【実施例】
【0044】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、限定を加えることを意図したものでは
ない。
【0045】
実施例1――ウサギへのrhPTH(1〜34)の投与による骨強度、及び、密度の増加
実験方法
皮質内部リモデリングによりオステオンを形成する最も小さい動物の1つであるニュー
ジーランドホワイトウサギのおよそ月齢9月、体重3.25〜3.75kgの処女の雌(HRP Inc. Den
ver,Pa.)を、平均グループ体重により各6匹の3つのグループに分けた。2つの実験グルー
プに、生合成PTH(1〜34)を10、または、40μg/ml/kg/日の用量で与えた。コントロー
ルグループには、1.0ml/kg/日で、2%熱不活性化ウサギ血清を含む酸性化した0.9Mの塩
水を与えた。PTH(1〜34)、または、ビヒクルを140日間、週に5日、日に1回皮下注射に
より注射した。ウサギには、無制限に0.5%Ca、及び、0.41%Pを含むウサギ用実験食
物、並びに、水を与えた。
【0046】
用量の選択は、(1) 100μg/kgのPTH(1〜34)の1回の注射後、血清カルシウムが増加
し、24時間後まで基線に戻らなかったが、50μg/kgの単一用量では血清カルシウムは、24
時間内に基線に戻った、(2) 20μg/kg PTH(1〜34)の反復注射により、血清カルシウ
ムは一時的に上昇し、6〜24時間で基線値に戻った、及び、(3) ≦5μg/kgでのPTH(1
〜34)は、骨表面の組織形態計測を変化させなかった、ということを示した一連の予備実
験に基づいていた。
【0047】
一セットのダブルアリザリンマーカー(Sigma,St.Louis)を20mg/kg、殺す前に、55日目
、及び、63日目に筋肉内に、並びに、一セットのダブルカルセインマーカー(Sigma,St.Lo
uis)を5mg/kg、15日目、及び、7日目に皮下に与えた。ウサギを最後の注射からおよそ3〜
6時間後、無作為な順番でCO
2で麻酔し、心臓穿刺により血液を得た後、ペントバルビタ
ールナトリウム(100mg/kg)を腹膜内注射して殺した。右上腕骨、両方の大腿骨、腰椎(L
3〜L5)、及び、右脛骨を得た。
【0048】
血液化学
血清カルシウム、リン酸、アルカリホスファターゼ、クレアチニン、及び、尿素窒素を
コンピューターによる多重チャンネル血清分析により測定した。
【0049】
組織形態計測
組織形態計測測定を脛骨中間部分の皮質骨、及び、L3の海綿骨について行った。殺し
た後、これらの骨を各動物から取り、10%中性緩衝化ホルマリン中で24時間固定した。組
織を勾配のあるアルコール(70〜100%、各勾配で2回変え、真空下で各4時間)中で脱水し
た。その後、各工程2時間で標本をキシレン中に入れ、20psiの真空下でShandon Hypercen
ter自動処理装置(Shandon Lipshaw,Pittsburgh,PA)中、24時間の浸潤スケジュールでメチ
ルメタクリレートを浸潤させた。試料を0.2%のイニシエーター(Delaware Diamond Knive
s,Wilmington,DE)を加えた2%DDK-プラスト中に包埋した。脛骨の横断面は、石切用線
鋸(Delaware Diamond Knives,Inc.,DE)を用い80μmに切り取り、Goldnerのトリクローム
で染色した。厚さがおよそ80μmの未染色の横断面を蛍光色素マーカーで動態組織形態計
測のために処理した。L3の矢状部分を、Reichert-Jung2050ミクロトーム(Magee Scient
ific Inc.,Dexter,MI)で5μmに切断し、動態組織形態計測のために、McNealのテトラクロ
ームで染色するか、未染色のままで残した。
【0050】
組織形態計測は、150×の倍率で、Nikon蛍光顕微鏡(Optiphot,Nikon,Tokyo,Japan)、及
び、半自動式デジタル化システム(Bioquant IV,R&M Biometrics,Nashville,TN)を用いて
行った。骨膜、皮質内部、及び、皮質内(intracortical)外被における骨形成、及び、再
吸収は脛骨の中央骨幹部分の全横断面面積にわたって測定した。海綿骨についての測定は
、腰椎の中央、周囲の皮質殻の端から0.5mmの6mm
2領域内で行った。学名は、ASBMR
委員会の組織形態測定命名(Parfitt Am,Drezner MK,Florieux FH,Kanis JA,MallucheMeun
ier PJ,Ott SM,Recker RR、"Bone histomorphometry: standardization of nomenclature
, symbols, and unit. Report of the ASBMR Histomorphometry Nomenclature Committee
",
J.Bone Miner.Res.,
2:595〜610(1987年))に従った。動態パラメーターは、カルセイン
マーカーに基づいて測定した。
【0051】
骨量測定
50%エタノール/塩水中の大腿骨、及び、第4腰椎の中間部分を960A pQCTを備
えた定量コンピューター断層撮影(QCTまたはpQCT)で横断走査し、Dichteソフトウ
ェア バージョン5.1(Norland/Stratec,Ft.Atkinson,WI)を用い分析した。全組織パラメー
ターを、容量骨塩密度(vBMD,mg/cm
3)、断面面積(X-領域,mm
2)、及び、骨塩含有量(
BMC,mg)を含めて、148×148×1200μmのボクセル容積を用い測定した。50%エタノー
ル/塩水浴中の摘出された大腿骨の全大腿骨頸部を、周辺二重エネルギー吸収測定機(pD
EXA,Norland/Stratec)を用いて走査した。特に、見かけの骨塩密度(aBMD,g/cm
2)
、投影面積(cm
2)、及び、骨塩含有量(BMC,g)を0.5×1.0mmの走査ステップ、及び、0.
04の閾値を用いて測定した。
【0052】
生体力学試験
骨の物理的性質を右の大腿骨、及び、L5の中間部分で測定した。骨の一部を切除して
結合組織を取り、等張塩水を含ませたガーゼで包み、試験まで−20℃に凍結した。試験前
に試料を室温で1〜2時間解凍した。全ての試料を、37℃の循環する水浴中で、MTS 8
10自動制御水圧試験装置(MTS Corp.,Minneapolis,MN)を用いて破断について試験した。
荷重-変位曲線を、HP 7090A測定プロットシステム(Hewlett Packard,Camas,WA)を
用いて記録した。最終力(試料が耐える最大の力)、剛性(荷重変位曲線の直線部分の傾斜)
、及び、破断エネルギー(破断前の荷重-変位曲線の下の面積)を、デジタル化システム(Ja
ndel Scientific,Corte Madera,CA)を用いて測定した。これらのパラメーターは、固有の
物質特性、及び、外形に依存する構造的な特性である(Turner CH,Burr DB,"Basic biomec
hanical measurements of bone: a tutorial.",
Bone,
14:595〜608(1993年))。絶対負荷(
試料が耐える最大負荷)、弾性率(物質の固有の剛性)、及び、靭性(単位容量当りの骨折に
対する耐性)等の、大きさ、および、形とは無関係な固有の物質特性を得るために、デー
タを標準化した(上記)。
【0053】
真中部分で大腿骨の強度を、3点折り曲げを用いて測定した。大腿骨を、前側をローダ
ーの方に向けて取り付け器具上に置いた。荷重は、54mm離れた2つの支持物の間の中点に
かけた。荷重セルを骨折が起こるまで1mm/秒の速度で置換した。荷重-変位曲線から得ら
れたデータを標準化するため、曲げ絶対負荷を最大力から、
σ
f=FuLr/8I (1)
(式中、σ
fは曲げ骨折負荷であり、Fuが最大力であり、Lが支持物間の長さであり、r
が前側-後側方向における半径であり、そして、Iが楕率である)
により求めた(上述)。大腿骨の横断面が楕円と仮定して、慣性モーメントの値を求めた。
【0054】
皮質の平均の厚さを、大腿骨横断面の各象限について行った、±0.005mmの精度の正確
に0.01mmのデジタルカリパス(Mitutoyo,Japan)を一対用いた厚さの測定値から計算した。
【0055】
大腿骨の弾性率(E
f)を以下の式を用いて計算した:
E
f=(剛性)
*(L
3/48I) (2)
【0056】
大腿骨の靭性(靭性
f)もまた、以下の式を用いて計算した:
靭性
f=3
*(破断エネルギー)
*r
2/LI (3)
【0057】
第5腰椎(L5)の機械的な試験のため、脊椎本体の両遠位プレートをBuehler Isomet低
速鋸(Buehler LTD,Evanston,IL)を用いて平行に切断した。背部突起の切除後、L5の機
械的な強度を圧迫測定した。圧迫荷重は、ストロークコントロールして、1mm/秒のクロス
ヘッド速度でピボットを備えた圧板を通して与え、脊椎本体の表面の平行でないアライメ
