特許第6178138号(P6178138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178138
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】3次元形状計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20170731BHJP
   G01N 21/85 20060101ALN20170731BHJP
【FI】
   G01B11/24 K
   !G01N21/85 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-143785(P2013-143785)
(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-17837(P2015-17837A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷本 尚之
(72)【発明者】
【氏名】宮下 武志
(72)【発明者】
【氏名】野沢 省吾
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−242319(JP,A)
【文献】 特開平07−260444(JP,A)
【文献】 特開2010−085179(JP,A)
【文献】 特開2003−207458(JP,A)
【文献】 特開昭60−098340(JP,A)
【文献】 特開2004−274770(JP,A)
【文献】 米国特許第06046812(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01N 21/85
G01C 3/00− 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に搬送される対象物に対し、前記搬送の方向と交差する方向に長手方向の軸を有するスリット光を照射し、その反射光をカメラ部で撮像して取得した画像に基づいて前記対象物の表面形状を計測する3次元形状計測装置において、
前記対象物に複数のスリット光セグメントを入射させることで前記スリット光が形成されるようにする入射系と、
前記軸を挟んで前記搬送の方向の上流側および下流側に配置され、前記形成されたスリット光の反射光をそれぞれ受光して前記カメラ部に導く出射系と、
を備え
前記入射系は、スリット光を出射する単一の光源部(20)と、当該出射されるスリット光の長手方向の中央部に相当するスリット光セグメントを直接的に前記対象物に入射させるとともに、前記出射されるスリット光の長手方向の端部に相当するスリット光セグメントを反射させて前記対象物に入射させることで前記スリット光が前記対象物上に形成されるようにする光学部(21)と、を有し、
前記出射系は、前記入射系の前記光学部によって前記対象物に照射されたスリット光の反射光を、前記上流側および下流側で受容して前記カメラ部に向かうように反射する第2光学部(22)を有し、
前記光学部および前記第2光学部は、
前記光源部および前記対象物に対向する上面および下面と、前記光源部が出射するスリット光の長手方向に交差して対向する2側面と、前記照射されたスリット光の反射光が前記カメラ部に向かうようにするために傾いた状態で対向する他の2側面と、を含む一体のプリズムによって構成されており、
前記端部に対応するスリット光セグメントは、前記2側面に配置されたミラーまたは前記2側面とそれぞれの雰囲気とが形成する界面によって反射されて前記対象物に入射し、
前記対象物上に形成されたスリット光の反射光は前記他の2側面に配置されたミラーまたは前記他の2側面とそれぞれの雰囲気とが形成する界面によって前記カメラ部に向かうように反射される、
ことを特徴とする3次元形状計測装置。
【請求項2】
前記出射系は、前記カメラ部に対する光軸上に、前記画像の縦方向の解像度と横方向の解像度とが異なるようにする解像度変更部を有することを特徴とする請求項1に記載の3次元形状計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤やカプセル等の医薬品、食品、電子部品、機械部品、鋼材、建材およびその他の物品(以下、「対象物」という)の表面形状(3次元形状)を計測する3次元形状計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の3次元形状を計測する方法として光切断法が知られている。光切断法とは、スリット光を対象物の表面に照射し、その表面に現れるスリット光の反射光をエリアセンサ等のカメラで撮像し、取得した画像上で見られるスリット光の形を三角測量の原理に基づいて解析することによって対象物の3次元形状を計測する手法である。そして、計測された3次元形状は、その特徴を認識し、当該認識した特徴からその3次元形状についての適否(例えば、欠損の有無や、刻印が付されている場合にはその良否)等を判定するために供される。このような光切断法を用いた3次元形状の計測においては、対象物からの反射光を1方向からのみ取得すると、対象物によっては撮像方向の死角となる部位が発生し、その部位の反射光を取得することができないために正確な計測を行うことができなくなることがある。
