特許第6178085号(P6178085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178085
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】心臓模型、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20170731BHJP
   G09B 23/30 20060101ALI20170731BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   G01T7/00 C
   G09B23/30
   A61B6/00 390A
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-46417(P2013-46417)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-173979(P2014-173979A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230250
【氏名又は名称】日本メジフィジックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511118090
【氏名又は名称】エヌ・エム・ピイビジネスサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 正道
(72)【発明者】
【氏名】片山 均
【審査官】 南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭63−001332(JP,Y1)
【文献】 特開平03−183986(JP,A)
【文献】 特開2010−151726(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0202001(US,A1)
【文献】 特開平11−073096(JP,A)
【文献】 特開2000−089663(JP,A)
【文献】 特表2010−513977(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0243481(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0040322(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/116982(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/040611(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00−7/12
G09B 23/28−23/34
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を断層撮影する断層撮影装置で用いられる、心臓模型であって、
左心室を模した形状を有し、左室心筋の外壁を模した外殻と、前記左室心筋の内壁を模した内殻とが、間隙を介して配置された二重殻構造を備える本体容器と、
少なくとも前記間隙を覆うように、前記本体容器上に設置された蓋部と、
を有し、
前記外殻と前記内殻との前記間隙には、放射性液体を収容するための収容部が設けられており、
前記本体容器、又は、前記蓋部は、前記収容部に前記放射性液体を注入するための一以上の貫通孔を備え、
前記外殻と前記蓋部とが直接接合し、かつ、前記内殻と前記蓋部とが直接接合することにより、前記本体容器と前記蓋部とが一体化していて
前記蓋部及び前記本体容器は、前記蓋部から前記蓋部と前記本体容器との接合部及び前記本体容器にわたって、前記左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線方向に積層された、複数の薄膜を有し、
前記薄膜は、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体からなり、
前記複数の薄膜が互いに直接接合することによって前記蓋部、前記本体容器及びこれらの接合部が構成される、心臓模型。
【請求項2】
生体を断層撮影する断層撮影装置で用いられる、心臓模型であって、
左心室を模した形状を有し、左室心筋の外壁を模した外殻と、前記左室心筋の内壁を模した内殻とが、間隙を介して配置された二重殻構造を備える本体容器と、
少なくとも前記間隙を覆うように、前記本体容器上に設置された蓋部と、
を有し、
前記外殻と前記内殻との前記間隙には、複数の区画に分割されていると共に、放射性液体を収容するための収容部が設けられており、
前記本体容器、又は、前記蓋部は、前記収容部に前記放射性液体を注入するための一以上の貫通孔を備え、
前記外殻と前記蓋部とが直接接合し、かつ、前記内殻と前記蓋部とが直接接合することにより、前記本体容器と前記蓋部とが一体化している、心臓模型。
【請求項3】
前記収容部は、前記左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して並行に分割されている、請求項に記載の心臓模型。
【請求項4】
前記蓋部は、前記収容部の各区画に複数の前記貫通孔を有し、
前記貫通孔を閉鎖し、前記各区画を密閉するための複数の栓を備える、請求項又はに記載の心臓模型。
【請求項5】
前記収容部は、前記左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して垂直方向に分割されている、請求項から4のいずれか一項に記載の心臓模型。
【請求項6】
前記本体容器は、前記収容部の各区画に複数の前記貫通孔を有し、
前記貫通孔を閉鎖し、前記各区画を密閉するための複数の栓を備える、請求項に記載の心臓模型。
