特許第6177740号(P6177740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6177740ワイピング方法及びインクジェット記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6177740
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】ワイピング方法及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20170731BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   B41J2/165 303
   B41J2/165 503
   B41J2/01 401
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-162198(P2014-162198)
(22)【出願日】2014年8月8日
(65)【公開番号】特開2016-36992(P2016-36992A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】古川 徳昭
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−218748(JP,A)
【文献】 特開2006−247956(JP,A)
【文献】 特開2008−137351(JP,A)
【文献】 米国特許第05612722(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドのインク吐出面に付着したインクを拭き取るワイパーと、
前記ワイパーを移動させる移動機構と、
前記移動機構を介して前記ワイパーの動作を制御する制御部と
を備えたインクジェット記録装置であって、
前記制御部は、
前記移動機構を介して、前記ワイパーを、ノズルから吐出されたインクが付着している領域であるインク付着領域内の第1当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って予め設定された第1方向に移動させた後、前記記録ヘッドの一方側端部の第1停止位置に停止させて前記インク吐出面から離間させる第1移動指示部と、
前記移動機構を介して、前記ワイパーを、前記記録ヘッドの他方側端部の第2当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って前記第1方向に移動させた後、前記第1停止位置よりも前記記録ヘッドの中央部に近い第2停止位置に停止させて前記インク吐出面から離間させる第2移動指示部と、
前記移動機構を介して、前記ワイパーを、前記第1停止位置よりも前記記録ヘッドの外側の第3当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って前記第1方向とは逆の第2方向に移動させた後、前記第2当接位置よりも前記記録ヘッドの外側の第3停止位置に停止させて前記インク吐出面から離れさせる第3移動指示部と
を備える、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記第1当接位置は、インクを吐出するノズルが配置された領域であるノズル領域に含まれる位置であり、
前記第1方向は、前記第1当接位置から、この第1当接位置に近い側の前記記録ヘッドの端部へ向かう向きである、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1停止位置、及び、前記第2停止位置は、前記インク付着領域の外側の位置である、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1停止位置と前記第2停止位置とは、前記第1移動部による前記ワイパーの移動によって拭き取られたインクと、前記第2移動部による前記ワイパーの移動によって拭き取られたインクと、を離して貯留することのできる程度に互いに離れた位置である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドの一方側端部における前記インク吐出面に、前記インク吐出面の他の領域よりも表面が親水性である親水部が形成されており、
前記第1停止位置、及び、前記第2停止位置は、前記親水部に含まれる位置である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドの一方側端部の外側における前記インク吐出面に、前記インク吐出面の他の領域よりも表面が撥水性である撥水部が形成されており、
前記第3当接位置は、前記撥水部に含まれる位置である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記第1当接位置、及び、前記第2当接位置は、インクを吐出するノズルが配置された領域のうち、記録媒体上に画像を形成する領域である画像形成領域の外側の位置である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
記録ヘッドのインク吐出面に付着したインクをワイパーによって拭き取るワイピング方法であって、
前記ワイパーの動作を制御する制御部が、前記ワイパーを移動する移動機構を介して、
前記ワイパーを、ノズルから吐出されたインクが付着している領域であるインク付着領域内の第1当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って予め設定された第1方向に移動させた後、前記記録ヘッドの一方側端部の第1停止位置に停止させて、前記インク吐出面から離れさせる第1移動工程と、
