(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
図1〜4は、本実施の形態の心臓模型を示す。
図1は、心臓模型10の斜視図である。
図2は、心臓模型10の上面図、言い換えれば、心基部側から見た平面図である。
図3は、
図2のA
1−A
1断面図であり、
図4は、
図3のB
1−B
1断面図である。
【0016】
この心臓模型10は、人体などの生体を断層撮影する断層撮影装置、例えば、PET(ポジトロン断層撮像)装置、又は、SPECT(単一光子放射断層撮像)装置で用いられる、いわゆる心筋ファントムである。この心臓模型10は、ヒトの左心室を模した形状を有する本体容器100と、本体容器100上に設置された蓋部200とを有する。
【0017】
本体容器100は、間隙を介して外殻101と内殻102とが配置された二重殻構造を備える。外殻101は、左室心筋の外壁を模した形状を有し、内殻102は、左室心筋の内壁を模した形状を有する。具体的には、本体容器100の外形は、短軸方向に切断した楕円の半分を長軸方向に回転させた形状を有する。
【0018】
外殻101と内殻102との間隙には、放射性液体を収容するためのRI収容部104が設けられている。また、内殻102の内側には、血液を擬似した液体を収容する空洞105が設けられている。本体容器100は、RI収容部104に放射性液体を注入するための貫通孔201を備える。そして、外殻101と蓋部200とが直接接合し、内殻102と蓋部200とが直接接合することにより、本体容器100と蓋部200とが一体化している。これにより、心臓模型10は、外殻101と内殻102と蓋部200とが分離不能となっている。ここで、本実施の形態において「直接接合」とは、複数の部材がシールガスケットや接着剤が介在せずに直接接していることをいう。例えば、後述するような光造形法を用いることで、本体容器100と蓋部200とが切れ目のない一体構造を有するように形成させることができる。
【0019】
蓋部200は、少なくともRI収容部104(間隙)を覆うように、本体容器100上に設置されていればよい。本実施の形態において蓋部200は、平板状の形状を有し、RI収容部104とともに内殻102内側の空洞105を覆うことで、本体容器100の開口全体を覆う。好ましい態様において、蓋部200は、外殻101の開口よりも大きく、平面視において本体容器100の開口からはみ出るフランジ203を備えることができる。後述するように、心臓模型10に付加容器20が取り付けられる場合は、フランジ203には、付加容器20の取り付けに用いる貫通孔204が設けられていてもよい。
【0020】
貫通孔201は、RI収容部104に放射性液体を注入する注入口となる。
図1〜3には、貫通孔201が蓋部200に備える例を示すが、貫通孔201は本体容器100に備えられていてもよい。また、
図1〜3には、2の貫通孔201を備える例を示すが、貫通孔201は、本体容器100又は蓋部200に少なくとも1つ備えていればよい。ただし、貫通孔201の孔径が小さい場合、複数の貫通孔201を備えると、一方の貫通孔201から放射液液体を注入するとき、他方の貫通孔201が空気抜きの役割を果たす。したがって、漏れなく放射液液体を注入できるため好ましい。
【0021】
ねじなどの盲栓211が貫通孔201に嵌め込まれることにより、RI収容部104を密閉することができる。また、蓋部200は、空洞105の開口に対向する位置に、血液を模した非放射性液体を注入する注入口となる貫通孔202を備える。ねじなどの盲栓212が、貫通孔202に嵌め込まれることにより、空洞105を密閉することができる。
【0022】
心臓模型10は、前述のとおり、外殻101と蓋部200とが直接接合し、かつ、内殻102と蓋部200とが直接接合している。これにより、RI収容部104に収容した放射性液体と、空洞105に収容された非放射性液体とが漏れ出て、コンタミネーションするのを防ぐことができる。
【0023】
心臓模型10の材料は、放射線透過性を有するものであれば限定されないが、透明又は半透明の樹脂が好ましい。より好ましくは、RI収容部104及び空洞105が視認できる程度に心臓模型10を透明又は半透明にできる樹脂を用いる。これにより、RI収容部104に放射性液体を注入し、空洞105に水等の模擬血液を収容させた際、空気が混入していないことを視覚的に確認することができる。
【0024】
また、少なくとも、外殻101と蓋部200との接合部が、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体からなることが好ましいが、本体容器100全体を、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体から形成させてもよい。より好ましくは、本体容器100及び蓋部200の両方を、光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体から形成させることができる。光硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、又は、ウレタンアクリレート樹脂等をベース樹脂としたものを用いることができるが、高透明性であり、放射能の吸着を抑制できるという観点から、エポキシ樹脂を含む樹脂を用いることが好ましい。市販されているものとしては、TSR−820、TSR−828、TSR−829(いずれも、シーメット株式会社製)が挙げられる。更に好ましい態様において、心臓模型10の材料として、生体軟部組織と同等又は近似したγ線吸収係数を有する材料を用いることができる。
