特許第6178033号(P6178033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6178033
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】コリオリ式質量流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/84 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
   G01F1/84
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-73745(P2017-73745)
(22)【出願日】2017年4月3日
【審査請求日】2017年5月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305000482
【氏名又は名称】株式会社アツデン
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】村上 英一
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭60−34683(JP,B1)
【文献】 特公平5−74007(JP,B2)
【文献】 特許第5960371(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定流体を一方向に流通する曲管部を有する測定管と、前記測定管に振動を与える加振駆動部と、前記測定管の往き管と戻り管の2個所において前記測定管の変位によりコリオリ力を検出する変位検出部とを有するコリオリ式質量流量計において、
前記往き管と戻り管のそれぞれ外側に前記変位を拡大するための翼状片が張り出され、前記変位検出部は前記測定管中を前記測定流体が流れる際の前記2つの翼状片による拡大された変位を検出することを特徴とするコリオリ式質量流量計。
【請求項2】
前記翼状片は前記往き管と戻り管に取り付けたホルダから外側に向けて板体状に張り出されていることを特徴とする請求項1に記載のコリオリ式質量流量計。
【請求項3】
前記翼状片は前記往き管と戻り管にそれぞれ外側に向けて取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のコリオリ式質量流量計。
【請求項4】
前記変位検出部は前記翼状片の変位を離隔的に検出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のコリオリ式質量流量計。
【請求項5】
前記変位検出部は光電式検出手段とされていることを特徴とする請求項4に記載のコリオリ式質量流量計。
【請求項6】
前記ホルダに前記加振駆動部の一部として機能する磁気作用体が取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のコリオリ式質量流量計。
【請求項7】
前記ホルダの先端には磁気作用体が配置され、前記管部の前方に離隔的に配置された磁性体とによる磁気吸引力を作用させ、前記曲管部を離隔的に保持するようにしたことを特徴とする請求項2又は6に記載のコリオリ式質量流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリオリ力に対する検出感度を良好とするコリオリ式質量流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コリオリ式質量流量計とは、速度Vで回転振動系の回転中心に向かう、又は回転中心から離れる質量mの質点に働くコリオリ力が、質量mと速度Vの積に比例することから、コリオリ力を測定して質量流量を求める方式の流量計である。
【0003】
コリオリ式質量流量計は差圧式、電磁式、容積式などの流量計と比較すると、直接的に質量流量が得られること、摩耗などが生ずる機械的可動部分がないこと、保守性に優れていること、そして原理上、測定管の振動数の計測から密度が計測できることなどの数々の優れた特長を有している。
【0004】
例えば、特許文献1には図6に示すようなU字形測定管を用いたコリオリ式質量流量計が開示されている。測定管は1本のU字形測定管1で構成され、取付フランジ2a、2bを介して固定された点を中心にして、片持ち梁状のU字形測定管1は加振した共振周波数で上下に振動を繰り返えす。
【0005】
この測定管1内に流入した測定流体は、矢印で示すように入口からU字の曲がり部に向かって流れる際に、測定管1に対する速度によりコリオリ力が生じ、測定管1に歪を与え、曲管部から出口に向かって流れる際には、コリオリ力により逆方向の歪を測定管1に与え振動となる。
