(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1計量工程の設定の補正に用いる圧力は、前記スクリュの制御を速度制御から圧力制御に切り替える時の圧力である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却時間よりも計量時間が長い場合、計量工程完了後に型開工程が行われる。計量工程中に型開工程を開始させることで成形サイクルを短くすることができるが、型開状態での計量を可能とするため、シリンダの出口を開閉する開閉機構が必要であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、シリンダの出口を開閉する開閉機構以外の手段によって型開状態での計量を可能とする、射出成形機の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
成形材料を加熱するシリンダと、
該シリンダ内に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュと、
該スクリュを回転させる回転駆動部と、
前記スクリュを進退させる進退駆動部と、
前記スクリュの前方の前記成形材料の圧力を検出する圧力検出器と、
前記回転駆動部および前記進退駆動部を制御する制御装置とを備え、
該制御装置は、
第1計量工程では、前記スクリュを所定位置まで後退させ、該所定位置で前記スクリュを回転させることにより前記スクリュの前方に成形材料を送り、前記スクリュの前方の空間に成形材料を溜め、
第1充填工程では、前記スクリュを前進させることにより、前記第1計量工程によって前記スクリュの前方に溜めた成形材料を前記シリンダから射出し、金型装置内に充填し、
前記圧力検出器によって前記第1充填工程における前記圧力を監視し
、
第2計量工程では、前記スクリュを回転させることで前記スクリュの前方に成形材料を溜めると共に前記スクリュ前方に溜まる成形材料の圧力によって前記スクリュを所定位置まで後退させ、
第2充填工程では、前記スクリュを前進させることにより、前記第2計量工程によって前記スクリュの前方に溜めた成形材料を前記シリンダから射出し、金型装置内に充填し、
前記圧力検出器によって前記第2充填工程における前記圧力を監視し、
前記第2充填工程における前記圧力と前記第1充填工程における前記圧力とに基づいて前記第1計量工程の設定を補正する、射出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、シリンダの出口を開閉する開閉機構以外の手段によって型開状態での計量を可能とする、射出成形機が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による射出成形機を示す図である。射出成形機は、例えば
図1に示すように、型締装置10、射出装置50、および制御装置70を有する。
【0011】
型締装置10は、金型装置30の型閉、型締、型開を行う。型締装置10は、例えば
図1に示すように、フレーム11、固定プラテン12、および可動プラテン13を有する。
【0012】
固定プラテン12は、フレーム11に対して固定される。固定プラテン12における可動プラテン13との対向面に固定金型32が取り付けられる。
【0013】
可動プラテン13は、フレーム11上に敷設されるガイド(例えばガイドレール)17に沿って移動自在とされる。可動プラテン13における固定プラテン12との対向面に可動金型33が取り付けられる。
【0014】
固定金型32と可動金型33とで金型装置30が構成される。固定プラテン12に対して可動プラテン13を移動させることにより、型閉、型締、型開が行われる。型締状態の固定金型32と可動金型33との間にキャビティ空間34が形成される。
【0015】
射出装置50は、金型装置30内に成形材料を充填する。射出装置50は、例えば
図1に示すように、シリンダ51、スクリュ52、計量モータ53、射出モータ54、および圧力検出器55を有する。
【0016】
シリンダ51は成形材料(例えば樹脂)を加熱する。成形材料の供給口51aはシリンダ51の後部に形成される。シリンダ51の外周には、ヒータなどの加熱源が設けられる。シリンダ51の前端にはノズル56が設けられる。