【請求項7】
前記蓋部及び前記本体容器は、前記蓋部から前記蓋部と前記本体容器との接合部及び前記本体容器にわたって、前記左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線方向に積層された、複数の薄膜を有し、
前記薄膜は、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体からなり、
前記複数の薄膜が互いに直接接合することによって前記蓋部、前記本体容器及びこれらの接合部が構成される、請求項2から6のいずれか一項に記載の心臓模型。
【請求項8】
前記光硬化性樹脂が、ベース樹脂としてエポキシ樹脂を含む、請求項1又は7に記載の心臓模型。
【請求項9】
前記外殻と前記蓋部との接合部が、前記光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体からなる、請求項8に記載の心臓模型。
【請求項10】
右心室を模した形状を有し、前記本体容器に組み合わされる付加容器を更に有する、請求項1からいずれか一項に記載の心臓模型。
【請求項11】
生体を断層撮影する断層撮影装置で用いられる、胸部模型であって、
請求項1から10いずれか一項に記載の心臓模型と、
胸部を模した形状を有し、前記心臓模型を収容する胸部容器と、
を有する、胸部模型。
【請求項12】
生体を断層撮影する断層撮影装置で用いられる、心臓模型の製造方法であって、
左心室を模した形状を有し、左室心筋の外壁を模した外殻と、前記左室心筋の内壁を模した内殻とが、間隙を介して配置された二重殻構造を備える本体容器を形成する工程と、
少なくとも前記間隙を覆うように、前記本体容器上に設置された蓋部を形成する工程と、
を含み、
前記本体容器を形成する前記工程において、前記外殻と前記内殻との前記間隙に放射性液体を収容するための収容部を形成し、
前記本体容器を形成する前記工程において、前記収容部に前記放射性液体を注入するための一以上の貫通孔を前記本体容器に形成し、又は、前記蓋部を形成する前記工程において、前記貫通孔を前記蓋部に形成し、
前記本体容器を形成する前記工程及び前記蓋部を形成する前記工程において、光造形法により、前記蓋部から前記蓋部と前記本体容器との接合部及び前記本体容器にわたって、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体からなる複数の薄膜を前記左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線方向に積層させ、前記複数の薄膜を互いに直接接合することによって前記蓋部、前記本体容器及びこれらの接合部を一体成形する、心臓模型の製造方法。
【請求項13】
生体を断層撮影する断層撮影装置で用いられる、心臓模型の製造方法であって、
左心室を模した形状を有し、左室心筋の外壁を模した外殻と、前記左室心筋の内壁を模した内殻とが、間隙を介して配置された二重殻構造を備える本体容器を形成する工程と、
少なくとも前記間隙を覆うように、前記本体容器上に設置された蓋部を形成する工程と、
を含み、
前記本体容器を形成する前記工程において、前記外殻と前記内殻との前記間隙に、複数の区画に分割された、放射性液体を収容するための収容部を形成し、
前記本体容器を形成する前記工程において、前記収容部に前記放射性液体を注入するための一以上の貫通孔を前記本体容器に形成し、又は、前記蓋部を形成する前記工程において、前記貫通孔を前記蓋部に形成し、
光造形法により前記本体容器と前記蓋体とを一体成形する、心臓模型の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体を断層撮影する断層撮影装置で用いられる、心臓模型、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体などの生体を断層撮像する方法として、X線CT(コンピュータ断層撮像)、PET(ポジトロン断層撮像)、SPECT(単一光子放射断層撮像)などが知られている。これら断層撮像においては、撮像装置の精度の調査及び校正のため、生体の形状や放射線の透過特性を模擬した模型(ファントム)を使用した、ファントム試験と呼ばれる試験が行われている。
【0003】
このファントム試験で使用される心臓模型(以下、「心臓ファントム」ともいう。)として、例えば、特許文献1記載のものがある。特許文献1記載の心臓模型を図18、19に示す。図18は、特許文献1の図4で示す、心臓ファントムの平面図であり、図19は、特許文献1の図5で示す、図18のV−V断面図である。図18、19で示すように、心臓ファントム90は、外殻902と内殻903とを間隙を介して篏合組み合わせた二重構造をなす左心室を模した容器91と、右心室を模した付加容器92とから構成される。心臓ファントム90は、放射線に対して透過性を有する材料、例えばアクリル樹脂で作られている。
【0004】
特許文献1によれば、心臓ファントム90の使用方法は、以下のとおりである。すなわち、外周フランジ903cの下面に外殻902の対応するフランジ902aを、シールガスケット906を介して接合し、両フランジ902aと903cとをねじ907によって接合固定し、内外殻間の間隙を密閉して密閉空間904を形成する。そして、通孔909の一方からRI液を間隙904内に注入して、栓911で通孔909を閉じる。また、内殻903内の空所903bには通孔908により水を注水充満させ、通孔908を栓910で閉じる。その後、準備した心臓ファントム90を胸部模型に収容し、適当な放射線検出器、例えばシンチレーションスキャナーを用いて心臓模型90から放出される放射線を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭63−1332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の心臓ファントム90は、使用時に、フランジ902a、903cとシールガスケット906との隙間からRI液が漏れ出ることがあった。