(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6177795
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】着色タイヤ部材
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20170731BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20170731BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20170731BHJP
C08K 5/1545 20060101ALI20170731BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20170731BHJP
C08K 5/35 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
C08L21/00
B60C1/00 Z
B60C13/00 J
C08K5/1545
C08K5/13
C08K5/35
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-548326(P2014-548326)
(86)(22)【出願日】2012年12月24日
(65)【公表番号】特表2015-508429(P2015-508429A)
(43)【公表日】2015年3月19日
(86)【国際出願番号】IB2012057692
(87)【国際公開番号】WO2013093896
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月26日
(31)【優先権主張番号】TO2011A001207
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】パオロ フィオレンツァ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ フォルテ
【審査官】
岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/070429(WO,A1)
【文献】
特開2003−119322(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/049470(WO,A1)
【文献】
特表2004−526814(JP,A)
【文献】
特表2003−501504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色タイヤ部材であって、当該着色タイヤ部材は、
着色するタイヤ部分上の高い不透過性のバリア層と、
前記バリア層上の染料と、を含み、
前記着色タイヤ部材は、前記染料がウンベリフェロンからなる蛍光増白剤を含むことを特徴とする、着色タイヤ部材。
【請求項2】
前記染料が、水性染料、ポリウレタン染料、又はUVに曝露された際に光架橋し得る染料であることを特徴とする、請求項1に記載の着色タイヤ部材。
【請求項3】
前記バリア層が、水性分散液を乾燥させることによって形成されることを特徴とする、請求項2に記載の着色タイヤ部材。
【請求項4】
前記バリア層の水性分散液が、少なくとも1つの架橋性ポリマーベースと、下記の分子式(I)の界面活性剤とを含むことを特徴とする、請求項3に記載の着色タイヤ部材。
(R1CONR2CHR3COO−)n Xn+ (I)
(式中、
R1はC6〜C23の脂肪族基であり、
R2はH又はC1〜C8の脂肪族基であり、
R3はH又はC1〜C8の脂肪族基又は芳香族基であり、
Xは金属カチオン、好ましくはアルカリ性カチオンであり、
nは1〜3の整数である。)
【請求項5】
前記脂肪族基R1が二重結合を含むことを特徴とする、請求項4に記載の着色タイヤ部材。
【請求項6】
前記バリア層の水性分散液が、少なくとも1つの架橋性ポリマーベースと、下記の分子式(II)の界面活性剤とを含むことを特徴とする、請求項3に記載の着色タイヤ部材。
([R4R5R6NR8(NR7R9R10)n](n+1)+)y (n+1)Xy− (II)
(式中、
Xはヨウ素原子であり、
R4、R5及びR6は同一又は異なっていてもよく、それぞれCmH2m+1(mは1〜3)又はCH2CHCH2又はCHCHCH3であり、
R7、R9及びR10は同一又は異なっていてもよく、それぞれCH2CHCH2又はCHCHCH3であり、
nは0または1であり、
yは1であり、
nが0のときR8はC15〜C22の脂肪族基であり、nが1のときR8はC8〜C16の脂肪族基であり、
nが0のときR4、R5、R6及びR8のうちの少なくとも1つは、二重結合を含む。)
【請求項7】
R7、R10及びR9がCH2CHCH2であることを特徴とする、請求項6に記載の着色タイヤ部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の着色タイヤ部材を含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色タイヤ部材に関する。