【0017】
スクリュ52は、シリンダ51内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ52を回転させると、スクリュ52の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は前方に移動しながら徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ52前方に溜まる。その後、スクリュ52を前進させると、スクリュ52前方の成形材料がノズル56から射出され、金型装置30内のキャビティ空間34に充填される。
【0018】
計量モータ53は、スクリュ52を回転させる回転駆動部である。計量モータ53はエンコーダ53aを有してよい。エンコーダ53aは、計量モータ53の回転数を検出することによりスクリュ回転数を検出し、その回転数を示す信号を制御装置70に出力する。
【0019】
射出モータ54は、スクリュ52を進退させる進退駆動部である。スクリュ52と射出モータ54との間には、射出モータ54の回転運動をスクリュ52の直線運動に変換する運動変換部が設けられる。射出モータ54はエンコーダ54aを有してよい。エンコーダ54aは、射出モータ54の回転数を検出することによりスクリュ52の前進速度を検出し、その前進速度を示す信号を制御装置70に出力する。
【0020】
圧力検出器55は、スクリュ52の背圧を検出することによりスクリュ52前方の成形材料の圧力を検出し、その圧力を示す信号を制御装置70に出力する。尚、本実施形態の圧力検出器55はスクリュ52の後方に設けられるが、圧力検出器55の設置場所は特に限定されない。例えば圧力検出器は、シリンダ51内に設けられてもよい。
【0021】
制御装置70は、型締装置10および射出装置50を制御する。制御装置70は、メモリなどの記憶部およびCPUを有し、記憶部に記憶された制御プログラムをCPUに実行させることにより、型締装置10および射出装置50を制御する。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態による射出成形機の制御方法を示す図である。
図2に示すステップS11において、制御装置70は、第2計量工程を制御する。第2計量工程は冷却工程中に行われ、型開工程が第2計量工程後に開始される。冷却工程は、金型装置30内に充填された成形材料を固化させる工程である。
【0023】
制御装置70は、第2計量工程において、計量モータ53を作動させてスクリュ52を回転させ、成形材料を前方に送る。成形材料は前方に送られながら徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ52前方に溜まるにつれ、スクリュ52前方の成形材料の圧力によってスクリュ52が後退される。
【0024】
制御装置70は、第2計量工程において、スクリュ回転数が設定値になるように計量モータ53を制御する。スクリュ回転数の設定値は、一定でもよいし、スクリュ位置または経過時間に応じて変更されてもよい。
【0025】
制御装置70は、第2計量工程において、スクリュ52の急激な後退を制限すべく、射出モータ54を作動させてスクリュ52に対して背圧を加えてよい。制御装置70は、スクリュ52の背圧が設定値になるように射出モータ54を制御する。
【0026】
スクリュ52が所定位置まで後退し、スクリュ52前方に所定量の成形材料が蓄積されると、第2計量工程が終了する。
【0027】
図2に示すステップS12において、制御装置70は、第2充填工程を制御する。制御装置70は、第2充填工程において、射出モータ54を作動させてスクリュ52を前進させることにより、第2計量工程によってスクリュ52前方に溜めた成形材料をシリンダ51から射出し、金型装置30内に充填する。
【0028】
制御装置70は、第2充填工程において、スクリュ52の前進速度が設定値になるように射出モータ54を制御する。スクリュ52の前進速度の設定値は、一定でもよいし、スクリュ位置または経過時間に応じて変更されてもよい。
【0029】