ントを補正した。荷重-変位曲線から得られたデータを標準化するため、そして、骨の外
形と無関係な固有の物質特性を評価するため、最大負荷を総横断面面積で割った最大力と
して計算した。
【0058】
横断面面積(CSA)は、
CSA=πab/4 (4)
(式中、a及びbは各々、前側-後側、及び、中央-横方向の幅である)
で計算した。
【0059】
脊椎の弾性率(E
V)は、
E
V=(剛性)/(CSA/h) (5)
(式中、hは脊椎本体の頭蓋-尾部の高さである)
で計算した。
【0060】
脊椎の靭性(靭性
V)は、
靭性
V=(破断エネルギー)/(CSA
*h) (6)
で計算した。
【0061】
音波顕微鏡法
500μmの厚さの横断面を右大腿骨の中央骨幹から、石切用線鋸を用いて切り取った。各
試料の精密な厚さをマイクロメーター(Mitutoyo,Japan)を用いて、1μmの解像力で測定し
た。音響速度の測定を、音波顕微鏡(UH3,Olympus,Japan)を用いて、Hasegawa K、Turn
er CH、Recker RR、Wu E、Burr DBら("Elastic properties of osteoporotic bone measu
red by scanning acoustic microscopy",
Bone 16:85〜90(1995年))により以前報告された
方法により行った。この技術を用いることにより、選択された焦点における詳細な固有の
機械的性質を測定することができる。50MHzの変換器(V-390,Panametrics,WalthammA)を、
パルス-エコーモードの音波を生じさせるのに用いた。50MHzのレンズは直径およそ60μm
の音波ビームを生じた。試料を一定温度(22℃)の水で満たされたチャンバーの底に固定し
た。試料の先端から反射される音波と、試料の底面から反射される音波の間の遅延時間を
、デジタルオシロスコープ(TDS 620,Tekronix,Beaverton,OR)を用いて測定した。各部位
が上腕骨の腹側の皮質中で、互いに300μmより離れているような5つの異なる部位につい
て遅延時間を測定した。音響速度を試料の厚さの2倍を平均遅延時間で割ったものとして
計算した。湿重量(Ww)、及び、100%エチルアルコール中の浸漬重量(Ws)を、天秤(AJ
100,Mettler Instrument Corp.,Heightstown,NJ)を用いて測定した。湿密度(ρ)をアルキ
メデスの原理を用いて計算した:
ρ={Ww/(Ww−Ws)}
*ρETOH (7)
(式中、ρETOHはアルコール密度(0.789g/cm
3)である)。
骨の音波の経路が均一であると仮定し、試料の固有の剛性を表す弾性率(C)を計算した:
C=ρ
*v
2 (8)
(式中、ρは湿密度であり、vは音響速度である)。
【0062】
統計分析
バートレット分析(Bartlett analysis)を分散量の均一性を確認するために使用した。
分散量が均一であれば、一方向ANOVAを、その後の比較としてのFisher's PLSD試験と
一緒に適用した。分散量が均一ではない場合、分散量のKruskal-Wallis 非パラメーター
分析を適用し、その後の分析としてMann-Whitney's U-試験を用いた。統計上の有意性は
、p<0.05となった。結果は、平均±SEMで表した。
【0063】
結果
体重、及び、生化学
10mg/kg/日のビヒクルPTH(1〜34)で処置したウサギは、140日の終わりまでに、体重
に少しの増大を示した。40μg/kg/日のPTH(1〜34)を与えたウサギは、体重51gの少し
の減少を示し、それは実験中の体重の1.4±1.6%の損失であった(表1)。血清測定値につ
いては、血清カルシウム、及び、尿素窒素の少量の増加が観察されたが、ウサギの標準的
な生理学的反応の範囲内であった。血清アルカリホスファターゼは、より高いPTH(1〜
34)用量で2倍に増加した(表2)。
【表1】
体重へのPTH(1〜34)の影響
【表2】
血清化学へのPTH(1〜34)の影響
【0064】
組織形態計測
脛骨中間部分表面の骨膜での骨形成(Ps.MS/BS)、及び、皮質膜内での骨形成(E
c.MS/BS)はPTH(1〜34)処置グループで増加した(表3)。より高い用量グループで
のPs.MS/BSは、他の2つのグループでよりも有意に大きく(p<0.001)、そして、よ
り高い用量グループでのEc.MS/BSは、コントロールグループのそれよりも有意に大
きかった。血清アルカリホスファターゼの増加と一致して、各表面(Ps.BFR/BS及
びEs.BFR/BS)の骨形成速度は、より高い用量グループで他の2つのグループよりも
有意に大きかった(p<0.05)。ミネラル接着率(MAR)は骨膜外被、または皮質外被で変
化しなかった。
【0065】
40μg/kg/日のPTH(1〜34)を与えたウサギにおける皮質内部の再吸収部位の数(Rs.
N/Ct.Ar)は、他の2つのグループに比べて有意に7倍大きかった(p<0.05)(表4)。4
0μg/kg/日のPTH(1〜34)を与えたウサギにおける標識されたオステオン数(L.On.N
/Ct.Ar)もまた、他の2つのグループと比べて有意に増加した(コントロールグループ
に対してp<0.01、10μg/kg/日グループに対してp<0.05)。MARは、両方の処置グル
ープで有意にコントロールグループよりも大きかった(p<0.01)が、PTH処置グループ
間で有意差は見られなかった。骨形成速度(BFR/BV)、及び、活性化頻度(Ac.F)は
、両方の用量で増加した(各々、p<0.05、及び、p<0.01)。
【0066】
骨面積(B.Ar)は両方の用量で増加したが、より高い用量グループ、及び、コントロ
ールグループの間でしか有意差は見られなかった(p<0.01)。処置後、髄面積(Ma.Ar
)は減少したが、3つのグループ間で有意差はなかった。しかしながら、より高い用量グル
ープの皮質面積(Ct.Ar)は、他の2つのグループよりも有意に大きかった(コントロー
ルグループに対してp<0.0001、より低い用量グループに対してp<0.05)。より低い用
量グループのCt.Arはまた、コントロールよりも有意に高かった(p<0.05)。似たよ
うな結果が、%Ct.Ar.で見つけられた。
【0067】
10μg/kg/日のPTH(1〜34)を与えたウサギの皮質有孔性(Ct.Po)は、コントロー
ルグループの2倍であり(p<0.05)、40μg/kg/日のPTH(1〜34)を与えたウサギにおけ
るCt.Poは、コントロールグループの6倍高かった(p<0.01)。しかしながら、有孔性
は皮質内部の区画にあり、その部位で生体力学的強度に寄与する可能性は、PTHがまた
、断面積の慣性モーメントの増加と一致した皮質骨面積も増加するので低い。
【表3】
頸骨の中間部分の骨膜、及び、皮質内部の骨のリモデリングに対するPTH(1〜34)の効
果
【表4】
頸骨の中間部分の皮質内部の骨のリモデリングに対するPTH(1〜34)の効果
【表5】
第3腰椎の海綿骨のリモデリングに対するPTH(1〜34)の効果
【0068】
海綿骨では、ほとんどの形成パラメーター(OS/BS、Ob.S/BS、OV/TV、及
び、MS/BS)が、PTH(1〜34)処置により増加した(表5)。40μg/kg/日のPTH(1〜3
4)を与えたウサギにおけるそれは、他の2つのグループにおけるものより有意に大きかっ
た(全てのパラメーターについて、コントロールグループ、及び、10μg/kg/日グループの
両方に対してp<0.01)。骨形成速度(BFR/BS)もまた、40μg/kg/日のPTH(1〜34)
を与えたウサギで、他の2つのグループにおけるものより有意に増加した(コントロールグ
ループ、及び、10μg/kg/日グループの両方に対してp<0.01)。再吸収(ES/BS及びO
c.S/BS)は、PTH(1〜34)処置した両方のグループで増加したが、より高い用量グル
ープの侵食された表面(ES/BS)のみが、コントロールグループよりも有意に大きかっ
た(p<0.001)。3つのグループ間では、骨様の厚さ(O.Th)に差は無かった。骨の代謝
回転が促進されたにも係らず、断片骨容量(BV/TV)は、PTH(1〜34)処置により変化
しなかった。いずれのグループでも、潜伏再吸収(tunneling resorption)、及び、梁周囲
繊維形成(peritrabecular fibrosis)は観察されなかった。
【0069】
骨量測定
pQCTで評価した40μg/kg/日グループの大腿骨中間部分におけるvBMD、及び、
BMCは、他の2つのグループよりも有意に高かった(コントロールグループに対しvBM
Dはp<0.001、BMCはp<0.0001、より低い用量グループに対しvBMDはp<0.05
、BMCはp<0.01)(
図1A)。10μg/kg/日グループにおけるvBMD、及び、BMCも
また、コントロールグループよりも有意に高かった(vBMD、及び、BMCの両方につ