そのため、医療従事者が被曝したり、医療機器等の備品や医療器具が汚染したりするという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内容液の漏れを防止できるファントム試験用の心臓模型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、生体を断層撮影する断層撮影装置で用いられる、心臓模型であって、左心室を模した形状を有し、左室心筋の外壁を模した外殻と、前記左室心筋の内壁を模した内殻とが、間隙を介して配置された二重殻構造を備える本体容器と、少なくとも前記間隙を覆うように、前記本体容器上に設置された蓋部と、を有し、前記外殻と前記内殻との前記間隙には、放射性液体を収容するための収容部が設けられており、前記本体容器、又は、前記蓋部は、前記収容部に前記放射性液体を注入するための一以上の貫通孔を備え、前記外殻と前記蓋部とが直接接合し、かつ、前記内殻と前記蓋部とが直接接合することにより、前記本体容器と前記蓋部とが一体化していて、前記蓋部及び前記本体容器は、前記蓋部から前記蓋部と前記本体容器との接合部及び前記本体容器にわたって、前記左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線方向に積層された、複数の薄膜を有し、前記薄膜は、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体からなり、前記複数の薄膜が互いに直接接合することによって前記蓋部、前記本体容器及びこれらの接合部が構成される、心臓模型が提供される。
また、本発明によれば、生体を断層撮影する断層撮影装置で用いられる、心臓模型であって、左心室を模した形状を有し、左室心筋の外壁を模した外殻と、前記左室心筋の内壁を模した内殻とが、間隙を介して配置された二重殻構造を備える本体容器と、少なくとも前記間隙を覆うように、前記本体容器上に設置された蓋部と、を有し、前記外殻と前記内殻との前記間隙には、複数の区画に分割されていると共に、放射性液体を収容するための収容部が設けられており、前記本体容器、又は、前記蓋部は、前記収容部に前記放射性液体を注入するための一以上の貫通孔を備え、前記外殻と前記蓋部とが直接接合し、かつ、前記内殻と前記蓋部とが直接接合することにより、前記本体容器と前記蓋部とが一体化している、心臓模型が提供される。
【0009】
この発明によれば、間隙を介して外殻と内殻とが配置された二重殻構造を備え、該間隙に放射性液体を収容するための収容部が設けられた左心室様容器において、外殻及び内殻と、蓋部とを直接接合させた構成を採用する。したがって、収容部に収容した放射性液体が、外殻又は内殻と蓋部との間から漏れ出すのを防ぐことができる。
【0010】
また、本発明によれば、生体を断層撮影する断層撮影装置で用いられる、心臓模型の製造方法であって、左心室を模した形状を有し、左室心筋の外壁を模した外殻と、前記左室心筋の内壁を模した内殻とが、間隙を介して配置された二重殻構造を備える本体容器を形成する工程と、少なくとも前記間隙を覆うように、前記本体容器上に設置された蓋部を形成する工程と、を含み、前記本体容器を形成する前記工程において、前記外殻と前記内殻との前記間隙に放射性液体を収容するための収容部を形成し、前記本体容器を形成する前記工程において、前記収容部に前記放射性液体を注入するための一以上の貫通孔を前記本体容器に形成し、又は、前記蓋部を形成する前記工程において、前記貫通孔を前記蓋部に形成し、前記本体容器を形成する前記工程及び前記蓋部を形成する前記工程において、光造形法により、前記蓋部から前記蓋部と前記本体容器との接合部及び前記本体容器にわたって、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体からなる複数の薄膜を前記左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線方向に積層させ、前記複数の薄膜を互いに直接接合することによって前記蓋部、前記本体容器及びこれらの接合部を一体成形する、心臓模型の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、生体を断層撮影する断層撮影装置で用いられる、心臓模型の製造方法であって、左心室を模した形状を有し、左室心筋の外壁を模した外殻と、前記左室心筋の内壁を模した内殻とが、間隙を介して配置された二重殻構造を備える本体容器を形成する工程と、少なくとも前記間隙を覆うように、前記本体容器上に設置された蓋部を形成する工程と、を含み、前記本体容器を形成する前記工程において、前記外殻と前記内殻との前記間隙に、複数の区画に分割された、放射性液体を収容するための収容部を形成し、前記本体容器を形成する前記工程において、前記収容部に前記放射性液体を注入するための一以上の貫通孔を前記本体容器に形成し、又は、前記蓋部を形成する前記工程において、前記貫通孔を前記蓋部に形成し、光造形法により前記本体容器と前記蓋体とを一体成形する、心臓模型の製造方法が提供される
【0011】
