特許第6178003号(P6178003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6178003波長変換装置及びその作製方法、関連する発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178003
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】波長変換装置及びその作製方法、関連する発光装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20170731BHJP
   F21V 7/22 20060101ALI20170731BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170731BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20170731BHJP
【FI】
   G02B5/20
   F21V7/22 300
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-517154(P2016-517154)
(86)(22)【出願日】2014年6月7日
(65)【公表番号】特表2016-526191(P2016-526191A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】CN2014079428
(87)【国際公開番号】WO2014194864
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2015年12月8日
(31)【優先権主張番号】201310228456.9
(32)【優先日】2013年6月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514073097
【氏名又は名称】深▲せん▼市繹立鋭光科技開発有限公司
【氏名又は名称原語表記】APPOTRONICS(CHINA)CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】許 顔正
(72)【発明者】
【氏名】田 梓峰
(72)【発明者】
【氏名】李 乾
(72)【発明者】
【氏名】徐 虎
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−243624(JP,A)
【文献】 特開2012−140479(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102633440(CN,A)
【文献】 特開2011−071404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を散乱するための白色の散乱粒子と、前記白色の散乱粒子を接着するための第一のガラス粉と、を備える乱反射層と
蛍光粉と、前記蛍光粉を接着するための第二のガラス粉と、を備える蛍光粉層と
窒化アルミニウム基板、窒化シリコン基板、炭化珪素基板、窒化ホウ素基板、酸化ベリリウム基板のうちの1種である高熱伝導基板とを含み、
前記蛍光粉層と前記乱反射層との焼結体と、前記高熱伝導基板とが、前記蛍光粉層、前記乱反射層、前記高熱伝導基板の順になるように積層設置されて固定されており、
前記第一のガラス粉及び前記第二のガラス粉が、高融点のガラス粉であることを特徴とする波長変換装置。
【請求項2】
前記高熱伝導基板の熱伝導係数は100W/mK以上であることを特徴とする、請求項1に記載の波長変換装置。
【請求項3】
前記白色の散乱粒子は、硫酸バリウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化チタン粉末、酸化ジルコニウム粉末のうちの少なくとも1種を備えることを特徴とする、請求項に記載の波長変換装置。
【請求項4】
記第一のガラス粉及び前記第二のガラス粉は、同一の高融点のガラス粉であることを特徴とする、請求項に記載の波長変換装置。
【請求項5】
ステップA、窒化アルミニウム基板、窒化シリコン基板、炭化珪素基板、窒化ホウ素基板、酸化ベリリウム基板のうちの1種である高熱伝導基板を取得するステップと、
ステップB、入射光を散乱するための白色の散乱粒子と、前記白色の散乱粒子を接着するための第一のガラス粉と、を備える乱反射層を取得するステップと、
ステップC、蛍光粉と、前記蛍光粉を接着するための第二のガラス粉と、を備える蛍光粉層を取得するステップと、
ステップD、前記蛍光粉層と前記乱反射層とを焼結し、前記蛍光粉層と前記乱反射層との焼結体と、前記高熱伝導基板とを、前記蛍光粉層、前記乱反射層、前記高熱伝導基板の順になるように積層設置して固定するステップとを含み、
前記第一のガラス粉及び前記第二のガラス粉が、高融点のガラス粉であることを特徴とする、波長変換装置の作製方法。
【請求項6】
前記ステップB及び前記ステップDは、
前記高熱伝導基板の表面において一層の前記乱反射層を焼結し、前記乱反射層の焼結温度は、前記高熱伝導基板の融点より低く、さらに前記蛍光粉層を当該基板の表面における前記乱反射層の表面に固定することを含むことを特徴とする、請求項に記載の波長変換装置の作製方法。
【請求項7】
前記ステップB、前記ステップC及び前記ステップDは、
前記高熱伝導基板の表面において一層の前記乱反射層を焼結し、前記乱反射層の焼結温度は、前記高熱伝導基板の融点より低く、さらに前記高熱伝導基板の表面における前記乱反射層の表面に一層の前記蛍光粉層を焼結し、前記蛍光粉層の焼結温度はT3≦Tf+400℃という式を満足し、ここで、Tfは前記第一のガラス粉の軟化温度であることを含むことを特徴とする、請求項に記載の波長変換装置の作製方法。
【請求項8】
前記高熱伝導基板の表面において一層の前記乱反射層を焼結するステップは、
ステップB1、前記白色の散乱粒子、前記第一のガラス粉及び有機キャリアを取得するステップと、
ステップB2、前記白色の散乱粒子、前記第一のガラス粉及び前記有機キャリアを混合して散乱粒子スラリーを得るステップと、
ステップB3、前記散乱粒子スラリーを前記高熱伝導基板に塗布するステップと、
