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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178141
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】排ガス処理方法および排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/18 20060101AFI20170731BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20170731BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20170731BHJP
   B01D 53/73 20060101ALI20170731BHJP
   B01D 53/75 20060101ALI20170731BHJP
   B01D 53/76 20060101ALI20170731BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20170731BHJP
   B01D 53/79 20060101ALI20170731BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   B01D53/18 150
   B01D53/50 230
   B01D53/56 230
   B01D53/73
   B01D53/75
   B01D53/76
   B01D53/78
   B01D53/79
   B01D53/92 215
   B01D53/92 224
   B01D53/92 310
   B01D53/92 320
   B01D53/92 331
   B01D53/92 335
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-145624(P2013-145624)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-16434(P2015-16434A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2014年7月14日
【審判番号】不服2016-5464(P2016-5464/J1)
【審判請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】黒木 智之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雅章
(72)【発明者】
【氏名】藤島 英勝
(72)【発明者】
【氏名】山本 柱
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 直行
【合議体】
【審判長】 新居田 知生
【審判官】 宮澤 尚之
【審判官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−185217(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0008555(US,A1)
【文献】 特開2010−264386(JP,A)
【文献】 特開昭55−84522(JP,A)
【文献】 特開平10−137537(JP,A)
【文献】 特開昭50−49161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/56
B01D53/50
B01D53/60
B01D53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOxを含む150℃以上の排ガス中に水溶液である第1液体とオゾンとを供給し、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させる工程を含み、
第1ミストは、第1液体を排ガス中に噴霧することにより形成されたミスト中の部分低温域にオゾンガスを直接供給することにより形成され、
前記部分低温域は、第1液体の水滴が蒸発することによる気化熱により部分的に排ガス温度が150℃未満に低下した領域であり、
第1液体は、還元剤水溶液または還元剤を溶質として含むアルカリ性水溶液である排ガス処理方法。
【請求項2】
NOx及びSOxを含む150℃以上の排ガス中に水溶液である第1液体とオゾンとを供給し、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させる工程を含み、
第1ミストは、第1液体を排ガス中に噴霧することにより形成されたミスト中の部分低温域にオゾンガスを直接供給することにより形成され、
前記部分低温域は、第1液体の水滴が蒸発することによる気化熱により部分的に排ガス温度が150℃未満に低下した領域であり、
第1液体は、アルカリ性水溶液または還元剤を溶質として含むアルカリ性水溶液である排ガス処理方法。
【請求項3】
NOxを含む150℃以上の排ガス中に水または水溶液である第1液体とオゾンとを供給し、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させる工程と、第1ミスト中に排ガスを通過させ、通過した後の排ガス中に、第2液体を噴霧し第2ミストを発生させる工程とを含み、
第1ミストは、第1液体を排ガス中に噴霧することにより形成されたミスト中の部分低温域にオゾンガスを直接供給することにより形成され、
前記部分低温域は、第1液体の水滴が蒸発することによる気化熱により部分的に排ガス温度が150℃未満に低下した領域であり、
第2液体は、還元剤水溶液または還元剤を溶質として含むアルカリ性水溶液である排ガス処理方法。
【請求項4】
NOx及びSOxを含む150℃以上の排ガス中に水または水溶液である第1液体とオゾンとを供給し、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させる工程と、第1ミスト中に排ガスを通過させ、通過した後の排ガス中に、第2液体を噴霧し第2ミストを発生させる工程とを含み、
第1ミストは、第1液体を排ガス中に噴霧することにより形成されたミスト中の部分低温域にオゾンガスを直接供給することにより形成され、
前記部分低温域は、第1液体の水滴が蒸発することによる気化熱により部分的に排ガス温度が150℃未満に低下した領域であり、
第2液体は、アルカリ性水溶液または還元剤を溶質として含むアルカリ性水溶液である排ガス処理方法。
【請求項5】
排ガスは、ガラスの溶解炉から発生する排ガスである請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