【0003】
そこで、対象物の表面に現れるスリット光の反射光を2以上の視点で捉えて撮像することにより、計測の死角を低減する(以下、多視点化と称する)手法が採用されることがある。例えば特許文献1にはかかる多視点化の手法を採用した外観検査装置が開示され、その図4には、帯状のスリット光を対象物の表面に照射するスリット光照射部と、スリット光の画像を撮像するエリアセンサカメラと、スリット光の反射光を搬送方向の下流側および上流側のそれぞれから受光してエリアセンサカメラに導く第1および第2光学機構と、エリアセンサカメラにより撮像された2つの画像に基づいて対象物の表面の適否を判定する形状判定部と、を含む表面形状検査手段を備えた構成が記載されている。
【0004】
しかしながら、本発明者らは、特許文献1に開示されたような多視点化の手法を用いてもなお、形状測定を正確に行うには不十分な場合があるとの知見を得た。すなわち、対象物搬送方向の上下両流側に光学機構が配置されていても、対象物の形状によっては死角部位(スリット光が照射されない断線部分)や照射光量が不十分となる部位が生じ、それらの部位からは好ましい反射光が得られないために対象物の正確な形状測定が行い得なくなる場合があるという知見を得たのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−242319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって本発明は、多視点化の利点を減殺する上記した不都合の発生を抑制し、対象物の形状測定をより正確に行い得るようにすることを目的とする。また、本発明は、そのための構造を簡単且つ低廉に提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明は、相対的に搬送される対象物に対し、前記搬送の方向と交差する方向に長手方向の軸を有するスリット光を照射し、その反射光をカメラ部で撮像して取得した画像に基づいて前記対象物の表面形状を計測する3次元形状計測装置において、
前記対象物に複数のスリット光セグメントを入射させることで前記スリット光が形成されるようにする入射系と、
前記軸を挟んで前記搬送の方向の上流側および下流側に配置され、前記形成されたスリット光の反射光をそれぞれ受光して前記カメラ部に導く出射系と、
を備え
前記入射系は、スリット光を出射する単一の光源部(20)と、当該出射されるスリット光の長手方向の中央部に相当するスリット光セグメントを直接的に前記対象物に入射させるとともに、前記出射されるスリット光の長手方向の端部に相当するスリット光セグメントを反射させて前記対象物に入射させることで前記スリット光が前記対象物上に形成されるようにする光学部(21)と、を有し、
前記出射系は、前記入射系の前記光学部によって前記対象物に照射されたスリット光の反射光を、前記上流側および下流側で受容して前記カメラ部に向かうように反射する第2光学部(22)を有し、
前記光学部および前記第2光学部は、
前記光源部および前記対象物に対向する上面および下面と、前記光源部が出射するスリット光の長手方向に交差して対向する2側面と、前記照射されたスリット光の反射光が前記カメラ部に向かうようにするために傾いた状態で対向する他の2側面と、を含む一体のプリズムによって構成されており、
前記端部に対応するスリット光セグメントは、前記2側面に配置されたミラーまたは前記2側面とそれぞれの雰囲気とが形成する界面によって反射されて前記対象物に入射し、
前記対象物上に形成されたスリット光の反射光は前記他の2側面に配置されたミラーまたは前記他の2側面とそれぞれの雰囲気とが形成する界面によって前記カメラ部に向かうように反射される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象物には複数のスリット光セグメントの入射によってスリット光が形成されることで、一のスリット光セグメントの死角部位に対しては他のスリット光セグメントによる補完、また光量不足となる部位に対してはスリット光セグメント同士の重畳が行われるので、多視点化の利点と相俟って対象物の形状測定をより正確に行うことができるようになる。
