特許第6178082号(P6178082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178082
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】防火部材
(51)【国際特許分類】
   A62C 2/06 20060101AFI20170731BHJP
   A62C 2/10 20060101ALI20170731BHJP
   E06B 9/06 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   A62C2/06 502
   A62C2/10
   E06B9/06 620D
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-31916(P2013-31916)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-161353(P2014-161353A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢三
(72)【発明者】
【氏名】川西 庄一郎
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−019221(JP,A)
【文献】 特開平06−261955(JP,A)
【文献】 実開平03−083558(JP,U)
【文献】 特開2002−349094(JP,A)
【文献】 特開2004−305379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00 − 3/00
E06B 9/00 − 9/92
E04B 1/94,2/00 − 2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路を塞がない第1の位置から、当該通路を塞ぐ位置であって火災発生時に水が供給される第2の位置へと移動可能に構成された防火部材であって、
吸水によって膨張するとともに耐燃性が向上する吸水材と、前記吸水材を保持する基材とをそれぞれ有する複数の板によって構成され、
前記第1の位置から前記第2の位置へ前記複数の板を誘導するための紐状の誘導部材を有し、
前記複数の板は、前記誘導部材を通す孔が設けられ、
前記吸水材は、前記孔に保持され、前記水の供給を受けて当該孔を塞ぐように膨張する
ことを特徴とする防火部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火部材に関する。
【背景技術】
【0002】
火災発生時に延焼を抑制する防火部材が開発されている。防火部材は、建物内で避難通路を形成したり、建物内を耐火壁で分断したりできるよう構成する場合などに使用されている。
特許文献1には、建物の同一階に、複数の防火区画を隣接して設けることにより形成された避難経路と、この避難経路に沿って設けられ、視認性を有する耐火ガラスを用いて区画され、一時待避所として利用できる安全区画とを有することを特徴とする避難安全区画システムが記載されている。
特許文献2には、火災時に散水装置により防火壁等を冷却して熱による延焼を防止できるようにした防火ガラスを用いた安全区画システムが記載されている。
特許文献3には、遮蔽部材を建物内に繰り出して複数の区画を形成し、防火、防煙及び遮熱の少なくとも一つの性能が他の部分に比べて低い部分に水を噴霧供給する防火防煙区画形成システムが記載されている。
特許文献4には、ドア体が通常時には通路の床面に水平状態で設置されており、火災発生時には原動機の駆動力により起立させられて通路を閉鎖する防火シャッターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−349094号公報
【特許文献2】特開平3−112567号公報
【特許文献3】特開2003−111859号公報
【特許文献4】特開2003−343175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば特許文献1に記載された技術は、所定温度に達した時点で発泡して膨張する熱感応型発泡材を用いるが(段落57参照)、その温度に達するまで引き戸等の隙間が埋められない状態となり、煙の進入を許すものとなっていた。
本発明は、温度が上昇する前であっても、煙が進入し得るような隙間の発生を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明に係る防火部材は、通路を塞がない第1の位置から、当該通路を塞ぐ位置であって火災発生時に水が供給される第2の位置へと移動可能に構成された防火部材であって、吸水によって膨張するとともに耐燃性が向上する吸水材と、前記吸水材を保持する基材とから構成されることを特徴とする。
【0006】
