(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、概して、ビーズと、有機バインダーと、その有機バインダー全体に分散した空隙と、を含む空隙を有するディフューザーコーティングに関する。有機バインダー全体に分散した空隙は、低屈折率(すなわち、「空気のような」)特性をもたらすことができる光学コーティングを作り出す。空隙を有するディフューザーコーティングは、液晶ディスプレイ用多層光学フィルム(MOF)が挙げられるがこれらに限定されない反射偏光子輝度上昇フィルムと組み合わせることができる。1つの特定の実施形態では、例えば、空隙を有するディフューザーコーティングでコーティングされたMOFは、液晶ディスプレイに積層することができ、高輝度及び良好なランプ隠蔽性能を有する独特なバックライト構造体を提供する。ほとんどのディフューザーコーティングと比較して、空隙を有するディフューザーコーティングは、バックライト方式ディスプレイ及びエッジライト方式ディスプレイの両方において、有意なゲイン増加を呈する。
【0015】
多くの場合、ディフューザー層は、散乱特性を上昇させるために、複数の有機又は無機ビーズを含むことができる。このようなビーズ入りディフューザーコーティングは、バックライトで使用されるライトバルブを隠蔽するために、液晶ディスプレイ(LCD)で使用することができる。ビーズ入りディフューザーは、LCDからの光の均一性を向上させることができる。しかしながら、典型的なビーズ入りディフューザーが光リサイクリングフィルムなどの光学フィルムの後ろ側に取り付けられる場合、これは光学フィルムのゲインを低減することができる。一部の場合には、ビーズ入りディフューザーのゲインは、ビーズをフィルムに固定するために使用されるバインダーとの光相互作用により、減少し得る。「空気のような」バインダーは、光学フィルムに取り付けられたビーズ入りディフューザーのゲインを増加させるために有効であり得る。
【0016】
1つの特定の実施形態では、低屈折率特性を有する空隙を有するディフューザーは、より良好な耐久性及び潜在的により高いコントラスト比を有すると共に、光の均一性を向上させながらゲイン(すなわち、輝度)を維持するか又は増加させるかのいずれかのフィルムを製造するために、輝度上昇フィルム(BEF)、多層光学フィルム(MOF)、吸収偏光子フィルム又は他の光学フィルムなどを含む光マネジメントフィルムの底面又は頂面上にコーティングすることができる。本明細書で用いるとき、光学構造体の「ゲイン」又は「光学ゲイン」は、光学構造体を持つ光学システム又はディスプレイシステムの軸方向出力輝度と、光学構造体を持たない同じ光学システム又はディスプレイシステムの軸方向出力輝度との比として定義されている。空隙を有するディフューザーは、例えば、2009年4月15日に申請された表題「光学フィルム」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65062US002号)に記載のものなどの、高ヘイズ/低屈折率の材料の代わりに使用することができる。
【0017】
バインダー組成物は概して、ある程度の低屈折率様光学特性を呈する。一部の開示されるバインダー組成物は、低い光学的ヘイズ及び低い有効屈折率、例えば約5%未満の光学的ヘイズ及び約1.35未満の有効屈折率を有する。開示される一部のバインダー組成物は、ある程度の低屈折率様光学特性、例えば、全内部反射を補助するか又は内部反射を強化する能力などを呈する一方で、高い光学的ヘイズ及び/又は高い散乱光反射率を有する。概して、バインダー組成物を組み込んだ空隙を有するディフューザーは、高い光学的ヘイズ及び低い光学的明澄度を有し、結果としてLCDディスプレイ内で効率的なバルブ隠蔽をもたらす。
【0018】
一部の場合では、開示される空隙を有するディフューザーは、例えばシステムの
再帰反射性、又はシステムによって表示される画像の軸上輝度及びコントラストなどのシステムの光学的特性のうち少なくとも一部を改善、維持、又は実質的に維持しながら、システムの耐久性を改善し、製造コストを削減し、システムの全体の厚さを低減させるために、例えば一般の照明システム、液晶ディスプレイシステム、又は
再帰反射光学システムなどの様々な光学システム又はディスプレイシステムに組み込むことができる。
【0019】
本明細書に開示される空隙を有するディフューザーは、典型的には、複数のビーズを相互連結する(すなわち、一緒につなげる)バインダー中に、複数の相互連結した空隙又は分散した空隙の網状組織を含むバインダー組成物を含む。本明細書で使用するとき、「ビーズ」は、寸法で概ね約1マイクロメートル(1ミクロン)を超える平均有効直径を有するものとして定義され、一方、「粒子」又は「ナノ粒子」は、寸法で概ね約1ミクロン未満の平均有効直径を有するものとして定義される。一部の場合では、しかしながら、個々の粒子又はナノ粒子は、寸法で最大約5ミクロンの範囲の平均有効直径を有することができる凝集体を形成し得る。有効直径は、概して、粒子又はビーズと同一の体積を有する球体の直径を意味する。
【0020】
複数の空隙又は空隙の網状組織のうち少なくとも一部は、空隙を有するトンネル又は空隙を有するトンネル様通路を介して相互に連結している。空隙は、物質及び/又は微粒子を必ずしも持たないわけではない。例えば、一部の場合では、空隙は、例えば、バインダー及び/又は粒子若しくはナノ粒子を含む、1つ以上の小さな繊維様物体又はひも様物体を含み得る。一部の場合では、空隙は、バインダーに取り付けられ得るか又は空隙内で遊離し得る、粒子又は粒子凝集体を含んでもよい。一部の開示される空隙を有するディフューザーは、集合的な複数の相互連結した空隙又は空隙の集合的な複数の網状組織を含み、ここで、複数の空隙又は空隙の網状組織は、相互連結している。一部の場合では、集合的な複数の相互連結した空隙に加えて、開示された空隙を有するディフューザーは、複数の閉じた又は未連結の空隙、つまり、トンネルを介して他の空隙に連結していない空隙を含む。
【0021】
一部の開示される空隙を有するディフューザーは、複数の空隙を含むことによって、内部全反射(TIR)又は強化内部反射(EIR)を補助する。光学的に透明な非多孔質媒質中を進行する光が、高度な多孔性を有する層に入射するとき、その入射光の反射率は、垂直入射と比べて、斜角にてはるかに高くなる。ヘイズのないあるいはヘイズの少ない空隙を有するフィルムの場合、臨界角を超える斜角における反射率は約100%に近くなる。そのような場合、入射光は内部全反射(TIR)を受ける。ヘイズの高い空隙を有するフィルムの場合、光がTIRを受けないことがあるにもかかわらず、斜角での反射率は、同様の入射角の範囲にわたって100%に近くなり得る。ヘイズの高いフィルムのこの強化反射率はTIRと類似しており、強化内部反射(EIR)として設計される。本明細書で使用するとき、多孔質又は空隙を有するディフューザー強化内部反射(EIR)により、フィルム又はフィルム積層体の空隙を有する層及び非空隙を有する層の境界における反射率が、空隙なしの場合よりも空隙ありの場合の方が大きいことを意味する。
【0022】
開示される空隙を有するディフューザーの空隙は、屈折率n
v及び誘電率ε
vを有し、ここで、n
v2=ε
vであり、バインダーは屈折率n
b及び誘電率ε
bを有し、ここで、n
b2=ε
bである。概して、光学フィルムに入射する光又は光学フィルム内を伝播する光などの光と空隙を有するディフューザーとの相互作用は、例えば、フィルムの厚さ、バインダーの屈折率、ビーズの屈折率及び分離、空隙又は孔の屈折率、孔の形状及び寸法、孔の空間分布、光の波長など多数のフィルム特性に応じて異なる。一部の場合には、空隙を有するディフューザーに入射する光又は空隙を有するディフューザー内を伝播する光は、有効誘電率ε
eff及び有効屈折率n
effを「経る」又は「経験」し、ここで、n
effは空隙屈折率n
v、バインダー屈折率n
b及び空隙有孔率又は体積分率「f」で表すことができる。このような場合、空隙を有するディフューザーは、十分に厚く、空隙は、光が単一又は単離された空隙の形状及び特徴を解像できないように十分に小さい。そのような場合、空隙の少なくとも60%又は70%又は80%又は90%など、少なくとも空隙の大多数の寸法は、約λ/5以下、又は約λ/6以下、又は約λ/8以下、又は約λ/10、又は約λ/20であり、ここでλは光の波長である。
【0023】
一部の場合には、開示される空隙を有するディフューザーに入射する光は可視光であり、つまり、その光の波長は、電磁スペクトルの可視域にある。このような場合、可視光は、約380nm〜約750nm、又は約400nm〜約700nm、又は約420nm〜約680nmの範囲の波長を有する。このような場合、空隙を有するディフューザーは、有効屈折率を有し、空隙の少なくとも大部分の、例えば、空隙の少なくとも60%又は70%又は80%又は90%の寸法が約70nm以下、又は約60nm以下、又は約50nm以下、又は約40nm以下、又は約30nm以下、又は約20nm以下、又は約10nm以下である場合、複数の空隙を含む。
【0024】
