特許第6178124号(P6178124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178124
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】切断装置及び切断方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/06 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
   B26D1/06 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-123875(P2013-123875)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-223715(P2014-223715A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-165205(P2012-165205)
(32)【優先日】2012年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-100688(P2013-100688)
(32)【優先日】2013年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305011640
【氏名又は名称】有限会社サンテクノ久我
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【弁理士】
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】久我 高昭
(72)【発明者】
【氏名】大川 征生
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−023081(JP,A)
【文献】 特開昭55−015764(JP,A)
【文献】 特開昭60−034296(JP,A)
【文献】 特開2006−082161(JP,A)
【文献】 米国特許第03978747(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/00−11/00
A22C 5/00−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向の動作と垂直方向の動作とを合成した上下動作又は垂直方向だけの上下動作を行って被切断物を切断する刃物を備えた切断装置において、
前記刃物の刃先に対向する切断位置の回転方向における上流側と下流側の外周面を被切断物の載置領域として設けた回転する円筒状ドラムと、
前記円筒状ドラムを回転駆動させる駆動手段と、
前記円筒状ドラムの上流側の外周面位置に該円筒状ドラムの外周面に対向して設けられ、前記被切断物を押圧して回転する押えローラを備え、
前記押えローラは、前記駆動手段との間に設けられた伝動機構を介して、該駆動手段によって前記被切断物を進行させる方向に前記円筒状ドラムに同期して回転駆動されることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記円筒状ドラムの上流側の前記押えローラよりも前記切断位置に近接した外周面位置に該円筒状ドラムの外周面に対向して設けられ、前記被切断物を押圧して回転する補助押えローラを更に備え、
前記補助押えローラは、前記押えローラとの間に設けられた更なる伝動機構を介して、前記駆動手段によって前記被切断物を進行させる方向に前記円筒状ドラム及び前記押えローラに同期して回転駆動されることを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項3】
前記伝動機構は、複数個の歯車からなる歯車伝動機構であることを特徴とする請求項1記載の切断装置。
【請求項4】
水平方向の動作と垂直方向の動作とを合成した上下動作又は垂直方向だけの上下動作を行って被切断物を切断する刃物を備えた切断装置において、
前記刃物の刃先に対向する切断位置の回転方向における上流側と下流側の外周面を被切断物の載置領域として設けた回転する円筒状ドラムと、