好ましくは、前記吸水材と前記基材とをそれぞれ有する複数の板によって構成され、前記吸水材は、前記第2の位置へ移動させられたときに前記基材によって前記複数の板同士に挟まれる部分に保持され、前記水の供給を受けて膨張するとよい。
また、好ましくは、前記吸水材は、前記第2の位置へ移動させられたときに前記火災に向かい合うように、前記基材によって保持されるとよい。
また、好ましくは、前記基材は、板状の部材であり、前記吸水材を当該板状のいずれかの面に塗布することにより保持するとよい。
また、好ましくは、前記吸水材は、二酸化ケイ素を含むとよい。
また、好ましくは、前記第1の位置から前記第2の位置へ前記複数の板を誘導するための紐状の誘導部材を有し、前記複数の板は、前記誘導部材を通す孔が設けられ、前記吸水材は、前記孔に保持され、前記水の供給を受けて当該孔を塞ぐように膨張するとよい。
【0007】
本発明に係る防火システムは、上述の防火部材と、前記防火部材で区画された2つの空間の差圧を測定する測定手段と、前記測定手段が測定した差圧に応じて、前記2つの空間のうち、前記火災が発生している側の第1空間よりも、当該火災が発生していない第2空間の気圧が高くなるように、当該第2空間に送気する送気手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水を供給することでその水の供給前に比べて煙が進入し得るような隙間の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における防火シャッターの構成を示す図である。
図2】実施形態における防火板の構成を示す図である。
図3】実施形態における防火シャッターの形状の変化を示す図である。
図4】実施形態における防火シャッターの動作を説明するための図である。
図5】変形例における防火板を示す図である。
図6】変形例における防火板を示す図である。
図7】応用例における建物の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1−1.防火シャッターの構成
図1は、防火シャッター9の構成を示す図である。防火シャッター9は、図1に示すように、防火板1に設けられた孔2にワイヤ3を通すことで、複数の防火板1を連結させて形成される防火部材である。
【0011】
1−2.防火板の構成
図2は、防火板1の構成を示す図である。防火板1は、板状の基材11の一方の面に対して吸水材12を塗布して形成される板である。防火板1には、4つの孔2が設けられている。基材11は、例えば、石膏ボード(硫酸カルシウムの水和物などの耐火材)である。なお、基材11の材質に基づき強度の補強として、金網等の補強部材を内部に組み込んだものであってもよい。
【0012】
吸水材12は、吸水すると吸水前よりも膨張し、かつ、吸水前よりも高い耐熱性を示す材質である。吸水材12は、例えば、無定形の二酸化ケイ素であってもよいし、ケイ酸ゲルを脱水・乾燥したものでもよい。これらの材質を含むことにより、吸水材12は、水分を吸着して膨潤する。つまり、例えば、散水された水と接触してこれらの材質が水和するのと同時に、その水を保持するため、その結果、吸水材12は、周囲に対して体積を膨張させる。
【0013】
1−3.防火シャッターの動作
図3は、防火シャッター9の形状の変化を示す図である。収納されているとき、防火シャッター9は、図3(a)に示すように、複数の防火板1の表面、すなわち、吸水材12が設けられている面と、裏面、すなわち、基材11の面とが交互に向かい合うように重ねられている。一方、防火シャッター9は、通路を塞ぐときに、図3(b)に示すように、ワイヤ3が張られて表面同士、および、裏面同士がそれぞれ同じ方向に向くように配置される。
【0014】
図4は、防火シャッター9の動作を説明するための図である。火災が発生していないとき防火シャッター9は、図3(a)に示すように重ねられた状態で、図4(a)に示すように、壁面5に囲われた空間S0の近傍にある収納位置A1(第1の位置)に収納されている。空間S0は、通路である。壁面5(または天井面)には、散水ノズル4が設置されている。散水ノズル4は図示しないポンプによって水が供給されるノズルである。
【0015】
防火シャッター9は、火災が発生すると、その火災を感知する図示しない火災感知器などを有する。火災感知器が火災を感知して、保持具(図示略)などを外すことにより、収納位置A1に収納された複数の防火板1が、図4(a)の矢印方向に順次落下して防火位置A2(第2の位置)に移動し、防火シャッター9は、図4(b)に示す形状となる。これにより通路が塞がれ、空間S0は、空間S1と空間S2とに区画される。また、この形状となった防火シャッター9は、空間S1側の面によって散水ノズル4から水40の供給を受ける。なお、図3に示したワイヤ3は、第1の位置から第2の位置へ複数の防火板1を誘導するための紐状の誘導部材として機能する。
【0016】
防火シャッター9が防火位置A2へ移動したとき、各防火板1の吸水材12は、火災に向かい合うように、基材11によって保持されている。すなわち、図4(b)に示す空間S1において火災が発生しており、防火シャッター9は、吸水材12が設けられた面を空間S1に向かわせて、空間S2との通路を遮断する。