図1Aは、空隙の網状組織、又は相互連結した複数の空隙320と、場合によりバインダー310内にほぼ均一に分散した複数の粒子340と、を含むバインダー組成物300の概略断面図である。バインダー組成物300は、バインダー組成物内に空隙320の網状組織が存在することにより多孔質の内部を有している。一般に、バインダー組成物は、相互連結した孔又は空隙の1つ以上の網状組織を含み得る。例えば、空隙320の網状構造は、相互連結した空隙又は孔320A〜320Cを含むと見なされ得る。一部の場合では、バインダー組成物は多孔質フィルムであり、すなわち、空隙320の網状組織が、それぞれ、第一主表面330と第二主表面332との間に1つ以上の通路を形成する。
【0025】
空隙の網状組織は、相互連結した複数の空隙を含むと見なされ得る。空隙の一部はバインダー組成物の表面にある可能性があり、表面空隙であると見なされ得る。例えば、代表的なバインダー組成物300では、空隙320D及び320Eはバインダー組成物の第二主表面332にあり、表面空隙320D及び320Eとみなすことができ、空隙320F及び320Gはバインダー組成物の第一主表面330にあり、表面空隙320F及び320Gとみなすことができる。例えば、空隙320B及び320Cなどの一部の空隙は、バインダー組成物の内部にあり、バインダー組成物の外面からは離れており、例えば、内部空隙が他の空隙を介して主表面に連結し得るとしても内部空隙320B及び320Cとみなすことができる。
【0026】
空隙320は寸法d
1を有し、これは一般に、好適な組成物及び製造(例えばコーティング、乾燥及び硬化条件など)を選択することによって制御することができる。一般に、d
1は、任意の望ましい数値範囲内にある任意の望ましい値であり得る。例えば、一部の場合では、少なくとも大多数の空隙、例えば空隙の少なくとも60%又は70%又は80%又は90%又は95%が、望ましい範囲内にある寸法を有する。例えば、一部の場合では、少なくとも大多数の空隙、例えば空隙の少なくとも60%又は70%又は80%又は90%又は95%が、約10マイクロメートル以下、又は約7マイクロメートル以下、又は約5マイクロメートル以下、又は約4マイクロメートル以下、又は約3マイクロメートル以下、又は約2マイクロメートル以下、又は約1マイクロメートル以下、又は約0.7マイクロメートル以下、又は約0.5マイクロメートル以下の寸法を有する。
【0027】
一部の場合では、相互連結した複数の空隙320は、約5マイクロメートル以下、又は約4マイクロメートル以下、又は約3マイクロメートル以下、又は約2マイクロメートル以下、又は約1マイクロメートル以下、又は約0.7マイクロメートル以下、又は約0.5マイクロメートル以下の、平均空隙寸法又は平均孔径を有する。
【0028】
一部の場合では、一部の空隙は十分に小さいため、その主な光学的影響は有効屈折率を下げることであり、また一方で別の一部の空隙は、有効屈折率及び散乱光を低減させることができ、また一方で更に別の一部の空隙は十分に大きくてもよく、そのためその主な光学的影響は光を散乱させることである。
【0029】
任意の粒子340は、任意の望ましい数値範囲内にある任意の望ましい値であり得る寸法d
2を有する。例えば、一部の場合では、粒子の少なくとも60%又は70%又は80%又は90%又は95%など、粒子の少なくとも大部分が、望ましい範囲内の寸法を有する。例えば、一部の場合では、粒子の少なくとも60%又は70%又は80%又は90%又は95%など、粒子の少なくとも大部分が、約1マイクロメートル以下、又は約700nm以下、又は約500nm以下、又は約200nm以下、又は約100nm以下、又は約50nm以下の寸法を有する。
【0030】
一部の場合では、任意の複数の粒子340は、約1マイクロメートル以下、又は約700nm以下、又は約500nm以下、又は約200nm、又は約100nm以下、又は約50nm以下の平均粒径を有する。
【0031】
一部の場合では、一部の粒子は十分に小さいため、主に有効屈折率に影響をもたらすことができ、一方、別の一部の粒子は、有効屈折率及び散乱光に影響をもたらすことができ、一方、更に別の一部の粒子は十分に大きいため、その主な光学的影響は光を散乱させることである。
【0032】
一部の場合では、d
1及び/又はd
2は十分に小さいため、空隙及び任意粒子の主な光学的影響は、バインダー組成物300の有効屈折率に影響をもたらすことである。例えば、そのような場合、d
1及び/又はd
2は約λ/5以下、又は約λ/6以下、又は約λ/8以下、又は約λ/10以下、又は約λ/20以下であり、ここにおいてλは光の波長である。別の例として、そのような場合、d
1及びd
2は約70nm以下、又は約60nm以下、又は約50nm以下、又は約40nm以下、又は約30nm以下、又は約20nm以下、又は約10nmである。そのような場合、空隙及び任意粒子は光を散乱させ得るが、空隙及び任意粒子の主な光学的影響は、有効屈折率を有するバインダー組成物における有効な媒質を規定することである。この有効屈折率は、ある程度、空隙、バインダー、及び任意粒子の屈折率に依存する。一部の場合では、有効屈折率は低減された有効屈折率であり、すなわち、バインダーの屈折率及び任意粒子の屈折率よりも有効屈折率の方が低い。
【0033】
空隙及び/又は任意粒子の主な光学的影響が屈折率に影響を与えることである場合、d
1及びd
2は十分に小さいため、例えば、空隙320及び任意粒子340のうち少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%といったかなりの部分が、有効屈折率を低減させる主な光学的影響を有する。そのような場合、空隙及び/又は任意粒子のうち少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%といったかなりの部分が、約1nm〜約200nm、又は約1nm〜約150nm、又は約1nm〜約100nm、又は約1nm〜約50nm、又は約1nm〜約20nmの範囲内の寸法を有する。
【0034】
一部の場合では、任意粒子340の屈折率n
1はバインダー310の屈折率n
bに十分に近い値であり得、これにより有効屈折率は、粒子の屈折率に依存しないか、ごくわずかしか依存しない。そのような場合、n
1とn
bとの間の差は約0.05以下、又は約0.01以下、又は約0.007以下、又は約0.005以下、又は約0.003以下、又は約0.002以下、又は約0.001以下である。一部の場合では、任意粒子340は十分に小さく、その屈折率はバインダーの屈折率に十分に近いため、任意粒子は主に光を散乱させず、屈折率にも影響しない。そのような場合、任意粒子の主な影響は、例えば、バインダー組成物300の強度を向上させることができることである。一部の場合では、任意粒子340は、バインダー組成物の製造プロセスを強化することができるが、一般的にはバインダー組成物300は粒子無しで製造され得る。
【0035】
空隙320の網状組織及び任意粒子340の主な光学的影響が、有効屈折率に影響することであって、例えば光を散乱させることではない場合、空隙320及び任意粒子340によるバインダー組成物300の光学的ヘイズは、約5%以下、又は約4%以下、又は約3.5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2.5%以下、又は約2%以下、又は約1.5%以下、又は約1%以下である。そのような場合、バインダー組成物の有効媒質の有効屈折率は、約1.35以下、又は約1.3以下、又は約1.25以下、又は約1.2以下、又は約1.15以下、又は約1.1以下、又は約1.05以下である。
【0036】
一部の場合では、d
1及び/又はd
2は十分に大きいため、その主な光学的影響は光を散乱させかつ光学的ヘイズを生じさせることである。そのような場合、d
1及び/又はd
2は、約200nm以上、又は約300nm以上、又は約400nm以上、又は約500nm以上、又は約600nm以上、又は約700nm以上、又は約800nm以上、又は約900nm以上、又は約1000nm以上である。そのような場合、空隙及び任意粒子は屈折率にも影響し得るが、その主な光学的影響は光を散乱させることである。そのような場合、バインダー組成物への光入射は、空隙と任意粒子の両方により、散乱させることができる。
【0037】
一部の場合では、バインダー組成物300は、低い光学的ヘイズを有する。そのような場合、バインダー組成物の光学的ヘイズは、約5%以下、又は約4%以下、又は約3.5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2.5%以下、又は約2%以下、又は約1.5%以下、又は約1%である。そのような場合、バインダー組成物は低減した有効屈折率を有し得、それは約1.35以下、又は約1.3以下、又は約1.2以下、又は約1.15以下、又は約1.1以下、又は約1.05以下である。バインダー組成物300に垂直に入射する光について、本明細書で使用される場合、光学的ヘイズは、垂直方向から4度を超えて偏向している透過光と全透過光の比として定義される。本明細書で開示されているヘイズ値は、ASTM D1003に記載の手順に従い、Haze−Gard Plusヘイズ計(BYK−Gardner(Silver Springs,Md.))を使用して測定された。
