(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の乾き度測定装置は、配管の一部のみから蒸気をサンプリングしているので、配管を流れる蒸気の乾き度を正確に測定することが困難であった。
【0005】
例えば、水滴と蒸気とが混合している状態の水蒸気は、湿り蒸気といわれている。このような湿り蒸気においては、乾き度が1(100%)に近づくにつれて水滴の大きさや個数が減少していく。つまり、乾き度が1以下の水蒸気(湿り蒸気)が流れる蒸気配管中においては、大きさの異なる水滴が複数存在している。
【0006】
そして、これらの大きさの異なるそれぞれの水滴は、配管内において決して均一に存在していない。
図3は、蒸気配管の断面における水滴の存在状態の一例を模式的に示す図である。
【0007】
図3に示すように、液滴径が比較的小さい水滴91は、配管断面90の全体にまばらに分布している。また、液滴径が中程度の水滴92は、配管断面90の中部及び下部に多く存在している。さらに、液滴径が比較的大きい水滴93は、配管断面90の下部に多く存在している。
【0008】
この場合において、配管断面90の中心部にある領域94においては、水滴91及び92をそれぞれ1つずつサンプリングすることができる。一方、配管断面90の右下部にある領域95においては、2つの水滴91(液滴径小)、1つの水滴92(液滴径中)及び、1つの水滴93(液滴径大)をそれぞれサンプリングすることができる。
【0009】
つまり、領域95においてサンプリングした水蒸気を気液分離した際の液体水量は、領域94においてサンプリングした水蒸気を気液分離した際の液体水量よりも、1つの水滴91及び1つの水滴93の分だけ多くなる。乾き度は、気液分離した際の液体水量を用いて算出されるため、サンプリングした位置によりサンプリングした水蒸気の液体水量が異なると、配管中における正確な乾き度を算出することができない。
【0010】
このように、上記従来の乾き度測定装置では、配管の一部のみから蒸気をサンプリングしているので、配管を流れる蒸気の乾き度を正確に測定することは困難である。
【0011】
したがって本発明が解決しようとする課題は、配管を流れる蒸気の乾き度を正確に測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の乾き度測定装置は、
蒸気配管を流れる蒸気をサンプリングして乾き度を測定する乾き度測定装置であって、
前記蒸気配管の断面中心付近を流れる蒸気をサンプリングする第1サンプリング部と、
前記蒸気配管の前記断面中心付近以外を流れる蒸気をサンプリングする第2サンプリング部と、
前記サンプリングした蒸気を計測して乾き度を算出する乾き度算出部とを備え、
前記蒸気の蒸気流速に応じて、前記第1サンプリング部にてサンプリングした蒸気に基づいて前記乾き度を算出するか、前記第2サンプリング部にてサンプリングした蒸気に基づいて前記乾き度を算出するかを選択的に切り換える制御部をさらに備える。
【発明の効果】
【0013】
本願明細書の開示によれば、配管を流れる蒸気の乾き度を正確に測定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の乾き度測定装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、サンプリングした水蒸気を加熱した場合におけるエンタルピ変化に基づいて、その乾き度を計測する例について説明する。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0016】
[1.第1の実施形態]
[1−1.乾き度測定装置の構成]
図1は、乾き度測定装置1の構成図の一例を模式的に示す図である。乾き度測定装置1は、サンプル採取管11、蒸気配管用(1次圧力用)の圧力センサ12、サンプル採取管用(2次圧力用)の圧力センサ13、サンプル採取管用の温度センサ14、オリフィス15、ヒータ16、コンピュータ装置17及び、流量計18を含む。
【0017】
サンプル採取管11は、サンプリング部111と加熱部112とを含む。サンプリング部111は、その一端が蒸気配管4の内部に配置されているサンプル採取管11の一部であり、蒸気配管4の内部を流れる湿り蒸気を、サンプリングすることができる。サンプリング部111は、サンプリング部111a、111b、111c及び、切換弁ka、kb、kcを含む。
【0018】
サンプリング部111bは、蒸気配管4の断面の中心付近を流れる蒸気をサンプリングすることができる。サンプリング部111aは、蒸気配管4の断面の中心の鉛直下部付近を流れる蒸気をサンプリングすることができる。サンプリング部111cは、蒸気配管4の断面の中心の鉛直上部付近を流れる蒸気をサンプリングすることができる。
【0019】