前記ワイパーを、前記記録ヘッドの他方側端部の第2当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って前記第1方向に移動させた後、前記第1停止位置よりも前記記録ヘッドの中央部に近い第2停止位置に停止させて、前記インク吐出面から離れさせる第2移動工程と、
前記ワイパーを、前記第1停止位置よりも前記記録ヘッドの外側の第3当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って前記第1方向とは逆の第2方向に移動させた後、前記第2当接位置よりも前記記録ヘッドの外側の第3停止位置に停止させて、前記インク吐出面から離れさせる第3移動工程と
を含むワイピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドのインク吐出面に付着したインクをワイパーによって拭き取るワイピング方法に関する。また、本発明は、紙を含む記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッドのインク吐出面に付着したインクをワイパーによって拭き取る技術が知られている。例えば、複数のワイパーを備えるインクジェット記録装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、2つのワイパー(第1ワイパーと第2ワイパー)を、以下のように動かすことが記載されている。まず、第1ワイパーが、ノズル領域の外側の拭き取り開始位置に略垂直方向から圧接され、ノズル領域を含むインク吐出面を所定方向に拭き取る。次に、インク吐出面の拭き取り方向に対し第1ワイパーの上流側に配置された第2ワイパーが、2回目以降のワイピング動作時に第1ワイパーの先端に付着したインクによって形成されたインク溜りを拭き取り方向の下流側に移動させた後、ノズル領域の上流側でインク吐出面から離間する。
【0004】
このように、2つのワイパーを動かすことによって、拭き始めの位置よりも上流側におけるインク溜りの発生を抑制することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−49205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、第2ワイパーの先端に拭き取り後のインクが付着し、第2ワイパーの拭き取り開始位置にインクを再付着させることがあった。
【0007】
本発明に係るワイピング方法及びインクジェット記録装置は、上記課題に鑑みてなされたものであって、インク吐出面におけるインク溜りの発生を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1のインクジェット記録装置は、記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドのインク吐出面に付着したインクを拭き取るワイパーと、前記ワイパーを移動させる移動機構と、前記移動機構を介して前記ワイパーの動作を制御する制御部とを備えたインクジェット記録装置である。前記制御部は、第1移動指示部、第2移動指示部、及び、第3移動指示部を備える。前記第1移動指示部は、前記移動機構を介して、前記ワイパーを、ノズルから吐出されたインクが付着している領域であるインク付着領域内の第1当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って予め設定された第1方向に移動させる。その後、前記第1移動指示部は、前記移動機構を介して、前記ワイパーを、前記記録ヘッドの一方側端部の第1停止位置に停止させて前記インク吐出面から離間させる。前記第2移動指示部は、前記移動機構を介して、前記ワイパーを、前記記録ヘッドの他方側端部の第2当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って前記第1方向に移動させる。その後、前記第2移動指示部は、前記移動機構を介して、前記ワイパーを、前記第1停止位置よりも前記記録ヘッドの中央部に近い第2停止位置に停止させて前記インク吐出面から離間させる。前記第3移動指示部は、前記移動機構を介して、前記ワイパーを、前記第1停止位置よりも前記記録ヘッドの外側の第3当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って前記第1方向とは逆の第2方向に移動させる。その後、前記第3移動指示部は、前記移動機構を介して、前記ワイパーを、前記第2当接位置よりも前記記録ヘッドの外側の第3停止位置に停止させて前記インク吐出面から離れさせる。
【0009】
本発明に係るワイピング方法は、記録ヘッドのインク吐出面に付着したインクをワイパーによって拭き取るワイピング方法であって、前記ワイパーの動作を制御する制御部が、前記ワイパーを移動する移動機構を介して、前記ワイパーを移動させる、第1移動工程、第2移動工程、及び、第3移動工程を含む。前記第1移動工程において、前記ワイパーを、ノズルから吐出されたインクが付着している領域であるインク付着領域内の第1当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って予め設定された第1方向に移動させる。その後、前記ワイパーを、前記記録ヘッドの一方側端部の第1停止位置に停止させて、前記インク吐出面から離れさせる。前記第2移動工程において、前記ワイパーを、前記記録ヘッドの他方側端部の第2当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って前記第1方向に移動させる。その後、前記ワイパーを、前記第1停止位置よりも前記記録ヘッドの中央部に近い第2停止位置に停止させて、前記インク吐出面から離れさせる。前記第3移動工程において、前記ワイパーを、前記第1停止位置よりも前記記録ヘッドの外側の第3当接位置において前記インク吐出面に押し当て、前記インク吐出面に沿って前記第1方向とは逆の第2方向に移動させる。その後、前記ワイパーを、前記第2当接位置よりも前記記録ヘッドの外側の第3停止位置に停止させて、前記インク吐出面から離れさせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るワイピング方法及びインクジェット記録装置によれば、インク吐出面におけるインク溜りの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す図である。