いてp<0.05)。大腿骨中間部分の骨面積も用量依存的に増加したが、それは、40μg/kg/
日グループでのみ有意に増加した(p<0.05)。
【0070】
二元X線吸収測定法(DXAまたはpDXA)で測定した近位大腿骨におけるaBMD、
及び、BMCは用量依存的に増加した。コントロールグループと10μg/kg/日グループと
の間(p<0.05)、及び、コントロールグループと40μg/kg/日グループとの間(p<0.001)
の両方で有意の相違が存在した(
図1B)。3つのグループ間で、骨面積では有意の差は見
られなかった。
【0071】
全体的に、
図1は大腿骨中間部分(皮質骨)(A)、並びに、近位大腿骨(海綿骨+皮質骨)
(B)のBMD(骨塩密度)、及び、BMC(骨塩含有量)が、どちらの用量でPTH処置した
動物でも、コントロールのものより有意に大きかったことを示した。より高い用量で処置
したウサギの大腿骨中間部分の皮質骨面積は、コントロールより有意に大きかった。近位
大腿骨の骨面積では、グループ間で有意の差は見られなかった。データは、平均±SEM
として表した。コントロールと比べて、
*P<0.05であった。PTH10μg/kg/日と比べて
、
**P<0.05であった。
【0072】
pQCTにより評価した腰椎(L4)のvBMD、BMC、及び、骨面積では、3つのグ
ループで有意の差はなかった。
【0073】
生体力学試験
最大力、剛性、及び、破断エネルギー等の大腿骨中間部分の構造特性は、用量依存的に
増加した(
図2)。
図2は、大腿骨中間部分の皮質骨中の機械的強度、及び、横断面慣性モ
ーメントに対するPTHの効果を示す。構造的な機械的特性(無地の棒線)、及び、CSM
Iはより高い用量グループで有意に増加し、剛性はより低い用量グループでも有意に増加
した。固有の物質特性(斜線の入った棒線)では、コントロールと比べた場合、より低い用
量グループの弾性率のみが有意に増加した。より高い用量グループの弾性率は、より低い
用量グループと比べて減少した。
図2中:データは平均±SEMで表現し;
*は、コント
ロールと比べたP<0.05を示し;そして、
**は、10μg/kg/日と比べたP<0.05を示す。
【0074】
この試験、及び、
図2に示す結果では、40μg/kg/日でPTH(1〜34)を与えたウサギで
は、コントロールグループに比べて全てのパラメーターは、有意に高かった(最大力、及
び、破断エネルギーについてp<0.01、剛性についてp<0.05)。より低い用量グループ
での剛性もまた、コントロールグループと比べて有意に高かった。固有の物質特性の内、
弾性率は40μg/kg/日を与えたウサギの方が、10μg/kg/日を与えたものより有意に少なか
った(p<0.01)。
【0075】
腰椎本体では、3つのグループの間で機械的特性に有意差は見られなかった。
【0076】
音波顕微鏡法
3つのグループの間で音響速度、または、弾性率について有意差はなかった。
【0077】
論考
皮質骨の、生合成hPTH(1〜34)に対する骨格反応は、処女の成体雌ウサギの物質特
性の直接の調節、及び、生体力学特性の代償的な調節(compensatory regulation)の両方
を含んでいた。PTH(1〜34)は骨の代謝回転、及び、皮質の有孔性を40μg/kgの用量で
増加し、皮質骨の物質弾性率を減少させた。しかしながら、減少した弾性率は骨膜、及び
、皮質内部表面の骨吸収の増加により補われるより大きく、ウサギの皮質骨において機械
的強度、剛性、及び、破断エネルギーの有意の改善をもたらした。
【0078】
この処女ウサギを用いた試験で、腰椎の海綿骨の容量は、骨の代謝回転の増加にもかか
わらずPTH(1〜34)処置後増加しなかった。骨減少性のモデルとしての以前の使用で示
された、ウサギの迅速な成長、及び、早期骨格成熟(6〜9ヶ月で)、並びに、皮質内リモデ
リング、及び、短いリモデリング期間の存在が、ウサギをPTH(1〜34)の断続的投与の
効果を試験するためのモデルとして選択する根拠を形成した。
【0079】
ウサギは、広い変化を血清カルシウムレベルについて示す(10〜16mg/dl)が、これらの
レベルは食餌のカルシウムにより直接影響されず、このモデルの別の利点となっている。
40μg/kgのPTH(1〜34)で処置したウサギで、およそ1mg/mlの一過性の有意な増加が記
録されたが、実際の値は常に公知の生理的な範囲内にあった。
【0080】
本研究で、140日間にわたる生合成hPTH(1〜34)により、皮質内と同様に骨膜、及び
、皮質内部表面の骨形成が増加した。皮質内Ac.Fは、低用量グループで8倍増加し、高
用量グループで20倍増加した。これは、低用量グループで2倍の脛骨中の皮質有孔性の増
加、高用量グループで6倍の増加につながった。音波顕微鏡法のデータから、上腕骨中の
骨物質自身の弾性率は影響されないことが示され、固有の皮質骨質は普通であると示され
た。従って、有孔性の増加は、皮質中の腔を含む物質特性の測定値である弾性率のわずか
な減少の説明となるはずである。
【0081】
皮質の有孔性の増加は、高用量グループにおける脛骨中間部分の骨膜、及び、皮質内部
表面の両方で有意に増加したMS/BS、及び、BFR/BSにより補われる以上のもので
あり、有意に増加した骨面積となった。これは、大腿骨中間部分の場合と同じ様に、骨の
曲げ剛性と比例した横断面慣性モーメントを増加させるであろう(
図2)。これらの形体、
及び、物質特性の変化の結果は、コントロールと比べた大腿骨骨幹の機械的強度、及び、
剛性の改善であり、皮質有孔性の増加による潜在的に有害な機械的効果を相殺する。
【0082】
結果
結果として、PTH(1〜34)処置後の骨の代謝回転、及び、皮質有孔性の増加は骨膜、
及び、皮質内部表面の骨の同時の増加を伴っていた。これらの現象の組合せは、大腿骨の
靭性の絶対負荷、剛性、及び、破断エネルギーの増加につながった。
【0083】
実施例2――サルへのrhPTH(1〜34)投与による骨強度、及び、密度の増加
実験方法
一般的方法
本研究の生体実験では、体重が2.77±0.03kg(平均±平均の標準誤差[SEM])の、野生
の霊長類カニクイザル (
Macaca fascicularis)の成体(閉じた成長板)を用いた。サルを3
ヶ月隔離した後、100g食餌中0.3%カルシウム、0.3%リン酸、及び、250IUビタミンD3
を含む食餌を始め、フッ素添加した水(1ppmフッ素)を無制限に与えた。カルシウム濃度は
1734mgカルシウム/2000カロリーであった。食餌を始めて1ヶ月後、動物を21、または、22
のグループに分け偽手術をするか、卵巣除去するかした。卵巣除去24時間後、ビヒクル(
偽、または、卵巣除去コントロール)、または、1μg/kg(PTH1)、若しくは、5μg/kg(
PTH5)のrhPTH(1〜34)の日に1回の皮下注射を始めた。動物に18ヶ月の処置(PT
H1及びPTH5)、または、12ヶ月の処置後、処置中止(PTH1-W、及び、PTH5-
W)の処置をした。
【0084】
試験グループは、表6に示すように分けた。
【表6】
霊長類試験のための試験グループ
【0085】
ビヒクル、または、rhPTH(1〜34)を注射した24時間後、血清、及び、尿素試料を3
ヶ月の間隔で採取した。各rhPTH(1〜34)処置グループについて5匹という、まばらな
サンプリング計画を薬物動力学研究に用い、基線、7、11、及び、17ヶ月でサンプリング
を行った(各回、0から240分にわたって)。0時間、及び、6ヶ月後に二重エネルギーX線吸
収測定法(DXA)により総骨格、及び、脊椎(L2〜L4)骨量を評価し、中間部分、及び
、遠位橈骨、並びに、近位脛骨の骨量を評価するのに周辺定量コンピューターを備えたX
線断層撮影(pQCT)を使用した。組織形態計測のため、6ヶ月、及び、15ヶ月目に腸骨
生検を採取した。18ヶ月後に全ての動物を安楽死させた。
【0086】
生体力学的試験を腰椎のL3〜L4、大腿骨頸部、上腕骨中間部分、及び、大腿骨骨幹
から加工した皮質骨標本について行った(表7に測定物を定義)。上腕骨中間部分、腰椎L
2、大腿骨頸部、大腿骨中間部分、橈骨中間部分、及び、遠位橈骨について広範囲変化、
及び、動態組織形態測定(表7に測定物を記載)を行った。初期の統計分析では、ビヒクル
処置した卵巣除去コントロールに対して全てのグループを比較した。データは、用量依存
性、使用中止の効果、結果の相互作用、及び、時間の変化を当業者に公知の方法により調
べる付加的な予備的分析に適する。全ての分析は、当分野において公知の方法により処理
、及び、測定した。
【0087】
或る被験者について、上腕骨の皮質骨を組織形態測定、及び、偏光フーリエ変換赤外顕
微鏡法により検査した。フーリエ変換赤外顕微鏡法は、このような顕微鏡について公知の
方法の適用により行った。
【0088】
3D有限要素モデリング研究(3D Finite Element Modeling Studies)
これらの研究では、PTHを18ヶ月間投与した研究のサルからの脊椎について3D有限