NOxを含む150℃以上の排ガスが流れる排ガス流路と、前記排ガス流路中に水溶液である第1液体を噴霧する第1噴霧部と、前記排ガス流路中にオゾンを供給するオゾン供給部とを備え、
第1噴霧部と前記オゾン供給部は、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストが形成されるように設けられ、
前記オゾン供給部は、第1噴霧部が第1液体を前記排ガス流路中に噴霧することにより形成されたミスト中の部分低温域にオゾンガスを直接供給するように設けられ、
前記部分低温域は、第1液体の水滴が蒸発することによる気化熱により部分的に排ガス温度が150℃未満に低下した領域であり、
第1液体は、還元剤水溶液または還元剤を溶質として含むアルカリ性水溶液である排ガス処理装置。
【請求項7】
NOx及びSOxを含む150℃以上の排ガスが流れる排ガス流路と、前記排ガス流路中に水溶液である第1液体を噴霧する第1噴霧部と、前記排ガス流路中にオゾンを供給するオゾン供給部とを備え、
第1噴霧部と前記オゾン供給部は、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストが形成されるように設けられ、
前記オゾン供給部は、第1噴霧部が第1液体を前記排ガス流路中に噴霧することにより形成されたミスト中の部分低温域にオゾンガスを直接供給するように設けられ、
前記部分低温域は、第1液体の水滴が蒸発することによる気化熱により部分的に排ガス温度が150℃未満に低下した領域であり、
第1液体は、アルカリ性水溶液または還元剤を溶質として含むアルカリ性水溶液である排ガス処理装置。
【請求項8】
NOxを含む150℃以上の排ガスが流れる排ガス流路と、前記排ガス流路中に水または水溶液である第1液体を噴霧する第1噴霧部と、前記排ガス流路中にオゾンを供給するオゾン供給部と、第1ミスト中を通過した後の排ガスが流れる前記排ガス流路中に、還元剤水溶液または還元剤を溶質として含むアルカリ性水溶液である第2液体を噴霧する第2噴霧部とを備え、
第1噴霧部と前記オゾン供給部は、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストが形成されるように設けられ、
前記オゾン供給部は、第1噴霧部が第1液体を前記排ガス流路中に噴霧することにより形成されたミスト中の部分低温域にオゾンガスを直接供給するように設けられ、
前記部分低温域は、第1液体の水滴が蒸発することによる気化熱により部分的に排ガス温度が150℃未満に低下した領域である排ガス処理装置。
【請求項9】
NOx及びSOxを含む150℃以上の排ガスが流れる排ガス流路と、前記排ガス流路中に水または水溶液である第1液体を噴霧する第1噴霧部と、前記排ガス流路中にオゾンを供給するオゾン供給部と、第1ミスト中を通過した後の排ガスが流れる前記排ガス流路中に、アルカリ性水溶液または還元剤を溶質として含むアルカリ性水溶液である第2液体を噴霧する第2噴霧部とを備え、
第1噴霧部と前記オゾン供給部は、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストが形成されるように設けられ、
前記オゾン供給部は、第1噴霧部が第1液体を前記排ガス流路中に噴霧することにより形成されたミスト中の部分低温域にオゾンガスを直接供給するように設けられ、
前記部分低温域は、第1液体の水滴が蒸発することによる気化熱により部分的に排ガス温度が150℃未満に低下した領域である排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理方法および排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスびんなどのガラス製品は、珪砂、ソーダ灰、石灰などの原料と空き瓶などを砕いて作られるカレットを溶解炉においてバーナーなどで溶かし(約1500℃)、溶かしたガラスを成形することにより製造される。ガラスを溶かす溶解炉からは、バーナーからの燃焼排ガスと溶解したガラスから発生する成分とを含む燃焼排ガスが排出される。溶解炉から排出される燃焼排ガスには、大気汚染物質であるNOxやSOxが含まれており、燃焼排ガスを大気中に放出する前にこれらの汚染物質を燃焼排ガス中から除去する必要がある。また、この燃焼排ガスにはガラス原料由来のSOx、粘着成分などの触媒被毒成分が含まれているため、従来のNOx処理技術である「選択触媒還元法」を使用することが困難である。
【0003】
また、燃焼排ガス中のNOxを除去する方法としては、NOガスをオゾンガスと反応させNO2ガスに変換した後に、還元剤によりNO2を窒素ガスに還元する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
なお、オゾンガスは、150℃を超えると熱分解量が増える(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−266868号公報
【特許文献2】特開昭55−1849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のオゾンガスを利用してNOxを除去する方法では、高温で多量の燃焼排ガスを処理する場合、オゾンガス処理するために燃焼排ガスを多量の水により冷却し150℃以下の温度にする必要がある。燃焼排ガスを多量の水で処理すると、処理した燃焼排ガスに多量の水蒸気が含まれることとなり大気中に放出された燃焼排ガスが白煙となるという問題がある。また、燃焼排ガスを多量の水により冷却すると、水を循環させる設備や廃水を処理する設備が必要となり処理設備が複雑化し大型化するという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、NOxを含む150℃以上の排ガスをオゾンガス処理することができ処理設備を簡素化することができる排ガス処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、NOxを含む150℃以上の排ガス中に水または水溶液である第1液体とオゾンとを供給し、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させる工程を含む排ガス処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、150℃以上の排ガス中に水または水溶液である第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させる工程を含むため、第1ミスト中において水滴に含まれる水が蒸発することによる気化熱により水滴の周りの気体の温度を低くすることができる。このため、第1ミスト中の排ガスの温度を低下させることができ、第1ミスト中においてオゾンガスが熱分解することを抑制することができる。