図2図1に示すインクジェット記録装置のヘッド部を示す斜視図である。
図3図1に示すインクジェット記録装置の制御部の機能的な構成、記録ヘッド、及び、ワイパー部を示す図である。
図4図1に示すインクジェット記録装置の記録ヘッドを示す側面図である。
図5図3に示す移動機構がワイパーを下降させた状態を示す図である。
図6図3に示す移動機構がワイパーを上昇させた状態を示す図である。
図7】(a)〜(e)は、それぞれ、図3に示すワイパーの動作(往路)を示す図である。
図8】(a)〜(d)は、それぞれ、図3に示すワイパーの動作(復路)を示す図である。
図9図3に示す制御部の動作を示すフローチャート(前半部)である。
図10図3に示す制御部の動作を示すフローチャート(後半部)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面(図1図10)を参照して本発明の実施形態に係るワイピング方法及びインクジェット記録装置1について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。なお、冗長を避けるため、図中、同一又は相当する部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、本実施形態では、図中に記載のX軸及びY軸は水平面に平行であり、Z軸は鉛直線に平行である。
【0013】
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係るインクジェット記録装置1について説明する。図1は、インクジェット記録装置1の構成を示す。インクジェット記録装置1は、トレイ200、給送ローラー201、第1搬送ユニット205、ヘッド部3、制御部50、ワイパー部60、第2搬送ユニット212、排出ローラー216、及び、キャップユニット290を備える。
【0014】
トレイ200は、記録媒体Pを収納し、第1搬送ユニット205よりも記録媒体Pの搬送方向D0の上流側(図1では右側)に設けられる。トレイ200の搬送方向D0の下流側端(図1では左側端)には、給送ローラー201が設けられる。給送ローラー201は、トレイ200に収容された記録媒体Pを一枚ずつ第1搬送ユニット205へ供給する。記録媒体Pは、記録ヘッド10によって画像が形成される媒体であって、例えば、普通紙、コピー紙、再生紙、薄紙、厚紙、又は、光沢紙のような紙、並びに、OHP(Overhead Projector)シートのような合成樹脂製のシートを含む。
【0015】
第1搬送ユニット205は、第1駆動ローラー206と、第1従動ローラー207と、第1搬送ベルト208とを含む。第1搬送ベルト208は、第1駆動ローラー206及び第1従動ローラー207に掛け渡される。第1駆動ローラー206が図略のモーターによって反時計回りに回転駆動されることによって、第1搬送ベルト208が回転し、第1搬送ベルト208上に載置された記録媒体Pが搬送方向D0(図1では左方向)に搬送される。
【0016】
ヘッド部3は、第1搬送ベルト208における上側ベルトの上面に対向して配置される。ヘッド部3は、ヘッドハウジング18、及び、ラインヘッド10Y、10M、10C、10Kを含む。ヘッドハウジング18は、ラインヘッド10Y、10M、10C、10Kを保持する。ラインヘッド10Y、10M、10C、10Kは、それぞれ、黄色のインク、マゼンダ色のインク、シアン色のインク、及び、黒色のインクを吐出する。ラインヘッド10Y〜10Kは、記録媒体Pの搬送方向D0に沿って配置される。図2は、図1に示すインクジェット記録装置1のヘッド部3を示す斜視図である。図2に示すように、ラインヘッド10Y〜10Kは、それぞれ、搬送方向D0に直交する方向(ここでは、X軸方向)に沿って千鳥状に配置される3個の記録ヘッド10を含む。
【0017】
図1に示すように、第2搬送ユニット212は、第1搬送ユニット205よりも搬送方向D0の下流側(図1では左側)に配置されている。第2搬送ユニット212は、第2駆動ローラー213と、第2従動ローラー214と、第2搬送ベルト215とを含む。第2搬送ベルト215は、第2駆動ローラー213及び第2従動ローラー214に掛け渡される。第2駆動ローラー213が図略のモーターによって反時計回りに回転駆動されることによって、第2搬送ベルト215が回転し、第2搬送ベルト215上に載置された記録媒体Pが搬送方向D0(図1では左方向)に搬送される。
【0018】
ヘッド部3によって画像が形成された記録媒体Pは、第2搬送ユニット212へ送られ、記録媒体Pが第2搬送ユニット212を通過する間に、記録媒体Pの表面に付着したインクが乾燥される。また、第2搬送ユニット212の下方にはワイパー部60及びキャップユニット290が配置されている。
【0019】
制御部50は、インクジェット記録装置1全体の動作を制御する。制御部50は、例えば、ワイパー部60にラインヘッド10Y〜10Kのインク吐出面17に付着したインクを拭き取らせる前に、つまり、ワイピングを実行する前に、第1搬送ユニット205を下降させる。そして、制御部50は、第2搬送ユニット212の下方に配置されたワイパー部60を水平移動させて、待機位置であるヘッド部3の下方に配置する。その結果、ワイパー部60は、ヘッド部3と第1搬送ユニット205との間に位置させられる。ワイパー部60は、図3図10を参照して後述するように、ラインヘッド10Y〜10Kに付着したインクを拭き取り、拭き取られたインクを回収する。