【0038】
一部の場合、バインダー組成物300は、高い光学的ヘイズを有する。そのような場合、バインダー組成物のヘイズは、約40%以上、又は約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約95%以上である。一部の場合では、バインダー組成物300は、例えば、約5%〜約40%の光学的ヘイズといった、中間的光学的ヘイズを有することができる。
【0039】
一部の場合では、バインダー組成物300は、高い拡散反射率を有する。そのような場合、バインダー組成物の散乱光反射率は約30%以上、又は約40%以上、又は約50%以上、又は約60%以上である。
【0040】
一部の場合では、バインダー組成物300は、高い光学的明澄度を有する。バインダー組成物300に垂直に入射する光について、本明細書で使用するとき、光学的明澄度とは、比(T
1−T
2)/(T
1+T
2)を指し、ここで、T
1は垂直方向から1.6〜2度の偏差の透過光であり、T
2は垂直方向から0〜0.7度にある透過光である。本明細書で開示する明澄度値は、BYK−Gardnerより販売されるHaze−Gard Plusヘイズ計を使用して測定されたものである。バインダー組成物300が高度な光学的明澄度を有する場合、その明澄度は、約40%以上、又は約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約95%以上である。
【0041】
一部の場合では、バインダー組成物300は、低い光学的明澄度を有する。そのような場合、バインダー組成物の光学的明澄度は、約40%以下、又は約20%以下、又は約10%以下、又は約7%以下、又は約5%以下、又は約4%以下、又は約3%以下、又は約2%以下、又は約1%以下である。
【0042】
一般に、バインダー組成物、用途に望ましい可能性がある任意の多孔性又は空隙体積分率を有し得る。一部の場合では、バインダー組成物300中の複数の空隙320の体積分率は、約5%以上、又は約10%以上、又は約20%以上、又は約30%以上、又は約40%以上、又は約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約80%以上、又は約90%以上である。
【0043】
一部の場合では、バインダー組成物は、たとえ高い光学的ヘイズ及び/又は散乱反射率を有していたとしても、ある程度の低屈折率特性を呈し得る。例えば、そのような場合、バインダー組成物は、バインダー310の屈折率n
bよりも小さい屈折率に対応する角度でのTIRを補助することができる。
【0044】
代表的なバインダー組成物300では、粒子340A及び340Bなどの任意粒子340は、中実粒子である。一部の場合では、バインダー組成物300は、追加又は代替として、複数の空隙を有する又は多孔質粒子350を含み得る。
【0045】
任意粒子340は、用途に望ましい可能性がある任意のタイプの粒子であってよい。例えば、任意粒子340は、有機又は無機粒子、あるいは有機粒子と無機粒子の組み合わせであることができる。粒子は中実粒子であることでき、あるいは、粒子は発泡などの空隙を有する粒子であることができる。1つの特定の実施形態では、有機粒子は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリシルセスキオキサン、シリコーン及びこれらに類するものなどのポリマーから作製することができる。1つの特定の実施形態では、無機粒子は、例えば、ガラス又はセラミックス及びこれらに類するものから作製することができる。例えば、粒子340はシリカ、酸化ジルコニウム、又はアルミナの粒子であり得る。
【0046】
任意粒子340は、用途に望ましい可能性がある又は入手可能であり得る任意の形状を有してよい。例えば、任意粒子340は規則的な形状又は不規則な形状を有し得る。例えば、任意粒子340は、ほぼ球状であることができる。別の例としては、任意粒子は、細長いものであることができる。そのような場合、バインダー組成物300は、複数の細長粒子340を含む。一部の場合では、細長粒子は、約1.5以上、又は約2以上、又は約2.5以上、又は約3以上、又は約3.5以上、又は約4以上、又は約4.5以上、又は約5以上の平均縦横比を有する。一部の場合では、粒子は、ヒュームドシリカなど、数珠状の真珠(Nissan Chemical(Houston,TX)から入手可能なSnowtex−PS粒子など)又は凝集した鎖状の球形又は無形粒子の形態又は形状をなしてよい。
【0047】
任意粒子340は、
官能基化されてもよく、
官能基化されなくてもよい。一部の場合では、光学粒子340は、
官能基化されない。一部の場合では、任意粒子340は
官能基化されており、それにより、凝集することなく、又は凝集することがほとんどなく、所望の溶媒又はバインダー310に分散させることができる。一部の場合では、任意粒子340は、バインダー310に化学結合するよう更に
官能基化することができる。例えば、任意粒子340(例えば粒子340A)は、表面を改質し、反応性の官能基、すなわち反応性基360がバインダー310に化学結合するようにすることができる。そのような場合、任意粒子340のうち少なくともかなりの割合が、バインダーと化学結合される。一部の場合では、任意粒子340は、バインダー310に化学結合した反応性官能基を有していない。そのような場合、任意粒子340はバインダー310に物理的に結合させることができる。
【0048】
一部の場合では、任意粒子の一部は反応性基を有し、他の粒子は反応性基を有さない。例えば、一部の場合では、約10%の任意粒子が反応性基を有し約90%の任意粒子が反応性基を有さず、又は約15%の任意粒子が反応性基を有し約85%の任意粒子が反応性基を有さず、又は約20%の任意粒子が反応性基を有し約80%の任意粒子が反応性基を有さず、又は約25%の任意粒子が反応性基を有し約75%の任意粒子が反応性基を有さず、又は約30%の任意粒子が反応性基を有し約60%の任意粒子が反応性基を有さず、又は約35%の任意粒子が反応性基を有し約65%の任意粒子が反応性基を有さず、又は約40%の任意粒子が反応性基を有し約60%の任意粒子が反応性基を有さず、又は約45%の任意粒子が反応性基を有し約55%の任意粒子が反応性基を有さず、又は約50%の任意粒子が反応性基を有し約50%の任意粒子が反応性基を有さない。一部の場合では、一部の任意粒子は、同一粒子において反応性基と非反応性基の両方で
官能基化されてもよい。
【0049】
任意粒子の集合は、大きさが混在したもの、反応性及び非反応性の粒子、異なるタイプの粒子(例えばシリカと酸化ジルコニウム)を含み得る。
【0050】
バインダー310は、用途に望ましい可能性がある任意の材料であり得、又はそのような材料を含み得る。例えば、バインダー310は、架橋ポリマーなどのポリマーを形成する紫外線硬化性材料であり得る。概して、バインダー310は、例えば、放射線硬化性である重合性材料又は熱硬化性である重合性材料といった、任意の重合性材料であることができる。1つの特定の実施形態では、バインダー310は、開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2009年4月15日に申請された表題「ナノ空隙を有する物品のためのプロセス及び装置」の同時係属中出願(代理人整理番号第65046US002号)に記載されているものなどの相溶性である非重合性ポリマーとの任意の重合性材料の混合物であることができる。
【0051】
バインダー組成物300は、用途に望ましい可能性がある任意の方法を使用して製造することができる。一部の場合では、バインダー組成物300は、どちらも2009年4月15日に申請された表題「ナノ空隙を有する物品のためのプロセス及び装置」の同時係属中出願(代理人整理番号第65046US002号)及び表題「欠陥を低減してコーティングするためのプロセス及び装置」の同時係属中出願(代理人整理番号第65185US002号)、並びに、更にはどちらも同日付で申請された表題「低屈折率分布物品及び方法」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65716US002号)及び表題「勾配ナノ空隙を有する物品のためのプロセス」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65766US002号)に記載のプロセスにより製造することができ、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。1つのプロセスでは、最初に、溶媒に溶かした複数の任意粒子(例えばナノ粒子)及び重合性材料を含む溶液を調製し、ここで、重合性材料は例えば、1つ以上のタイプのモノマー及び/又はオリゴマーを含み得る。次に、例えば熱又は光を適用することにより、重合性材料を重合させて、溶媒中に不溶性のポリマーマトリックスを形成する。場合によっては、重合工程の後、まだ重合性材料の一部が溶媒に低濃度ながら残っていることがある。次に、溶液を乾燥又は蒸発させることによって溶媒を除去し、ポリマーバインダー310中に分散された空隙320の網状構造又は複数の空隙320を含むバインダー組成物300がもたらされる。バインダー組成物は、ポリマー中に分散された複数の任意粒子340を更に含む。任意粒子はバインダーに結合し、ここで、結合は物理的又は化学的であることができ、あるいは、バインダーにより封入されてもよい。