本発明によれば、第1ミスト中ではNOxとオゾンガスを含む排ガス中を第1液体の水滴が浮遊するため、第1ミストの気相においてNOガスとオゾンガスからNO2ガスが生成する化学反応を進行させることができる。このため、第1ミスト中を通過した後の排ガスをNO濃度が低くNO2濃度が高いガスとすることができる。なお、第1ミストは、水滴の水がすべて蒸発することにより消滅する。
NOガスは水に溶解しにくいという特性を有するのに対し、NO2ガスは水に溶解しやすいという特性を有する。従って、NO2濃度が低くNO濃度が高い排ガスを還元剤水溶液で処理してもNOガスは水に溶解しにくいため、排ガスに含まれるNOxをN2に還元することは難しい。これに対し、NO濃度が低くNO2濃度が高い排ガスを還元剤水溶液で処理するとNO2ガスは水に溶解しやすいため、排ガスに含まれるNOxをN2に還元することができる。つまり、本発明によれば、150℃以上の排ガスを、還元剤水溶液処理よりNOxをN2に還元しやすいガスに変質させることができる。
また、本発明によれば、触媒を使用せずにNOをNO2に変換できるため、SOxなどの触媒被毒成分を含む排ガスを処理することができる。
また、本発明によれば、150℃以上の排ガスをオゾンガス処理することができるため、排ガスの処理に用いる水の量を減らすことが可能になり、大気中に放出する排ガスに含まれる水蒸気量を減らすことが可能になる。その結果、大気中に放出された排ガスが白煙となることを抑制することができる。
また、本発明によれば、第1ミストに含まれる水をすべて蒸発させることができるため、排ガス処理装置が水循環装置や廃水処理設備を備える必要がなく、排ガス処理装置を簡素化することができる。
また、本発明によれば、排ガスを充填材中や触媒中を通過させる必要がなく、排ガス処理装置を容易にメンテナンスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の排ガス処理装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態の排ガス処理装置の概略構成図である。
図3】第1ミスト中における化学反応の説明図である。
図4】第2ミスト中における化学反応の説明図である。
図5】第2ミスト中における化学反応の説明図である。
図6】本発明の一実施形態の排ガス処理装置の概略構成図である。
図7】第1ミスト中における化学反応の説明図である。
図8】第1ミスト中における化学反応の説明図である。
図9】実施例において用いた排ガス処理装置の概略断面図である。
図10】実施例の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の排ガス処理方法は、NOxを含む150℃以上の排ガス中に水または水溶液である第1液体とオゾンとを供給し、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させる工程を含むことを特徴とする。
本発明において、ミストとは多数の水滴が気体中に浮遊しているものをいう。従って、ミストには、浮遊する多数の水滴(液相)と、水滴の周りの気体(気相)とが含まれる。
【0010】
本発明の排ガス処理方法において、第1液体を排ガス中に噴霧することにより第1ミストを発生させ、発生させた第1ミスト中にオゾンガスを供給することが好ましい。
このような構成によれば、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させることができる。また、第1液体が還元剤を含む場合、還元剤がオゾンガスにより消費されることを抑制することができる。
本発明の排ガス処理方法において、第1液体とオゾンガスとを混合し排ガス中に噴霧し第1ミストを発生させることが好ましい。
このような構成によれば、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させることができる。また、オゾンガスが高温に曝される確率を低くすることができ、オゾンガスの熱分解を抑制することができる。
本発明の排ガス処理方法において、第1ミストに含まれる水は、第1ミストが排ガス流路を流れる過程においてすべて蒸発することが好ましい。
このような構成によれば、排ガス処理装置が水を循環させる装置を備える必要がなく、排ガス処理装置を簡素化することができる。
【0011】
本発明の排ガス処理方法において、第1ミスト中に排ガスを通過させ、通過した後の排ガス中に、還元剤水溶液である第2液体を噴霧し第2ミストを発生させる工程をさらに含むことが好ましい。
このような構成によれば、第1ミストによる処理によりNO濃度が低くNO2濃度が高くなった排ガスを第2ミスト中において還元剤水溶液で処理することができる。NO2ガスは水に溶解しやすい特性を有するため、第2ミストに含まれる第2液体中においてNO2ガスを還元剤により還元しN2ガスを発生させることができる。その結果、排ガス中のNOxを除去することができる。
本発明の排ガス処理方法において、第2液体は、亜硫酸ナトリウムを溶質として含む水溶液であることが好ましい。
このような構成によれば、NO2と亜硫酸ナトリウムとを反応させることにより、窒素ガスと硫酸ナトリウムとを生成することができる。
本発明の排ガス処理方法において、第2ミストに含まれる水は、第2ミストが排ガス流路を流れる過程においてすべて蒸発することが好ましい。
このような構成によれば、排ガス処理装置が水を循環させる装置を備える必要がなく、排ガス処理装置を簡素化することができる。
【0012】
本発明の排ガス処理方法において、排ガスは、SOxを含み、第2液体は、アルカリ性水溶液であることが好ましい。
このような構成によれば、燃焼排ガスに含まれるSO2ガスが第2液体に溶け込み亜硫酸または亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を生成することができる。この還元剤により排ガスに含まれるNO2ガスを還元しN2ガスを発生させることができる。その結果、排ガス中のNOxを除去することができる。
本発明の排ガス処理方法において、第2液体は、水酸化ナトリウムを溶質として含む水溶液であることが好ましい。
このような構成によれば、SO2と水酸化ナトリウムから亜硫酸ナトリウムを生成することができる。
本発明の排ガス処理方法において、第1液体は、還元剤水溶液であることが好ましい。
このような構成によれば、NOガスとオゾンガスから生成したNO2ガスを水滴中に溶解させ、このNO2を還元剤により還元しN2ガスを発生させることができる。その結果、排ガス中のNOxを除去することができる。
【0013】
本発明の排ガス処理方法において、排ガスはSOxを含み、第1液体はアルカリ性水溶液であることが好ましい。