【0020】
制御部50は、また例えば、ラインヘッド10Y〜10Kのインク吐出面17(図3参照)をキャッピングする前に、キャップユニット290を水平移動させてヘッド部3の下方に位置させる。更に、制御部50は、キャップユニット290を上方に移動させる。その結果、キャップユニット290は、ラインヘッド10Y〜10Kのインク吐出面17に装着される。なお、制御部50の詳細については、図3を参照して後述する。
【0021】
排出ローラー216は、第2搬送ユニット212よりも搬送方向D0の下流側(図1では左側)に配置され、画像が形成された記録媒体Pをインクジェット記録装置1の外部に排出する。
【0022】
次に、図3を参照して、記録ヘッド10、ワイパー部60、及び、制御部50について説明する。図3は、図1に示すインクジェット記録装置1の制御部50の機能的な構成、記録ヘッド10、及び、ワイパー部60を示す図である。ワイパー部60は、ワイパー20及び移動機構30を含む。
【0023】
記録ヘッド10は、その下面にインク吐出面17を有する。インク吐出面17の中央部には、多数のノズル11が開口している。ノズル11は、記録媒体P(図1参照)に画像を形成するためのインクを吐出する。ノズル11は、パージ処理において、記録ヘッド10内の不要物と共にインクNfを排出する。なお、インクNfは密閉空間(図略のインクタンク)に収容されている。よって、インクNfに含有される揮発成分の蒸発が防止される。インクNfに含有される揮発成分は、外気に触れると蒸発する。その結果、ノズル11から排出されるインクNfは、空気に触れていた残留インクNv(図7(c)〜(e)参照)と比較して粘度が低い。
【0024】
制御部50は、移動機構30を介してワイパー20を移動する。移動機構30は、制御部50の指示に応じて、ワイパー20を移動させる。具体的には、移動機構30は、上昇方向D1にワイパー20を移動させることができ、ワイピング方向D3又はワイピング方向D4にワイパー20を移動させることができ、下降方向D2にワイパー20を移動させることができる。本実施形態では、上昇方向D1及び下降方向D2は、Z軸に沿っており、インク吐出面17に直交している。また、ワイピング方向D3及びワイピング方向D4は、X軸及びインク吐出面17に沿っている。上昇方向D1及び下降方向D2を総称して上下方向と記載する場合もある。
【0025】
移動機構30は、制御部50からの指示に応じて、ワイパー20を上昇方向D1、下降方向D2、ワイピング方向D3及びワイピング方向D4に移動させる。例えば、ワイパー20によってインク吐出面17をワイピングする場合には、移動機構30は、ワイパー20をインク吐出面17に押し当てた状態でインク吐出面17に沿って移動させる。その結果、ワイパー20は、ノズル11から排出されたインクNf又はノズル11から吐出されインク吐出面17に付着したインクNvを拭き取ることができる。また、ワイパー20は、インク吐出面17に付着した不要物(例えば、ゴミ、埃)も拭き取る。ワイパー20は、弾性を有し、平板状に形成されている。ワイパー20は、例えば、EPDM(ethylene−propylene−diene terpolymer)を含む合成ゴム、又は、合成樹脂によって形成される。また、ワイパー20の先端(上端)は、本実施形態では、平坦(フラット)である。なお、移動機構30の構造については、図5図6を参照して後述する。
【0026】
記録ヘッド10の一方側端部(図3では、左側端部)の下面には、くの字状に折り曲げられた板状部材40が配置されている。板状部材40は、親水部41と、撥水部42とを備える。親水部41は、インク吐出面17より高い親水性を有する。親水部41は、例えば、親水性の高いステンレスのような金属、又は、親水性の高い合成樹脂によって形成される。親水部41の表面粗さは、インク吐出面17の表面粗さより粗い。ここで、親水部41がインク吐出面17よりも高い親水性を有していればよい。よって、例えば、親水部41を金属又は合成樹脂によって形成し、親水部41の表面粗さを、インク吐出面17の表面粗さよりも粗くすることによって、親水部41の親水性をインク吐出面17の親水性よりも高くする。
【0027】
撥水部42はインク吐出面17及び親水部41より高い撥水性を有する。撥水部42は、例えば、フッ素樹脂により形成される。撥水部42は、インク吐出面17に対して親水部41よりも外側(ここでは、左側)に配置される。親水部41と撥水部42とは隣接して構成されている。撥水部42は、インク吐出面17に対して斜め上方(ここでは、左上方向)に傾斜して配置されている。
【0028】
次に、制御部50の機能的な構成について説明する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備える。上記ROMには、本発明に係るワイピング方法を実行する制御プログラムが格納されている。そして、上記CPUは、上記ROMに格納された制御プログラムを読みだして実行することによって、第1移動指示部51、第2移動指示部52、及び、第3移動指示部53を含む各種機能部として機能する。上記RAMは、上記CPUが、上記制御プログラムを実行する際の作業領域として用いられる。
【0029】
第1移動指示部51は、移動機構30を介して、ワイパー20をインク吐出面17に沿ってワイピング方向D3に移動させ(1回目のワイピングを行い)、インクNfを記録ヘッド10の一方側端部(例えば、左側端部)に溜める。
【0030】
第2移動指示部52は、移動機構30を介して、ワイパー20をインク吐出面17に沿ってワイピング方向D3に移動させ(2回目のワイピングを行い)インクNfを、記録ヘッド10の一方側端部(例えば、左側端部)に溜める。
【0031】
