを含有してもよい。糖修飾は、アンチセンス化合物に対して、ヌクレアーゼ安定性、結合アフィニティまたは何らかの他の有益な生物学的特性を与えうる。ヌクレオシドのフラノシル糖環は、限定されるわけではないが:置換基の特に2’位での付加;二環核酸(BNA)を形成する2つの非ジェミナル環原子の架橋;および−S−、−N(R)−またはC(R1)(R2)などの原子または基の、4’位の環酸素に対する置換を含む、多くの方式で修飾可能である。修飾糖には、限定されるわけではないが:置換糖、特に2’−F、2’−OCH2(2’−OMe)または2’−O(CH2)2−OCH3(2’−O−メトキシエチルまたは2’−MOE)置換基を有する2’−置換糖;および4’−(CH2)n−O−2’架橋、式中、n=1またはn=2、を有する、二環修飾糖(BNA)が含まれる。修飾糖の調製のための方法は、当業者に周知である。
【0129】
特定の態様において、2’−修飾ヌクレオシドは、二環糖部分を有する。特定のこうした態様において、二環糖部分は、アルファ立体配置にあるD糖である。特定のこうした態様において、二環糖部分は、ベータ立体配置にあるD糖である。特定のこうした態様において、二環糖部分は、アルファ立体配置にあるL糖である。特定のこうした態様において、二環糖部分は、ベータ立体配置にあるL糖である。
【0130】
特定の態様において、二環糖部分は、2’および4’−炭素原子間の架橋基を含む。特定のこうした態様において、架橋基は、1〜8の連結ビラジカル基を含む。特定の態様において、二環糖部分は、1〜4の連結ビラジカル基を含む。特定の態様において、二環糖部分は、2または3の連結ビラジカル基を含む。特定の態様において、二環糖部分は、2つの連結ビラジカル基を含む。特定の態様において、連結ビラジカル基は、−O−、−S−、−N(R1)−、−C(R1)(R2)−、−C(R1)=C(R1)−、−C(R1)=N−、−C(=NR1)−、Si(R1)(R2)−、−S(=O)2−、−S(=O)−、−C(=O)−および−C(=S)−;式中、各R1およびR2は独立に、H、ヒドロキシル、C1〜C12アルキル、置換C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、置換C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、置換C2〜C12アルキニル、C5〜C20アリール、置換C5〜C20アリール、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C5〜C7脂環ラジカル、置換C5〜C7脂環ラジカル、ハロゲン、置換オキシ(−O−)、アミノ、置換アミノ、アジド、カルボキシル、置換カルボキシル、アシル、置換アシル、CN、チオール、置換チオール、スルホニル(S(=O)2−H)、置換スルホニル、スルホキシル(S(=O)−H)または置換スルホキシルであり;そして各置換基は独立に、ハロゲン、C1〜C12アルキル、置換C1〜C12アルキル、C2〜C12アルケニル、置換C2〜C12アルケニル、C2〜C12アルキニル、置換C2〜C12アルキニル、アミノ、置換アミノ、アシル、置換アシル、C1〜C12アミノアルキル、C1〜C12アミノアルコキシ、置換C1〜C12アミノアルキル、置換C1〜C12アミノアルコキシまたは保護基である、より選択される。
【0131】
いくつかの態様において、二環糖部分は、O−(CH)p−、O−CH−、−O−CHCH−、−O−CH(アルキル)−、−NH−(CH)p−、N(アルキル)−(CH)p−、−O−CH(アルキル)−、−(CH(アルキル))−(CH)p−、−NH−O(CH)p−、−N(アルキル)−O−(CH)p−、または−O−N(アルキル)−(CH)p−、式中、pは1、2、3、4または5であり、そして各アルキル基はさらに置換されていてもよい、より選択されるビラジカル基で、2’および4’炭素原子間を架橋される。特定の態様において、pは1、2、または3である。
【0132】
1つの側面において、前記架橋は各々独立に、−[C(R1)(R2)]n−、−[C(R1)(R2)]n−O−、−C(R1R2)−N(R1)−O−または−C(R1R2)−O−N(R1)−である。別の側面において、前記架橋は各々独立に、4’−(CH−2’、4’−(CH−2’、4’−CH−O−2’、4’−(CH−O−2’、4’−CH−O−N(R1)−2’および4’−CH−N(R1)−O−2’−、式中、R1は独立に、H、保護基またはC1〜C12アルキルである、である。
【0133】
修飾糖部分を有するヌクレオチドにおいて、核酸塩基部分(天然、修飾またはその組み合わせ)は、適切な核酸ターゲットとのハイブリダイゼーションのため維持される。
【0134】
1つの態様において、核酸をターゲティングするアンチセンス化合物は、修飾糖部分を有する1またはそれより多いヌクレオチドを含む。好ましい態様において、修飾糖部分は2’−MOEである。他の態様において、2’−MOE修飾ヌクレオチドをギャップマーモチーフに配置する。
【0135】
現在好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下の1つを含む:OH;F;O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;O−、S−、またはN−アルキニル;あるいはO−アルキル−O−アルキルであって、該アルキル、アルケニルおよびアルキニルが、C〜C12アルキルまたはC〜C12アルケニルおよびアルキニルで置換されていることもまたは非置換であることも可能であるもの。特に好ましいのは、O[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONH、およびO(CHON[(CHCHであって、nおよびmが1〜約10であるものである。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、2’位に以下の1つを含む:C〜C10の低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルまたはO−アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、挿入剤(intercalator)、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善するための基、および同様の特性を有する他の置換基。好ましい修飾には、2’−メトキシエトキシ(2’−O−CHCHOCH、2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても知られる)(Martinら, Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486−504)、すなわちアルコキシアルコキシ基が含まれる。さらなる好ましい修飾には、2’−DMAOEとしても知られる2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CHON(CH基、および2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野において、2’−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’−DMAEOEとしても知られる)、すなわち2’−O−−CH−−O−−CH−−N(CHが含まれる。さらなる好ましい修飾には、2’−ヒドロキシル基が糖環の3’または4’炭素原子に連結されて、それによって二環糖部分が形成される、二環核酸(ロック化核酸(LNA)としても知られる)が含まれる。連結は好ましくは、2’酸素原子および4’炭素原子を架橋するメチレン(−−CH−−)基、式中nは1または2である、であり、a−L−メチレンオキシ(4’−CH2−O−2’)BNA、β−D−メチレンオキシ(4’−CH2−O−2’)BNAおよびエチレンオキシ(4’−(CH2)−O−2’)BNAが含まれる。二環修飾糖にはまた、(6’S)−6’メチルBNA、アミノオキシ(4’−CH2−O−N(R)−2’)BNA、オキシアミノ(4’−CH2−N(R)−O−2’)BNA、式中、Rは独立に、H、保護基、またはC1〜C12アルキルである、が含まれる。LNAはまた、相補DNA、RNAまたはLNAと高い熱アフィニティで二重鎖を形成する。円二色性(CD)スペクトルは、完全修飾LNAを含む二重鎖(特にLNA:RNA)が、A型RNA:RNA二重鎖と構造的に似ていることを示す。LNA:DNA二重鎖の核磁気共鳴(NMR)検査によって、LNAモノマーが3’−エンドコンホメーションであることが確認された。二本鎖DNAの認識もまた立証されてきており、LNAによる鎖侵入が示唆されている。ミスマッチ配列を研究することによって、LNAが、対応する非修飾参照鎖に比較して、一般的に改善された選択性を伴って、ワトソン−クリック塩基対形成規則にしたがっていることが示される。
【0136】
LNAでは、2’ヒドロキシル基が糖環の4’炭素原子に連結し、それによって2’−C、4’−C−オキシメチレン連結を形成し、それによって二環糖部分を形成している。連結は、2’酸素原子および4’炭素原子を架橋しているメチレン(−CH−)基、式中、nは1または2である、であってもよい(Singhら, Chem. Commun., 1998, 4, 455−456)。LNAおよびLNA類似体は、相補的DNAおよびRNAとの、3’−エキソヌクレアーゼ分解に対して非常に高い二重鎖熱安定性(Tm=+3〜+10℃)、および優れた可溶性特性を示す。他の好ましい架橋基には、2’−デオキシ−2’−CHOCH−4’架橋が含まれる。LNAおよびその調製は、公開国際特許出願第WO98/39352号および第WO99/14226号に記載される。
【0137】
他の好ましい修飾には、2’−メトキシ(2’−O−CH)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCHCHCHNH)、2’−アリル(2’−CH−CH=CH)、2’−−O−アリル(2’−O−CH−CH=CH)および2’−フルオロ(2’−F)が含まれる。2’−修飾は、アラビノ(上)位またはリボ(下)位であることも可能である。好ましい2’−アラビノ修飾は、2’−Fである。同様の修飾はまた、オリゴヌクレオチド上の他の位、特に3’末端ヌクレオチド上のまたは2’−5’連結オリゴヌクレオチド内の糖の3’位、および5’末端ヌクレオチドの5’位で行うことも可能である。オリゴヌクレオチドはまた、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部分などの糖擬似体または代替物(ときにDNA類似体と称される)を有することも可能である。こうした修飾糖構造の調製を解説する代表的な米国特許には、限定されるわけではないが、米国特許第4,981,957号;第5,118,800号;第5,319,080号;第5,359,044号;第5,393,878号;第5,446,137号;第5,466,786号;第5,514,785号;第5,519,134号;第5,567,811号;第5,576,427号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,610,300号;第5,627,053号;第5,639,873号;第5,646,265号;第5,658,873号;第5,670,633号;第5,792,747号;および第5,700,920号が含まれ、このうち特定のものが、本出願と共同所有され、そしてこれらは各々、その全体が本明細書に援用される。特定の態様において、ヌクレオシドは、モルホリノ環、シクロヘキセニル環、シクロヘキシル環またはテトラヒドロピラニル環などの代替環系、例えば式:
【0138】
【化2】
【0139】
の1つを有するものでリボシル環を置換することによって修飾される。
【0140】
アンチセンス化合物に取り込むためのヌクレオシドを修飾するのに使用可能な、多くの他のビシクロおよびトリシクロ糖代替環系もまた、当該技術分野に知られる(例えば総説:Leumann, Christian J.を参照されたい)。こうした環系は、活性を増進させるため、さらなる多様な置換を経てもよい。
【0141】
本発明の1つの態様において、化合物は、少なくとも1つのテトラヒドロピラン修飾ヌクレオシドを含み、ここで、テトラヒドロピラン環がフラノース環を置換する。
【0142】
本発明の別の態様において、少なくとも1つのテトラヒドロピラン修飾ヌクレオシドは、構造:
【0143】
【化3】
【0144】
式中、Bxは、場合によって保護された複素環塩基部分である
を有する。
【0145】
修飾核酸塩基
オリゴヌクレオチドにはまた、核酸塩基(当該技術分野において、しばしば単に「塩基」と称される)修飾または置換が含まれることも可能である。核酸塩基修飾または置換は、天然存在または合成非修飾核酸塩基とは構造的に異なるが、なお機能的に交換可能である。天然および修飾核酸塩基は、水素結合に関与可能である。こうした核酸塩基修飾は、アンチセンス化合物に対して、ヌクレアーゼ安定性、結合アフィニティまたはいくつかの他の有益な生物学的特性を与えうる。修飾核酸塩基には、合成および天然核酸塩基、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)が含まれる。ターゲット核酸に対するアンチセンス化合物の結合アフィニティを増加させるには、5−メチルシトシン置換を含む特定の核酸塩基置換が特に有用である。例えば、5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されてきている(Sanghvi, Y.S., Crooke, S.T.およびLebleu, B.監修, Antisense Research and Applications, CRC Press, ボカラトン, 1993, pp.276−302)。
【0146】
さらなる非修飾核酸塩基には、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニル(−C≡C−CH)ウラシルおよびシトシンおよびピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニン類およびグアニン類、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシル類およびシトシン類、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが含まれる。
【0147】
複素環塩基部分にはまた、プリン塩基またはピリミジン塩基が、他の複素環、例えば7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジンおよび2−ピリドンで置換されたものが含まれることも可能である。アンチセンス化合物の結合アフィニティを増加させるのに特に有用である核酸塩基には、5−置換ピリミジン類、6−アザピリミジン類、ならびにN−2、N−6およびO−6置換プリン類が含まれ、2アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンが含まれる。
【0148】
