(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光干渉断層画像が、歯垢部領域と、歯垢が沈着するエナメル質部領域と、歯肉部領域とを区別して、2次元的に表示する2次元光干渉断層画像である、請求項1に記載の方法。
前記光干渉断層画像が、歯垢部領域と、歯垢が沈着するエナメル質部領域と、歯肉部領域とを区別して、3次元的に立体画像化して表示する3次元光干渉断層画像である、請求項1に記載の方法。
前記光干渉断層画像が、歯垢部領域と、歯垢が沈着するエナメル質部領域と、歯肉部領域とを区別して、2次元的に表示する2次元光干渉断層画像と、歯垢部領域と、歯垢が沈着するエナメル質部領域と、歯肉部領域とを区別して、3次元的に立体画像化して表示する3次元光干渉断層画像との両方である、請求項1に記載の方法。
前記歯垢を定量化する工程が、前記2次元光干渉断層画像から抽出した歯垢部領域から、歯垢の厚さ及び/または長さを数値化する工程を含む、請求項2または4に記載の方法。
前記歯垢を定量化する工程が、前記2次元光干渉断層画像または3次元光干渉断層画像から抽出した歯垢部領域から、歯垢の断面積を数値化する工程を含む、請求項2または4に記載の方法。
前記歯垢を定量化する工程において得られる、歯垢の厚さ、歯垢の長さ、歯垢の体積、歯垢の断面積、歯垢の表面積から選択される一以上の定量した値をデータベース化する工程と、
前記定量した値を、画像、表、グラフから選択される一以上として、経時的に表示する工程と
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記歯垢の厚さ、歯垢の長さ、歯垢の体積、歯垢の断面積、歯垢の表面積から選択される一以上の定量した値の変化量を経時的に算出し、数値、2次元画像、または3次元画像のいずれかとして、経時的に表示する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
コンピュータに歯垢の計測表示方法を実行させるためのソフトウェアであって、請求項1に記載の方法で得られた干渉光の散乱強度値に基づき、光干渉断層画像を得る工程と、
前記干渉光の散乱強度値に基づき、歯垢部領域の抽出を行う工程と、
前記歯垢部領域を画像化する工程と、
前記抽出した歯垢部領域に基づき、歯垢の厚さ、歯垢の長さ、歯垢の断面積、歯垢の体積、歯垢の表面積から選択される一以上の定量化した値を得る工程と
を含む方法をコンピュータに実行させるためのソフトウェア。
前記歯垢部領域の抽出を行う工程の前に、前記光干渉断層画像上の歯垢、歯肉、エナメル質を、解剖学的事実に基づいて形態学的に識別化する工程をさらに含む方法をコンピュータに実行させるための、請求項12に記載のソフトウェア。
コンピュータに歯肉及び/または歯槽骨の計測表示方法を実行させるためのソフトウェアであって、請求項15に記載の方法で得られた干渉光の散乱強度値に基づき、光干渉断層画像を得る工程と、
前記干渉光の散乱強度値に基づき、歯肉及び/または歯槽骨部領域の抽出を行う工程と、
前記歯肉部領域及び/または歯槽骨部領域を画像化する工程と、
前記抽出した歯肉部領域及び/または歯槽骨部領域に基づき、歯肉及び/または歯槽骨を定量化する工程と、
前記歯肉及び/または歯槽骨を定量化する工程を経時的に行うことにより、歯肉の腫脹及び/または歯槽骨の変化量を測定する工程と
を含む方法をコンピュータに実行させるためのソフトウェア。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、本発明を、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は、本発明を限定するものではない。
【0036】
[第1実施形態:歯垢計測表示方法及び装置]
本発明は、一実施形態によれば、歯垢計測表示装置である。本実施形態による歯垢計測表示装置は、OCT(Optical Coherent Tomography:OCT)装置を用いて、特に歯垢を選択的に計測するものである。ここで、OCT装置は、生体内組織をマイクロオーダーで極めて高解像度に測定可能な装置である。また、OCT装置では、体表面下にまで到達しうる近赤外線の光源を使用することで、被写体の表面部だけではなく深部までの測定が可能である。近赤外線は、レントゲン線(X線)のような生体に為害性がある電磁放射線ではないため、厳密に非侵襲な被写体の検査を行うことができる。本発明におけるOCT装置は、特にはフーリエドメインOCTである波長走査型OCT(Swept souce−OCT)であることが好ましい。
【0037】
本実施形態による歯垢計測表示装置の概略を、
図1にブロック図で示す。
図1に係る歯垢計測表示装置100は、主として、近赤外光源1と、分岐部3とコリメートレンズL1と参照ミラー9と複数の光ファイバーF
1、F
2、F
3、F
4及び整流器4から構成される光学干渉計部と、歯垢計測用プローブ8と、受光素子10と、プリアンプ(増幅装置)11と、電算部12と、計測部13と、表示部14とから実質的に構成される。
【0038】
図1において、光源1は、一定の範囲、例えば1310〜1360nmの光信号を発振する波長走査型の光源である。光源1は、光ファイバーF
1に接続され、光ファイバーF
1は分岐部3に接続される。分岐部3で分岐した一方の光ファイバーF
2aの後段には、光学整流器4、光修飾部5、偏光板、減衰板6が順に設けられる。そして、減衰板6後段には、送光受光同梱型光ファイバーF
2bを介して、歯垢測定用プローブ8が接続される。いっぽう、分岐部3で分岐した別の光ファイバーF
3の後段にはコリメートレンズL1および参照ミラー9が設けられる。加えて、装置100の構成内に光路長調整部が、光ファイバーF
2aの後段であって光ファイバーF
3の前段に設置される場合もある。分岐部3の分岐したさらに別の光ファイバーF
4後段には、コリメートレンズL2を介して、受光素子10であるフォトダイオードが設けられる。プリアンプ11で信号増幅後、電気信号導線部を介して、電算部12に接続される。電算部12はさらに、計測部13、表示部14に接続されている。電算部12はさらにまた、プローブ8の図示しないレーザ位置センサと接続されている。
【0039】
近赤外光源1は、生体に非侵襲な波長帯の近赤外光を発生させる光源である。具体的には、単一スペクトルの光信号を発振するレーザ光源であって、例えば特開2006−80384号公報の波長走査型ファイバー光源を用いることができる。ここで発振波長としては、例えば、水の吸収が小さく散乱も少ない1.3μm帯を用いることが好ましい。波長走査範囲は、例えば100nm〜200nmの範囲とし、掃引速度は例えば20kHzとすることができるが、かかる値には限定されない。
【0040】
分岐部3は光ファイバーに接続可能であって、光を、所望の比率で分割し、あるいは合成することができるものであればよい。
【0041】
受光素子10は、光ファイバーF
4から送られてくる干渉光を電気信号に変換する装置であって、フォトダイオード以外に、balanced photo detectorなどを用いることもできる。プリアンプ11は、フォトダイオードから得られた電気信号をさらに増幅する。
【0042】
電算部12、及び計測部13は、コンピュータに積載されたソフトウェアであってよく、これらが区別されずに一体として構成されていてもよい。電算部12は、プリアンプ11からの電気信号を高速フーリエ変換して散乱強度値のデータを算出し、データを格納する。また、電算部12はプローブ8の位置センサからの位置信号に基づいて3次元画像を生成するためのデータをも格納する。また、散乱強度値のデータを、諧調値のデータとしても変換し、格納する。計測部13は、散乱強度値および諧調値のデータから、歯垢部領域の抽出を行う。あるいは、画像表示されたデータ上の特定の長さや距離を計測したり、ピクセル数やボクセル数を抽出したりする操作を行う。
【0043】
表示部14は、コンピュータのディスプレイ装置であってもよい。表示部14は、計測部13で得られた各種画像や算出された数値を表示する。
【0044】
歯垢測定用プローブ8は、被写体に直接、観察光を照射し、反射光及び後方散乱光を受光する部分である。