第3移動指示部53は、移動機構30を介して、ワイパー20を、インク吐出面17に沿ってワイピング方向D4に移動させ、貯留されたインクNfを用いて、インク吐出面17のウェットワイピングを行う。なお、第1移動指示部51、第2移動指示部52、及び、第3移動指示部53の動作の詳細については、図7図10を参照して後述する。
【0032】
ここで、図4を参照して記録ヘッド10について説明する。図4は、図1に示すインクジェット記録装置1の記録ヘッド10を示す側面図である。記録ヘッド10は、流入口13及び流出口15を有する。流入口13は、図3に示すインクNfが流入する開口部である。流出口15は、インクNfが流出する開口部である。換言すれば、画像形成処理時又はパージ処理時に、図略のインクタンクから流入口13に流入したインクNfは、記録ヘッド10の内部に流入し、流出口15から流出する。また、記録ヘッド10の内部に流入したインクNfは、画像形成処理時にはノズル11から吐出され、パージ処理時にはノズル11から排出される。本実施形態では、ワイパー20は、パージ処理時にノズル11から排出され、インク吐出面17に付着したインクNfを用いてウェットワイピングを行う。
【0033】
次に、図5図6を参照して、移動機構30について説明する。図5は、図3に示す移動機構30がワイパー20を下降させた状態を示す図である。図6は、図3に示す移動機構30がワイパー20を上昇させた状態を示す図である。なお、図5及び図6では、図面の簡略化のため、板状部材40、親水部41及び撥水部42の表記を省略している。制御部50は、ワイピングを実行する前に、ワイパー部60を、ラインヘッド10Y、10M、10C、10Kに対向するように移動させる。なお、図5では、便宜上、ラインヘッド10Kが備える3個の記録ヘッド10に対応する3個のワイパー20のみを表記している。
【0034】
図5図6に示すように、移動機構30は、キャリッジ31、キャリッジ31を支持する支持フレーム35、コロ36、ギャップコロ37、昇降部材38、及び、底部39を備える。昇降部材38は、それぞれ、リフト部材38a及びシャフト38bを含む。
【0035】
底部39は、昇降部材38を介して支持フレーム35を支持する。昇降部材38は、底部39上に配置され、支持フレーム35を支持し昇降する。シャフト38bは、図略のモーターによって回転駆動され、リフト部材38aを介して、支持フレーム35を昇降する。リフト部材38aは、シャフト38bと一体に構成され、シャフト38bが回転駆動されることによって、シャフト38bと一体に回転する。また、リフト部材38aが回転することによって、支持フレーム35を昇降する。更に具体的には、昇降部材38のシャフト38bが、図略のモーターによって回転駆動され、起立されることによって、昇降部材38のリフト部材38aが支持フレーム35を上昇させる。また、昇降部材38のシャフト38bが、図略のモーターによって回転駆動され、倒伏されることによって、昇降部材38のリフト部材38aが支持フレーム35を下降させる。
【0036】
支持フレーム35は、昇降部材38によって支持され、コロ36を介して、キャリッジ31をX軸方向(ワイピング方向D3及びワイピング方向D4)に移動可能に支持する。コロ36は、支持フレーム35によって支持され、支持フレーム35上を回動することによって、キャリッジ31をX軸方向(ワイピング方向D3及びワイピング方向D4)に移動させる。
【0037】
キャリッジ31は、コロ36を介して、支持フレーム35によって支持され、X軸方向(ワイピング方向D3及びワイピング方向D4)に移動する。また、キャリッジ31には、ギャップコロ37及びワイパー20が設けられている。ギャップコロ37は、昇降部材38によって支持フレーム35が上昇されたときに、ヘッドハウジング18に当接することで、インク吐出面17に押し当てられたワイパー20の上下方向の位置(上限位置)を一定に保持する。
【0038】
ここで、ワイパー20を上昇させる場合の移動機構30の動作を説明する。まず、図3に示す制御部50が、図略のモーターを駆動させて、ワイピング方向D3の上流側(図5では右側)に配置される昇降部材38のシャフト38bを時計回りに回転させ、ワイピング方向D3の下流側(図5では左側)に配置される昇降部材38のシャフト38bを反時計回りに回転させる。そして、倒伏状態のリフト部材38aが起立状態に変化される。その結果、図6に示すように、支持フレーム35と共にキャリッジ31、コロ36、ギャップコロ37、及びワイパー20が上昇する。
【0039】
図6は、図3に示す移動機構30がワイパー20を上昇させた状態を示す図である。図6に示すように、ギャップコロ37は、ヘッドハウジング18に当接することで、上昇してインク吐出面17に押し当てられたワイパー20の上下方向の位置を一定に保持する。キャリッジ31は、支持フレーム35に対して、コロ36を介して移動可能に支持される。キャリッジ31がワイピング方向D3又はワイピング方向D4に移動することによって、ワイパー20もワイピング方向D3又はワイピング方向D4に移動する。
【0040】
なお、ラインヘッド10Y、10M、10Cの各々に対応する3個のワイパー20は、移動機構30によって、ラインヘッド10Kに対応する3個のワイパー20と同様の動作をする。
【0041】
次に、図7及び図8を参照して、ワイパー20の動作について説明する。図7(a)〜図7(e)は、それぞれ、図3に示すワイパー20の動作(往路)を示す図である。ワイパー20は、制御部50(第1移動指示部51、第2移動指示部52、及び、第3移動指示部53)の指示に応じて移動機構30が動作することによって、以下に説明するように動作する。
【0042】
初期状態では、ノズル11がインクNfを排出するため、インク付着領域FA内にインクNfが残留している。また、ワイパー20は、下限位置にある。そして、図7(a)に示すように、ワイパー20は、インク付着領域FA内の第1当接位置PT1の直下に移動され、上昇方向D1に移動する(上昇する)。そして、ワイパー20の先端がインク吐出面17に押し当てられ、ワイパー20は上昇を停止する。なお、第1当接位置PT1は、インクを吐出するノズル11が配置された領域のうち、記録媒体P上に画像を形成する領域である画像形成領域の外側の位置である。