【0052】
バインダー組成物300は、バインダー310及び任意粒子340に加えて、他の材料を有することができる。例えば、バインダー組成物300は、1つ以上の添加剤、例えばカップリング材などを含んで、バインダー組成物が形成される基材表面(
図1Aには明示されていない)を湿潤させるのを助けることができる。別の例として、バインダー組成物300は、バインダー組成物に色(例えば黒色)を付与するための1つ以上の着色剤(例えばカーボンブラック)を含むことができる。バインダー組成物300の他の代表的な材料としては、反応開始剤(例えば1つ以上の光反応開始剤)、帯電防止剤、紫外線吸収剤、及び剥離剤が挙げられる。一部の場合では、バインダー組成物300は、光を吸収してより長い波長の光を再放射することができるダウンコンバート材料を含むことができる。代表的なダウンコンバート材料には燐光体が挙げられる。
【0053】
概して、バインダー組成物300は、バインダー310と複数の任意粒子340の任意の重量比での望ましい多孔性を有することができる。したがって、重量比は概して、用途に望ましい可能性がある任意の値であり得る。一部の場合では、バインダー310と複数の粒子340の重量比は、約1:2.5以上、又は約1:2.3以上、又は約1:2以上、又は約1:1以上、又は約1.5:1以上、又は約2:1以上、又は約2.5:1以上、又は約3:1以上、又は約3.5:1以上、又は約4:1以上、又は約5:1以上である。一部の場合では、この重量比は約1:2.3〜約4:1の範囲内である。
【0054】
一部の場合では、バインダー組成物300の上主表面332は、例えば、バインダー組成物の別の層への接着を改善するために処理することができる。例えば、この上表面はコロナ処理することができる。
【0055】
図1Bは、本開示の一態様による空隙を有するディフューザー100の概略側面図である。
図1Bでは、空隙を有するディフューザー100は、基材380上に配置された空隙を有するディフューザーコーティング110を備える。空隙を有するディフューザーコーティング110は、複数のビーズ370と接触しているバインダー組成物300を含む。バインダー組成物300は、
図1Aを参照しながら、先述した。一部の場合では、空隙を有するディフューザー100は、空隙を有するディフューザーコーティング110内の複数の間隙375を更に含むことができ、これは例えば、複数のビーズ370を積み重ねることにより、及び/又は、バインダー組成物300が崩壊することにより、形成され得る。一部の場合では、複数の間隙375は、バインダー組成物300と複数のビーズ370の比を、この比が「傾いている」ように、すなわち、バインダー組成物300の最小限の量が例えば、バインダー300と複数のビーズ370の比が約1:1未満、約2:3未満、約1:2未満、又は約1:3未満であるといったように使用されるように、調整することにより、空隙を有するディフューザー100の中に形成され得る。
【0056】
空隙を有するディフューザー100は、例えば、どちらも2009年4月15日に申請された表題「欠陥を低減してコーティングするためのプロセス及び装置」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65185US002号)及び表題「ナノ空隙を有する物品のためのプロセス及び装置」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65046US002号)、並びに、更にはどちらも同日付で申請された表題「低屈折率分布物品及び方法」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65716US002号)及び表題「勾配ナノ空隙を有する物品のためのプロセス」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65766US002号)に記載の、コーティング溶液中にビーズ370を含ませることにより、調製することができる。
【0057】
1つの特定の実施形態では、ビーズ370は、無機ビーズ、有機ビーズ、又は無機ビーズと有機ビーズの組み合わせであることができる。ビーズは、中実ビーズ、多孔質ビーズであることができ、あるいは、ビーズは発泡などの空隙を有するビーズであることができる。1つの特定の実施形態では、有機ビーズは、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリシルセスキオキサン、シリコーン及びこれらに類するものなどのポリマーから作製することができる。1つの特定の実施形態では、無機ビーズは、例えば、ガラス又はセラミックス及びこれらに類するものから作製することができる。
【0058】
ビーズ370は、用途に望ましい可能性がある又は入手可能であり得る任意の形状を有してよい。例えば、ビーズ370は、球形又は非球形状を有することができる。例えば、ビーズ370は、例えば、(日本、大阪)又は綜研化学株式会社(日本、東京)から入手可能であるものなどの、球形ビーズであることができる。別の例では、ビーズ370は、積水化成品工業株式会社から入手可能な半球形両凸レンズ形状ビーズ又は綜研化学株式会社から入手可能な血球形状ビーズ不規則形状のビーズであることができる。1つの特定の実施形態では、ビーズ370は、他所に記載の任意粒子340上の反応性官能基と同様に、バインダーに化学結合可能な反応性官能基を含むことができる。
【0059】
ビーズ370は、任意の望ましい数値範囲内にある任意の望ましい値であり得る寸法を有する。例えば、一部の場合では、少なくとも大多数のビーズ、例えばビーズの少なくとも60%又は70%又は80%又は90%又は95%が、望ましい範囲内にある寸法を有する。例えば、一部の場合では、少なくとも大多数のビーズ、例えばビーズの少なくとも60%又は70%又は80%又は90%又は95%が、約1マイクロメートル以上、又は約2マイクロメートル以上、又は約3マイクロメートル以上、又は約4マイクロメートル以上、又は約5マイクロメートル以上、又は約7マイクロメートル以上、又は約10マイクロメートル以上の寸法を有する。
【0060】
一部の場合では、複数のビーズ370は、約1マイクロメートル以上、又は約2マイクロメートル以上、又は約3マイクロメートル以上、又は約4マイクロメートル以上、又は約5マイクロメートル以上、又は約7マイクロメートル以上、又は約10マイクロメートル以上の平均寸法を有する。一部の場合では、一部のビーズは、これらの主な光学的影響が光を散乱することであるべく十分に大きいものであることができる。
【0061】
図1Cは、本開示の一態様による空隙を有するディフューザー100’の概略側面図である。
図1Cでは、空隙を有するディフューザー100’は、基材380上に配置された空隙を有するディフューザーコーティング110’を備える。空隙を有するディフューザーコーティング110’は、複数のビーズ370と接触しているバインダー組成物300を含む。バインダー組成物300は、
図1Aを参照しながら、先述した。一部の場合では、空隙を有するディフューザー100’は、
図1Bに示されているあらゆる有意な間隙375を除いてもよく、バインダー組成物300は、例えば、複数のビーズ370とバインダー300の比が約1:3以上、約1:2以上、約3:2以上又は約1:1以上である場合のように、複数のビーズ370を完全に包囲してもよい。
【0062】
空隙を有するディフューザー100は、例えば、どちらも2009年4月15日に申請された表題「欠陥を低減してコーティングするためのプロセス及び装置」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65185US002号)及び表題「ナノ空隙を有する物品のためのプロセス及び装置」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65046US002号)、並びに、更にはどちらも同日付で申請された表題「低屈折率分布物品及び方法」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65716US002号)及び表題「勾配ナノ空隙を有する物品のためのプロセス」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65766US002号)に記載の、コーティング溶液中にビーsズ370を含ませることにより、調製することができる。
【0063】