前記円筒状ドラムを回転駆動させる駆動手段とを備え、
前記円筒状ドラムの上流側の外周面位置に該円筒状ドラムの外周面に対向して設けられ、前記被切断物を押圧して回転する押えローラと、
前記押えローラを前記被切断物を進行させる方向に駆動させる更なる駆動手段とを更に備えることを特徴とする切断装置。
【請求項5】
水平方向の動作と垂直方向の動作とを合成した上下動作又は垂直方向だけの上下動作を行って被切断物を切断する刃物を備えた切断装置の切断方法において、
前記切断装置は、
前記刃物の刃先に対向する切断位置の回転方向における上流側と下流側の外周面を被切断物の載置領域として設けた回転する円筒状ドラムと、
前記円筒状ドラムを回転駆動させる駆動手段と、
前記円筒状ドラムの外周面に対向して設けられ、前記被切断物を押圧して回転する押えローラとを備え、
前記円筒状ドラムの外周面に載置された被切断物を、前記押えローラを介して押圧しながら、前記円筒状ドラムの回転とともに前記切断位置に回転移動して、該被切断物を順次切断する切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性のある食品等の被切断物を切断する切断装置及び切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切断加工を要する食品等の被切断物を切断する切断装置としては、特許文献1のような切断装置がある。このような従来の切断装置は、鮮度の良い魚等の、柔軟性があり、組織間結合が一定以上強く、さらに、切断面における厚みが大きい被切断物に対しては、切断屑を出さずに、身崩れ等を起こすことなく、良質の切断面を得ることが困難な場合がある。このため、柔軟性があり、組織間結合が一定以上強く、さらに、切断面における厚みが大きい被切断物に対しても、身崩れ等を起こすことなく、良質の切断面を得て、品質の良い商品を得ることが可能で、より処理能力が大きい切断装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4940077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような問題点に鑑みて成されたものであり、身崩れ等を起こすことなく、良質の切断面を得て、品質の良い商品を得ることが可能な切断装置及び切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る切断装置は、水平方向の動作と垂直方向の動作とを合成した上下動作又は垂直方向だけの上下動作を行って被切断物を切断する刃物を備えた切断装置において、前記刃物の刃先に対向する切断位置の回転方向における上流側と下流側の外周面を被切断物の載置領域として設けた回転する円筒状ドラムと、前記円筒状ドラムを回転駆動させる駆動手段とを備える。
【0006】
更に、前記円筒状ドラムの上流側の外周面位置に該円筒状ドラムの外周面に対向して設けられ、前記被切断物を押圧して回転する押えローラを更に備え、前記押えローラは、前記駆動手段との間に設けられた伝動機構を介して、該駆動手段によって前記被切断物を進行させる方向に前記円筒状ドラムに同期して回転駆動される。
【0007】
更に、前記円筒状ドラムの上流側の前記押えローラよりも前記切断位置に近接した外周面位置に該円筒状ドラムの外周面に対向して設けられ、前記被切断物を押圧して回転する補助押えローラを更に備え、前記補助押えローラは、前記押えローラとの間に設けられた更なる伝動機構を介して、前記駆動手段によって前記被切断物を進行させる方向に前記円筒状ドラム及び前記押えローラに同期して回転駆動されるようにしても良い。
【0008】
更に、前記円筒状ドラムの上流側の外周面位置に該円筒状ドラムの外周面に対向して設けられ、前記被切断物を押圧して回転する押えローラと、前記押えローラを前記被切断物を進行させる方向に駆動させる更なる駆動手段とを更に備えるようにしても良い。
【0009】
更に、前記伝動機構は、複数個の歯車からなる歯車伝動機構であっても良い。
【0010】