1つの態様において、CTGF核酸をターゲティングするアンチセンス化合物は、1またはそれより多い修飾核酸塩基を含む。さらなる態様において、CTGF核酸にターゲティングされた、ギャップ拡大化アンチセンスオリゴヌクレオチドは、1またはそれより多い修飾核酸塩基を含む。いくつかの態様において、修飾核酸塩基は、5−メチルシトシンである。さらなる態様において、各シトシンは、5−メチルシトシンである。
【0149】
本明細書において、「非修飾」または「天然」核酸塩基には、プリン塩基、アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基、チミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、他の合成および天然核酸塩基が含まれ、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニル(−C≡C−CH)ウラシルおよびシトシンおよびピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニン類およびグアニン類、5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシル類およびシトシン類、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが含まれる。さらなる修飾核酸塩基には、三環ピリミジン、例えばフェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)、G−クランプ、例えば置換フェノキサジンシチジン(例えば9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾキサジン−2(3H)−オン)、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[4,5−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)が含まれる。修飾核酸塩基にはまた、プリン塩基またはピリミジン塩基が、他の複素環、例えば7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジンおよび2−ピリドンで置換されたものが含まれることも可能である。さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, 858−859ページ, Kroschwitz, J.I.監修, John Wiley & Sons, 1990に開示されるもの、Englischら, Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に開示されるもの、およびSanghvi, Y.S., 第15章, Antisense Research and Applications, 289−302ページ, Crooke, S.T.およびLebleu, B.監修, CRC Press, 1993に開示されるものが含まれる。これらの核酸塩基の特定のものは、本発明のオリゴマー化合物の結合アフィニティを増加させるのに特に有用である。これらには、5−置換ピリミジン類、6−アザピリミジン類、ならびにN−2、N−6およびO−6置換プリン類が含まれ、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンが含まれる。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖安定性を、0.6〜1.2℃増加させることが示されてきており(Sanghvi, Y.S., Crooke, S.T.およびLebleu, B.監修, Antisense Research and Applications, CRC Press, ボカラトン, 1993, pp.276−278)、そして現在、好ましい塩基置換であり、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合、さらにより好ましい。
【0150】
上記修飾核酸塩基ならびに他の修飾核酸塩基の特定のものの調製を解説する代表的な米国特許には、限定されるわけではないが、上記の米国特許第3,687,808号、ならびに米国特許第4,845,205号;第5,130,302号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,594,121号、第5,596,091号;第5,614,617号;第5,645,985号;第5,830,653号;第5,763,588号;第6,005,096号;および第5,681,941号が含まれ、このうち特定のものが、本出願と共同所有され、そしてこれらは各々、本明細書に援用され、そして本出願と共通の所有者を有し、そしてまた本明細書に援用される第5,750,692号も含まれる。
【0151】
アンチセンス化合物モチーフ
本発明の特定の態様において、化合物は、(a)連結デオキシヌクレオシドからなる、好ましくは13の連結修飾デオキシヌクレオシドからなる、ギャップセグメント;(b)連結修飾ヌクレオシドからなる、好ましくは2つの連結修飾ヌクレオシドからなる、5’ウィングセグメント;および(c)連結修飾ヌクレオシドからなる、好ましくは5つの連結ヌクレオシドからなる、3’ウィングセグメントで構成される修飾オリゴヌクレオチドであって;ギャップセグメントが5’ウィングセグメントおよび3’ウィングセグメントの間に配置され、そして各ウィングセグメント内の各修飾ヌクレオシドが修飾糖を含み、好ましくは2’−O−メトキシエチル糖を含み;そして各ヌクレオシド間連結がホスホロチオエート連結である、前記修飾オリゴヌクレオチドを含む。
【0152】
アンチセンス化合物中の修飾ヌクレオチドのこれらのパターンはモチーフと呼ばれる。これらのモチーフは、アンチセンス化合物に、阻害活性を増進させるか、ターゲット核酸に対する結合アフィニティを増加させるか、またはin vivoヌクレアーゼによる分解に対する耐性を増加させる特性を与える。
【0153】
特定の態様において、CTGF核酸に対してターゲティングされるアンチセンス化合物は、アンチセンス化合物に、阻害活性を増進させるか、ターゲット核酸に対する結合アフィニティを増加させるか、またはin vivoヌクレアーゼによる分解に対する耐性を増加させる特性を与えるパターンで配置される化学的に修飾されたサブユニット、またはモチーフを有する。
【0154】
キメラアンチセンス化合物は、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加、細胞取り込み増加、ターゲット核酸に対する結合アフィニティ増加、および/または阻害活性増加を与えるように修飾される少なくとも1つの領域を含有する。キメラアンチセンス化合物の第二の領域は、場合によって、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞性エンドヌクレアーゼ、RNアーゼHのための基質として働いてもよい。
【0155】
ギャップマーモチーフを有するアンチセンス化合物は、キメラアンチセンス化合物と見なされる。ギャップマーにおいて、RNアーゼH切断を支持する複数のヌクレオチドを有する内部領域は、内部領域のヌクレオシドとは化学的に別個である複数のヌクレオチドを有する外部領域の間に配置される。ギャップマーモチーフを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、ギャップセグメントは、一般的に、エンドヌクレアーゼ切断の基質として働き、一方、ウィングセグメントは修飾ヌクレオシドを含む。好ましい態様において、ギャップマーの領域は、各別個の領域を含む糖部分のタイプによって区別される。ギャップマーの領域を区別するために用いられる糖部分のタイプには、いくつかの態様において、β−D−リボヌクレオシド、β−D−デオキシ−リボヌクレオシド、2’−修飾ヌクレオシド(こうした2’−修飾ヌクレオシドには、とりわけ、2’−MOE、および2’−O−CHが含まれてもよい)、および二環糖修飾ヌクレオシド(こうした二環糖修飾ヌクレオシドには、4’−(CH2)n−O−2’架橋、式中、n=1またはn=2、を有するものが含まれてもよい)が含まれてもよい。好ましくは、各別個の領域は、均一な糖部分を含む。ウィング−ギャップ−ウィングモチーフは、しばしば、「X−Y−Z」、式中、「X」は5’ウィング領域の長さを示し、「Y」はギャップ領域の長さを示し、そして「Z」は3’ウィング領域の長さを示す、と記載される。本明細書記載のアンチセンス化合物はいずれも、ギャップマーモチーフを有してもよい。いくつかの態様において、XおよびZは同じであり、他の態様において、これらは異なる。好ましい態様において、Yは、8〜15ヌクレオチドの間である。X、YまたはZは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30ヌクレオチドまたはそれより多いヌクレオチドのいずれであってもよい。したがって、本発明のギャップマーには、限定されるわけではないが、例えば、2−13−5、5−10−5、4−8−4、4−12−3、4−12−4、3−14−3、2−16−2、1−18−1、3−10−3、2−10−2、1−10−1または2−8−2が含まれる。
【0156】
いくつかの態様において、「ウィングマー」モチーフとしてのアンチセンス化合物は、ウィング−ギャップまたはギャップ−ウィング立体配置、すなわちギャップマー立体配置に関して上述するような、X−YまたはY−Z立体配置を有する。したがって、本発明のウィングマー立体配置には、限定されるわけではないが、例えば、5−10、8−4、4−12、12−4、3−14、16−2、18−1、10−3、2−10、1−10または8−2が含まれる。
【0157】
1つの態様において、核酸をターゲティングするアンチセンス化合物は、2−13−5のギャップマーモチーフを所持する。
【0158】
いくつかの態様において、CTGF核酸をターゲティングするアンチセンス化合物は、ギャップ拡大モチーフを有する。他の態様において、CTGF核酸をターゲティングするアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ギャップ拡大モチーフを有する。
【0159】
1つの態様において、CTGF核酸をターゲティングするギャップ拡大アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3つの化学的に修飾されたヌクレオシドのウィングセグメントの間に配置された、14の2’−デオキシリボヌクレオチドのギャップセグメントを有する。1つの態様において、化学修飾は、2’−糖修飾を含む。別の態様において、化学修飾は、2’−MOE糖修飾を含む。
【0160】
ギャップマーモチーフを有するアンチセンス化合物は、「キメラ」アンチセンス化合物または「キメラ」と見なされ、各々少なくとも1つのモノマー単位、すなわちオリゴヌクレオチド化合物の場合、ヌクレオチドで構成される、2またはそれより多い化学的に異なる領域を含有する。これらのオリゴヌクレオチドは、典型的には、ヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加、細胞取り込み増加、ターゲット核酸に対する結合アフィニティ増加および/または阻害活性増加を与えるように修飾されている、少なくとも1つの領域を含有する。所定の化合物のすべての位が均質に修飾されていることは必要ではなく、そして実際、上述の修飾の1より多くが、単一の化合物に、またはオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドに取り込まれていることさえ可能である。
【0161】
オリゴヌクレオチドのさらなる領域は、RNA:DNAハイブリッドまたはRNA:RNAハイブリッドを切断することが可能な酵素の基質として働くことも可能である。例として、RNアーゼHは、RNA:DNA二重鎖のRNA鎖を切断する細胞性エンドヌクレアーゼである。RNアーゼHの活性化は、したがって、RNAターゲットの切断を生じ、それによって、遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害効率を非常に増進させる。その結果、キメラオリゴヌクレオチドを用いた場合、同じターゲット領域にハイブリダイズするホスホロチオエート・デオキシオリゴヌクレオチドに比較して、より短いオリゴヌクレオチドで、匹敵する結果を得ることも、しばしば可能である。RNAターゲットの切断は、ゲル電気泳動、および必要な場合、当該技術分野に知られる会合核酸ハイブリダイゼーション技術によって、ルーチンに検出可能である。
【0162】
本発明のキメラアンチセンス化合物は、2またはそれより多い上述のようなオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、および/またはオリゴヌクレオチド擬似体の混成構造として形成されることも可能である。こうした化合物はまた、当該技術分野に、ハイブリッドまたはギャップマーと称されてきている。こうしたハイブリッド構造の調製を解説する、代表的な米国特許には、限定されるわけではないが、米国特許第5,013,830号;第5,149,797号;第5,220,007号;第5,256,775号;第5,366,878号;第5,403,711号;第5,491,133号;第5,565,350号;第5,623,065号;第5,652,355号;第5,652,356号;および第5,700,922号が含まれ、このうち特定のものが、本出願と共同所有され、そしてこれらは各々、その全体が本明細書に援用される。
【0163】
ギャップマーモチーフを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、ギャップセグメントは、一般的に、エンドヌクレアーゼ切断の基質として働き、一方、ウィングセグメントは修飾ヌクレオシドを含む。好ましい態様において、ギャップマーの領域は、各別個の領域を含む糖部分のタイプによって区別される。ギャップマーの領域を区別するために用いられる糖部分のタイプには、β−D−リボヌクレオシド、β−D−デオキシリボヌクレオシド、2’−修飾ヌクレオシド(こうした2’−修飾ヌクレオシドには、2’−MOEが含まれてもよい)、および二環糖修飾ヌクレオシドが含まれうる。