図2は、基材610の上に配置された空隙を有するディフューザー630を含む光学構造体600の概略側面図である。一部の場合では、基材610は移動可能な空隙を有するディフューザー630をもたらす剥離ライナーであり、これはすなわち、例えば、空隙を有するディフューザー630の露出した上主表面632が、基材又は表面に接触して設置され、その後で剥離ライナーを空隙を有するディフューザーから剥がすことにより、空隙を有するディフューザーの下主表面634を露出させ、これを例えば、別の基材又は表面に接着させることができる。剥離ライナー610から空隙を有するディフューザー630を剥がすための剥離力は概して、約200gf/インチ(0.77N/cm)未満、又は約150gf/インチ(0.58N/cm)未満、又は約100gf/インチ(0.39N/cm)未満、又は約75gf/インチ(0.29N/cm)未満、又は約50gf/インチ(0.19N/cm)未満である。
【0064】
空隙を有するディフューザー630は、本明細書に開示されている任意の空隙を有するディフューザーと同様であることができる。例えば、空隙を有するディフューザー630は、空隙を有するディフューザー100、100’のうちの1つと同様であることができる。一部の場合では、空隙を有するディフューザー100、100’のうちの1つは、基材610上に直接コーティングされてもよい。一部の場合では、空隙を有するディフューザー100、100’のうちの1つは、まず形成されてから、その後、基材610上に移されてもよい。基材610は、半透明、透明、又は不透明であり得る。
【0065】
基材610は、用途に好適であり得る任意の材料であり得るか、又はそのような材料を含み得、例えば誘電体、半導体、又は導体(金属など)であり得る。例えば、基材610は、ガラス、並びに、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、及びアクリルなどのポリマーを含んでも、それらで作られていてもよい。一部の場合では、基材610は、反射偏光子、吸収偏光子、ワイヤグリッド偏光子又は繊維偏光子などの、偏光子を含むことができる。一部の場合では、基材610は、例えば、多層反射フィルム及び多層偏光フィルムといった多層光学フィルムのような多層を備えることができる。一部の場合では、基材610は、例えば、プリズム又はレンズの配列といった複数の微細構造を有する主表面のような構造化表面を備えることができる。一部の場合では、基材610は、例えば、プライマーコーティングといった主表面上に更なるコーティングを備えることができる。
【0066】
本明細書で使用するとき、繊維偏光子は、バインダー内に埋め込まれた1つ以上の層の繊維を形成する複数の実質的に平行な繊維を備え、バインダー及び繊維の少なくとも1つが複屈折材料を含む。実質的に平行な繊維は、透過軸及び反射軸を画定する。繊維偏光子は、透過軸に平行に偏光された入射光を実質的に透過し、反射軸に平行に偏光された入射光を実質的に反射する。繊維偏光子の例は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,599,592号及び同第7,526,164号に記載されている。
【0067】
一部の場合では、基材610は、部分反射子を備えることができる。部分反射子は、少なくとも30%の入射光を反射する一方で残部から吸収損失をマイナスした分を透過する、光学素子又は光学素子の集合体である。好適な部分反射子としては、例えば、発泡体、偏光及び非偏光多層光学フィルム、微細複製構造(例えば、BEF)、偏光及び非偏光ブレンド、ワイヤグリッド偏光子、銀又はニッケルなどの部分的透過性金属、銀と酸化インジウムスズなどの金属/誘電体積層体、並びに非対称光学フィルムが挙げられる。非対称光学フィルムは、例えば、米国特許第6,924,014号(Ouderkirkら)に及び国際公開第2008/144636号にも記載されている。例えば、高鏡面反射子(ESR、3M Companyから入手可能)といった、穿孔部分反射子又は鏡は、部分反射子として有用でもある。
【0068】
1つの特定の実施形態では、基材610は、反射偏光子であることができる。反射偏光子層は、第一偏光状態を有する光を実質的に反射し、第二偏光状態を有する光を実質的に透過させるものであり、ここで、これら2つの偏光状態は互いに直交するものである。例えば、可視光領域で反射偏光子によって実質的に反射される偏光状態における反射偏光子の平均反射率は、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%である。別の例として、可視光領域で反射偏光子によって実質的に透過される偏光状態における反射偏光子の平均透過率は、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約97%、又は少なくとも約98%、又は少なくとも約99%である。一部の場合では、反射偏光子は、第一直線偏光状態を有する光を(例えば、x方向に沿って)実質的に反射し、第二直線偏光状態を有する光を(例えば、z方向に沿って)実質的に透過する。
【0069】
任意の好適なタイプの反射偏光子、例えば、多層光学フィルム(MOF)反射偏光子(Vikuiti(商標)Dual Brightness Enhancement Film(DBEF)など)、連続相及び分散層を有する拡散反射偏光フィルム(DRPF)(3M Company(St.Paul,Minnesota)から入手可能なVikuiti(商標)Diffuse Reflective Polarizer Film(「DRPF」)など)、例えば、米国特許第6,719,426号に記載されるワイヤグリッド反射偏光子、又はコレステリック反射偏光子などを用いてもよい。
【0070】
例えば、一部の場合では、反射偏光層は、異なるポリマー材料の交互層で形成されるMOF反射偏光子であるか、これを含むことができ、一連の交互層の1つは複屈折材料で形成され、ここで、異なる材料の屈折率は、1つの直線偏光状態で偏光された光に一致し、直交直線偏光状態の光には一致しない。そのような場合、一致した偏光状態の入射光は、反射偏光子を実質的に透過し、一致しない偏光状態の入射光は、反射偏光子によって実質的に反射される。一部の場合では、MOF反射偏光子は無機誘電体層の積層体を含んでもよい。
【0071】
別の例として、反射偏光子は、透過状態において中間的な軸上平均反射率を有する部分反射層であるか、又はこれを含んでもよい。例えば、部分反射層は、xy平面など第一面で偏光された可視光線に関して少なくとも約90%の軸上平均反射率を有し、第一面に垂直のx−z平面など第二面で偏光された可視光線に関して約25%〜約90%の範囲の軸上平均反射率を有することができる。そのような部分反射層は、例えば、米国特許出願公開第2008/064133号に記載されており、この開示の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0072】
一部の場合では、反射偏光子は、円反射偏光子であるか、これを含んでよく、ある観点(時計回り又は反時計回りの観点であってもよく、右円偏光又は左円偏光とも呼ばれる)では円偏光した光が優先的に透過され、反対の観点で偏光された光は優先的に反射される。円偏光子の一種としてはコレステリック液晶偏光子が挙げられる。
【0073】
一部の場合では、反射偏光子は、米国特許仮出願第61/116132号(2008年11月19日出願);同第61/116291号(2008年11月19日出願);同第61/116294号(2008年11月19日出願);同第61/116295号(2008年11月19日出願);同第61/116295号(2008年11月19日出願);及び同第60/939085号(2007年5月20日出願)からの優先権を主張している国際出願PCT/US 2008/060311号(2008年5月19日出願)に記載されるものなどの、光学干渉によって光を反射又は透過する多層光学フィルムであってよく、これら全てはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
1つの特定の実施形態では、基材610は、プリズム状導光フィルムなどの光微細構造化表面であることができる。例えば、空隙を有するディフューザー630は、3M Companyから入手可能なVikuiti(商標)Brightness Enhancing Film(BEF)などの導光フィルムのプリズム面にコーティングすることができる。BEFは、ピッチ24マイクロメートル、プリズムピーク又は頂角が約90度の複数の線状プリズムを含む。
【0075】
光学構造体600中のそれぞれ2つの隣接する主表面の実質的部分は、空隙を有するディフューザー630の下主表面634に沿って互いに物理的に接触している。例えば、隣接する2つの主表面の少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%が、互いに物理的に接触する。例えば、一部の場合では、空隙を有するディフューザー630は、基材610上に直接コーティングされる。
【0076】
図3は、光学構造体700の概略側面図であり、基材710上に配置された空隙を有するディフューザー730、及び空隙を有するディフューザー730上に配置された光学接着層720を含む。基材710は、他の箇所で記載の基材のいずれかであることができ、例えば、