【0017】
散水ノズル4は、防火シャッター9を構成する防火板1の表面が向く側に設置されている。したがって、散水ノズル4から供給される水40は、各防火板1の表面に供給される。防火板1の表面には吸水材12が設けられているため、吸水材12は、水40の供給を受けて吸水する。
【0018】
ところで、防火シャッター9は防火位置A2に移動したときに通路を塞ぐが、防火板1同士の間には隙間が生じる場合があり、空間S1で発生した煙が空間S2へ進入することがある。上述したように吸水材12は吸水すると膨張するので、図3(b)に示したように各防火板1同士の接触部分において吸水材12が互いに押し合い、これらの吸水材12に挟まれた隙間は無くなる。そのため、防火シャッター9は、水の供給を受けた後では、水の供給を受ける前に比べて、隙間を通過する気体の量が無くなり防煙性能が増す。すなわち、防火シャッター9は、所定温度以上になる前であっても水を供給するだけで、防火板1間の隙間が無くなるので、火災が進行する初期の段階から煙を遮断できる。
なお、防火シャッター9が防火位置A2へ移動したときに、端に配置される防火板1と壁面5との間にも隙間が生じ易い。この隙間は吸水材12同士で挟まれてはいないが、吸水材12が水の供給を受けることで壁面5に向かって膨張するので、隙間を無くすことができる。
【0019】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
2−1.変形例1
上述した実施形態において用いられる防火部材は、複数の防火板1によって構成される防火シャッター9であったが、1枚の防火板によって構成された防火部材であってもよい。この場合、この防火部材は、孔2およびワイヤ3を有しないでもよく、壁面5に蝶番などによって一辺を固定されていてもよい。そして、この防火部材は、火災発生時において蝶番を軸として回転して通路を遮断すればよい。なお、この場合においても、防火板と壁面5との間の隙間は、防火板が有する吸水材が水の供給を受けることで壁面5に向かって膨張するので、塞がれる。すなわち、防火部材は、第2の位置において吸水材に水が供給されると通路との隙間を無くす。
【0020】
2−2.変形例2
上述した実施形態において、防火シャッター9が防火位置A2へ移動させられたとき、各防火板1の吸水材12は、火災に向かい合うように、基材11によって保持されていたが、複数の防火板1同士に挟まれる部分に保持されていてもよい。
【0021】
図5は、この変形例における防火板1aを示す図である。防火板1aは、基材11aと吸水材12aとを有する。防火板1aが防火板1と異なる点は、図5(a)に示すように、吸水材12aからなる層が基材11aの表面のみならず、その側面を囲い込むように塗布されている点である。これにより、各防火板1aが、表面同士、および、裏面同士をそれぞれ同じ方向に向けて配置されるときに、防火板1a同士に挟まれる部分には、吸水材12aが保持されている。したがって、防火板1a同士の隙間は、水の供給を受けて膨張する吸水材12aに挟まれるため、無くなる。
【0022】
2−3.変形例3
上述した実施形態において、防火板1の表面には吸水材12による層がむき出しの状態で設けられていたが、被覆材111によって覆われていてもよい。
【0023】
図6は、この変形例における防火板1cを示す図である。防火板1cは、基材11cと吸水材12cとを有し、基材11cは、平板110と被覆材111とを有し、この平板110と被覆材111とは同材質で形成されている。被覆材111は、平板110との間に収容空間を有しており、この収容空間には図6に示すように吸水材12cが収容されている。収容された吸水材12cは、被覆材111によって外気から遮断されている。この被覆材111が破壊されると、上記の収容空間に収容されている吸水材12cと供給された水とが接触し、吸水材12cは吸水する。
この構成によれば、被覆材111が破壊されるまで吸水材12cは空気中の水分から遮断されるので、吸水材12cが空気中の水分を吸って変質することが防止される。
【0024】
2−4.変形例4
変形例3において被覆材は、防火シャッター9が防火位置A2に移動する際に力を受けて破壊されてもよい。例えば、防火シャッター9が防火位置A2に移動する際に、各防火板1は、表面同士、および、裏面同士が同じ方向を向くように並ぶが、このように並ぶ配置になったときに、防火板1に設けられた突起(図示せず)が、上述した被覆材に突き刺さってこれを破壊してもよい。
この構成によれば、被覆材は、防火シャッター9が収納されているときには破壊されず、防火シャッター9が通路を遮断するときに破壊されるので、収納時において吸水材が給水する可能性は低い。
【0025】
2−5.変形例5
防火シャッター9によって区画された空間S1と空間S2の差圧に応じて、空間S2の気圧を調整してもよい。例えば、図4に示すように、空間S0を囲う壁面5には、2箇所で管P1,P2が通されており、これらの管P1,P2は差圧計6に接続されている。差圧計6は、防火シャッター9が空間S0を空間S1と空間S2とに区画したときに、空間S1と空間S2との差圧(圧力差)を測定する測定手段である。