図2に、歯垢測定用プローブ8の構成を示す概略図を示す。歯垢測定用プローブ8は、主として、非稼働式光路制御鏡81と、2つの稼働式光路制御鏡82と、対物レンズ83と、歯垢計測用プローブ先端部84と、撮影位置調整用ステージ86とから構成される。撮影位置調整用ステージ86には、撮影位置調整用X軸制御部87a、撮影位置調整用Y軸制御部87b、撮影位置調整用Z軸制御部87cが設けられ、被写体である歯牙に対する歯垢測定用プローブの位置を制御することができるように構成される。同様に、撮影位置調整用α軸制御部、撮影位置調整用β軸制御部88b、撮影位置調整用γ軸制御部88cが設けられ、被写体である歯牙に対する歯垢測定用プローブの位置を制御することができるように構成される。これらの制御部は、図示しない駆動部により電気的に制御することができる。駆動部と電気的に接続された図示しないコントロール装置を、操作者が操作するように構成することもできる。プローブ8にはまた、図示しないレーザ位置センサが設けられ、レーザ位置センサはプローブ8の相対的な位置信号を出力する位置センサで、その出力は電算部12に与えられる。
【0045】
図示した歯垢測定用プローブ8は、前歯測定用プローブの一例であって、ほかに臼歯測定用プローブや、う蝕測定用プローブなどを着脱可能に設けることもでき、それらを目的に応じて付け替えることができる。臼歯測定用プローブは、プローブ先端部に、観察光を、90度に屈折させることができる反射鏡が設置されている。また、臼歯測定用プローブは、プローブ先端が伸縮する機構を備え、歯列から逸脱している歯牙も撮影が可能な構成とすることもできる。プローブ先端の伸縮範囲は、10±10mmの範囲であることが好ましい。また、プローブ先端自体長径は、90±10mm程度、短径は、10±2mm程度が好ましい。解剖学的に有効だからである。このような着脱可能な複数種類のプローブについては、特開2011−189077号公報に詳述されている。
【0046】
図17は、歯牙隣接面及び/または歯牙咬合面の歯垢測定に好ましく用いられるファイバー型プローブ800を説明する説明図である。
図17に示すように、歯垢測定用ファイバー型プローブ800は、シース806及びそのシース806内に配置されるプローブ本体801を有する。プローブ本体801は、光ファイバーFの先端側端面に軸合わせをした状態で接続されている。プローブ本体801は、先端側から順に、プリズム804と、GRINレンズ(屈折率傾斜レンズ)803と、GRINレンズ803と光ファイバーFとを接続する接続導光部802とを有する。なお、光ファイバーFは、
図1中の光ファイバーF
2bに相当する。プリズム804は、例えば直角プリズムであってよく、光ファイバーFにより導かれた光の射出角度が直角となるように配置されている。あるいは、プリズム804は、光ファイバーFにより導かれた光の射出角度が鋭角、例えば60度に照射されるように構成されているものであってもよい。さらに、プリズム804は、光ファイバーFにより導かれた光の射出角度が鈍角、例えば130度に照射されるように構成されているものであってもよい。これらのプリズム804は、着脱可能に構成されているものであってもよい。プリズム804によって偏向された光は、シース806を透過して外部に存在する測定対象200に照射される。
【0047】
なお、ある実施形態においては、シース806内に、シース806とプローブ本体801との間の空間を充填する屈折率調整用のマッチングオイルを有するものであってもよい。マッチングオイルの屈折率はプリズム804の屈折率に同一又は近いものを使用しても良いし、また、シース806の屈折率に同一又は近いものを使用しても良い。また、プリズム804の屈折率とシース806の屈折率とが同一又は近い場合は、その屈折率のものを使用することが可能である。シース806内に充填されるマッチングオイルは、プローブ800の回転及び前後移動を円滑に担保する程度の粘性を有するものが好ましい。シース806とプローブ本体801との間の空間を充填する屈折率調整用のマッチングオイルを使用することにより、光の接続損失を防止することができ、クリアな歯牙隣接面、及び/または歯牙咬合面の撮影が可能となる。
【0048】
歯垢計測用ファイバー型プローブ800には、プローブ本体801の基端側の端部に、回転手段805が設けられる。回転手段805は好ましくはモータを備えたアクチュエータを有し、プローブ本体801はそのモータの回転軸に接続される。あるいは、プローブ本体801の回転は、人の手の操作によることも可能である。なお、回転手段805は、プローブ本体801の基端側の端部に設ける構成に限定されず、種々の変更が可能である。また、図中、回転の向きを矢印にて模式的に示したが、回転の向きは図示する向きには限定されない。また、歯垢測定用ファイバー型プローブ800には、シース806の内部にその長手方向に沿って設けられる図示しない移動手段を設けてもよく、この移動手段により、プローブ本体801をシース806内にて前後に移動させることもできる。かかる前後移動により、歯垢の撮影範囲をさらに広げることが可能になる。
【0049】
図18は歯垢計測用ファイバー型プローブ800の回転と光の射出範囲を示す模式図である。
図18(A)は、歯垢計測用ファイバー型プローブのある回転位置における、光の射出の向きを示す模式図である。なお、説明のために、シースは記載を省略して、プローブ本体801のみを示している。
図18(B)は、歯垢計測用ファイバー型プローブ800を360度回転した場合の光の射出の向きを示す模式図である。ファイバー型プローブ800を360度回転させて用いることで、プローブ本体801からの光の射出の向きは、プローブ本体801の周囲360度の任意の向きとすることができる。かかる歯垢計測用ファイバー型プローブ800の構成により、歯垢を含む任意の生体組織を、リアルタイムで、360度断層撮影することが可能になる。
【0050】
歯と歯が隣り合って接している面である歯牙隣接面は非常に狭いため、他の歯面と比較して清掃性及び自浄性が低い。そのため、歯垢が沈着しやすく不潔域となりやすく、う蝕の3大好発部位の1つとされている。歯垢沈着の評価法のゴールドスタンダードである歯垢染め出し法では、歯牙隣接面を視診で確認できないことから、適応外である。う蝕学や歯科保存学の成書には、歯牙隣接面のう蝕評価法の古典的な方法として、隣接面を直視するため、歯間に器具を挿入し、歯間を離開する方法が記載されている。しかしながら、歯間の離開にかかる時間と痛みや不快感から、ほとんど普及していない。そのため、う蝕の3大好発部位である歯牙隣接面の歯垢沈着に対する評価方法が求められており、また、本実施形態による歯垢の定量的な計測が有効な部位であるといえる。また、臼歯の歯牙咬合面における歯垢の付着も顕著であり、この歯牙咬合面における歯垢の付着が歯牙咬合面う触の主原因となる。
図17、18に示す歯垢計測用ファイバー型プローブ800を用いることで、歯牙隣接面の歯垢、及び/または歯牙咬合面の歯垢といった、従来の技術では定量的評価が不可能であった歯垢を計測することが可能になる。
【0051】
なお、本発明者らによる、隣接面のう蝕測定に用いられるファイバー型プローブが、特開2011-189078号公報に、咬合面のう蝕測定に用いられるファイバー型プローブが、特開2011-217973号公報に開示されている。う蝕測定用のOCTプローブは、それぞれ、隣接面の歯垢測定及び咬合面の歯垢測定にも、適用することができる。
【0052】
次に、本実施形態を、
図1を参照して、測定方法の観点から説明する。
図1において、光源1は、生体に非侵襲な波長帯、例えば1300ナノメートル前後の近赤外光を発生する。光ファイバーF
1により伝達される光は分岐部3において、参照光と観察光とに分割される。分割された観察光は、光学整流器4を経て、光ファイバーF
2aにて伝達され、光修飾部5にて偏光板、減衰板6等により偏光、減衰される。偏光、減衰の結果、波軸が整った光は、送光受光同梱型光ファイバーF
2bにて歯垢測定用プローブ8に伝達される。
【0053】
歯垢測定用プローブ8に伝達された光は、
図2に示すプローブ内の非稼働式光路制御鏡81とガルバノミラーないしMEMSミラーのような稼働式光路制御鏡822にて、光路制御を受け、ラスター状の軌道を成す。ラスター状の軌道を伴った光は対物レンズ83でビームの集光化を受け、歯垢計測用プローブ先端部84を経て、観察光として、被写体200である歯牙の、歯垢、エナメル質、象牙質、及び撮像範囲によっては、歯周組織の、歯肉、歯槽骨に到達する。