【0010】
また、対象物に向けて出射された複数のスリット光セグメントのそれぞれが空間に占める面(光線面)を同一平面内に収めることで対象物上に重畳したスリット光が形成されるようにする場合に、複数の光源部を用いる方法に比べ、検査装置の大型化および高価格化を抑制し、且つ照射される複数のスリット光同士の長手方向のアライメントを確保するべく複数の光源部を厳密に調整して配置することも不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る3次元形状計測装置の全体構成を示す模式図である。
図2】(a)および(b)は、光源部が出射するスリット光と搬送系との関係の2例を説明するための模式的斜視図である。
図3】(a)および(b)は、図1の構成のうち、それぞれ、対象物に対するスリット光の入射系を説明するための模式的な側面図および正面図である。
図4図1の構成のうち、対象物で反射されたスリット光の出射系の構成を示す模式的側面図である。
図5図4に示した出射系を構成する第3光学部の構成を説明するための模式的平面図である。
図6図4に示した出射系を構成する第4光学部の変形例の構成を説明するための模式的側面図である。
図7図4に示した出射系を構成する第5光学部の構成を説明するための模式的正面図である。
図8図1の構成のうち、カメラ部および画像処理部の構成を示す模式図である。
図9図1の構成に従って画像処理部に入力されるスリット光の反射光の画像を説明するための模式図である。
図10図1の第1光学部を用いない場合に対象物の表面に現れる光切断線を示す模式図である。
図11図1の第1光学部を用いた場合に対象物の表面に現れる光切断線を示す模式図である。
図12】(a)および(b)は、それぞれ、図1の第5光学部を用いない場合および用いた場合に画像処理部に入力されるスリット光の反射光の画像を説明するための模式図である。
図13】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の他の実施形態に係る3次元形状計測装置の主要部の構成を説明するための模式的な側面図および正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明3次元形状計測装置を詳細に説明する。なお、参照される図面において、便宜上、Xは3次元形状が計測される対象物の搬送方向に対応した軸、Yは搬送方向を含む搬送面(水平面)内においてX軸に直交する軸、ZはX軸およびY軸に直交する方向(鉛直方向)の軸を示すものとして定義する。そして、本発明3次元形状計測装置またはその構成要素をX軸、Y軸およびZ軸に沿って見た場合の図を、それぞれ、正面図、側面図および平面図と称する。また、各図中のUおよびDは、それぞれ、搬送方向Cの上流側および下流側で捉えられて導かれる反射光の代表的な主光線およびその軸(以下、主光線軸と称する)を示すものとする。
【0013】
(実施形態の全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る3次元形状計測装置の全体構成を示す模式的な側面図である。本実施形態の3次元形状計測装置は、概して、3次元形状計測の対象となる錠剤の形態の対象物Tを搬送する搬送部1と、対象物Tの表面形状を計測する3次元形状計測部2と、で構成される。
【0014】
図示の例による搬送部1は、タイミングプーリ10および11と、タイミングベルト12と、で構成される。タイミングプーリ10および11は、それぞれ、対象物Tの搬送方向Cの上流側および下流側に配置され、タイミングベルト12は、それらのタイミングプーリ10および11に張架された無端式ベルトコンベアの形態を有している。タイミングプーリ10または11に接続された不図示のモータが作動すると、そのタイミングプーリを介してタイミングベルト12が駆動されることで、タイミングベルト12に担持された対象物TがX軸に沿って搬送方向Cに搬送される。
【0015】
3次元形状計測部2は、対象物Tに対するスリット光の入射系を構成する光源部20および第1光学部21と、対象物Tで反射されたスリット光の出射系を構成する第2光学部22〜第5光学部25と、カメラ部26と、画像処理部27と、を備える。
【0016】
入射系の構成要素である光源部20は、対象物Tに対して照射すべきスリット光を出射する。また、同じく第1光学部21は、光源部20から出射されたスリット光を直接および間接的に対象物Tに照射する。
【0017】