本発明に係る切断方法は、水平方向の動作と垂直方向の動作とを合成した上下動作又は垂直方向だけの上下動作を行って被切断物を切断する刃物を備えた切断装置の切断方法において、前記切断装置は、前記刃物の刃先に対向する切断位置の回転方向における上流側と下流側の外周面を被切断物の載置領域として設けた回転する円筒状ドラムと、前記円筒状ドラムを回転駆動させる駆動手段と、前記円筒状ドラムの外周面に対向して設けられ、前記被切断物を押圧して回転する押えローラとを備え、前記円筒状ドラムの外周面に載置された被切断物を、前記押えローラを介して押圧しながら、前記円筒状ドラムの回転とともに前記切断位置に回転移動して、該被切断物を順次切断する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、まな板、即ち被切断物が載置される被切断物載置部材を円筒状ドラムで構成することにより、円筒状ドラムの外周面に、柔軟性を有する被切断物が円筒状ドラムの外周面に沿って湾曲した状態で載置される。これにより、被切断物には、張力が付加されて、組織間結合力が弱められる。このため、切断時における刃物に対する被切断物の抵抗力、即ち刃物が被切断物を切り込む時の抵抗力が減少されて、より小さい力で切断ができると共に、被切断物を押しつぶして身崩れ等を起こすことが大きく解消されて、良質の切断面を得ることが可能となり、品質の良い商品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による切断装置の第一実施形態を示した側面図である。
図2】本発明による切断装置の第一実施形態を示した正面図である。
図3】被切断物をドラム外周面に沿って載置した状態を示した部分側面図である。
図4】本発明による切断装置の第二実施形態を示した側面図である。
図5】本発明による切断装置の第二実施形態を示した正面図である。
図6】本発明による切断装置の第三実施形態を示した部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した切断装置及び切断方法について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。更に、以下の順に説明を行う。
1.切断装置の概要
2.第一実施形態の切断装置の説明
3.第二実施形態の切断装置の説明
4.第三実施形態の切断装置の説明
5.切断装置の変形例
【0014】
<1.切断装置の概要>
本発明を適用した切断装置は、例えば鱧の骨切り等、柔軟性を有すると共に一定以上の組織間結合が強い被切断物に連続的に切断加工を行うものである。なお、本発明を適用した切断装置は、鱧の骨切りに限らず、柔軟性を有すると共に一定以上の組織間結合が強い被切断物であれば良く、例えば、魚肉の刺身や切り身等のカット調理を行うようなものでも良く、魚肉以外の食品等のカット調理を行うようなものでも良く、食品以外の工業製品等の切断を行うようなものでも良い。
【0015】
<2.第一実施形態の切断装置の説明>
第一実施形態の切断装置100は、図1乃至図3に示すように、回転駆動装置2を介して回転する円筒状ドラム1(以下単にドラム1とも言う)と、ドラム1の上部方向位置に設けられて、ドラム外周面10に載置された被切断物17を切断するために上下動作する刃物3とを備える。本発明における上下動作とは、水平方向の動作と垂直方向の動作とを合成した上下動作又は垂直方向だけの上下動作を言う。更に、本発明における切断とは、被切断物17の厚み分の全ての切断又は被切断物17の全ての厚みの内の所定の厚み分を切断することを言う。
【0016】
なお、刃物3を上下動作する刃物駆動装置20については、刃物3を、水平方向の動作と垂直方向の動作とを合成した上下動作又は垂直方向だけの上下動作を行うものであれば従来公知の如何なる構成を有するものであっても良い。例えば、特許第494007号公報に開示されているように、刃物3(刃物ホルダ22)が、回転軸の回転により平行姿勢を保って円軌跡運動を行う円軌跡運動部材と円軌跡運動部材に設けられた直線ガイド部材に案内されて直線移動するスライダをクランク機構に接続された滑りクランク装置におけるスライダに取り付けられることで、上下動作が行われるようなものでも良い。更に、特許第3523335号公報に開示されているように、刃物3(刃物ホルダ22)が、回転軸の回転により平行姿勢を保って円軌跡運動を行う円軌跡運動部材に取り付けられることで、上下動作が行われるようなものでも良い。更に、偏芯カムやシリンダーを利用して、垂直方向だけの上下動作を行うようにしても良い。