【0054】
図3(A)は、歯垢測定用プローブ8及び被写体200を、
図2のプローブ上方から見た概念図である。説明のために、被写体200の歯面から内側に向かう観察光302の向きを深さ方向のZ軸として設定する。
図3(B)は、プローブの正面からプローブを見た概念図である。仮想線で示す視野301内に被写体200の歯牙が入るように撮影を行う。説明のために、視野301において、紙面裏側から表側へ向かう観察光302の向きに垂直なX軸及びY軸を設定する。
【0055】
図4(A)は、測定において、被写体200の歯軸303と観察光302との角度が不適正な場合を示す図であり、(B)は、適正な場合を示す図である。観察光302と平行な軸304と歯軸303との角度αが、R(90度)に近い場合には、被写体200と観察光302との角度が適正である。角度αを、85〜95度の範囲とすることが好ましい。
図5(A)は、測定において、被写体200の歯面に平行な軸305と観察光302との角度、及び被写体200とプローブ8間の距離が不適正な場合を示す図である。
図5(B)は、被写体200の歯面に平行な軸305と観察光302と平行な軸306との角度、及び被写体200とプローブ8間の距離307が適正な場合を示す図である。観察光302と平行な軸304と歯面に平行な軸305との角度βが、R(90度)に近い場合には、被写体200と観察光302と平行な軸306との角度が適正である。角度βもまた、85〜95度の範囲とすることが好ましい。被写体200とプローブ8間の距離307は、1〜5mmとすることが好ましい。
【0056】
次に、歯垢測定用ファイバー型プローブ800を用いた場合の、被写体200の測定について説明する。歯垢測定用ファイバー型プローブ800は、特に、歯牙隣接面、及び歯牙咬合面における歯垢の測定において有利に用いることができる。
【0057】
図19は、本実施形態に係る歯牙隣接面の頬側面からの撮影方法を説明する説明図であり、
図20は、
図19中のa−a断面図である。
図19に示されるように、歯間鼓形空隙の上部又は下部に歯垢測定用ファイバー型プローブ800を挿入し、該プローブ800を挿入した歯間鼓形空隙内にてシース806を固定させる。このとき、
図20に示すように、歯垢測定用ファイバー型プローブ800は、歯牙200aと別の歯牙200bとの間にあって、歯牙隣接面を直接撮影することが可能である。シース806は可撓性を有しているため、歯間鼓形空隙に歯垢測定用ファイバー型プローブ800を挿入しやすく、かつ歯間鼓形空隙近傍の歯周組織を傷つけにくい。そして、回転手段805によりプローブ本体131を回転させながら、歯牙隣接面の画像を歯垢測定用ファイバー型プローブ800で撮影する。又は、固定させたシース806内にて図示しない移動手段によりプローブ本体801を前方又は後方に移動させて歯牙隣接面の画像を歯垢測定用ファイバー型プローブ800で撮影することができる。又は、回転手段805によりプローブ本体801を回転させながら、固定させたシース806内にて図示しない移動手段によりプローブ本体801を前方又は後方に移動させて歯牙隣接面の画像を歯垢測定用ファイバー型プローブ800で撮影することができる。
【0058】
プローブ本体801の回転は360度の回転であるが、これに限定されることはなく、
例えば歯間鼓形空隙の上部に歯垢測定用ファイバー型プローブ800を挿入する場合には、下方180度の回転とすることも可能であり、また例えば歯間鼓形空隙の下部に歯垢測定用ファイバー型プローブ800を挿入する場合には、上方180度の回転とすることも可能である。なお、シース806を歯間鼓形空隙内に固定させずに、プローブ本体801をシース806と共に前方又は後方に移動させて歯牙隣接面の画像を歯垢測定用ファイバー型プローブ800で撮影することも可能である。このような場合は、プローブ本体801をシース806内にて前後に移動させる移動手段を設けずに、シース806を移動させるシース移動手段を設けることができる。また、シース806を外側シースと内側シースとから形成される二重構成にして、歯間鼓形空隙内にて該外側シースを固定させ、プローブ本体801を内側シースと共に前方又は後方に移動させて歯牙隣接面の画像を撮影することも可能である。
【0059】
図21は、歯垢測定用ファイバー型プローブ800のさらなる使用態様を説明する図である。
図21(A)は、光の射出角度が直角となるように構成されているプリズムを備える第1プローブ本体801aを有する歯垢測定用ファイバー型プローブ800の使用態様であり、
図21(B)は光の射出角度が鋭角となるように構成されているプリズムを備える第2プローブ本体801bを有する歯垢測定用ファイバー型プローブ800の使用態様であり、
図21(C)は光の射出角度が鈍角となるように構成されているプリズムを備える第3プローブ本体801cを有する歯垢測定用ファイバー型プローブ800の使用態様である。ある実施形態においては、異なる射出角度を実現するプリズムを備える異なるプローブ本体は、上記の3タイプから構成されてもよく、これらのプローブ本体を互換使用することができる。即ち、通常の使用態様では、
図21(A)に示されるように、第1プローブ本体801aを使用する。そして、歯間鼓形空隙の奥側に歯垢測定用ファイバー型プローブ800を挿入し、その奥側から歯牙隣接面を撮影する場合は、
図21(B)に示されるように、第2プローブ本体801bを使用する。また、歯間鼓形空隙の下部が狭いため、歯垢測定用ファイバー型プローブ800を挿入しにくい場合は、
図21(C)に示されるように、第3プローブ本体801cを使用する。このように、歯間鼓形空隙の下部が狭く、歯垢測定用ファイバー型プローブ800が挿入しにくい場合でも、複数のプローブ本体を目的に合わせて使い分けることで、的確に歯牙隣接面を撮影することが可能になる。
【0060】
次に、
図22は、歯垢測定用ファイバー型プローブ800を用いた、歯牙咬合面の撮影方法を説明する、説明図である。
図22(A)は歯垢計測用ファイバー型プローブ800の、咬合面に水平な方向への移動を説明する図であり、(B)は歯垢計測用ファイバー型プローブ800の、咬合面に垂直な方向への移動を説明する図である。図の複雑さ回避のために
図22において、シース806、回転手段805の記載は省略している。歯牙咬合面の近傍に歯垢計測用ファイバー型プローブ800を配置させる。シース806は可撓性を有しているため歯周組織を傷つけにくい。そして、回転手段805によりプローブ本体801を回転させながら、シース806内にて移動手段805によりプローブ本体801を前方又は後方に移動させる。プローブ本体801の回転範囲角度は、プローブ本体801の回転により歯牙咬合面の形態をカバーできる回転範囲角度であることが必要であり、特に限定されるものではないが、例えば30度〜90度である。なお、前後に移動させずにプローブ本体801を回転させて歯垢計測用ファイバー型プローブ800で歯垢を撮影する、又は、回転させずにプローブ本体801を前後に移動させて、歯垢計測用ファイバー型プローブ800で歯垢を撮影することも可能である。そして、
図22(A)に示されるように、場合により、図示しない水平移動手段にて歯垢測定用ファイバー型プローブ800を水平(前後・左右)に移動させて、水平位置についての歯牙咬合面の形態に応じたOCT撮影を行うことができる。また、
図22(B)に示されるように、場合により、図示しない垂直移動手段にて歯垢計測用ファイバー型プローブ800を垂直(上下)に移動させ、観察対象200との距離を一定に保ち、感度及び解像度良く歯牙咬合面の形態に応じたOCT撮影を行うことができる。
【0061】
このようにして、歯垢測定用プローブ8より、あるいは特定の実施形態による歯垢計測用ファイバー型プローブ800により、射出され被写体に到達した観察光は、光の反射、散乱、吸収といった光学的な物理現象を引き起こす。同軸に戻る反射光及び後方散乱光は光ファイバーF
2bの受光部を伝達し光学整流器4を経て、分岐部3に戻る。
【0062】
いっぽう、分岐部3において分割された参照光は、光ファイバーF
3にて伝達され、参照ミラー9で反射され、光ファイバーF
3にて分岐部3に戻る。
【0063】