成分モデリングデータを測定した。卵巣除去したグループ(n=7)、及び、PTHグルー
プ(n=7)から摘出した、50%エタノール/塩水中のL5脊椎を定量コンピューター断層撮
影機(QCT,Norland,Ft.Atkinson,WI)で、70×70μmピクセルを用い、各ステップ500μm
で連続走査した。各500μm横断面を容量測定的骨塩密度(BMD,mg/cc)、骨塩含有量(B
MC,mg)、横断面面積(X面積)、海綿骨容量(BV/TV)、梁の厚さ(Tb.Th)、及び、
結合性(節密度、支柱分析)について分析した。各連続走査のピクセルは、490×490×500
μmボクセルとなるように平均化した。その後、連続走査を積み重ね、各骨について「マ
ーチングキューブ(marching cube)」アルゴリズム(例えば、Lorensen及びCline,"Marchin
g cubes, a high resolution 3D surface construction algorithm",
Computer Graphics
21,163〜169(1987年)参照)を用いて三翼表面メッシュ(triangular surface mesh)を形成
した。その後、各表面メッシュの均質化した型を、3D有限成分モデリングのために四面
体メッシュを形成するのに用いた。
【0089】
各四面体成分についてのヤング率を、サルの大腿骨骨幹から粉砕した皮質骨ビームの元
のボクセル密度、及び、物質特性から誘導した。各椎骨の底表面が面に対し整列するよう
に各四面体メッシュを回転した。その後、リニア弾性負荷分析を各L5モデルで行い、10
0Nの分布負荷を椎中心の先端表面に底面に対し垂直にかけ、その間底表面は荷重の方向
に固定した。得られた軸方向負荷曲線、BMD分布を評価し、PTH、及び、卵巣除去の
間で比較した。この分析では、各ボクセルの密度は、各ボクセルが柔組織とは反対に、骨
で満たされている割合に依存している。
【0090】
結果
本文中の報告における差は、統計的に有意(p<0.05)である。試験の間、処置とは無関
係に全動物が、最初の体重から4%〜9%、体重が増した。
【0091】
血清、及び、尿素の測定
3ヶ月目、及び、18ヶ月目の血清エストラジオールレベルは、卵巣除去した全てのサル
において5pg/mLより低かった。カルシウムホメオスタシスの測定値を偽コントロールと比
べると、卵巣除去コントロールの方がより低い血清カルシウム、及び、リン酸、及び、1,
25-ジヒドロキシビタミンDレベルを有していたが、最後の注射から24時間後に測定され
た固有のPTH、尿の環状アデノシンモノリン酸(cAMP)、尿中カルシウム、尿中クレ
アチニン、または、血清尿素窒素は変わらなかった。rhPTH(1〜34)で処置した動物
は、卵巣除去したものに対してより低い血清リン酸、より低い固有のPTH、並びに、よ
り高い1,25-ジヒドロキシビタミンD、及び、尿中cAMPを有していた。血清骨形成マ
ーカー分析により、卵巣除去したサルが偽グループに対して低い血清総アルカリホスファ
ターゼ(ALP)、及び、オステオカルシンを有し、rhPTH(1〜34)は、偽グループの
値までレベルを戻した。骨の再吸収の生化学的マーカーとして用いられる尿のC-テロペ
プチド(CrossLaps)排出は、rhPTH(1〜34)により卵巣除去コントロールと比較して変
化されなかった。
【0092】
骨量
総体BMCとして表す全骨格の骨量は、PTH(1〜34)により有意に増加した(
図3)。
脊椎骨塩密度(BMD)は、卵巣除去したコントロールで18ヶ月間安定なままであったのに
対し、偽コントロールではおよそ5%基線より高くなった(
図4A〜4C、及び、5A)。
rhPTH(1〜34)は、脊椎BMDを7%〜14%増加させ、総体骨塩含有量(BMC,
図3)
を最大6%まで、基線と比べて増加させた(
図4A〜4C、及び、5A)。脊椎骨塩含有量
もまた増加した(
図5A)。rhPTH(1〜34)処置霊長類では、これらの増加の大きさは
卵巣除去コントロールのそれと比べて有意に高く、偽グループに匹敵する(PTH1)か、
または、上回った(PTH5)。rhPTH(1〜34)は橈骨中間部分部、または、遠位部を
変化させなかった。中間部分の横断面面積は、PTH5グループで7%増加した。近位脛
骨では、横断面面積は増加しなかったが、rhPTH(1〜34)は卵巣除去コントロールと
比べてBMC、及び、BMDを増加させた。処置をやめてから6ヶ月後、脊椎、及び、大
腿骨頸部におけるBMD、及び、BMCは卵巣除去コントロールよりも高いままで、上腕
骨中間部分の皮質中では何の変化もなかった。
【0093】
骨強度
rhPTH(1〜34)は脊椎の強度(F
y)を最大43%(表7、及び8、
図5B)まで増加させ
た。rhPTHは大腿骨頸部(f
u)の強度を最大12%改善した(表7、及び9、
図6A)。
rhPTH(1〜34)は卵巣除去コントロールと比較した場合、上腕骨中間部分の皮質骨幹
(表7及び10)、または、大腿骨骨幹から加工された梁試料の物質特性(表7、及び9、
図6B)についての測定値を変化させなかった。12ヶ月間rhPTH(1〜34)で処置し、そ
の後6ヶ月処置を中止した動物では、骨強度の測定値は卵巣除去コントロールと比較して
、有意に高いままであった(表7〜10、
図5B、及び、6A)。
【表7】
第3、及び、第4腰椎(L3及びL4)、上腕骨中間部分、近位大腿骨頸部、及び、大腿骨梁
試料についての変数
【表8】
18ヶ月の卵巣除去霊長類の脊椎(腰椎L3及びL4を合せて)における強度の生体力学測定
値
【0094】
略語:OVX=卵巣除去;PTH1=rhPTH(1〜34)1μg/kgを18ヶ月;PTH1-W
=rhPTH(1〜34)1μg/kgを12ヶ月処置した後、6ヶ月間の処置中止;PTH5=rh
PTH(1〜34)5μg/kgを18ヶ月間;PTH5-W=rhPTH(1〜34)5μg/kgを12ヶ月処
置した後、6ヶ月間の処置中止。
a変数の記載については表4.1参照。
bデータは平均±各グループの平均(SEM)の標準誤差として表される。
oOVXコントロールと比べて統計的に有意(p<0.05)。
s偽コントロールと比べて統計的に有意(p<0.05)。
【0095】
【表9】
卵巣除去霊長類の18ヶ月の、大腿骨骨幹からの均等な大きさの梁試料の物質特性の生体力
学測定値、及び、大腿骨頸部の強度の生体力学的測定値
【0096】
略語:OVX=卵巣除去;PTH1=rhPTH(1〜34)1μg/kgを18ヶ月;PTH1-W
=rhPTH(1〜34)1μg/kgを12ヶ月処置した後、6ヶ月間の処置中止;PTH5=rh
PTH(1〜34)5μg/kgを18ヶ月間;PTH5-W=rhPTH(1〜34)5μg/kgを12ヶ月処
置した後、6ヶ月間の処置中止。
a変数の記載については表4.1参照。
bデータは平均±各グループの平均(SEM)の標準誤差として表される。
oOVXコントロールと比べて統計的に有意(p<0.05)。
s偽コントロールと比べて統計的に有意(p<0.05)。
【0097】
【表10】
卵巣除去霊長類の18ヶ月における上腕骨中間部分の皮質骨の生体力学的測定値
【0098】
略語:OVX=卵巣除去;PTH1=rhPTH(1〜34)1μg/kgを18ヶ月;PTH1-W
=rhPTH(1〜34)1μg/kgを12ヶ月処置した後、6ヶ月間の処置中止;PTH5=rh
PTH(1〜34)5μg/kgを18ヶ月間;PTH5-W=rhPTH(1〜34)5μg/kgを12ヶ月処
置した後、6ヶ月間の処置中止。
a変数の記載については表4.1参照。
bデータは平均±各グループの平均(SEM)の標準誤差として表される。
oOVXコントロールと比べて統計的に有意(p<0.05)。
s偽コントロールと比べて統計的に有意(p<0.05)。
【0099】
骨の組織形態測定法
偽コントロールと比べて、卵巣除去グループでは代謝回転率は大きかったが、腸骨稜に
おける骨容量の有意の損失は無かった。6ヶ月目に与えたテトラサイクリンマーカーが多
くの動物で検出できなかったので、この時点では静止パラメーターのみを測定した。15ヶ
月目における静止、及び、動態組織形態測定データは、rhPTH(1〜34)を用いた処置
が、卵巣除去と比べ海綿骨を増加させ、そして、卵巣除去コントロール中で測定されたも
のと比べ再吸収測定値を増加させたことを示した。より高い用量のrhPTH(1〜34)に
より、骨形成速度は累進的に増加した。12ヶ月の処置後のrhPTH(1〜34)の中止の後
、海綿骨は卵巣除去コントロールと比べて増加したままであったが、骨形成、及び、再吸
収は卵巣除去コントロールと同じに戻り、骨の代謝回転は偽コントロールよりも高いまま
であった。rhPTH(1〜34)はミネラル化、活性頻度、または、リモデリング期間に影
響しなかった。再吸収と形成の間の、個々の骨多細胞単位(BMU)を基本とした骨平衡に
は差違はなかった。全体として、rhPTH(1〜34)は骨形成の選択的刺激により海綿骨
を増加した。
【0100】
rhPTH(1〜34)が有意にBMD、または、骨強度の測定値を改変しなかった上腕骨