ステップB4、前記散乱粒子スラリーが塗布された前記高熱伝導基板を焼結成形して前記乱反射層を得るステップとを含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の波長変換装置の作製方法。
【請求項9】
前記高熱伝導基板の表面における前記乱反射層の表面に一層の前記蛍光粉層を焼結するステップは、
ステップC1、前記第二のガラス粉、前記蛍光粉及び有機キャリアを取得するステップと、
ステップC2、前記第二のガラス粉、前記蛍光粉及び前記有機キャリアを混合して蛍光粉スラリーを形成するステップと、
ステップC3、前記蛍光粉スラリーを前記高熱伝導基板の表面における前記乱反射層の表面に塗布するステップと、
ステップC4、前記蛍光粉層を得るように、前記蛍光粉スラリーが塗布された前記高熱伝導基板を焼結成形するステップとを含み、且つ、焼結温度はT3≦Tf+400℃という式を満足し、ここで、Tfは前記第一のガラス粉の軟化温度であることを特徴とする、請求項に記載の波長変換装置の作製方法。
【請求項10】
前記ステップB3と前記ステップB4との間には、前記散乱粒子スラリーが塗布された前記高熱伝導基板をT1温度で0.2時間以上加熱するステップをさらに含み、ここで、Tb−100℃≦T1≦Tb+200℃という式を満足し、Tbは前記有機キャリアの完全分解温度であることを特徴とする、請求項に記載の波長変換装置の作製方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載の波長変換装置を備え、励起光を出射するための励起光源をさらに備え、前記蛍光粉は、当該励起光を吸収して蛍光を生成するためのものであり、前記乱反射層は、当該蛍光又は前記蛍光と吸収されなかった前記励起光との混合光を散乱反射するためのものであることを特徴とする、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明及び表示技術分野に関し、特に波長変換装置及びその作製方法、関連する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
予定の単色光若しくは多色光を得るために、レーザーやLEDなどの光源を利用して蛍光粉を励起することは、照明光源、投影表示などの分野に広く応用されている技術方案である。一般的に、この技術方案は、レーザー若しくはLEDの出射光を利用して高速回転の蛍光粉カラーホイール上に入射させることにより良好な放熱を実現するものである。
【0003】
従来技術におけるカラーホイールは二層の構成からなり、下層は鏡面アルミニウム基板であり、上層はアルミニウム基板上に塗布されている蛍光粉シートである。
【0004】
鏡面アルミニウム基板は主に反射および熱伝導作用を果たしており、鏡面アルミニウム基板は通常アルミニウム基材と、高反射層と、表面媒介保護層との三層の構成からなり、そのうち、高反射層は一般的に高純度のアルミニウム又は高純度の銀が採用され、高反射層の表面に媒介層がメッキされ、この媒介層は、低屈折率のMgF又はSiOおよび高屈折率層材料TiOからなり、高純度のアルミニウム/銀層に対する保護および反射増強作用を果たしている。このような鏡面アルミニウム基板には、二つの問題があり、一つ目は、表面媒介層と高反射層との熱膨張係数が一致しないので、パンチングプレス成形の過程中、媒介層が破壊されやすく、ひいてはフィルム層が脱落する恐れがある。二つ目は、反射率がより高い高反射銀層は、高温を受けるとき、媒介層保護層と高反射層との間には隙間が発生し、高反射層を空気に接触させ、銀原子は大気における硫化水素、酸素などと硫化・酸化反応しやすく、高反射層の反射率および熱安定性を急激に低下させる。また、反射アルミニウム層は、アルミニウムの安定性が銀より高いが、反射率が高くない。従って、現在のプロセス条件で、鏡面アルミニウム基板は高温に耐えられず、大きいパワーの発光装置に応用されることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明において、主に解決する技術的課題は、高い温度に耐えられる波長変換装置及びその作製方法、関連する発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において、入射光を散乱するための白色の散乱粒子と、前記白色の散乱粒子を接着するための第一のガラス粉と、を備える乱反射層と、蛍光粉と、前記蛍光粉を接着するための第二のガラス粉と、を備える蛍光粉層と、窒化アルミニウム基板、窒化シリコン基板、炭化珪素基板、窒化ホウ素基板、酸化ベリリウム基板のうちの1種である高熱伝導基板とを含み、前記蛍光粉層と前記乱反射層との焼結体と、前記高熱伝導基板とが、蛍光粉層、乱反射層、高熱伝導基板の順になるように積層設置されており、前記第一のガラス粉及び前記第二のガラス粉は、高融点のガラス粉であることを特徴とする波長変換装置が提供される。
【0007】
好ましくは、高熱伝導基板の熱伝導係数は100W/mK以上である。
【0010】
好ましくは、白色の散乱粒子は、硫酸バリウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化チタン粉末、酸化ジルコニウム粉末のうちの少なくとも1種を備える。
【0011】
好ましくは、第一のガラス粉及び第二のガラス粉は、同一の高融点のガラス粉である。
【0012】
本発明において、上記波長変換装置を備え、励起光を出射するための励起光源をさらに備え、蛍光粉が、当該励起光を吸収して蛍光を生成するためのものであり、乱反射層が、該蛍光又は蛍光と吸収されなかった励起光との混合光を散乱反射するためのものであることを特徴とする発光装置がさらに提供される。
【0013】
本発明において、ステップA、窒化アルミニウム基板、窒化シリコン基板、炭化珪素基板、窒化ホウ素基板、酸化ベリリウム基板のうちの1種である高熱伝導基板を取得するステップと、ステップB、入射光を散乱するための白色の散乱粒子と、前記白色の散乱粒子を接着するための第一のガラス粉と、を備える乱反射層を取得するステップと、ステップC、蛍光粉と、前記蛍光粉を接着するための第二のガラス粉と、を備える蛍光粉層を取得するステップと、ステップD、前記蛍光粉層と前記乱反射層とを焼結し、前記蛍光粉層と前記乱反射層との焼結体と、前記高熱伝導基板とを、蛍光粉層、乱反射層、高熱伝導基板の順になるように積層設置して固定するステップと含み、前記第一のガラス粉及び前記第二のガラス粉が、高融点のガラス粉であることを特徴とする、波長変換装置の作製方法がさらに提供される。