分岐部3にて、観察光と参照光とは、光学的物理現象である干渉現象を生じ、干渉光となる。干渉光は、コリメートレンズL2にて集められ、受光素子10にて、時間軸に沿って、光電効果にて電気信号化される。
図8は、受光素子10にて電気信号化され得られた時間と周波数との関係の概略を示すグラフである。横軸が時間、縦軸が周波数を示す。
【0064】
この電気信号は、電気信号導線部を経て、電算部12に伝達される。電算部12において、電気信号化されたプリアンプ11からの干渉信号はタイミング信号と同期され高速フーリエ変換処理にて深さ方向の信号がプロファイルされ、散乱強度値へ変換される。
図7は、フーリエ変換されて得られた、深さ距離と散乱強度軸との関係の概略を示すグラフである。深さ距離は、
図3(A)のZ軸に沿って、被写体の表面をゼロとした、観察光の直進方向への距離である。散乱強度値は、例えば、4バイトの単精度浮動小数点実数(有効桁数7桁)であるfloatデータとして、電算部12に格納される。
【0065】
次に、得られたfloatデータは、256階調の8bitグレースケールに変換する。散乱強度値を可視化するためである。グレースケールは、0〜255の256段階の諧調値とすることができる。なお、本発明は、256階調に限定されず、ほかの諧調でも実施することができる。floatデータの諧調値への変換は、例えば、市販のソフトウェアLabview(National Instruments製)を用いて実施することができるが、使用するソフトウェアは限定されない。なお、floatデータを、諧調値に変換するスケールは、当業者が任意選択的に設定することができる。設定したスケールによって、色調やコントラストが変化し、得られる画像が変化することがある。当業者は、目的に応じて、スケールを設定することができる。このような諧調値のデータも、電算部12に格納することができる。
【0066】
カラー表示の2次元光干渉断層画像を得るためには、散乱強度値から、諧調値への変換時にカラースケールを用いることで、同様の方法でカラー画像を得ることができる。
【0067】
図8に、波形データをプロファイルし、電算的な行列の状態に変換する概略を示す。フーリエ変換により得られた数量関係(A)は、一列に16のピクセルを含む列401(B)の状態で格納される。なお、ここでは説明のために一列に16ピクセルを含む列の例を挙げて説明するが、実際は500〜800ピクセル程度とすることが好ましい。そして、各ピクセルには、0〜255の諧調値が、割り当てられる。(B)の各ピクセルには、Z軸に沿った深さ距離の散乱強度値に対応する諧調値、すなわち、(A)のグラフのそれぞれの深さ(Depth)おける諧調値が割り当てられる。このような工程を次波形以降にも適応し、順に並べることで、断層画像の基となる(C)行列(マトリクス)402を完成させることができる。
【0068】
図9に、(A)行列(マトリクス)から、(B)2次元光干渉断層画像への変換を示す。2次元光干渉断層画像は、行列(マトリクス)402の散乱強度値から変換された諧調値をそのまま白黒濃淡として表したものである。なお、今般の説明は、簡略のために、16行×28列の行列(マトリクス)402を一例として説明したが、実際には、
図9(B)に示す2次元光干渉断層画像は、1,024ピクセル(行)×512ピクセル(列)の行列(マトリクス)から得られたものである。これらの操作は、いずれも、電算部12にて行い、表示部14にて、
図9(B)に示す画像を表示することができる。なお、
図9(B)に示す2次元光干渉断層画像は、
図3(A)における、a−aで切断した断層を表す。
【0069】
次に、
図10は、上記のようにして得られた2次元光干渉断層画像であり、歯垢部領域の抽出及び定量化に使用するための2次元光干渉断層画像である。
図10において、空気部201、歯垢部領域202、エナメル質部領域203、象牙質部領域204、歯肉部領域205が認められる。それぞれの部分における諧調値は、例えば、歯垢部領域202が、平均169.4(140〜207)、エナメル質部領域203が、平均95.9(63〜119)とすることができる。この値を用いて、歯垢部領域を、コンピュータにより自動的に抽出することができる。例えば、140〜207の諧調値を有する部分を、歯垢部領域として抽出することができる。このような操作は、計測部13を構成するソフトウェアで行うことができる。なお、各部位の諧調値は、厳密に上記範囲に限定されるものではなく、歯垢部領域として、例えば、141〜208の諧調値を有するものを抽出するように設定することもできる。
【0070】
このように、歯垢部領域の諧調値は、予め指定することができ、測定1回ごとに歯科医師あるいは操作者の判断が介入するものではない。指定する際の手法は、例えば、歯科医師の診断により、明らかに歯垢が認められる被験者の歯牙について、歯垢の除去前及び除去後で、OCT装置を用いて散乱強度値もしくは諧調値を得て、これらを比較し、歯垢の除去後に散乱強度値もしくは諧調値が変化した部分の、歯垢の除去前の散乱強度値もしくは諧調値を、歯垢部領域を指定するための散乱強度値もしくは諧調値とすることができる。
【0071】
次に、3次元画像の取得、表示方法について説明する。3次元画像は、複数の2次元光干渉断層画像データから、ボリュームレンダリングの手法により、ソフトウェアを使用して得ることができる。
図11に、
図10を含む複数の2次元光干渉断層画像から得られる、3次元画像を示す。なお、
図11は、本実施形態において好ましくはカラー表示することができる。このとき、前歯の3次元画像を得るためには、
図3(B)における、X軸方向へのスキャンを行い、例えば、約200〜300スライス面の2次元光干渉断層画像データを得ることが好ましい。ボリュームレンダリングに使用可能なソフトウェアとしては、例えば、AVIZO(Visual Sciences Group社製)が挙げられるが、これには限定されない。
【0072】
ソフトウェアを用いてボリューム化された3次元画像データは、全領域内に歯垢部領域、エナメル質部領域、象牙質部領域、歯肉部領域を認めることができる。2次元光干渉断層画像と同様に、3次元光干渉断層画像においても、歯垢が沈着する歯牙組織のエナメル質、歯垢の散乱強度の平均値は異なる。ゆえに、その光学的物理現象を利用して、歯垢部領域の3次元的領域抽出を、人の判断が介入することなく、コンピュータを用いて自動的に行う。すなわち、測定から抽出までの間に、人(医師や装置の操作者)が抽出のための値を設定したりすることなく、特定の散乱強度値を有する3次元光干渉断層画像上のボクセルを、歯垢部領域として抽出することができる。なお一実施形態において、3次元における歯垢部領域の抽出幅を散乱強度値の幅で表すと、領域幅の最小値:平均22.8(最小値の範囲:21.00〜24.31)、領域幅の最大値:平均39.10(最大値の範囲:37.29〜40.89)とすることができる。なお、このような領域幅の設定は、従来から知られている染色法による結果と対比しながら、当業者が適宜、行うことができ、この範囲には限定されない。
【0073】
抽出された歯垢部領域は、表示部14において、例えば、
図12に示すように、画像として表示することが可能である。なお、
図12も、本実施形態において好ましくはカラー表示することができる。
【0074】
次に、歯垢の定量化について説明する。歯垢の定量化は、歯垢の厚さ、歯垢の長さ、歯垢の断面積、歯垢の体積、及び歯垢の表面積、の全てあるいはこれらの一以上からなる組み合わせについて実施することができる。
【0075】
[歯垢の厚さの定量化]
歯垢の厚さの定量化方法の一例について説明する。歯垢の厚さの定量化には、まず、
図10で2次元光干渉断層画像上における、歯垢部領域を抽出し、抽出した領域のピクセル数をカウントする。かかるピクセル数と、予め求めておいた、2次元光干渉断層画像上における1ピクセルあたりの長さ(μm)とにより、2次元光干渉断層画像上における歯垢の厚さが得られる。これを係数kで割ることにより、実空間の歯垢の厚さが得られる。実空間の歯垢の厚さは、以下の式(1)で表すことができる。
実空間の歯垢の厚さ=
OCT装置にて対象の厚さを求める際の基準値(μm/pixel)×抽出された歯垢部領域の厚さ(pixel)×1/k (1)
【0076】