【0164】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取り込みを増進する、1またはそれより多い部分またはコンジュゲートを、オリゴヌクレオチドに化学的に連結することを伴う。本発明の化合物には、一級または二級ヒドロキシル基などの官能基に共有結合したコンジュゲート基が含まれてもよい。本発明のコンジュゲート基には、挿入剤、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学特性を増進する基、およびオリゴマーの薬物動態特性を増進する基が含まれる。典型的なコンジュゲート基には、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、フォレート、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および色素が含まれる。薬力学特性を増進する基には、本発明の関連において、オリゴマー取り込みを改善する基、分解に対するオリゴマー耐性を増進する基、および/またはRNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基が含まれる。薬物動態特性を増進する基には、本発明の関連において、オリゴマー取り込み、分布、代謝または排出を改善する基が含まれる。代表的なコンジュゲート基は、本明細書にその全開示が援用される、国際特許出願PCT/US92/09196、1992年10月23日出願に開示される。コンジュゲート部分には、限定されるわけではないが、脂質部分、例えばコレステロール部分(Letsingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553−6556)、コール酸(Manoharanら, Bioorg. Med. Chem. Let., 1994, 4, 1053−1060)、チオエーテル、例えば、ヘキシル−S−トリチルチオール(Manoharanら, Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306−309; Manoharanら, Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765−2770)、チオコレステロール(Oberhauserら, Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533−538)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison−Behmoarasら, EMBO J., 1991, 10, 1111−1118; Kabanovら, FEBS Lett., 1990, 259, 327−330; Svinarchukら, Biochimie, 1993, 75, 49−54)、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたはトリエチルアンモニウム 1,2−ジ−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホネート(Manoharanら, Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651−3654; Sheaら, Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777−3783)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら, Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969−973)、あるいはアダマンタン酢酸(Manoharanら, Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651−3654)、パルミチル部分(Mishraら, Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229−237)、あるいはオクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crookeら, J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923−937)が含まれる。本発明のオリゴヌクレオチドを、活性薬剤物質、例えばアスピリン、ワーファリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、スプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、(S)−(+)−プラノプロフェン、カルプロフェン、ダンシルザルコシン、2,3,5−トリヨード安息香酸、フルフェナム酸、フォリン酸、ベンゾチアジアジド、クロロチアジド、ジアゼピン、インドメタシン、バルビツレート、セファロスポリン、サルファ剤、抗糖尿病剤、抗細菌剤または抗生物質にコンジュゲート化することもまた可能である。オリゴヌクレオチド−薬剤コンジュゲートおよびその調製は、本明細書にその全体が援用される米国特許出願第09/334,130号(1999年6月15日出願)に記載される。
【0165】
こうしたオリゴヌクレオチド・コンジュゲートの調製を解説する代表的な米国特許には、限定されるわけではないが、米国特許第4,828,979号;第4,948,882号;第5,218,105号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,578,717号;第5,580,731号;第5,580,731号;第5,591,584号;第5,109,124号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,414,077号;第5,486,603号;第5,512,439号;第5,578,718号;第5,608,046号;第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241号;第5,391,723号;第5,416,203号;第5,451,463号;第5,510,475号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号および第5,688,941号が含まれ、このうち特定のものが、本出願と共同所有され、そしてこれらは各々、本明細書に援用される。
【0166】
本発明の別の態様において、化合物は、20の連結ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む。
【0167】
本発明の好ましい態様において、化合物は、配列番号39、40、45、52および166に示す配列を含む。
【0168】
本発明の1つの態様において、組成物は、配列番号28、30、39、40、43、44、45、50、51、52、56、78、125、および166の1つに示す配列の核酸塩基またはその塩、および薬学的に許容されうるキャリアーまたは希釈剤を含む。薬学的に許容されうる塩の例は、当業者に周知である。
【0169】
本発明の1つの態様において、アンチセンス化合物は、CTGF配列上のある範囲のヌクレオチド内で相補的である。特定の態様において、アンチセンス化合物は、配列番号9のヌクレオチド718〜751、1388〜1423、1457〜1689、2040〜2069、2120〜2147、または2267〜2301の範囲内で相補的である。特定の態様において、アンチセンス化合物は、配列番号10のヌクレオチド2728〜2797の範囲内で相補的である。これらの範囲をターゲティングする化合物は、少なくとも50%の阻害を示す(すなわち配列番号15、29、31、42、46〜49、53、72、81、82、152−154、164、および165)。表1に列挙する特定のターゲット部位もまた、少なくとも50%の阻害を示す(すなわち配列番号12、20、33、34、76、107、129、132、134、136、および146)。特定の態様において、アンチセンス化合物は、配列番号9のヌクレオチド553〜611、1394〜1423、1469〜1508、1559〜1605、1659〜1689または2100〜2129および配列番号10の2623〜2647の範囲内で相補的である。そこをターゲティングする化合物は、少なくとも60%の阻害を示す(すなわち配列番号27、28、38、39、40、43、44、45、50、51、52、54、55、56、77、78、79、138および139)。表1に列挙する特定のさらなるターゲット部位もまた、少なくとも60%の阻害を示す(すなわち配列番号24、30、61、63、67、69、73、86、125、128、および161)。特定の態様において、アンチセンス化合物は、ヌクレオチド1399〜1423の範囲内に相補的である。そこをターゲティングする化合物は、少なくとも70%の阻害を示す(すなわち配列番号39および40)。表1に列挙する特定のターゲット部位もまた、少なくとも70%の阻害を示す(すなわち配列番号28、30、44、45、51、56、78、128、および138)。表1に列挙する1つのターゲット部位はまた、少なくとも80%の阻害を示す(すなわち配列番号44)。特定の態様において、阻害パーセントは、アンチセンス化合物を50nmの濃度でHuVec細胞に送達した際に達成される。さらなる詳細に関しては、本明細書の以下に提供する、実施例8を参照されたい。
【0170】
組成物の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドである。修飾オリゴヌクレオチドを含む本発明の別の態様において、修飾オリゴヌクレオチドは20の連結ヌクレオシドからなる。
【0171】
本発明の別の態様において、細胞または組織において、結合組織増殖因子の発現を阻害するための方法であって、細胞または組織を、結合組織増殖因子の発現が阻害されるような条件下で、関心対象の化合物と接触させる工程を含む、前記方法を提供する。
【0172】
薬学的組成物または配合物の調製のため、アンチセンスオリゴヌクレオチドを薬学的に許容されうる活性および/または不活性物質と組み合わせてもよい。薬学的組成物配合のための組成物および方法は、限定されるわけではないが、投与経路、疾患の度合い、または投与しようとする用量を含む、いくつかの基準に応じる。
【0173】
アンチセンス化合物と、適切な薬学的に許容されうる希釈剤またはキャリアーを組み合わせることによって、核酸をターゲティングするアンチセンス化合物を薬学的組成物中で利用してもよい。薬学的に許容されうる希釈剤には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。PBSは、非経口送達しようとする組成物中で使用するのに適した希釈剤である。したがって、1つの態様において、本明細書記載の方法において使用するのは、核酸をターゲティングするアンチセンス化合物および薬学的に許容されうる希釈剤を含む薬学的組成物である。別の態様において、薬学的に許容されうる希釈剤は、薬剤等級生理食塩水または薬剤等級PBSである。他の態様において、アンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0174】
アンチセンス化合物を含む薬学的組成物は、ヒトを含む動物に投与した際に、生物学的に活性がある代謝産物またはその残基を(直接または間接的に)提供することが可能な、任意の薬学的に許容されうる塩、エステル、またはこうしたエステルの塩、あるいは任意の他のオリゴヌクレオチドを含む。したがって、例えば、本開示はまた、アンチセンス化合物、プロドラッグ、こうしたプロドラッグの薬学的に許容されうる塩、および他の生物学的等価物にも関する。適切な薬学的に許容されうる塩には、限定されるわけではないが、ナトリウムおよびカリウム塩が含まれる。
【0175】
プロドラッグには、体内の内因性ヌクレアーゼによって切断されて、活性アンチセンス化合物を形成するように、アンチセンス化合物の一端または両端でさらなるヌクレオシドの取り込みが含まれてもよい。特に、本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグ型は、Gosselinらに対するWO 93/24510、1993年12月9日公表、またはImbachらに対するWO 94/26764および米国特許第5,770,713号に開示される方法にしたがったSATE((S−アセチル−2−チオエチル)ホスフェート)誘導体として調製される。
【0176】
用語「薬学的に許容されうる塩」は、本発明の化合物の生理学的および薬学的に許容されうる塩:すなわち親化合物の望ましい生物学的活性を保持し、そしてその望ましくない毒性効果を与えない塩を指す。
【0177】
薬学的に許容されうる塩基付加塩は、金属またはアミン、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属または有機アミンで形成される。陽イオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等である。適切なアミンの例は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロへキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、およびプロカインである(例えば、Bergeら, “Pharmaceutical Salts,” J. of Pharma Sci., 1977, 66, 1−19を参照されたい)。前記酸性化合物の塩基付加塩は、慣用的な方式で、十分な量の望ましい塩基と、遊離酸型を接触させ、塩を生じさせることにより、調製する。遊離酸型は、慣用的な方式で、酸と塩型を接触させ、そして遊離酸を単離することにより、再生してもよい。遊離酸型は、それぞれの塩型と、極性溶媒における可溶性などの特定の物理的特性において、幾分異なるが、それ以外は、本発明の目的には、該塩は、それぞれの遊離酸と同等である。本明細書において、「薬学的付加塩」には、本発明の組成物の構成要素の1つの酸型の薬学的に許容されうる塩が含まれる。これらには、アミンの有機または無機酸塩が含まれる。好ましい酸塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩およびリン酸塩である。他の適切な薬学的に許容されうる塩は、当業者に周知であり、そして多様な無機および有機酸の塩基性塩であって、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸などの無機塩を用い;有機カルボン酸、スルホン酸、スルホまたはホスホ酸またはN−置換スルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸またはイソニコチン酸を用い;そして天然のタンパク質合成に関与する20のアルファ−アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸などのアミノ酸を用い、そしてまたフェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、2−または3−ホスホグリセリン酸、グルコース−6−リン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成とともに)を用い、あるいはアスコルビン酸などの他の酸性有機化合物を用いる、前記塩基性塩が含まれる。化合物の薬学的に許容されうる塩はまた、薬学的に許容されうる陽イオンで調製してもよい。適切な薬学的に許容されうる陽イオンは、当業者に周知であり、そしてアルカリ、アルカリ土類、アンモニウムおよび第四級アンモニウム陽イオンを含む。炭酸塩または炭酸水素塩もまた、使用可能である。
【0178】
オリゴヌクレオチドに関しては、薬学的に許容されうる塩の好ましい例には、限定されるわけではないが、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、スペルミンおよびスペルミジンなどのポリアミンなどの陽イオンで形成される塩;(b)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等で形成される酸付加塩;(c)例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等などの有機酸で形成される塩;ならびに(d)塩素、臭素、およびヨードなど元素陰イオンから形成される塩が含まれる。