図2を参照しながら記載した基材610などの基材が挙げられる。一部の場合では、光学接着層720は、空隙を有するディフューザー730の空隙が湿潤するのを抑止するシーラーとして働くことができる。一部の場合では、光学接着層720及び空隙を有するディフューザー730を、基材710の相対する面に有することが望ましい場合がある。他の場合では、空隙を有するディフューザー730を基材710の両面に有することが望ましい場合がある。
【0077】
光学接着層720は、用途に望ましい及び/又は利用できる可能性がある任意の光学接着剤であり得る。光学接着層720は十分な光の質及び光安定性を有するものであり、例えば、経時的に又は天候への曝露時に接着層が黄ばみ、接着剤及び空隙を有するディフューザーの光学性能を劣化させることがない。一部の場合では、光学接着層720は実質的に透明な光学接着剤であり、すなわち、接着層は高い鏡面透過性及び低い散乱透過性を有する。例えばそのような場合、光学接着層720の鏡面透過性は、約70%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約95%以上である。
【0078】
一部の場合では、光学接着層720は、実質的に光拡散性であり、すなわち、接着層は高い拡散透過性及び低い鏡面透過性を有し、光学接着層720は、白色の外観を有することができる。例えば、そのような場合、光学拡散性接着層720の光学ヘイズは、約30%以上、又は約30%以上、又は約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約95%以上である。ある場合には、拡散性接着層の拡散反射率は、約20%以上、又は約30%以上、又は約40%以上、又は約50%以上、又は約60%以上である。そのような場合、接着層は、光学接着剤中に分散された複数の粒子を含めることによって光学的に拡散性となり得るが、ここで、粒子と光学接着剤は、異なる屈折率を有するものである。2つの屈折率が整合しないことにより、結果として、光が散乱し得ることになる。
【0079】
代表的な光学接着剤としては、感圧性接着剤(PSA)、感熱性接着剤、溶媒揮発性接着剤、再付着性接着剤又は再加工性接着剤、及び紫外線硬化性接着剤(Norland Products,Inc.から入手可能な紫外線硬化性光学接着剤など)が挙げられる。
【0080】
代表的なPSAとしては、天然ゴム、合成ゴム、スチレンブロック共重合体、アクリル(メタクリル)ブロック共重合体、ポリビニルエーテル、ポリオレフィン、及びポリアクリレート(ポリメタクリレート)に基づいたものが挙げられる。本明細書で用いるとき、アクリル(メタクリル)(又はアクリレート(メタクリレート))は、アクリルとメタクリルの両方を指す。他の代表的なPSAとしては、アクリレート(メタクリレート)、ゴム、熱可塑性エラストマー、シリコーン、ウレタン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。一部の場合では、PSAは、アクリル(メタクリル)PSA又は少なくとも1つのポリアクリレート(ポリメタクリレート)に基づくものである。例示的なシリコーンPSAとしては、ポリマー又はゴム、及び任意の粘着性樹脂が挙げられる。他の代表的なシリコーンPSAとしては、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミド、及び任意の粘着付与樹脂が挙げられる。
【0081】
空隙を有するディフューザー730は、本明細書に開示されている任意の空隙を有するディフューザーと同様であることができる。例えば、空隙を有するディフューザー730は、空隙を有するディフューザー100、100’のうちの1つと同様であることができる。
【0082】
図4は、基材810上に配置された低屈折率コーティング820と、低屈折率コーティング820上に配置された空隙を有するディフューザー830と、空隙を有するディフューザー830上に配置された任意光学接着層840と、を備える光学構造体800の概略側面図である。一部の場合では(図示せず)、任意光学接着層840は、代わりに(又は更に)、低屈折率コーティング820の反対面の、基材810上に配置することができる。基材810は、他箇所に記載の基材のいずれかであることができ、例えば、
図2を参照しながら記載した基材610などの基材が挙げられる。低屈折率コーティング820は、例えば、2009年4月15日に申請された表題「光学フィルム」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65062US002号)並びにどちらも同日付で申請された表題「低屈折率分布物品及び方法」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65716US002号)及び表題「勾配ナノ空隙を有する物品のためのプロセス」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65766US002号)に記載のものなどの任意の好適な低屈折率コーティングであることができる。任意光学接着層840は、光学接着層720と同様であることができる。一部の場合では、低屈折率コーティング820及び任意光学接着層840は、同じ屈折率を有する。一部の場合では、これらは異なる屈折率を有することができる。
【0083】
空隙を有するディフューザー830は、本明細書に開示されている任意の空隙を有するディフューザーと同様であることができる。例えば、空隙を有するディフューザー830は、空隙を有するディフューザー100、100’のうちの1つと同様であることができる。
【0084】
開示するフィルム、層、構造体、及びシステムの利点のいくつかについて、以下の例で更に説明する。この実施例に記載する特定の材料、量、及び寸法、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に限定するように解釈されるべきではない。
【0085】
実施例において、屈折率は、Metricon Model 2010 Prism Coupler(Metricon Corp.(Pennington,NJ)から入手可能)を使用して測定されたものである。光透過性及びヘイズは、Haze−Gard Plusヘイズ計(BYK−Gardner(Silver Springs,MD)から入手可能)を使用して測定された。
【実施例】
【0086】
材料及びそれらの出所の以下の一覧は、実施例全体を通して参照される。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例1−明澄度を低下させた空隙を有するディフューザー(「ゲル化空隙を有するディフューザー」)
33gの綜研TS−35C PMMAビーズと90gのIPAと27gのSR502と0.6gのEsacure Oneとを急速に撹拌しながら混合することにより、コーティング配合物を調製した。下記の様々な速度にて注射ポンプによりコーティング配合物を10.2cm(4インチ)幅スロットタイプコーティングダイの中にコーティングした。スロットコーティングダイは、5フィート/分(152cm/分)で動く2ミル(50μm)基材上に10.2cm幅コーティングを均一に分配した。
【0089】
次に、紫外線の通過を可能にする石英窓を含むUV−LED硬化チャンバーに、コーティングされた基材を通すことによって、塗料を重合させた。UV−LEDバンクは、352個(16個のダウンウェブ×22個のクロスウェブ)のUV−LEDの矩形配列を含んだ(約20.3cm×20.3cmの領域を対象とする)。このUV−LEDを、2つの水冷式ヒートシンクの上に配置した。LED(Cree,Inc.(Durham NC)から入手可能)を公称395nmの波長にて操作し、45ボルト及び10アンペアにて稼働したところ、1平方cm当たり0.108ジュールのUV−A量をもたらした。TENMA 72−6910(42V/10A)に電力供給機(Tenma(Springboro OH))により、UV−LED配列を通電し、ファンで冷却した。UV−LEDを、基材から約2.54cmの距離を置いて硬化チャンバーの石英窓の上に配置した。UV−LED硬化チャンバーには、1時間当たり46.7リットル/分(100立方フィート)の流量の窒素流が供給され、これにより硬化チャンバー内の酸素濃度は約150ppmとなった。
【0090】
UV−LEDによる重合後、コーティングを150°F(66℃)で動作する乾燥炉に2分間にわたり5フィート/分(152cm/分)のウェブ速度で移送することにより硬化コーティング内の溶媒を除去した。次に、乾燥したコーティングを、H型バルブを備えて構成されたFusion System Model I300P(Fusion UV Systems,Inc.(Gaithersburg MD)から入手可能)を使用して後硬化させた。UV Fusionチャンバーに、結果としてチャンバー内に約50ppmの酸素濃度を生じる窒素流を供給した。得られたディフューザーのPET面から透過率パーセント(%T)、ヘイズパーセント(%H)、明澄度パーセント(%C)を測定し、得られたディフューザーのコーティングされた面からは%Tも測定した。各コーティングについての測定結果を表1に要約する。
【0091】
【表2】
【0092】