上記式において、OCT装置にて対象の厚さを求める際の基準値(μm/pixel)は、2次元光干渉断層画像上の1ピクセルあたりの長さである。2次元光干渉断層画像においては、
図3に示すようにX軸、Y軸、Z軸を設定したとき、X軸方向の長さ、Y軸方向の長さは原寸通りに表示されるが、Z軸方向の長さ(深さ距離)は、被写体の屈折率kに依存して、実寸より膨張して表示されることが知られている。具体的には、ある被写体の屈折率がkのとき、2次元光干渉断層画像上で表示さされるその被写体のZ軸方向の長さ(深さ距離)は、実寸のk倍となる。したがって、式(1)における厚さ基準値は、実寸のk倍となって2次元光干渉断層画像上に表されたときの1ピクセルあたりの長さである。したがって、深さ距離実寸を得るためには、抽出したピクセル数をかけ、かつ、2次元光干渉断層画像上の表示値をkで割る必要がある。
【0077】
上記係数kは、被写体の屈折率と空気屈折率との相違に起因するため、被写体の屈折率をkとすることができる。標準的な歯垢の主成分は不溶性グルカンおよびムタンであり、さらに、口腔内細菌や糖類を含む。歯垢の屈折率kは、歯垢を構成する成分や歯垢の水分含有量などによって異なることがあり、例えば、係数kは、1.30〜1.40程度とすることができ、簡易的に1.35とすることができるが、これらの範囲には限定されない。場合により、係数kは、1.1〜2.0以上となることもあり得る。測定対象となる患者ごとに、歯垢の屈折率を測定した値からkを決定することもできるし、複数の患者における歯垢の屈折率を測定した値から平均値を得て、kを決定することもできる。歯垢の屈折率は、屈折計により測定することができる。
【0078】
OCT装置にて対象の厚さを求める際の基準値(μm/pixel)は、実空間上の厚さ(Z軸方向の長さ)及び屈折率kが既知の物体により、予め求めることができる。実空間上の厚さが1mmで屈折率がk
aの物体Aの厚さが、2次元光干渉断層画像上では1×k
a(mm)で表されるため、この1000×k
a(μm)を、2次元光干渉断層画像上で実際に抽出した物体Aの厚さのピクセル数カウントP
a1(pixel)で割ることにより、算出することができる。
OCT装置にて対象の厚さを求める際の基準値(μm/pixel)=1000k
a×1/P
a1
【0079】
このような基準値は、OCT装置により、あるいはソフトウェアにより、一度算出しておけば、それ以降は、同じ値を使用することができる。
【0080】
次に、歯垢の厚さの定量化方法の別の例について説明する。
図10で示す2次元光干渉断層画像から、被写体200における、実際の歯垢の厚さを、以下の式(2)により算出することができる。
【0082】
式(2)中、Piは、2次元光干渉断層画像上の歯垢部領域の深さ距離を表し、Pは歯垢の厚さ(実寸)を表す。歯垢の厚さの実寸を導くための係数kは、被写体の屈折率と空気屈折率との相違に起因する、2次元光干渉断層画像上での深さ距離を校正する係数であり、上記の方法と同じ値を用いることができる。
【0083】
本実施形態においては、
図10に示す2次元光干渉断層画像から、Piの値を得て、P値を計算することができる。このPiの値の算出(抽出)、P値の計算は、計測部13を構成するソフトウェアで行うことができる。歯垢の厚さは、測定箇所によって異なる場合があり、複数の測定箇所で測定して平均値を得て歯垢の厚さとしてもよいし、一か所における1回の測定値を歯垢の厚さとしてもよい。また、歯垢の厚さはほかの方法で測定することも可能であり、当該方法には限定されない。
【0084】
[歯垢の長さの定量化]
歯垢の長さとは、
図3に示すようにX軸、Y軸、Z軸を設定したとき、X軸とY軸で作られる表面上の長さをいう。X軸方向の長さ、Y軸方向の長さは原寸通りに表示され、実空間の歯垢長さは、以下の式(3)で表すことができる。
実空間の歯垢長さ=
OCT装置にて対象の長さを求める際の基準値(μm/pixel)×抽出された歯垢部領域の長さ(pixel) (3)
【0085】
OCT装置にて対象の長さを求める際の基準値(μm/pixel)は次のように求める。す
なわち、例えば、実空間上の長さが1mmの物体Aの長さは、屈折率によらず、2次元光干渉断層画像上でも1(mm)で表されるため、この1000(μm)を、2次元光干渉断層画像上で実際に抽出した物体Aの長さのピクセル数カウントP
a2(pixel)で割ることにより、算出することができる。
OCT装置にて対象の長さを求める際の基準値(μm/pixel)=1000×1/P
a2
【0086】
[歯垢の断面積の定量化]
歯垢の断面積の測定においては、二次元光干渉断層画像上の歯垢部領域を抽出する。その後、抽出された歯垢部領域の断面積(pixel)をカウントする。断面積を測定する際に
は、歯垢の厚さの測定時と同様、Z軸方向の厚さ情報が必要になる。よって、上記歯垢の厚さを求める際に使用した係数kを用いて、校正を行うことにより、実空間での断面積を得ることができる。
実空間の歯垢の断面積は、以下の式(4)で表すことができる。
実空間の歯垢断面積=
OCT装置にて対象の断面積を求める際の基準値(μm
2/pixel)×抽出された歯垢部領域の断面積(pixel)×1/k(4)
【0087】
OCT装置にて対象の断面積を求める際の基準値(μm
2/pixel)は次のように求める。実空間上の断面積が1mm
2で屈折率がk
aの物体Aの断面積が、2次元光干渉断層画像上では1×k
amm
2で表されるため、k
a×10
6(μm
2)を、2次元光干渉断層画像上で実際に抽出した物体Aの厚さのピクセル数カウントP
a3(pixel)で割ることにより、算出することができる。
OCT装置にて対象の断面積を求める際の基準値(μm
2/pixel)=
k
a×10
6×1/P
a3
【0088】
[歯垢の体積の定量化]
歯垢の体積の定量化においては、まず、3次元断層画像上の歯垢部領域を抽出する。その後、抽出された歯垢部領域の体積(voxel)をカウントする。体積を測定する際にも、歯垢の厚さの測定時と同様、Z軸方向の厚さ情報が必要になる。よって、上記歯垢の厚さを求める際に使用した係数kを用いて、校正を行うことにより、実空間での体積を得ることができる。実空間における歯垢体積は、以下の式(5)で求めることができる。
実空間の歯垢体積=
OCT装置にて対象の体積を求める際の基準値(μm
3/voxel)×抽出された歯垢部領域の体積(voxel)×1/k (5)
【0089】
OCT装置にて対象の体積を求める際の基準値(μm
3/voxel)は次のように求める。実空間上の体積が1mm
3で屈折率がk
aの物体Aの体積が、3次元光干渉断層画像上では1×k
amm
3で表されるため、k
a×10
9(μm
3)を、3次元光干渉断層画像上で実際に抽出した物体Aのボクセル数カウントV
a(voxel)で割ることにより、算出することができる。
OCT装置にて対象の体積を求める際の基準値(μm
3/voxel)=
k
a×10
9×1/V
a
【0090】
[歯垢の表面積の定量化]
歯垢の表面積とは、立体的に空気と接する歯垢表面と歯面に付着する歯垢表面を合わせた表面積であり、曲線的なカーブを持った歯垢部領域の表面積である。表面積の定量化においても、体積の場合と同様に、3次元断層画像上の歯垢部領域を抽出する。そして、抽出された歯垢部領域の表面積(polygon area)をカウントする。実空間における歯垢表面積は、以下の式(6)で求めることができる。
実空間の歯垢断表面積=
OCT装置にて対象の表面積を求める際の基準値(μm
2/polygon area)×抽出された歯垢部領域の表面積(polygon area) (6)
【0091】
OCT装置にて対象の表面積を求める際の基準値(μm
2/polygon area)は次のように求める。実空間上の表面積が1mm
2の物体Aの表面積は、3次元光干渉断層画像上でも、1mm
2で表される。3次元光干渉断層画像上の抽出された歯垢部領域は実空間の歯垢に対し、深さ方向距離が拡大しているが、表面積においては、厚さ、断面積、体積に比較し、実空間と光干渉断層画像上で大きな差とならない。そのため、1×10
6(μm
2)を、3次元光干渉断層画像上で実際に抽出した物体Aのポリゴン数カウントPo
a(polygon area)で割ることにより、算出することができる。
OCT装置にて対象の表面積を求める際の基準値(μm
2/polygon area)=
1×10