【0179】
本発明の特定の態様において、薬学的に許容されうるキャリアーまたは希釈剤は、薬理学的活性を欠くが、1またはそれより多い核酸をヒトまたは非ヒト動物に送達するための溶媒、懸濁剤または任意の他の薬学的に不活性なビヒクルとして、薬学的に必要であるかまたは望ましい、組成物中の成分である。薬学的キャリアーは当事者に周知である。
【0180】
キャリアー
本発明の特定の組成物はまた、配合中にキャリアー化合物を取り込んでもよい。本明細書において、「キャリアー化合物」または「キャリアー」は、不活性である(すなわち、それ自体、生物学的活性を持たない)が、例えば、生物学的に活性がある核酸を分解するか、または循環からのその除去を促進することにより、生物学的活性を有する核酸の生物学的利用能を減少させるin vivoプロセスによって、核酸として認識される、核酸、またはその類似体を指すことも可能である。核酸およびキャリアー化合物の同時投与は、典型的には、後者の物質が過剰であり、おそらく共通の受容体に対するキャリアー化合物および核酸の間の競合のため、肝臓、腎臓または他の循環外貯蔵器官に回収される核酸の量を実質的に減少させることが可能である。例えば、肝組織において、部分的にホスホロチオエートであるオリゴヌクレオチドの回収は、該オリゴヌクレオチドが、ポリイノシン酸、デキストラン硫酸、ポリシチジン酸または4−アセトアミド−4’−イソチオシアノ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸と同時投与された際、減少しうる(Miyaoら, Antisense Res. Dev., 1995, 5, 115−121; Takakuraら, Antisense & Nucl. Acid Drug Dev., 1996, 6, 177−183)。
【0181】
賦形剤
キャリアー化合物と対照的に、「薬学的キャリアー」または「賦形剤」は、動物に1またはそれより多い核酸を送達するための、薬学的に許容されうる溶媒、懸濁剤または任意の他の薬理学的に不活性なビヒクルである。賦形剤は、液体または固体であってもよく、そして核酸および所定の薬学的組成物の他の構成要素と組み合わせた際、望ましい体積(bulk)、コンシステンシーなどを提供するように、計画した投与方式にしたがって選択される。典型的な薬学的キャリアーには、限定されるわけではないが、結合剤(例えば、あらかじめゼラチン化されたトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);充填剤(例えばラクトースおよび他の糖、微結晶性セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート類またはリン酸水素カルシウムなど);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド性二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属性ステアリン酸塩類、水素添加植物油類、コーンスターチ、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えばデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど);および湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)が含まれる。
【0182】
核酸と有害に反応しない、非−非経口投与に適した、薬学的に許容されうる有機または無機添加剤もまた、本発明の組成物を配合するのに用いてもよい。薬学的に許容されうる適切なキャリアーには、限定されるわけではないが、水、塩溶液、アルコール類、ポリエチレングリコール類、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよびそれらに匹敵するものが含まれる。
【0183】
核酸の局所投与のための配合物には、無菌および非無菌水溶液、アルコールなどの一般的な溶媒中の非水溶液、あるいは液体または固形油基剤中の核酸溶液が含まれてもよい。溶液はまた、緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加物も含有してもよい。核酸と有害に反応しない、非−非経口投与に適した、薬学的に許容されうる有機または無機添加剤を用いてもよい。
【0184】
本発明の1つの態様において、組成物は、一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドを含む修飾オリゴヌクレオチドを含み、そして修飾オリゴヌクレオチドは20の連結ヌクレオシドからなる。
【0185】
別の態様において、本発明は、細胞または組織において、結合組織増殖因子の発現を阻害するための方法であって、細胞または組織を、結合組織増殖因子の発現が阻害されるような条件下で、上述の化合物のいずれか1つと接触させる工程を含む、前記方法を含む。
【0186】
特定の態様において、本発明は、結合組織増殖因子の発現と関連する疾患または状態を有する動物を治療する方法であって、それによって動物が治療されるように、結合組織増殖因子の発現を阻害するのに有効な量の上述の化合物を、動物に投与する工程を含む、前記方法を含む。
【0187】
本発明の方法を実施する際、動物には、ヒトならびに非ヒト動物が含まれ、好ましくは動物はヒトである。
【0188】
本発明にはまた、本発明のアンチセンス化合物を含む薬学的組成物および配合物も含まれる。本発明の薬剤組成物は、局所または全身治療が望ましいかどうかに応じ、そして治療しようとする領域に応じ、いくつかの方式で投与してもよい。投与は、注射針の皮内スレッディングを含む皮内投与、皮下、局所(眼、ならびに膣および直腸送達を含む粘膜に対するものを含む)、例えば、ネブライザーによるものを含む、粉末またはエアロゾル吸入(inhalation、insufflation)による、肺;気管内、鼻内、上皮および経皮、経口または非経口であってもよい。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内または筋内注射または注入;あるいは頭蓋内、例えばクモ膜下腔内または脳室内、投与が含まれる。
【0189】
局所投与のための薬剤組成物および配合物には、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、ドロップ、座薬、スプレー、液体および粉末が含まれてもよい。慣用的な薬学的キャリアー、水性、粉末または油性基剤、増粘剤等が必要であるかまたは望ましい可能性がある。被覆コンドーム、手袋等もまた、有用である可能性もある。好ましい皮内および局所配合物には、本発明のオリゴヌクレオチドが、局所送達剤、例えば脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤および界面活性剤と混合されているものが含まれる。好ましい脂質およびリポソームには、中性(例えばジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えばジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)および陽イオン性(例えばジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)のものが含まれる。本発明のオリゴヌクレオチドをリポソーム内に被包してもよいし、またはオリゴヌクレオチドはリポソームと、特に陽イオン性リポソームと複合体を形成してもよい。あるいは、オリゴヌクレオチドを脂質と、特に陽イオン性脂質と複合体化してもよい。好ましい脂肪酸およびエステルには、限定されるわけではないが、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリル酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1〜10アルキルエステル(例えばイソプロピルミリステートIPM)、モノグリセリド、ジグリセリドあるいはその薬学的に許容されうる塩が含まれる。局所配合物は、本明細書にその全体が援用される、米国特許出願第09/315,298号、1999年5月20日出願に詳細に記載される。
【0190】
本発明の薬学的組成物には、限定されるわけではないが、溶液、エマルジョン、およびリポソーム含有配合物が含まれる。これらの組成物は、限定されるわけではないが、あらかじめ形成された液体、自己乳化固体および自己乳化半固体を含む、多様な構成要素から生成可能である。
【0191】
単位投薬型で好適に提示可能な、本発明の薬学的配合物を、薬学産業に周知の慣用的技術にしたがって調製可能である。こうした技術には、活性成分と薬学的キャリアー(単数または複数)または賦形剤(単数または複数)を会合させる工程が含まれる。一般的に、均一にそして密接に、活性成分と液体キャリアーまたは細分割固体キャリアーあるいは両方を会合させ、そして次いで、必要であれば産物を成形することによって、配合物を調製する。
【0192】
本発明の組成物を、限定されるわけではないが、シリンジ、あらかじめ充填されたシリンジ、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、軟ゲル、座薬、および浣腸剤を含む、任意の多くのありうる投薬型に配合してもよい。本発明の組成物をまた、水性、非水性または混合媒体中の懸濁物として配合してもよい。水性懸濁物はさらに、例えばカルボキシメチル−セルロース・ナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む、懸濁物の粘性を増加させる物質を含有してもよい。懸濁物はまた、安定化剤も含有してもよい。
【0193】
本発明の1つの態様において、薬学的組成物を泡として配合し、そして用いてもよい。薬学的泡には、限定されるわけではないが、エマルジョン、マイクロエマルジョン、クリーム、ゼリーおよびリポソームなどの配合物が含まれる。性質は基本的に同様であるが、これらの配合物は構成要素および最終産物のコンシステンシーが多様である。こうした組成物および配合物の調製は、薬学および配合業の当業者に一般的に知られ、そして本発明の組成物の配合に適用しうる。
【0194】
リポソーム
マイクロエマルジョンに加え、研究され、そして薬剤配合に用いられてきている、多くの編成界面活性剤構造がある。これらには、単層、ミセル、二層および小胞が含まれる。リポソームなどの小胞は、薬剤送達の観点から、これらが提供するその特異性および作用期間のため、非常な興味をひきつけてきている。本発明において、用語「リポソーム」は、球状二層または二層に配置された両親媒性脂質で構成される小胞を意味する。
【0195】
リポソームは、親脂質成分および水性内部から形成される膜を有する、単層または多層小胞である。水性部分は、送達しようとする組成物を含有する。陽イオン性リポソームは、細胞壁に融合することが可能であるという利点を持つ。非陽イオン性リポソームは、細胞壁とは効率的に融合できないが、in vivoでマクロファージにより取り込まれる。
【0196】
損なわれていない哺乳動物の皮膚を横断するため、脂質小胞は、適切な経皮勾配の影響下で、各々直径50nm未満の一連の細かい孔を通過しなければならない。したがって、非常に変形性で、そしてこうした細かい孔を通過することが可能であるリポソームを使用することが望ましい。
【0197】
リポソームのさらなる利点には;天然リン脂質から得られたリポソームは、生体適合性であり、そして生物分解性であり;リポソームは広い範囲の水溶性および脂溶性薬剤を取り込むことも可能であり;リポソームは、その内部区画中で、代謝および分解から、被包薬剤を保護することも可能であることが含まれる(Rosoff, Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, RiegerおよびBanker(監修), 1988, Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク州ニューヨーク,中, 第1巻, p.245)。リポソーム配合物の調製において考慮するのが重要なのは、リポソームの脂質表面電荷、小胞サイズおよび水性体積である。
【0198】
リポソームは、作用部位に活性成分を輸送しそして送達するのに有用である。リポソーム膜は、生物学的膜に構造的に似ているため、リポソームが組織に適用された際、リポソームは細胞膜と合体し始める。リポソームおよび細胞の合体が進行するにつれ、活性剤が作用する可能性がある細胞内に、リポソームの内容物が移される。
【0199】
リポソーム配合物は、多くの薬剤の送達様式として、広範な研究の焦点となってきている。皮内および局所投与に関し、リポソームが他の配合物に勝る、いくつかの利点を提供する証拠が増えてきている。こうした利点には、投与薬剤の高い全身性吸収に関連する副作用の減少、望ましいターゲットでの投与薬剤集積の増加、ならびに親水性および疎水性両方の非常に多様な薬剤の皮膚への投与能が含まれる。
【0200】
いくつかの報告により、リポソームが高分子量DNAを含む剤を皮膚に送達する能力が詳しく述べられてきている。鎮痛剤、抗体、ホルモンおよび高分子量DNAを含む化合物が皮膚に投与されてきている。適用の大部分は、上面表皮のターゲティングを生じた。
【0201】
リポソームは、2つの広いクラスに属する。陽イオン性リポソームは陽性に荷電しているリポソームであり、陰性に荷電しているDNA分子と相互作用し、安定な複合体を形成する。陽性荷電DNA/リポソーム複合体は、陰性荷電細胞表面に結合し、そしてエンドソーム中に入る。エンドソーム内は酸性pHであるため、リポソームは破裂し、内容物を細胞質に放出する(Wangら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 1987, 147, 980−985)。
【0202】
pH感受性または陰性荷電リポソームは、DNAと複合体化するよりもDNAを捕捉する。DNAおよび脂質はどちらも、同様に荷電しているため、複合体形成よりも反発が起こる。にもかかわらず、あるDNAはこれらのリポソームの水性内部に捕捉される。チミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを、培養中の細胞単層に送達するのに、pH感受性リポソームが使用されてきている。外因性遺伝子の発現が、ターゲット細胞において検出された(Zhouら, Journal of Controlled Release, 1992, 19, 269−274)。
【0203】
リポソーム組成物の1つの主要なタイプには、天然由来ホスファチジルコリン以外のリン脂質が含まれる。中性リポソーム組成物は、例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から形成されてもよい。陰イオン性リポソーム組成物は、一般的に、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから形成されるが、陰イオン性融合体形成性(fusogenic)リポソームは、主に、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から形成される。リポソーム組成物の別のタイプは、例えばダイズ(soybean)PC、および卵PCなどのホスファチジルコリン(PC)から形成される。別のタイプは、リン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から形成される。