【0025】
心臓模型10は、蓋部200から本体容器100にわたって、左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して垂直方向に積層された複数の薄膜を有することができる。この薄膜は、前述した光硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化体からなり、互いに直接接合することにより、蓋部200、本体容器100及びこれらの接合部を構成する。薄膜の厚みは、数μmオーダーであってもよく、例えば、0.05〜0.2mmとすることができる。
【0026】
RI収容部104は、複数の区画に分割されていてもよい。心臓核医学では、心筋を領域に分割する方法として、4分割、9分割、17,20分割など、様々なセグメントモデルが用いられているが、これらのセグメントモデルに対応するように、RI収容部104を複数の区画に分割させることができる。これにより、RI収容部104を解剖学的な心筋領域に対応させることができる。
図5〜7は、心臓模型10のRI収容部104を8の区画にした分割した心臓模型10A(以下、「8分割心臓ファントム」ともいう。)を示す図であり、
図8〜12は、心臓模型10のRI収容部104を17の区画にした分割した心臓模型10B(以下、「17分割心臓ファントム」ともいう。)を示す図である。この17分割心臓ファントム10Bは、米国核医学会(American Heart Association)が標準的分類として提唱した形状を有するものであり、Journal of Nuclear Cardiology,
vol. 9, Issue 2, “Standardized myocardial segmentation and nomenclature for
tomographic imaging of the heart: A statement for healthcare professionals from
the Cardiac Imaging Committee of the Council on Clinical Cardiology of the
American Heart Association”に記載された心筋の17セグメントによる表記法に準じて、RI収容部104が17の区画に分割されている。
【0027】
まず、
図5〜7に示す8分割心臓ファントムについて説明する。
図5は、8分割心臓ファントム10Aの上面図、言い換えれば、心基部側から見た平面図である。
図6は、
図5のA
2−A
2断面図であり、
図7は、
図6のB
2−B
2断面図である。8分割心臓ファントム10Aは、ヒトの左心室を模した形状を有する本体容器100Aと、本体容器100A上に設置された蓋部200Aとを有し、外殻101と蓋部200とが直接接合することにより、本体容器100と蓋部200とが一体化している。
【0028】
この8分割心臓ファントム10Aは、仕切り板106、107により、RI収容部104が左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して並行に、8の区画に分割されている。仕切り板106は、外殻101の心尖部と内殻102の心尖部とに接合した1の部材から構成されている。また、仕切り板107は、外殻101の側部、内殻102の側部、蓋部200に接合し、RI収容部104内で互いに離間して配置された8の部材から構成されている。そして、この8の部材からなる仕切り板107は、仕切り板106に向かって集約接合している。これにより、RI収容部104は8の区画に分割される。
図5〜7に示す8分割心臓ファントム10Aの例では、RI収容部104は、相対的に体積の大きい4の区画104aと、相対的に体積の小さい4の区画104bとから構成されている。4つの区画104aは、互いに、形状及び体積が均等となるように形成されており、4つの区画104bもまた、互いに、形状及び体積が均等となるように形成されている。
【0029】
蓋部200Aは、収容部の各区画104a、104bに放射性液体を注入するための複数の貫通孔201aを有する。ねじなどの盲栓211aが貫通孔201aに嵌め込まれることにより、RI収容部104a、104bをそれぞれ密閉することができる。また、蓋部200Aは、心臓模型10と同様に、空洞105の開口に対向する位置に、血液を模した非放射性液体を注入する注入口となる貫通孔202aを備える。そして、心臓模型10と同様に、ねじなどの盲栓212aが、貫通孔202aに嵌め込まれることにより、空洞105を密閉することができる。なお、心臓模型10において貫通孔202は複数備えていてもよく、