この発明によれば、本体容器と蓋部とが光造形法により一体成形されている。これにより、蓋部と、外殻及び内殻により形成された本体容器とが、切れ目のない一体構造を有している。したがって、本体容器に収容した放射性液体が蓋部と本体容器との間から漏れ出すのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、収容する放射性液体の漏れを防止できるため、調製が容易で、かつ、汚染や被曝を防止できるファントム試験用の心臓模型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る心臓模型の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る心臓模型の平面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る心臓模型の断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る心臓模型の断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る心臓模型の一例を示す平面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る心臓模型の一例を示す断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る心臓模型の一例を示す断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る心臓模型の一例を示す平面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る心臓模型の一例を示す断面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る心臓模型の一例を示す断面図である。
図11】本発明の実施の形態に係る心臓模型の一例を示す断面図である。
図12】本発明の実施の形態に係る心臓模型の一例を示す断面図である。
図13】本発明の実施の形態に係る心臓模型の一例を示す平面図である。
図14】本発明の実施の形態に係る心臓模型の一例を示す断面図である。
図15】本発明の実施の形態に係る心臓模型の製造方法を説明する図である。
図16】本発明の実施の形態に係る胸部模型の平面図である。
図17】本発明の実施の形態に係る胸部模型の側面図である。
図18】従来の心臓ファントムの平面図である。
図19】従来の心臓ファントムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
図1〜4は、本実施の形態の心臓模型を示す。図1は、心臓模型10の斜視図である。図2は、心臓模型10の上面図、言い換えれば、心基部側から見た平面図である。図3は、図2のA−A断面図であり、図4は、図3のB−B断面図である。
【0016】
この心臓模型10は、人体などの生体を断層撮影する断層撮影装置、例えば、PET(ポジトロン断層撮像)装置、又は、SPECT(単一光子放射断層撮像)装置で用いられる、いわゆる心筋ファントムである。この心臓模型10は、ヒトの左心室を模した形状を有する本体容器100と、本体容器100上に設置された蓋部200とを有する。
【0017】
本体容器100は、間隙を介して外殻101と内殻102とが配置された二重殻構造を備える。外殻101は、左室心筋の外壁を模した形状を有し、内殻102は、左室心筋の内壁を模した形状を有する。具体的には、本体容器100の外形は、短軸方向に切断した楕円の半分を長軸方向に回転させた形状を有する。
【0018】
外殻101と内殻102との間隙には、放射性液体を収容するためのRI収容部104が設けられている。また、内殻102の内側には、血液を擬似した液体を収容する空洞105が設けられている。本体容器100は、RI収容部104に放射性液体を注入するための貫通孔201を備える。そして、外殻101と蓋部200とが直接接合し、内殻102と蓋部200とが直接接合することにより、本体容器100と蓋部200とが一体化している。これにより、心臓模型10は、外殻101と内殻102と蓋部200とが分離不能となっている。ここで、本実施の形態において「直接接合」とは、複数の部材がシールガスケットや接着剤が介在せずに直接接していることをいう。例えば、後述するような光造形法を用いることで、本体容器100と蓋部200とが切れ目のない一体構造を有するように形成させることができる。
【0019】
蓋部200は、少なくともRI収容部104(間隙)を覆うように、本体容器100上に設置されていればよい。本実施の形態において蓋部200は、平板状の形状を有し、RI収容部104とともに内殻102内側の空洞105を覆うことで、本体容器100の開口全体を覆う。好ましい態様において、蓋部200は、外殻101の開口よりも大きく、平面視において本体容器100の開口からはみ出るフランジ203を備えることができる。後述するように、心臓模型10に付加容器20が取り付けられる場合は、フランジ203には、付加容器20の取り付けに用いる貫通孔204が設けられていてもよい。
【0020】
貫通孔201は、RI収容部104に放射性液体を注入する注入口となる。図1〜3には、貫通孔201が蓋部200に備える例を示すが、貫通孔201は本体容器100に備えられていてもよい。また、図1〜3には、2の貫通孔201を備える例を示すが、貫通孔201は、本体容器100又は蓋部200に少なくとも1つ備えていればよい。ただし、貫通孔201の孔径が小さい場合、複数の貫通孔201を備えると、一方の貫通孔201から放射液液体を注入するとき、他方の貫通孔201が空気抜きの役割を果たす。したがって、漏れなく放射液液体を注入できるため好ましい。
【0021】
ねじなどの盲栓211が貫通孔201に嵌め込まれることにより、RI収容部104を密閉することができる。また、蓋部200は、空洞105の開口に対向する位置に、血液を模した非放射性液体を注入する注入口となる貫通孔202を備える。ねじなどの盲栓212が、貫通孔202に嵌め込まれることにより、空洞105を密閉することができる。
【0022】
心臓模型10は、前述のとおり、外殻101と蓋部200とが直接接合し、かつ、内殻102と蓋部200とが直接接合している。これにより、RI収容部104に収容した放射性液体と、空洞105に収容された非放射性液体とが漏れ出て、コンタミネーションするのを防ぐことができる。
【0023】