スクリュ52が所定位置(所謂V/P切換位置)まで前進すると、第2充填工程が終了し、保圧工程が開始される。尚、充填工程開始からの経過時間が所定時間に達すると、保圧工程が開始されてもよい。保圧工程は、金型装置30内の成形材料に圧力をかける工程である。成形材料の冷却による体積収縮分の成形材料が補充できる。V/P切替時に、スクリュ52の制御が速度制御から圧力制御に切り替えられる。保圧工程では、スクリュ52の圧力が設定値になるように射出モータ54が制御される。
【0030】
制御装置70は、圧力検出器55によって、第2充填工程におけるスクリュ52前方の成形材料の圧力(以下、単に「第2充填工程における圧力」という)を監視し、監視結果(例えばピーク圧)を記憶部に記憶する。制御装置70は、ピーク圧の代わりに、V/P切替時の圧力を記憶してもよく、記憶するデータの種類は多種多様であってよい。制御装置70は、第2計量工程および第2充填工程を繰り返し行い、複数ショットの平均値を記憶部に記憶してよい。
【0031】
図2に示すステップS13において、制御装置70は、第1計量工程を制御する。第1計量工程は、第2計量工程と異なり、型開工程と重なる。型開工程が第1計量工程中に開始される。
【0032】
制御装置70は、第1計量工程において、射出モータ54を作動させてスクリュ52を後退させ、スクリュ52前方に空間を形成する。その後、制御装置70は、スクリュ位置を固定した状態で計量モータ53を作動させてスクリュ52を回転させ、スクリュ52前方に成形材料を送る。
【0033】
制御装置70は、第1計量工程において、スクリュ回転数が設定値になるように計量モータ53を制御する。スクリュ回転数の設定値は、一定でもよいし、経過時間に応じて変更されてもよい。
【0034】
第1計量工程では、スクリュ52前方に空間を形成した後で、スクリュ52前方に成形材料を送るため、スクリュ52前方の成形材料には圧力がほとんど作用しない。そのため、第1計量工程中に型開工程が開始される場合に、シリンダ51からの成形材料の流出が抑制できる。
【0035】
制御装置70は、第1計量工程において、圧力検出器55によってスクリュ52前方の成形材料の圧力を監視する。当該圧力が所定値以上になると、スクリュ52前方の空間が成形材料で充填されたと判断できる。
【0036】
第1計量工程終了時のスクリュ位置は、暫定的に第2計量工程終了時のスクリュ位置と同じとされてよく、後述のステップS15において補正されてよい。尚、補正前に、第1計量工程終了時のスクリュ位置は、第2計量工程終了時のスクリュ位置よりも後方とされてもよく、特に限定されない。
【0037】
尚、本実施形態の制御装置70は、第1計量工程において、スクリュ52を後退させた後にスクリュ52を回転させるが、スクリュ52の後退とスクリュ52の回転とを繰り返し行ってもよい。また、詳しくは後述するが、制御装置70は、スクリュ52の後退時にスクリュ52を回転させてもよい。第1計量工程において、スクリュ52前方の成形材料に作用する圧力が、シリンダ51から成形材料が流出する圧力よりも低ければよい。
【0038】
図2に示すステップS14において、制御装置70は、第1充填工程を制御する。制御装置70は、第1充填工程において、射出モータ54を作動させてスクリュ52を前進させることにより、第1計量工程によってスクリュ52前方に溜めた成形材料をシリンダ51から射出し、金型装置30内に充填する。第1充填工程の設定は、第2充填工程の設定と同じであってよい。例えば、スクリュ52の前進速度、V/P切替位置などは、第1充填工程と第2充填工程とで同じであってよい。
【0039】
制御装置70は、圧力検出器55によって、第1充填工程におけるスクリュ52前方の成形材料の圧力(以下、単に「第1充填工程における圧力」という)を監視し、監視結果(例えばピーク圧)を記憶部に記憶する。制御装置70は、ピーク圧の代わりに、V/P切替時の圧力を記憶してもよく、記憶するデータの種類は多種多様であってよい。尚、制御装置70は、第1計量工程および第1充填工程を繰り返し行い、複数ショットの平均値を記憶部に記憶してよい。
【0040】
ところで、第1計量工程では、第2計量工程と異なり、スクリュ52前方の成形材料に圧力がほとんど作用しない。そのため、第1計量工程の場合、第2計量工程の場合よりも、スクリュ52前方の成形材料の密度が低い。
【0041】
そこで、金型装置30内の成形材料の充填量が同じになるように、