このような構成によれば、燃焼排ガスに含まれるSO2ガスが第1液体に溶け込み亜硫酸または亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を生成することができる。また、NOガスとオゾンガスから生成したNO2ガスを水滴中に溶解させ、このNO2を還元剤により還元しN2ガスを発生させることができる。その結果、排ガス中のNOxを除去することができる。
本発明の排ガス処理方法において、前記還元剤水溶液に含まれる還元剤から生成されかつ排ガス中を浮遊する微粒子を排ガス中から除去する工程を含むことが好ましい。
このような構成によれば、大気中に排ガスと共に微粒子が放出されることを抑制することができる。
本発明の排ガス処理方法において、排ガスは、ガラスの溶解炉から発生する燃焼排ガスであることが好ましい。
このような構成によれば、バーナーなどからの燃焼排ガスと溶解したガラスから発生する成分とを含む燃焼排ガス中のNOxを除去することができる。
【0014】
また、本発明は、NOxを含む150℃以上の排ガスが流れる排ガス流路と、前記排ガス流路中に水または水溶液である第1液体を噴霧する第1噴霧部と、前記排ガス流路中にオゾンを供給するオゾン供給部とを備え、第1噴霧部と前記オゾン供給部は、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストが形成されるように設けられた排ガス処理装置も提供する。
本発明の排ガス処理装置によれば、NOxを含む150℃以上の排ガスが流れる排ガス流路と、前記排ガス流路中に水または水溶液である第1液体を噴霧する第1噴霧部とを備え、第1噴霧部は、排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストが形成されるように設けられるため、第1ミスト中において水滴に含まれる水が蒸発することによる気化熱により水滴の周りの気体の温度を低くすることができる。このため、第1ミスト中の排ガスの温度を低下させることができ、第1ミスト中においてオゾンガスが熱分解することを抑制することができる。
本発明の排ガス処理装置によれば、排ガス流路中にオゾンを供給するオゾン供給部を備え、第1噴霧部と前記オゾン供給部は、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストが形成されるように設けられるため、第1ミストの気相においてNOガスとオゾンガスからNO2ガスが生成する化学反応を進行させることができる。このため、第1ミスト中に排ガスを通過させることにより、排ガスに含まれるNOガスをNO2ガスに変換することができる。この結果、150℃以上の排ガスを、還元剤水溶液処理よりNOxをN2に還元しやすいガスに変質させることができる。
【0015】
本発明の排ガス処理装置において、前記オゾン供給部は、第1噴霧部が第1液体を前記排ガス流路中に噴霧することにより形成された第1ミスト中にオゾンガスを供給するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させることができる。また、第1液体が還元剤を含む場合、還元剤がオゾンガスにより消費されることを抑制することができる。
本発明の排ガス処理装置において、第1噴霧部は、第1液体と前記オゾン供給部から供給されたオゾンガスとを混合して前記排ガス流路中に噴霧するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミストを発生させることができる。また、オゾンガスが高温に曝される確率を低くすることができ、オゾンガスの熱分解を抑制することができる。
【0016】
本発明の排ガス処理装置において、第1液体は、アルカリ性水溶液又は還元剤水溶液であることが好ましい。
このような構成によれば、第1ミストの液相においてNO2を還元させN2ガスを発生させることができる。この結果、排ガス中のNOxを除去することができる。
本発明の排ガス処理装置において、第1噴霧部および排ガス流路は、第1ミストに含まれる水がすべて蒸発するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、排ガス処理装置が水を循環させる装置を備える必要がなく、排ガス処理装置を簡素化することができる。
本発明の排ガス処理装置において、第1ミスト中を通過した後の排ガスが流れる前記排ガス流路中に、アルカリ性水溶液又は還元剤水溶液である第2液体を噴霧する第2噴霧部をさらに備えることが好ましい。
このような構成によれば、第1ミストによる処理によりNO濃度が低くNO2濃度が高くなった排ガスを第2ミスト中において還元剤水溶液で処理することができる。NO2ガスは水に溶解しやすい特性を有するため、第2ミストに含まれる第2液体中においてNO2ガスを還元剤により還元しN2ガスを発生させることができる。その結果、排ガス中のNOxを除去することができる。
【0017】
本発明の排ガス処理装置において、第2噴霧部および排ガス流路は、第2ミストに含まれる水がすべて蒸発するように設けられたことが好ましい。
このような構成によれば、排ガス処理装置が水を循環させる装置を備える必要がなく、排ガス処理装置を簡素化することができる。
本発明の排ガス処理装置において、前記還元剤水溶液に含まれる還元剤から生成された微粒子を排ガス中から除去する集塵機を含むことが好ましい。
このような構成によれば、大気中に排ガスと共に微粒子が放出されることを抑制することができる。
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0019】
排ガス処理方法および排ガス処理装置
図1、2または6は本実施形態の排ガス処理装置の概略構成図である。
本実施形態の排ガス処理方法は、NOxを含む150℃以上の排ガス中に水または水溶液である第1液体とオゾンとを供給し、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミスト6を発生させる工程を含むことを特徴とする。
また、本実施形態の排ガス処理方法は、第1ミスト6中を通過した後の排ガス中に、還元剤水溶液である第2液体16を噴霧し第2ミスト7を発生させる工程を含んでもよい。
本実施形態の排ガス処理方法において、排ガス流路1を流れる排ガスは、第1ミスト6による一段階処理により処理されてもよく、第1ミスト6による第1処理と第2ミスト7による第2処理とから構成される二段階処理により処理されてもよい。
さらに、本実施形態の排ガス処理方法は、排ガス中に生じた微粒子8を集塵機17により除去する工程を含んでもよい。
【0020】