表1に示しているように、PMMAビーズ/SR502混合物は、UV−LEDをオフにした状態でPET基材上にコーティングした(サンプル53a〜56a)。これらのサンプルでは、後硬化源によりコーティングが硬化する前に、溶媒を除去した。得られたディフューザーコーティングは、高透過度、高ヘイズ及び低明澄度を示した。ディフューザーのPET面から測定された%Tとコーティング面から測定された%Tの有意な差は、表面ディフューザーコーティングを示唆する。
【0093】
UV−LEDをオンにした状態で(サンプル57a〜65a)UV−LED硬化後に溶媒を除去したところ、コーティングの外観は半透明から白色に変化した。ディフューザーのPET面及びディフューザーのコーティング面の両方から測定した%Tは、互いに非常に近接しており、体積ディフューザー(すなわち、空隙を有するディフューザー)コーティングを示唆する。
【0094】
実施例2−明澄度を低下させた空隙を有するディフューザー(「ゲル化空隙を有するディフューザー」)
30gの綜研TS−35C PMMAビーズと86gのIPAと27.4gのSR415と0.7gのEsacure Oneとを急速に撹拌しながら混合することにより、コーティング配合物を調製した。下記の様々な速度にて注射ポンプによりコーティング配合物を10.2cm(4インチ)幅スロットタイプコーティングダイの中にコーティングした。スロットコーティングダイは、5フィート/分(152cm/分)で動く2ミル(50μm)基材上に10.2cm幅コーティングを均一に分配した。重合、乾燥及び後硬化は、実施例1で提供されたものと同じであった。
【0095】
得られた空隙を有するディフューザーのPET面から透過率パーセント(%T)、ヘイズパーセント(%H)、明澄度パーセント(%C)を測定した。各コーティングについての測定結果を表2に要約する。
【0096】
【表3】
【0097】
図5Aは、表2に示されているサンプル102aによるディフューザー(溶媒除去後硬化させたもの)の走査型電子顕微鏡断面写真を示す。
図5Bは、表2のサンプル106bによる空隙を有するディフューザーの走査型電子顕微鏡断面写真を示す。より多孔質の構造が溶媒除去前にUV−LED重合を行う場合に観察される。
【0098】
フィルムの表面の全域でスタイラスに取り付けたフェルトパッドを振動させることができる機械装置を使用することにより、コーティング方向に対してクロスウェブに実施例1から選択されたディフューザーサンプルの耐久性を測定した。スタイラスは、210mm/秒の速度にて60mmの掃引幅にわたって振動した(ここで1回の掃引は、60mmの1回の移動として定義される)。スタイラスは、直径3.2cmの平らな円筒形ベース部の形状を有していた。このスタイラスは、フィルムの表面に対して垂直にフェルトパッドによってかかる力を増加させるためのおもりの取り付けができる設計になっていた。3.2cmのフェルトパッドは、National Mfg.Co(Part No.N237−115)から入手した。各測定につき、振動を25回繰り返した。耐久性等級を以下のように割り当てた:0(コーティングの最大5%の除去に相当)、1(コーティングの5〜20%の除去に相当)、2(コーティングの20〜50%の除去に相当)及び3(コーティングの50%以上の除去)。データを表3にまとめている。
【0099】
【表4】
【0100】
実施例3−明澄度を低下させた空隙を有するディフューザー(「ゲル化空隙を有するディフューザー」)
実施例2からの4つの異なるディフューザーサンプル(102b、106b、109b、111b)を用いて、複数の光学構造体を製造した。これらの構造体について光学諸特性を測定し、標準的な体積ディフューザーを含む光学構造体と比較した。
【0101】
それぞれのディフューザーサンプルをSR5618直線吸収偏光子と接触させて配置する(すなわち、ディフューザーコーティングは、偏光子から離れた方向を向く)ことにより、第一セットの光学構造体(下記の表4ではAP−102b、AP−106b、AP−109b及びAP−111bと示される)を調製した。基材と偏光子との間に接着剤は全く使わず、その結果、光学構造体は、光学的接触にあるとは考えられなかった。
【0102】
第二セットの光学構造体(下記の表4ではAP
*Q
*102b、AP
*Q
*106b、AP
*Q
*109b、AP
*Q
*111bと示される)を以下のように調製した。OCA 8171高透明性接着剤を用いて、DBEF−Q反射偏光子の片面をSR5618直線吸収偏光子に積層した。再びOCA 8171高透明性接着剤を用いて、DBEF−Q反射偏光子の反対面をそれぞれのディフューザーサンプルに積層した(すなわち、ディフューザーコーティングは、直線偏光子及び反射偏光子のどちらからも離れた方向を向く)。得られた光学構造体は、光学的接触にあるとは考えられなかった。
【0103】
対照光学構造体(AP−AR33)を比較のために作製して、表4に示されているデータを正規化した。SBX−6ポリスチレンビーズ(26重量%)とPhotomer 6010(9重量%)とSR9003(4.6重量%)とSR833(4重量%)とDowanol PM(60重量%)とDarocure 4265(0.4重量%)とを含んだ混合物を作製した。この混合物を高剪断ミキサー内で撹拌し、最後にビーズをこの混合物に加えた。次に、9w162 TiO
2分散液(2.6重量%)を上記混合物に加えた。次に、得られた溶液を0.254mm厚さポリエステル(PET)フィルム上にコーティングし、乾燥させ、紫外線硬化させて、約39マイクロメートルの乾燥厚さにした。得られた対照体積光学ディフューザー(AR33)は、約50%の総光透過率、約100%の光学ヘイズ及び約3%の明澄度を有した。対照体積ディフューザーをSR5618直線吸収偏光子と接触させて配置する(すなわち、ディフューザーコーティングは、偏光子から離れた方向を向く)ことにより、対照光学構造体(AP−AR33)を作製した。基材と偏光子との間に接着剤は全く使わず、その結果、対照光学構造体は、光学的接触にあるとは考えられなかった。
【0104】
拡散体側から対照光学構造体を照明するためのSchott−Fostec−DCR光源(Schott−Fostec LLC(Auburn NY)から入手可能)と、直線偏光子側からデータを収集するためのAutronic Conoscope Conostage 3(Autronic−Melchers GmbH(Karlsruhe,Germany)から入手可能)を使用して、光学構造体の上及び下方向における軸方向輝度(cd/m
2)、積分強度(lm/m
2)、及び明るさ半減角度(度)を測定した。比較目的のため、測定した軸方向輝度及び積分強度の値を、100%に設定した対照体積ディフューザー(AP−AR33)に対して、正規化し、光学諸特性を表4に要約する。
【0105】
【表5】
【0106】
実施例4−低ゲインを有し、明澄度を低下させた空隙を有するディフューザー(「ゲル化空隙を有するディフューザー」)
480gのPhotomer 6891と246gのSR9003と214gのSR833と1741gのKSR3ポリスチレンビーズと1600gのDowanol PMと1600gのメタノールと21.2gのDarocure 4265とを一緒に混合することにより、コーティング溶液を調製した。下記の様々な速度にて注射ポンプによりコーティング配合物を8インチ(20.3cm)幅スロットタイプコーティングダイの中にコーティングした。30フィートft/分(9.14m/分)の速度にて動くVikuiti(商標)Dual Brightness Enhancing Film(DBEF)ウェブにコーティングを送達した。コーティング後、ウェブは、作動中の、0.25インチ(0.64cm)の間隙並びに70°F(21℃)に設定された上方及び下方プレートの両方を有する5フィート(152cm)長セクションの間隙乾燥機の中に入った。
【0107】
次いで、コーティングされたウェブは、それぞれの列に22個のLEDを有する16列のLEDから構成される395nmのUV LED水冷式配列を用いる重合セクションの中を通過した。それぞれの列の22個のLEDはウェブの幅全域に等間隔に置かれ、16列はおよそ8インチ×8インチ(20.3cm×20.3cm)の領域内にウェブ下流方向に沿って等間隔に置かれた。アレイ中352個のLEDは、395nmのUV LED(Cree Inc.(Durham NC)から入手可能)であった。LAMBDA GENH750Wを電源としてLED配列に通電した。電力供給出力は、下記に示すように0〜13アンペアの範囲であり、およそ45ボルトにて操作した。制御下環境におよそ200立方フィート/時間(94.4リットル/分)の窒素を供給したところ、重合セクションの制御下環境中におよそ220ppmの酸素濃度をもたらした。装置を出た後、ウェブは約3フィート(0.9m)進み、3ゾーン全てを150°F(66℃)に設定した30フィート(9.1m)の従来の空気浮上式ドライヤーに入った。乾燥後、Fusion UV Systems,Inc.のVPS/I600(Gaithersburg,MD)を用いて、重合及び乾燥されたコーティングを巻き取る前に後重合した。FusionシステムはH電球で構成されており、硬化ゾーンの酸素濃度50ppm未満で100%の電力で運転した。