【0006】
測定管1のU字形を成す先端には振動子3が設けられ、曲がり部の両側の測定管1の往き管4aと戻り管4bには変位検出センサ5a、5bがそれぞれ取り付けられている。
【0007】
測定管1に測定流体を流し、振動子3を駆動し測定管1を加振する。振動子3の振動方向の角速度ω、測定流体の流速νとすると、Fc=−2mω×νのコリオリ力が働き、このコリオリ力Fcに比例した振動の振幅を変位検出センサ5a、5bで検出し、演算を行えば質量流量が測定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−41319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この従来例のコリオリ式質量流量計では、測定管の往き管4aと戻り管4bに発生するコリオリ力による歪の変化を例えば光電的に検出しているが、変位が小さ過ぎて十分な測定精度を持つ流量値が得られないことがある。
【0010】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、コリオリ力による測定管の変位を梃子の原理を利用して拡大し、検出感度を高めるコリオリ式質量流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係るコリオリ式質量流量計は、測定流体を一方向に流通する曲管部を有する測定管と、前記測定管に振動を与える加振駆動部と、前記測定管の往き管と戻り管の2個所において前記測定管の変位によりコリオリ力を検出する変位検出部とを有するコリオリ式質量流量計において、前記往き管と戻り管のそれぞれ外側に前記変位を拡大するための翼状片が張り出され、前記変位検出部は前記測定管中を前記測定流体が流れる際の前記2つの翼状片による拡大された変位を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコリオリ式質量流量計によれば、測定管に発生したコリオリ力を測定管から側方に張り出した翼状片により拡大して検出することにより、検出感度を良好にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1のコリオリ式質量流量計の斜視図である。
図2】要部の拡大断面図である。
図3】ホルダの斜視図である。
図4】温度測定部の構成図である。
図5】実施例2のコリオリ式質量流量計の斜視図である。
図6】従来例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を図1図5に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は実施例1のコリオリ式質量流量計の斜視図、図2は要部の拡大断面図である。このコリオリ式質量流量計は主として、測定流体を一方向に流通する測定管11と、測定管11を所定の位置に磁気結合により離隔的に保持する磁気結合部12と、測定管11を加振する加振駆動部13と、測定管11の変位を検出する変位検出部14と、測定流体を測温する温度測定部15と、更にはこれらの機構に対し検出信号、制御信号を入出力し、測定流体の流量を演算する図示しない演算制御部とから成っている。
【0016】
測定管11は合成樹脂製の例えばフッ素樹脂管から成り、直径が例えば3.2mmで、中央部にU字状の曲管部11aを有している。なお、測定流体が腐蝕性を有していなければ、測定管11はフッ素樹脂管でなくとも通常の合成樹脂管であってもよい。しかし、測定管11は振動を十分に伝達可能とする硬度の弾性係数を有し、柔軟でない材質であることが必要である。測定管11の径等は1例であり、任意の径の測定管11を使用することもでき、或いは金属管であってもよい。
【0017】
測定管11の曲管部11aを境界とする往き管11bと戻り管11cの平行な2個所は、基板16上に配置されたハウジング17により挟着されることによって、測定管11はハウジング17に固定されている。従って、これらの固定位置よりも曲管部11a側の測定管11は、機械的な支持部がない自由端とされている。
【0018】
測定管11の曲管部11aには、例えば図3に示すように重ねて使用する合成樹脂製のホルダ20が取り付けられており、ホルダ20は一対の板体状の上部材21a、下部材21bから成っている。このホルダ20は測定管11の剛性が十分でない場合に、曲管部11aの変形を防止する役割をも果している。
【0019】
これらの上部材21a、下部材21bの合わせ面には、曲管部11aと同形状の断面半円状の溝部22a、22bが形成されている。曲管部11a、往き管11b、戻り管11cに上下両側から上部材21a、下部材21bを重ね合わせて固定すると、曲管部11aは上部材21a、下部材21bにより挟み込まれて溝部22a、22b内に収納される。