心臓模型10の材料は、放射線透過性を有するものであれば限定されないが、透明又は半透明の樹脂が好ましい。より好ましくは、RI収容部104及び空洞105が視認できる程度に心臓模型10を透明又は半透明にできる樹脂を用いる。これにより、RI収容部104に放射性液体を注入し、空洞105に水等の模擬血液を収容させた際、空気が混入していないことを視覚的に確認することができる。
【0024】
また、少なくとも、外殻101と蓋部200との接合部が、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体からなることが好ましいが、本体容器100全体を、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体から形成させてもよい。より好ましくは、本体容器100及び蓋部200の両方を、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体から形成させることができる。光硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、又は、ウレタンアクリレート樹脂等をベース樹脂としたものを用いることができるが、高透明性であり、放射能の吸着を抑制できるという観点から、エポキシ樹脂を含む樹脂を用いることが好ましい。市販されているものとしては、TSR−820、TSR−828、TSR−829(いずれも、シーメット株式会社製)が挙げられる。更に好ましい態様において、心臓模型10の材料として、生体軟部組織と同等又は近似したγ線吸収係数を有する材料を用いることができる。
【0025】
心臓模型10は、蓋部200から本体容器100にわたって、左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して垂直方向に積層された複数の薄膜を有することができる。この薄膜は、前述した光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体からなり、互いに直接接合することにより、蓋部200、本体容器100及びこれらの接合部を構成する。薄膜の厚みは、数μmオーダーであってもよく、例えば、0.05〜0.2mmとすることができる。
【0026】
RI収容部104は、複数の区画に分割されていてもよい。心臓核医学では、心筋を領域に分割する方法として、4分割、9分割、17,20分割など、様々なセグメントモデルが用いられているが、これらのセグメントモデルに対応するように、RI収容部104を複数の区画に分割させることができる。これにより、RI収容部104を解剖学的な心筋領域に対応させることができる。図5〜7は、心臓模型10のRI収容部104を8の区画にした分割した心臓模型10A(以下、「8分割心臓ファントム」ともいう。)を示す図であり、図8〜12は、心臓模型10のRI収容部104を17の区画にした分割した心臓模型10B(以下、「17分割心臓ファントム」ともいう。)を示す図である。この17分割心臓ファントム10Bは、米国核医学会(American Heart Association)が標準的分類として提唱した形状を有するものであり、Journal of Nuclear Cardiology,
vol. 9, Issue 2, “Standardized myocardial segmentation and nomenclature for
tomographic imaging of the heart: A statement for healthcare professionals from
the Cardiac Imaging Committee of the Council on Clinical Cardiology of the
American Heart Association”に記載された心筋の17セグメントによる表記法に準じて、RI収容部104が17の区画に分割されている。
【0027】
まず、図5〜7に示す8分割心臓ファントムについて説明する。図5は、8分割心臓ファントム10Aの上面図、言い換えれば、心基部側から見た平面図である。図6は、図5のA−A断面図であり、図7は、図6のB−B断面図である。8分割心臓ファントム10Aは、ヒトの左心室を模した形状を有する本体容器100Aと、本体容器100A上に設置された蓋部200Aとを有し、外殻101と蓋部200とが直接接合することにより、本体容器100と蓋部200とが一体化している。
【0028】
この8分割心臓ファントム10Aは、仕切り板106、107により、RI収容部104が左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して並行に、8の区画に分割されている。仕切り板106は、外殻101の心尖部と内殻102の心尖部とに接合した1の部材から構成されている。また、仕切り板107は、外殻101の側部、内殻102の側部、蓋部200に接合し、RI収容部104内で互いに離間して配置された8の部材から構成されている。そして、この8の部材からなる仕切り板107は、仕切り板106に向かって集約接合している。これにより、RI収容部104は8の区画に分割される。図5〜7に示す8分割心臓ファントム10Aの例では、RI収容部104は、相対的に体積の大きい4の区画104aと、相対的に体積の小さい4の区画104bとから構成されている。4つの区画104aは、互いに、形状及び体積が均等となるように形成されており、4つの区画104bもまた、互いに、形状及び体積が均等となるように形成されている。
【0029】