【0043】
次に、図7(b)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま(上限位置のまま)、第1当接位置PT1から親水部41に向かってワイピング方向D3に移動し、親水部41内の第1停止位置PS1に停止する。その後、ワイパー20は、下降方向D2に移動する(下降する)。その結果、ワイパー20によってインク付着領域FA内に残留したインクNfの一部が拭き取られ、親水部41内の第1停止位置PS1近傍にインクNfが貯留される。
【0044】
そして、図7(c)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま(下限位置のまま)、記録ヘッド10の右側端部の第2当接位置PT2の直下の位置までワイピング方向D4に移動され、第2当接位置PT2に向けて上昇方向D1に移動する(上昇する)。そして、ワイパー20の先端がインク吐出面17に押し当てられ、ワイパー20は上昇を停止する。このとき、ワイパー20の先端に残留していたインクNvがインク吐出面17に付着する(図7(d)参照)。なお、第2当接位置PT2は、インクを吐出するノズル11が配置された領域のうち、記録媒体P上に画像を形成する領域である画像形成領域の外側の位置である。
【0045】
次に、図7(d)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま(上昇状態のまま)、インク吐出面17に沿って第1方向(ここでは、ワイピング方向D3)に移動される。その後、ワイパー20は、親水部41内であって、第1停止位置PS1よりも記録ヘッド10の中央部に近い第2停止位置PS2に停止する。そして、ワイパー20は、下降方向D2に移動する(下降する)。その結果、ワイパー20によってインク付着領域FA内に残留したインクNfの残部が拭き取られ、親水部41内の第2停止位置PS2近傍にインクNfが貯留される。
【0046】
上述のように、第1当接位置PT1から第1停止位置PS1までの1回目のワイピング、及び、第2当接位置PT2から第2停止位置PS2までの2回目のワイピングによって、それぞれ、インク付着領域FAのインクNfが拭き取られて、親水部41内にインクNfが貯留される。つまり、インク吐出面17(ここでは、親水部41)の第1停止位置PS1近傍、及び、第2停止位置PS2近傍の2箇所にインクNfが貯留される。したがって、多量のフレッシュインクNfを貯留することができる。ここで、フレッシュインクNfとは、ノズル11から吐出された直後のインクであって、インクに含まれる揮発成分がほとんど蒸発していないインクである。一方、残留インクNvとは、ノズル11から吐出されてから所定時間(例えば、3分)以上経過したインクであって、インクに含まれる揮発成分が蒸発して粘度が増加したインクである。
【0047】
また、第1当接位置PT1は、インクを吐出するノズル11が配置された領域であるノズル領域に含まれる位置であり、上記第1方向は、第1当接位置PT1から、この第1当接位置PT1に近い側の記録ヘッド10の端部へ向かう向き(ワイピング方向D3)である。よって、第1当接位置PT1から第1停止位置PS1までの1回目のワイピングで、インク付着領域FAのインクNfの一部が拭き取られて、親水部41内にインクNfが貯留される。したがって、インク付着領域FAのインクNfを2回に分けて拭き取ることができるため、多量のフレッシュインクNfを貯留することができる。
【0048】
更に、第1停止位置PS1、及び、第2停止位置PS2は、インク付着領域FAの外側の位置であるため、インク付着領域FAに付着したインクNfを全て拭き取って、第1停止位置PS1近傍、及び、第2停止位置PS2近傍の2箇所にインクNfが貯留される。したがって、更に多量のフレッシュインクNfを貯留することができる。
【0049】
また、第1停止位置PS1と第2停止位置PS2とは、1回目のワイピングにおけるワイパー20の移動によって拭き取られたインクNfと、2回目のワイピングにおけるワイパー20の移動によって拭き取られたインクNfと、を離して貯留することのできる程度に互いに離れた位置である。よって、第1停止位置PS1近傍、及び、第2停止位置PS2近傍の2箇所にインクNfが貯留される。したがって、多量のフレッシュインクNfを貯留することができる。
【0050】
更に、第1停止位置PS1、及び、第2停止位置PS2は、親水部41に含まれる位置であるため、第1停止位置PS1近傍、及び、第2停止位置PS2近傍の2箇所に更に多量のインクNfを貯留することができる。
【0051】
また、第1当接位置PT1及び第2当接位置PT2は、インクを吐出するノズル11が配置された領域のうち、記録媒体P上に画像を形成する領域である画像形成領域の外側の位置であるため、ワイパー20をインク吐出面17に押し当てるときに画像形成領域を傷つけることがない。
【0052】
図8(a)〜(d)は、それぞれ、図3に示すワイパーの動作(復路)を示す図である。なお、図7(d)に示すように、ワイパー20は、第2停止位置PS2で下降した後、上下方向の位置を一定に維持したまま(下限位置のまま)、
第3当接位置PT3よりも左側の第3上昇位置PU3の直下までワイピング方向D3に移動される。また、図8(a)に示すように、ワイパー20の先端には、インクNfが付着している。ワイパー20は、撥水部42に向かって上昇方向D1に移動し(上昇し)、上限位置において上昇を停止する。
【0053】