の皮質骨中で、rhPTH(1〜34)は骨膜、骨内膜、及び、皮質内部区画における変化を
刺激した(表11、及び12)。グループ間で総面積、または、骨髄面積の相違はなかった
が、rhPTH(1〜34)は皮質面積を増加させ、PTH5、及びPTH5-Wグループはよ
り多くの皮質骨を有意に有し、強度の測定値である横断面慣性モーメントの増加が暗示さ
れた。面積の増加は骨膜、及び、骨内膜の両表面での形成の増加に帰すことができた(図
7)。
【0101】
偽コントロール、及び、PTH5-Wグループでは、卵巣除去コントロール、及び、他
のrhPTH(1〜34)処置グループと比べて減少した骨膜ミネラル化表面を有した。皮質
内部ミネラル化表面は、偽グループと比べて卵巣除去コントロールで有意に大きく、rh
PTH(1〜34)は、卵巣除去コントロール値以上に増加させなかった。皮質内部リモデリ
ングでは、卵巣除去動物では再吸収腔がより多く、偽コントロール、または、使用中止グ
ループのいずれと比べても、卵巣除去、PTH1、及び、PTH5では活性化頻度は大き
かった。単位面積当りの標識化されたオステオンは、偽コントロールに比べて卵巣除去コ
ントロールで有意に多く、rhPTH(1〜34)はこれらを卵巣除去コントロール値より有
意に高くは増加させなかった。
【0102】
皮質内有孔性は偽グループと比べて卵巣除去グループで大きいが、卵巣除去コントロー
ルと、PTH1の間では差は無かった。PTH5、及び、PTH5-Wは、卵巣除去コン
トロールで見られるより多く有孔性を増加させた。ウサギの研究から、皮質骨の増加を伴
う有孔性の増加が、rhPTH(1〜34)処置した骨の生体力学特性を維持するための構造
的応答かもしれないという仮定が示唆された。18ヶ月目の形成期間、類骨幅、壁幅、また
は、類骨成熟については卵巣除去、及び、他のグループとの間で相違はなかった。
【0103】
要約すると、卵巣除去グループと、両方のrhPTH(1〜34)用量の間で代謝回転率で
は差はなかった。偽コントロールは、卵巣除去コントロール、または、rhPTH(1〜34
)処置したどちらの動物よりも低い代謝回転率を有していた。rhPTH(1〜34)を6ヶ月
間中止すると、代謝回転率は有意に減少したが、BMD、及び、生体力学的強度の測定値
は、卵巣除去コントロールよりも高いままであった。全グループの皮質内の類骨幅、及び
、成熟時間の標準値は、ミネラル化過程の標準的なタイミングにいかなる瑕疵も生じなか
った。壁幅の標準値は、処置が個々のBMUにおけるレベルでの再吸収、及び、形成の標
準的な平衡を変えなったことを示す。
【表11】
上腕骨の皮質骨測定値の組織形態測定法の変数
【表12】
卵巣除去霊長類の18ヶ月目における、上腕骨中間部分の皮質組織形態測定(n=121)
【0104】
組織形態測定法、及び、偏光フーリエ変換赤外顕微鏡法による分析により、PTHの投
与が、古い骨(大きなクリスタライト)を若い骨(クリスタライトの大きさの範囲がより小
さい傾向がある)で置換することにより骨質を改善することが明らかになった。さらに、
低用量を与えたサルでのPTHの使用中止により、細胞間質が最適にミネラル化されると
共に、クリスタライトが成熟するというさらなる利点がある。組織形態測定法、及び、フ
ーリエ変換赤外顕微鏡法からのデータは皮質骨の骨質に対し、最適なミネラル化が起こる
とき骨塩相が成熟するという予期されない利益を示す。
【0105】
3D有限成分モデリング研究
L5の真中の500μm薄片の検査により、横断面面積の変化を伴わないBMCの27%増加
による、PTHについて卵巣除去と比べBMDの21%の増加が示された。PTHの中央の
分析によりTb.Thの30%増加、及び、37%大きいTb.NによるBV/TVの73%増加
が、卵巣除去グループに比べて示された。この面積の結合性分析により、PTH椎骨で14
0%大きい節密度(節/組織容量)、及び、286%大きい節対節支柱(node-to-node struts)が
示された。
【0106】
PTHの骨ボクセル密度のヒストグラム分布分析により、卵巣除去と比較して低密度部
分(0〜355mg/cc)の割合が減少し、中密度部分(356〜880mg/cc)の割合が増加し、高密度ボ
クセル(887〜1200mg/cc)に対してはほとんど効果がないことが示された(
図8)。最も印象
的なのは、6ヶ月の処置の中止後の、皮質骨区画におけるより大きな骨ボクセル密度への
転換であった。
【0107】
或るBMD値の範囲内の椎骨要素(ボクセル)の割合を計算した。選択されたBMD範囲
は次の通りであった:低BMD,0〜300mg/cc;中BMD,300〜700mg/cc;高BMD,700〜
1000mg/cc;及び、皮質BMD,>1000mg/cc(表13)。卵巣除去コントロールと比べて、
PTH処置は低BMD骨の容量を有意に減少させ、中BMD骨の容量を増加させた。PT
Hの処置中止後、中BMD骨の減少、及び、高BMD骨の増加があり、中BMD骨がより
密度が高くなったことが示された。
【表13】
BMD値によりグループ化したL5椎骨容量の割合(平均±SEM)
【表14】
L5椎骨、及び、椎骨有効圧力の中レベルにあるBMC
【0108】
表8にまとめた結果は、18ヶ月間PTHで処置したカニクイザルからのL5椎骨が、骨
量、梁の厚さ、及び、梁の結合性の有意の増加と、椎骨の外面(X領域)に及ぼす限界効果
とに対応することを示す。L5における骨要素の分布の分析は、骨硬化の徴候を示すこと
なく高度にミネラル化された骨面積が最小限に変化することを示した。どちらかというと
、PTHに対して最も応答するのは有孔性の骨梁である。BMDの転換は軸方向歪の実質
的減少へと到り、機械的な改善が示された。PTH、及び、卵巣除去BMDのヒストグラ
ムで明らかに示されるよう、PTHは高密度ボクセルには有意な効果を示さず、低密度骨
ボクセルを中密度ボクセルへと変換させた。
【0109】
表2にまとめたデータは、椎骨の真中のBMCがPTH処置により有意に増加され、P
THの有利な効果が処理中止の6ヶ月後も残っていたことを示す。椎骨の平均の機械的歪
はPTH処置により36%減少し、PTHの処置中止後もOVXの23%より下のままであっ
た。この研究はPTHの6ヶ月間の使用中止が、新しく形成された骨の再吸収へと到らず
、その代わりに中密度の骨の低、及び、高密度骨への有利な再分配があることを示した。
再分配は、椎骨の連続的な歪減少へとつながり、よって、機械的な機能を改善した。
【0110】
論考
この霊長類研究は、骨に影響する他の薬物なしでPTHを与えた場合に、皮質骨、及び
、骨梁の両方に効果があり、総骨格骨量を増加させることを示す。さらに、PTHの処置
中止は少なくとも2回のリモデリングサイクルの期間にわたって、PTH処置に伴う効果
を有意には失わせることにならなかった。
【0111】
代用マーカーが、他の試験で骨の中の活性を示すのに用いられてきており、その値の変
化が骨量の変化を反映すると想定されている。ヒト、及び、霊長類で例えば閉経初期、ま
たは、疾病の活動状態の間の骨の代謝回転の活性化ち一致した形成、及び、再吸収マーカ
ーの増加を示す公開されたデータがあるが、高い代謝回転は骨損失を示すと考えられてい
る。青年期のヒト骨格の成熟中の高い代謝回転はあまり研究されていないが、骨量のアナ
ボリックな増加を伴う。このような現象は、現在の技術では骨粗鬆症の薬物治療で全く予
期されないものであろう。従って、骨の代謝回転マーカーの増加は、本研究のデータによ
り示すように、PTHの骨量、及び、強度を増加させる公知のアナボリックな効果と一致
しない。
【0112】
カニクイザルにおける、この18ヶ月の研究のデータは以下の予期せぬ発見を支える:
・総骨格量の全体的な有意の増加。
・大腿骨頸部における骨量、及び、強度の有意な増加。
・骨梁を増加するための皮質骨からの「盗用(steal)」の事実はない。皮質骨(大腿骨
頸部)、または、骨梁(腰椎)のどちらかが富化された部位における骨量、及び、強度の増
加は統計的に有意であった。純粋な皮質骨部位(大腿骨中部骨幹)では、卵巣除去コントロ
ールと比べてPTHが骨量、及び強度を安定化、または、やや増加させる傾向があった。
・卵巣除去されたサル(及びヒト)における骨マーカーの変化は、PTHの骨格に及ぼ
す有利な、アナボリックな効果を反映しない。本研究における霊長類からの体液の使用は
、新規で、そしてより確かな代用マーカーの開発を可能にする。
・処置の中止後、少なくとも2回のリモデリングサイクルにおける骨量、及び、強度
の増加の保持。
【0113】
このPTH霊長類研究は、アカゲザル、及び、カニクイザルでの公開された研究と、以
前のずっと小型な研究では明らかにされなかった差違を検出するのに適切な統計的な検出
力を提供するより大きな試料数を用いたこと;卵巣除去された霊長類(公開実験において
使用)、及び、偽手術したが無傷の霊長類の両方がコントロールに含まれたことで相違す
る。後者のコントロールグループは、以前のこの種の研究では報告されておらず、卵巣除