6×1/Po
a
【0092】
上記方法は、主として、基準となる一つのピクセルの面積、一つのボクセルの体積を求めておき、コンピュータ上で抽出範囲のピクセル数、ボクセル数をカウントし、抽出範囲の断面積、体積を求める方法である。しかし、本実施形態・実施例以外にも、抽出した領域のスキャン範囲全体に対する割合を求め、実空間における抽出領域の面積ないし体積等を求める方法などが可能であり、本発明は上記具体的に示した方法には限定されない。
【0093】
本実施形態による歯垢の計測表示方法においては、歯垢の厚さ、歯垢の長さ、歯垢の断面積、歯垢の表面積、歯垢の体積から選択される一以上の定量した値をデータベース化する工程と、前記定量した値を、画像、表、グラフから選択される一以上として、経時的に表示する工程とをさらに含むことができる。特には、前記歯垢についての一以上の定量した値の変化量を経時的に算出し、数値、2次元画像、または3次元画像のいずれかとして、経時的に表示する工程をさらに含むことが好ましい。このような操作は、コンピュータ上で適切なデータ格納及びデータ表示システムを用いることで実施することができる。経時的なデータを含むデータベースは、特に、プラークコントロール、歯周病治療、う蝕リスク軽減治療、といった口腔衛生管理の側面において有用でありうる。
【0094】
本実施形態による歯垢の計測表示方法によれば、非侵襲かつ安全な方法で、歯垢の画像表示化、および定量化が可能となる。本実施形態は、OCT装置の深さ方向の情報を得ることができる利点を歯垢の測定に初めて応用したものである。歯垢のように物体の表面に概ね0.5mm以下程度の厚さで付着するものの測定において、OCT装置は非常に有用であり、これまでには不可能であって歯垢の客観的な定量化を実現した。上記の説明に係る画像表示及び数値算出は、赤外光を照射してから、約30〜180秒もあれば結果を得ることができる。また、得られたデータは保存し、データベース化することが可能であるために、個人の経時的な治療情報の収集のほか、歯科の患者集団の統計データ収集にも有用であり、後の臨床に役立てることもできる。このような歯垢の定量化は、これまで実現しなかったことであり、今後の歯科臨床現場において、非常に有用となることが期待できる。
【0095】
本発明は、別の局面によると、上記歯垢の計測表示方法において用いるためのソフトウェアに関する。
上記歯垢の計測表示方法において用いるためのソフトウェアは、ハードウェア資源であるコンピュータとともに、電算部12及び計測部13を構成してもよいものあり、上記において説明した、電算部12及び計測部13において実施する工程である、歯垢部領域の抽出、歯垢部領域の画像化、及び歯垢部領域の、厚さ、長さ、断面積、表面積、及び/または体積の算出を行うものである。すなわち、本実施形態におけるソフトウェアは、コンピュータに歯垢の計測表示方法を実行させるためのソフトウェアであって、前述の方法で得られた干渉光の散乱強度値に基づき、光干渉断層画像を得る工程と、前記光干渉断層画像に基づいて歯垢部領域の抽出を行う工程と、歯垢部領域を画像化する工程と、歯垢部領域の定量化する工程とを含む方法を実行させるためのものである。これらの工程については、歯垢の計測表示方法に関する上記実施形態において実質的に説明しており、説明した工程をハードウェア資源であるコンピュータとともに実施するものである。以下にさらに詳細に説明する。
【0096】
歯垢部領域の抽出を行う工程は、干渉光に基づき、プリアンプ11から伝えられる散乱強度値の電気信号をデータとして格納する工程と、散乱強度値を諧調値に変換する工程、諧調値から歯垢部領域を抽出する工程とを含んでよい。いずれの諧調値を持つものを歯垢部領域とするかは、予め指定しておくことができ、一回の測定操作ごとに歯科医師がマニュアルで範囲指定する必要はない。諧調値から歯垢部領域を抽出する工程の前に、2次元光干渉断層画像および3次元光干渉断層画像の一部ないし全部に対して、複数のフィルタリング処理を行うことで、2次元光干渉断層画像および3次元光干渉断層画像上の歯垢部領域の表面、歯垢部領域とエナメル質部領域や歯肉部領域などの生体組織の境界面の輪郭のスムージングを行う工程を含むことが好ましい。また、画像上で、エナメル質部領域や歯肉部領域などの生体組織の部位を、解剖学的見地に基づいて形態学的に識別する工程をさらに組み合わせることが好ましい。かかる形態学的に識別する工程は、散乱強度値や諧調値と合わせて、OCT画像上に表示される各部位を識別するために用いられる。すなわち、歯科医師がOCT画像を見たときに、各部位の相対的な位置関係やその形態を視認し、歯科医師の解剖学的な知識に基づいて、画像上の各部位を同定するが、本発明ではこのような工程をソフトウェアによる形態認識で実施することができる。例えば、画像上の、歯垢部領域、歯肉部領域、エナメル質部領域について、解剖学的事実に基づいて形態学的特徴を認識し、識別することができる。そして、任意選択的に、色分けして表示させることもできる。このような識別工程は、歯垢部領域を抽出する工程の前に実施することができる。そして、好ましくは、形態学的に識別した各部分について、2次元光干渉断層画像および/または3次元光干渉断層画像上で、各部分を異なる色に表示する工程をさらに含むことが好ましい。かかる形態的な識別工程後に歯垢部領域を抽出する工程を実施することにより、歯垢部領域の誤認識を少なくする、ないしなくすことができる。これらの付加的なスムージング工程、形態学的に識別する工程をさらに含むことで、歯科医師がマニュアルで範囲指定したのと同程度に、正確な歯垢部領域の抽出が可能になる。
【0097】
さらに、本実施形態におけるソフトウェアにおいては、歯垢計測用プローブ8を用いて撮影する際の撮影条件と関連付けて、上記歯垢部領域の抽出を行う工程を実施することが好ましく、前記抽出した歯垢部領域に基づいて、歯垢の厚さ、歯垢の長さ、歯垢の体積、歯垢の断面積、歯垢の表面積から選択される一以上の定量化した値を得る工程をさらに行うことが好ましい。
【0098】
歯垢部領域を画像化する工程は、歯垢部領域を2次元光干渉断層画像化する工程、歯垢部領域を3次元光干渉断層画像化する工程、あるいはそれらの両方の工程が含まれても良い。特に、歯垢部領域を3次元光干渉断層画像化する工程は、既存のオープンソースに認められるボリュームレンダリング処方を用いることにより実施が可能である。
【0099】
歯垢部領域の定量化する工程は、歯垢の厚さ、長さ、断面積、体積、及び/または表面積の各数値を算出する。算出方法は、前述の実施形態において示したものでもよいが、これらには限定されない。歯垢部領域が抽出されれば、各種の技術においてこれらの定量値の計算が可能であり、計算に必要な数値は、画像表示されたデータ上の特定の長さや距離を計測する工程、画像表示されたピクセル数やボクセル数を抽出する工程によって得ることができる。
【0100】
本実施形態によるソフトウェアは、前記歯垢部領域を定量化する工程において得られた値をデータベース化する工程と、前記定量化した値を、画像、表、グラフから選択される一以上として、経時的に表示する工程とをさらに含む方法をコンピュータに実行させるものである。定量値のデータベース化や、画像、表またはグラフの表示、及び/または経時的な表示は、既知の手法を用いて実施が可能である。
【0101】
本実施形態によるソフトウェアによれば、任意のコンピュータにおいてハードウェア資源とともに用いることで、歯垢の抽出、画像化、定量化が可能となり、さらに、データベースの作成なども実施することが可能となる。
【0102】
[第2実施形態:歯肉及び/または歯槽骨計測表示方法及び装置]
本発明は、また別の実施形態によれば、歯肉及び/または歯槽骨の計測表示方法に関する。歯肉及び/または歯槽骨の計測表示方法においても、第1実施形態において説明したのと同じ、OCT装置を使用することができる。OCT装置を使用して、歯牙及び歯周組織に赤外線を照射し、歯肉及び歯槽骨からの干渉光の散乱強度値を得て、2次元光干渉断層画像及び/または3次元光干渉断層画像を得ることができる。
【0103】