サンプリング部111bは、「蒸気配管の断面中心付近を流れる蒸気をサンプリングする第1サンプリング部」に該当する。サンプリング部111aまたは111cは、「蒸気配管の断面中心付近以外を流れる蒸気をサンプリングする第2サンプリング部」に該当する。
【0020】
切換弁kaは、サンプリング部111aにてサンプリングした蒸気を加熱部112に供給するか否かを切り替えることができる。切換弁kbは、サンプリング部111bにてサンプリングした蒸気を加熱部112に供給するか否かを切り替えることができる。切換弁kcは、サンプリング部111cにてサンプリングした蒸気を加熱部112に供給するか否かを切り替えることができる。
【0021】
切換弁ka、kb及びkcはそれぞれ、「蒸気をサンプリングするか否かを切り換える切換弁」に該当する。
【0022】
加熱部112は、蒸気配管4の外部に配置されているサンプル採取管11の一部であり、サンプリング部111においてサンプリングした湿り蒸気を、ヒータ16により加熱することができる。このため、加熱部112は、サンプリングした湿り蒸気をヒータ16により加熱可能な位置に配置される。なお、サンプリング部111と加熱部112とは、それぞれ別体とし、それぞれを連結する構成としてもよい。
【0023】
圧力センサ12は、蒸気配管4の内部圧力を計測することができる。圧力センサ13は、サンプル採取管11における加熱部112の内部圧力を計測することができる。温度センサ14は、サンプル採取管11における加熱部112の内部温度を計測することができる。
【0024】
オリフィス15は、加熱部112の上流側と下流側の二箇所に配置されており、サンプル採取管11の加熱部112に存在する蒸気の圧力及び体積を一定に保持することができる。
【0025】
ヒータ16は、サンプル採取管11の加熱部112に存在する蒸気を加熱することができる。ヒータ16には、例えば電熱式ヒータを用いることができる。
【0026】
流量計18は、蒸気配管4を流れる蒸気の流速を計測することができる。例えば、流量計18には、カルマン渦による圧力変化を検出する渦流量計を用いることができる。この場合、流量計18は、計測した蒸気流量と配管断面積とに基づいて蒸気の流速を算出することができる。流量計18は、「蒸気流速を計測する流速計測部」に該当する。
【0027】
なお、流量計18は、渦流量計以外の流量計を用いることもできる。例えば、差圧流量計や超音波流量計を用いてもよい。また、流速計測部としては、流量計18に代えて、蒸気流速を直接計測できる流速計を用いることもできる。
【0028】
コンピュータ装置17は、圧力センサ12、圧力センサ13、温度センサ14及び、ヒータ16からの情報に基づいて、サンプリングした蒸気の乾き度を算出することができる。コンピュータ装置17は、「サンプリングした蒸気を計測して乾き度を算出する乾き度算出部」に該当する。
【0029】
また、コンピュータ装置17は、流量計18からの情報に基づいて、第1サンプリング部と第2サンプリング部とを切り換えることができる。具体的には、コンピュータ装置17は、蒸気の蒸気流速に応じて、第1サンプリング部であるサンプリング部111bにてサンプリングした蒸気に基づいて乾き度を算出するか、第2サンプリング部であるサンプリング部111aまたは111cにてサンプリングした蒸気に基づいて乾き度を算出するかを選択的に切り換える。
【0030】
例えばコンピュータ装置17は、流量計18から出力された蒸気流速が閾値を超える場合、サンプリング部111bにてサンプリングした蒸気に基づいて乾き度を算出するように、切換弁kbを開弁し、切換弁ka及びkcを閉弁する制御を行う。一方、流量計18から出力された蒸気流速が閾値以下である場合、第2サンプリング部である111aまたは111cにてサンプリングした蒸気に基づいて乾き度を算出するように、切換弁ka又はkcを開弁し、切換弁kbを閉弁する制御を行う。なお、上記の閾値は、蒸気流速と配管断面における蒸気状態との関係から、予め実験等によって定めたものを用いればよい。
【0031】
コンピュータ装置17は、「前記蒸気の蒸気流速に応じて、前記第1サンプリング部にてサンプリングした蒸気に基づいて前記乾き度を算出するか、前記第2サンプリング部にてサンプリングした蒸気に基づいて前記乾き度を算出するかを選択的に切り換える制御部」に該当する。
【0032】
[1−2.サンプリング部の動き]
図2は、コンピュータ装置17で実行される制御処理の一例を示すフローチャートである。例えばコンピュータ装置17は、CPU及びメモリを備え、メモリに記憶した制御プログラムをCPUが実行することによって下記に示す制御処理を行う。
【0033】
この制御処理において、CPUは、配管4を流れる湿り蒸気の蒸気流速を流量計18から取得する(ステップS301)。CPUは、取得した蒸気流速が閾値より大きいか否かを判断する(ステップS302)。
【0034】