【0002】
以下、用語「蛍光増白剤」は、不可視紫外線域における入射光の一部を吸収し、可視スペクトルの上方部においてより長い波長でそれを反射するため、反射されたスペクトルをより青くし、その結果、より白く見せる物質をさす。
【背景技術】
【0003】
近年、単なる審美的な理由に留まらない様々な理由から、着色タイヤ部材、特にサイドウォール、における需要が高まっている。
【0004】
現在の技術は、適切な顔料を使用して製造された着色ゴム組成物の使用に基づくものである。
【0005】
着色ゴムは、タイヤの成型段階でタイヤの黒いゴムに接続される。
【0006】
この技術の欠点は、抗酸化剤など、主に化学物質がタイヤの内側層から着色された組成物まで移行することで生じる着色部分の急速な変色である。
【0007】
他の近年用いられる解決方法としては、タイヤのショルダー部と着色層の間に化学物質の移行を最小限にする様に設計された組成物から作製したバリア層を挿入する方法がある。
【0008】
本出願人は、水性分散液を乾燥させることによって形成されたポリマーバリア層が、着色するタイヤ部分の上に堆積される、着色タイヤ部材の製造方法を発明した。この方法は、参照により本明細書に援用するイタリア特許出願第TO2009A000964号及び同第TO2010A000850号に記載されている。
【0009】
しかしながら、バリア層を用いても、高温の作業条件下又は、長期間の使用後においては、化学物質が依然としてバリア層から着色層へと通過してしまうため、結果として変色が生じる。
【0010】
しばしばタイヤのサイドウォール上の白色部分は、最も深刻な変色問題に晒される。
【0011】
そのため、作業条件及びタイヤの耐用年数に関係なく、色の定着を保証する着色タイヤ部材の形成方法への需要がある。
【0012】
本出願人は、着色部の変色は主に、下層部分に影響するUVと作用する下層部分からの化学物質によって生じることを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】イタリア特許出願第TO2009A000964号明細書
【特許文献2】イタリア特許出願第TO2010A000850号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の
一の目的は、着色タイヤ部材であって、当該部材は、着色するタイヤ部分上の高い不透過性のバリア層と、前記バリア層上の染料と、を含み、前記着色部材は、前記染料が蛍光増白剤を含むことを特徴とする、着色タイヤ部材である。
【0016】
前記蛍光増白剤は、トリアジントランス−スチルベン、クマリン、イミダゾリン、ジアゾール、トリアゾール、ベンゾオキサゾリン、ビフェニルトランス−スチルベンを含む群から選択された1種類であることが好ましい。
【0017】
前記染料は、水性染料、ポリウレタン染料、又はUVに曝露された際に光架橋し得る染料であることが好ましい。
【0018】
バリア層は、水性分散液を乾燥させることによって形成することが好ましい。
【0019】
前記バリア層の水性分散液は、少なくとも1つの架橋性ポリマーベースと、下記の分子式(I)の界面活性剤とを含むことが好ましい。
(R
1CONR
2CHR
3COO
−)n X
n+ (I)
(式中、
R
1はC
6〜C
23の脂肪族基であり、
R
2はH又はC
1〜C
8の脂肪族基であり、
R
3はH又はC
1〜C
8の脂肪族基又は芳香族基であり、
Xは金属カチオン、好ましくはアルカリ性カチオンであり、
nは1〜3の整数である)
【0020】
前記脂肪族基R
1は二重結合を含むことが好ましい。
【0021】
前記バリア層の水性分散液は、少なくとも1つの架橋性ポリマーベースと、下記の分子式(II)の界面活性剤とを含むことが好ましい。
([R
4R
5R
6NR
8(NR
7R
9R
10)n]
(n+1)+)y (n+1)X
y− (II)
(式中、
Xは原子又はアニオン性基、
R
4、R
5及びR
6は同一又は異なっていてもよく、それぞれC
mH
2m+1(mは1〜3)又はCH
2CHCH
2又はCHCHCH
3であり、
R
7、R
9及びR
10は同一又は異なっていてもよく、それぞれCH
2CHCH
2又はCHCHCH
3であり、
nは0又は1であり、
nが1のときyは1であり、nが0のときyは1又は2であり、
nが0のときR
8はC
15〜C
22の脂肪族基であり、nが1のときR
8はC
8〜C
16の脂肪族基であり、
nが0のときR
4、R
5、R
6及びR
8のうちの少なくとも1つは、二重結合を含む)
【0022】
R
7、R
8及びR
9はCH
2CHCH
2であることが好ましく、より好ましくは、nは1であり、R
8は飽和脂肪族基である。
【0023】
R
8は二重結合を含み、nは0であることが好ましい。
【0024】
本発明の別の目的は、本発明に係る着色部分を含むタイヤである。
【0025】
本発明の別の目的は
、タイヤ部材に適用可能な染料における蛍光増白剤の使用である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
下記の実施例は本発明のより明確な理解のための非限定的な例である。
【実施例】
【0027】