蓋部200Aは、収容部の各区画104a、104bに放射性液体を注入するための複数の貫通孔201aを有する。ねじなどの盲栓211aが貫通孔201aに嵌め込まれることにより、RI収容部104a、104bをそれぞれ密閉することができる。また、蓋部200Aは、心臓模型10と同様に、空洞105の開口に対向する位置に、血液を模した非放射性液体を注入する注入口となる貫通孔202aを備える。そして、心臓模型10と同様に、ねじなどの盲栓212aが、貫通孔202aに嵌め込まれることにより、空洞105を密閉することができる。なお、心臓模型10において貫通孔202は複数備えていてもよく、図5〜7に示す例では、貫通孔202aを2つ備える例を示す。これにより、貫通孔202の孔径を小さくした場合においても、他方を空気穴として、非放射性液体を注入することができる。
【0030】
次に、図8〜12に示す17分割心臓ファントムについて説明する。図8は、17分割心臓ファントム10Bの上面図、言い換えれば、心基部側から見た平面図である。図9は、図8のA−A断面図であり、図10は、図9のB−B断面図であり、図11は、図9のB−B断面図であり、図12は、図9のB−B断面図である。17分割心臓ファントム10Bは、ヒトの左心室を模した形状を有する本体容器100Bと、本体容器100B上に設置された蓋部200Bとを有し、外殻101と蓋部200とが直接接合することにより、本体容器100と蓋部200とが一体化している。
【0031】
この17分割心臓ファントム10Bは、仕切り板108a〜cにより、RI収容部104が左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して垂直方向に、4の区画に分割されている。仕切り板108a〜cは、外殻101と内殻102とに接合し、互いに平行して配置されている。具体的には、仕切り板108aは、RI収容部104の心基部側において、外殻101の側部と内殻102の側部とに接合し、内殻102を囲んで同一平面上に設けられたドーナツ状の部材である。仕切り板108bは、RI収容部104の中間において、外殻101の側部と内殻102の側部とに接合し、内殻102を囲んで同一平面上に設けられたドーナツ状の部材である。仕切り板108cは、RI収容部104の心尖部側において外殻101の側部と内殻102の底部とに接合している平坦な仕切り板であり、RI収容部104の心尖部側に1の区画104fを形成する。
【0032】
蓋部200及び仕切り板108aにより形成される区画は、更に、仕切り板107aにより、左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して並行に、6の区画104cに分割されている。仕切り板107aは、該区画内で互いに離間して配置された6の部材から構成されており、外殻101の側部と内殻102の側部と蓋部200と仕切り板108aとにそれぞれ接合している。図10では、区画104cが、互いに、形状及び体積が均等となるように形成された例を示す。
【0033】
仕切り板108a及び仕切り板108bにより形成される区画は、更に、仕切り板107bにより、左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して並行に、6の区画104dに分割されている。仕切り板107bは、外殻101の側部と内殻102の側部と仕切り板108aと仕切り板108bとにそれぞれ接合している。図11では、区画104dは、互いに、形状及び体積が均等となるように形成された例を示す。
【0034】
仕切り板108b及び仕切り板108cにより形成される区画は、更に、仕切り板107cにより、左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して並行に、4の区画104eに分割されている。仕切り板107cは、外殻101の側部と内殻102の側部と仕切り板108bと仕切り板108cとに接合している。図12では、区画104eは、互いに、形状及び体積が均等となるように形成された例を示す。
【0035】
本体容器100Bは、RI収容部の6の区画104cにそれぞれ放射性液体を注入する注入口となる6の貫通孔109aと、収容部の6の区画104dにそれぞれ放射性液体を注入する注入口となる6の貫通孔109bと、収容部の4の区画104eにそれぞれ放射性液体を注入する注入口となる4の貫通孔109cと、収容部の1の区画104fに放射性液体を注入する注入口となる1の貫通孔109dとを有する。貫通孔109a、109b、109c、109dは、ねじなどの盲栓110が嵌め込まれることにより、RI収容部104a、104b、104c、104d、104e、104fをそれぞれ密閉することができる。
【0036】
蓋部200Bは、心臓模型10と同様に、空洞105の開口に対向する位置に、血液を模した非放射性液体を注入する注入口となる貫通孔202を備え、ねじなどの盲栓212が、貫通孔202に嵌め込まれることにより、空洞105を密閉することができる。
【0037】
上記の心臓模型10、10A、10Bは、右心室を模した形状を有する付加容器を更に有していてもよい。図13、14には、ヒトの左心室を模した形状を有する本体容器100と、本体容器100上に設置された蓋部200と、右心室を模した形状を有する付加容器300とを有する心臓模型10Cを示す。図13は、心臓模型10Cの上面図、言い換えれば、心基部側から見た平面図である。図14は、図13のA−A断面図である。
【0038】
付加容器300は、本体容器100の側部に組み合わせることができる。付加容器300は、放射線透過性を有する材料から形成されていればよく、透明又は半透明の樹脂が好ましい。例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の光硬化性樹脂が挙げられる。
【0039】
付加容器300は、本体容器100の側部に直接接合していてもよいし、本体容器100から分離可能に構成されていてもよい。本体容器100から分離可能に構成する場合、付加容器300の心尖部301は、本体容器100の心尖部に対応する位置に形成された凸部103に篏合されナット302で固定することができる。付加容器300の頂壁303は、蓋部200のフランジ203に設けられた貫通孔204に、ピン304が挿入篏合されることで固定される。