【0026】
また、図4に示すように、空間S0を囲う壁面5のうち、空間S2側の壁には、送風機7の吐出口が接続されている。送風機7は、防火シャッター9が空間S0を空間S1と空間S2とに区画したときに、差圧計6によって測定された差圧に応じて、図示しない外部空間から外気を吸い込み、その外気を空間S2に送り込む送気手段である。
【0027】
送風機7は、空間S1の気圧よりも空間S2の気圧の方が、決められた圧力だけ高くなるように空間S2へ送る外気量を調整する。この調整は、例えば図示しない開閉装置が、差圧計6の測定結果に応じて送風機7の吸気口または吐出口に設けられたバルブの開度を制御することで行われる。この場合、防火シャッター9と、差圧計6と、送風機7とは、図4に示す防火システム8を構成する。この防火システム8は、空間S1で発生した火災が空間S2へ延焼することを防ぐとともに、空間S1で発生した煙が空間S2へ進入することを防ぐ。
この構成によれば、空間S2に人が避難した場合に、空間S1で発生した煙が空間S2に進入しなくなる。
【0028】
なお、上述した実施の形態では、空間S1において火災が発生した場合を想定して、防火板1の表面側(空間S1側)に吸水材12を設け、空間S1側に散水ノズル4を配置するものとして説明したが、空間S2において火災が発生した場合を想定して、防火板1の裏面側(空間S2側)に吸水材12を設け、空間S2側に散水ノズル4を配置するようにしてもよい。そして、上述した変形例5では、空間S1側の壁に送風口を接続した送風機を設け、空間S2の気圧よりも空間S1の気圧の方が、決められた圧力だけ高くなるように空間S1へ送る外気量を調整するようにしてもよい。
【0029】
3.応用例
上記実施の形態または変形例として説明した本発明の防火部材としての防火シャッター9を、例えば病院や災害弱者の施設などでろう城避難のための設備に適用した場合について、その応用例として説明する。
【0030】
図7は、ろう城避難の設備が設置される建物30の1フロアの一部平面図である。
図7において、建物30は、耐火壁Wで囲われた避難エリア31と、それ以外の部屋32と、廊下33とを有し、建物30の屋外に、バルコニー34と、避難用階段35とが設けられている。この避難エリア31は、建物30の1フロアの端部に配置され、発生した火災による延焼を受けにくい位置とされている。
【0031】
廊下33から避難エリア31への出入口36の内側近傍には、本発明の防火部材としての防火シャッター9が2か所に設置され、それぞれの防火シャッター9が廊下33を塞ぐ。各防火シャッター9は上記の実施の形態または変形例と同様に火災時に図示しない散水ノズル4からそれぞれ水40の供給を受ける。この結果、これらの防火シャッター9の間に密封された空間ができ、ここを緩衝帯37として利用することができる。この緩衝帯37は、変形例5で説明したように、気圧の調整が行えるようになっている。また、避難エリア31は、耐火壁Wおよび防火部材で区画されることにより、火災の延焼による炎や発生する煙や有毒ガスを遮断する。このような避難エリア31は、防火区画されているとともに、バルコニー34に出ることができ、さらに避難用階段35につながっているものである。また、避難エリア31は、廊下33からの移動床面に段差がないものとなっている。
【0032】
避難エリア31には、危険が発生したら分かるように音声警報付き煙CO複合センサ38と、避難者の状況を把握するための人感センサ39、在室表示機49、RFID(Radio Frequency Identification)用センサ41および監視カメラ42とが設けられている。また、緩衝帯37には、煙センサ43、およびCOセンサ44と、消火用のガスを放出する消火ヘッド45とが設けられ、屋外のバルコニーには、在室表示機46が設けられている。
このようなろう城避難のための設備を利用する火災発生時の対応について、以下に説明する。
【0033】
建物30には、詳細に説明しないが、通常の自動火災報知設備が設置され、火災が発生すると、まず煙や熱等を検出する図示しない火災感知器が火災信号を発し、図示しない火災受信機の監視制御によって火災警報の鳴動が行われる。
火災警報が行われると、全在館者のうち自力避難可能者は屋外へ避難し、また、要避難介護者は介助者とともに避難エリア31へ誘導される。
【0034】
ここで、各部屋32から避難対象者がいない場合は、各部屋32に対応する在室表示灯47を消灯させるものとする。この在室表示灯47の点灯あるいは消灯の状態を、詳細に説明しないが、各在室表示機49、46に連動して表示させることで、在室表示機49、46によって各部屋32の避難の状況が把握できる。
【0035】
避難者、とくに要介護避難者が認識タグ(RFIDタグ)を持ち、避難エリア31へ避難したときに、RFID用センサ41がこれらの認識タグを自動的に認識することで、介助者は、誰が避難したかの情報を得ることができる。なお、避難者の情報については、避難エリア31の出入口36近傍に設置した監視カメラ42が撮像した画像から顔認識の処理をして判断した結果でも構わない。