【0204】
いくつかの研究により、皮膚へのリポソーム薬剤配合物の局所送達が評価されてきている。インターフェロンを含有するリポソームのモルモット皮膚への適用により、皮膚疱疹傷の減少が生じたが、他の手段を介した(例えば溶液としてまたはエマルジョンとしての)インターフェロンの送達は無効であった(Weinerら, Journal of Drug Targeting, 1992, 2, 405−410)。さらに、さらなる研究により、水性系を用いたインターフェロン投与に対し、リポソーム配合物の一部として投与されたインターフェロンの有効性が試験され、そしてリポソーム配合物が水性投与より優れていると結論付けられた(du Plessisら, Antiviral Research, 1992, 18, 259−265)。
【0205】
非イオン性リポソーム系、特に非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む特定の系もまた、皮膚への薬剤送達における有用性を決定するため、調べられてきている。NovasomeTM I(ジラウリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)およびNovasomeTM II(ジステアリン酸グリセリル/コレステロール/ポリオキシエチレン−10−ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム配合物を用い、マウス皮膚の真皮にシクロスポリン−Aを送達した。結果により、こうした非イオン性リポソーム系は、皮膚の異なる層へのシクロスポリン−Aの沈着を促進するのに有効であることが示された(Huら, S.T.P. Pharma. Sci., 1994, 4, 6, 466)。
【0206】
リポソームはまた、「立体的に安定な」リポソームも含み、本明細書において、本用語は、1またはそれより多い特殊化脂質であって、リポソームに取り込まれた際に、こうした特殊化脂質を欠くリポソームに比べ、循環期間の増進を生じる前記特殊化脂質を含むリポソームを指す。立体的に安定なリポソームの例は、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が(A)1またはそれより多い糖脂質、例えばモノシアロガングリオシドGM1を含むか、あるいは(B)1またはそれより多い親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)部分で誘導体化されているものである。いかなる特定の理論に束縛されることも望ましくないが、少なくとも、ガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG誘導体化脂質を含有する、立体的に安定なリポソームに関しては、これらの立体的に安定なリポソームの増進された循環半減期は、細網内皮細胞系(RES)の細胞への減少した取り込みによるものと当該技術分野において考えられている(Allenら, FEBS Letters, 1987, 223, 42; Wuら, Cancer Research, 1993, 53, 3765)。
【0207】
1またはそれより多い糖脂質を含む、多様なリポソームが当該技術分野に知られる。Papahadjopoulosら(Ann. N.Y. Acad. Sci., 1987, 507, 64)は、モノシアロガングリオシドGM1、ガラクトセレブロシド硫酸、およびホスファチジルイノシトールがリポソームの血液半減期を改善する能力を報告した。これらの知見は、Gabizonら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1988, 85, 6949)によって詳しく解説された。共にAllenらに対する、米国特許第4,837,028号およびWO 88/04924は、(1)スフィンゴミエリンおよび(2)ガングリオシドGM1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルを含むリポソームを開示する。米国特許第5,543,152号(Webbら)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示する。1,2−sn−ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは、WO 97/13499(Limら)に開示される。
【0208】
1またはそれより多い親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含む多くのリポソームおよびその調製法が、当該技術分野に知られる。Sunamotoら(Bull. Chem. Soc. Jpn., 1980, 53, 2778)は、PEG部分を含有する、非イオン性界面活性剤2C1215Gを含むリポソームを記載した。Illumら(FEBS Lett., 1984, 167, 79)は、ポリマー性グリコールを用いたポリスチレン粒子の親水性コーティングが、有意に増進された血液半減期を生じることを記した。ポリアルキレングリコール(例えばPEG)のカルボキシル基の付着により修飾されている合成リン脂質がSears(米国特許第4,426,330号および第4,534,899号)に記載される。Klibanovら(FEBS Lett., 1990, 268, 235)は、PEGまたはステアリン酸PEGで誘導体化したホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソームの血液循環半減期が有意に増加していることを立証する実験を記載した。Blumeら(Biochimica et Biophysica Acta, 1990, 1029, 91)は、こうした観察を、他のPEG誘導体化リン脂質、例えばジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)およびPEGの組み合わせから形成される、DSPE−PEGにまで広げた。外表面上に共有結合しているPEG部分を有するリポソームは、Fisherに対する欧州特許第EP 0 445 131 B1号およびWO 90/04384に記載される。1〜20モルパーセントのPEG誘導体化PEを含有するリポソーム組成物、およびその使用法は、Woodleら(米国特許第5,013,556号および第5,356,633号)およびMartinら(米国特許第5,213,804号および欧州特許第EP 0 496 813 B1号)に記載される。いくつかの他の脂質−ポリマーコンジュゲートを含むリポソームは、WO 91/05545および米国特許第5,225,212号(どちらもMartinらに対する)およびWO 94/20073(Zalipskyら)に開示される。PEG修飾セラミド脂質を含むリポソームは、WO 96/10391(Choiら)に記載される。米国特許第5,540,935号(Miyazakiら)および第5,556,948号(Tagawaら)は、表面上の官能部分でさらに誘導体化することも可能な、PEG含有リポソームを記載する。
【0209】
限定された数の、核酸を含むリポソームが当該技術分野に知られる。Thierryらに対するWO 96/40062は、リポソーム中に高分子量核酸を被包するための方法を開示する。Tagawaらに対する米国特許第5,264,221号は、タンパク質結合リポソームを開示し、そしてこうしたリポソームの内容物にアンチセンスRNAを含むことも可能であることを主張する。Rahmanらに対する米国特許第5,665,710号は、リポソームにオリゴデオキシヌクレオチドを被包する、特定の方法を記載する。Loveらに対するWO 97/04787は、raf遺伝子にターゲティングされているアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むリポソームを開示する。
【0210】
トランスファーソーム(transfersome)は、リポソームのさらに別の種類であり、そして薬剤送達ビヒクルとして魅力的な候補である、非常に変形性の脂質凝集体である。トランスファーソームは、非常に変形性であり、該小滴より小さい孔を通じ、容易に浸透することが可能な脂質小滴と記載することが可能である。トランスファーソームは、用いられる環境に対し適応可能であり、例えば、自己最適化し(皮膚の孔の形状に適応する)、自己修復し、しばしば断片化なしにターゲットに到達し、そしてしばしば自動装填する。トランスファーソームの作製のため、標準的リポソーム組成物に、表面縁活性化剤、通常、界面活性剤を添加してもよい。トランスファーソームは、血清アルブミンを皮膚に送達するのに用いられてきている。血清アルブミンのトランスファーソーム仲介送達は、血清アルブミン含有溶液の皮下注射と同程度に有効であることが示されてきている。
【0211】
界面活性剤は、エマルジョン(マイクロエマルジョンを含む)およびリポソームなどの配合物において、広い適用を見出す。天然および合成両方の、多くの異なるタイプの界面活性剤の特性を分類しそして位置付ける、最も一般的な方法は、親水/親油バランス(HLB)の使用による。親水性基(「頭部」としても知られる)の性質は、配合物に用いられる、異なる界面活性剤を分類するのに最も有用な手段を提供する(Rieger, Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク州ニューヨーク, 1988,中, p.285)。
【0212】
界面活性剤分子がイオン化されていない場合、非イオン性界面活性剤と分類される。非イオン性界面活性剤は、薬剤および美容製品に広い適用を見出し、そして広い範囲のpH値に渡り、使用可能である。一般的に、そのHLB値は、構造に応じ、2〜約18の範囲である。非イオン性界面活性剤には、非イオン性エステル類、例えばエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールエステル類、グリセリルエステル類、ポリグリセリルエステル類、ソルビタンエステル類、スクロースエステル類、およびエトキシル化エステル類が含まれる。非イオン性アルカノールアミド類およびエーテル類、例えば脂肪アルコールエトキシレート類、プロポキシル化アルコール類、およびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマー類もまた、このクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、非イオン性界面活性剤クラスの最も一般的なメンバーである。
【0213】
界面活性剤分子が陰性電荷を持つ場合、該分子を水に溶解しまたは分散させた際、該界面活性剤は、陰イオン性と分類される。陰イオン性界面活性剤には、カルボン酸塩類、例えば石鹸、アシルラクチレート類、アミノ酸のアシルアミド類、硫酸のエステル類、例えば硫酸アルキル類およびエトキシル化硫酸アルキル類、スルホン酸塩類、例えばベンゼンスルホン酸アルキル類、イセチオン酸アシル類、アシルタウレート類およびスルホコハク酸塩類、およびリン酸塩類が含まれる。陰イオン性界面活性剤クラスの最も重要なメンバーは、硫酸アルキル類および石鹸である。
【0214】
界面活性剤分子が陽性電荷を持つ場合、該分子を水に溶解しまたは分散させた際、該界面活性剤は、陽イオン性と分類される。陽イオン性界面活性剤には、第四級アンモニウム塩類およびエトキシル化アミン類が含まれる。第四級アンモニウム塩は、このクラスの最も用いられるメンバーである。
【0215】
界面活性剤分子が陽性または陰性電荷どちらも持つ能力を有する場合、該界面活性剤は、両性と分類される。両性界面活性剤には、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド類、N−アルキルベタイン類およびホスファチド類が含まれる。
【0216】
薬剤製品、配合物およびエマルジョン中の界面活性剤の使用が概説されてきている(Rieger, Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク州ニューヨーク, 1988,中, p.285)。
【0217】
浸透増進剤
1つの態様において、本発明は多様な浸透増進剤を使用して、核酸、特にオリゴヌクレオチドの動物皮膚への効率的な搬送を達成する。大部分の薬剤は、溶液中に、イオン化および非イオン化両方の形で存在する。しかし、通常、脂溶性または親油性薬剤のみが、容易に細胞膜を横断する。非親油性薬剤であっても、横断しようとする膜が浸透増進剤で処理されている場合、細胞膜を横断することが可能であることが発見されてきている。細胞膜を越える非親油性薬剤の拡散を補助するのに加え、浸透増進剤はまた、親油性薬剤の浸透性も増進する。
【0218】
浸透増進剤は、5つの広いカテゴリー、すなわち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、および非キレート非界面活性剤の1つに属するとして、分類することも可能である(Leeら, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92)。上述の浸透増進剤のクラスの各々は、以下により詳細に記載される。
【0219】
界面活性剤:本発明と関連して、界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水溶液に溶解された際、溶液の表面張力または水溶液および別の液体の間の界面張力を減少させ、その結果、粘膜を通じたオリゴヌクレオチドの吸収を増進する化学実体である。胆汁酸および脂肪酸に加え、これらの浸透増進剤には、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン−20−セチルエーテル(Leeら, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier systems, 1991, p.92);およびペルフルオロ化学エマルジョン、例えばFC−43(Takahashiら, J. Pharm. Pharmacol., 1988, 40, 252)が含まれる。
【0220】
脂肪酸:浸透増進剤として作用する、多様な脂肪酸およびその誘導体には、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n−デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1−モノオレオイル−rac−グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール−1−モノカプレート、1−ドデシルアザシクロへプタン−2−オン、アシルカルニチン類、アシルコリン類、それらのC1〜10アルキルエステル類(例えばメチル、イソプロピルおよびt−ブチル)、ならびにそれらのモノ−およびジ−グリセリド類(すなわちオレエート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノリレートなど)が含まれる(Leeら, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92; Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1−33; El Haririら, J. Pharm. Pharmacol., 1992, 44, 651−654)。
