【実施例1】
【0015】
図1は実施例1のコリオリ式質量流量計の斜視図、
図2は要部の拡大断面図である。このコリオリ式質量流量計は主として、測定流体を一方向に流通する測定管11と、測定管11を所定の位置に磁気結合により離隔的に保持する磁気結合部12と、測定管11を加振する加振駆動部13と、測定管11の変位を検出する変位検出部14と、測定流体を測温する温度測定部15と、更にはこれらの機構に対し検出信号、制御信号を入出力し、測定流体の流量を演算する図示しない演算制御部とから成っている。
【0016】
測定管11は合成樹脂製の例えばフッ素樹脂管から成り、直径が例えば3.2mmで、中央部にU字状の曲管部11aを有している。なお、測定流体が腐蝕性を有していなければ、測定管11はフッ素樹脂管でなくとも通常の合成樹脂管であってもよい。しかし、測定管11は振動を十分に伝達可能とする硬度の弾性係数を有し、柔軟でない材質であることが必要である。測定管11の径等は1例であり、任意の径の測定管11を使用することもでき、或いは金属管であってもよい。
【0017】
測定管11の曲管部11aを境界とする往き管11bと戻り管11cの平行な2個所は、基板16上に配置されたハウジング17により挟着されることによって、測定管11はハウジング17に固定されている。従って、これらの固定位置よりも曲管部11a側の測定管11は、機械的な支持部がない自由端とされている。
【0018】
測定管11の曲管部11aには、例えば
図3に示すように重ねて使用する合成樹脂製のホルダ20が取り付けられており、ホルダ20は一対の板体状の上部材21a、下部材21bから成っている。このホルダ20は測定管11の剛性が十分でない場合に、曲管部11aの変形を防止する役割をも果している。
【0019】
これらの上部材21a、下部材21bの合わせ面には、曲管部11aと同形状の断面半円状の溝部22a、22bが形成されている。曲管部11a、往き管11b、戻り管11cに上下両側から上部材21a、下部材21bを重ね合わせて固定すると、曲管部11aは上部材21a、下部材21bにより挟み込まれて溝部22a、22b内に収納される。
【0020】
上部材21a、下部材21bの先端側には、それぞれ凹部23a、23bが形成され、この凹部23a、23b内に磁気結合部12の一部として機能する磁気作用体12aが配置されている。磁気作用体12aとは磁極面を前方に向けた永久磁石、又は鉄、コバルト、ニッケル、或いはこれらの合金などの強磁性体とされている。また、下部材21bの下面中央には、加振駆動部13の一部として機能する磁気作用体である加振体13aが埋没されている。更に、下部材21b又は上部材21aの往き管11b、戻り管11cの両側に、板体状の翼状片24a、24bが張り出されている。
【0021】
このように、曲管部11a、往き管11b、戻り管11cにホルダ20を固定することにより、ホルダ20の重量によって曲管部11aが垂れ下がり易くなるなどの課題が発生するので、曲管部11aを磁気結合部12の磁気吸引力により遠隔的に保持することが好適である。
【0022】
このために、ホルダ20には磁気作用体12aが配置され、磁気作用体12aに対向した前方の離隔位置に、合成樹脂製の磁性体保持部12bが基板16上に設けられている。磁性体保持部12bには、ホルダ20の磁気作用体12aと対向して、磁気結合部12の一部として機能する強力な例えばネオジム磁石などから成り、磁極面を磁気作用体12aに向けた永久磁石12cが配置されている。
【0023】
磁気作用体12aが永久磁石の場合には、対向する磁極同士は異極とされ、つまりS極とN極が対向するようにされている。従って、磁気結合部12の磁性体保持部12bの永久磁石12cは、磁気作用体12aを磁気吸引力により強力に吸引することにより、測定管11の曲管部11aを磁気結合により離隔的に保持する役割を果している。或いは、磁性体保持部12bに電磁コイルを配置し磁気作用体12aと電磁結合して磁気吸引力が発生するようにしてもよい。
【0024】
このように、測定管11の曲管部11aは、磁性体保持部12b側に強く引き寄せられている。従って、曲管部11aは磁性体保持部12bにより所定位置に保持され、測定管11内に測定流体を流入しても、曲管部11aがホルダ20や測定流体の重みで垂れ下がることもなく、測定管11の曲管部11aの位置は変化することなく保持される。
【0025】
また基板16上には、測定管11にコリオリ力を発生させるための加振駆動部13が設けられている。ホルダ20の下面の加振体13aの下方の基板16上には、電磁石である電磁コイル13bが設けられ、加振体13aと共働して測定管11を加振する加振駆動部13とされている。
【0026】
電磁コイル13bの鉄心13cに巻回したコイル13dに電流の方向を切換ながら通電し、鉄心13cの端部から発生する磁束の方向を切換えることにより、加振体13aに対し磁気吸引力、磁気反発力を繰り返して作用する。これにより加振体13a、ホルダ20を介して測定管11に非接触で所定の振動を加振できる。
【0027】