【0017】
そして、図3に示すように、ドラム外周面10に沿って載置された柔軟性を有する被切断物17は、切断位置9において上下動作する刃物3によって順次切断される。刃物3は、図1に示すように、刃物駆動装置20を介してドラム外周面10に向かって上下動作が行われる。ドラム1の回転方向(矢印A方向)における上流側11、即ち被切断物供給側には、入口ガイド板4が設けられている。そして、下流側12、即ち被切断物排出側には、出口ガイド板5が設けられている。回転自在に設けられたドラム1は、図2に示すように、ベース板6上に設けられた回転駆動装置2に連結されており、回転駆動装置2によって回転駆動される。
【0018】
ドラム1の両側には、図2に示すように、それぞれ駆動側フレーム7と反駆動側フレーム8とが設けられており、その上端部に天板23が設けられている。そして、天板23には、刃物駆動装置20が設けられている。この刃物駆動装置20は、上述したように、刃物3の上下動作を行うものであれば従来公知の如何なる構成を有するものであっても良いが、例えば、刃物3を上下動作させる刃物駆動機構(図示省略)と、刃物駆動機構(図示省略)に連結した駆動モーター(図示省略)とを備えている。ドラム1は、その両側が軸支されており、一端側のドラム駆動軸13が回転駆動装置2に連結され、他端側の反駆動側ドラム軸18がドラム軸受スタンド15に設けられたドラム軸受16に軸支されている。ドラム外周面10に沿って上流側11に載置された被切断物17は、図3に示すように、ドラム外周面10の回転駆動と共に回転方向(矢印A方向)に、即ち切断位置9の上流側11から下流側12に移動しながら刃物3で順次切断されていく。即ち、ドラム外周面10に沿って載置された柔軟性が有り一定以上の組織間結合力を有する被切断物17は、ドラム外周面10に沿って湾曲した状態となっており、被切断物17には、適度の張力Tがドラム外周方向において生じている。このため、切断装置100は、より小さい力で刃物3による切断が可能になると共に、被切断物17の切断時には身崩れを起こしやすいことが多いが、これらをより解消することが可能になり、切断面の品質が向上して品質の良い切断物の商品を得ることが可能になった。それと共に処理能力も向上した。
【0019】
刃物3は、図1に示すように、長方形状でその刃先21がドラム1に対向して設けられており、刃先長さ方向がドラム駆動軸13及び反駆動側ドラム軸18の軸方向に配置されている。更に、刃物3は、下縁の全体が刃先21を構成している。刃先21、ドラム駆動軸13及び反駆動側ドラム軸18は、それぞれ略平行に設けられている。刃物駆動装置20に取り付けられた刃物ホルダ22と刃物ホルダ22の下部に取り付けられた刃物3は、それぞれ共に上下動作する。
【0020】
ドラム外周面10における切断位置9は、ドラム駆動軸13と反駆動側ドラム軸18とを通る垂直線上又は垂直線上付近に設けられている。被切断物17がドラム外周面10に沿って載置される領域は、切断位置9の回転方向(矢印A方向)の上流側11と下流側12のドラム外周面10である。そして、図3に示すように、被切断物17は、ドラム外周面10上の切断位置9においてドラム駆動軸13及び反駆動側ドラム軸18の軸方向に刃物3で切断される。
【0021】
また、図1及び図3に示すように、ドラム1における切断位置9の上流側11である被切断物供給側には、ドラム外周面10に対向して被切断物17を押圧しながら回転駆動する押えローラ25が設けられている。押えローラ25による適度の押圧力で被切断物17を押圧することにより、ドラム外周面10での滑りが防止されて、被切断物17は、ドラム1の外周速度に合わせて切断位置9へ供給されて行く。押えローラ25は、必要に応じて刃物3に近い位置に設けることが好ましい。
【0022】