【0014】
好ましくは、ステップB及びステップDは、高熱伝導基板の表面において一層の乱反射層を焼結し、前記乱反射層の焼結温度が、高熱伝導基板の融点より低く、さらに蛍光粉層を当該基板の表面における乱反射層の表面に固定することを含む。
【0015】
好ましくは、ステップB、ステップC及びステップDは、高熱伝導基板の表面において一層の乱反射層を焼結し、前記乱反射層の焼結温度が、高熱伝導基板の融点より低く、さらに高熱伝導基板の表面における乱反射層の表面に一層の蛍光粉層を焼結し、前記蛍光粉層の焼結温度がT3≦Tf+400℃という式を満足し、ここで、Tfが第一のガラス粉の軟化温度であることを含む。
【0016】
好ましくは、高熱伝導基板の表面において一層の乱反射層を焼結するステップは、ステップB1、白色の散乱粒子、第一のガラス粉及び有機キャリアを取得するステップと、ステップB2、白色の散乱粒子、第一のガラス粉及び有機キャリアを混合して散乱粒子スラリーを得るステップと、ステップB3、散乱粒子スラリーを高熱伝導基板に塗布するステップと、ステップB4、散乱粒子スラリーが塗布された高熱伝導基板を焼結成形して乱反射層を得るステップとを含む。
【0017】
好ましくは、当該高熱伝導基板の表面における乱反射層の表面に一層の蛍光粉層を焼結するステップは、ステップC1、第二のガラス粉、蛍光粉及び有機キャリアを取得するステップと、ステップC2、第二のガラス粉、蛍光粉及び有機キャリアを混合して蛍光粉スラリーを形成するステップと、ステップC3、蛍光粉スラリーを高熱伝導基板の表面における乱反射層の表面に塗布するステップと、ステップC4、蛍光粉層を得るように、蛍光粉スラリーが塗布された高熱伝導基板を焼結成形するステップとを含み、且つ、焼結温度はT3≦Tf+400℃という式を満足し、ここで、Tfは第一のガラス粉の軟化温度である。
【0018】
好ましくは、ステップB3とステップB4との間には、散乱粒子スラリーが塗布された高熱伝導基板をT1温度で0.2時間以上加熱するステップをさらに含み、ここで、Tb−100℃≦T1≦Tb+200℃という式を満足し、Tbは有機キャリアの完全分解温度である。
【0019】
従来技術に比べ、本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明において、波長変換装置は、従来の鏡面アルミニウム基板の代わりに、乱反射層及び高熱伝導基板が利用されている。ここで、乱反射層は、白色の散乱粒子を備え、白色の散乱粒子によって入射光が散乱されることにより、従来の金属反射層による鏡面反射の代わりに、乱反射を利用して入射光に対する反射を実現した。さらに、白色の散乱粒子は、高温下でも酸化せずに入射光を吸収するため、乱反射層は高い温度下でも反射率が低下せず、高温に耐えることができる。また、高熱伝導基板は、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化珪素、窒化ホウ素、酸化ベリリウムのうちの1種であるため、これらのセラミックス材料の融点は、金属アルミニウムより相当程度高く、アルミニウムより高い温度に耐えることができる。従って、本発明における波長変換装置は、高い温度に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1a】本発明に係る波長変換装置の1つの実施例の構成を示す模式図である。
図1b】鏡面アルミニウム基板の波長変換装置および窒化アルミニウムセラミック基板の波長変換装置はパワーの異なる励起光の照射での相対発光強度曲線を示す模式図である。
図1c】シリカゲルでパッケージされた蛍光粉層の波長変換装置およびガラス粉でパッケージされた蛍光粉の波長変換装置の、パワーの異なる励起光の照射での相対発光強度曲線を示す模式図である。
図2】本発明に係る波長変換装置の作製方法の1つの実施例のフローを示す模式図である。
図3】本発明に係る波長変換装置の作製方法のもう1つの実施例のフローを示す模式図である。
図4】本発明に係る波長変換装置の作製方法のもう1つの実施例のフローを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面および実施形態を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【0022】
図1aを参照し、図1aは本発明に係る波長変換装置の1つの実施例の構成を示す模式図であり、図1aに示すように、波長変換装置は、順に積層設置されて固定されている蛍光粉層110、乱反射層120及び高熱伝導基板130を含む。
【0023】
蛍光粉層110は、蛍光粉を有する。蛍光粉は、励起光を吸収し蛍光と異なる波長の光を生成することができる。例えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光粉が挙げられ、YAG蛍光粉は、青色光、紫外光などを吸収して黄色の蛍光を生成することができる。なお、蛍光粉は、赤色光蛍光粉、緑色光蛍光粉などであっても良い。
【0024】
乱反射層120は、入射光を反射するためのものであり、白色の散乱粒子を備える。白色の散乱粒子は、一般的に塩類や酸化物類の粉末であり、例えば硫酸バリウム粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化チタン粉末、酸化ジルコニウム粉末等が挙げられ、基本的に光を吸収せず、且つ白色の散乱材料は性質が安定で、高温下で酸化しない。乱反射層は良好な放熱効果が要求されることを考慮し、熱伝導率が高い酸化アルミニウム粉末が好ましい。勿論、乱反射層120による入射光に対する反射機能を実現するために、乱反射層120において、白色の散乱材料は一定の緻密度および厚みを有する必要がある。この緻密度および厚みは、実験によって確定することができる。
【0025】