【0020】
上部材21a、下部材21bの先端側には、それぞれ凹部23a、23bが形成され、この凹部23a、23b内に磁気結合部12の一部として機能する磁気作用体12aが配置されている。磁気作用体12aとは磁極面を前方に向けた永久磁石、又は鉄、コバルト、ニッケル、或いはこれらの合金などの強磁性体とされている。また、下部材21bの下面中央には、加振駆動部13の一部として機能する磁気作用体である加振体13aが埋没されている。更に、下部材21b又は上部材21aの往き管11b、戻り管11cの両側に、板体状の翼状片24a、24bが張り出されている。
【0021】
このように、曲管部11a、往き管11b、戻り管11cにホルダ20を固定することにより、ホルダ20の重量によって曲管部11aが垂れ下がり易くなるなどの課題が発生するので、曲管部11aを磁気結合部12の磁気吸引力により遠隔的に保持することが好適である。
【0022】
このために、ホルダ20には磁気作用体12aが配置され、磁気作用体12aに対向した前方の離隔位置に、合成樹脂製の磁性体保持部12bが基板16上に設けられている。磁性体保持部12bには、ホルダ20の磁気作用体12aと対向して、磁気結合部12の一部として機能する強力な例えばネオジム磁石などから成り、磁極面を磁気作用体12aに向けた永久磁石12cが配置されている。
【0023】
磁気作用体12aが永久磁石の場合には、対向する磁極同士は異極とされ、つまりS極とN極が対向するようにされている。従って、磁気結合部12の磁性体保持部12bの永久磁石12cは、磁気作用体12aを磁気吸引力により強力に吸引することにより、測定管11の曲管部11aを磁気結合により離隔的に保持する役割を果している。或いは、磁性体保持部12bに電磁コイルを配置し磁気作用体12aと電磁結合して磁気吸引力が発生するようにしてもよい。
【0024】
このように、測定管11の曲管部11aは、磁性体保持部12b側に強く引き寄せられている。従って、曲管部11aは磁性体保持部12bにより所定位置に保持され、測定管11内に測定流体を流入しても、曲管部11aがホルダ20や測定流体の重みで垂れ下がることもなく、測定管11の曲管部11aの位置は変化することなく保持される。
【0025】
また基板16上には、測定管11にコリオリ力を発生させるための加振駆動部13が設けられている。ホルダ20の下面の加振体13aの下方の基板16上には、電磁石である電磁コイル13bが設けられ、加振体13aと共働して測定管11を加振する加振駆動部13とされている。
【0026】
電磁コイル13bの鉄心13cに巻回したコイル13dに電流の方向を切換ながら通電し、鉄心13cの端部から発生する磁束の方向を切換えることにより、加振体13aに対し磁気吸引力、磁気反発力を繰り返して作用する。これにより加振体13a、ホルダ20を介して測定管11に非接触で所定の振動を加振できる。
【0027】
なお、この振動は測定管11の左右対称の中心位置に加えることが好ましい。また、振動数は測定管11中に測定流体を充満した状態における測定管1の共振周波数、或いはその整数倍とされ、通常はオートチューニングより求められた数10〜数100Hzであり、測定管11の弾性係数、形状、測定流体の種類によって異なる。
【0028】
なお、加振駆動部13による加振量は微少であるので、測定管11が磁気結合部12により保持されていても、測定管11を加振することができる。なお、加振駆動部13には、電磁コイル13b以外の他の加振駆動機構を使用することも可能である。また、加振体13aは永久磁石以外にも鉄、コバルト、ニッケル、又はこれらの合金から成る強磁性体であってもよい。
【0029】
流量測定中の測定管11の加振による変位の大きさ、つまりコリオリ力による歪量はホルダ20を介して翼状片24a、24bに伝達される。この歪量の大きさを検出するために、ホルダ20の翼状片24a、24bの下方の基板16上には、変位検出部14の送受光部14a、14bがそれぞれ配置されている。
【0030】
この変位検出部14では、送受光部14a、14bからの光ビームを光反射部となる翼状片24a、24bに向けて送光し、その反射光を送受光部14a、14bで受光して、反射光の位置ずれを検出する。この位置ずれにより送受光部14a、14bから翼状片24a、24bまでの距離、つまり送受光部14a、14bからの往き管11bと戻り管11cへの変位である距離の変化をそれぞれ測定する。
【0031】
コリオリ力による歪は曲管部11aの先端を通り往き管11bと戻り管11cに平行な中心線に対称的に往き管11bと戻り管11cに発生し、歪量はホルダ20を中心線と中心に往き管11bと戻り管11cを捩るように発生する。従って、この捩れ量を翼状片24a、24bを用いて、送受光部14a、14bにより梃子の原理で拡大して検出する。なお、これらの変位を基にした流量の算出のための演算方式等は公知なので、その説明は省略する。
