特許第6177785号(P6177785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6177785一次孔および/または希釈孔のレベルで冷却を改善した燃焼室の環状壁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6177785
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】一次孔および/または希釈孔のレベルで冷却を改善した燃焼室の環状壁
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/06 20060101AFI20170731BHJP
   F23R 3/50 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   F23R3/06
   F23R3/50
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-537695(P2014-537695)
(86)(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公表番号】特表2014-531015(P2014-531015A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】FR2012052446
(87)【国際公開番号】WO2013060987
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年9月16日
(31)【優先権主張番号】1159704
(32)【優先日】2011年10月26日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュロー,マチュー・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】カレル,ベルナール・ジョゼフ・ジャン−ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ベルディエール,ユベール・パスカル
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0084219(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0169484(US,A1)
【文献】 特開2000−274686(JP,A)
【文献】 特開2006−071274(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0023495(US,A1)
【文献】 米国特許第07905094(US,B2)
【文献】 米国特許第05289686(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/06
F23R 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温側(16a、18a)および高温側(16b、18b)を備えるタービンエンジン燃焼室(10)の環状壁(16、18)にして、
前記環状壁の低温側(16a、18a)の循環空気が空気/燃料混合物を生じるように高温側(16b、18b)に入ることができるようになっている円周方向列に従って配置された複数の一次孔(28)と、
前記環状壁の低温側(16a、18a)の循環空気が空気/燃料混合物の希釈を確実にするように高温側(16b、18b)に入ることができるようになっている円周方向列に従って配置された複数の希釈孔(30)と、
前記環状壁の低温側(16a、18a)の循環空気が前記環状壁に沿って冷却空気のフィルムを形成するように高温側(16b、18b)に入ることができるようになっている複数の冷却オリフィス(32)であり、互いから軸方向に間隔を置いて配置された複数の円周方向列に従って配置され、前記冷却オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、燃焼ガスの流れの軸方向Dに前記環状壁の法線Nに対して傾斜角θ1で傾斜される、冷却オリフィスと
方では前記一次孔の直ぐ下流に、他方では前記希釈孔の直ぐ下流に配置され、互いから軸方向に間隔を置いて配置された複数の円周方向列に従って配置される、複数の追加の冷却オリフィス(34)
を備える環状壁であって、