なお、この振動は測定管11の左右対称の中心位置に加えることが好ましい。また、振動数は測定管11中に測定流体を充満した状態における測定管1の共振周波数、或いはその整数倍とされ、通常はオートチューニングより求められた数10〜数100Hzであり、測定管11の弾性係数、形状、測定流体の種類によって異なる。
【0028】
なお、加振駆動部13による加振量は微少であるので、測定管11が磁気結合部12により保持されていても、測定管11を加振することができる。なお、加振駆動部13には、電磁コイル13b以外の他の加振駆動機構を使用することも可能である。また、加振体13aは永久磁石以外にも鉄、コバルト、ニッケル、又はこれらの合金から成る強磁性体であってもよい。
【0029】
流量測定中の測定管11の加振による変位の大きさ、つまりコリオリ力による歪量はホルダ20を介して翼状片24a、24bに伝達される。この歪量の大きさを検出するために、ホルダ20の翼状片24a、24bの下方の基板16上には、変位検出部14の送受光部14a、14bがそれぞれ配置されている。
【0030】
この変位検出部14では、送受光部14a、14bからの光ビームを光反射部となる翼状片24a、24bに向けて送光し、その反射光を送受光部14a、14bで受光して、反射光の位置ずれを検出する。この位置ずれにより送受光部14a、14bから翼状片24a、24bまでの距離、つまり送受光部14a、14bからの往き管11bと戻り管11cへの変位である距離の変化をそれぞれ測定する。
【0031】
コリオリ力による歪は曲管部11aの先端を通り往き管11bと戻り管11cに平行な中心線に対称的に往き管11bと戻り管11cに発生し、歪量はホルダ20を中心線と中心に往き管11bと戻り管11cを捩るように発生する。従って、この捩れ量を翼状片24a、24bを用いて、送受光部14a、14bにより梃子の原理で拡大して検出する。なお、これらの変位を基にした流量の算出のための演算方式等は公知なので、その説明は省略する。
【0032】
このように歪量の検出は、梃子の原理を用いて拡大して検出しているので、翼状片24a、24bの長さが大きいほど効果的である。翼状片24a、24bを使用することにより、これらを用いずに測定管11自体の変位をそのまま検出する場合と比較して、検出感度を大きく向上させることができる。
【0033】
なお、この変位検出部14は翼状片24a、24bを用いた位置ずれ検出方式により距離を測定しているが、翼状片24a、24bを用いて、ぼけ検出方式、光干渉方式等により距離を検出してもよい。或いは、光検出方式の代りに、例えば翼状片24a、24bを用いて、電磁式により離隔的に変位検出器等に代えることもできる。しかし、光検出方式は測定管11に対して力を作用することがないので、微小なコリオリ力に影響を与えることがなく、精度の良い流量測定が可能となる。
【0034】
測定管11の下方の基板16上には、測定管11内の測定流体を離隔的に光電式検出手段で測温する温度測定部15が配置されている。測定管11は測定流体の温度によって、温められたり冷やされると弾性係数が変化して、測定管11の共振振動数やねじれ面が微妙に変わるので、これらを補正するために測定管11内の流体を測温することが好ましい。なお、この測定流体はこのコリオリ式質量流量計以外の他の個所において測温していれば、この温度測定部15を用いて測温をする必要はない。
【0035】
図4は温度測定部15として使用される例えば赤外線放射温度計の構成図を示し、温度測定部15はレンズ光学系15aと温度検知素子15bとを有している。レンズ光学系15aは得られる赤外線により、透明又は半透明の合成樹脂製の測定管11内の測定流体と温度検知素子15bとを光学的に共役にする。温度検知素子15bは図示しない波長選択性光学フィルタを介して測定管11内の流体温度に依存する赤外線を検知して離隔的に非接触で測温する。
【0036】
この実施例1においては、磁気結合部12が永久磁石12cによる磁気作用体12aに対する磁気吸引力により曲管部11aを弾性的に引き寄せて保持し、加振駆動部13が加振体13aを介して測定管11を加振する。そして、たとえ測定管11が変形し易い材料であっても、曲管部11aは上部材21a、下部材21bにより保形されるので、測定管11の形状が変形することなく、安定した流量測定が可能となる。
【実施例2】
【0037】
図5は実施例2のコリオリ式質量流量計の斜視図である。実施例1と同一の符号は同一の部材を示している。
【0038】
往き管11b、戻り管11cを保持するホルダ25は、軽量化のために例えば1枚のアルミニウム板から成り、往き管11b、戻り管11cの上側(又は下側)に接着されている。ホルダ25の両側には外側に向けて翼状片26a、26bが張り出されており、ホルダ25の下側には加振駆動部13の加振体が取り付けられている。
【0039】
この実施例2においても、コリオリ力の発生原理は実施例1と同様であり、変位検出部14により、コリオリ力は翼状片26a、26bの変位として送受光部14a、14bで拡大して検出することができる。
【0040】
なお、実施例1、2では翼状片はホルダを介して取り付けたが、例えば合成樹脂製の翼状片を往き管11b、戻り管11cにそれぞれ直接取り付けることもできる。
【0041】
本明細書における上下とは、図面に対しての方向であり、必ずしも実際の装置における上下とは限らない。