金属の熱伝導率が高いが、金属として温度がその融点温度の半分より高いとき、金属板は受熱して変形する恐れがある。例えばアルミニウム板、鋼板、銅板等が挙げられ、特にある高融点のガラス(軟化温度が500℃以上のガラス)の基板を成形するときに、変形がより生じやすい。従って、高熱伝導基板130は、熱伝導係数が100W/mK以上のセラミックス材料が用いられても良い。熱伝導を実現すると共に高い温度に耐えることができる。このような高熱伝導基板は、基本的に緻密構成のセラミックス板であり、例えば窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化ホウ素、酸化ベリリウムなどが挙げられる。また、炭化珪素基板の熱伝導係数は、単に80W/mKであるが、実験による検証により、高熱伝導基板として用いられても良いことが分かった。これらの高熱伝導基板の材料の融点はいずれも1500℃以上であり、アルミニウムの融点(700℃)より相当程度高く、高い温度に耐えることができる。
【0026】
波長変換装置は、従来の鏡面金属板の代わりに、乱反射層及び高熱伝導基板が用いられる。ここで、乱反射層は、白色の散乱粒子を備え、白色の散乱粒子が入射光を散乱するため、従来の金属反射層による鏡面反射の代わりに、乱反射を利用して入射光に対する反射を実現した。なお、白色の散乱粒子は、高温下でも酸化せず、入射光を吸収するため、乱反射層は高温下でも反射率が低下せず、高い温度に耐えることができる。さらに、高熱伝導基板は、窒化アルミニウム基板、窒化シリコン基板、炭化珪素基板、窒化ホウ素基板、酸化ベリリウム基板のうちの1種であるため、金属アルミニウムより高い温度に耐えることができる。従って、本発明の実施例に係る波長変換装置は、高い温度に耐えることができる。
【0027】
例えば、窒化アルミニウムセラミックスが基板であり、表面に乱反射層として一層の厚さが0.2mmの酸化アルミニウム粉末が設置されている場合、その酸化アルミニウム粉末の粒径は、0.2μm〜0.5μmの範囲に分布され、それと接着剤との質量比は6:1である。このとき、測定された鏡面アルミニウム基板に対する乱反射層の反射率が99.5%、鏡面アルミニウム基板とほぼ同じである。勿論、乱反射粒子の粒径、乱反射層の厚さ及び緻密度は、その他の数値であってもよく、これらの数値は、当業者が従来技術に基づき、複数回の実験によって得ることができる。
【0028】
上記乱反射層の表面に蛍光粉層を設置することにより、波長変換装置を得ることができる。最大パワーが14Wの励起光により照射される場合に、鏡面アルミニウム基板の波長変換装置および上記窒化アルミニウムセラミック基板の波長変換装置は、励起光の入射を受け取る。当該鏡面アルミニウム基板の波長変換装置および窒化アルミニウムセラミック基板の波長変換装置の蛍光粉層はいずれもシリカゲルでパッケージされている。図1bは鏡面アルミニウム基板の波長変換装置および窒化アルミニウムセラミック基板の波長変換装置はパワーの異なる励起光の照射での相対発光強度曲線を示す模式図である。図1bに示すように、座標軸の横軸は異なる励起光のパワーであり、上述したように、その最大パワーは14Wであり、座標軸の縦軸は波長変換装置によって生成された蛍光の相対発光強度である。励起光のパワーの増大に従い、鏡面アルミニウム基板の波長変換装置の相対発光強度は徐々に向上する。しかしながら、励起光のパワーは最大パワーの30%以上に達したとき、鏡面アルミニウム基板の波長変換装置において、蛍光粉層におけるシリカゲルは、高温で分解して黒くなり、波長変換装置の相対発光強度が低下する。さらに、励起光のパワーの向上に従い、シリカゲルの分解度合は深刻になるほど、相対発光強度が低くなる。また、窒化アルミニウムセラミック基板の波長変換装置は、開始段階で、窒化アルミニウムセラミック基板の波長変換装置の相対発光強度は、励起光のパワーの向上に伴い、徐々に向上する。しかしながら、励起光のパワーが最大パワーの70%以上に達したとき、窒化アルミニウムセラミック基板の波長変換装置は、初めて蛍光粉層におけるシリカゲルが黒くなる現象が発生し、波長変換装置の相対発光強度を低下させ、但し、その相対発光強度の低下傾向は、鏡面アルミニウム基板の波長変換装置の低下傾向より遅い。
【0029】
鏡面アルミニウム基板は、表面が平滑であり、鏡面アルミニウム基板の表面に蛍光粉層が成形された後、蛍光粉層の、基板と接触する表面が収縮して、一部が基板と分離するため、蛍光粉層と鏡面アルミニウム基板との接触面積を小さくし、そのため、蛍光粉層と鏡面アルミニウム基板との間における界面熱抵抗が大きい。また、窒化アルミニウムセラミック基板の波長変換装置は、セラミック基板及び乱反射層の表面はいずれも粗い。従って、蛍光粉層と乱反射層との間、乱反射層とセラミック基板との間の接触面積が大きく、波長変換装置が成形された後の界面熱抵抗を小さくし、より多くの蛍光粉層の熱量をセラミック基板に伝達させることができ、波長変換装置がより高い温度に耐えられるようにする。
【0030】
本発明において、波長変換装置は、従来の鏡面金属板の代わりに、乱反射層及び高熱伝導基板が用いられている。ここで、乱反射層は、白色の散乱粒子を備え、白色の散乱粒子が入射光を散乱するため、従来の金属反射層による鏡面反射の代わりに、乱反射を利用して入射光に対する反射を実現した。なお、白色の散乱粒子は、高温下でも酸化せず、入射光を吸収するため、乱反射層は高温度に耐えることができる。さらに、高熱伝導基板の材料は、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化珪素、窒化ホウ素、酸化ベリリウムのうちの少なくとも1種であるため、これらのセラミックス材料の融点は金属より相当程度高いため、金属より高い温度に耐えることができる。それとともに、これらのセラミックスの熱伝導率は、アルミニウム基板よりやや低いが、鉄などの金属の熱伝導率より高い。さらに、高熱伝導基板と乱反射層との間、乱反射層と蛍光粉層との間の界面熱抵抗が低いため、蛍光粉層の熱量を高熱伝導基板に伝達させて、さらに空気に発散することができるため、波長変換装置の熱安定性を向上させる。従って、本発明における波長変換装置は、波長変換装置の反射率および熱安定性を両立させることができた。
【0031】
実際の応用において、蛍光粉は、一般的に接着剤によって一体にパッケージされる。最もよく用いられるのは、シリカゲル接着剤であり、その化学的性質が安定で、高い機械強度を有する。但し、上述したように、シリカゲル接着剤が耐えられる温度が低く、一般的に300℃〜500℃である。大パワーの発光装置に応用できるように、好ましくは、無機接着剤によって蛍光粉を一体に接着することができる。高温に耐えられる反射式の蛍光粉ホイールとするように、無機接着剤は、水ガラス、ガラス粉などであってもよい。
