(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178123
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】バイス
(51)【国際特許分類】
B25B 5/14 20060101AFI20170731BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20170731BHJP
F15B 15/26 20060101ALI20170731BHJP
F15B 15/00 20060101ALI20170731BHJP
F15B 15/02 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
B25B5/14
B23Q3/06 304H
F15B15/26
F15B15/00 A
F15B15/02 A
B23Q3/06 304J
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-123417(P2013-123417)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-240105(P2014-240105A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】393028117
【氏名又は名称】株式会社テック・ヤスダ
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】安田 嘉和
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第0899061(EP,A2)
【文献】
特開2006−035380(JP,A)
【文献】
米国特許第06557600(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 1/00 − 5/14
B23Q 3/06
F15B 15/00 − 15/26
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対のシリンダ箱の対向壁を貫通して進退する複数のピストンロッドの先端でワークを挟持するバイスにおいて、
前記シリンダ箱は、板厚方向に所定間隔でそれぞれが対向するように配置された複数の縁丸帯板状のピストンのそれぞれを嵌挿するシリンダ孔を備え、それぞれのシリンダ孔に嵌挿された前記ピストンはそれぞれのピストンと略同形断面の前記ピストンロッドを備え、
前記一対のシリンダ箱の一方は、前記それぞれのピストンロッドを当該ロッドの進退方向の同一箇所でその帯幅方向に互いに反対方向に押圧して当該ピストンロッドの移動を固定する一対のロック機構を備えている、バイス。
【請求項2】
前記ロック機構が、前記一方のシリンダ箱のロッドエンド側流体室に開口する孔に嵌挿されて前記ピストンロッドを前記帯板の帯幅方向に押圧する一対のロックラムを備えている、請求項1記載のバイス。
【請求項3】
前記一方のシリンダ箱に嵌挿されるピストンのピストンロッドが、先端側を二股にした凹形の縁丸帯板状に形成され、前記ロック機構が当該ピストンロッドの二股にした部分の間に配置されている、請求項1又は2記載のバイス。
【請求項4】
前記複数のシリンダ孔のヘッドエンド側とロッドエンド側流体室がそれぞれが実質的に1個の流体室を形成するように連通されて、前記複数のピストンロッドがそれらの進出方向及び後退方向に同時付勢される、請求項1、2又は3記載のバイス。
【請求項5】
前記ロックラムを嵌挿した円筒孔に流体圧を供給する流体圧回路に、少なくとも一部の円筒孔への流体圧を遮断する遮蔽弁が設けられている、請求項2記載のバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バイスに関するもので、特にアルミサッシのように多種多様な断面形状の細長いワーク(被加工物)をその長手方向に間欠的に送りながら加工を行う場合に、当該ワークを固定するのに好適なバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なバイスは、固定顎とこれに向かって進退する可動顎とを備えており、それぞれの顎(ジョー)に取り付けた口金の間にワークを挟んで固定する構造を備えている。バイスの開閉(可動顎の進退)には、ねじ機構や流体圧装置が用いられている。