図5〜7に示す例では、貫通孔202aを2つ備える例を示す。これにより、貫通孔202の孔径を小さくした場合においても、他方を空気穴として、非放射性液体を注入することができる。
【0030】
次に、
図8〜12に示す17分割心臓ファントムについて説明する。
図8は、17分割心臓ファントム10Bの上面図、言い換えれば、心基部側から見た平面図である。
図9は、
図8のA
3−A
3断面図であり、
図10は、
図9のB
3−B
3断面図であり、
図11は、
図9のB
4−B
4断面図であり、
図12は、
図9のB
5−B
5断面図である。17分割心臓ファントム10Bは、ヒトの左心室を模した形状を有する本体容器100Bと、本体容器100B上に設置された蓋部200Bとを有し、外殻101と蓋部200とが直接接合することにより、本体容器100と蓋部200とが一体化している。
【0031】
この17分割心臓ファントム10Bは、仕切り板108a〜cにより、RI収容部104が左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して垂直方向に、4の区画に分割されている。仕切り板108a〜cは、外殻101と内殻102とに接合し、互いに平行して配置されている。具体的には、仕切り板108aは、RI収容部104の心基部側において、外殻101の側部と内殻102の側部とに接合し、内殻102を囲んで同一平面上に設けられたドーナツ状の部材である。仕切り板108bは、RI収容部104の中間において、外殻101の側部と内殻102の側部とに接合し、内殻102を囲んで同一平面上に設けられたドーナツ状の部材である。仕切り板108cは、RI収容部104の心尖部側において外殻101の側部と内殻102の底部とに接合している平坦な仕切り板であり、RI収容部104の心尖部側に1の区画104fを形成する。
【0032】
蓋部200及び仕切り板108aにより形成される区画は、更に、仕切り板107aにより、左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して並行に、6の区画104cに分割されている。仕切り板107aは、該区画内で互いに離間して配置された6の部材から構成されており、外殻101の側部と内殻102の側部と蓋部200と仕切り板108aとにそれぞれ接合している。
図10では、区画104cが、互いに、形状及び体積が均等となるように形成された例を示す。
【0033】
仕切り板108a及び仕切り板108bにより形成される区画は、更に、仕切り板107bにより、左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して並行に、6の区画104dに分割されている。仕切り板107bは、外殻101の側部と内殻102の側部と仕切り板108aと仕切り板108bとにそれぞれ接合している。
図11では、区画104dは、互いに、形状及び体積が均等となるように形成された例を示す。
【0034】
仕切り板108b及び仕切り板108cにより形成される区画は、更に、仕切り板107cにより、左心室の心基部と心尖部とを結ぶ直線に対して並行に、4の区画104eに分割されている。仕切り板107cは、外殻101の側部と内殻102の側部と仕切り板108bと仕切り板108cとに接合している。
図12では、区画104eは、互いに、形状及び体積が均等となるように形成された例を示す。
【0035】
本体容器100Bは、RI収容部の6の区画104cにそれぞれ放射性液体を注入する注入口となる6の貫通孔109aと、収容部の6の区画104dにそれぞれ放射性液体を注入する注入口となる6の貫通孔109bと、収容部の4の区画104eにそれぞれ放射性液体を注入する注入口となる4の貫通孔109cと、収容部の1の区画104fに放射性液体を注入する注入口となる1の貫通孔109dとを有する。貫通孔109a、109b、109c、109dは、ねじなどの盲栓110が嵌め込まれることにより、RI収容部104a、104b、104c、104d、104e、104fをそれぞれ密閉することができる。
【0036】
蓋部200Bは、心臓模型10と同様に、空洞105の開口に対向する位置に、血液を模した非放射性液体を注入する注入口となる貫通孔202を備え、ねじなどの盲栓212が、貫通孔202に嵌め込まれることにより、空洞105を密閉することができる。
【0037】
上記の心臓模型10、10A、10Bは、右心室を模した形状を有する付加容器を更に有していてもよい。
図13、14には、ヒトの左心室を模した形状を有する本体容器100と、本体容器100上に設置された蓋部200と、右心室を模した形状を有する付加容器300とを有する心臓模型10Cを示す。
図13は、心臓模型10Cの上面図、言い換えれば、心基部側から見た平面図である。
図14は、
図13のA
4−A
4断面図である。
【0038】
付加容器300は、本体容器100の側部に組み合わせることができる。付加容器300は、放射線透過性を有する材料から形成されていればよく、透明又は半透明の樹脂が好ましい。例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の光硬化性樹脂が挙げられる。