蒸気流速が閾値よりも大きい場合(ステップS302におけるYes判断)、CPUは、切換弁kbを開弁するとともに、切換弁ka及びkcを閉弁する(ステップS303)。一方、蒸気流速が閾値以下である場合(ステップS302におけるNo判断)、CPUは、切換弁ka及びkcを開弁するとともに、切換弁kbを閉弁する(ステップS304)。
【0035】
次に、CPUは、サンプリング部111からサンプリングした蒸気を用いて乾き度を算出する(ステップS305)。
【0036】
このように、蒸気配管4の湿り蒸気の流速に応じて、切換弁を制御してサンプリング位置を変更することにより、蒸気配管4の内に発生する大きさの異なる水滴を、流速による影響を受けることなく、確実にサンプリングすることができる。湿り蒸気に含まれる水滴を流速によらず確実にサンプリングすることにより、流速の違いによるサンプリング誤差を低減して、以下に示す乾き度を精度よく算出することができる。
【0037】
[1−3.乾き度の算出例]
図1に示した度測定装置1において蒸気の乾き度を算出する例を以下に説明する。蒸気配管4を流れる蒸気は、サンプリング部111を介してサンプル採取管11に導かれる。蒸気配管4の圧力は、圧力センサ12により計測され、コンピュータ装置17に通知される。
【0038】
サンプリング部111を介してサンプリングされた蒸気は、サンプル採取管11の上流側のオリフィス15を介して、加熱部112に流入する。加熱部112に流入した蒸気は、ヒータ16により加熱されて乾き度1(100%)の過熱蒸気となる。乾き度1の過熱蒸気が、圧力センサ13及び温度センサ14に導かれると、加熱部112における圧力及び温度が計測される。これら計測された、加熱部112における圧力及び温度は、コンピュータ装置17に通知される。この過熱蒸気は、サンプル採取管11の下流側のオリフィス15を介して、サンプル採取管11の外部に排出される。
【0039】
なお、圧力センサ14及び下流側のオリフィス15は必須ではない。圧力センサ14及び下流側のオリフィス15を設けない場合、過熱蒸気は大気に放出される。この場合、コンピュータ装置17は、大気圧を用いて乾き度を算出することができる。
【0040】
また、サンプル採取管11の断面積、オリフィス15の孔断面積及び、オリフィスの流量係数等は、予めコンピュータ装置17に設定されており、圧力センサ12及び13からの圧力値に基づいて加熱部112における蒸気流量が算出可能である。なお、オリフィス15に代えて、図示しない流量センサを用いてもよい。この場合、流量センサは、サンプル採取管11における加熱部112に流入した蒸気の流量を、コンピュータ装置17に通知することができる。また、流量センサを用いた場合、圧力センサ12を設ける必要はない。
【0041】
コンピュータ装置17は、圧力センサ13及び温度センサ14からの計測値に基づいて、加熱部112における過熱蒸気のエンタルピh1を算出する。また、コンピュータ装置17は、ヒータ16において与えた熱量と、加熱部112に流入した蒸気の流量値とにより、単位流量当りのエンタルピ変化量Δhを算出する。過熱蒸気のエンタルピh1から、エンタルピ変化量Δhを減算することにより、湿り蒸気のエンタルピh2を求め、湿り蒸気のエンタルピh2に基づいて、湿り蒸気の乾き度を算出することができる。
【0042】
[2.他の実施形態]
[2−1.サンプリング部の変形例]
上記実施形態においては、蒸気流速によりサンプリング部111a〜111cに接続された切換弁ka、kb、kcの開閉を制御することにより、サンプリング位置を変更する例について説明したが、蒸気流速によりサンプリング部を配管断面の鉛直方向に上下移動させる機構を設けておき、蒸気流速が閾値より大きい場合、サンプリング部の開口が配管中心付近に位置するように制御し、蒸気流速が閾値以下の場合、サンプリング部の開口が配管中心付近以外に位置するように制御してもよい。この場合、例えばアクチュエータを用いてサンプリング部を移動させることができる。
【0043】
なお、サンプリング部111a、111b、111cの形状、大きさ又は個数は、上記において例示したものに限定されない。例えば、配管径や蒸気の質に応じて、上記サンプリング部111a、111b、111cの形状、大きさ又は個数は適宜変更することができる。
【0044】
[2−2.乾き度算出部の変形例]
上記実施形態においては、サンプリングした湿り蒸気を加熱した際におけるエンタルピ変化に基づいて乾き度を算出する例を説明したが、他の方法を用いて乾き度を算出してもよい。
【0045】
例えば、湿り蒸気をノズルを通して測定容器内に噴射して断熱膨脹させて過熱蒸気とし、ノズルの上流側の圧力と測定容器内の圧力及び温度を検出することにより、モリエル線図あるいは飽和蒸気表及び過熱蒸気表を用いて乾き度を測定する方法により、蒸気の乾き度を算出してもよい。
【0046】
また、赤外線、超音波又はレーザー等を利用して検出した気相と液相の割合に基づいて、蒸気の乾き度を算出してもよい。
【0047】
[2−3.その他]
なお、上記各実施形態において説明した構成の一部または全部を、2以上組み合わせた構成としてもよい。