本実施形態の排ガス処理装置30は、NOxを含む150℃以上の排ガスが流れる排ガス流路1と、排ガス流路1中に水または水溶液である第1液体を噴霧する第1噴霧部4と、排ガス流路1中にオゾンを供給するオゾン供給部10とを備え、第1噴霧部4とオゾン供給部10は、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴が浮遊する第1ミスト6が形成されるように設けられたことを特徴とする。
また、本実施形態の排ガス処理装置30は、第1ミスト6中を通過した後の排ガス中に、アルカリ性水溶液又は還元剤水溶液である第2液体16を噴霧する第2噴霧部5を備えてもよい。
以下、本実施形態の排ガス処理方法および排ガス処理装置30について説明する。
【0021】
1.排ガス、排ガス流路
排ガスは、本実施形態の排ガス処理方法および排ガス処理装置30の被処理ガスであり、150℃以上の温度を有し、NOxを含むものであれば特に限定されないが、例えば、ガラス原料23をバーナー20により溶解する溶解炉19から排出される燃焼排ガスであってもよく、ガラス原料23を電気溶融させる溶解炉から排出される排ガスであってもよく、ボイラーの燃焼室から排出される燃焼排ガスであってもよく、エンジンから排出される燃焼排ガスであってもよく、ガスタービンから排出される燃焼排ガスであってもよく、焼却炉から排出される燃焼排ガスであってもよい。
なお、排ガスがガラス原料23をバーナー20により溶解する溶解炉19から排出される燃焼排ガスである場合、溶解炉19は、図1に示したようにバーナー20の炎21によりガラス原料23を溶解させたガラス22を溜める構造を有することができる。
排ガス流路1に流入する排ガスには、NOなどのNOxが含まれる。また、排ガス流路1に流入する排ガスにはSO2などのSOxが含まれてもよい。なお、排ガスに含まれるNOxまたはSOxは、排ガスが排ガス流路1を流れる際に施される処理により除去することができる。
排ガスは、少なくとも排ガス流路1において第1ミスト6を発生させる箇所(第1処理領域2)の直前において150℃以上の温度を有する。
排ガスの温度は、例えば、第1処理領域2の直前において150℃以上500℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下、さらに好ましくは200℃以上300℃以下とすることができる。また、第1処理領域2を通過した後の排ガスは、150℃以上300℃以下、好ましくは150℃以上250℃以下であることが好ましい。このことにより、排ガス中のNO2が熱分解することを抑制することができる。また、排ガスの温度は、例えば、集塵機17により排ガス中の微粒子8を除去する段階において、130℃以上240℃以下とすることができる。
【0022】
排ガス流路1は、溶解炉19などから排出された排ガスが大気放出されるまでに流通する流路である。排ガス流路1は、図1、2、6のように排ガスをミストにより処理する処理室(第1処理領域2または第2処理領域3を含む)を有してもよい。また、処理室の底部は水封されていてもよい。また、処理室内は、触媒部や充填材により満たされてない空洞とすることができる。また、排ガス流路1は、触媒部または充填材により満たされた部分を有さないように設けることができる。
排ガス流路1の大きさは特に限定されないが、例えば、直径50cm以上直径4m以下とすることができる。また、排ガス流路1を流れる排ガスの流速は特に限定されないが、例えば、1m/秒以上15m/秒以下とすることができる。
【0023】
2.噴霧部
噴霧部9は、排ガス中に水または水溶液を噴霧する部分である。噴霧部9は、第1噴霧部4または第2噴霧部5である。噴霧部9により排ガス流路1中に水または水溶液を噴霧すると、排ガス中に多数の水滴が浮遊するミストを発生させることができる。噴霧部9は、例えば、スプレーノズルである。また、噴霧部9は、一流体ノズルであってもよく、二流体ノズルであってもよい。噴霧部9が一流体ノズルである場合、噴霧部9は、加圧された水または水溶液を排ガス中に噴霧するように設けられる。噴霧部9が二流体ノズルである場合、噴霧部9は、水または水溶液と気体とを混合して排ガス中に噴霧することができる。なお、二流体ノズルにより混合される気体は、例えば、空気であってもよく、オゾンガスであってもよい。
【0024】
噴霧部9は、例えば図1、2のように、排ガス流路1中に処理室を設けて、処理室中に水または水溶液を噴霧するように設けることができる。また、噴霧部9は処理室でない排ガス流路1中に水または水溶液を噴霧するように設けてもよい。
また、噴霧部9は、発生させたミストで排ガスを処理する処理領域が形成されるように設けることができる。また、排ガス流路1を流れる排ガスの実質的にすべてが処理領域を流れるように噴霧部9を設けることができる。例えば、排ガス流路1の直径を小さくしてもよく、噴霧部9により発生させるミストの量を多くしてもよい。また、排ガス流路1を囲むように複数の噴霧部9を排ガス流路1の側壁に設け、各噴霧部9が排ガス流路1の中心部に向かって水または水溶液を噴霧するように設けてもよい。また、噴霧部9は、排ガス流路1の排ガスが流れる方向と同じ方向に水または水溶液を噴霧するように設けられてもよい。さらに噴霧部9は、排ガス流路1の排ガスが流れる方向の逆方向に水または水溶液を噴霧するように設けられてもよい。
また、噴霧部9により発生させたミストは、排ガスの流れに乗って移動する。
【0025】
第1噴霧部4は、水または水溶液である第1液体を排ガス流路1を流れる150℃以上の排ガス中に噴霧し、排ガス中に水滴25が浮遊する第1ミスト6を発生させるように設けられる。このことにより、排ガスを第1ミスト6で処理する第1処理領域2を排ガス流路1中に形成することができる。なお、第1処理領域2は、触媒部や充填材で満たされていない空洞に形成することができる。
第1液体の種類は、排ガスを第1ミスト6による一段階処理により処理する場合と、排ガスを第1ミスト6による第1処理と第2ミスト7による第2処理とから構成される二段階処理により処理する場合により異なる。
第1噴霧部4により発生させた第1ミスト6中では、排ガス中に水滴25が浮遊している。排ガスは少なくとも第1処理領域2の直前において150℃以上の温度である。このため、第1ミスト6中では、第1ミスト6を構成する水滴25の表面において水が気化し、水滴25は徐々に小さくなっていく。そして、最終的には水滴25は消滅し第1ミスト6も消滅する。また、水滴25の表面における水の気化に伴う気化熱により水滴25の周りの排ガスの温度は低下する。このため、第1ミスト6中の排ガスの温度を低下させることができる。
従って、第1ミスト6を発生させることにより、排ガス流路1を流れる排ガス中に部分的にガス温度が低い領域を形成することができる。
【0026】