出射系は、対象物Tに照射されたスリット光の反射光を搬送方向Cの上流側および下流側の2視点でスリット光の反射光を捉えてカメラ部26に向かわせるよう構成されている。第2光学部22は、対象物Tの表面に現れるスリット光の反射光を搬送方向Cの上流側および下流側で受光し、その反射光を第3光学部23に向ける。第3光学部23は、第2光学部22から向けられたスリット光の上流側および下流側の反射光をそれぞれ主光線軸Uおよび主光線軸Dの軸周りに90°回転させ、回転させたスリット光の反射光を第4光学部24に向ける。第4光学部24は、第3光学部23が回転させたスリット光の反射光を第5光学部25に向ける。第5光学部25は、第4光学部24からのスリット光の反射光を光軸に対して直交する方向にアナモルフィック変倍し、アナモルフィック変倍されたスリット光の反射光をカメラ部26に向ける。
【0018】
カメラ部26は、第5光学部25から導かれたスリット光の反射光の画像を取得する。画像処理部27は、カメラ部26が取得した画像を画像処理し、対象物Tの3次元形状データを算出する。
【0019】
(入射系)
図2(a)および(b)は、入射系の構成のうち、光源部20の構成の2例を示す模式図である。光源部20は、光を発する光源S0と、その光のビーム形状を変換してスリット光の形状とするレンズ系L0と、で構成される。例えば、レンズ系L0は、搬送方向Cに対して交差する方向、例えば直交する方向(Y軸の方向)が長手方向となるスリット光を、同図(a)に示すようにシングルライン、または、同図(b)に示すように互いに平行なマルチラインなどの形態に変換することができる。なお、本実施形態では、搬送方向Cに対して直交する方向(Y軸の方向)が長手方向となるように対象物T上に形成されるスリット光としてシングルラインのスリット光を用いる例を説明するが、マルチラインのスリット光を用いて対象物Tの表面に現れるスリット光の反射光を複数本とすることで、対象物の3次元形状をさらに高精度に計測するようにすることもできる。
【0020】
また、次に述べるように、本実施形態では単一の光源部20を用いるとともに、そのスリット光から対象物Tに直接的に照射されるスリット光セグメントおよび間接的に照射されるスリット光セグメントを生成し、それらのスリット光セグメントを互いに異なる方向から対象物Tに入射させることで対象物Tにスリット光が照射されるようにするための第1光学部21を用いている。すなわち、本実施形態では見かけ上の多光源化を図ることで、対象物Tに対するスリット光の照射の死角部位や光量不足部位の発生を抑制する。しかし、本実施形態のようにシングルラインのスリット光を形成する場合には、図2(a)に示すように、光源部20のほか、そのスリット光の光線面と同一平面内に各々の光線面が収まるように複数の位置(例えばR1,R2で示す位置)からそれぞれ対象物Tにスリット光を直接入射させる光源部を設けてもよい。すなわち、実際に配設された複数の光源部により複数のスリット光セグメントが対象物Tに入射され、それらが対象物T上でシングルラインのスリット光を形成できるように構成されていてもよい。
【0021】
図3(a)および(b)は、それぞれ、本実施形態による第1光学部21の構成例を示す模式的な側面図および正面図である。第1光学部21は、X軸、Y軸およびZ軸にそれぞれ直交する対向2面をもつ直方体形状のプリズムP1と、Y軸すなわち光源部20が出射して対象物T上に形成されるシングルラインのスリット光の長手方向に直交して対向する2側面に配置されたミラーM1AおよびM1Bと、で構成される。プリズムP1は、光源部20に対向する上面を介して、光源部20から出射されたスリット光の長手方向の中央部をそのまま透過させ、対象物Tに対向する下面を介して、当該透過させたスリット光部分(スリット光セグメントLSM)を対象物Tに対し言わば直接的に入射させる。一方、ミラーM1AおよびM1Bは、光源部20から出射されたスリット光の長手方向の両端部を反射させ、反射させたスリット光部分(スリット光セグメントLSA,LSB)を対象物Tに対し言わば間接的に入射させる。そして、これらのスリット光セグメントがY軸の方向に長手方向を有するシングルラインのスリット光を対象物T上に形成するよう、プリズムP1、ミラーM1AおよびミラーM1Bの寸法、形状および配設状態は適切に定められる。
【0022】