【0221】
胆汁酸塩:胆汁の生理学的役割には、脂質および脂溶性ビタミンの分散および吸収の促進が含まれる(Brunton, 第38章: Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 第9版, Hardmanら監修, McGraw−Hill, ニューヨーク, 1996,中, pp.934−935)。多様な中性胆汁酸塩、およびそれらの合成誘導体は、浸透増進剤として作用する。したがって、用語「胆汁酸塩」には、胆汁の任意の天然存在構成要素とともにその任意の合成誘導体も含まれる。本発明の胆汁酸塩には、例えば、コール酸(またはその薬学的に許容されうるナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(glycholic acid)(グリコール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム(STDHF)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(POE)が含まれる(Leeら, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, 92ページ; Swinyard, 第39章: Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, Gennaro監修, Mack Publishing Co., ペンシルバニア州イーストン, 1990,中, 782−783ページ; Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1−33; Yamamotoら, J. Pharm. Exp. Ther., 1992, 263, 25; Yamashitaら, J. Pharm. Sci., 1990, 79, 579−583)。
【0222】
キレート剤:本発明と関連して用いられるようなキレート剤は、金属性イオンと複合体を形成することにより、溶液から該イオンを除去し、その結果、粘膜を通じたオリゴヌクレオチドの吸収を増進する化合物と定義可能である。本発明の浸透増進剤としてのその使用に関し、大部分の性質決定されているDNAヌクレアーゼは、触媒のための二価金属イオンを必要とし、そしてしたがってキレート剤により阻害されるため、キレート剤は、DNアーゼ阻害剤としても作用する、さらなる利点を有する(Jarrett, J. Chromatogr., 1993, 618, 315−339)。本発明のキレート剤には、限定されるわけではないが、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、クエン酸、サリチル酸塩類(例えばサリチル酸ナトリウム、5−メトキシサリチレートおよびホモバニレート(homovanilate))、コラーゲンのN−アシル誘導体、ラウレス(laureth)−9およびベータ−ジケトン類のN−アミノアシル誘導体(エナミン類)が含まれる(Leeら, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, 92ページ; Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1−33; Buurら, J. Control Rel., 1990, 14, 43−51)。
【0223】
非キレート非界面活性剤:本明細書において、非キレート非界面活性剤浸透増進化合物は、キレート剤として、または界面活性剤として有意な活性を示さないが、にもかかわらず、消化管粘膜を通じたオリゴヌクレオチドの吸収を増進する化合物として定義することが可能である(Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1−33)。このクラスの浸透増進剤には、例えば、非飽和環状尿素、1−アルキル−および1−アルケニルアザシクロ−アルカノン誘導体(Leeら, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, 92ページ);および非ステロイド性抗炎症剤、例えばジクロフェナクナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾン(Yamashitaら, J. Pharm. Pharmacol., 1987, 39, 621−626)が含まれる。
【0224】
細胞レベルでオリゴヌクレオチドの取り込みを増進する剤もまた、本発明の薬剤および他の組成物に添加してもよい。例えば、陽イオン性脂質、例えばリポフェクチン(Junichiら、米国特許第5,705,188号)、陽イオン性グリセロール誘導体、およびポリ陽イオン分子、例えばポリリジン(Lolloら、PCT出願WO 97/30731)もまた、オリゴヌクレオチドの細胞取り込みを増進することが知られる。
【0225】
投与された核酸の皮膚内への、および皮膚を通した浸透を増進するのに他の剤を利用してもよく、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール類、2−ピロールなどのピロール類、アゾン類、ならびにリモネンおよびメントンなどのテルペン類が含まれる。
【0226】
他の構成要素
本発明の組成物は、さらに、薬剤組成物に慣用的に見られる他の付属構成要素を、その当該技術分野に確立された使用レベルで、含有してもよい。したがって、例えば、組成物は、例えば鎮痒剤、収斂剤、局所麻酔剤または抗炎症剤などの、さらなる適合する薬学的に活性がある物質を含有してもよいし、あるいは、本発明の組成物の多様な投薬型を物理的に配合するのに有用である、さらなる成分、例えば、色素、フレーバー剤、保存剤、酸化防止剤、乳白剤、増粘剤および安定化剤などを含有してもよい。しかし、こうした物質は、添加される際、本発明の組成物の構成要素の生物学的活性を、過度に妨げてはならない。配合物を滅菌してもよく、そして望ましい場合、配合物の単数または複数の核酸と有害に反応しない補助(auxiliary)剤、例えば潤滑剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝剤、着色料、フレーバー剤および/または芳香物質等と混合してもよい。
【0227】
水性懸濁物は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む、懸濁物の粘性を増加させる物質を含有してもよい。懸濁物はまた、安定化剤も含有してもよい。
【0228】
別の関連態様において、本発明の組成物は、第一の核酸をターゲティングする1またはそれより多いアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチド、および第二の核酸ターゲットをターゲティングする1またはそれより多いさらなるアンチセンス化合物を含有してもよい。アンチセンス化合物の多くの例が当該技術分野に知られる。2またはそれより多い組み合わせた化合物を一緒にまたは連続して用いてもよい。
【0229】
本発明にしたがって用いるアンチセンス化合物を、固相合成の周知の技術を通じて、好適にそしてルーチンに作製してもよい。取り込み、分布および/または吸収を補助するために、本発明の化合物を、例えばリポソーム、受容体ターゲティング分子、経口、直腸、局所または他の配合物のような他の分子、分子構造または化合物混合物と混合するか、これらで被包するか、コンジュゲート化するか、または別の方式でこれらと会合させてもよい。こうした取り込み、分布および/または吸収補助配合物の調製を解説する代表的な米国特許には、限定されるわけではないが、米国特許第5,108,921号;第5,354,844号;第5,416,016号;第5,459,127号;第5,521,291号;第5,543,158号;第5,547,932号;第5,583,020号;第5,591,721号;第4,426,330号;第4,534,899号;第5,013,556号;第5,108,921号;第5,213,804号;第5,227,170号;第5,264,221号;第5,356,633号;第5,395,619号;第5,416,016号;第5,417,978号;第5,462,854号;第5,469,854号;第5,512,295号;第5,527,528号;第5,534,259号;第5,543,152号;第5,556,948号;第5,580,575号;および第5,595,756号が含まれ、これらは各々、本明細書に援用される。
【0230】
特定の適応症
アンチセンスの特異性および感度はまた、療法使用のため、当業者によって利用される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、動物およびヒトにおける疾患状態の治療において、療法部分として使用されてきている。リボザイムを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド薬剤は、安全にそして有効にヒトに投与されてきており、そして多くの臨床試験が現在進行中である。したがって、オリゴヌクレオチドは、細胞、組織および動物、特にヒトの治療のための治療措置において有用であるように設定可能な、有用な療法様式でありうる。
【0231】
本発明の1つの態様において、方法は、線維性疾患である疾患または障害を治療する工程を含む。本発明の方法の1つの態様において、線維性疾患は、肥厚性瘢痕、ケロイド、皮膚瘢痕、肝臓線維症、肺線維症、腎線維症、心臓線維症、または再狭窄である。
【0232】
本発明の別の態様において、方法は、上述の疾患または状態を治療する工程をさらに含み、ここで疾患または障害は、関節線維症(四十肩症候群、腱および末梢神経損傷を含む)、外科癒着、脊髄損傷、冠動脈バイパス術、腹腔および腹膜癒着(子宮内膜症、子宮筋腫および線維症を含む)、放射状角膜切開術およびレーザー屈折矯正角膜切除術、網膜復位術、デバイス仲介線維症(例えば糖尿病におけるもの)、腱癒着、デュピュイトラン拘縮、または強皮症である。
【0233】
別の態様において、本発明は、必要がある被験体において、皮膚創傷治癒から生じる肥厚性瘢痕またはケロイドを減少させるための方法であって、被験体において結合組織増殖因子(CTGF)の発現を阻害し、それによって瘢痕を減少させるのに有効な量のアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物を、被験体に投与する工程を含む、前記方法もまた提供する。
【0234】
療法組成物の配合およびそれに続く投与は、当業者の技術範囲内と考えられる。投薬は、治療しようとする疾患状態の重症度および反応性に応じ、治療経過は、数日から数ヶ月、あるいは治癒が達成されるか、または疾患状態の減少が達成されるまで、続く。一般的に、瘢痕直線cmあたり注射あたり0.1〜25mgの投薬量を使用し、そしてこれを毎日、毎週、3週ごと、毎月または2ヶ月ごとに投与してもよい。
【0235】
本発明の別の態様において、方法はさらに、皮膚創傷治癒から生じる肥厚性瘢痕またはケロイドを減少させる方法であって、創傷治癒が、皮膚破損、外科切開および火傷からなる群より選択される創傷での治癒である、前記方法もまた提供する。
【0236】
特定の態様において、本発明は、本発明の1またはそれより多い薬学的組成物を投与する工程を含む、個体を治療する方法を提供する。特定の態様において、個体は、上述の障害の1つを有する。特定の態様において、個体は、上述の障害の1つに関するリスクを有する。特定の態様において、個体は、療法が必要であると同定されてきている。特定の態様において、本発明は、個体においてCTGF発現を予防的に減少させるための方法を提供する。
【0237】
特定の態様には、CTGF核酸をターゲティングするアンチセンス化合物の療法的有効量を個体に投与することによって、必要がある個体を治療する工程が含まれる。
【0238】
1つの態様において、CTGF核酸をターゲティングするアンチセンス化合物の療法的有効量の投与には、アンチセンス化合物の投与に対する個体の反応を決定するため、個体の皮膚および/または血清におけるCTGFレベルの監視が付随する。医師は、アンチセンス化合物の投与に対する個体の反応を用いて、療法介入の量および期間を決定する。
【0239】
1つの態様において、CTGF核酸をターゲティングするアンチセンス化合物の投与は、CTGF発現の少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または99%、あるいはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲の減少を生じる。1つの態様において、CTGF核酸をターゲティングするアンチセンス化合物の投与は、標準試験によって測定されるようなCTGFの測定値、例えば限定されるわけではないがCTGFの変化を生じる。いくつかの態様において、CTGFアンチセンス化合物の投与は、測定値を、少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または99%、あるいはこれらの値の任意の2つによって定義される範囲で、減少させる。
【0240】
特定の態様において、CTGFをターゲティングするアンチセンス化合物を含む薬学的組成物を、上述の障害の任意の1つを患うかまたはそれに対する感受性がある患者を治療するための薬剤調製に用いる。
【0241】
特定の併用療法
特定の態様において、本発明の1またはそれより多い薬学的組成物を、1またはそれより多い他の薬学的剤と同時投与する。特定の態様において、こうした1またはそれより多い他の薬学的剤は、本発明の1またはそれより多い薬学的組成物と同じ疾患または状態を治療するように設計される。特定の態様において、こうした1またはそれより多い他の薬学的剤は、本発明の1またはそれより多い薬学的組成物と異なる疾患または状態を治療するように設計される。特定の態様において、こうした1またはそれより多い他の薬学的剤は、本発明の1またはそれより多い薬学的組成物の望ましくない影響を治療するように設計される。特定の態様において、本発明の1またはそれより多い薬学的組成物を、別の薬学的剤と同時投与して、この他の薬学的剤の望ましくない影響を治療する。特定の態様において、本発明の1またはそれより多い薬学的組成物および1またはそれより多い他の薬学的剤は、同時に投与される。特定の態様において、本発明の1またはそれより多い薬学的組成物および1またはそれより多い他の薬学的剤は、異なる時点で投与される。特定の態様において、本発明の1またはそれより多い薬学的組成物および1またはそれより多い他の薬学的剤は、単一配合物中で一緒に調製される。特定の態様において、本発明の1またはそれより多い薬学的組成物および1またはそれより多い他の薬学的剤は、別個に調製される。
【0242】