【0003】
バイスで固定するワークには種々の形状のものがある。複雑な形状のものは、複数のバイスで複数箇所を挟んで固定するとか、ワークの形状に合わせた口金を個別に準備してワークの形状が変わったときに対応する口金を付け替えて挟持するという方法が採られている。
【0004】
アルミサッシは、長手方向に断面形状が一定の細長いワークであるが、用途に応じて種々の断面形状のものが用いられている。また、新しい用途が開発されると、その用途に応じた断面形状のものが製作されるため、形状の異なる多種類のものが存在している。
【0005】
アルミサッシは、組立や組付のために孔や切欠を加工する必要があり、その加工の際にはアルミサッシの加工される部分を固定する必要がある。通常、孔や切欠は、間隔をあけて設けられるので、その加工に際しては、加工される箇所を固定して当該箇所の加工を行い、次にその固定を解除して次の加工箇所までワークを長手方向に移動し、新たな箇所を固定して当該箇所の加工を行うという工程を繰り返して加工を行っている。
【0006】
この加工の際にアルミサッシを固定する手段としてバイスが用いられている。アルミサッシは、その断面形状が種々であって、しかも材質としては比較的柔らかく薄肉であるので、バイスで挟持する際には大きな面圧が局部的に作用するのを避ける必要がある。そこで通常は、ワークの断面形状に合わせた口金(生口金)を準備して、ワークの種類や加工する面が変わったときに、口金を対応する口金に付け替えて加工を行っていた。特に、断面積の大きい大型のワークは、加工負荷が大きくなりかつ高い加工精度を要求されるために、加工時にも正確で強力な固定が必要であり、加工に際しては専用の口金を用いることが必須になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
大量に加工されるワークであれば、そのワーク専用の口金を準備することはたいした負担にはならない。しかし、ビルの入口のドアなどに用いられるアルミサッシのように大型で使用量が比較的少ないワークにおいては、専用の口金を準備してそれを付け替えて加工を行うという従来方法は、経済的及び時間的な負担が大きい。
【0008】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、寸法や形状の異なる種々のワーク、特にアルミサッシのように断面形状が異なる細長いワークをその断面形状の相違にかかわらず、正確な位置でかつ許容される面圧の範囲内で確実に固定することができるバイスを得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明
のバイスは、対向する縁丸帯板状(長円形断面)のピストンロッド2a、2bの複数をその帯板の厚さ方向に所定間隔で配置し、個別駆動される当該複数のピストンロッド2a、2bの対向する先端でワークを把持して固定するバイ
スである。
【0010】
この発明のバイスは、対向配置された一対のシリンダ箱1a、1bを備えている。一対のシリンダ箱1(1a、1b)には、複数の縁丸帯板状のピストンロッド2(2a、2b)が個別進退可能に設けられている。複数のピストンロッド2は、その板厚方向に所定間隔で配置されている。一対のシリンダ箱1のそれぞれは、複数のピストン21(21a、21b)を個別に摺動自在に嵌挿するシリンダ孔11(11a、11b)を備え、それぞれのシリンダ孔に嵌挿されたピストン21のピストンロッド2は、各シリンダ箱の対向壁14(14a、14b)を貫通して対向している。一対のシリンダ箱1a、1bの間に置かれたワークwは、流体圧により当該ワークに当接するまで進出した複数のピストンロッド2a、2bの対向する先端で挟持されて固定される。
【0011】
バイスは、ワークの加工基準となる面pを常に定位置にして当該ワークを固定できる構造とするのが好ましい。そのためには、一対のシリンダ箱の一方1aに、そのピストンロッド2aの進出位置を固定するロック機構3を設ける。このロック機構としては、縁丸帯板状のピストンロッド2aの両側縁22i、22oを流体圧で押圧してその摩擦力により当該ピストンロッド2aの進出位置を固定する構造が実用上便利である。
【0012】