前記追加の冷却オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、前記軸方向Dに垂直な平面に配置され、前記環状壁の法線Nに対して傾斜角θ2で傾斜され
前記追加の冷却オリフィスが、一次孔および希釈孔の直ぐ下流の1つの円周方向列のみにより大きな高密度化を示すことを特徴とする、環状壁。
【請求項2】
前記環状壁の法線Nに対する前記追加のオリフィスの前記傾斜θ2が、前記冷却オリフィスの傾斜角θ1と同一であることを特徴とする、請求項1に記載の壁。
【請求項3】
前記追加の冷却オリフィスの直径d2が、前記冷却オリフィスの直径d1と同一であり、前記追加の冷却オリフィスのピッチp2が、前記冷却オリフィスのピッチp1と同一であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の壁。
【請求項4】
前記複数の列の追加のオリフィスの下流に形成される遷移領域(28B、30B)のレベルにおいて、少なくとも2つの列のオリフィスをさらに備え、それの前記オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、前記軸方向Dに垂直な平面に対して、前記2つの列のそれぞれと異なるように決定される傾斜で傾斜されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の壁。
【請求項5】
低温側(16a、18a)および高温側(16b、18b)を備えるタービンエンジン燃焼室(10)の環状壁(16、18)にして、
前記環状壁の低温側(16a、18a)の循環空気がそれぞれ、空気/燃料混合物を生じ、または空気/燃料混合物の希釈を確実にするように高温側(16b、18b)に入ることができるようになっている円周方向列に従って配置される複数の一次孔(28)または希釈孔(30)と、
前記環状壁の低温側(16a、18a)の循環空気が前記環状壁に沿って冷却空気のフィルムを形成するように高温側(16b、18b)に入ることができるようになっている複数の冷却オリフィス(32)であり、互いから軸方向に間隔を置いて配置された複数の円周方向列に従って配置され、前記冷却オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、燃焼ガスの流れの軸方向Dに、前記環状壁の法線Nに対して傾斜角θ1で傾斜される、冷却オリフィスと
記一次孔または希釈孔の直ぐ下流に配置され、互いから軸方向に間隔を置いて配置された複数の円周方向列に従って配置される、複数の追加の冷却オリフィス(34)
を備える環状壁であって、
前記追加の冷却オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、前記軸方向Dに垂直な平面に配置され、前記環状壁の法線Nに対して傾斜角θ2で傾斜され、
前記追加の冷却オリフィスが、一次孔および希釈孔の直ぐ下流の1つの円周方向列のみにより大きな高密度化を示し、
前記複数の列の追加のオリフィスの下流に形成される遷移領域(28B、30B)のレベルにおいて、少なくとも2つの列のオリフィスをさらに備え、それの前記オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、前記軸方向Dに垂直な平面に対して、前記2つの列のそれぞれと異なるように決定される傾斜で傾斜されることを特徴とする、環状壁。
【請求項6】
2つの列のオリフィスを備え、前記傾斜が、それぞれ30°および60°であることを特徴とする、請求項5に記載の壁。
【請求項7】
前記2つの列のオリフィスが、1つの列の冷却オリフィスの列の直ぐ上流に配置された2つの列の追加のオリフィスか、あるいは1つの列の追加のオリフィス、または1つの列の追加のオリフィスおよび隣接する列の冷却オリフィスの直ぐ下流に配置された2つの列の冷却オリフィスのどちらかであることを特徴とする、請求項に記載の壁。
【請求項8】
いくつかの列のオリフィスを備え、前記傾斜が、0°と90°との間に均等に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の壁。
【請求項9】
前記追加のオリフィスの傾斜の方向が、前記燃焼室の下流の空気/燃料混合物の流れの方向によって制限されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の壁。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の少なくとも1つの環状壁(16、18)を備える、タービンエンジンの燃焼室(10)。
【請求項11】