【0039】
付加容器300は、本体容器100の側部に直接接合していてもよいし、本体容器100から分離可能に構成されていてもよい。本体容器100から分離可能に構成する場合、付加容器300の心尖部301は、本体容器100の心尖部に対応する位置に形成された凸部103に篏合されナット302で固定することができる。付加容器300の頂壁303は、蓋部200のフランジ203に設けられた貫通孔204に、ピン304が挿入篏合されることで固定される。
【0040】
付加容器300は、空洞305を有しており、使用時には、測定条件に応じて、頂壁303に形成された貫通孔306から、血液を擬似した水などの液体、又は、放射性液体を注入充満させて、盲栓307により密閉することもできる。
【0041】
心臓模型10Cは、本体容器100及び蓋部200に換えて、本体容器100A及び蓋部200Aを採用してもよいし、本体容器100B及び蓋部200Bを採用することもできる。
【0042】
つづいて、本実施形態の心臓模型10の製造方法の一例について、
図15を用いつつ、説明する。この方法は、光造形法により本体容器100と蓋部200とを一体成形する方法である。まず、3次元CADなどに使用し、作製する心臓模型10の三次元モデルのデータを作製する。次いで、本体容器100及び蓋部200それぞれについて、数μmオーダーの一定の間隔(例えば、0.05〜0.2mm)で、心底部と心尖部とを結ぶ線に対して水平方向に、一定の間隔でスライスしたスライスデータを用意する(
図15(a))。
【0043】
次いで、液状の光硬化性樹脂組成物RSを収容した樹脂槽TRに向かって、スライスデータS
1の厚み分、ベースプレートBPを下げて、ベースプレートBPに光硬化性樹脂組成物RSを供給し、所定厚みの樹脂層を形成させる。次いで、スライスデータS
1に基づいてレーザ光強度を調整し、レーザ光LAを走査させながら、樹脂層表面に紫外光を照射して樹脂層を硬化させる。紫外光は光硬化性樹脂組成物が硬化できる波長であればよく、紫外光発生源としては、アルゴンレーザ(Ar)又は半導体励起固体レーザ(LDレーザ)を使用することができる。この操作により、蓋部200の心基部側のスライスデータS
1に対応した1層目の硬化層C
1が形成される(
図15(b))。
【0044】
その後ベースプレートBPをスライスデータS
2に対応する厚み分だけ下げて、同様にレーザ光LAを走査して照射し、心尖部方向に、スライスデータS
2に基づいて2層目C
2を形成する(
図15(c))。この操作を繰り返すことにより、心尖部方向に、スライスデータS
nに対応するn層まで積層し、蓋部200に対応する硬化体200pを作製する。
【0045】
次いで、本体容器100の心底部側のスライスデータS’
1の1層目に対応する樹脂層を硬化体200pの上に積層する。その上から同様にスライスデータS’
1に基づいてレーザ光強度を調整して樹脂表面に、レーザ光LAを走査させながら照射して光硬化性樹脂層を硬化させる。この操作により、本体容器100の心底部側のスライスデータS’
1に対応した硬化層C’
1が硬化体200pに形成される(
図15(d))。
【0046】
そして、この操作を繰り返すことにより、心基部から心尖部方向に向かって、スライスデータS’
nに対応するn層まで積層し、本体容器100の全部の層を硬化させた後、ベースプレートBPを引き上げて樹脂槽TRから硬化体を取出し、洗浄する。硬化が不十分な場合は、その後、室温又は加熱条件下でポストキュア処理を行って、最終硬化し、必要に応じて研磨などを行い仕上げる。これにより、蓋部200に本体容器100を積層させた心臓模型10を形成させることができる。
【0047】
上記の光造形法に使用される市販の装置としては、例えば、光造形機(SOUP 2 600GS、シーメット社製)、高速光造形機(SCS−8100、ソニーマニュファクチャリングシステムズ社製)が挙げられる。
【0048】
心臓模型10A、10B、10Cも、心臓模型10と同様な方法で製造することができる。光造形法を採用することで、微細な形状を精度よく製造することができるため、RI収容部104a〜eを所期の体積及び形状に製造することができる。
【0049】
上記の心臓模型10、10A、10B、10Cは、
図16、17で示す胸部容器50の空洞504に収容されて胸部模型1の一部を構成してもよい。胸部容器50は、ヒトの胸部を脊髄に対して垂直方向にスライスした領域を模した形状を有するものである。
図16は、胸部容器50の平面図であり、
図17は、胸部容器50の側面図である。
図16、17には、心臓模型10を空洞504に設置した例を示すが、心臓模型10A、10B、10Cを空洞504に設置してもよい。
【0050】
胸部容器50は、放射線透過性を有する材料から形成されていればよく、透明又は半透明の樹脂が好ましい。例えば、アクリル樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の光硬化性樹脂が挙げられる。
【0051】