シリンダ箱1の複数のシリンダ孔11に個別に進退可能に嵌挿された複数のピストンロッド2は、シリンダ箱1のヘッドエンド側とロッドエンド側に形成した流体室24、25に流体圧を供給することにより一斉に進退するように同時付勢される。ロック機構3は、一斉に進退するピストンロッド2aの内の一部の進出位置を固定することにより、ワークwの加工基準面pが当該一部のピストンロッドの先端の位置で規定されるようにするものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明のバイスは、複数のピストンロッド2の先端がワーク把持面の凹凸に応じた位置で当該ワークを把持するので、把持面の凹凸の形状が異なる多種多様なワークを把持することができる。また、ワークを把持した状態で基準側のピストンロッド2aの進出位置をロック機構3で固定すれば、設定された基準面の位置を維持してワークを繰り返し固定することができる。
【0014】
更に、この発明のバイスは、ワークに当接するピストンロッド2の先端面が広いので、低い面圧でワークを固定することができ、ワークに損傷を与えるおそれが小さいという特徴がある。
【0015】
これらのことから、アルミサッシのように断面形状が異なる細長いワークをその断面形状の相違にかかわらず、正確な位置でかつ許容される面圧の範囲内で確実に固定することができるバイスを提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図6】第2実施例の基準側ピストンロッドとロック機構を示す断面平面図
【
図7】ピストンロッドの他の形状及び配置を示す正面図
【
図8】ピストンロッドの更に他の形状及び配置を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に示す実施例を参照して、この発明を具体的に説明する。この発明のバイスは、対向する一対のシリンダ箱1a、1bを備えている。各シリンダ箱は、複数のシリンダ孔11a、11bを備えている。各シリンダ孔11a、11bは、両端を半円弧で繋いだ平行な2平面ないし同心円弧面(
図8参照)で形成される長孔断面である。対向するシリンダ箱の一方1aは、ロック機構3を備えた固定側ないし基準側で、他方1bは、ロック機構を有していない可動側である。まず、構造が簡単な可動側について説明する。
【0018】
可動側シリンダ箱1bのシリンダ孔11bは、断面形状が軸方向に一定で、ロッド側の蓋板15bにピストンロッド2bが貫通する長孔12bが設けられている。シリンダ孔11bに嵌挿されるピストン21bは、両縁を半円弧で繋いだ短い帯板状で、その一方の端面に略同形断面のピストンロッド2bが一体に形成されている。ピストンロッド2bは、ロッド孔12bを摺動自在に貫通しており、ピストン21bの外周とロッド孔12bの内周には、シールリング23b、13bが設けられている。
【0019】
シリンダ孔11bは、平板状ピストンの板厚方向に所定間隔で同一形状のものが複数個設けられ、そのそれぞれに同形のピストン21bが個別に摺動自在に嵌挿されている。複数のシリンダ孔11bの背面(ヘッドエンド側)は、図示しないボルトでシリンダ箱1b本体に固定した後蓋15bで閉鎖されている。複数のシリンダ孔のヘッドエンド側流体室24bは、シリンダ箱1b本体の背面に設けた凹所17bで全体として1個の流体室を形成するように連通されている。一方、ロッドエンド側流体室25bは、縁丸平板状断面のシリンダ孔11bと断面同形で断面積の小さいピストンロッド2bとの間に各シリンダ孔毎に個別に形成され、これらの流体室に流体圧を供給するための流体通路26bによって全体が連通されている。
【0020】
従って、シリンダ箱1bに装着された複数のピストン21bは、ヘッドエンド側流体室24bに流体圧を供給することで一斉に進出し、ロッドエンド側流体室25bに流体圧を供給することで一斉に後退する。
【0021】
基準側シリンダ箱1aの複数のシリンダ孔11aは、可動側のそれと同様な工程で加工されるが、隣接するシリンダ孔との間の隔壁16aの中央部がロッドエンド側からコ字形に切り欠かれており、これらのシリンダ孔に嵌挿されるピストン21aのピストンロッド2aも、その先端側から中央部がコ字形に切り欠かれて二股状となっている。二股となったピストンロッド2aのそれぞれは、縁丸平板状断面に形成されている。
【0022】
基準側シリンダ箱1aの前蓋14aには、1個のシリンダ孔に対して2個の長円断面のロッド孔12a、12aが設けられ、それらの間の中央部に、前記隔壁16aに設けた切欠にちょうど嵌合する角柱状のロックブロック31が設けられている。
【0023】
ピストン21aの外周と2個に分割して設けたロッド孔12aの内周にシールリング23a、13aが装着されていること、複数のシリンダ孔11aのヘッドエンド側が連通されて実質的に1個の流体室24aが形成されていること、及び、複数のシリンダ孔のロッドエンド側も流体通路26aで連通されて実質的に1個の流体室25aが形成されていることも、可動側シリンダ箱1bと同様である。