【0032】
好ましくは、蛍光粉層110の接着剤は、第二のガラス粉であり、ガラス粉は、アモルファスペレット状のガラス均質体であり、その透明度が高く、且つ化学的性質が安定である。第二のガラス粉および蛍光粉は、焼結成形のプロセスによって蛍光粉層110と乱反射層120との間の結合力を非常に強くし、また、成形後の蛍光粉層110の透明度が高く、さらに、高い温度に耐えることができる。
【0033】
例えば、図1cはシリカゲルでパッケージされた蛍光粉層の波長変換装置およびガラス粉でパッケージされた蛍光粉の波長変換装置の異なるパワーの励起光の照射での相対発光強度曲線を示す模式図であり、その基板は、いずれも窒化アルミニウムセラミック基板であり、図1cに示すように、座標軸の横軸は、異なる励起光のパワーであり、その最大パワーが14Wであり、座標軸の縦軸は、蛍光を生成する相対発光強度である。シリカゲルでパッケージされた波長変換装置については、励起光のパワーが最大パワーの70%以上に達したとき、波長変換装置において、蛍光粉層のシリカゲルが黒くなる現象が発生して波長変換装置の相対発光強度を低下させる。また、ガラス粉でパッケージされた波長変換装置について、ガラス粉の軟化温度が高く、黒くなる現象も発生しないため、励起光のパワーの向上に伴い、その波長変換装置の相対発光強度は基本的に線形に向上する。
【0034】
類似的に、白色の散乱粒子も、接着剤によって一体に接着される必要がある。接着剤は、シリカゲル、水ガラスなどであっても良い。好ましくは、白色の散乱粒子は、第一のガラス粉によって接着される。ここで、第一のガラス粉は、第二のガラス粉と同様なガラス粉であっても良いし、異なるガラス粉であっても良い。乱反射層において、第一のガラス粉によって白色の散乱粒子を接着することにより、白色の散乱粒子を空気と隔絶させ、白色の散乱粒子が空気に湿ることを避けるようにし、乱反射層が高い強度および透過率を有するようにする。また、蛍光粉層110および乱反射層120の接着剤はいずれもガラス粉であるとき、乱反射層120の表面に蛍光粉層110が焼結成形され、又は蛍光粉層110の表面に乱反射層120が焼結成形されることにより、両者の間には強い結合力を持つようにする。
【0035】
説明すべきなのは、先に乱反射層120を成形し、その後、乱反射層120表面に蛍光粉層110を焼結するとき、蛍光粉層110を焼結する過程で、乱反射層120を破壊してはいけない。容易に理解できるのは、焼結温度T3が第一のガラス粉の軟化温度より低いとき、第一のガラス粉は、蛍光粉層110の成形プロセスにおいて軟化しないため、乱反射層120には影響しない。しかしながら、実験によりわかるように、焼結温度T3が第一のガラス粉の軟化温度より高くても、第一のガラス粉の流動性が強くなければ、乱反射層を破壊することがない。蛍光粉110を焼結する過程で、第一のガラス粉が再び軟化した後流動性が強くなりすぎることを避けるため、実験による検証で、焼結温度T3は、T3≦Tf+400℃を満足する必要があり、ここで、Tfは第一のガラス粉の軟化温度である。
【0036】
同じように、先に蛍光粉層110を成形し、その後、蛍光粉層110の表面に乱反射層120を焼結するとき、焼結温度T3は、T3≦Tf+400℃という式を満足する必要があり、Tfは第一のガラス粉の軟化温度である。
【0037】
実は、第一のガラス粉および第二のガラス粉は同じガラス粉であっても良く、上述したように、第二回の焼結時の焼結温度を制御すれば、第一回の焼結成形された乱反射層120若しくは蛍光粉層110を破壊することがない。従って、二回の焼結は、ひいては同じ温度であっても良い。例えば、第一のガラス粉および第二のガラス粉はいずれも高融点のガラス粉であり、例えば珪酸塩ガラス粉が挙げられる。低融点のガラス粉と比べ、高融点のガラス粉は透光性が良く、光の損失を減少させることができる。
【0038】
乱反射層120及び蛍光粉層110において、第一のガラス粉および第二のガラス粉は、入射光を透過出射すると共に熱量も伝導する必要がある。そのため、好ましくは、第一のガラス粉及び/又は第二のガラス粉は、ホウ珪酸ガラス粉であり、ホウ珪酸ガラス粉は、性質が安定で、透過率が高く、且つその他のガラス粉に対して、さらに高い熱伝導率を有する。また、第一のガラス粉と第二のガラス粉の軟化温度には、差異が必要であり、ホウ珪酸ガラス粉の軟化温度が高いことを考慮すると、当該ガラス粉は、第一のガラス粉及び第二のガラス粉のうち軟化温度がより高いほうとして用いられてもよい。
【0039】
乱反射層120における白色の散乱粒子は、主に入射光を散乱する機能を果たし、より良好な散乱効果を達成するために、白色の散乱粒子の粒径は、0.2〜0.5μmの範囲をカバーする必要がある。これは、一般的に粒子は、その粒径の両倍の波長の光に対して最も高い反射率を有し、この粒径範囲は、ちょうど400nm〜800nmの可視光の波長範囲に対応しているからである。勿論、白色の散乱粒子の粒径は小さいほど、乱反射層における白色の散乱粒子がより緻密に堆積し、その散乱効果もより良好になる。ただし、実験により、同一の密度で、粒径が0.2〜0.5μmの範囲内にある場合、散乱効果が最も高いことが検証できた。一方、容易に理解できるのは、同一の白色の散乱粒子は、白色の散乱粒子の添加比率が高いほど、乱反射層120の厚さがより厚くなり、反射率もより高くなる。
【0040】
乱反射層120は、接着などで高熱伝導基板130上に固定されることができる。但し、接着で固定すると、糊が存在し、乱反射層120と高熱伝導基板130との間に界面層が存在するため、乱反射層120の熱量が高熱伝導基板130上に伝達することが阻止される。従って、好ましくは、乱反射層120は、直接的に高熱伝導基板130に焼結される。この場合、高熱伝導基板130と乱反射層120とは高い結合力を有し、且つ熱伝導性も良い。乱反射層120における接着剤が第一のガラス粉である場合、ガラス粉とセラミックスの高熱伝導基板130の基体と一定の化学結合が発生し、両者の結合力は、ガラスと金属との結合力より相当程度高く、且つガラスとセラミックスの熱膨張係数がよりマッチングし、また、高熱伝導基板130は、高い熱伝導係数を有するため、金属と同じように良好な熱伝導機能を果たすことができる。
【0041】