本実施形態では、特に、歯周病につながる歯肉の腫脹及び歯槽骨の破壊を定量的に評価するために、2次元光干渉断層画像及び/または3次元光干渉断層画像で、歯肉部領域及び歯槽骨部領域を評価することを特徴とする。これらを定量的に測定することは、歯周病の予防、治療において非常に有用であるが、これまでには実現不可能であった。歯肉及び/または歯槽骨部領域は、歯垢部領域と異なり、比較的広範囲に分布している。そのため、OCT画像でその全体像を捉えることは難しい。しかし、同一の撮像範囲内で、経時的に歯肉の腫脹、歯槽骨の吸収、すなわち歯肉及び/または歯槽骨部領域の拡張や、腫脹の治癒、すなわち歯肉部領域の縮小、歯槽骨の経過を捉えることが可能である。
【0104】
本実施形態による歯肉及び/または歯槽骨の計測表示方法は、光源から出力された近赤外光を測定光と参照光に分割する工程と、前記測定光を口腔内の歯牙及び歯周組織に向けて照射しつつ掃引する工程と、前記歯牙及び歯周組織から得られた反射光および後方散乱光と、前記参照光とから干渉光を得る工程と、前記干渉光の散乱強度値に基づき、光干渉断層画像を得る工程と、特定の散乱強度値を有する歯肉及び/または歯槽骨部領域を抽出する工程と、歯肉及び/または歯槽骨を定量化する工程と、歯肉及び/または歯槽骨を画像化する工程とを含み、前記歯肉及び/または歯槽骨を定量化する工程を経時的に行うことにより、歯肉の腫脹及び/または歯槽骨の変化量を得る工程をさらに含む。
【0105】
干渉光の散乱強度値に基づき、光干渉断層画像を得る工程までは、第1実施形態と同様であり、同様に実施することができ、2次元光干渉断層画像または3次元光干渉断層画像を得ることができる。
【0106】
[歯肉の定量化]
歯肉部領域を抽出する工程は、第1実施形態において説明したほかの領域と同様に、歯肉部領域を示す諧調値を指定して、特定の諧調値をもつものを抽出することによって実施することができる。歯肉部領域を示す諧調値は、例えば、119〜142とすることができる。このような諧調値は、OCT測定により得られた散乱強度値を変換する際に、最もOCT画像全体のコントラストが臨床的に一致するようにして決定することができる。なお、歯肉部領域を抽出する工程の前に、前記光干渉断層画像上の歯肉部領域を、解剖学的事実に基づいて形態学的に識別化する工程をさらに含むことが好ましい。この工程により、解剖学的事実に基づいて形態学的に識別化することにより、歯肉部領域の抽出をより容易かつ正確に実施することができる。
【0107】
歯肉の定量化においては、主として、撮像範囲内の歯肉の体積及び/または断面積を定量化することが好ましい。
歯肉の体積を数値化する工程は、歯垢との体積の定量化と同様に、3次元光干渉断層画像上の1ボクセルあたりの体積を予め算出しておき、前記3次元光干渉断層画像から抽出した歯肉部領域のボクセル数を計数することにより3次元光干渉断層画像上の体積を得る。さらにこの値を、OCT深さ方向距離の校正率kで除することにより、歯肉の体積を数値化することができる。端的に式で表すと以下のようになる。
実空間の歯肉の体積=
OCT装置にて対象の体積を求める際の基準値(mm
3/voxel)×抽出された歯肉部領域の体積(voxel)×1/k
【0108】
同様にして、歯肉の断面積を数値化する工程は、2次元光干渉断層画像上の1ピクセルあたりの面積を予め算出しておき、2次元光干渉断層画像から抽出した歯肉部領域のピクセル数を計数することにより、2次元光干渉断層画像上の断面積を得る。さらにこの値を、OCT深さ方向距離の校正率kで除することにより、歯肉の断面積を数値化する。式は以下で表される。この場合の校正率kは、歯垢の定量化に用いた校正率kと同様に、歯肉の屈折率に基づいて決定することができる。また、生体の屈折率である1.38を近似的に用いることもでき、例えば、1.3〜1.4のあいだとすることもできるが、これらには限定されない。
実空間の歯肉の断面積=
OCT装置にて対象の断面積を求める際の基準値(mm
2/pixel)×抽出された歯肉部領域の断面積(pixel)/×1/k
【0109】
歯肉の腫脹の変化量を得る工程では、歯肉の体積及び/または断面積を同一の患者について、経時的に計測し、その変化量を得る。歯肉に腫脹が存在するときは、特には腫脹の変化量を得ることができるが、歯肉に腫脹が存在しない場合であっても測定対象とする場合がある。定量化した値と変化量とのを得ることで、歯肉に腫脹が存在するのか否か、あるいは、治療の経過による歯肉の状態などを定量的に評価することができる。
【0110】
[歯槽骨の定量化]
次に、歯槽骨の数値化について説明する。歯槽骨部領域を抽出する工程は、第1実施形態において説明したほかの領域や歯肉部領域と同様に、歯槽骨部領域を示す諧調値を指定して、特定の諧調値をもつものを抽出することによって実施することができる。諧調値は、例えば、45〜70とすることができる。歯槽骨部領域を抽出する工程の前に、前記光干渉断層画像上の歯槽骨部領域を、解剖学的事実に基づいて形態学的に識別化する工程をさらに含むことが好ましい。
【0111】
歯槽骨の体積及び断面積の数値化は、歯肉と同様に実施することができ、それぞれ、以下の式で表される。この場合の係数kも、歯槽骨の屈折率に基づいて決定することができる。係数kは、生体の屈折率である1.38を近似的に用いることもでき、例えば、1.3〜1.4のあいだとすることもできるが、これらには限定されない。場合により、係数kは、1.1〜2.0以上となることもあり得る
【0112】
実空間の歯槽骨の体積=
OCT装置にて対象の体積を求める際の基準値(mm
3/voxel)×抽出された歯槽骨部領域の体積(voxel)×1/k
実空間の歯槽骨の断面積=
OCT装置にて対象の断面積を求める際の基準値(mm
2/pixel)×抽出された歯槽骨部領域の断面積(pixel)/×1/k
【0113】
歯槽骨の変化量を得る工程では、上記のようにして求めた、実空間の歯槽骨の体積や断面積を経時的に測定し、その変化を記録する。歯肉炎は、歯槽骨の破壊を伴う場合があるため、歯槽骨の定量値の減少は、歯肉炎の進行を示唆する。このような値を定量的かつ経時的に得ることで、病状の監視がより容易になる。
【0114】
歯肉及び/または歯槽骨を画像化する工程は、2次元光干渉断層画像または3次元光干渉断層画像において、歯垢部領域や、エナメル質部領域と区別して、歯肉部領域及び/または歯槽骨領域を必要に応じてカラー着色して示すことができる。
【0115】
歯肉及び/または歯槽骨計測表示方法及び装置によれば、歯肉炎の病状に直結している生体状態を定量的に把握することができ、歯科治療に大きく貢献することができる。
【実施例】
【0116】
本発明を、実施例を用いてさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0117】
[歯垢部領域とエナメル質部領域の階調値の測定(2次元断層像:50スライス)]
光源として、生体に無害な近赤外光光源を用い、
図2に示す歯垢計測用プローブを用い、患者の前歯を被写体として撮影した。画像ソフトウェアphotoshop(Adobe社製)にて、被写体の散乱強度値を諧調値に変換して作成された2次元断層像の歯垢部領域とエナメル質部領域のそれぞれ150部位の階調値を測定した。その結果、エナメル質部領域の階調値と歯垢部領域の階調値が異なることを確認した。
<階調値>
歯垢部領域: 平均169.4(最大値207〜最小値140)
エナメル質部領域: 平均95.9(最大値119〜最小値63)
(Welchのt検定にて有意差を認めた。 **P<0.01)
<散乱強度値>
歯垢: 平均30(最大値39〜最小値24)
エナメル質: 平均13(最大値16〜最小値−4)
歯垢部領域とエナメル質部領域の階調値測定結果を表1及び表2に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
歯肉部領域の階調値測定結果を表3に示す。
【表3】
【0121】
<階調値>
歯肉部領域: 平均133.1(最大値142〜最小値119)
【0122】
歯槽骨部領域の階調値測定結果を、表4に示す。
【表4】
【0123】
<階調値>
歯槽骨部領域: 平均56.8(最大値45〜最小値70)
【実施例2】
【0124】
[歯垢の厚さ、長さ、断面積の算出(2次元断層像:10スライス)]
<実施の方法1>
本実施例では、OCT装置にて対象(歯垢)の厚さ、長さ及び断面積を求める際の基準を予め作成した。実空間にて、寸法が、5×5×1mmの直方体形態を有する重合後の高分子材料をOCT撮影し、2次元光干渉断層画像上における厚さ(pixel)、長さ(pixel)、断面積(pixel)を得た。2次元光干渉断層画像の解析にはPhotoshop cs5 (adobe(登録商標))を用いた。