【0024】
ロックブロック31には、ピストンロッド2aの平板の面と平行でかつ当該ロッドの進退方向と直交する方向に、円筒孔32がロックブロック31を貫通するように設けられ、その貫通孔に両側からロックラム33、33が摺動自在に嵌挿されている。ロックブロック31には、一対のロックラム33、33の間の円筒孔32部分に流体圧を供給するロック流路35が形成されている。ロック流路35に流体圧を供給すると、ロックラム33、33が互いに離隔する方向に付勢されて、ロックラム33、33の先端が二股にされたピストンロッド2a、2aの内側縁22i、22iを押圧することで、摩擦力でそれぞれのピストンロッド2aの位置が固定される。
【0025】
図の実施例における個々の円筒孔32は、その軸中心が隣接するシリンダ孔の間の隔壁16aの厚さ中心に位置するように設けられており、円筒孔32は、上下に隣接する2つのシリンダ孔に向いて開口している。すなわち、図の実施例では、1個のロックラム33で上下に隣接する2個のピストンロッドを固定する構造である。これは、円筒孔32に供給される流体圧の受圧面積(ラム33の径)を大きくして、摩擦による大きな位置決め力をピストンロッド2aに作用させることができるようにするためである。
【0026】
ロック流体の流路35は、円筒孔32の前蓋14a側に隣接して、これら円筒孔の軸方向と交差する方向に設けられており、当該流路から分岐する枝孔36で各円筒孔32に連結している。流路35と枝孔36の分岐部には、それぞれねじ37で弁38を弁座に押圧することによって枝孔36の入口流路を塞ぐ遮蔽弁39が設けられている。従って、ロック流路35に流体圧を供給したとき、遮蔽弁39が開いている枝孔に繋がる円筒孔32に嵌挿されたロックラム33のみがそれによって押圧される2個のピストンロッド2aを固定することとなる。
【0027】
円筒孔32は、シリンダ箱1aのロッドエンド側流体室25aに開口しているので、当該流体室に流体圧を供給したとき、すなわち、ピストンロッド2aを縮退させるときに、ロックラム33にも押し戻す力が作用する。従って、ロック用の流体圧が作用していないときは、ロッドエンド側流体室25aに流体圧を作用させたときにロックラム33が後退する。ロック用の流体圧が作用していないときのロックラム33の後退をより確実にしたいときは、戻り用のばね34を設けてやればよい。
【0028】
なお、ロックラム33でピストンロッド2aの進出位置を固定するには、円筒孔32に供給するロック用の流体圧をシリンダ室のロッドエンド側流体室25aに供給する流体圧より十分大きくしなければならず、ピストンロッド2aを後退させるときのロックラム33による固定力は、進出させるときのそれより小さくなる。しかし、ピストンロッド2aの後退時の推力は、ピストン21aの全面積に流体圧が作用する進出時の推力より遙かに小さいので、ピストン後退時にその流体圧がロックラム33によるピストンロッド2aの固定を弱める方向に作用することが大きな問題になることはない。
【0029】
次に上記のように構成されたこの発明のバイスの動作について説明する。アルミサッシを加工しようとする工作機械(ボール盤やマシニングセンタ)のテーブルに基準側シリンダ箱1aと可動側シリンダ箱1bとをそれらのピストンロッド2a、2bの帯板の面をテーブル面と平行にして対向させて固定する。
【0030】
そして、加工しようとするアルミサッシの加工面を工具に向けて両シリンダ箱の間に置き、両方のシリンダ箱のヘッドエンド側流体室に流体圧を供給する。すると、両シリンダ箱の複数のピストンロッド2a、2bは、その先端がアルミサッシwの側面に当接するまで進出する。アルミサッシの断面形状がどのようであっても、それぞれのピストンロッドは、その先端がアルミサッシに当接した位置で停止し、このとき当該アルミサッシは、その両側面を対向する複数のピストンロッドの先端で挟持して固定された状態となる。
【0031】
この状態で加工寸法の基準となる側面に当接している基準側ピストンロッドを固定するロックラム33の円筒孔32に繋がる遮蔽弁39を開き、その他の遮蔽弁を閉鎖する。例えば
図5において、アルミサッシwの面pを基準面とするのであれば、当該面pに当接しているピストンロッド2a2〜2a4を固定するラム33の円筒孔に連通している枝孔の遮蔽弁39を開き、その他の遮蔽弁は閉じる。