また、セラミック基板と乱反射層120との高い結合力を利用できると共に、金属基板の高い熱伝導率を利用できるように、高熱伝導基板130は、セラミック基板に銅を敷いた複合構成であっても良い。その複合構成は、セラミック基板の表面に一層の乱反射層が成形された後、セラミック基板のもう1つの面に銅を敷くことにより実現することができる。銅の酸化及び変形を回避することができる。
【0042】
上述した波長変換装置を得るために、本発明においてさらに波長変換装置の作製方法を提供する。図2を参照し、図2は本発明に係る波長変換装置の作製方法の1つの実施例のフローを示す模式図であり、図2に示すように、本実施例のステップは、以下のステップを含む。
【0043】
S11であって、高熱伝導基板が取得される。
【0044】
ここで、高熱伝導基板は、窒化アルミニウム基板、窒化シリコン基板、炭化珪素基板、窒化ホウ素基板、酸化ベリリウム基板のうちの1種である。
【0045】
S12であって、乱反射層が取得される。
【0046】
乱反射層は、白色の散乱粒子を備え、当該白色の散乱粒子は入射光を散乱するためのものである。当該乱反射層は、シリカゲルなどの接着剤と白色の散乱粒子とが混合された後に塗布成形されることにより得ることもできるし、ガラス粉などの接着剤と白色の散乱粒子とが焼結されることにより得ることもできるし、さらに水ガラスと白色の散乱粒子が混合された後に蒸着法によって得ることもできる。
【0047】
S13であって、蛍光粉層が取得される。
【0048】
蛍光粉層は、蛍光粉を含む。この蛍光粉は、接着剤によって一体に接着されることができる。接着剤は、シリカゲル、水ガラス、ガラス粉などであっても良い。蛍光粉層の成形方法は、一般的に接着剤に関連する。例えば、蛍光粉は、シリカゲルと混合して塗布することにより成形されてもよく、又は、水ガラスと混合された後に蒸着法によって成形されても良い。
【0049】
説明すべきなのは、上述したステップS11、S12及びS13は特定の順番がない。
【0050】
S14であって、蛍光粉層、乱反射層、高熱伝導基板が順次に積層設置され、固定される。
【0051】
本ステップS14は、ステップS11、ステップS12、ステップS13の後に実行されても良い。例えば、蛍光粉層、乱反射層、高熱伝導基板を取得した後、三者をのりによって順次に粘着されるようにする。このときの蛍光粉層、乱反射層は、先に他の基板上に成形されてから離型されてなるものであっても良い。
【0052】
ステップS14は、ステップS11と、ステップS12と、ステップS13と同時に実行されても良い。例えば、乱反射層及び高熱伝導基板を取得した後、乱反射層と高熱伝導基板とを接着して固定してから、蛍光粉層を取得して、蛍光粉層と乱反射層とを接着して固定する。又は、乱反射層及び蛍光粉層を取得した後、両者を先に接着して固定してから、高熱伝導基板を取得して、高熱伝導基板と乱反射層とを接着して固定する。
【0053】
また、乱反射層の取得は、乱反射層と高熱伝導基板との接着プロセスは同時に実行されても良い。例えば、乱反射層を直接的に高熱伝導基板の表面に成形する。同じように、乱反射層の取得と、乱反射層と蛍光粉層との接着プロセスも同時に実行されても良い。例えば、乱反射層を直接的に蛍光層の表面に成形する。また、蛍光粉層の取得と、乱反射層と蛍光粉層との接着プロセスも同時に実行されても良い。例えば、蛍光粉層を直接的に乱反射層の表面に成形する。
【0054】
上述した作製方法によって、積層設置されている蛍光粉層、乱反射層、高熱伝導基板を備える波長変換装置を製造することができる。
【0055】
上述した作製方法において、各ステップは、様々な方法で実現することができ、ステップを簡単化にするために、本発明には好ましい作製方法を提案する。図3を参照し、図3は本発明に係る波長変換装置の作製方法のもう1つの実施例のフローを示す模式図であり、図3に示すように、本実施例のステップは、以下のステップを含む。
【0056】
S21であって、高熱伝導基板が取得される。
【0057】
ステップS21の説明は、ステップS11についての説明を参照する。
【0058】
S22であって、高熱伝導基板の表面に一層の乱反射層が焼結され、当該乱反射層は、白色の散乱粒子及び第一のガラス粉を備える。
【0059】
本ステップS22において、図2に示された作製方法におけるステップS12とS14とを同時に実行する。一方では、これにより、ステップを簡単化にし、他方では、直接的に焼結すると、乱反射層と高熱伝導基板との間の結合力を高くし、且つ糊などの接着による界面熱抵抗を解消することができる。
【0060】
乱反射層の焼結プロセスが高熱伝導基板を破壊しないように、焼結温度が高熱伝導基板の融点より低いことが必要である。
【0061】
S23であって、乱反射層の表面に一層の蛍光粉層が焼結され、当該蛍光粉層は、第二のガラス粉及び蛍光粉を備える。
【0062】
本ステップS23において、図2に示された作製方法におけるステップS13とステップS14とを同時に実行する。同様に、ステップを簡単化にし、且つ糊などの接着による界面熱抵抗を解消することができる。また、ここで、蛍光粉層は、第二のガラス粉及び蛍光粉を備え、シリカゲルと蛍光粉とが混合されて塗布される構成に対して、第二のガラス粉は、シリカゲルよりたいぶ高温に耐えられる。それに、ガラスとガラスとの間の結合力は、ガラスとシリカゲルとの間の結合力より相当程度高いため、乱反射層と蛍光粉層との間の結合力も増大する。そのため、ガラス粉で蛍光粉層をパッケージすることが好ましい。勿論、蛍光粉シートの焼結の過程で、乱反射層に影響しないように、本ステップにおける焼結温度T3は、T3≦Tf+400℃という式を満足する必要があり、ここで、Tfは上記第一のガラス粉の軟化温度である。
【0063】
また、説明すべきなのは、ステップS22は、必ずしもステップS23と合わせて実行する必要がない。例えば、ステップS22の後、蛍光粉とシリカゲルとを混合し、乱反射層の表面に塗布して加熱成形を行う。又は、先に蛍光粉層を成形してから乱反射層の表面に接着する。
【0064】