図8(b)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま(上限位置のまま)、撥水部42内の第3当接位置PT3において撥水部42に当接する。そして、ワイパー20は、親水部41を経由してワイピング方向D4に移動し、親水部41の2箇所に付着したインクNfを拭き取る。
【0054】
図8(c)に示すように、ワイパー20は、上下方向の位置を一定に維持したまま(上限位置のまま)、記録ヘッド10の右端近傍位置である第3停止位置PS3までワイピング方向D4に移動する。なお、第3停止位置PS3でワイパー20が停止する際には、移動機構30に支持されるワイパー20の基部はインク吐出面17の直下位置の外側で停止する。つまり、第3停止位置PS3はインク吐出面17の直下位置の外側の位置(図8(c)において、インク吐出面17の直下位置から右側に離間した位置)である。
【0055】
図8(d)に示すように、第3停止位置PS3に到達したワイパー20は、停止した後、下降方向D2に移動する(下降する)。そして、ワイパー20は、待機位置に戻り、ワイピングを終了する。
【0056】
以上、図7及び図8を参照して説明したように、第1停止位置PS1近傍、及び、第2停止位置PS2近傍の2箇所にインクNfを多量に貯留することができる。また、このインクNfを用いて、第3当接位置PT3から第3停止位置PS3までウェットワイピングすることによって、簡素な構成で記録ヘッド10のインク吐出面17に付着したインクを拭き取ることができるため、インク吐出面17におけるインク溜りの発生を抑制することができる。
【0057】
更に、第3当接位置PT3は、撥水部42に含まれる位置であるため、ワイパー20の先端に付着したインクNfが、第3当接位置PT3近傍に付着することを抑制できる。
【0058】
また、撥水部42は斜め上方に傾斜して形成されている。よって、ワイパー20は、撥水部42から親水部41に移動する際に、撥水部42の傾斜に応じてワイパー20の先端部を徐々に湾曲させながら親水部41に進入できる。その結果、ワイパー20を親水部41に向かって上昇方向D1に上昇させ親水部41に押し当てる場合と比較して、ワイパー20先端が受けるダメージを軽減することができる。
【0059】
次に、図9図10を参照して、制御部50の動作を説明する。図9は、図3に示す制御部50の動作を示すフローチャート(前半部)である。図10は、図3に示す制御部50の動作を示すフローチャート(後半部)である。まず、図3に示す第1移動指示部51からの指示によって、ワイパー20が第1当接位置PT1の下方に移動される(ステップS101)。次に、第1移動指示部51からの指示によって、ワイパー20が上昇方向D1に移動され、図7(a)に示すように、インク吐出面17の第1当接位置PT1に押し当てられる(ステップS103)。
【0060】
そして、第1移動指示部51からの指示によって、ワイパー20がインク吐出面17をワイピングしつつ、左方向(ワイピング方向D3)に移動される(ステップS105)。次いで、第1移動指示部51からの指示によって、図7(b)に示すように、ワイパー20が第1停止位置PS1で停止される(ステップS107)。そして、第1移動指示部51からの指示によって、ワイパー20が下降方向D2に移動され(下降され)、インク吐出面17から離される(ステップS109)。
【0061】
次に、第2移動指示部52からの指示によって、ワイパー20が第2当接位置PT2の下方に移動される(ステップS111)。次に、第2移動指示部52からの指示によって、ワイパー20が上昇方向D1に移動され、図7(c)に示すように、インク吐出面17の第2当接位置PT2に押し当てられる(ステップS113)。
【0062】
そして、第2移動指示部52からの指示によって、ワイパー20がインク吐出面17をワイピングしつつ、左方向(ワイピング方向D3)に移動される(ステップS115)。次いで、第2移動指示部52からの指示によって、図7(d)に示すように、ワイパー20が第2停止位置PS2で停止される(ステップS117)。そして、第2移動指示部52からの指示によって、ワイパー20が下降方向D2に移動され(下降され)、図7(e)に示すように、インク吐出面17から離される(ステップS119)。
【0063】
次に、図10に示すように、第3移動指示部53からの指示によって、ワイパー20が、第3上昇位置PU3の下方に移動される(ステップS121、図8(a)参照)。そして、第3移動指示部53からの指示によって、ワイパー20が上昇方向D1に移動され(上昇され)、図8(b)に示すように、上限位置において上昇が停止される。続いて、第3移動指示部53からの指示によって、ワイパー20がワイピング方向D4に移動され、インク吐出面17の第3当接位置PT3に押し当てられる(ステップS123)。
【0064】
そして、第3移動指示部53からの指示によって、ワイパー20がインク吐出面17をワイピングしつつ、ワイピング方向D4に移動される(ステップS125)。なお、ステップS123、及び、ステップS125において、ワイパー20は、停止することなく、ワイピング方向D4に移動され続ける。次いで、第3移動指示部53からの指示によって、図8(c)に示すように、ワイパー20が第3停止位置PS3で停止される(ステップS127)。そして、第3移動指示部53からの指示によって、ワイパー20が下降方向D2に移動され(下降され)、図8(d)に示すように、インク吐出面17から離され(ステップS129)、処理が終了する。
【0065】
図9図10に示すフローチャートにおいて、ステップS101からステップS109が、「第1移動工程」の一例に相当し、ステップS111からステップS119が、「第2移動工程」の一例に相当し、ステップS121からステップS129が、「第3移動工程」の一例に相当する。
【0066】