押えローラ25とドラム1とは、被切断物17を進行させる方向に、且つ、それぞれの外周速度が同一又は同一に近い外周速度になるように、それぞれ回転駆動される。押えローラ25は、図1に示すように、歯車伝動機構等の第一伝動機構を有する押えローラ駆動ユニット26aとチェーン伝動機構33等の第二伝動機構とを介して押えローラ回転駆動装置24に連結されて回転駆動する。押えローラ駆動ユニット26aは、例えば、歯車伝動機構を構成する複数の歯車36a,36b,36cと、これらの歯車36a,36b,36cを回転自在に支持する軸受ユニット19aとで構成されている。各歯車の大きさ及び個数は、必要に応じて適宜変更可能である。そして、押えローラ駆動ユニット26aにおける最も基端側の歯車36aの基端歯車軸27は、スタンド32に設けられた軸受28に軸支されている。したがって、軸受ユニット19aは、図1中の矢印E1,E2に示すように、基端歯車軸27を中心にドラム1に対して近接/離間する方向に回動することができる。よって、押えローラ25は、被切断物17に対する押圧力等を容易に調整することができる。更に、基端歯車軸27には、スプロケット等の伝動部材(不図示)が設けられており、この伝動部材が、チェーン伝動機構33を介して押えローラ回転駆動装置24と連結されている。すなわち、押えローラ25は、歯車伝動機構を有する押えローラ駆動ユニット26aとチェーン伝動機構33とを介して、押えローラ回転駆動装置24によって回転駆動される。具体的には、押えローラ25は、被切断物17を上流側11から下流側12へ送る方向、即ち矢印D方向に回転する。
【0023】
以上のような構成を有する切断装置100は、下記のようにして、柔軟性を有すると共に一定以上の組織間結合が強い被切断物17を切断する。先ず、刃物3の上下動作速度、即ち切断速度とドラム1の回転速度をそれぞれ所定の速度に設定する。次いで、入口ガイド板4からドラム外周面10の上流側11に載置された被切断物17が、押えローラ25に押圧されながら、ドラム1の回転と共に切断位置9に移動にされる。次いで、切断位置9に移動された被切断物17が、円筒状ドラム1のドラム外周面10に沿って湾曲した状態で所定の間隔で順次刃物3で切断される。次いで、刃物3で切断された被切断物17が、ドラム外周面10の下流側12から出口ガイド板5へ移動されて例えば外部等に排出されていく。以上のようにして、切断装置100は、被切断物17を切断する。
【0024】
なお、切断は、被切断物17の厚みの内の所定の厚み分だけを切断するようにしても良く、被切断物17の厚み分の全てを切断するようにしても良い。切断深さは、刃物3に対するドラム1の高さ位置を上下に調整することで行える。
【0025】
更に、刃物3は、垂直方向(矢印B)の上下動作と水平方向(矢印C)の左右動作とを合成した上下動作、即ち包丁を刃長方向に引きながら被切断物17を切断していく引き切りするように設けても良く、刃物3を垂直方向にだけ上下動作させて被切断物17を切断していく押し切りするように設けても良い。
【0026】
更に、ドラム外周面10には、周溝又は微細凹凸を設けるようにしても良い。これにより、被切断物17のドラム外周面10での滑りが防止されて、被切断物17を容易に搬送することができる。更に、刃物3による切断時に被切断物17がずれ動くことを防止することができる。特に、垂直方向の上下動作と水平方向の左右動作とを合成した上下動作をして、刃物3を刃長方向に引きながら被切断物17を切断していく引き切りするような場合において、被切断物17が水平方向にずれ動くことを防止することができ、刃物3の進行方向(ドラム1の軸線方向)に真っ直ぐに綺麗に切断することができる。
【0027】
以上のように、第一実施形態の切断装置100は、まな板、即ち被切断物17が載置される被切断物載置部材を円筒状ドラム1で構成することにより、柔軟性を有する被切断物17が円筒状ドラム1のドラム外周面10に沿って湾曲した状態で載置される。これにより、被切断物17には、張力が付加されて、組織間結合力が弱められる。このため、切断時における刃物3に対する被切断物17の抵抗力、即ち刃物3が被切断物17を切り込む時の抵抗力が減少されて、より小さい力で切断ができると共に、被切断物17を押しつぶして身崩れ等を起こすことが大きく解消されて、良質の切断面を得ることが可能となり、品質の良い商品を得ることができる。
【0028】
なお、第一伝動機構は、歯車伝動機構に限定されるものではなく、第二伝動機構は、チェーン伝動機構に限定されるものではない。第一伝動機構及び第二伝動機構は、押えローラ回転駆動装置24の駆動力を押えローラ25に伝動することができれば、複数の歯車等で構成される歯車伝動機構、スプロケット及びチェーン部材等で構成されるチェーン伝動機構、ベルト及びプーリ等で構成されるベルト伝動機構の何れかであっても良く、また、その他の従来公知の如何なる伝動機構を用いるようにしても良い。