例えば、ミラーM1AおよびM1Bは、Y軸に交差するプリズムP1の2側面の全面をカバーするように配置されていなくてもよく、その配置範囲は、対象物Tに入射させるスリット光セグメントの所要の寸法や対象物Tに対する入射方向などに応じて適宜定め得るものである。また、ミラーM1AおよびM1Bの配設部位であるプリズムP1の側面に対するスリット光セグメントLSA,LSBの入射角が屈折の臨界角を超えている場合には、スリット光セグメントLSA,LSBはプリズムと雰囲気とが形成する界面で全反射されて対象物Tに向かうので、ミラーM1AおよびM1Bを設ける必要はなく、第1光学部21をプリズムP1のみで構成することもできる。さらに、スリット光セグメントLSM、LSAおよびLSBのそれぞれの光線面が同一平面内に収まり、これらのスリット光セグメントによってY軸の方向に長手方向を有するシングルラインのスリット光が対象物T上に形成されるようにするものであれば、プリズムP1の上記2側面ないしはミラーM1AおよびM1Bの回転角度についても適宜定め得るものである。例えば、直方体形状のプリズムP1を用いる代わりに、Y−Z平面に平行な断面が台形となる形状のプリズムを用い、その台形の斜辺に対応した側面が、スリット光の長手方向に交差して対向する2側面をなすようにしてもよい。つまり、図3(b)に示されたプリズムP1に対し、X軸周りに回転角度のついた(例えば「ハ」の字状となっている)2側面を有するプリズムが用いられてもよい。
【0023】
(出射系)
図4図8を用いて本実施形態の出射系およびその構成要素を説明する。
【0024】
図4は、図1の構成のうち出射系のみを示した模式的側面図である。第2光学部22は、対象物Tに照射されたスリット光の反射光を搬送方向Cの上流側および下流側の2視点でスリット光の反射光を捉えてカメラ部26に向かわせるよう構成されている。第2光学部22は、搬送方向Cの上流側および下流側に配され、対象物Tの表面に現れるスリット光の反射光を搬送方向Cの上流側および下流側で受光して反射し、第3光学部23に導くミラーM2AおよびM2Bを有する。
【0025】
第3光学部23は、図4および図5に示すように、搬送方向Cの上流側および下流側にそれぞれ配されたプリズムP3AおよびP3Bを有する。プリズムP3AおよびP3Bは、それぞれ、第2光学部22のミラーM2AおよびM2Bから来たスリット光の反射光を第4光学部24の方向に屈折および反射させ、当該屈折および反射させた光を主光線軸UおよびDのそれぞれの周りに90°回転させる。図4に示した構成例では、プリズムP3AおよびP3Bにはダブ(ドーブ)プリズムの形態を有している。一般的に、ダブプリズムは像の面内回転を行うものであり、像の回転角度はダブプリズムをその長手方向を軸に回転させたときの角度Rの2倍になる。本実施形態では、第2光学部22から来たスリット光の反射光を主光線軸Uおよび主光線軸Dの周りに90°回転させるので、ダブプリズムの回転角度Rを45°としている。
【0026】
第4光学部24は、搬送方向Cの上流側に配されたミラーM4AおよびM4Cと、下流側に配されたミラーM4BおよびM4Dと、を有する。ミラーM4AおよびM4Bは、第3光学部23のプリズムP3AおよびP3Bからそれぞれ導かれたスリット光の反射光をミラーM4CおよびM4Dの方向に反射させ、ミラーM4CおよびM4Dは当該反射光を第5光学部25の方向に反射させる。なお、ミラーM4CおよびM4Dの基板を、図4に示したように二等辺三角形(例えば直角二等辺三角形)の断面形状を有するプリズムP4の隣り合う斜面の形態とすることができる。または、図6に示すように、ミラーM4AおよびM4Cの基板を、四角形(例えば平行四辺形)の断面形状を有するプリズムP4Aの対向する側面の形態とするとともに、ミラーM4BおよびM4Dの基板についても、同様のプリズムP4Bの対向する側面の形態とすることができる。
【0027】
第5光学部25はプリズムP5AおよびP5Bを有する。プリズムP5Aは第4光学部23のミラーM4CおよびM4Dから来たスリット光の反射光をプリズムP5Bの方向に屈折させ、プリズムP5BはプリズムP5Aから来たスリット光の反射光をカメラ部26の方向に屈折させる。プリズムP5AおよびP5Bは、図7に示すようにアナモルフィックプリズムペアを構成し、第4光学部24から来たスリット光の反射光を光軸に対して直交する方向にアナモルフィック変倍することで、Y軸に平行な方向(画像の高さ方向すなわち縦方向)の解像度をX軸に平行な方向(画像の横方向)の解像度よりも高くする。
【0028】
(カメラ部および画像処理部)
図8は、図1の構成のうち、カメラ部26および画像処理部27の構成例を示す模式図である。カメラ部26は、撮像面を有するカメラC6と、フォーカス,アイリス,倍率などを調節する機能を有するレンズ系L6と、を含む。スリット光の反射光が第5光学部25を介してカメラ部26に導かれて撮像されることで、搬送方向Cの上流側および下流側におけるスリット光の反射光のそれぞれの画像が取得される。そして、その画像は画像処理部27により画像処理され、搬送方向Cの上流側および下流側で得た対象物Tの3次元形状データが算出される。