【0040】
付加容器300は、空洞305を有しており、使用時には、測定条件に応じて、頂壁303に形成された貫通孔306から、血液を擬似した水などの液体、又は、放射性液体を注入充満させて、盲栓307により密閉することもできる。
【0041】
心臓模型10Cは、本体容器100及び蓋部200に換えて、本体容器100A及び蓋部200Aを採用してもよいし、本体容器100B及び蓋部200Bを採用することもできる。
【0042】
つづいて、本実施形態の心臓模型10の製造方法の一例について、図15を用いつつ、説明する。この方法は、光造形法により本体容器100と蓋部200とを一体成形する方法である。まず、3次元CADなどに使用し、作製する心臓模型10の三次元モデルのデータを作製する。次いで、本体容器100及び蓋部200それぞれについて、数μmオーダーの一定の間隔(例えば、0.05〜0.2mm)で、心底部と心尖部とを結ぶ線に対して水平方向に、一定の間隔でスライスしたスライスデータを用意する(図15(a))。
【0043】
次いで、液状の光硬化性樹脂組成物RSを収容した樹脂槽TRに向かって、スライスデータSの厚み分、ベースプレートBPを下げて、ベースプレートBPに光硬化性樹脂組成物RSを供給し、所定厚みの樹脂層を形成させる。次いで、スライスデータSに基づいてレーザ光強度を調整し、レーザ光LAを走査させながら、樹脂層表面に紫外光を照射して樹脂層を硬化させる。紫外光は光硬化性樹脂組成物が硬化できる波長であればよく、紫外光発生源としては、アルゴンレーザ(Ar)又は半導体励起固体レーザ(LDレーザ)を使用することができる。この操作により、蓋部200の心基部側のスライスデータSに対応した1層目の硬化層Cが形成される(図15(b))。
【0044】
その後ベースプレートBPをスライスデータSに対応する厚み分だけ下げて、同様にレーザ光LAを走査して照射し、心尖部方向に、スライスデータSに基づいて2層目Cを形成する(図15(c))。この操作を繰り返すことにより、心尖部方向に、スライスデータSに対応するn層まで積層し、蓋部200に対応する硬化体200pを作製する。
【0045】
次いで、本体容器100の心底部側のスライスデータS’の1層目に対応する樹脂層を硬化体200pの上に積層する。その上から同様にスライスデータS’に基づいてレーザ光強度を調整して樹脂表面に、レーザ光LAを走査させながら照射して光硬化性樹脂層を硬化させる。この操作により、本体容器100の心底部側のスライスデータS’に対応した硬化層C’が硬化体200pに形成される(図15(d))。
【0046】
そして、この操作を繰り返すことにより、心基部から心尖部方向に向かって、スライスデータS’に対応するn層まで積層し、本体容器100の全部の層を硬化させた後、ベースプレートBPを引き上げて樹脂槽TRから硬化体を取出し、洗浄する。硬化が不十分な場合は、その後、室温又は加熱条件下でポストキュア処理を行って、最終硬化し、必要に応じて研磨などを行い仕上げる。これにより、蓋部200に本体容器100を積層させた心臓模型10を形成させることができる。
【0047】
上記の光造形法に使用される市販の装置としては、例えば、光造形機(SOUP 2 600GS、シーメット社製)、高速光造形機(SCS−8100、ソニーマニュファクチャリングシステムズ社製)が挙げられる。
【0048】
心臓模型10A、10B、10Cも、心臓模型10と同様な方法で製造することができる。光造形法を採用することで、微細な形状を精度よく製造することができるため、RI収容部104a〜eを所期の体積及び形状に製造することができる。
【0049】
上記の心臓模型10、10A、10B、10Cは、図16、17で示す胸部容器50の空洞504に収容されて胸部模型1の一部を構成してもよい。胸部容器50は、ヒトの胸部を脊髄に対して垂直方向にスライスした領域を模した形状を有するものである。図16は、胸部容器50の平面図であり、図17は、胸部容器50の側面図である。図16、17には、心臓模型10を空洞504に設置した例を示すが、心臓模型10A、10B、10Cを空洞504に設置してもよい。
【0050】
胸部容器50は、放射線透過性を有する材料から形成されていればよく、透明又は半透明の樹脂が好ましい。例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の光硬化性樹脂が挙げられる。
【0051】
胸部容器50の内部空間は左右の肺を模した空洞501、502と、脊柱を模した空洞503と、心臓模型10を収容する空洞504とに分画される。空洞501、502と、空洞504とは、隔壁505によって区画され、空洞501、502と、空洞503とは、隔壁506によって区画される。胸部容器50は、更に肝臓を模した形状を有する肝臓模型40を備えていてもよい。
【0052】
空洞501、502内には木粉又はコルク細片を充満し、空洞503内には放射線の透過性に関して人骨のγ線吸収係数に近似した物質、例えばテフロン(登録商標)又はリン酸カリウム水溶液を挿入する。ねじ栓507で貫通孔507aを閉鎖することにより、空洞501、502を密閉することができる。蓋509は、空洞501、502の開口を覆い、蓋510は、蓋509の空洞503、504に対応する開口を覆う。
【0053】
つづいて、本実施形態の心臓模型の使用方法について説明する。以下の説明では、上記心臓模型10を例に挙げるが、同様な方法で心臓模型10A、10B、10Cを使用することもできる。
【0054】
まず、貫通孔202から空洞102aに、水又は生理食塩水等の擬似血液を注入した後、盲栓212を嵌め込んで、空洞105を密閉する。
【0055】