去動物についての値と比較したPTHの利点、及び、偽コントロールレベルに対する或る
測定値の復元が初めて分析された。
【0114】
結論
成熟した野生の卵巣除去した(OVX)カニクイザル、
Macaca fascicularisにおけるこ
の18ヶ月の研究は、rhPTH(1〜34)による12ヶ月の処置に続いて6ヶ月間の処置の中止
、または、18ヶ月間の処置後の骨への効果、及び、安全性を保証した。rhPTH(1〜34
)は脊椎、及び、大腿骨頸部における骨量、及び、強度を、卵巣除去コントロールより多
く、偽コントロールに匹敵するレベルまで、または、それ以上に有意に増加させた。rh
PTH(1〜34)で処置した卵巣除去ザルでは、カルシウムの恒常性の測定値(血清カルシウ
ム、リン酸、及び、1,25-ジヒドロキシビタミンD)は、偽コントロールのそれまで回復し
た。骨の代謝回転を評価するのに用いた血清、尿、及び、組織形態的測定値は、形成速度
を卵巣除去コントロールと比べてrhPTH(1〜34)により同程度、または、それらより
高く維持されることを示し、一方骨の再吸収の生化学的マーカーは、偽コントロールのそ
れと同程度のままであった。最長18ヶ月間rhPTH(1〜34)で処置された全ての動物で
、薬物動力学的測定値は時間と共に変わらず、rhPTH(1〜34)の蓄積はなかった。18
ヶ月の処置後、カルシウム過剰血症、または、腎臓病状を被ったという事実はなかった。
ミネラル化、または、リモデリング期間には何の変化もなかった。rhPTH(1〜34)に
ついて観察された骨格骨塩含有量の正味の増加は、骨の再吸収にはほとんど、または、全
く影響せずに増加した骨形成速度、及び、骨形成表面により説明され得る。脊椎、大腿骨
頸部、及び、近位脛骨等の臨床的に関連する部位の骨塩含有量、骨塩密度、並びに、靭性
、及び、剛性を含む強度の生体力学的測定値において有意の増加があった。
【0115】
rPTH(1〜34)は上腕骨、及び、橈骨中間部分の皮質骨中の代謝回転速度を増加させ
たが、卵巣除去コントロール、または、偽コントロールと比べて骨量、または、強度の生
体力学的測定値を有意に変化させなかった。しかしながら、皮質幅、及び/または、皮質
骨面積の増加は、強度、及び、剛性の尺度である横断面慣性モーメントの増加と一致する
。rhPTH(1〜34)は皮質骨の固有の物質特性に何の有意の効果も有さなかった。皮質
内部骨形成が刺激され、よって皮質幅、及び、皮質内有孔性が増加した。これらの有孔性
における変化が、骨の弾性を維持する原因となっているようである。
【0116】
サルでの、12ヶ月間のrhPTH(1〜34)を用いた処置に続いての、6ヶ月間の処置の中
止は、脊椎、及び、大腿骨頸部の骨量、及び、強度のより小さいが未だ有意な増加と関連
していた。処置中止後、上腕骨、及び、橈骨の皮質骨中間部分には何の有意な効果も見ら
れたかった。骨マーカー、及び、組織形態測定は偽コントロールで測定された低い代謝回
転値まで戻る傾向を示した。
【0117】
げっ歯類でのイン・ビボの機構的研究により、rhPTH(1〜34)の同化作用の結果と
関連する遺伝子は、1〜6時間内に上向き調節され、最初の投与から24時間後に、骨形成表
面の増加が、再吸収に及ぼす検出可能な効果なしに検出できる。rhPTH(1〜34)はS
期における骨形成を補充し、その骨芽細胞への分化を刺激し、それにより骨形成表面の割
合を迅速に増加するようである。骨の中の同化作用効果を誘導するには、rhPTH(1〜
34)の単一、または、複数回の注射を1時間の周期で与えることができる。しかしながら、
若いラットで6〜8時間にわたって複数回の注射として等用量が与えられた場合、同化作用
効果は排除され、短時間の、限定されたrhPTH(1〜34)への曝露が同化作用効果を誘
導するのに必要とされることが示された。
【0118】
要約すると、rhPTH(1〜34)はサル、及び、ウサギの骨に対し同化作用を有し、骨
形成を選択的に刺激することにより腰椎及び大腿骨頸部等の臨床的に関連する部位での骨
量、及び、生体力学的強度の測定値を増加する。皮質部位での組織形態測定により検出さ
れた骨の代謝回転、皮質内部表面形成、及び、有孔性の増加は、骨量、または、骨強度の
生体力学的測定値を変化させなかったが、皮質骨面積、及び/または、皮質幅を増加させ
ることにより横断面慣性モーメントを増加させた。
【0119】
これらの研究は、組換えヒトPTH(1〜34)等の副甲状腺ホルモン受容体アクチベータ
ーの投与が、処置の間、及び、処置後に骨質を改善することを示す。実際、PTHを日に
1回、18ヶ月間投与すること、または、12ヶ月の等用量に続いて6ヶ月間の処置の中止期は
、組織形態測定、及び、偏光フーリエ変換赤外(FTIR)顕微鏡法により分析されるよう
、上腕骨の皮質骨質に関し懸著な改善を示した。この分析は、PTHの投与が古い骨(大
きなクリスタライト)を、若い骨(クリスタライトの大きさの範囲がより小さな大きさとな
る)で置換することにより骨質を改善することを明らかにした。よって、PTHの投与は
皮質骨質の増加、ミネラル化の改善、並びに、ミネラル化、及び、古い骨の新しい骨によ
る置換を促進できる。
【0120】
さらに、低用量を与えたサルでのPTHの使用中止により、細胞間質がより最適にミネ
ラル化され、クリスタライトが成熟するので付加的な利点がある。即ち、低用量ではPT
Hはミネラル化を増幅することにより処置の中止期間中に付加的な利点を有し得る。これ
らのデータは、PTHの処置に続く処置中止期間付きの限定されたレジメの利点により、
高められた利点を達成できること示す。現行の骨質の定義には、これらの改善されたミネ
ラル化の面は含まれない。
【0121】
PTHの処置期間に続く処置をしない期間についての初期の研究では、処置期間は1ヶ
月よりも短かった。18〜24ヶ月に延長した有限の処置期間に続く、少なくとも2回のリモ
デリングサイクルの期間については、以前には調査されていない。処置の中止後の霊長類
での持続的な利益は、PTHを投与されたげっ歯類で達成された結果と著しく対照を成す
。ラットの研究では一様に、処置の中止に続いて骨が迅速に失われることが示された(Gun
ness-Hey,M.及びHock,J.M.,
Bone 10:447〜452(1989年);Shen,V.ら,
J.Clin.Invest. 91:2
479〜2487(1993年);Shen,V.ら,
Calif.Tissue Int. 50:214〜220(1992年);並びに、Mose
kilde,L.ら,
Bone 20:429〜437(1997年))。
【0122】
このような骨のミネラル化を増幅する方法は今までに観察されておらず、予期されない
ものであり、PTHにより骨を強化、及び、強健にし、骨折の予防ができる新規な方法を
明らかにする。この新規な方法はより強靭で、より強固で、そしてより骨折に対し耐性の
ある骨とするようにミネラル化を増幅、及び、調節することを含む。このような有利な効
果は、新しい細胞間質形成以上のことを必要とする。これらの発見は、さらに十分なカル
シウム、及び、ビタミンDが補われている場合には、PTHが固定化された骨、若しくは
、骨格、または、ミネラルが欠損した骨格の患者に有効であることを示す。
【0123】
実施例3――ヒトへのrhPTH(1〜34)の投与による骨強度、及び、密度の増加、並び
に、骨折の減少
患者数: rhPTH(1〜34):1093人登録、848人終了
プラシーボ:544人登録、447人終了
診断及び包含基準:30〜85才の女性で、月経閉止後最低5年であり、1つの中等度
、または、2つの軽い非外傷性の椎骨骨折を有する。
用量及び投与:
試験製品(盲検)
rhPTH(1〜34):20μg/日、皮下に与える
rhPTH(1〜34):40μg/日、皮下に与える
対照治療(盲検)
注射用のプラシーボ試験材料
処置存続期間:rhPTH(1〜34):17〜23ヶ月(6ヶ月のならし期間を除く)
プラシーボ: 17〜23ヶ月(6ヶ月のならし期間を除く)
評価基準: 脊椎X線;血清生物学的マーカー(カルシウム、骨特異的アルカリ
ホスファターゼ、プロコラーゲンIのカルボキシ末端プロペプチド);
尿マーカー(カルシウム、N-テロペプチド、遊離デオキシピリジノリン);
1,25-ジヒドロキシビタミンD;骨の物質密度:脊椎、股関節、手関節、
及び、体全体;身長;集団薬物動力学;骨生検(選択された研究部位)。
【0124】
【0125】
結果
18〜24ヶ月間、0、20、または、40μg/kg/日の組換えヒト副甲状腺ホルモン(1〜34)、
rhPTH(1〜34)で処置し、ビタミンD及びカルシウムを補給した総数1637人の女性を
含むこの臨床試験からのデータは、表15〜19に記録した結果を示した。
【0126】
表15は、PTH処置による椎骨骨折の数、及び、重篤さの減少を示すデータを図示す
る。PTH処置した全患者とプラシーボを比較すると、椎骨骨折した患者数の全体的な減
少は67%(p<0.001)で、プラシーボと比較して20μg/日のPTHでは65%の減少(p<0.