【0029】
図9は、画像処理部27に入力されるスリット光の反射光の画像の模式図であり、左側部分および右側部分がそれぞれ搬送方向Cの上流側および下流側におけるスリット光の反射光の画像、すなわち対象物Tの表面に現れる光切断線EおよびFに対応している。画像処理部27は、2つの光切断線EおよびFに対応したデータを相補的に用いながら光切断線のシフト量Hを三角測量の原理に基づいて解析することにより、対象物Tの3次元形状データを算出する。
【0030】
(実施形態の効果)
以上の構成を有する本実施形態の効果を説明する。
【0031】
まず、本実施形態では、図3(b)に示すように、光源部20が出射するスリット光の長手方向の中央部(スリット光セグメントLSM)をそのまま透過させて対象物Tに入射させる一方、光源部20から出射されたスリット光の長手方向の両端部(スリット光セグメントLSA,LSB)をミラーM1AおよびM1Bで反射させて対象物Tに入射させる第1光学部21を用いることで、見かけ上の多光源化を実現している。
【0032】
図10は、かかる第1光学部21を用いない場合に対象物Tの表面に現れる光切断線Jを表す模式図である。同図に示すように、単一の光源部20に対し第1光学部21を用いない場合には、光源部20が出射する放射中心が1点の単一のスリット光が光切断線Jの形成に関与するために、対象物Tの側面にスリット光の死角となる部位や光量不足となる部位が生じやすい。この場合は、対象物搬送方向の上下両流側に光学機構を配置して多視点化を図り、撮像された2つの画像に基づいて3次元形状を測定しようとしても、そもそも好ましいスリット光が照射されておらず、処理に必要な反射光画像が得られていないことから、対象物Tの側面の表面形状を正確に計測できなくなることがある。
【0033】
これに対し、図11に示すように、第1光学部21を用いた場合には、スリット光セグメント(LSM,LSA,LSB)同士が断線部位を補完し合うことによって、あるいは重畳によって光量不足を補い合うことによって、好ましい光切断線Kを対象物T上に形成できるようになる。この結果、多視点化の利点を損なうことなく、対象物Tの側面の表面形状をより正確に計測できるようになる。
【0034】
なお、本実施形態では、光源部20が出射するスリット光の端部を反射して対象物Tに入射させることで、見かけ上の多光源化を実現した構成を採用した。しかし本発明は、図2(a)について説明したように、同一平面内に光線面が収まるように複数の位置からそれぞれ対象物Tにスリット光を直接的に入射させる複数の光源部を実際に配設する構成を排除するものではなく、かかる構成も本発明の範囲に包含される。しかしながら、複数の光源部を配設する場合に比して検査装置の構成の低廉化および小型化を可能とし、且つ、スリット光セグメントをアライメントすることで好ましいスリット光が対象物上に形成されるよう、複数の光源部を厳密に配置する作業をなくす観点からは、本実施形態のような第1光学部21を用いることが好ましい。
【0035】
次に、本実施形態においては、第4光学部24とカメラ部26との間に、画像の縦方向の解像度と画像の横方向の解像度とを異ならせることが可能な解像度変更部としての第5光学部25が配設されている。
【0036】
図12(a)は、第5光学部25を用いない場合に画像処理部27に入力されるスリット光の反射光の画像の模式図である。第5光学部25を用いない場合には、第4光学部24から来たスリット光の反射光が光軸に対して直交する方向にアナモルフィック変倍されないので、Y軸に平行な方向(画像の縦方向)の解像度が画像のX軸に平行な方向(画像の横方向)の解像度と等しくなる。これに対し、第5光学部25を用いた場合には、第4光学部24から来たスリット光の反射光は光軸に対して直交する方向にアナモルフィック変倍されるので、図12(b)に示すように、画像の縦方向の解像度が画像の横方向の解像度よりも高くなり、対象物Tの凹凸を強調することができる。その結果、対象物Tの3次元形状の計測において、画像の縦方向の計測精度が画像の横方向の計測精度よりも高くなり、計測された3次元形状についての適否(例えば、欠損の有無や、刻印が付されている場合にはその良否)等の判定がより正確に行えるようになる。
【0037】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、上述した実施形態ないしはその変形例に限られることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採用することができる。
【0038】