次に、貫通孔201からRI収容部104に放射性液体を注入した後、盲栓211を嵌め込んで、RI収容部104を密閉する。放射性液体としては、心臓の核医学診断で使用されている放射性医薬品の希釈液を用いることができる。この放射性医薬品としては、例えば、99mTc−MIBI(ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル)テクネチウム)、99mTc−テトロホスミン、201Tl−塩化タリウム、123I−BMIPP、123I−MIBG(3-ヨードベンジルグアニジン)、99mTc標識赤血球(99mTc−RBC)、99mTc−HSA(人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウム)、99mTc−PYP(ピロリン酸テクネチウム)、67Ga−クエン酸ガリウム、18F−FDG(フルオロデオキシグルコース)を有効成分として含有する注射剤が挙げられる。
【0056】
次いで、図16、17で示すように、心臓模型10を胸部容器50の空洞504に設置する。図1で示すように、本体容器100には、心尖部に相当する位置に凸部103が設けられているが、この凸部103を胸部容器50の凹部(図示せず)に嵌め込むことにより、心臓模型10を胸部容器50の内部に固定することができる。凸部103をねじ部材とし、胸部容器30の凹部に螺号させてもよい。なお、凸部103は、外殻101に直接接合していることが好ましい。空洞304内に支持台(図示せず)を設置し、生体内の心臓と同様の傾斜角度で心臓模型10を設置させてもよい。
【0057】
そして、蓋510をして、貫通孔508aから、体液を擬似した水等の液体を空洞504内に注入し、ねじ栓508で密閉する。
【0058】
以上のようにして準備した胸部模型1を、PET装置、又は、SPECT装置に配置し、胸部模型1内の心臓模型10を断層撮影する。撮像結果から、使用したPET装置、又は、SPECT装置の性能評価をし、あるいは、校正を行う。
【0059】
つづいて、本実施形態の心臓模型の効果について説明する。本実施形態の心臓模型10(10A、10B、10C)によれば、間隙を介して外殻101と内殻102とが配置された二重殻構造を備え、該間隙に放射性液体を収容するためのRI収容部104が設けられた左心室様の本体容器100(100A、100B)において、外殻101と、蓋部200(200A、200B)とを直接接合させた、貫通孔(109a〜d、201、201a、202、204)以外は切れ目のない一体構造をした構成を採用する。したがって、RI収容部104(104a〜f)に収容した放射性液体が、外殻101と、蓋部200(200A、200B)との間から漏れ出すのを防ぐことができる。
【0060】
また、本実施形態の心臓模型10A、10Bによれば、仕切り板106、107、107a、b、108a〜cを、外殻101及び内殻102に直接接合させた構成を採用する。したがって、複数の区画に分割されたRI収容部104a〜fに収容された各放射性液体が、各区画から漏れ出ることを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態の心臓模型10(10A、10B、10C)は、光造形法により、本体容器100(100A、100B)と、蓋部200(200A、200B)とを一体成形させて製造される。したがって、本体容器に収容した液体が、本体容器100(100A、100B)と、蓋部200(200A、200B)との間から漏れ出すのを防ぐことができる。また、心臓模型10A、10BのようにRI収容部が複数の区画104a〜fに分割されている場合も、仕切り板106、107、107a、b、108a〜cにより、RI収容部104を隙間なく仕切ることができるため、RI収容部104a〜fに収容された各放射性液体が、各区画から漏れ出ることを防止することができる。
【0062】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 胸部模型
10 心臓模型
10A 心臓模型(8分割心臓ファントム)
10B 心臓模型(17分割心臓ファントム)
10C 心臓模型
40 肝臓模型
50 胸部容器
90 心臓ファントム
91 容器
92 付加容器
100 本体容器
100A 本体容器
100B 本体容器
101 外殻
102 内殻
103 凸部
104 RI収容部
104a RI収容部(区画)
104b RI収容部(区画)
104c RI収容部(区画)
104d RI収容部(区画)
104e RI収容部(区画)
104f RI収容部(区画)
105 空洞
106 仕切り板
107 仕切り板
107a 仕切り板
107b 仕切り板
107c 仕切り板
108a 仕切り板
108b 仕切り板
108c 仕切り板
109a 貫通孔
109b 貫通孔
109c 貫通孔
109d 貫通孔
110 盲栓
200 蓋部
200A 蓋部
200B 蓋部
201 貫通孔
201a 貫通孔
202 貫通孔
203 フランジ
204 貫通孔
211 盲栓
211a 盲栓
212 盲栓
212a 盲栓
300 付加容器
301 心尖部
302 ナット
303 頂壁
305 空洞
306 貫通孔
307 盲栓
501 空洞
502 空洞
503 空洞
504 空洞
505 隔壁
506 隔壁
507 ねじ栓
507a 貫通孔
508 ねじ栓
508a 貫通孔
509 蓋
510 蓋
902 外殻
902a フランジ
903 内殻
903b 空所
903c 外周フランジ
904 間隙(密閉空間)
906 シールガスケット
907 ねじ
908 通孔
909 通孔
910 栓
911 栓
BP ベースプレート
LA レーザ光
RS 光硬化性樹脂組成物
TR 樹脂槽
1,2,n スライスデータ
S’1,n スライスデータ
1,2 硬化層
C’ 硬化層
200p 硬化体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19