請求項1からのいずれか一項に記載の少なくとも1つの環状壁(16、18)を有する燃焼室(10)を備える、タービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジン燃焼室の全般的分野に関する。これは、より詳細には、「多穿孔」と呼ばれるプロセスによって冷却される直流または逆流燃焼室の環状壁に焦点を合わせている。
【背景技術】
【0002】
通常、環状タービンエンジン燃焼室は、燃焼室底部を形成する横断壁によって上流に連結される内側環状壁および外側環状壁によって形成される。
【0003】
内側および外側環状壁には、燃焼室の周りの循環空気が燃焼室の内側に貫入できるようになる複数の様々な孔およびオリフィスがそれぞれ設けられる。
【0004】
このように、「一次」および「希釈」と呼ばれる孔は、燃焼室の内側に空気を運ぶようにこれらの環状壁に形成される。一次孔を用いた空気は、燃焼室で燃焼される空気/燃料混合物を生じるのに寄与するが、希釈孔によって生じた空気は、この同じ空気/燃料混合物の希釈に有利に働くことが意図される。
【0005】
内側および外側環状壁は、空気/燃料混合物の燃焼によって生じたガスの高温を受ける。
【0006】
それらの冷却を確保するために、追加のいわゆる多穿孔オリフィスがまた、それらの表面全体にわたってこれらの環状壁を通過して穿孔される。概ね60°で傾斜されるこれらの多穿孔オリフィスにより、燃焼室の外側の循環空気が壁に沿って冷却空気フィルムを形成するために燃焼室の内側に貫入できるようになっている。
【0007】
しかし、実際には、一次または希釈孔のそれぞれの直ぐ下流に位置している内側および外側環状壁の領域は、使用されるレーザ穿孔技術から生じるオリフィスが特にないために、これが示すように亀裂形成の危険のある低レベルの冷却から利益を得ることが留意されている。
【0008】
この問題を解決するために、文献米国特許第6145319号明細書は、一次および希釈孔のそれぞれの直ぐ下流に配置される壁領域に遷移孔を製作し、これらの遷移孔が多穿孔オリフィスの傾斜よりも小さい傾斜を有すること提案している。しかし、これは局部的な処理であることを考慮すれば、この解決策は、残念ながら、特に高価であり壁の製造を著しく長びかせることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6145319号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、一次および希釈孔の直ぐ下流に配置される領域の適切な冷却を確保する環状燃焼室壁を提案することによってこの種の欠点を除くことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、低温側および高温側を備える環状タービンエンジン燃焼室壁が設けられ、前記環状壁は、
前記環状壁の低温側の循環空気が空気/燃料混合物を生じるように高温側に入ることができるようになっている円周方向列に従って配置された複数の一次孔と、
前記環状壁の低温側の循環空気が空気/燃料混合物の希釈を確実にするように高温側に入ることができるようになっている円周方向列に従って配置された複数の希釈孔と、
前記環状壁の低温側の循環空気が前記環状壁に沿って冷却空気のフィルムを形成するように高温側に入ることができるようになっている複数の冷却オリフィスであり、互いから軸方向に間隔を置いて配置された複数の円周方向列に従って配置され、前記冷却オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、燃焼ガスの流れの軸方向Dに前記環状壁の法線Nに対して傾斜角θ1で傾斜される、冷却オリフィスと
を備え、環状壁は、
一方では前記一次孔の直ぐ下流に、他方では前記希釈孔の直ぐ下流に配置され、互いから軸方向に間隔を置いて配置された複数の円周方向列に従って配置される、複数の追加の冷却オリフィスをさらに備え、
前記追加の冷却オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、前記軸方向Dに垂直な平面に配置され、前記環状壁の法線Nに対して傾斜角θ2で傾斜されることを特徴とする。
【0012】
燃焼ガスの流れの方向に垂直な平面において一次および希釈孔の直ぐ下流にかつそれに接近して、傾斜して配置された追加の冷却オリフィスの存在により、標準的な軸方向多穿孔に対して効果的な冷却が確保され、そこでは、空気のフィルムはこれらの孔の存在によって抑制され、一次領域で流れを変更することはない。
【0013】