【0029】
<3.第二実施形態の切断装置の説明>
第二実施形態の切断装置110は、第一実施形態の切断装置100では、ドラム1が回転駆動装置2によって回転駆動され、押えローラ25が押えローラ回転駆動装置24によって回転駆動されて、二個の駆動装置を用いて、ドラム1と押えローラ25とが回転駆動されていたが、一個の共通の駆動装置だけを用いて、ドラム1と押えローラ25とが回転駆動されるものである。具体的には、図4及び図5に示すように、回転駆動装置2だけを用いて、ドラム1と押えローラ25とが回転駆動されるものである。なお、第二実施形態の切断装置110については、上述した第一実施形態の切断装置100と同様の構成を有するものは同じ符号を付して説明を省略し、以下、異なる構成についてのみ説明する。
【0030】
第二実施形態の切断装置110のドラム1は、第一実施形態の切断装置100のドラム1の他端側の反駆動側ドラム軸18がドラム軸受スタンド15に設けられたドラム軸受16に軸支されていたのに対して、図5に示すように、他端側の反駆動側ドラム軸18が反駆動側フレーム8に設けた軸受8aに軸支されている。
【0031】
また、第二実施形態の切断装置110の押えローラ駆動ユニット26bは、図4に示すように、押えローラ25の押えローラ軸29に設けた押えローラ歯車25aと噛合され、歯車伝動機構を構成する複数個の歯車35と、押えローラ25及び歯車35を回転自在に支持する軸受ユニット19bとを有している。更に、軸受ユニット19bにおいて最も基端側の歯車35とドラム1との間には、チェーン伝動機構30が設けられている。
【0032】
押えローラ25は、軸受ユニット19bの先端側に、押えローラ軸29が軸支されることで、回転自在に設けられている。更に、押えローラ25の押えローラ軸29には、歯車35と噛合する押えローラ歯車25aが設けられている。
【0033】
歯車35は、複数個、ここでは三個設けられており、それぞれ軸受ユニット19bに回転自在に支持されている。具体的に、歯車35は、軸受ユニット19bの基端部から先端部に向けて、第一歯車35a、第二歯車35b、第三歯車35cの順に設けられている。最も基端側の第一歯車35aは、図5に示すように、軸受ユニット19bを貫通した基端歯車軸27が一対のスタンド32に設けられた軸受28に軸支されることで、回転自在に設けられている。したがって、軸受ユニット19aは、図4中の矢印E1,E2に示すように、基端歯車軸27を中心にドラム1に対して近接/離間する方向に回動することができる。よって、押えローラ25は、被切断物17に対する押圧力等を容易に調整することができる。また、第二歯車35bは、軸受ユニット19bに歯車軸34bが軸支されることで、回転自在に設けられている。第三歯車35cは、軸受ユニット19bに第三歯車35cの歯車軸34cが軸支されることで、回転自在に設けられている。そして、第二歯車35bは、第一歯車35aに噛合されており、第三歯車35cは、第二歯車35bに噛合されると共に、押えローラ25の押えローラ歯車25aに噛合されている。即ち、第一歯車35aが回転駆動されると、それに伴って、第二歯車35b及び第三歯車35cを介して、押えローラ25も回転駆動される。したがって、押えローラ駆動ユニット26bは、押えローラ25をドラム1と同期回転させること、押えローラ25を、被切断物17を上流側11から下流側12へ送る方向に回転させること、さらに、基端歯車軸27を中心にドラム1に対して近接/離間する方向に回動することなどが、複数個の歯車35から成る簡素な構成の歯車伝動機構によって実現することができる。なお、各歯車の大きさ及び個数は、必要に応じて適宜変更可能である。
【0034】
更に、図4に示すように、チェーン伝動機構30は、最も基端側の第一歯車35aの基端歯車軸27に設けられたスプロケット等の伝動部材40と、ドラム1の反駆動側ドラム軸18に設けられたスプロケット等の伝動部材41と、第一歯車35aの動力伝動部材40とドラム1の動力伝動部材41との間に掛け渡されたチェーン部材42とを有する。即ち、第一歯車35aとドラム1とは、チェーン部材42によって連結されており、同期して回転駆動する。更に、第一歯車35aと押えローラ25とは、第二歯車35b及び第三歯車35c等の歯車35を介して同期して回転駆動する。したがって、押えローラ25は、ドラム1が図4中の矢印A方向に回転するのに伴って、図4中の矢印D方向に回転駆動される。更に、押えローラ25とドラム1とは、それぞれの外周速度が同一又は同一に近い外周速度になるように回転駆動される。