上述のように、第1停止位置PS1近傍、及び、第2停止位置PS2近傍の2箇所に貯留されたフレッシュインクNfを用いて、第3当接位置PT3から第3停止位置PS3までウェットワイピングされるため、簡素な構成で記録ヘッド10のインク吐出面17に付着したインクNf、Nvを拭き取ることができる。よって、インク吐出面17におけるインク溜りの発生を抑制することができる。
【0067】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(9))。図面は、理解し易くするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上、実際とは異なる場合がある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
(1)図7を参照して説明したように、本実施形態では、インク付着領域FAのインクNfを2回に分けて拭き取る場合について説明したが、インク付着領域FAのインクNfを2回以上に分けて拭き取る形態であればよい。インク付着領域FAのインクNfの拭き取り回数が多い程、親水部41内に多量のインクNfを貯留することができる。また、インク付着領域FAのインクNfの拭き取り回数が多い程、処理時間が長くなる。
【0069】
(2)図7を参照して説明したように、本実施形態では、第1当接位置PT1が、インク付着領域FA内の、記録媒体P上に画像を形成する領域である画像形成領域の外側の位置である場合について説明したが、第1当接位置PT1が、インク付着領域FA内であればよい。例えば、第1当接位置PT1が、インク付着領域FAの中央位置であれば、2回のワイピングで、それぞれ、インク付着領域FA内の略同一量のインクNfを拭き取ることができるため、更に多量のインクNfを貯留することができる。
【0070】
(3)図7を参照して説明したように、本実施形態では、第1停止位置PS1及び第2停止位置PS2が親水部41内の位置である場合について説明したが、記録ヘッド10の一方側端部(例えば、左側端部)のインク吐出面17内の位置でもよい。
【0071】
(4)図7を参照して説明したように、本実施形態では、第2当接位置PT2が記録ヘッド10の右側端部の位置である場合について説明したが、第2当接位置PT2がインク付着領域FA外の領域内の位置であって、インク付着領域FAに対して第1停止位置PS1と反対側の位置であればよい。例えば、第2当接位置PT2がインク付着領域FAにおける右側端の外側の位置でもよい。
【0072】
(5)図7を参照して説明したように、本実施形態では、第3当接位置PT3が親水部41内の位置である場合について説明したが、第3当接位置PT3が記録ヘッド10の一方側端部(例えば、左側端部)のインク吐出面17内の位置でもよい。
【0073】
(6)図7を参照して説明したように、本実施形態では、第3停止位置PS3が、記録ヘッド10の他方側端部(例えば、右側端部)におけるインク吐出面17の端近傍の位置である場合について説明したが、第2当接位置PT2よりも記録ヘッド10の外側の位置であればよい。ただし、第3停止位置PS3が、記録ヘッド10の他方側端部(例えば、右側端部)におけるインク吐出面17の端に近いことが好ましい。第3停止位置PS3がインク吐出面17の端に近い程、ワイパー20がインク吐出面17から離れた後に、インク吐出面17及びワイパー20の上端に付着しているインクNfの量を削減することができる。
【0074】
(7)図3を参照して説明したように、本実施形態では、記録ヘッド10の一方側端部(図3では、左側端部)に、親水部41及び撥水部42を有する板状部材40が配置されている場合について説明したが、その他の形態でもよい。例えば、記録ヘッド10の両端に、それぞれ、板状部材40が配置されている形態でもよいし、記録ヘッド10に板状部材40が配置されていない形態でもよい。記録ヘッド10の両端に、それぞれ、板状部材40が配置されている場合には、第3停止位置PS3を右側端に配置された板状部材40の撥水部42内の位置とすることによって、インク吐出面17及びワイパー20の上面に付着するインクNfの量を更に削減することができる。
【0075】
(8)図7を参照して説明したように、本実施形態では、ワイパー20をインク吐出面17に垂直に押し当てる場合について説明したが、ワイパー20をインク吐出面17に対して傾斜させて押し当てる形態でもよい。この場合には、ワイパー20の先端(上端)がインク吐出面17に沿うように容易に変形するため、ワイパー20の先端(上端)が受けるダメージを軽減することができる。
【0076】
(9)図3を参照して説明したように、本実施形態では、ワイパー20の先端(上端)が平坦(フラット)である場合について説明したが、ワイパー20に先端を傾斜させて加工されている形態でもよい。この場合には、インク吐出面17及びワイパー20の先端に付着するインクNfの量を更に削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、記録ヘッドのインク吐出面に付着したインクをワイパーによって拭き取るワイピング方法の分野に利用可能である。また、本発明は、紙を含む記録媒体上にインクを吐出する記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 インクジェット記録装置
10 記録ヘッド
11 ノズル
17 インク吐出面
20 ワイパー
30 移動機構
40 板状部材
41 親水部
42 撥水部
50 制御部
51 第1移動指示部
52 第2移動指示部
53 第3移動指示部
D1 上昇方向
D2 下降方向
D3 ワイピング方向(左向き)
D4 ワイピング方向(右向き)
FA インク付着領域
Nv インク
Nf インク
PS1 第1停止位置
PT1 第1当接位置
PS2 第2停止位置
PT2 第2当接位置
PS3 第3停止位置
PT3 第3当接位置
PU3 第3上昇位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10