【0032】
一対のロックラムは、隣接する2つのピストンロッドを同時に固定するので、図の例では、固定する必要のないピストンロッド2a1の位置も固定されることとなるが、アルミサッシのような押し出しないし引き抜き成形材は、その長手方向の寸法精度が正確なので、加工基準面pに隣接する位置がピストンロッド2a1により固定されても基準面pの位置決め精度に問題を生ずることはない。
【0033】
このようにして加工基準面pの固定位置を設定したあと、当該面を基準とする加工位置を工作機械のNC装置に設定して加工を行う。一箇所の加工が終了したら、シリンダ箱のロッドエンド側に流体圧を供給する。これによりロックラムで固定したピストンロッド以外は総て後退するので、アルミサッシwを次の加工箇所まで長手方向に移動し、シリンダ箱1a、1bのヘッドエンド側に流体圧を供給してアルミサッシwを新たな加工箇所で挟持する。
【0034】
以上の動作を繰り返すことで1本のアルミサッシないしは同一形状の複数本のアルミサッシについての加工を行う。この間、ロック流路35には常時流体圧を供給し続けて加工を行う。
【0035】
形状の異なる他のアルミサッシを加工するときは、ロック圧を解除した状態でシリンダ箱1a、1bのロッドエンド側に流体圧を供給することによって総てのピストンロッドを後退させ、新たなアルミサッシを対向するシリンダ箱1a、1bの間に置いて同様な操作を行うことによって、新たなアルミサッシについての加工を行う。
【0036】
以上に説明した第1実施例では、基準側ピストンのピストンロッド2aを先端側が二股になった凹形として、その凹の部分にロック機構3を設けたが、基準側ピストンロッド2aを可動側ピストンロッド2bと同形の平面矩形形状とし、基準側シリンダ箱1aの両側にロック機構3、3を設けた構造とすることもできる(
図6参照)。
【0037】
両側のロック機構3、3には、基準側シリンダ箱のロッドエンド側流体室25aに開口する有底の円筒孔32が設けられ、そのそれぞれの1個にロックラム33が嵌挿される。両側のロック機構3、3には、それぞれロック流路35、35が設けられ、同一の圧力源から流体圧を供給する。各円筒孔の流路を遮断する遮蔽弁39は、左右のロック機構にそれぞれ設けられている。
【0038】
この第2実施例の構造は、両側のロックラム33、33でピストンロッド2aの両側縁22o、22oを外側から挟んで固定する構造で、基準側と可動側のシリンダ孔及びピストンロッドを同形とすることができるので、構造を単純化できるが、基準側のシリンダ箱が大型になることと、所望のピストンロッドを固定するための遮蔽弁の操作を両側のロック機構について行わねばならないという欠点がある。
【0039】
以上の実施例は、アルミサッシを固定するためのバイトとして好適な、同幅の帯板状のピストンロッドをその帯板の板厚方向に重ねた状態で配置したものであるが、例えばバイスで挟持する面の凹凸が多種多様である箱状のワークや、バイスで挟持する端面の凹凸が多種多様である円筒状のワークを挟持するバイスとして、シリンダ孔、ピストン及びピストンロッドを
図7や8に示すように配置したバイスを得ることも可能である。
【0040】
この場合、小径側のピストンロッドの進出位置を固定することは困難であるが、大径側を基準とするのであれば、大径側のピストンロッドをそのロッド孔の部分で面直角方向に押圧するようなロックラムを設けることで、大径側の一部のピストンロッドの進出位置を固定することが可能である。
【0041】
以上のようにこの発明のバイスは、把持しようとするワークの把持面の凹凸に倣った把持面が自動的に形成される口金を備えたバイスとして機能するので、把持面の凹凸の形状が異なる多種多様なワークを挟持することができ、かつワークの加工基準面に対応するピストンロッドの進出位置を固定することで、一旦設定された加工基準を保持してワークを繰り返し加工することができ、多種多様な形状のワークを正確な位置で強固に固定できるという特徴がある。
【0042】
そして、この発明のバイスは、ワークに当接するピストンロッドの先端面が広いので、アルミ材のような耐面圧強度の比較的低いワークの固定にも適しているという特徴がある。
【符号の説明】
【0043】
1(1a、1b) シリンダ箱
2(2a、2b) ピストンロッド
3 ロック機構
11(11a、11b) シリンダ孔
14(14a、14b) 対向壁
21(21a、21b) ピストン
22i、22o ピストンロッドの両側縁
24、25 流体室
p 加工基準面
w アルミサッシ