特定の態様において、本発明の薬学的組成物と同時投与可能な薬学的剤には、第二の療法剤が含まれる。特定のこうした態様において、本発明の薬学的組成物と同時投与可能な薬学的剤には、限定されるわけではないが、第二の療法剤が含まれる。特定のこうした態様において、第二の療法剤は、本発明の薬学的組成物の前に投与される。特定のこうした態様において、第二の療法剤は、本発明の薬学的組成物の投与後に投与される。特定のこうした態様において、第二の療法剤は、本発明の薬学的組成物と同時に投与される。特定のこうした態様において、同時投与される第二の療法剤の用量は、第二の療法剤が単独で投与される場合に投与されるであろう量と同じである。特定のこうした態様において、同時投与される第二の療法剤の用量は、第二の療法剤が単独で投与される場合に投与されるであろう量より少ない。特定のこうした態様において、同時投与される第二の療法剤の用量は、第二の療法剤が単独で投与される場合に投与されるであろう量より多い。
【0243】
特定の態様において、第二の化合物の同時投与は、第一の化合物を単独で投与する効果よりも高い療法効果、相乗効果を生じるように、第一の化合物の療法効果を増進する。他の態様において、同時投与は、単独で投与した際の化合物の効果に付加的な療法効果を生じる。他の態様において、同時投与は、単独で投与した際の化合物の効果に相乗的な療法効果を生じる。いくつかの態様において、第一の化合物はアンチセンス化合物である。いくつかの態様において、第二の化合物はアンチセンス化合物である。
【0244】
本発明は、以下の実施例セクションにおいて例示される。このセクションは、本発明の理解を補助するために示されるが、その後に続く請求項に示すような本発明を、いかなる点でも制限することを意図せず、そしてそのように見なしてはならない。
【実施例】
【0245】
実施例1:リード・ヒト結合組織増殖因子(CTGF)アンチセンスオリゴヌクレオチド候補の選択
序論
公表された配列(配列番号9として本明細書に援用されるGenBank寄託番号NM_001901.2、および配列番号10として本明細書に援用されるGenBank寄託番号NT_027541.14)を用いて、ヒト結合組織増殖因子RNAの異なる領域をターゲティングする一連のオリゴヌクレオチドを設計した。
【0246】
本研究は、利用可能な配列空間、ならびにCTGFのエクソンおよびイントロン空間両方をターゲティングする修飾アンチセンスオリゴヌクレオチドを分析する。ターゲットあたりおよそ150の新規配列を合成し、そして細胞培養における、CTGFに対する活性に関して評価した。オリゴヌクレオチドを表1に示す。表1中のすべての化合物は、両側(5’および3’方向)に5ヌクレオチドの「ウィング」が隣接する10の2’デオキシヌクレオチド、または両側(5’および3’方向)に、それぞれ、2および5ヌクレオチドの「ウィング」が隣接する13の2’−デオキシヌクレオチドのいずれかからなる中央「ギャップ」領域で構成される、長さ20ヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)である。ウィングは、2’−メトキシエチル(2’−MOE)ヌクレオチドで構成される。ヌクレオシド間(主鎖)連結は、オリゴヌクレオチド全体でホスホロチオエート(P=S)である。すべてのシスチジン(cystidine)残基は5−メチルシチジンである。後で記載するような定量的リアルタイムPCRによって、ヒト結合組織増殖因子mRNAレベルに対する影響に関して、化合物を分析した。データは、2回の実験の平均である。存在する場合、「N.D.」は、「データなし」を示す。
【0247】
表1
2’−MOEウィングおよびデオキシギャップを有するキメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドによる、ヒト結合組織増殖因子mRNAレベルの阻害
【0248】
【表1-1】
【0249】
【表1-2】
【0250】
【表1-3】
【0251】
ND−すなわち実験において決定されなかったが、別のアッセイにおいて非常に活性であった。
【0252】
表1に示すように、配列番号11〜15、17〜20、24、26〜34、36〜57、59、61、63〜82、84〜86、88、95、97、99、102、103、105、107、108、122、125、127〜140、145、146、149、151〜154、156、159、161〜165は、このアッセイにおいて、ヒト結合組織増殖因子発現の少なくとも24%の阻害を示し、そしてしたがって好ましい。これらの好ましい配列に相補的なターゲット部位は、本明細書において、「活性部位」と称され、そしてしたがって、本発明の化合物によってターゲティングするのに好ましい部位である。
【0253】
アンチセンス化合物は、CTGF配列上のヌクレオチドの範囲内、すなわち、配列番号9のヌクレオチド718〜751、1388〜1423、1457〜1689、2040〜2069、2120〜2147、または2267〜2301の範囲内で相補的である。特定の態様において、アンチセンス化合物は、配列番号10のヌクレオチド2728〜2797の範囲内で相補的である。これらの範囲をターゲティングする化合物は、少なくとも50%の阻害を示す(すなわち配列番号15、29、31、42、46〜49、53、72、81、82、152〜154、164、および165)。表1に列挙する特定のターゲット部位もまた、少なくとも50%の阻害を示す(すなわち配列番号12、20、33、34、76、107、129、132、134、136、および146)。
【0254】
特定の態様において、アンチセンス化合物は、553〜611、1394〜1423、1469〜1508、1559〜1605、1659〜1689または2100〜2129の範囲内で相補的である。そこをターゲティングする化合物は、少なくとも60%の阻害を示す(すなわち配列番号27、38、43、50、52、54、55、77、79、および86)。表1に列挙する特定のターゲット部位もまた、少なくとも60%の阻害を示す(すなわち配列番号24、61、63、67、69、73、125、139、および161)。
【0255】
アンチセンス化合物はまた、ヌクレオチド1399〜1423の範囲内に相補的である。そこをターゲティングする化合物は、少なくとも70%の阻害を示す(すなわち配列番号39および40)。表1に列挙する特定のターゲット部位もまた、少なくとも70%の阻害を示す(すなわち配列番号28、30、45、51、56、78、128、および138)。表1に列挙する1つのターゲット部位もまた、少なくとも80%の阻害を示す(すなわち配列番号44)。特定の態様において、阻害パーセントは、アンチセンス化合物を50nmの濃度でHuVec細胞に送達した際に達成される。
【0256】
歴史的なASOリード配列、配列番号15(ISIS 124238)より大きい見かけ上の活性を持つ多数のリードが、エクソンおよびイントロン配列の両方で同定された。
【0257】
材料および方法
リポフェクチン仲介トランスフェクションを用いて、ヒト臍帯血内皮細胞(HuVEC)において、50nMの濃度でオリゴヌクレオチドを評価し、そして活性を確認した。低血清増殖補充剤(Cascade Biologics)を補充した培地200中で維持された、Cascade Biologics(オレゴン州ポートランド)のHuVEC細胞を、ウェルあたり5,000細胞で96ウェルプレート内にプレーティングし、そして5%COの存在下、37℃で一晩インキュベーションした。翌日、培地を吸引し、そしてあらかじめ温めた、オリゴ−リポフェクタミン2000(Invitrogen)混合物を含有するOpti−MEM I(Invitrogen)(1mlのOpti−MEM I培地あたり3mgのリポフェクタミン2000)と交換した。4時間後、低血清増殖補充剤を補充した新鮮な培地200とトランスフェクション混合物を交換し、そして5%COの存在下、37℃でインキュベーションした。16〜24時間後、およそ80%集密(confluence)で、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、そしてQiagen RNeasyキットでRNA精製するために溶解した。定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(プライマー/プローブセットを以下に示す)によってCTGFメッセージを測定し、そして結果を総RNAに対して規準化した。
【0258】
統計分析
各試料を2つ組で分析し、そして垂直なバーは、2つの測定値の間の広がりを表す。
【0259】
結果および考察
合成し、そして細胞培養中でCTGFに対する活性に関して評価した、ターゲットあたりおよそ150の新規配列のうち、CTGFオリゴヌクレオチド(配列番号28、30、39、40、45、52、56、78、125、および166)は、ヒトCTGF mRNA発現の優れた阻害を示す。
【0260】
実施例2:ウサギにおけるCTGFアンチセンスオリゴヌクレオチドの単回用量皮内薬物動態学的研究
研究の目的
ウサギにおけるこの薬物動態学的研究の目的は、単回皮内注射に続く異なる時点でのウサギ皮膚におけるCTGFアンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号39、ISIS 412294)の拡散および濃度を評価することである。
【0261】
研究設計
研究第0日、すべての動物に、50mg/mLの濃度でCTGFアンチセンスオリゴヌクレオチド配列番号39を単回100μLの注射で皮内(ID)投与した(5mg総用量)。動物の脊髄中線の左側の部位に、ウサギ肩にほぼ平行に、そして縫合3cm切開創傷に隣接して、アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与した(図1A)。試験物質が動物の体の底部に向かって下部に注入されるように、針を挿入した。第1日、第3日、第7日または第14日、ウサギを安楽死させ、そして2つの完全な厚みの1.0cmパンチ生検を得て、一方は、元来の注射部位中央に渡り、そして他方は0.5cm離れて垂直に下であった。試料をスナップ凍結し、そしてハイブリダイゼーション捕捉法を用いて、アンチセンスオリゴヌクレオチド薬剤レベルを分析するまで−80℃で保存した。結果は、示す時間の両生検からの平均アンチセンスオリゴヌクレオチドレベルを示す。
【0262】
結果および結論
皮内投薬後、最長14日間、アンチセンスオリゴヌクレオチドの有意なレベルが存在する(図1Bを参照されたい)。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、注射の元来の部位の近くに残り(≦1cm)、投与部位遠位には非常に限定された側方拡散しか伴わなかった(図1B)。例えば、ASOレベルは、注射後のすべての時点で、注入部位から1.5cm遠位の距離では非常に低い。したがって、このクラスの分子の薬理学的効果は、注射部位にすぐ隣接した皮膚領域に限定されるであろう。この限界を克服するため、皮内注射スレッディング技術が開発されてきており(そして臨床研究において用いられており)、該技術は、発展しつつある瘢痕の全長に沿って、等量のアンチセンスを送達する。これらの結果は、2つの新規知見を立証する。第一に、皮膚において、この化学立体配置を持つ2’MOEアンチセンスオリゴヌクレオチドの滞留時間が延長されており;そして第二に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、皮膚において非常に限定された側方拡散しか示さないことである。このクラスの分子の後者の限界は、先に記載されるようなスレッディング技術によってアンチセンスオリゴヌクレオチドを投薬することによって、克服可能である。
【0263】
実施例3:in vivoモデル系における、ヒト・ケロイドをターゲティングするCTGFアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた動物研究
研究目的
本研究の目的は、ヒト・ケロイド/マウス異種移植片モデルを用いた、in vivoモデル系における、ヒトCTGFをターゲティングするアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性を評価することであった。試験したオリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド第412300号(配列番号45)であった。
【0264】
方法
ヒト・ケロイド/マウス異種移植片モデル
ヌードマウス内に移植したヒト・ケロイド組織を用いたヒト・ケロイド/マウス異種移植片モデルを用いた。
【0265】
美容上の理由のためにケロイドの選択切除を受けた患者の廃棄組織から、ケロイド組織の新鮮な標本を匿名で得た。ケロイド試料を10x5x5mm試料にプロセシングして、そして化学天秤上で重量測定した。次いで、ケロイド試料を以下に記載するようにマウスに移植した。
【0266】
3%イソフルランを用いてマウスを麻酔した。術前および術後に、必要に応じてブプレノルフィンを投与した(0.3mg/ml;2mg/kg;SCのブプレノルフィン)。
【0267】
全身麻酔を達成し、そして動物の準備をした後、左および右肩胛骨上で皮膚において2つの10mm切開を行って、そして先細ハサミを用いて、皮下脂肪および筋膜の間にパウチを形成した。1つのケロイド試料を各パウチ内に挿入した。切開を獣医学等級シアノアクリレート接着剤(VetBondまたはNexaband)で閉鎖し、そしてその領域に70%エタノールを塗布した。次いで、その領域に無菌半透膜を巻いた(Op−SiteTM、Smith and Nephew)。
【0268】
ケロイドに対するin vivoのASOの評価
ヒトCTGFをターゲティングする(そしてマウスCTGFをターゲティングしない)ASOを用いた(アンチセンスオリゴヌクレオチド第412300号;配列番号45)。上述のin vivoモデル系におけるASOの有効性を試験するため、ケロイド移植物にASO(PBS中に溶解)またはPBS対照のいずれかを注射した。群あたり8匹の動物を含む動物2群があった(2ケロイド/動物)。ケロイド移植後、ASO投薬前にほぼ2週間、動物を順応させた。
【0269】
ケロイド試料あたり総用量500μgのオリゴを、総体積100μl(5.0mg/mlのストック溶液から)で投与した。ASOまたはPBS対照を、週2回、全部で4週間、各移植物にすぐ隣接して投与した。最後の注射の1週間後、1つの移植物を取り除き、そして遺伝子発現分析のため、qRT−PCRに供し、そして対側ケロイドを取り除き、そして蛍光総密度(IDF)を用いて、コラーゲン含量に関して組織学を分析した。
【0270】
総RNAを単離し、そしてヒトmRNA配列に特異的であることが示されているプライマー対を用いて、定量的リアルタイムPCRによって、CTGFまたはコラーゲンIII型アルファ1(Col3A1)mRNAのいずれかを決定した。mRNAレベルを同じ試料中のGAPDHレベルと相関させ、そしてPBS単独で処置した対照に対するASO処置試料のいかなる変化も計算した。
【0271】
結果
ケロイド試料あたり総体積100μl中の500μgのアンチセンスオリゴヌクレオチド第412300号(配列番号45)での処置の4週間後の結果によって、個々のケロイド試料におけるCTGFおよびCol3A1 mRNA発現の減少が示される。CTGF ASOでの処置は、対照の67%まで、ケロイド組織中のCTGF mRNA発現を減少させた(p=0.082)(図2A)。CTGF ASOでの処置は、対照の45%まで、ケロイド組織中のCol3a1 mRNA発現を減少させた(p=0.153)(図2B)。
【0272】
結論