001)であり、そして、プラシーボと比較して40μg/日のPTHでは69%の減少であった(
表15)。PTH処置した全ての患者をプラシーボと比較すると、複数の椎骨骨折の患者
数の全体的な減少は、81%(p<0.001)で、プラシーボと比較して20μg/日のPTHでは7
7%の減少(p<0.001)であり、そして、プラシーボと比較して40μg/日のPTHでは86%
の減少であった。PTH処置した全ての患者をプラシーボと比較すると、中等度から重篤
な椎骨骨折の患者数の全体的な減少は84%(p<0.001)であり、プラシーボと比較して20
μg/日のPTHでは90%の減少(p<0.001)であり、そして、プラシーボと比較して40μg
/日のPTHでは78%の減少であった(表15)。
【表15】
椎骨骨折の数、及び、重篤さへのPTHを用いた処置の効果
【0127】
表16は、体全体の種々の非椎骨における骨折の数に及ぼす、PTH処置の効果を表す
。骨折の数は股関節、橈骨、足関節、上腕骨、肋骨、足、骨盤、及び、他の部分の各々で
明らかに減少した(表16)。PTH処置患者と、プラシーボ処置患者とを比べた、骨折の
総数の減少として見た場合、減少は統計的に有意である。その減少はPTH処置患者と、
プラシーボ処置患者との間の股関節、橈骨、足関節、上腕骨、肋骨、足、及び、骨盤での
骨折の総数の減少として考えた場合により明らかである。
【表16】
非椎骨骨折数のPTH処置による効果
【0128】
骨塩含有量(BMC)、骨塩密度(BMD)、及び、骨面積におけるPTHの効果を、二重
エネルギーX線吸収測定法(DEXA)により測定し、その結果を表17〜19に報告する
。PTH投与は患者の腰椎、大腿骨、及び、股関節、手関節、並びに、患者の体全体でB
MCの明白な増加を引き起こした(表17)。PTH処置は腰椎、大腿骨、及び、股関節に
おける患者のBMDを有意に増加させた(表18)。腰椎、大腿骨、及び、股関節における
増加は、p<0.001で統計的に有意であった(表18)。PTH処置により患者の腰椎、大
腿骨、及び、股関節の骨面積は明らかに増加した(表19)。腰椎、及び、股関節頸部の増
加は統計的に有意であった(表19)。
【0129】
体全体に及ぼすPTHの効果は、特に骨量、及び、骨質、BMCに関する測定値で明ら
かである。この全身における効果は、患者の体の骨量が増加することを示す。PTHは単
に患者の体の一部から、他の部分へ骨量を移動させるわけではない。そうでなくて、PT
Hによる処置は患者の体の骨量、及び、骨質を増加させる。
【0130】
図9及び10は、PTH処置、及び、プラシーボコントロール患者における、腰椎BM
D、及び、大腿骨/股関節頸部BMDの経時的な増加を図示する。患者の腰椎BMDは、
少なくとも約18ヶ月の間着実に増加し、続いての月々では、増加がないか、より少ない増
加となる。患者の大腿骨/股関節BMDは、明らかに18ヶ月間増加し、そして、さらにP
TH処置を続けても増加し得る。
【表17】
基線からの終点%変化(SD)として表される骨塩含有量に対するPTHの効果
【表18】
基線からの終点%変化(SD)として表される骨塩密度に対するPTHの効果
【表19】
基線からの終点%変化(SD)として表される骨面積に対するPTHの効果
【0131】
要約すると、上に示すデータは、PTH処置した患者では骨折が減ったことを示す。特
にPTH処置は、以前椎骨骨折した患者が新たに椎骨骨折する数を66%よりも多く減らし
た。PTH処置はまた、以前椎骨骨折した患者が新たに複数椎骨骨折する数を78%よりも
多く減らした。さらに、PTHは中等度、または、重篤な骨折の患者数の78%の有意な減
少を示し、椎骨骨折の重篤さを減らした。PTHを受けた患者は、p<0.007の有意なレ
ベルで、全ての非椎骨骨折(股関節、橈骨、手関節、骨盤、足、上腕骨、肋骨、または、
足関節の骨折を含む)の有意の減少を享受した。骨質もまた増加する。以前骨折した患者
は股関節、脊椎、及び、全身の骨塩含有量の有意な増加を享受した。この増加は、これら
の部位での骨折の減少が早くも12ヶ月の治療後に起こり得ることを示す。
【0132】
論考
骨折に関するこれらのデータは、ヒトにおけるPTHによる骨折減少の最初のデータで
ある。これらの発見は、上に報告した前臨床データと同様に骨質、及び、骨強度における
改善を明らかにする。これらの結果はまた、非椎骨部位における骨質、及び、強度に対す
る利益も示す。18〜23ヶ月の期間の処置の間で維持された骨折数の減少の発見は、臨床、
または、前臨床試験でこれまで観察されていない。
【0133】
PTHが単独で、骨折への耐性を改善するのに骨の靭性、及び、強度を増加させるかど
うかはいままでヒトでは試験されていない。公開された文献は、PTHが抗再吸収剤、ま
たは、エストロゲンと組合せて与えられなければならないことを一貫して示してきた。以
前に公開された臨床試験は、骨折の有意な減少を測定するには少なすぎる患者数しか含ま
なかった。1つの試験では、PTH単独の利益はプラシーボコントロールが無かったため
に評価できなかった。第2の試験では、一般的に受容される骨折の定義を用い、骨折の減
少は観察されなかった。
【0134】
複合的な非椎骨部位での骨折の減少は、PTHがこのような部位に対してマイナスの効
果を有すると一般に信じられていたので、特に予期せぬものであった。一般の定説では、
PTHが皮質の有孔性を増加させ、そのため、特に治療の初期に骨を弱くするとされてい
る。さらに、この定説は、皮質骨部位での高い骨折の危険性があり、PTHが非椎骨部位
での骨折を減少させることについては何の効果も提供しないことを断言している。定説で
はまた、PTH単独では効能を有する可能性はなく、皮質骨での負の効果を阻止する、同
時の抗再吸収治療を必要とするとしている。本データはビタミンD、及び、カルシウムを
補給した患者における、PTHの従来観察されていない効果を示す。予期せぬことに、P
THは、脊椎における複数の骨折の危険がある患者、付加的な非椎骨骨折の危険のある患
者、脊椎における中等度から重篤な付加的な骨折の危険のある患者等における新しい骨折
の数を減らすよう骨を強化する。
【0135】
この閉経後の女性における臨床試験は、特に、PTHの用量(ある患者では高容量では
副作用を示し得る)を減少させても、高用量(40μg/日)で示されたのと同様に骨折予防、
及び、骨折の減少が維持されるので、低用量(20μg/日)で患者を処置する特別の利益を示
した。FT-IRサルのデータは、それに限定されるわけではないが、可能な機構的説明
を提供した。サルにおける研究は、低用量のPTHが皮質骨の結晶形成を増加し、ミネラ
ル化を促進することを示した。さらに、低用量のサルは、使用中止後も、PTHが骨塩含
有量を増幅したのと同様な付加的な効果を示した。本データは、ビタミンD、及び、カル
シウム補給を受ける患者に低用量で与えられたPTHが、椎骨、及び、非椎骨骨折の両方
を予防するのに有効であることを示す。一般に信じられていることとは対照的に、PTH
は非椎骨部分で骨を強化し、明らかに骨のミネラル化、及び、骨塩含有量を改善すること
により新たな骨折を予防するか、または、骨折の重篤さを減少させる。
【0136】
本発明を種々の特定、及び、好ましい態様、並びに、技術を引用して記述した。しかしながら、本発明の範囲内で多くの変化、及び、改良を加え得ることが理解されるべきである。本明細書中で引用した刊行物、及び、特許出願の全てが、本発明が属する当業者のレベルを示すものである。
上記の開示によって提供される本願発明の具体例として、以下の発明が挙げられる。
[1] 処置を必要とする患者の潜在的外傷、または、実際の外傷部位における骨の靭性、若しくは、剛性を増加させる方法であって、患者に有効量の副甲状腺ホルモンを投与することを含む方法。
[2] 外傷が骨折、手術、または、異常に低い骨量、若しくは、貧弱な骨格部分での骨の操作を含む整形外科処置を含む、潜在的な外傷である、[1]に記載の方法。