【0035】
以上のように、第二実施形態の切断装置110は、第一実施形態の切断装置100と同様に、刃物3が被切断物17を切り込む時の抵抗力が減少されて、より小さい力で切断ができると共に、被切断物17を押しつぶして身崩れ等を起こすことが大きく解消されて、良質の切断面を得ることが可能となり、品質の良い商品を得ることができる。
【0036】
加えて、第二実施形態の切断装置110は、一個の共通の駆動装置である回転駆動装置2だけを用いて、ドラム1と押えローラ25とを回転駆動させることができ、第一実施形態の切断装置100よりも、構成の簡素化、部品点数の削減、コストの低減及び全体として軽量化を図ることができる。
【0037】
<4.第三実施形態の切断装置の説明>
第三実施形態の切断装置120は、第二実施形態の切断装置110では一個の共通の駆動装置を用いてドラム1と押えローラ25とが同期して回転駆動されていたが、さらに押えローラ25よりも刃物3に近接した位置で適度の押圧力で被切断物17を押圧することにより、移動時にドラム外周面10での滑りを防止すると共に切断時にずれ動くことを防止することが可能な補助押えローラ53を有する補助押えローラ機構50を備え、一個の共通の駆動装置を用いて、ドラム1と押えローラ25と補助押えローラ53とが同期して回転駆動されるものである。具体的には、回転駆動装置2だけを用いて、ドラム1と押えローラ25と補助押えローラ53とが回転駆動されるものである。なお、第三実施形態の切断装置120については、上述した第二実施形態の切断装置110と同様の構成を有するものは同じ符号を付して説明を省略し、以下、異なる構成についてのみ説明する。
【0038】
補助押えローラ機構50は、図6に示すように、例えば、軸受ユニット19bの先端部のドラム1側に支軸51を中心に軸受ユニット19bに対して回動自在に設けられたベース部材52を有している。このベース部材52の先端部には、被切断物17を切断位置9に搬送すると共に被切断物17が刃物3によって切断される際に被切断物17を押える補助押えローラ53が設けられている。この補助押えローラ53は、ベース部材52に支持軸54が軸支されることで、回転自在に設けられている。更に、補助押えローラ53は、ベース部材52が軸受ユニット19bに対して回動自在に支持されているので、図6中の矢印F1,F2に示すように、支軸51を中心にドラム1に対して近接/離間する方向に回動することができる。よって、補助押えローラ53は、被切断物17に対する押圧力等を容易に調整することができる。更に、補助押えローラ53は、押えローラ25よりも小径に設けられている。換言すると、押えローラ25は、補助押えローラ53よりも大径に設けられている。したがって、先ず、被切断物17が大径の押えローラ25に容易に噛み込まれて進行していき、続いて強制的に小径の補助押えローラ53に送り込まれるので噛み込み易い。
【0039】
更に、補助押えローラ53の支持軸54には、スプロケット等の伝動部材55が設けられている。更に、押えローラ25の押えローラ軸29には、スプロケット等の伝動部材56が設けられている。そして、補助押えローラ53の伝動部材55と押えローラ25の伝動部材56には、チェーン部材57が掛け渡されている。即ち、補助押えローラ53と押えローラ25とは、チェーン部材57によって連結されている。したがって、補助押えローラ53は、押えローラ25が図6中の矢印D方向に回転するのに伴って、上流側11に配置されている被切断物17を切断位置9に進行させる方向である図6中の矢印F方向に回転駆動される。更に、押えローラ25は、ドラム1が図6中の矢印A方向に回転するのに伴って、図6中の矢印D方向に回転駆動される。つまり、補助押えローラ53は、ドラム1が図6中の矢印A方向に回転するのに伴って、図6中の矢印F方向に回転駆動される。即ち、補助押えローラ53は、回転駆動装置2によって、ドラム1、歯車35及び押えローラ25と同期して回転駆動され、ドラム1と押えローラ25と補助押えローラ53とは、それぞれの外周速度が同一又は同一に近い外周速度になるように回転駆動される。
