(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178128
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】増毛用毛髪及び増毛用毛髪の固着方法
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
A41G3/00 J
A41G3/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-126736(P2013-126736)
(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-1035(P2015-1035A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126218
【氏名又は名称】株式会社アートネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】亀井 省吾
【審査官】
大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】
特開平2−234903(JP,A)
【文献】
特開2007−196136(JP,A)
【文献】
特開平5−65446(JP,A)
【文献】
特開平9−268412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00−5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結び目に自毛を通して結着する擬毛と、前記擬毛の表面に付着するマイクロカプセルと、からなり、前記マイクロカプセルの内部には接着剤が内包されており、自毛に前記擬毛を結着するときに前記マイクロカプセルが潰れて結び目の内側に前記接着剤が流出することを特徴とする増毛用毛髪。
【請求項2】
前記擬毛の表面に水溶性バインダーが付着してあり、前記マイクロカプセルが前記水溶性バインダーを介して前記擬毛の表面に付着していることを特徴とする請求項1に記載の増毛用毛髪。
【請求項3】
接着剤が内包されたマイクロカプセルを擬毛の表面に付着させて増毛用毛髪を形成する工程と、
前記増毛用毛髪を自毛に結着する工程と、
結着する際に潰れた前記マイクロカプセルの内部から流出した前記接着剤を乾燥させる工程と、
残存している前記マイクロカプセルを洗い流す工程と、
を有することを特徴とする増毛用毛髪の固着方法。
【請求項4】
増毛用毛髪を形成する工程が、接着剤が内包されたマイクロカプセルと水溶性バインダーとを混合した溶液に擬毛を浸漬することによって行われ、かつ、マイクロカプセルを洗い流す工程が、残存している前記マイクロカプセルと前記水溶性バインダーとを洗い流す工程であることを特徴とする請求項3に記載の増毛用毛髪の固着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自毛に結着して増毛を行うのに用いられる増毛用毛髪及びその増毛用毛髪の固着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自毛に擬毛を固着して増毛する施術が行われている。このとき、増毛した擬毛が容易に取れてしまうことを防ぐために、解けにくい結着方法(例えば、特許文献1)や、接着剤を塗布して擬毛を固着する方法が考えられている。なお、結着とは擬毛(増毛用毛髪)を自毛に結びつけることとし、固着とは擬毛(増毛用毛髪)を自毛に結着や接着剤によって固定することとする。また、擬毛とは増毛に用いられる毛そのものとし、増毛用毛髪とは接着剤を塗布するなどの何らかの細工を施して増毛に用い易くした擬毛のことと定義する。
【0003】
図4は、従来の結着方法を示す図である。このような複雑な結着方法の場合、結着した擬毛12が解けないようにしっかりと自毛20に結びつけるため、結び目13を何重にも施すことになる。その結果、結び目13が大きくなり、外観上目立ってしまうという問題を生じることになる。
【0004】
また、接着剤による固着の場合も同様に、結着した擬毛が取れないように、結び目全体を接着剤で覆って固化させるので、結び目自体を小さくしたとしても、接着剤を含めると大きくなり、外観上目立ってしまうということがある。
【0005】
さらに、結着による場合及び接着剤による固着の場合のいずれにおいても、作業が容易ではなく手間がかかるため、訓練を受けた専門の施術者が作業を行う必要があり、施術者の育成や確保が困難であるといった問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−53910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの実情に鑑み、本発明では、増毛用毛髪を自毛に固着するのに高度な技術を必要とせず、また、結び目を大きくしなくても十分な接着力を有する増毛用毛髪及び増毛用毛髪の固着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明の増毛用毛髪は、擬毛と、その擬毛の表面に付着するマイクロカプセルと、からなり、マイクロカプセルの内部には接着剤が内包されていることを特徴とするものである。なお、擬毛の表面に水溶性バインダーが付着してあり、マイクロカプセルが前記水溶性バインダーを介して前記擬毛の表面に付着していることにしてもよい。
【0009】