ケロイドは、線維芽細胞の異常増殖および異なる型のコラーゲンの過剰産生によって特徴付けられる。組織病理学的に、これらは、厚くヒアリン化したコラーゲンの束または粘液性粉砕物質を含むケロイド性コラーゲンの渦巻きおよび小結節が存在すること、ならびにケロイド瘢痕真皮中に線維芽細胞が比較的少ないことによって特徴付けられる。大きな厚いコラーゲン束および多数の細い原線維が緊密に一緒にパッキングされる。III型コラーゲンは、皮膚に見られる2番目に豊富なコラーゲンであり、そしてケロイド中に非常に豊富である。Col3A1は、正常皮膚に比較して、ケロイド中で有意に上昇する。
【0273】
本明細書において、2’MOEで化学的に修飾されたASOが、損なわれていないヒトケロイド組織中のCTGFを減少させる能力が、初めて立証されている。ヒトケロイド組織をASO CTGFで処置すると、ターゲットCTGF mRNA発現が33%減少した。これはまた、Col3A1発現の55%の減少も生じている。Col3A1発現のこの減少は、ケロイド成長を患う患者において、有意な療法的利益を導き、そしてケロイド治療のための新規薬剤としての2’MOE ASOの有用性を立証する。
【0274】
実施例4:ヒトにおける乳房瘢痕修正
研究目的
これは、以前の乳房手術から生じた瘢痕の選択修正を経ている被験体における、CTGFアンチセンスオリゴヌクレオチド(EXC 001)の有効性および安全性を評価するランダム化二重盲検被験体内対照臨床研究である。この研究は、被験体が、瘢痕修正手術を是認するのに十分な重症度の既存の瘢痕を有することを必要とする。したがって、この研究は、修正プラセボ処置瘢痕において高率の肥大性瘢痕またはケロイド形成を有すると期待されうる被験体に関してプレスクリーニングする。
【0275】
以前乳房手術を受け、そして現在同じ解剖学的位置に両側性マッチング瘢痕を有する患者において、皮内スレッディング注射を通じて、EXC 001(配列番号39)またはプラセボを修正乳房瘢痕の部分に投与した。この研究の主目的は、続く皮膚瘢痕を減少させる際のEXC 001の有効性を評価することであった。この研究の二次目的は、EXC 001の安全性を評価することであった。
【0276】
方法
修正乳房創傷/瘢痕のそれぞれの側の6cm部分を、4用量のEXC 001またはプラセボで、外科切開を閉鎖した2週後、5週後、8週後、および11週後に処置した。各被験体において、EXC 001またはプラセボでどちらかの側を処置するランダム化を決定した。
【0277】
用いたEXC 001の投薬量は、直線センチメートルあたり5mgであった。用いたEXC 001の濃度は、25mg/mlであり、そして100μlのEXC 001を修正乳房創傷/瘢痕直線センチメートルあたりに注射した。注射は、各切開の両側に行い、直線センチメートルあたりの量の半分を各側に投与した。所定の側の注射は3cm離した。プラセボまたはEXC 001を切開全長に隣接してそしてこれに沿って送達するため、皮内針(長さ3cm)を注射に用いた。スレッディング技術によって、針を外科切開にすぐ隣接して各側に挿入し、そして針を引き抜く際にEXC 001またはプラセボを注射して、等量のアンチセンス薬剤が瘢痕全長に沿って投与されるようにする。
【0278】
研究期間はおよそ31週であった。被験体は、第1日に瘢痕修正を受け、その後、4用量のEXC 001またはプラセボを、外科切開を閉鎖した2週後、5週後、8週後、および11週後に投与される。瘢痕観察および評価を24週で行った。
【0279】
個々の患者由来の切開のマッチした対各々を等級付けすることによって有効性を決定した(被験体内分析)。切開瘢痕の重症度を等級付けする3つの方法を用いて、瘢痕修正手術の24週後、有効性を評価した。
【0280】
・瘢痕の被験体評価。1〜10の尺度で、患者が瘢痕の外見に関して「総合的」意見を等級付けした。
【0281】
・瘢痕の医師(研究者)評価。1〜10の尺度で、医師が瘢痕の外見の総合的意見を等級付けした。
【0282】
・0=ありうる最善の瘢痕、および100=ありうる最悪の瘢痕である、100mm視覚的アナログ尺度(VAS)を用いた、盲検瘢痕写真の対の専門家委員会評価。この方法は、瘢痕の絶対的重症度に関する情報、ならびに対の2つの瘢痕間の相違を提供する。
【0283】
結果
21人の被験体がこの研究を完了した。術後24週の写真を調べると、ほぼすべての被験体が、少なくとも一方の側で、瘢痕修正手術後、肥厚性瘢痕の再発を示すことが示される。いくつかの症例では、瘢痕は、元来の切開の境界を越えて広がり、そしてしたがって、ケロイド性瘢痕である。
【0284】
本研究は、すべての3つの終点において、EXC 001を支持する統計的に有意な結果を達成した(負のスコアは、EXC 001を支持する、プラセボおよびEXC 001処置間の相違に相当する−以下の表2を参照されたい)
【0285】
・瘢痕の被験体評価:
・「総合的」等級付けは、EXC 001を支持して統計的に有意であった(p=0.033)。
【0286】
・瘢痕の医師評価:
・「総合的」等級付けは、EXC 001を支持して統計的に非常に有意であった(p<0.001)。
【0287】
・写真の専門家委員会VAS等級付けもまた、EXC 001を支持して統計的に非常に有意であった(p<0.001)。
【0288】
表2
【0289】
【表2】
【0290】
図3Aは、CTGFアンチセンスオリゴヌクレオチド(EXC 001または配列番号39)での処置が、術後24週で、肥厚性瘢痕の形成および成長を阻害することを示す。図3Bは、やはり24週での異なる被験体からの結果を示す。この第二の実施例において、患者は、プラセボ処置瘢痕において、修正手術後24週で、ケロイドを発展させている。対照的に、隣接する瘢痕修正部位でのケロイド瘢痕の形成および成長は、EXC 001での処置によって、ほぼ完全に防止された。
【0291】
したがって、これらの2つの実施例において、肥厚性瘢痕およびケロイド瘢痕の両方の成長が、EXC 001での処置によって阻害される。写真各セットの下のスコアは、プラセボおよびEXC 001処置瘢痕間の改善の度合いを表す。例えば、−19.3の専門家VASスコアは、プラセボ瘢痕が、対応するEXC 001処置瘢痕よりも、100ポイント尺度で19.3劣ることを示す。−1の医師および被験体スコアは、プラセボ処置瘢痕が、対応するEXC 001処置瘢痕よりも、10ポイント尺度で1ポイント劣ることを意味する。結果は、EXC 001が、肥厚性瘢痕およびケロイド瘢痕の両方の重症度を減少させることを立証する。
【0292】
実施例5:ヒトにおける一次予防腹部形成術研究
研究目的
これは、選択腹部形成術を受けている被験体における、CTGFアンチセンスオリゴヌクレオチド(EXC 001)の有効性および安全性を評価するランダム化二重盲検被験体内対照臨床研究である。
【0293】
方法
研究期間は24週間であった。被験体は第1日に腹部形成術を受け、その後、EXC 001またはプラセボのいずれかで9週間の期間に渡って処置を受けた。
【0294】
用いたEXC 001の投薬量は、直線センチメートルあたり5mgであった。用いたEXC 001の濃度は、25mg/mlであり、そして100μlのEXC 001を腹部形成術創傷/瘢痕の直線センチメートルあたりに注射した。各切開の両側に注射を行い、直線センチメートルあたりの量の半分を各側に投与した。薬剤またはプラセボのいずれかを、瘢痕の2つの6cm部分に沿って、瘢痕の各側方端に投薬し、そしてしたがって投薬された部分は、少なくとも10cmの未処置瘢痕によって分離されている。所定の側の注射は3cm離した。プラセボまたはEXC 001を切開全長に隣接してそしてこれに沿って送達するため、皮内針(長さ3cm)を注射に用いた。スレッディング技術を用いて、針を外科切開にすぐ隣接して各側に挿入し、そして針を引き抜く際にEXC 001またはプラセボを注射する。
【0295】
被験体は、第1日に瘢痕修正を受け、その後、4用量のEXC 001およびプラセボを、外科切開を閉鎖した2週後、5週後、8週後、および11週後に投与される。瘢痕観察および評価を12週で行った。
【0296】
先の実施例に記載するように、切開瘢痕の瘢痕重症度を等級付けする3つの方法を用いて、投薬した切開のマッチした部分各々を等級付けする(EXC 001処置にプラセボ処置を比較する)ことによって、有効性を評価する。
【0297】
結果
EXC 001は、第12週、3つの基準によって有効である。有効性の例を図4に示す。本実施例において、プラセボ投薬に比較したEXC 001投薬から生じる瘢痕重症度の減少が明らかに見られる。切開のプラセボ処置セクションは肥大性瘢痕に発展し、一方、瘢痕のEXC 001処置セクションはより細い線である。
【0298】
EXC 001が肥厚性瘢痕形成を減少させる能力の別の例を図5に示す。この実施例において、瘢痕の右側(垂直な線の右)の腹部形成術セクションをEXC 001で処置し、一方、垂直な線の左側の瘢痕は、いかなる処置も受けなかった。明らかに、右側の瘢痕の重症度は、左よりもより低い。
【0299】
本実施例はまた、EXC 001療法利益が、薬剤皮内スレッディング投薬の部位にすぐ隣接した瘢痕領域に限定されることも立証する。したがって、薬剤は、投与部位から限定した拡散しか示さないようであり、そして瘢痕にすぐ隣接した、例えば皮内スレッディングによる投薬が必要であろう。
【0300】
実施例6:ヒトにおける、多様な遺伝子のmRNA発現に対するEXC 001の影響を立証するバイオマーカー研究
方法
腹部形成術法の13週前、臍および恥骨上の体毛の生え際領域を、全部で20の2cm切開を生成する部位として用いた。4つの切開の4つの列(A、B、C、D)に長さ2cmの切開があり、そしてこれらを、切開13週後、RNA分析に用いた。腹部の各側上のこれらの列の側方の2つのさらなる切開(a、bおよびc、d)を、切開4または8週後のmRNA分析に用いた。各列を少なくとも4cm離し、そして各切開を少なくとも3cm離した。
【0301】
EXC 001またはプラセボいずれかでの切開創傷処置を2つの処置群にランダムに割り当てた。A、B、C、およびD列の各々の4つの切開創傷すべてに、同じEXC 001またはプラセボ用量を投与した。腹部の一方の側の切開創傷/瘢痕すべてにEXC 001の注射を投与し、そして他方の側にプラセボの注射を投与した。すべての注射は、試験剤を投与される個体に対して盲検化された。所定の被験体のすべての切開/瘢痕を同じ投薬スケジュールで処置した。
【0302】
30の被験体を各10の被験体の3つのコホートの1つにランダムに割り当て;各コホートを異なる投薬スケジュールで処置した(が、高用量および低用量は、すべてのコホートに関して同じであった):
コホート1:第2週、第4週、第6週、第8週、および第10週に皮内注射
コホート2:第2週、第5週、第8週、および第11週に皮内注射
コホート3:第2週、第6週、および第10週に皮内注射
長さおよそ38mmの27ゲージ針を、切開創傷/瘢痕と平行に、そしてほぼ3mm離して、2cm(各切開の全長)皮内挿入した(皮内スレッディング技術)。次いで、針を次第に引き抜きながら、EXC 001またはプラセボのいずれかを注射し、切開線に沿って、真皮内に直線センチメートルあたり均一な量が沈着するようにした。
【0303】
切開の生検
側方切開に隣接した各側で、第1日に、mRNA分析のため、1つの6mmパンチ生検を採取し、そして非創傷皮膚試料のための対照として用いた。第4週、コホート1の9人の患者、そして第8週、コホート2および3の20人の患者の側方切開から生検を行った(a、b、c、d)。ランダム化割り当てによって、これらの切開のうち、2つにEXC 001を投与し、そして2つにプラセボを投与した。腹部形成術直前(第13週)、A、B、C、およびD列中の各瘢痕を、瘢痕重症度に関してスコア付けし(医師および専門家委員会尺度による、上記実施例5を参照されたい)、そしてまた、組織学的およびRNA分析両方のために試料採取した。
【0304】
結果
すべてのコホートを組み合わせた際、高用量レベルで、医師の総合的意見に関して、EXC 001処置対プラセボ処置瘢痕に関して、統計的に有意な改善が観察された(8.7%、P値=0.018)。すべてのコホートを組み合わせそしてすべての用量を組み合わせた総合的評価に関してもまた、統計的に有意な平均相違が観察された(5.9%、p値=0.016)。これらの結果は再び、EXC 001が瘢痕重症度を減少させる能力を立証する。
【0305】
EXC 001が肥厚性瘢痕の成長および形成を減少させる能力の例を図6に示す。本実施例において、一方を5mg/cm EXC 001で、そして一方をプラセボで処置した、2つのマッチングした瘢痕を示す。EXC 001処置瘢痕の重症度は、プラセボ処置瘢痕より低い。
【0306】
これらの2つの瘢痕の組織学的分析によってもまた、CTGFタンパク質発現の減少をEXC 001が仲介することが明らかにされ(免疫組織化学による)、EXC 001が、意図されるターゲット(CTGF)の発現を減少させる機能を有することが明らかに立証された。9つの異なるmRNA転写物の発現分析もまた、創傷形成4週後、8週後、および13週後に行った(表3)。
【0307】
表3:XP−PCRによって分析したmRNA転写物
【0308】
【表3】
【0309】
術後創傷形成後、CTGFおよびコラーゲン遺伝子のmRNA発現増加が予期された。瘢痕におけるCTGF mRNA発現は、3つの時点すべてで、そして3つのコホートすべてにおいて、ベースライン非創傷皮膚より増加した(およそ2〜5倍)。発展しつつある瘢痕組織において予期されるであろうように、Col1A2(5〜8倍)およびCol3A1(3〜7倍)などのコラーゲン遺伝子を含む、瘢痕形成と関連することが知られる多様な遺伝子の発現増加もまた観察された。
【0310】
測定した3つの時点すべてで、対応するプラセボ処置瘢痕と比較した際、CTGF mRNA誘導の抑制が、EXC 001注射後に観察された。図7Aに示すように、第13週で、CTGF mRNA誘導における総合的な(すべての3つのコホートに渡る)EXC 001仲介性減少は53%であった。CTGF mRNA抑制の度合いもまた、時間およびコホート投薬に応じて多様であった。例えば、1つのコホートにおいて、5mg/cmの単回用量は、非創傷皮膚に比較して、140%発現のみの誘導に対して、CTGF発現を74%(p=0.011)減少させた(EXC 001の最後の用量の2週間後に測定を行った)(図7D)。さらに、Col1A2、Col3A1(図7B)、およびエラスチン繊維(ELASF)(図7C)の総合誘導mRNA発現レベルもまた、第13週に測定した際、EXC 001処置によって、有意に減少した(それぞれ、40%(p=0.0013)、69%(p<0.0001)、および63%(p=0.0004))(3つのコホートすべてに渡って)。
【0311】
正常な創傷修復および治癒プロセスを促進するために、ある程度のコラーゲン遺伝子発現が必要であるため、コラーゲン遺伝子発現の完全阻害は、薬剤処置の望ましい結果でない可能性が高い。図7DおよびEに示すように、第4週または第13週、プラセボに比較して、EXC 001処置によって、SMAD3またはTGFβ1 mRNA発現いずれの有意な阻害もなかった。
【0312】
これらのデータは、ヒトにおけるEXC 001の作用機構を示す。これらのデータはまた、EXC 001が皮膚瘢痕形成の重症度を減少させることが可能である機構も立証する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]