【0040】
以上のように、第三実施形態の切断装置120は、第一及び第二実施形態の切断装置100,110と同様に、刃物3が被切断物17を切り込む時の抵抗力が減少されて、より小さい力で切断ができると共に、被切断物17を押しつぶして身崩れ等を起こすことが大きく解消されて、良質の切断面を得ることが可能となり、品質の良い商品を得ることができる。
【0041】
更に、第三実施形態の切断装置120は、第二実施形態の切断装置110と同様に、一個の共通の駆動装置である回転駆動装置2だけを用いて、ドラム1と押えローラ25と補助押えローラ53とを回転駆動させることができ、構成の簡素化、部品点数の削減、コストの低減及び全体として軽量化を図ることができる。
【0042】
加えて、第三実施形態の切断装置120は、補助押えローラ53を軸受ユニット19bの先端部のドラム1側に設けているので、刃物3により近い位置で被切断物17を押えることができる。したがって、第三実施形態の切断装置120は、第一及び第二実施形態の切断装置100,110よりも、刃物3による被切断物17の切断時に被切断物17がずれ動くことを防止することができ、特に、垂直方向の上下動作と水平方向の左右動作とを合成した上下動作をして、刃物3を刃長方向に引きながら被切断物17を切断していく引き切りするような場合において、被切断物17が水平方向にずれ動くことを防止することができ、刃物3の進行方向(ドラム1の軸線方向)に真っ直ぐに綺麗に切断することができる。よって、より良質の切断面を得ることができ、より品質の良い商品を得ることができ、より処理能力を大きくすることができる。
【0043】
<5.切断装置の変形例>
切断装置100,110,120は、例えば図1等に示すように、刃物駆動装置20に、被切断物17を円筒状ドラム1のドラム外周面10に対して押え付ける押え部材60を設けるようにしても良い。この押え部材60は、刃物3による切断位置9に接近した位置で被切断物17をドラム外周面10に押え付けることが可能なように、鈎形(L字形状)に形成されている。このような押え部材60は、刃物3が被切断物17を切断する際に、その刃物3の切断動作に同期して、刃物3による切断位置9に極めて近い位置で、被切断物17をまな板に相当する円筒状ドラム1のドラム外周面10に押し付ける。したがって、刃物3による切断時に被切断物17がずれることを防止することができ、特に、垂直方向の上下動作と水平方向の左右動作とを合成した上下動作をして、刃物3を刃長方向に引きながら被切断物17を切断していく引き切りするような場合において、被切断物17が水平方向にずれ動くことを防止することができ、刃物3の進行方向(ドラム1の軸線方向)に真っ直ぐに綺麗に切断することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 円筒状ドラム、2 回転駆動装置、3 刃物、4 入口ガイド板、5 出口ガイド板、6 ベース板、7 駆動側フラーム、8 反駆動側フレーム、8a 軸受、9 切断位置、10 ドラム外周面、11 上流側、12 下流側、13 ドラム駆動軸、15 ドラム軸受スタンド、16 ドラム軸受、17 被切断物、18 反駆動側ドラム軸、19a 軸受ユニット、19b 軸受ユニット、20 刃物駆動装置、21 刃先、22 刃物ホルダ、23 天板、24 押えローラ回転駆動装置、25 押えローラ、25a 押えローラ歯車、26a 押えローラ駆動ユニット、26b 押えローラ駆動ユニット、27 基端歯車軸、28 軸受、29 押えローラ軸、30 チェーン伝動機構、31a 基端部、32 スタンド、33 チェーン伝動機構、34b 歯車軸、34c 歯車軸、35a 第一歯車、35b 第二歯車、35c 第三歯車、36a 歯車、36b 歯車、36c 歯車、40 伝動部材、41 伝動部材、42 チェーン部材、50 ローラ機構、51 支軸、52 ベース部材、53 補助押えローラ、54 支持軸、55 伝動部材、56 伝動部材、57 チェーン部材、60 押え部材、100 切断装置、110 切断装置、120 切断装置、 T 張力
図1
図2
図3
図4
図5
図6