第2噴霧部5は、アルカリ性水溶液又は還元剤水溶液である第2液体16を排ガス流路1中に噴霧し、排ガス流路1を流れる排ガス中に第2ミスト7を発生させるように設けられる。このことにより、排ガス流路1を流れる排ガスを第2ミスト7で処理する第2処理領域3を形成することができる。第2処理領域3は、触媒部や充填材で満たされていない空洞に形成することができる。第2噴霧部5は、排ガスを第1ミスト6による一段階処理により処理する場合、省略することができる。
【0027】
排ガスを二段階処理する場合、第1噴霧部4および第2噴霧部5は、排ガス流路1を流れる排ガスが第1処理領域2を流れた後、第2処理領域3を流れるように設けることができる。このことにより、排ガスを二段階処理することが可能になる。
第1噴霧部4および第2噴霧部5は、図1に示した排ガス処理装置30のように第1処理領域2と第2処理領域3とが異なる処理室に形成されるように設けてもよく、図2に示した排ガス処理装置30のように第1処理領域2と第2処理領域3とが同じ処理室に形成されるように設けてもよい。
また、排ガス流路1における第1処理領域2と第2処理領域3との間には、乾燥状態の領域が存在していてもよく、第1処理領域2の一部が第2処理領域3の一部と重なってもよい。
【0028】
3.オゾン供給部
オゾン供給部10は、排ガス流路1中にオゾンを供給する部分である。また、第1噴霧部4とオゾン供給部10は、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴25が浮遊する第1ミスト6が形成されるように設けられる。このことにより、オゾン供給部10により排ガス流路1中に供給されたオゾンガスが熱分解することを抑制することができる。なお、オゾンガスは、150℃以上になると熱分解量が増えるという特性を有する。
オゾン供給部10は、第1噴霧部4が第1液体を排ガス流路1中に噴霧することにより形成された第1ミスト6中にオゾンガスを供給するように設けることができる。このことにより、第1処理領域2において、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴25が浮遊する第1ミスト6を形成することができる。また、第1ミスト6中では、水滴25に含まれる水の気化熱により排ガスの温度が低下するため、第1ミスト6中に供給したオゾンガスが熱分解することを抑制することができる。
オゾン供給部10は、例えば、図1に示した排ガス処理装置30のように、第1ミスト6中にオゾンガスを供給するように設けることができる。
【0029】
また、オゾン供給部10は、第1噴霧部4にオゾンガスを供給するように設けられ、第1噴霧部4が、第1液体とオゾンガスとを混合して排ガス流路1中に噴霧するように設けられてもよい。このことにより、第1処理領域2において、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴25が浮遊する第1ミスト6を形成することができる。また、第1ミスト6中では、水滴25に含まれる水の気化熱により排ガスの温度が低下するため、第1ミスト6中のオゾンガスが熱分解することを抑制することができる。
この場合、図2に示した排ガス処理装置30のように、第1噴霧部4に二流体ノズルを用いることができる。
オゾン供給部10は、オゾンガス発生器12により発生させたオゾンガスを排ガス流路1中に供給してもよい。また、排ガス中に酸素ガスが含まれる場合、オゾンガス供給部10は、排ガス中の酸素ガスからオゾンガスを発生させてもよい。
また、オゾン供給部10と第1噴霧部4は、オゾン水(オゾンが溶け込んだ水)を排ガス流路1中に噴霧するように設けられてもよい。このことにより、第1処理領域2において、オゾンガスを含む排ガス中に第1液体の水滴25が浮遊する第1ミスト6を形成することができる。この場合、オゾン供給部10はオゾン水を第1噴霧部4に供給する部分である。
【0030】
4.第1ミストと第2ミストによる二段階処理
ここでは、第1ミスト6による第1処理と第2ミスト7による第2処理とから構成される二段階処理により排ガスが処理される場合について説明する。図1、2に示した排ガス処理装置30により排ガス流路1を流れる排ガスを二段階処理することができる。二段階処理では、排ガスはまず第1処理領域2において第1ミスト6により処理され、第1ミスト6により処理された排ガスが第2処理領域3において第2ミスト7により処理される。
【0031】
二段階処理では、第1液体を水とすることができる。第1処理領域2では、排ガス流路1を流れる150℃以上の排ガス中に水(第1液体)とオゾンを供給し、オゾンガスおよびNOxガスを含む排ガス中に水滴25が浮遊する第1ミスト6を発生させる。なお、この場合、第1液体は、排ガスの温度を低下させる冷却水として機能する。
また、第1ミスト6に含まれる水は第1ミスト6が排ガス流路1を流れる過程ですべて蒸発する。
【0032】
図3は、第1ミスト6中における化学反応の説明図である。第1ミスト6中では、図3のようにNOxガスとオゾンガスを含む排ガス(気相)中に水滴25(液相)が浮遊している。なお、第1ミスト6中の排ガスは水滴25に含まれる水の気化熱により温度が低下しているため、第1ミスト6中のオゾンガスの熱分解は抑制されている。
第1ミスト6の気相においてNOxガスとオゾンガスとを共存させることができるため、排ガスに含まれるNOガスをオゾンガスによりNO2ガスに酸化される反応を進行させることができる。
このため、第1ミスト6を発生させた第1処理領域2を通過した後の排ガスは、第1処理領域2を通過する前の排ガスに比べ、NOガス濃度が低くNO2ガス濃度が高いガスとなる。また、第1処理領域2において第1液体の気化熱により排ガスは冷却されるため、第1処理領域2を通過した後の排ガスは、第1処理領域2を通過する前の排ガスに比べ温度が低下している。
なお、第1処理領域2を通過した後の排ガスでは、オゾンガスは熱分解すると考えられる。
【0033】
二段階処理では、第2液体16は、アルカリ性水溶液または還元剤水溶液とすることができる。例えば、第2液体16は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液がアルカリ性を示す物質を溶質として含むことができる。また、第2液体16は、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を溶質として含むことができる。また、第2液体16は、水溶液がアルカリ性を示す物質と、還元剤との両方を含むことができる。
なお、第2液体16は、排ガスの温度を低下させる冷却水としての機能と、排ガス中のNOxを除去するための処理液としての機能の両方を有する。
第2処理領域3では、第1処理領域2を通過した後の排ガス中に第2液体16を噴霧し、NO2ガスを含む排ガス中に第2液体16の水滴25が浮遊する第2ミスト7を発生させる。なお、第2ミスト7に含まれる水は、第2ミスト7が排ガス流路1を流れる過程ですべて蒸発する。また、第2ミスト7は、第2液体槽14に溜めた第2液体16をポンプ15により第2噴霧部5に供給することにより発生させることができる。