また、乱反射層及び蛍光粉層の焼結順番は、必ずしも本実施例の順番と同じである必要がなく、他の順番であっても良い。例えば、まず蛍光粉層を焼結成形してから、蛍光粉層又は高熱伝導層の表面に乱反射層を焼結し、最後に蛍光粉層、乱反射層、高熱伝導基板の三者を積層設置して再び一体に焼結する。又は、まず蛍光粉層を焼結成形してから、高熱伝導基板の表面に第一のガラス粉と白色の散乱粒子との混合粉末を塗布し、蛍光粉層が当該混合粉末を被覆し、これにより、蛍光粉層、混合粉末、高熱伝導基板が順に積層設置されるようになり、焼結を行い、乱反射層を成形すると同時に、三者を一体に焼結する。蛍光粉層を焼結してから乱反射層を焼結する必要があるとき、乱反射層の焼結過程で蛍光粉層への影響を回避するように、乱反射層の焼結温度T3はT3≦Tf+400℃という式を満足する必要がある。
【0065】
常温下で、ガラス粉と蛍光粉はいずれも固体粉末であり、両者の相溶性が良くないため、混合された後にガラス粉顆粒と蛍光粉顆粒との間には隙間が存在して、一体に混合されておらず、両者を焼結した後に得られた蛍光粉シートには、気孔などが生じやすい欠陥が存在する。気孔の存在によって、励起光は直接的に気孔を経由して蛍光粉を励起させずに蛍光粉シートを透過する恐れがある。上述した問題を解決するために、本発明において、もう一つの実施例を提出する。図4を参照し、図4は本発明に係る波長変換装置の作製方法のもう1つの実施例のフローを示す模式図であり、図4に示すように、本実施例は、以下のステップを含む。
【0066】
S31であって、高熱伝導セラミック基板が取得される。
【0067】
ステップS31の説明は、ステップS11についての説明を参照する。
【0068】
S32であって、一定の量のメチルシリコーンオイル、白色の散乱粒子及び第一のガラス粉が取得される。
【0069】
シリコーンオイルとは、異なる重合度のポリオルガノシロキサンの混合物であり、ここで、メチルシリコーンオイル、エチルシリコーンオイル、フェニル基シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどは、いずれもよく用いられるシリコーンオイルである。シリコーンオイルは、一定の粘度を有し、且つシリコーンオイルの表面の張力が小さく、白色の散乱粒子及び第一のガラス粉に浸漬しやすく、一体に混合される。ここで、メチルシリコーンオイルは、完全分解温度が高く、粘度が高く、熱安定性も高く、その粘度が温度の変化と共に変化しないため、後述のスラリーの粘度の調整に有利であり、分相が発生し難いため、好ましい有機キャリアである。勿論、シリコーンオイル以外に、その他の一定の粘度を有し、且つ白色の散乱粒子と、第一のガラス粉とを一定の流動性を有する一体化されたものに接着することができる有機キャリアであっても良い。例えば、エチレングリコール、PVB(ポリビニルブチラール)、エチルセルロースなどが挙げられ、これらはいずれも焼結後に分解揮発し、又は、僅かな乱反射層の散乱効果にほぼ影響しない残留物のみが残る。
【0070】
メチルシリコーンオイルの量は、少なくとも白色の散乱粒子及び第一のガラス粉を十分に浸漬する必要があり、三者を混合して一体化にする。白色の散乱粒子及び第一のガラス粉の量は、実際の需要に応じて選択しても良く、第一のガラス粉を後続の焼結において白色の散乱粒子と接着し、一体化にすることが可能であれば良い。
【0071】
S33であって、散乱粒子のスラリーを得るように、メチルシリコーンオイル、白色の散乱粒子、第一のガラス粉が均一に混合される。
【0072】
白色の散乱粒子と第一のガラス粉とが混合され、一体に形成されにくい問題を解決するために、本ステップにおいて、白色の散乱粒子と、第一のガラス粉と、メチルシリコーンオイルとを混合して一体化にすることによって、メチルシリコーンオイルを白色の散乱粒子と第一のガラス粉とを混合するためのキャリアとし、散乱粒子のスラリーを得る。
【0073】
均一に混合するために、機械攪拌などで混合を行っても良い。ここのステップS33は、ステップS32の完了後に、三者を均一に混合するステップであっても良く、ステップS33及びステップS32を同時に行うステップであっても良い。例えば、一定の量の第一のガラス粉及び白色の散乱粒子を取得し、攪拌などの方法で第一のガラス粉と白色の散乱粒子とを混合し、同時にさらに一定の量のシリコーンオイルを取得して、攪拌と共に徐々に第一のガラス粉と白色の散乱粒子に添加する。
【0074】
S34であって、散乱粒子スラリーが高熱伝導セラミック基板に塗布される。
【0075】
高熱伝導セラミック基板は、散乱粒子スラリーのキャリアである。散乱粒子スラリーは、ナイフ塗布などで高熱伝導セラミック基板に塗布されることができる。好ましくは、散乱粒子スラリーは、スクリーン印刷方式で塗布されることもでき、スクリーン印刷によって高熱伝導セラミック基板の表面に塗布されている散乱粒子スラリーの厚みをより均一にし、焼結成形後の熱応力をより小さくすることができる。
【0076】
S35であって、散乱粒子スラリーが塗布された高熱伝導セラミック基板が焼結成形される。
【0077】
散乱粒子スラリーを焼結成形するために、焼結温度は散乱粒子スラリーにおける第一のガラス粉の軟化温度以上であることが必要となり、このように、ガラス粉は液相が形成され、散乱粒子と繊密な乱反射層に焼結されることに有利である。ただし、温度が高すぎてはいけない。温度が高すぎると、一定の量の白色の散乱粒子がガラス粉と化学反応し、乱反射率に影響する。実験から分かるように、焼結温度T2はTf<T2≦Tf+400℃の範囲内であれば、相対的により容易に成形することができ、ここで、Tfは第一のガラス粉の軟化温度である。
【0078】
実験から分かるように、直接的に散乱粒子スラリーが塗布された基板に対して焼結成形を行うと、散乱粒子スラリーによって焼結された乱反射層には、多くの気孔が生じる。これは、シリコーンオイルの引火点が、一般的にガラス粉の軟化温度より相当程度低く、直接的にガラス粉の軟化温度付近で加熱すると、シリコーンオイルの揮発の速度が速すぎることによって、乱反射層において気孔が形成されるからである。このため、本発明の実施例によれば、少なくとも一部のシリコーンオイルが低速度で揮発するように、焼結成形前に散乱粒子スラリーに対して低温加熱を行うことが必要である。
【0079】