【0032】
このように歪量の検出は、梃子の原理を用いて拡大して検出しているので、翼状片24a、24bの長さが大きいほど効果的である。翼状片24a、24bを使用することにより、これらを用いずに測定管11自体の変位をそのまま検出する場合と比較して、検出感度を大きく向上させることができる。
【0033】
なお、この変位検出部14は翼状片24a、24bを用いた位置ずれ検出方式により距離を測定しているが、翼状片24a、24bを用いて、ぼけ検出方式、光干渉方式等により距離を検出してもよい。或いは、光検出方式の代りに、例えば翼状片24a、24bを用いて、電磁式により離隔的に変位検出器等に代えることもできる。しかし、光検出方式は測定管11に対して力を作用することがないので、微小なコリオリ力に影響を与えることがなく、精度の良い流量測定が可能となる。
【0034】
測定管11の下方の基板16上には、測定管11内の測定流体を離隔的に光電式検出手段で測温する温度測定部15が配置されている。測定管11は測定流体の温度によって、温められたり冷やされると弾性係数が変化して、測定管11の共振振動数やねじれ面が微妙に変わるので、これらを補正するために測定管11内の流体を測温することが好ましい。なお、この測定流体はこのコリオリ式質量流量計以外の他の個所において測温していれば、この温度測定部15を用いて測温をする必要はない。
【0035】
図4は温度測定部15として使用される例えば赤外線放射温度計の構成図を示し、温度測定部15はレンズ光学系15aと温度検知素子15bとを有している。レンズ光学系15aは得られる赤外線により、透明又は半透明の合成樹脂製の測定管11内の測定流体と温度検知素子15bとを光学的に共役にする。温度検知素子15bは図示しない波長選択性光学フィルタを介して測定管11内の流体温度に依存する赤外線を検知して離隔的に非接触で測温する。
【0036】
この実施例1においては、磁気結合部12が永久磁石12cによる磁気作用体12aに対する磁気吸引力により曲管部11aを弾性的に引き寄せて保持し、加振駆動部13が加振体13aを介して測定管11を加振する。そして、たとえ測定管11が変形し易い材料であっても、曲管部11aは上部材21a、下部材21bにより保形されるので、測定管11の形状が変形することなく、安定した流量測定が可能となる。
【実施例2】
【0037】
図5は実施例2のコリオリ式質量流量計の斜視図である。実施例1と同一の符号は同一の部材を示している。
【0038】
往き管11b、戻り管11cを保持するホルダ25は、軽量化のために例えば1枚のアルミニウム板から成り、往き管11b、戻り管11cの上側(又は下側)に接着されている。ホルダ25の両側には外側に向けて翼状片26a、26bが張り出されており、ホルダ25の下側には加振駆動部13の加振体が取り付けられている。
【0039】
この実施例2においても、コリオリ力の発生原理は実施例1と同様であり、変位検出部14により、コリオリ力は翼状片26a、26bの変位として送受光部14a、14bで拡大して検出することができる。
【0040】
なお、実施例1、2では翼状片はホルダを介して取り付けたが、例えば合成樹脂製の翼状片を往き管11b、戻り管11cにそれぞれ直接取り付けることもできる。
【0041】
本明細書における上下とは、図面に対しての方向であり、必ずしも実際の装置における上下とは限らない。
【符号の説明】
【0042】
11 測定管
11a 曲管部
11b 往き管
11c 戻り管
12 磁気結合部
12a 磁気作用体
12b 磁性体保持部
12c 永久磁石
13 加振駆動部
13a 加振体
13b 電磁コイル
14 変位検出部
14a、14b 送受光部
15 温度測定部
16 基板
17 ハウジング
20、25 ホルダ
24a、24b、26a、26b 翼状片
【要約】
【課題】コリオリ力の検出感度を高めたコリオリ式質量流量計を得る。
【解決手段】合成樹脂製の測定管11のU字状の曲管部11aには、ホルダ20が取り付けられ、ホルダ20には外側に向けて板体状の翼状片24a、24bが張り出されている。流量に依存するコリオリ力による歪は往き管11bと戻り管11cに対し、曲管部11aの先端を通り往き管11bと戻り管11cに平行な中心線に対し対称的に発生するので、往き管11bと戻り管11cはホルダ20の中心線を中心として捩られることになり、この歪量を翼状片24a、24bにより梃子の原理で拡大して検出する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6