図4は、第2液体16が還元剤である亜硫酸ナトリウムを含む水溶液である場合における、第2ミスト7中における化学反応の説明図である。第2ミスト7中では、図4のようにNO2ガスを含む排ガス(気相)中に亜硫酸ナトリウムを溶質として含む水滴25(液相)が浮遊している。
気相のNO2ガスは、水滴25のH2Oと反応し、次の式(1)の化学反応が進行し、亜硝酸または硝酸として液相へと移動すると考えられる。
2NO2+H2O → HNO3+HNO2・・・(1)
液相の亜硝酸または硝酸は、還元剤である亜硫酸ナトリウムと反応し、次の式(2)(3)の化学反応が進行すると考えられる。
2HNO3+5Na2SO3 → N2+5Na2SO4+H2O・・・(2)
2HNO2+3Na2SO3 → N2+3Na2SO4+H2O・・・(3)
【0034】
第2ミスト7中において、これらの化学反応が進行すると、排ガスに含まれるNOxをN2に還元することができ、排ガスに含まれるNOxを除去することができる。
なお、第2ミスト7に含まれる水滴25は、水の気化により徐々に小さくなっていき、最終的には、Na2SO4の微粒子8を残して消滅する。
このため、第2ミスト7を発生させた第2処理領域3を通過した後の排ガスは、NOガス濃度およびNO2ガス濃度が共に低いガスとなる。
また、第2処理領域3において第2液体の気化熱により排ガスは冷却されるため、第2処理領域3を通過した後の排ガスは、第2処理領域3を通過する前の排ガスに比べ温度が低下している。
【0035】
図5は、排ガスがSO2を含み、第2液体16が水酸化ナトリウムを含む場合における、第2ミスト7中における化学反応の説明図である。第2ミスト7中では、図5のようにSO2ガスおよびNO2ガスを含む排ガス(気相)中に水酸化ナトリウムを溶質として含む水滴25(液相)が浮遊している。
第2ミスト7の気相のSO2ガスは、水滴25のNaOHと反応し、次の式(4)の化学反応が進行し、亜硫酸ナトリウムとして液相へと移動すると考えられる。
SO2+2NaOH → Na2SO3+H2O・・・(4)
第2ミスト7の気相のNO2ガスは、水滴25のH2Oと反応し、上記の式(1)の化学反応が進行し、亜硝酸または硝酸として液相へと移動すると考えられる。液相の亜硝酸または硝酸は、SO2から生成された亜硫酸ナトリウムと反応し、上記の式(2)(3)の化学反応が進行すると考えられる。
【0036】
第2ミスト7中において、これらの化学反応が進行すると、排ガスに含まれるNOxをN2に還元することができ、排ガスに含まれるNOxを除去することができる。
なお、第2ミスト7に含まれる水滴25は、水の気化により徐々に小さくなっていき、最終的には、Na2SO4の微粒子8を残して消滅する。
このため、第2ミスト7を発生させた第2処理領域3を通過した後の排ガスは、NOガス濃度およびNO2ガス濃度が共に低いガスとなる。
また、第2液体16が水溶液がアルカリ性を示す物質と、還元剤との両方を含む場合、排ガス中のNOxをより効果的に除去することができる。
【0037】
5.第1ミストによる一段階処理
ここでは、第1ミスト6による第1処理から構成される一段階処理により排ガスが処理される場合について説明する。図6に示した排ガス処理装置30により排ガス流路1を流れる排ガスを一段階処理することができる。
一段階処理では、第1液体27は、アルカリ性水溶液または還元剤水溶液とすることができる。例えば、第1液体27は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液がアルカリ性を示す物質を溶質として含むことができる。また、第1液体27は、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を溶質として含むことができる。また、第1液体27は、水溶液がアルカリ性を示す物質と、還元剤との両方を含むことができる。なお、この場合、第1液体27は、排ガスの温度を低下させる冷却水としての機能と、排ガス中のNOxを除去するための処理液としての機能の両方を有する。
第1処理領域2では、排ガス流路1を流れる150℃以上の排ガス中にアルカリ性水溶液または還元剤水溶液(第1液体27)とオゾンを供給し、オゾンガスおよびNOxガスを含む排ガス中に第1液体27の水滴25が浮遊する第1ミスト6を発生させる。なお、第1ミスト6に含まれる水は、第1ミスト6が排ガス流路1を流れる過程ですべて蒸発する。また、第1ミスト6は、第1液体槽26に溜めた第1液体27をポンプ15により第1噴霧部4に供給することにより発生させることができる。
【0038】
図7は、第1液体27が還元剤である亜硫酸ナトリウムを溶質として含む水溶液である場合における、第1ミスト6中における化学反応の説明図である。第1ミスト6中では、図7のようにNOxガスとオゾンガスを含む排ガス(気相)中に水滴25(液相)が浮遊している。なお、第1ミスト6中の排ガスは水滴25に含まれる水の気化熱により温度が低下しているため、第1ミスト6中のオゾンガスの熱分解は抑制されている。
第1ミスト6の気相においてNOxガスとオゾンガスとを共存させることができるため、排ガスに含まれるNOガスがオゾンガスによりNO2ガスに酸化される反応を進行させることができる。
【0039】
第1ミスト6の気相において生成されたNO2ガスは、水滴25のH2Oと反応し、上記の式(1)の化学反応が進行し、亜硝酸または硝酸として液相へと移動すると考えられる。
液相の亜硝酸または硝酸は、還元剤である亜硫酸ナトリウムと反応し、上記の式(2)(3)の化学反応が進行すると考えられる。
第1ミスト6中において、これらの化学反応が進行すると、排ガスに含まれるNOxをN2に還元することができ、排ガスに含まれるNOxを除去することができる。
なお、第1ミスト6に含まれる水滴25は、水の気化により徐々に小さくなっていき、最終的には、Na2SO4の微粒子8を残して消滅する。
このため、第1ミスト6を発生させた第1処理領域2を通過した後の排ガスは、NOガス濃度およびNO2ガス濃度が共に低いガスとなる。また、第1処理領域2において第1液体27の気化熱により排ガスは冷却されるため、第1処理領域2を通過した後の排ガスは、第1処理領域2を通過する前の排ガスに比べ温度が低下している。
【0040】
図8は、排ガスがSO2を含み、第1液体27が水酸化ナトリウムを溶質として含む水溶液である場合における、第1ミスト6中における化学反応の説明図である。第1ミスト6中では、図8のようにオゾンガス、SO2ガスおよびNOガスを含む排ガス(気相)中に水酸化ナトリウムを含む水滴25(液相)が浮遊している。なお、第1ミスト6中の排ガスは水滴25に含まれる水の気化熱により温度が低下しているため、第1ミスト6中のオゾンガスの熱分解は抑制されている。