前記環状壁は、前記複数の列の追加の冷却オリフィスの下流に形成される遷移領域のレベルにおいて少なくとも2つの列のオリフィスをさらに備え、その前記冷却オリフィスのそれぞれの幾何学的軸は、前記軸方向Dに垂直な平面に対して、前記2つの列のそれぞれと異なるように決定される傾斜で傾斜されることが好ましい。
【0014】
もう1つの実施形態によれば、低温側および高温側を備える環状タービンエンジン燃焼室壁はまた、
前記環状壁の低温側の循環空気がそれぞれ、空気/燃料混合物を生じ、または空気/燃料混合物の希釈を確実にするように高温側に入ることができるようになっている円周方向列に従って配置される複数の一次孔または希釈孔と、
前記環状壁の低温側の循環空気が前記環状壁に沿って冷却空気のフィルムを形成するように高温側に入ることができるようになっている複数の冷却オリフィスであり、互いから軸方向に間隔を置いて配置された複数の円周方向列に従って配置され、前記冷却オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、燃焼ガスの流れの軸方向Dに、前記環状壁の法線Nに対して傾斜角θ1で傾斜される、冷却オリフィスと
を備えることができ、前記環状壁は、
前記一次孔または希釈孔の直ぐ下流に配置され、互いから軸方向に間隔を置いて配置された複数の円周方向列に従って配置される、複数の追加の冷却オリフィスをさらに備え、
前記追加の冷却オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、前記軸方向Dに垂直な平面に配置され、前記環状壁の法線Nに対して傾斜角θ2で傾斜され、
前記複数の列の追加のオリフィスの下流に形成される遷移領域のレベルにおいて、少なくとも2つの列のオリフィスをさらに備え、それの前記オリフィスのそれぞれの幾何学的軸が、前記軸方向Dに垂直な平面に対して、前記2つの列のそれぞれと異なるように決定される傾斜で傾斜されることを特徴とする。
【0015】
流れを滑らかにすることによって、この旋回軸方向多穿孔の遷移領域は、亀裂の開始の起点において温度勾配を減少させる。燃焼室出力での平均温度プロファイルが、結果として得られる一層効果的な混合物により改善される。
【0016】
本発明の有利な実施形態によれば、前記環状壁の法線Nに対する前記追加の冷却オリフィスの前記傾斜θ2は、前記冷却オリフィスの傾斜角θ1と同一である。
【0017】
有利なことに、前記追加の冷却オリフィスの直径d2は、前記冷却オリフィスの直径d1と同一であり、前記追加の冷却オリフィスのピッチp2は、前記冷却オリフィスのピッチp1と同一であり、前記追加の冷却オリフィスは、一次孔および希釈孔の直ぐ下流により大きな高密度化を有することができる。
【0018】
環状壁がこれらの2つの列のオリフィスを備える場合には、前記傾斜は、それぞれ30°および60°である。次いで、前記2つの列のオリフィスは、1つの列の冷却オリフィスの列の直ぐ上流に配置された2つの列の追加のオリフィスか、あるいは1つの列の追加のオリフィス、または1つの列の追加のオリフィスおよび隣接する列の冷却オリフィスの直ぐ下流に配置された2つの列の冷却オリフィスのどちらかである。
【0019】
環状壁がいくつかの列のオリフィスを備える場合には、前記傾斜は、0°と90°との間に規則正しく配置される。
【0020】
前記追加の冷却オリフィスの傾斜の方向は、前記燃焼室の下流の空気/燃料混合物の流れの方向によって制限されることが有利である。
【0021】
本発明のもう1つの目的は、先に規定したような環状壁を備える燃焼室および(燃焼室を有する)タービンエンジンである。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、いかなる限定的な性質も全くない実施形態を示す添付の図と関連して次の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】その環境におけるタービンエンジン燃焼室の長手方向断面図である。
図2】本発明の実施形態による図1の燃焼室の環状壁のうちの1つの部分的な展開図である。
図3図2の環状壁の一部の部分透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、タービンエンジンの燃焼室10をその環境で示している。この種のタービンエンジンは、特に圧縮セクション(図示せず)を備え、そこでは、空気が、チャンバハウジング12の中に、次に後者の内側に取り付けられた燃焼室10の中に注入される前に圧縮される。圧縮空気が、燃焼室に導入され、燃焼される前に燃料と混合される。この燃焼から生じるガスが、燃焼室の出口に配置される高圧タービン14の方へ方向付けられる。