例えば、上述した実施形態においては、第1光学部21と第2光学部22とが別体のユニットとして構成されているが、これらを一体のユニットとして構成することもできる。
【0039】
図13(a)および(b)は、それぞれ、かかる実施形態の主要部の構成を説明するための模式的な側面図および正面図である。これらの図において、第1光学部と第2光学部とを一体化した光学部212は、台形(例えば等脚台形)の側断面形状を有するプリズムP12と、光源部20が出射するスリット光の長手方向の端部(スリット光セグメントLSA,LSB)を反射して対象物Tに入射させるミラーM1AおよびM1Bと、対象物Tの表面に現れるスリット光の反射光を搬送方向Cの上流側および下流側で受光して反射するミラーM2AおよびM2Bと、を有する。ミラーM1AおよびM1BはY軸すなわち光源部20が出射して対象物T上に形成されるシングルラインのスリット光の長手方向に直交して対向するプリズムP12の2側面に配置される一方、ミラーM2AおよびM2Bはスリット光の反射光が第3光学部23ないしはカメラ部26に向かうようにするために傾いた状態で対向する2側面(台形の斜辺部分に対応した2側面)に配置される。また、プリズムP12は、図3(a)および(b)について上述したプリズムP1と同様、光源部20から出射されたスリット光の長手方向の中央部(スリット光セグメントLSM)をそのまま透過させて対象物Tに入射させる。
【0040】
かかる構成には、第1光学部21および第2光学部22を各別に設置する必要性を廃することができるために、3次元形状計測部を構築する際の作業性が向上するとともに、スリット光の光路を画成する光学系としての精度を向上できるという利点がある。なお、上述と同様、ミラーM1AおよびM1Bの配設部位となるプリズムP12の側面に対するスリット光セグメントLSA,LSBの入射角が屈折の臨界角を超えている場合には、光学部212へのミラーM1AおよびM1Bの配設を不要とすることができる。同様に、ミラーM2AおよびM2Bの配設部位となるプリズムP12の側面に対する対象物Tからの反射光の入射角が屈折の臨界角を超えている場合には、光学部212へのミラーM2AおよびM2Bの配設を不要とすることができる。さらに、ミラーM1AおよびM1Bが配置され得る2側面についても上述した実施形態と同様に構成することが可能である。
【0041】
また、上述した第2〜第4光学部は、図9に示したように、画像の縦方向を図1におけるY軸方向、画像の横方向をX軸方向に一致させて切断線E,Fの画像を横並びで得るための構成および配置としたが、対象物の形状や形状計測時の姿勢あるいは抽出したい特徴に応じて形状測定を正確に行う観点から、取得する画像の構成および配置、並びにそのためのそれらの光学部の構成および配置は適宜定めることができる。
【0042】
さらに、上例では解像度変更部である第5光学部25としてアモルフィックプリズムペアを用い、Y軸に平行な方向(画像の縦方向)の解像度をX軸に平行な方向(画像の横方向)の解像度よりも高くするようにした。しかし所望であれば、画像の横方向の解像度を画像の縦方向の解像度よりも高くすることも可能であり、その場合は第5光学部25のアモルフィックプリズムペアの光軸まわりの回転角度あるいは第3光学部23のダブプリズムの回転角度を変更することで対応可能である。また、解像度変更のためにアモルフィックプリズムペアの採用を必須とするものではなく、例えばシリンドリカルレンズなどが採用されてもよい。加えて、解像度変更の必要がない場合には第5光学部25の採用は不要である。
【0043】
また、上述の実施形態では、本願発明の3次元形状計測の対象となる対象物Tとして錠剤を例示したが、その形状は図1等に示されたようなものや図9等に示されたようなものに限られず、種々の形状のものを対象物とすることができる。さらに、本発明の検査対象物としては、そのような錠剤だけでなく、その他の医薬品(カプセル等)や、食品、電子部品、機械部品、鋼材および建材等も挙げられるが、これらに限定されるものでもない。すなわち、上述したように照射されるスリット光の死角部位や光量不足となる部位が生じにくい構成を採用することにより、3次元形状計測の対象となる対象物の範囲を拡大することができるからである。
【符号の説明】
【0044】
1 搬送部
2 3次元形状計測部
20 光源部
21、22、23、24、25 第1、第2、第3、第4、第5光学部
26 カメラ部
27 画像処理部
C 対象物搬送方向
M1A、M1B、M2A、M2B、M4A〜M4D ミラー
P1、P3A、P3B、P4、P4A、P4B、P5A、P5B、P12 プリズム
T 対象物
図1
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図12
図13