以下の2つの例(例A)は、抗酸化剤を含み、UVに晒された着色ゴムの層における蛍光増白剤の効果を示すために記載する。
【0028】
例Bは、
着色部分に関する。
【0029】
例Cは、
本発明の解決方法に従う着色部分、及び比較のコントロール例に関する。
【0031】
例A
着色ゴムの2つの層を、表Iにphrで示す組成を有する各組成物から形成した。
【0032】
【表1】
【0033】
NRは天然ゴムを意味し、Cl―IIRは塩素化ブチルゴム、EPDMは、エチレン−プロピレン−ジエンを意味する。
【0034】
表Iにおける組成で示すように組成物A1とA2は、蛍光増白剤(ウンベリフェロン)の有無でのみ異なる。即ち、組成物A1のみが、本発明に従う技術的解決方法を表している。
【0035】
2つの組成物から作製したゴム層を、7日間連続で、UV(366nm)に露光し、その後、1976年国際照明委員会において制定された退色指数を使用し、変色を測定した。退色指数ΔEは、以下の式により定義される。
ΔE=[(ΔL)
2+(Δa)
2+(Δb)
2]
1/2
(式中のLは明度、aは赤−緑光感覚、bは黄−青光感覚である)。より具体的には変色は、ミノルタCM2002分光光度計を使用して測定した。
【0036】
表Iの最後の列の退色指数は、コントロール組成物A2層の結果に対して指数表示している。
【0037】
結果は、着色ゴム中の抗酸化剤(6PPD)などの化合物の存在がUVに露光された際にどれほど変色を生じさせ、また、同時に存在する蛍光増白剤により外観的にどれほど変色が打ち消されるのかを示している。
【0038】
例B
3つの着色ゴム層を、表IIにphrで示す組成を有する各組成物から形成した。
【0039】
【表2】
【0040】
蛍光増白剤(ウンベリフェロン又は1クマリン)を含む組成物B1及びB2は、本発明の第1の解決方法に従う組成物を示し、組成物B3は、特定のコントロール組成物を示している。
【0041】
組成物B1〜B3から作製した3つの着色部分を、タイヤのサイドウォールを形成するために使用され、1.5phrの抗酸化剤6PPDを含む従来の黒い組成物に接続した。
【0042】
従来のタイヤのサイドウォール組成物に各着色組成物B1〜B3を接続することでそれぞれ作製した着色部分B1〜B3を、着色組成物部分における抗酸化剤の移行を生じさせるように熱老化させた。より具体的には、着色部分B1〜B3を、6日間、温度70℃に保持した。
【0043】
次いで、その熱老化した部分を、7日間、UV(366nm)に露光した。
【0044】
露光後、退色指数を上記のように測定した。
【0045】
表IIの最後の列の退色指数は、コントロール組成物B3層のそれに対して指数表示している。
【0046】
明示しているようにコントロール組成物B3から作製した層は、本発明に従い形成した着色層よりも遥かに大きな変色を示した。より具体的には、ウンベリフェロンを含む組成物から作製した層は、コントロール組成物の層よりも遥かに少ない変色を示した。
【0047】
例C
バリア層Ca及びCbの調製
本発明に従う方法を使用して着色タイヤ部材を形成した。
【0048】
各水性分散液を乾燥させることによって、使用したバリア層を形成した。例として、分散液は、1リットルの水に表Iの全ての成分を同時に分散させることによって作製した。その水性分散液は、機械的に30分間撹拌した後に15分間超音波処理を施した。
【0049】
各水性分散液を乾燥させることで形成した2つのバリア層の組成をphrで、表IIIに示す。
【0050】
【表3】
【0051】
界面活性剤(a)は、分子式CH
3(CH
2)
7CHCH(CH
2)
7CONHCH
2COO
− Na
+の界面活性剤であり、界面活性剤(b)は、分子式[(CH
3)
3N(CH
2)
8CHCH(CH
2)
7CH
3]
+ I
−の界面活性剤である。
【0052】
その水性分散液を、着色するショルダー部分上に堆積させ、乾燥させてバリア層を形成した。
【0053】
着色部分Ca1、Cb1、Ca2及びCb2の調製
上記のとおりに形成した各バリア層に、水性白色染料を塗布した。より具体的には、その水性染料はSIVAM VERNICI SPAが製造及び販売する「VERNICI IMC IDRO」として知られる染料の群のうちの1つである。
【0054】
着色部分Ca1及びCb1を形成するために、蛍光増白剤として乾燥重量濃度30%のウンベリフェロンを水性染料に添加したのに対し、着色部分Ca2及びCb2を形成するために、水性染料をそのまま使用した、すなわち、蛍光増白剤を添加しなかった。そのため、着色部分Ca2及びCb2は、2つのコントロール例を構成する。
【0055】
部分B1〜B3で記載したように、着色部分Ca1、Cb1、Ca2及びCb2を、その着色組成物部分における抗酸化剤の移行を生じさせるよう熱老化させ、次いで、UV(366nm)に7日間、露光した。
【0056】
露光後、退色指数を上記のように測定した。
【0057】
表IVでは、着色部分Ca1及びCb1の退色指数は、各コントロール例Ca2及びCb2に対して指数表示している。
【0058】
【表4】
【0059】
表IVに明示しているように着色部分Ca1及びCb1は、各コントロール例Ca2及びCb2よりも遥かに少ない変色を示した。