好ましくは、ステップS35の前に下記ステップを追加することができる。散乱粒子スラリーが塗布された基板を200℃で0.2時間加熱する。200℃(メチルシリコーンオイルの引火点温度である300℃より100℃低い)で0.2時間加熱すると、散乱粒子スラリーにおいて、かなりの割合のシリコーンオイルは揮発或は分解し、残ったシリコーンオイルは、散乱粒子スラリーの焼結成形の過程で揮発或は分解する。勿論、容易に理解できるのは、加熱の温度が低いほど、必要となる加熱の時間がより長くなければ、すべてのシリコーンオイルを除去することができず、且つ、加熱時間が長いほど、残ったメチルシリコーンオイルがより少なくなる。加熱時間を短くするために、散乱粒子スラリー及び基板の加熱温度を向上させても良いが、メチルシリコーンオイルが遅い速度で揮発するように、加熱温度は500℃(メチルシリコーンオイルの引火点温度である300℃より200℃高い)以下であることが必要である。例えば、加熱温度が500℃であれば、このとき、0.2時間を加熱した後、散乱粒子スラリーにおいてより多くのメチルシリコーンオイルが揮発し、メチルシリコーンオイルがすべて揮発するまでの時間は200℃で加熱する場合の時間より短い。
【0080】
メチルシリコーンオイルの代わりに、他のタイプのシリコーンオイルを使用する場合、シリコーンオイルの揮発速度及び揮発量を制御するために、同様に、散乱粒子スラリーが塗布された基板の加熱温度をT1温度に制御する必要があり、また、Tb−100℃≦T1≦Tb+200℃という式を満足し、ここで、Tbはシリコーンオイルの引火点であり、シリコーンオイルは、引火点温度付近で分解・揮発する。勿論、シリコーンオイルの代わりに、他の有機助剤を利用しても良い。ただし、散乱粒子スラリーが塗布された基板の加熱温度をT1温度に制御することが必要である。また、Tb−100℃≦T1≦Tb+200℃という式を満足し、ここで、Tbは、有機助剤の完全分解温度である。
【0081】
実際に、シリコーンオイルの代わりに、エチレングリコールなどを利用して第一のガラス粉と白色の散乱粒子と混合すれば、低温で有機キャリアを除去しても成形後の乱反射層において数多くの気孔が存在する可能性もある。これは、エチレングリコールは純物質であり、エチレングリコールの引火点付近まで加熱されると、すべてのエチレングリコールはほとんど速く揮発し、固体の白色の散乱粒子及び第一のガラス粉のみが残り、揮発したエチレングリコールの元の箇所は気孔になってしまうからである。なお、シリコーンオイルは、異なる重合度のポリオルガノシロキサンの混合物であり、異なる重合度のポリオルガノシロキサンは異なる引火点を有するため、シリコーンオイルの昇温過程において異なる重合度のポリオルガノシロキサンは順次に揮発する。このとき、一部のシリコーンオイルが揮発したが、白色の散乱粒子、第一のガラス粉及び残ったシリコーンオイルは依然として流動性を有するため、白色の散乱粒子及び第一のガラス粉は互いに近づいて揮発したシリコーンオイルの位置に充填し、気孔の生成を減少させる。従って、シリコーンオイルは好ましい有機キャリアである。
【0082】
説明すべきなのは、焼結の過程においてメチルシリコーンオイルが含まれるシリコーンオイルは、分解や揮発の形で除去される。シリコーンオイルが分解した後に少量のシリカが生成されるが、このシリカは乱反射層の散乱効果にほぼ影響しない。
【0083】
勿論、乱反射層における気孔率に対して敏感ではない場合、低温でシリコーンオイルを除去するステップを設定せず、直接的に焼結成形しても良い。
【0084】
実際に、加熱温度T1はステップS15における焼結温度T2より小さい場合のみ、予め低温でシリコーンオイルを除去することに意味があり、シリコーンオイルの揮発速度を遅らせることができる。そのため、T2をT1より大きく設定する必要がある。ただし、T2とT1の温度が近いとき、二回の加熱時、シリコーンオイルの揮発速度は顕著な差異がなく、低温でシリコーンオイルを除去する作用は顕著ではないため、ここの温度T1、T2がT2-T1≧100℃という式を満足することが好ましい。
【0085】
S36であって、一定の量のメチルシリコーンオイル、蛍光粉、第二のガラス粉が取得される。
【0086】
本ステップS36は、前のステップと固定した順番関係がなく、その前後の順番は任意であってもよい。本ステップS36においてメチルシリコーンオイルの作用は、ステップS32の作用と同じであり、相違点は、取得したのが蛍光粉及び第二のガラス粉ということである。
【0087】
S37であって、メチルシリコーンオイルと、蛍光粉と、第二のガラス粉とが均一に混合され、蛍光粉スラリーが得られる。
【0088】
本ステップS37はステップS33と類似する。メチルシリコーンオイルの作用は、蛍光粉と第二のガラス粉のキャリアとして機能することである。
【0089】
S38であって、蛍光粉スラリーが高熱伝導基板の表面における乱反射層上に塗布される。
【0090】
本ステップS38において乱反射層は蛍光粉スラリーのキャリアであり、その塗布方法はステップS34の方法と同様である。
【0091】
S39であって、蛍光粉スラリーが塗布された高熱伝導基板が焼結成形され、蛍光粉層が得られる。
【0092】
本ステップにおける焼結方法は、ステップS35の方法と同様であり、相違点は、焼結温度が、T3≦Tf+400℃という式を満足することである。ここで、Tfは第一のガラス粉の軟化温度である。さらに、同じように予め低温でシリコーンオイルを除去するステップを追加しても良い。
【0093】
説明すべきなのは、本実施例において、乱反射層及び蛍光粉層の成形プロセスにおいて、いずれも有機キャリアであるシリコーンオイルをキャリアとして異なる物質をより均一に混合させる。容易に理解できるのは、乱反射層及び蛍光粉層の成形は相互に独立であり、両者の成形プロセスにおいてそれぞれ有機キャリアを単独で使用し、成形を補助しても良い。
【0094】
本発明の実施例において発光装置がさらに提供され、この発光装置は、上記実施例における波長変換装置を備え、且つ励起光を出射するための励起光源を備える。ここで、蛍光粉は、励起光を吸収して蛍光を生成するためのものであり、乱反射層は、当該蛍光又は蛍光と吸収されなかった励起光との混合光を散乱反射するためのものであり、高熱伝導基板は、乱反射層より伝達されてきた熱量を空気に発散させるためのものである。
【0095】
上述したのは、本発明の実施形態のみであり、本発明の特許範囲を限定するものではなく、本発明の明細書及び図面の内容を用いて実現した等価構成又は等価変換フロー、又は他の関連する技術分野における直接又は間接運用は、全て同様に本発明の特許保護範囲内に含まれる。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4