胸部容器50の内部空間は左右の肺を模した空洞501、502と、脊柱を模した空洞503と、心臓模型10を収容する空洞504とに分画される。空洞501、502と、空洞504とは、隔壁505によって区画され、空洞501、502と、空洞503とは、隔壁506によって区画される。胸部容器50は、更に肝臓を模した形状を有する肝臓模型40を備えていてもよい。
【0052】
空洞501、502内には木粉又はコルク細片を充満し、空洞503内には放射線の透過性に関して人骨のγ線吸収係数に近似した物質、例えばテフロン(登録商標)又はリン酸カリウム水溶液を挿入する。ねじ栓507で貫通孔507aを閉鎖することにより、空洞501、502を密閉することができる。蓋509は、空洞501、502の開口を覆い、蓋510は、蓋509の空洞503、504に対応する開口を覆う。
【0053】
つづいて、本実施形態の心臓模型の使用方法について説明する。以下の説明では、上記心臓模型10を例に挙げるが、同様な方法で心臓模型10A、10B、10Cを使用することもできる。
【0054】
まず、貫通孔202から空洞102aに、水又は生理食塩水等の擬似血液を注入した後、盲栓212を嵌め込んで、空洞105を密閉する。
【0055】
次に、貫通孔201からRI収容部104に放射性液体を注入した後、盲栓211を嵌め込んで、RI収容部104を密閉する。放射性液体としては、心臓の核医学診断で使用されている放射性医薬品の希釈液を用いることができる。この放射性医薬品としては、例えば、
99mTc−MIBI(ヘキサキス(2-メトキシイソブチルイソニトリル)テクネチウム)、
99mTc−テトロホスミン、
201Tl−塩化タリウム、
123I−BMIPP、
123I−MIBG(3-ヨードベンジルグアニジン)、
99mTc標識赤血球(
99mTc−RBC)、
99mTc−HSA(人血清アルブミンジエチレントリアミン五酢酸テクネチウム)、
99mTc−PYP(ピロリン酸テクネチウム)、
67Ga−クエン酸ガリウム、
18F−FDG(フルオロデオキシグルコース)を有効成分として含有する注射剤が挙げられる。
【0056】
次いで、
図16、17で示すように、心臓模型10を胸部容器50の空洞504に設置する。
図1で示すように、本体容器100には、心尖部に相当する位置に凸部103が設けられているが、この凸部103を胸部容器50の凹部(図示せず)に嵌め込むことにより、心臓模型10を胸部容器50の内部に固定することができる。凸部103をねじ部材とし、胸部容器30の凹部に螺号させてもよい。なお、凸部103は、外殻101に直接接合していることが好ましい。空洞304内に支持台(図示せず)を設置し、生体内の心臓と同様の傾斜角度で心臓模型10を設置させてもよい。
【0057】
そして、蓋510をして、貫通孔508aから、体液を擬似した水等の液体を空洞504内に注入し、ねじ栓508で密閉する。
【0058】
以上のようにして準備した胸部模型1を、PET装置、又は、SPECT装置に配置し、胸部模型1内の心臓模型10を断層撮影する。撮像結果から、使用したPET装置、又は、SPECT装置の性能評価をし、あるいは、校正を行う。
【0059】
つづいて、本実施形態の心臓模型の効果について説明する。本実施形態の心臓模型10(10A、10B、10C)によれば、間隙を介して外殻101と内殻102とが配置された二重殻構造を備え、該間隙に放射性液体を収容するためのRI収容部104が設けられた左心室様の本体容器100(100A、100B)において、外殻101と、蓋部200(200A、200B)とを直接接合させた、貫通孔(109a〜d、201、201a、202、204)以外は切れ目のない一体構造をした構成を採用する。したがって、RI収容部104(104a〜f)に収容した放射性液体が、外殻101と、蓋部200(200A、200B)との間から漏れ出すのを防ぐことができる。
【0060】
また、本実施形態の心臓模型10A、10Bによれば、仕切り板106、107、107a、b、108a〜cを、外殻101及び内殻102に直接接合させた構成を採用する。したがって、複数の区画に分割されたRI収容部104a〜fに収容された各放射性液体が、各区画から漏れ出ることを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態の心臓模型10(10A、10B、10C)は、光造形法により、本体容器100(100A、100B)と、蓋部200(200A、200B)とを一体成形させて製造される。したがって、本体容器に収容した液体が、本体容器100(100A、100B)と、蓋部200(200A、200B)との間から漏れ出すのを防ぐことができる。また、心臓模型10A、10BのようにRI収容部が複数の区画104a〜fに分割されている場合も、仕切り板106、107、107a、b、108a〜cにより、RI収容部104を隙間なく仕切ることができるため、RI収容部104a〜fに収容された各放射性液体が、各区画から漏れ出ることを防止することができる。
【0062】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。