【0125】
<実施の方法1の結果>
【表5】
【0126】
以上の結果より、OCT装置にて対象の厚さを求める際の基準は、以下の通りに得られた。
1.65mm/86pixel= 0.0192…mm/pixel (19.2μm/pixel)
OCT装置にて対象の長さを求める際の基準は、以下の通りに得られた。
5mm/381pixel= 0.0131…mm/pixel (13.1μm/pixel)
OCT装置にて対象の断面積を求める際の基準は、以下の通りに得られた。
8.25mm
2/32766pixel =0.000251785… mm
2/pixel (約250μm
2/pixel)
本実施例において、歯垢の屈折率に基づくOCT深さ方向距離の校正率は、1.35とした。
【0127】
<実施の方法2>
実施例1に示すよう、歯垢部領域の諧調値がエナメル質部領域と異なる事実から、2次元断層画像上の歯垢部領域を抽出した。その後、抽出された歯垢部領域の厚さ、長さ、断面積(pixel)をカウントした。2次元光干渉断層画像の解析にはPhotoshop cs5 (adobe(登録商標)社製)を用いた。
【0128】
厚さの計測には以下の式を用いた。kは、いずれも、1.35とした。
実空間の歯垢厚さ=
(OCT装置にて対象の厚さを求める際の基準19.2μm/pixel)×厚さ(pixel)×1/k
長さの計測には以下の式を用いた。
実空間の歯垢長さ=
(OCT装置にて対象の長さを求める際の基準13.1μm/pixel)×長さ(pixel)
断面積の計測には以下の式を用いた。
実空間の歯垢断面積=
(OCT装置にて対象の断面積を求める際の基準250μm
2/pixel)×断面積(pixel)×1/k
【0129】
<実施の方法2の結果>
得られた歯垢の厚さ、長さ、断面積を表6に示す。症例1〜10は、実施例1の症例1〜10に対応する。表上段結果はOCT空間上の値(pixel)を示し、表下段結果は実空
間における値(メートル)を示す。
【0130】
【表6】
【実施例3】
【0131】
[歯垢染出法を基準にした歯垢部領域の抽出]
まず、2次元データの3次元化を行った。干渉光をコンピュータにより自動計算処理して得られたfloatデータをソフトウェアAVIZO(Visual Sciences Group社製)に取り込み、ボリュームレンダリングにて3次元画像を作製した。次に、ソフトAVIZO上で歯垢部領域の任意の1ボクセルを選択した。歯垢染出し写真と同等の領域が選択されるように領域幅を調整(散乱強度値の最小値と最大値を調節)する方法でAVIZO上において歯垢部領域を抽出した。
【0132】
その結果、領域幅の最小値:平均22.8(最小値の範囲:21.00〜24.31)、領域幅の最大値:平均39.10(最大値の範囲:37.29〜40.89)となった。歯垢染出法を基準にした歯垢部領域の抽出結果を表3に示す。症例1〜10は、実施例1、2の症例1〜10に対応する。
【0133】
【表7】
【実施例4】
【0134】
[抽出した歯垢体積の算出]
<実施の方法1>
本実施例では、OCT装置にて対象(歯垢)の体積、表面積を求める際の基準を予め作成した。実空間にて、寸法5×5×1mmの直方体形態を有する重合後の高分子材料をOCT撮影し、2次元光干渉断層画像上における体積(voxel)、表面積(area)を得た。3次元光干渉断層画像の解析にはAVIZO(Visual Sciences Group社製)を用いた。
【0135】
<実施の方法1の結果>
【表8】
【0136】
以上の結果より、以下の基準を得た。
OCT装置にて対象の体積を求める際の基準値:
41.25mm
3/90745512 voxel=0.0000004545…mm
3/ voxel(約454.5μm
3/ voxel)
OCT装置にて対象の表面積を求める際の基準値:
83mm
2/2325298 polygon area=0.00003569… mm
2/ polygon area(約35.7μm
2/polygon area)
歯垢の屈折率に基づくOCT深さ方向距離の校正率:k=1.35
【0137】
<実施の方法2>
実施例1に示すよう、歯垢部領域の諧調値がエナメル質部領域と異なる事実から、3次元断層画像上の歯垢部領域を抽出した。その後、抽出された歯垢部領域の体積(voxel)、表面積(area)をカウントした。3次元光干渉断層画像の解析にはAVIZO(Visual Sciences Group社製)を用いた。
【0138】
体積の計測には以下の式を用いた。
実空間の歯垢体積=
(OCT装置にて対象の体積を求める際の基準)×体積(voxel)×1/k(k=1.35)
表面積の計測には以下の式を用いた。
実空間の歯垢断表面積=
(OCT装置にて対象の表面積を求める際の基準)×表面積(polygon area)
【0139】
<実施の方法2の結果>
【表9】
【実施例5】
【0140】
[歯肉及び/または歯槽骨の定量]
(1)歯肉の定量化
2次元光干渉断層画像より、歯肉部領域を抽出し、抽出された歯肉部領域の断面積(pixel)をOCT画像上で求めた。実空間に比較しOCT画像における歯肉部領域は、深さ方
向に拡大しているため屈折率に基づき校正して実空間の歯肉の断面積を求めた。係数kは、1.38を用いた。正確には炎症や性状の程度により歯肉の屈折率は変化するが、生体屈折率(ne≒1.38)と近似すると考え、本実施例においては校正率kを1.38とした。
実空間の歯肉断面積=
(OCT装置にて対象の断面積を求める際の基準)×断面積(pixel)/× 1/1.38
【0141】
OCT装置を用いて求めた歯肉の断面積を以下の表10に示す。
【表10】
【0142】
(2)歯槽骨の定量化
2次元光干渉断層画像より、歯槽骨部領域を抽出し、抽出された歯槽骨部領域の断面積(pixel)をOCT画像上で求めた。実空間に比較しOCT画像における歯槽骨部領域は、
深さ方向に拡大しているため屈折率に基づき、校正して実空間の歯槽骨の断面積を求めた。k=1.38とした。なお、正確には歯槽骨内の血流量などにより歯槽骨の屈折率は変化するが、生体屈折率(ne≒1.38)と近似すると考え、本実施例においては校正率kを1.38とした。
実空間の歯槽骨断面積=
(OCT装置にて対象の断面積を求める際の基準)×断面積(pixel)/× 1/1.38
【0143】
OCT装置を用いて求めた歯槽骨の断面積を以下の表11に示す。
【表11】
【実施例6】
【0144】
[染色法との比較]
従来の染色法により染めだした歯垢画像と、本発明に係る方法で抽出し、定量的に表示した歯垢イメージング画像とを比較した。O’learyのPlaque Control Recordに従って、染色液として、デント プラークテスター リキッド 株式会社ライオン(製品名、製造元)を0.5mL用いて、被写体である前歯を染色した。染め出した歯垢について、写真を撮った結果が、
図15(A)である。
【0145】
いっぽう、本発明の装置及び方法を用いて、3次元画像を得た。スキャン範囲及び歯垢部抽出領域の設定は、実施例3、4の条件と同様とした。歯垢部領域を抽出し、定量的に表示した歯垢イメージング画像を
図15(B)に示す。日本国の医療上、ゴールドスタンダードである染色法と比較しても、十分に染色法の結果を反映しうる歯垢計測が、本発明により可能であることがわかった。なお、
図15(A)、(B)はいずれもカラー画像である。
【実施例7】
【0146】
[歯肉縁下歯垢の沈着]
別の被写体について、本発明の装置及び方法を用いて、2次元断層画像を得た。歯垢部領域抽出領域の設定は、実施例2と同様とした。スキャン範囲は、歯肉縁より3mm程度下部まで範囲に含まれるように設定した。
図16(A)に、歯肉縁下歯垢の沈着を捉えた光干渉断層画像を示す。
図16(B)は、
図16(A)の画像に基づく歯垢沈着の模式図である。
図16(A)には、歯垢202が明らかに認められる。
図16(B)は、エナメル質203と歯肉205のあいだに、歯肉縁上歯垢206、歯肉縁下歯垢207を模式的に表示している。本発明によって、これまで不可能であった歯肉縁下の歯垢沈着の客観的かつ定量的に計測する事が可能であるがわかった。