【0025】
燃焼室は、環状タイプから成っている。これは、燃焼室底部を形成する横断壁20によって上流で連結される内側環状壁16および外側環状壁18によって形成される。これは、図で示すように直流かまたは逆流である場合がある。この場合は、多重穴あけによってまた冷却され得るリターンエルボが、燃焼室とタービンディストリビュータとの間に配置される。
【0026】
環状内側壁16および環状外側壁18は、タービンエンジンの長手方向軸22に対して僅かに傾斜される長手方向軸に従って延在する。燃焼室底部20には、燃料噴射器24が取り付けられる複数の開口20Aが設けられる。
【0027】
燃焼室10については、内側エンベロープ12aおよび外側エンベロープ12bによって形成される燃焼室ハウジング12が環状空間26を形成し、この環状空間26は、燃焼、希釈、および燃焼室を冷却することになっている圧縮空気を流入させる。
【0028】
環状内側壁16および環状外側壁18は、圧縮空気が循環する環状空間26の側面に配置される低温側16a、18a、および燃焼室の内部の方に向けられる高温側16b、18bをそれぞれ示す(図3)。
【0029】
燃焼室10は、「一次」(または燃焼領域)と呼ばれる領域と、その下流に配置される「二次」(または希釈領域)と呼ばれる領域とに分割される(下流とは、燃焼室の内側で空気/燃料混合物の燃焼から生じ、矢印Dによって具体化されるガスの通常の軸方向流れの方向を意味する)。
【0030】
燃焼室の一次領域に供給される空気は、これらの環状壁の周囲全体にわたって燃焼室の環状内側壁16および環状外側壁18に製作される一次孔28の円周方向列を介して導入される。これらの一次孔は、同じ線28Aに位置合わせされた下流端縁を備える。燃焼室の二次領域に供給する空気に関しては、これは、これらの環状壁の周囲全体にわたって環状内側壁16および環状外側壁18に同様に形成される複数の希釈孔30を使用する。これらの希釈孔30は、一次孔28の列に対して軸方向下流に偏位される円周方向列に従って位置合わせされ、これらは、交互する大きな穴および小さな孔を備える特に異なる直径を有することができる。しかし、図2に示される構成においては、異なる直径のこれらの希釈孔は、同じ線30Aに位置合わせされた下流端縁を有する。
【0031】
燃焼ガスから高温を受ける燃焼室の環状内側壁16および環状外側壁18を冷却するために、複数の冷却オリフィス32が設けられる(図2および図3に示される)。
【0032】
これらのオリフィス32は、多穿孔によって壁16、18の冷却を確保するが、互いから軸方向に間隔を置いて配置された複数の円周方向列に従って配置される。多穿孔オリフィスのこれらの列は、正確に画定される本発明の目的物を形成しかつ上流遷移軸および下流遷移軸を形成する線28Aと線30Aとの間の特定の領域を除いて燃焼室の環状壁の表面全体を覆い、この軸は、上流にあるこの軸に対して軸方向下流に、(下流軸28Bについては)実質的に希釈孔の前に、または(下流軸30Bについては)実質的に燃焼室の出口平面の前に偏位される。
【0033】
冷却オリフィス32の数および直径d1は、列のそれぞれについて同一である。同じ列の2つのオリフィスの間のピッチp1は、一定であり、同一であってもよく、または列のすべてについて同一でなくてもよい。また、冷却オリフィスの隣接する列は、オリフィス32が図2に示されるように千鳥状にして配置され得るように矢形のものである。
【0034】
図3に示されるように、冷却オリフィス32は、通常、これらが製作される環状壁16、18の法線Nに対して傾斜角θ1を有する。この傾斜θ1により、これらのオリフィスを用いる空気は環状壁の高温側16b、18bに沿って空気のフィルムを形成できるようになっている。非傾斜オリフィスに関して、これは、冷却される環状壁の表面を増大する。また、冷却オリフィス32の傾斜θ1は、結果として得られる空気のフィルムが燃焼室の内側の燃焼ガスの流れの方向に流れるように方向付けられる(矢印Dによって示される)。
【0035】
例示として、金属またはセラミック材料で製作され、0.6mmと3.5mmとの間の厚さを有する環状壁16、18の場合、冷却オリフィス32の直径d1は、0.3mmと1mmとの間、ピッチd1は、1mmと10mmとの間、それらの傾斜θ1は、+30°と+70°との間、通常+60°であることができる。比較として、同じ特徴を有する環状壁の場合、一次孔28および希釈孔30は、4mmから20mm程度の直径を有する。
【0036】