【0036】
避難エリア31近傍の廊下33には、緩衝帯37を形成するための防火シャッター9が二重に設置され、緩衝帯37部分に設置された煙センサ43、あるいはCOセンサ44が作動したら、各防火シャッター9を作動させ、その後に前記実施の形態と同様、図7に示さないが、散水ノズル4から各防火シャッター9に向けて、必要な散水を行う。そして、緩衝帯37で熱、煙、有毒ガス等を完全に遮断するため、空間としては狭い緩衝帯37に窒素ガスを消火ヘッド45から放出させる。
【0037】
この結果、避難エリア31は、ほとんどを耐火壁Wで囲われているが、その出入口36の部分を防火シャッター9で塞ぐことになり、火災による熱、煙および有毒ガス等を完全に遮断することができる。さらに防火シャッター9が二重に設置され、万一の動作ミス等による隙間からの漏れを遮断できるとともに、2つの防火シャッター9の間を緩衝帯37として、消火用のガスを放出することで安全が増し、消火用のガスで加圧されることで、緩衝帯37を他の廊下33よりも陽圧とし、煙やガスの進入を確実に遮断することができる。
【0038】
なお、消火ヘッド45から放出する消火剤は、消火用のガスでなくてもよく、例えば、ミストを放出すれば、緩衝帯37に冷却効果を与え、防火シャッター9の耐火性能を強化することができる。
【0039】
なお、防火シャッター9への散水は、水道等の給水設備あるいは消火設備を利用した水源として散水すればよいが、専用のタンクを備えたいわゆるパッケージ式の散水装置を設置すると、各設備の良否に依存せずろう城避難のためだけに散水することができる。このような防火シャッターは、所定の散水量で所定の耐久時間が想定できるので、散水装置としては、所定量の散水を所定の耐久時間ごとに複数回行えると避難エリア31の安全性が増すことになる。さらに、散水装置に制御機能を設けるときに、防火シャッター9を起動するための各種センサの出力を取り込んで、防火シャッター9の起動制御が行えると、他設備とは独立して本システムの監視制御が行える。
【0040】
このような避難エリア31に避難者が滞在している間は、屋外の在室表示機46に在室のサイン表示を行うと同時に避難場所がどこかを地図表示しておく。
また、避難エリア31が火災の影響を受ける場合は、音声警報付き煙CO複合センサ38が作動して、信号を発して図示しない火災受信機や在室表示機49、46に警報表示させ、要介護避難者の屋外への避難を進める。
【0041】
なお、本発明の防火部材の適用例として防火シャッター9を用いて説明しているが、ろう城避難の避難エリア31を形成するための設備としては、防火シャッター9に限らず、一般的な防火戸や金属製の防火シャッター等でもよい。また、所定の隔壁を利用して高膨張泡を積み重ねて遮断する形態であってもよい。
【0042】
以上のように、本発明の防火部材としての防火シャッター9は、ろう城避難における耐火壁Wで囲われた避難エリア31を設定するときにその出入口36を封じる設備として使用することができ、従来の重厚な金属製の防火戸を用いずに防火区画ができるととともに、散水によって隙間を発生させないので、煙や有毒ガスも確実に遮断でき、避難エリア31を避難場所として安全なものとすることができる。また、防火シャッター9を二重に設置することで、その間を緩衝帯37として利用でき、緩衝帯37内で気圧を調整することで、避難エリア31への煙やガスの進入を確実に抑制することができる。
【0043】
また、ろう城避難の避難エリア31には、在室表示機49が設置され、在館者の内の避難者を識別して表示することで、避難していない在館者を把握することが可能であり、とくに要介護避難者が部屋32に残っている場合に救助活動の要否が理解しやすい。さらに、避難エリア31や緩衝帯37に、煙やCOガスのセンサを設置しておくことで、避難エリア31自体の安全性を確認することができ、万一作動することがあるときに、集中して駆け付けるなど、優先的に救助活動を行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
1,1a,1b,1c,1d…防火板、11,11a,11b,11c,11d…基材、110…平板、111…被覆材、112…被覆材、12,12a,12b,12c,12d…吸水材、13…水、2…孔、3…ワイヤ、4…散水ノズル、40…水、30…建物、31…避難エリア、32…部屋、33…廊下、34…バルコニー、35…避難用階段、36…出入口、37…緩衝帯、38…音声警報付き煙CO複合センサ、39…人感センサ、41…RFID用センサ、42…監視カメラ、43…煙センサ、44…COセンサ、45…消火ヘッド、46,49…在室表示機、47…在室表示灯、5…壁面、6…差圧計、7…送風機、8…防火システム、9…防火シャッター、A1…収納位置、A2…防火位置、S0…空間、S1…空間、S2…空間、W…耐火壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7