第1ミスト6の気相においてNOガスとオゾンガスとを共存させることができるため、排ガスに含まれるNOガスをオゾンガスによりNO2ガスに酸化される反応を進行させることができる。
【0041】
第1ミスト6の気相のSO2ガスは、水滴25のNaOHと反応し、上記の式(4)の化学反応が進行し、亜硫酸ナトリウムとして液相へと移動すると考えられる。
NOが酸化して生成したNO2ガスは、水滴25のH2Oと反応し、上記の式(1)の化学反応が進行し、亜硝酸または硝酸として液相へと移動すると考えられる。液相の亜硝酸または硝酸は、SO2から生成された亜硫酸ナトリウムと反応し、上記の式(2)(3)の化学反応が進行すると考えられる。
【0042】
第1ミスト6中において、これらの化学反応が進行すると、排ガスに含まれるNOxをN2に還元することができ、排ガスに含まれるNOxを除去することができる。
なお、第1ミスト6に含まれる水滴25は、水の気化により徐々に小さくなっていき、最終的には、Na2SO4の微粒子8を残して消滅する。
このため、第1ミスト6を発生させた第1処理領域2を通過した後の排ガスは、NOガス濃度およびNO2ガス濃度が共に低いガスとなる。
また、第1液体27が、水溶液がアルカリ性を示す物質と還元剤との両方を含む水溶液である場合、排ガス中のNOxをより効果的に除去することができる。
【0043】
6.集塵機
集塵機17は、一段階処理または二段階処理により処理した排ガスが流入するように設けることができる。このことにより、一段階処理または二段階処理により排ガス中に生じた微粒子8を排ガスから除去することができる。
集塵機17は、例えば、電気集塵機であってもよく、遠心力集塵機であってもよく、ろ過集塵機であってもよい。
【0044】
実施例
図9は、実施例で用いた排ガス処理装置(反応塔)の概略断面図である。この反応塔は内径54.9 mm,高さ1000 mmのSUS304製の円筒形であり,処理対象ガスである模擬排ガスは反応塔下部から流入して反応塔内で処理された後,上部から排出される。ガス入口からガス出口までの長さは600 mmとした。高温排ガス(300℃)を再現するため,リアクタ壁面の上段と下段に2つのヒータを取り付けた。模擬排ガスはN2ベースのNO濃度100 ppmのボンベガスをマスフローコントローラで10 L/minに設定して用いた。模擬排ガスはあらかじめ電気管状炉で加熱した後, 反応塔内に導入した。反応塔内では上部からノズル(第1噴霧部4)から還元剤(Na2SO3)水溶液(噴霧液)が噴霧され、模擬排ガスはそのミスト(第1ミスト6)によって冷却される。オゾンガス発生器12であるプラズマ発生装置(オゾナイザ)によって生成されたオゾン含有ガスを反応塔内の第1ミスト6内に注入し、模擬排ガス中のNOをNO2に酸化した。また、NO2は第1ミスト6中の還元剤(Na2SO3)と反応しN2に還元される。処理後のガスはリアクタ上部出口から排出した。蒸発しなかった還元剤水溶液は,リアクタ下部に設けられた排水口から排出した。ガス分析はリアクタ出口で行い、NOx計(PG240 堀場製作所製)を用いてNO, NOx , O2の濃度を測定した。
【0045】
オゾナイザは株式会社増田研究所製のOZS-EPIII-05を用いた。このオゾナイザは放電電圧約5〜8.6 kVで, 電流値は最大で0.4 A, 周波数は9.6 kHz一定, 最大消費電力は32 Wである。オゾンガス発生量は0~1.26 g/h,オゾンガス濃度は0~95 g/m3,オゾンガス流量は0.1〜1 L/minである。
噴霧液については粉末状のNa2SO3を水に溶かし, 所定の濃度のケミカル水溶液を作成した。内容量3 Lのビーカーにケミカル水溶液を溜めておき、送液ポンプと流量計により調節された水溶液をノズル(第1噴霧部4)に送った。
【0046】
ビーカー内にはpH/ORP計(堀場製作所社製D-53)を設置し,水溶液のpH,ORPを測定した。ORPについては値が低いほど還元力が強く、値が大きくなるにつれ還元雰囲気から酸化雰囲気に変わる。還元雰囲気ではNa2SO3とNO2が接触することでNO2がN2に還元される。
送液ポンプはダイアフラムポンプ(ヤマダコーポレーション製 NDP-5FST)を、流量計は接続部がSUS製の面積式(フロート式)流量計(KOFLOC社製)を用いた。ノズルにはスプレーイングシステムジャパン(株)製一流体ノズル(B1/4TT-SS+TX-SS1)を用いた。流量は圧力が0.3 MPaの条件で65 mL/minで,噴射角は54 度である。
【0047】
実験結果の一例を図10に示す。反応塔内に導入する模擬排ガスは、流量を10 L/minに設定し、NO濃度を100 ppmに設定した。まず,還元剤水溶液を噴霧せずに,模擬排ガスを反応塔に流し反応塔下部及び上部のガス温度が300℃になるように設定した。反応塔内に注入するオゾン含有ガスは、流量を0.2 L/minに設定し、図10の0分から30分及び40分から50分ではオゾン濃度を9 g/m3に設定し、30分から40分ではオゾン濃度を15 g/m3に設定した。また、50分から60分ではオゾンガス含有ガスを反応塔内に注入しなかった。
還元剤水溶液は、10分から60分までノズル(第1噴霧部4)供給し第1ミスト6を発生させた。供給した還元剤水溶液は、流量を40 mL/minに設定し、SO3濃度を10000 ppmに設定した。なお、0分から10分までは第1ミスト6を発生させていない。
図10より0〜10分ではオゾンガスが反応塔内に注入されているにかかわらず,模擬排ガスの温度が300℃であるためNO濃度がほとんど低下していないことがわかる。これは注入したオゾンガスが熱分解しNOの酸化に利用されなかったためと考えられる。
10分〜50分では還元剤水溶液の噴霧によって第1ミスト6中のガスが冷却されることで第1ミスト6中においてオゾンガスの熱分解が抑制されたと考えられる。このことにより、第1ミスト6中においてオゾンガスによるNOの酸化が効率よく行われたと考えられる。また、図10より、10分〜50分では還元剤によるNO2還元によってNOx濃度も低下していることがわかった。
なお、10分〜50分における反応塔上部の排ガス温度は約190℃であった。
【符号の説明】
【0048】
1: 排ガス流路 2:第1処理領域 3:第2処理領域 4:第1噴霧部 5:第2噴霧部 6:第1ミスト 7:第2ミスト 8:微粒子 9:噴霧部 10:オゾン供給部 12:オゾンガス発生器 14:第2液体槽 15:ポンプ 16:第2液体 17:集塵機 19:溶解炉 20:バーナー 21:炎 22:溶けたガラス 23:ガラス原料 25:水滴 26:第1液体槽 27:第1液体 30:排ガス処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10