[3] 手術が関節置換、脊椎ブレーシング、または、その組合せである、[2]に記載の方法。
[4] 関節置換が股関節置換を含む、[3]に記載の方法。
[5] 骨折が椎骨骨折、非椎骨骨折、または、その組合せである、[2]に記載の方法。
[6] 非椎骨骨折が股関節骨折、遠位前腕骨骨折、近位上腕骨骨折、手関節骨折、橈骨骨折、足関節骨折、上腕骨骨折、肋骨骨折、足骨折、骨盤骨折、または、それらの組合せを含む、[6]に記載の方法。
[7] 外傷が潜在的な外傷であり、上皮小体機能不全症、または、脊柱後湾症の進行と関連した外傷である、[1]に記載の方法。
[8] 外傷が骨折を含む実際の外傷である、[1]に記載の方法。
[9] 骨折が椎骨骨折、非椎骨骨折、または、その組合せを含む、[8]に記載の方法。
[10] 非椎骨骨折が股関節骨折、遠位前腕骨骨折、近位上腕骨骨折、手関節骨折、橈骨骨折、足関節骨折、上腕骨骨折、肋骨骨折、足骨折、骨盤骨折、または、それらの組合せを含む、[9]に記載の方法。
[11] 骨が固定された骨、若しくは、骨格、ミネラルの不足した骨、若しくは、骨格、または、その組合せを含む、[1]に記載の方法。
[12] 骨が皮質骨、海綿骨、骨梁、または、その組合せを含む、[1]に記載の方法。
[13] 骨が靭帯、腱、筋肉、または、その組合せの結合部位を含む、[12]に記載の方法。
[14] 外傷部位が股関節、脊椎、または、その組合せである、[1]に記載の方法。
[15] 外傷部位が大腿骨頸部、大腿骨転子、腸骨、または、その組合せを含む、[14]に記載の方法。
[16] 外傷部位が腸骨の海綿骨を含む、[15]に記載の方法。
[17] 外傷部位が中央胸椎骨、上部腰椎、または、その組合せを含む、[14]に記載の方法。
[18] 患者が骨粗鬆症の危険のある女性である、[1]に記載の方法。
[19] 患者が閉経後の女性である、[18]に記載の方法。
[20] 女性がホルモン置換治療、または、抗再吸収とは無関係である、[19]に記載の方法。
[21] 患者が初期段階の骨粗鬆症、または、進んだ段階の骨粗鬆症である、[1]に記載の方法。
[22] 靭性、または、剛性の増加が靭性、及び、剛性の増加を含む、[1]に記載の方法。
[23] 靭性、または、剛性の増加が骨折の危険性、または、可能性を減らすことを含む、[1]に記載の方法。
[24] 靭性、または、剛性の増加が皮質骨、及び、骨梁における活性化頻度、または、骨形成速度を増加させることを含む、[1]に記載の方法。
[25] 靭性、または、剛性の増加が骨塩含有量、骨塩密度、梁数の増加、梁の厚さの増加、骨髄腔の減少、梁の連結の増加、連結の増加、荷重に対する耐性の増加、骨膜、及び、皮質内部の骨形成の増加、皮質有孔性の増加、横断面骨面積、及び、骨量の増加、破断エネルギーの増加、弾性率の減少、または、その組合せを含む、[1]に記載の方法。
[26] 投与が皮下投与を含む、[1]に記載の方法。
[27] 副甲状腺ホルモンを周期的、または、断続的に投与する、[1]に記載の方法。
[28] 周期的投与が、副甲状腺ホルモンを少なくとも2回のリモデリングサイクルで投与し、そして、少なくとも1回のリモデリングサイクルで副甲状腺ホルモンの使用を中止することを含む、[27]に記載の方法。
[29] 周期的投与が副甲状腺ホルモンを少なくとも約12〜約24ヶ月間投与し、そして、少なくとも約6ヶ月、副甲状腺ホルモンの使用を中止することを含む、[27]に記載の方法。
[30] 副甲状腺ホルモンがPTH(1〜31)、PTH(1〜34)、PTH(1〜37)、PTH(1〜38)、及び、PTH(1〜41)からなる群より選択される断片化したホルモンである、[1]に記載の方法。
[31] 副甲状腺ホルモンがヒトPTH(1〜34)である、[1]に記載の方法。
[32] 副甲状腺ホルモンがヒトPTH(1〜84)である、[1]に記載の方法。
[33] 副甲状腺ホルモンが少なくとも約5μg/kg/日の用量で投与される、[1]に記載の方法。
[34] 用量が約10〜約40μg/kg/日である、[33]に記載の方法。
[35] カルシウム、ビタミンD、または、その組合せを投与することをさらに含む、[1]に記載の方法。
[36] 靭性、及び、剛性の増加が中密度の骨の骨塩含有量を増加させることを含む、[1]に記載の方法。
[37] 靭性、及び、剛性の増加が低密度、及び、高密度の骨の骨塩含有量を増加させ、中密度の骨の骨塩含有量を減少させることを含む、[1]に記載の方法。
[38] 靭性、及び、剛性の増加が中密度の骨の骨塩含有量を増加させた後、低密度、及び、高密度の骨の骨塩含有量を増加させ、中密度の骨の骨塩含有量を減少させることを含む、[1]に記載の方法。
[39] 靭性、及び、剛性の増加が骨中のクリスタライトの大きさを減少させることを含む、[1]に記載の方法。
[40] さらに、骨のクリスタライトを成熟させることを含む、[39]に記載の方法。
[41] 靭性、及び、剛性の増加が骨のミネラル化を増加させることを含む、[1]に記載の方法。
[42] 靭性、及び、剛性の増加が骨折の発生を減少させることを含む、[1]に記載の方法。
[43] 靭性、及び、剛性の増加が椎骨骨折の発生の減少、重篤な骨折の発生の減少、中等度の骨折の発生の減少、非椎骨骨折の発生の減少、多発骨折の発生の減少、または、その組合せを含む、[42]に記載の方法。
[44] 必要とする患者における骨折の危険性を減少させる方法であって、患者に有効量の副甲状腺ホルモンを投与することを含む方法。
[45] 骨が股関節、橈骨、足関節、上腕骨、肋骨、足、骨盤、脊椎、または、その組合せを含む、[44]に記載の方法。
[46] 副甲状腺ホルモンがPTH(1〜31)、PTH(1〜34)、PTH(1〜37)、PTH(1〜38)、及び、PTH(1〜41)からなる群より選択される断片化したホルモンである、[44]に記載の方法。
[47] 骨折が椎骨骨折、非椎骨骨折、または、その組合せを含む、[44]に記載の方法。
[48] 非椎骨骨折が股関節骨折、遠位前腕骨骨折、近位上腕骨骨折、手関節骨折、橈骨骨折、足関節骨折、上腕骨骨折、肋骨骨折、足骨折、骨盤骨折、または、それらの組合せを含む、[48]に記載の方法。
[49] 潜在的、または、実際の外傷部位における骨の靭性、及び、剛性を増加させるのに用いる薬剤の製造方法であって、副甲状腺ホルモンを医薬的に許容される担体と一緒にすることを含む方法。
[50] 薬剤が副甲状腺ホルモンの安定化した製剤を含む、[49]に記載の方法。
[51] 安定化した製剤が:
治療的に有効な量の副甲状腺ホルモン;
マンニトール、または、プロピレングリコール等のポリオール;
酢酸塩、または、酒石酸塩源等の、組成物のpHを約3〜7の範囲内に維持するのに適当な緩衝剤;及び、
水
を含む、[50]に記載の方法。
[52] 処置を必要とする患者における骨折の危険性を減らすための薬剤の製造における、副甲状腺ホルモンの使用。
[53] 骨が股関節、橈骨、足関節、上腕骨、肋骨、足、骨盤、脊椎、または、その組合せを含む、[52]に記載の方法。
[54] 副甲状腺ホルモンがPTH(1〜31)、PTH(1〜34)、PTH(1〜37)、PTH(1〜38)、及び、PTH(1〜41)からなる群より選択される断片化したホルモンである、[52]に記載の方法。
[55] 骨折が椎骨骨折、非椎骨骨折、または、その組合せを含む、[52]に記載の方法。
[56] 非椎骨骨折が股関節骨折、遠位前腕骨骨折、近位上腕骨骨折、手関節骨折、橈骨骨折、足関節骨折、上腕骨骨折、肋骨骨折、足骨折、骨盤骨折、または、それらの組合せを含む、[55]に記載の方法。
[57] 処置を必要とする患者における骨折の危険性を減らすために用いる組成物の製造における、副甲状腺ホルモンの使用。
[58] 潜在的、または、実際の外傷部位における靭性、または、剛性を増加させるための薬剤の製造における、副甲状腺ホルモンの使用。
[59] 潜在的、または、実際の外傷部位における靭性、または、剛性を増加させるために用いる組成物の製造における、副甲状腺ホルモンの使用。