図2に示すステップS15において、制御装置70は、第1充填工程における圧力(例えばピーク圧)と第2充填工程における圧力(例えばピーク圧)とに基づき第1計量工程の設定を補正する。第1充填工程における圧力が第2充填工程における圧力と同じになるように、制御装置70が第1計量工程の設定を補正する。補正の対象となる設定は、例えば、第1計量工程終了時のスクリュ位置、第1計量工程の時間などである。補正に用いる圧力は、ピーク圧の代わりに、V/P切替時の圧力でもよい。
【0042】
第1計量工程終了時のスクリュ位置を後退させると、スクリュ52前方の成形材料の量が増え、第1充填工程における圧力が大きくなる。一方、第1計量工程終了時のスクリュ位置を前進させると、スクリュ52前方の成形材料の量が減り、第1充填工程における圧力が小さくなる。
【0043】
また、第1計量工程の時間を伸ばすと、スクリュ前方の成形材料の量が増え、第1充填工程における圧力が大きくなる。計量時間を伸ばす場合、スクリュ52前方の空間が成形材料で充填された後、シリンダ51から成形材料が漏れない程度にしばらくスクリュ52が回転され続ける。一方、第1計量工程の時間を縮めると、スクリュ前方の成形材料の量が減り、第1充填工程における圧力が小さくなる。
【0044】
これらの第1充填工程における圧力と、第2充填工程における圧力と、第1計量工程の設定との関係は、予めテーブルや式などの形態で記憶部に記憶され、第1計量工程の設定の補正に用いられてよい。テーブルや式は、実機またはテスト機による試験やシミュレーションなどによって作成され、更新されてよい。
【0045】
制御装置70は、第1計量工程の設定の補正後、第1計量工程(ステップS16)および第1充填工程(ステップS17)を行い、第1充填工程における圧力と第2充填工程における圧力との差(絶対値)が所定値以下であるか否かを調べる(ステップS18)。この差が所定値以下となるまで、制御装置70はステップS15〜ステップS18を繰り返し行ってよい。
【0046】
尚、本実施形態では、予め記憶部に記憶したデータを参照して第1計量工程の設定を補正するが、第1充填工程の圧力と第2充填工程の圧力との大小関係(どちらの工程の圧力が小さいか)に基づいて第1計量工程の設定を補正してもよい。例えば、第1充填工程の圧力が第2充填工程の圧力よりも小さい場合、第1計量工程終了時のスクリュ位置を所定量後退させる。その後、大小関係を再度調べ、大小関係が変化しない場合にはスクリュ位置をさらに上記所定量後退させ、大小関係が変化する場合にはスクリュ位置を上記所定量よりも少ない量前進させる。スクリュ位置の補正は第1充填工程の圧力と第2充填工程の圧力との差が所定値以下となるまで繰り返し行われ、補正量は徐々に小さくなってよい。
【0047】
補正後の設定で第1計量工程、第1充填工程を行うことにより、第2計量工程、第2充填工程を行う場合と同じ品質の成形品が短時間で得られる。第1計量工程によれば、計量工程中に型開工程が開始される場合にシリンダ51の出口を開閉する開閉機構が不要である。開閉機構が用いられる場合よりもシリンダ51の成形材料の流路が広く、成形材料のせん断発熱が小さく、成形材料の温度を精度良く制御することができる。
【0048】
制御装置70は、補正後の設定で第1計量工程、第1充填工程を繰り返し行う際、第1充填工程における圧力を監視してよい。制御装置70は、成形品の品質を安定化させるため、複数ショット間の第1充填工程における圧力の変化に基づいて第1計量工程の設定を補正してもよい。
【0049】
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態の制御装置70は、第1計量工程におけるスクリュ52の後退時に、スクリュ52を回転させないが、スクリュ52を回転させてもよい。スクリュ52の回転数は、スクリュ52前方の成形材料に圧力が作用しないように設定される。スクリュ52の回転方向は成形材料を前方に送る方向とされる。第1計量工程の時間が短縮できる。
【0051】
また、
図2に示す工程の順番は、特に限定されない。例えばステップS13(第1計量工程)およびステップS14(第1充填工程)は、ステップS11(第2計量工程)およびステップS12(第2充填工程)よりも先に行われてもよい。