【0108】
得られたディフューザーのPET面から透過率パーセント(%T)、ヘイズパーセント(%H)、明澄度パーセント(%C)を測定し、得られたディフューザーのコーティングされた面からは%Tも測定した。反射偏光子をコーティングする前に透過率T
aを測定し、反射偏光子をコーティングした後に光学構造体の透過率T
bを測定することにより、各光学構造体についてのゲインを決定した。各試料の光学ゲインは、比T
b/T
aであった。各コーティングについての測定結果を表4に要約する。
【0109】
【表6】
【0110】
実施例5−低屈折率分布コーティング上にオーバーコーティングされた空隙を有するディフューザー
DBEF基材上での低屈折率分布コーティングの調製
同日付で申請された表題「低屈折率分布物品及び方法」の同時係属中米国特許出願(代理人整理番号第65716US002号)に記載の手順に従って、低屈折率分布コーティングを調製した。手順を以下に示す。
【0111】
光開始剤を基材上にコーティングしたところ、基材境界面から空気境界面にかけて密度に変化を生じた。MEK中に0.3重量%のIrgacure 819を混合することにより、光開始剤コーティング溶液を調製した。この光開始剤溶液をDBEFフィルム上に、43.2cm(17インチ)幅のスロットタイプコーティングダイを用いて、コーティングした。127g/分の速度及び30.5m/分(100フィート/分)のライン速度にて、溶液をコーティングした。次に、コーティングを150°F(66℃)の炉の中で乾燥させた。これは、光開始剤がプライムコーティングされた基材をもたらした。
【0112】
コーティング溶液「A」を作製した。まず、凝縮器及び温度計を備えた2リットルの三つ口フラスコ内で360gのNalco 2327コロイドシリカ粒子(40固体重量%、平均粒径約20ナノメートル)と、300gの1−メトキシ−2−プロパノールとを、高速撹拌して混合した。次に、22.15gのSilquest A−174シランを加え、混合物を10分にわたって撹拌した。次に、更に400gの1−メトキシ−2−プロパノールを加え、加熱マントルを用いて混合物を85℃にて6時間にわたって加熱した。得られた溶液を室温に放冷し、60℃水浴下でロータリーエバポレーターを用いて大部分の水及び1−メトキシ−2−プロパノール溶媒(約700g)を除去した。得られた溶液は、1−メトキシ−2−プロパノール中に44重量%のA−174変性20nmシリカを有する透明なA−174変性シリカ溶液であった。
【0113】
コーティング溶液「A」は、18.0重量%の透明なA−174変性シリカ溶液(1−メトキシ−2−プロパノール中に44重量%のA−174変性20nmシリカを有する)と、23.9重量%の1−メトキシ−2−プロパノールと、46.1重量%のIPAと、12.0重量%のSR444と、から構成される。0.15百分率でIRGACURE 819をコーティング溶液Aに加えた。(圧力ポットを用いて)15.2g/分の速度でコーティング溶液Aを43.2cm(17インチ)幅のスロットタイプコーティングダイの中にポンプ注入した。スロットコーティングダイは、光開始剤がプライムコーティングされた基材上に43.2mm幅のコーティングを1.52m/分(10フィート/分)の速度にて均一に分配した。
【0114】
次に、紫外線の通過を可能にする石英窓を含む紫外線LED硬化チャンバーに、コーティングされた基材を通すことによって、塗料を重合させた。UV−LED硬化チャンバーは、4個のダウンウェブ×40個のクロスウェブの、160個のUV−LEDの矩形配列(約42.5cm×4.5cmの領域を対象とする)を含んだ。LED(日亜化学工業株式会社(日本、東京)から入手可能)を公称385nmの波長にて操作し、8アンペアにて稼働したところ、1平方cm当たり0.052ジュールのUV−A量をもたらした。ファンで冷却したUV−LED配列をLambda GENH 60−12.5−U電力供給機(TDK−Lambda(Neptune NJ)から入手可能)により通電した。紫外線LEDを、基材から約2.5cmの距離を置いて硬化チャンバーの石英窓の上に配置した。UV−LED硬化チャンバーに1分当たり141.6リットル/分(5立方フィート)の流速で窒素流を供給した。空気を窒素供給の中に導入して、UV−LEDチャンバー中の総酸素濃度を制御した。気流速度を変化させることによりUV−LED硬化チャンバー中の酸素濃度を変え、Series 3000酸素分析器(Alpha Omega Instruments(Cumberland RI)から入手可能)を用いて酸素濃度をモニターした。
【0115】
UV−LEDによって重合された後、コーティングされた基材を150°F(66℃)の乾燥炉へ2分にわたって、ウェブ速度10フィート/分(3.04m/分)で移送することにより、硬化したコーティング中の溶媒を除去した。次に、乾燥したコーティングを、D型バルブを備えて構成されたFusion System Model I600(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)から入手可能)を使用して後硬化させた。UV Fusionチャンバーに、結果としてチャンバー内に約50ppmの酸素濃度を生じる窒素流を供給した。これは、DBEF上に低屈折率分布コーティングをもたらした。
【0116】
低屈折率分布コーティングされたDBEF上への空隙を有するディフューザーのオーバーコーティング
487.5gのPhotomer 6210と、249.4gのSR9003と、217.5gのSR833と、1774.3gのKSR3ポリスチレンビーズと、1630gの1−メトキシ−2−プロパノールと、1627.8gのメタノールと、21.4gのDarocure 4265と、を一緒に混合することにより、空隙を有するディフューザーコーティング溶液を調製した。圧力ポットにより113.5g/分の流速にてコーティング配合物を8インチ(20.3cm)幅のスロットタイプコーティングダイの中にコーティングした。30フィート/分(9.14m/分)の速度にて移動する上記DBEF上の低屈折率分布コーティングにコーティングを送達した。コーティング後、ウェブは、作動中の、0.25インチ(0.64cm)の間隙並びに70°F(21℃)に設定された上方及び下方プレートの両方を有する5フィート(152cm)長セクションの間隙乾燥機の中に入った。
【0117】
次いで、コーティングされたウェブを、それぞれの列に22個のLEDを有する16列のLEDから構成される395nmのUV LED水冷式配列を用いる重合セクションに通過させた。それぞれの列の22個のLEDはウェブの幅全域に等間隔に置かれ、16列はおよそ8インチ×8インチ(20.3cm×20.3cm)の領域内にウェブ下流方向に沿って等間隔に置かれた。アレイ中352個のLEDは、395nmのUV LED(Cree Inc.(Durham NC)から入手可能)であった。LAMBDA GENH750Wを電源としてLED配列に通電した。電力供給出力は、下記に示すように4アンペアにて操作し、およそ45ボルトにて操作した。制御下環境におよそ300立方フィート/時間(141.6リットル/分)の窒素を供給したところ、重合セクションの制御下環境中におよそ59ppmの酸素濃度をもたらした。装置を出た後、ウェブは約3フィート(0.9m)進み、3ゾーン全てを150°F(66℃)に設定した30フィート(9.1m)の従来の空気浮上式ドライヤーに入った。乾燥後、Fusion UV Systems,Inc.のVPS/I600(Gaithersburg,MD)を用いて、重合及び乾燥されたコーティングを巻き取る前に後重合した。FusionシステムはH電球で構成されており、硬化ゾーンの酸素濃度50ppm未満で40%の電力で運転した。
【0118】
実施例4に記載のように、得られたディフューザーのDBEF面から透過率パーセント(%T)、ヘイズパーセント(%H)、明澄度パーセント(%C)及びゲインを測定した。%Tは37%であり、%Hは101%であり、%Cは0%であり、ゲインは149%であった。
【0119】
指示がない限り、本明細書及び請求項で使用される特性となる大きさ、量、及び物理特性を示す全ての数字は、「約」と言う用語によって修飾されることを理解されたい。それ故に、別の指示がない限りは、本明細書及び添付の請求項に説明される数字のパラメータは近似値であり、本明細書に開示された教示を使用して当業者が獲得しようとする所望の特性に応じて変化し得る。
【0120】
本願で引用した全ての参照文献及び刊行物は、本開示と完全には矛盾することのない程度まで、その全てが引用によって本開示に明白に組み込まれる。本明細書において特定の実施形態が例示及び説明されてきたが、多様な代替及び/又は同等の実施が、本開示の範囲から逸脱することなく、図示され説明された特定の実施形態と置き換えられ得ることは、当業者には理解されるであろう。本出願は、本明細書で説明された特定の実施形態のいかなる翻案又は変形をも包含すべく意図されている。したがって、本開示が「特許請求の範囲」及びその同等物によってのみ限定されることを、意図するものである。