本発明によれば、燃焼室の各環状壁16、18は、一次孔28および希釈孔30の直ぐ下流に配置され、かつ上流遷移軸28A、30Aから下流遷移軸28B、30Bまでいくつかの円周方向列、通常少なくとも5つの列に従って配置される複数の追加の冷却オリフィス34を備える。しかし、軸方向Dに流れる空気のフィルムを搬送する以前の冷却オリフィスと比べて、これらの追加の冷却オリフィスによって搬送される空気のフィルムは、燃焼ガスの流れのこの軸方向Dに垂直な平面でのそれらの配置により垂直方向に流れる。タービンエンジンの軸に垂直に行われるこの多穿孔(説明全体にわたって、これは、冷却オリフィスの軸方向多穿孔とは対照的に旋回多穿孔と呼ばれることになる)は、一次または希釈孔の追加のオリフィスを一緒にし、空気/燃料混合物の効力を改善する。
【0037】
同じ列の追加のオリフィス34は、好ましくは冷却オリフィス32の直径d1と同一の、同じ直径d2を有し、冷却オリフィス32の間のピッチp1と同一であってもよく、または同一でなくてもよい一定ピッチp2で間隔を置いて配置され、好ましくは冷却オリフィス32の傾斜θ1と同一であるが垂直面に配置される傾斜θ2を有する。しかし、これらは依然として先に規定した値の範囲内にあるが、追加のオリフィス34のこれらの特徴は、冷却オリフィス32の特徴と実質的に異なる場合があり、すなわち、環状壁16、18の法線Nに対する同じ列の追加のオリフィスの傾斜θ2は、冷却オリフィス32の傾斜θ1と異なる場合があり、同じ列の追加のオリフィスの直径d2は、冷却オリフィス32の直径d1と異なる場合がある。
【0038】
しかし、好ましい冷却の必要性により、一次孔28の列の後ろの追加のオリフィス34はまた、有利なことに、傾斜、直径、またはピッチに関して希釈孔30の列の後ろに配置されるそれらと異なる特徴を有することができ、より詳細には、同じ領域の範囲内で、直径d2およびピッチp2の差異はまた、図2に示されるように希釈オリフィスが交互する大きなオリフィスおよび小さなオリフィスによって形成される場合には、最も熱的に制限された部分、すなわち、一次孔および大きな希釈オリフィスの直ぐ下流のそれらでこの冷却を高密度化するように製作され得る。
【0039】
一次孔の列と希釈孔の列との間で、旋回多穿孔の導入により、温度勾配のレベルを制限することによって、一次孔28の下流の亀裂の形成が防止される。下流遷移軸28Bからの希釈孔30の上流多穿孔は軸方向タイプから成るので、たとえば2つの列にわたって製作される遷移領域を形成することが必要であり、そこでは、追加の冷却孔34は、軸方向Dに対して一方が30°で、他方が60°で傾斜される平面にそれぞれ配置され、これらの傾斜面のこれらの追加孔の他のパラメータ、詳細には直径d2、ピッチp2、および傾斜θ2は元のままでいる。
【0040】
同様に、燃焼室出力において、より正確には下流遷移軸(30B)から(図2)、軸方向多穿孔の導入は、燃焼室の高圧タービン(TuHP)出力を失わないように旋回の局部的なレベルを満たす。また、好ましくは、亀裂の開始の起点において温度勾配を減少させるように流れを滑らかにするために、旋回軸方向多穿孔の遷移領域を設けることが望ましい。燃焼室出力での平均温度プロファイルは、結果として得られる一層効果的な混合物により改善される。この遷移領域は、たとえば、軸方向Dに対して一方が30°で、他方が60°で傾斜される平面にそれぞれ配置される、追加の冷却孔の2つの列にわたって製作されることができ、これらの傾斜面の追加孔の他のパラメータ、詳細には直径d2、ピッチp2、および傾斜θ2は元のままでいる。逆流燃焼室の場合には、軸30Bからのこの領域は、存在できないかまたはリターンエルボに一体化され得ない。
【0041】
遷移領域が旋回多穿孔のレベルで説明されている場合には、軸方向多穿孔のレベルにこれを配置する問題はなく、または、30°で傾斜された軸方向多穿孔の列と60°で傾斜された旋回多穿孔の列とにまたがる問題はないことが明白である。同様に、この遷移領域は、2つの列よりも多く備えることができ、この場合、オリフィスの傾斜は、0°(軸方向多穿孔)と90°(旋回多穿孔)との間に均等に配置される。たとえば、3つの列の場合、オリフィスの傾斜は、それぞれ22.5°、45°、および67.5°であろう。
【0042】
本発明の場合、一次領域の流れは、変更されず、旋回は希釈噴射の方向付けに影響を与えず、熱バリアを省略すると、質量、およびそれに応じてコストの利益がもたらされる。また、HPDの流れ方向を考慮に入れ、空気力学的層間剥離を回避し、高圧タービンの出力を保持するために、旋回多穿孔の穿孔の方向は、燃焼室の下流の高圧ディストリビュータ(HPD)のエーロフォイルの方向付けによって固定されることは明白である。
図1
図2
図3