また、本発明の増毛用毛髪の固着方法は、接着剤が内包されたマイクロカプセルを擬毛の表面に付着させて増毛用毛髪を形成する工程と、その増毛用毛髪を自毛に結着する工程と、結着する際に潰れた前記マイクロカプセルの内部から流出した前記接着剤を乾燥させる工程と、残存している前記マイクロカプセルを洗い流す工程と、を有することを特徴とするものである。なお、増毛用毛髪を形成する工程が、接着剤が内包されたマイクロカプセルと水溶性バインダーとを混合した溶液に擬毛を浸漬することによって行われ、かつ、マイクロカプセルを洗い流す工程が、残存している前記マイクロカプセルと前記水溶性バインダーとを洗い流す工程であることにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の増毛用毛髪を用いると、接着剤を内包したマイクロカプセルが結着の際に潰れ、結び目の内側に接着剤が流出するので、必要な箇所に接着剤を塗布することができ、結び目を大きくしなくても十分な接着力を有する固着が実現できる。さらに、本発明の増毛用毛髪の固着方法では、増毛用毛髪を固着するのに高度な技術を必要とせず、容易に固着できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の増毛用毛髪を自毛に固着する状況を示す図であって、(a)は結び目に自毛を通したところ、(b)は結着している途中、(c)は固着終了時を示す。
【
図2】水溶性バインダーを用いた場合の増毛用毛髪の拡大断面図である。
【
図3】増毛用毛髪にマイクロカプセルを付着させる状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の増毛用毛髪を自毛に固着する状況を示す図であって、(a)は結び目に自毛を通したところ、(b)は結着している途中、(c)は固着終了時を示す。
【0013】
増毛用毛髪10は、擬毛12の表面にマイクロカプセル14を付着させて形成したものである。マイクロカプセル14の内部には、接着剤16が内包されている。
【0014】
このマイクロカプセル14の製造方法は、特に限定するものではなく、一般に用いられている方法(例えば界面沈殿法)を用いればよい。なお、マイクロカプセル14の粒子径は、毛髪径が0.05mmから0.07mm程度であることを考慮して、10μm以下にするのが好ましい。また、マイクロカプセル14の壁材は、結着時に潰れる程度の強度のもので、材料としては、メラミン樹脂、ゼラチン、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂など各種の材料を使用することができる。
【0015】
接着剤16は、マイクロカプセル14に内包でき、かつ、洗髪で容易に落ちないものとし、例えばシリコン系接着剤等を用いるとよい。なお、接着剤16を二液混合タイプとし、2種類のマイクロカプセル14を製造して擬毛12に付着させるというようなものでもよい。
【0016】
マイクロカプセル14の擬毛12への付着は、マイクロカプセル14の壁材がゼラチンやメラミン樹脂のように粘性を有するときは、それ自体の粘性で付着させてもよいし、また、水溶性の糊剤を水溶性バインダーとして用いることで、水溶性バインダーを介して擬毛12にマイクロカプセル14を付着させてもよい。なお、
図1では、水溶性バインダーを用いないでマイクロカプセル14を直接付着させた例を図示している。
【0017】
増毛用毛髪10の自毛20への固着方法は、まず
図1(a)に示すように、マイクロカプセル14を付着した増毛用毛髪10で結び目13を形成し、その結び目13に自毛20を通す。結び目13の形状は特に限定しないが、あまり結び目13が大きくない
図1(a)のような単純な輪形状とするのが好ましい。
【0018】
次に
図1(b)では、結着するために結び目13を絞っている途中を示している。このとき、擬毛12同士、又は擬毛12と自毛20が擦れたり接触したりすることにより、自動的にマイクロカプセル14の幾つかが潰されて、内包されていた接着剤16が流出する。そして、このとき流出した接着剤16は、主に結び目13の内側に付着する。その状態で、しばらく接着剤16を乾燥させると、擬毛12と自毛20とは接着剤16によって固着される。
【0019】
図1(c)は結着が完了した固着終了時を示している。接着剤16によって擬毛12と自毛20とが固着された後、洗髪をすると、水溶性バインダー18を使用していないときは潰れていないマイクロカプセル14が、水溶性バインダー18を使用しているときは水溶性バインダー18及び潰れていないマイクロカプセル14が、洗い流されることになる。そうすると、結び目13の内側に付着した固着に必要な接着剤16のみが残存するので、結び目13はそれほど大きくならない態様で、擬毛12と自毛20とを固着することができる。
【0020】
なお、
図1では、水溶性バインダーを用いていない例を示したが、マイクロカプセル14を擬毛12に付着させるために水溶性バインダーを用いることが多い。
図2は、水溶性バインダーを用いた場合の増毛用毛髪の拡大断面図である。また、
図3は、増毛用毛髪にマイクロカプセルを付着させる状況を示す図である。
【0021】
水溶性バインダー18を用いる場合の増毛用毛髪10は、擬毛12の表面を水溶性バインダー18で覆い、水溶性バインダー18にマイクロカプセル14を付着させた状態になっている。このような増毛用毛髪10は、
図3に示すように水溶性バインダー18とマイクロカプセル14を混合した溶液に、擬毛12を浸漬することにより水溶性バインダー18を介してマイクロカプセル14の付着がなされる。このとき、擬毛12は折り返した状態で浸漬させれば、結び目13になる位置にマイクロカプセル14を多く付着させることができる。なお、上述したように、不要なマイクロカプセル14は固着後に洗い流されるので、ここでは結び目13の内側だけにマイクロカプセル14を付着させるというような、煩雑な作業を行う必要はない。
【0022】
以上のような増毛用毛髪10を用いて固着する場合は、接着剤16を必要な箇所だけに付着することができるので、結び目13は小さくできる。また、結び目13の形状は単純な形状でよいので、固着するのに高度な技術は要求されない。また、接着剤16はマイクロカプセル14に内包されていて、結着により自動的に接着剤16が必要な箇所に流出されるため、施術は従来に比べて容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0023】
10 増毛用毛髪
12 擬毛
13 結び目
14 マイクロカプセル
16 接着剤
18 水溶性バインダー
20 自毛