特許第6178143号(P6178143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6178143難燃剤としてのリン含有トリアジン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178143
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】難燃剤としてのリン含有トリアジン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/38 20060101AFI20170731BHJP
   C07D 251/54 20060101ALI20170731BHJP
   C07F 5/06 20060101ALI20170731BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20170731BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170731BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   C07F9/38 ECSP
   C07F9/38 C
   C07D251/54
   C07F5/06 D
   C08K5/3492
   C08L101/00
   C09K21/12
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-149297(P2013-149297)
(22)【出願日】2013年7月18日
(62)【分割の表示】特願2010-518526(P2010-518526)の分割
【原出願日】2008年7月16日
(65)【公開番号】特開2014-1213(P2014-1213A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2013年8月9日
【審判番号】不服2015-21638(P2015-21638/J1)
【審判請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】102007036465.4
(32)【優先日】2007年8月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501449816
【氏名又は名称】ジェイ・エム・フーバー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーナー,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】デーヴ,トルプティ
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 佐藤 健史
【審判官】 木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−30280(JP,A)
【文献】 特開平4−253874(JP,A)
【文献】 特開平7−233311(JP,A)
【文献】 国際公開第00/11109(WO,A1)
【文献】 国際公開第00/11108(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III−2):
[(A−H)+m[Mm+(P274-m/2] (III−2)
[式中,(A−H)+は,式(IV):
【化1】
[式中,Xは,H,CN,C(NH)NH2,C(O)NH2,C(NH)NHCNである]であり;
各Mは,独立して,Ca,Mg,ZnまたはAlであり;
mは2または3である]
の化合物。
【請求項2】
MはMgまたはAlである,請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(IV)中のXはHである,請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
請求項1−3のいずれかに記載の化合物をポリマー中の難燃剤として使用する方法。
【請求項5】
ポリマーは熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーである,請求項4記載の方法。
【請求項6】
熱可塑性ポリマーは,ポリアミド,ポリウレタン,ポリスチレン,ポリオレフィンまたはポリエステルであり,および熱硬化性ポリマーはエポキシ樹脂である,請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項1−3のいずれかに記載の化合物を含むポリマー。
【請求項8】
メラミン,リン酸メラミニウムおよびシアヌル酸メラミンからなる群より選択される化合物の少なくとも1つをさらに含有する,請求項7記載のポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,リン含有トリアジン化合物,難燃剤としてのその使用,およびこの化合物を含むポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
金属ホスホネートは,それ自体で,あるいは他の成分との組み合わせで,多くの熱可塑性ポリマー用として知られている。
【0003】
これまで,窒素含有難燃剤,特にメラミン系のものが知られており,その一部は市販もされている。これらのメラミン化合物の一部はリンも含有している。
【0004】
米国特許5684071は,難燃剤としてのニトリロ(アミノ)トリメタン−ホスホン酸(NTMPA)のメラミン塩を一般的に記載する。トリメラミン−およびヘキサメラミン−NTMPA塩は,欧州特許公開1116773に記載されている。これに対し,欧州特許公開1116772は,難燃性成分としてのトリマグネシウム−,トリカルシウム−およびトリ亜鉛−ニトリロ(アミノ)トリメタンホスホネートを記載する。
【0005】
これまでに多数の難燃剤が知られているが,最適な特性および改良された環境適合性を有する難燃剤がなお必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許5684071
【特許文献2】欧州特許公開1116773
【特許文献3】欧州特許公開1116772
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって,本発明の目的は,そのような難燃剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は,式(I):
【化1】
[式中,(A−H)+は式(IV):
【化2】
[Xは,H,CN,C(NH)NH2,C(O)NH2,C(NH)NHCN,またはその縮合生成物である]
のラジカルであり;
aは,1,2,3,4,5または6であり;
各Mは,独立して,Ca,Mg,ZnまたはAlであり;
mは2または3であり;
bは,1,2,3,4または5であり;
cは,0,1,2または3であり;
dは,1,2または3であり,
ここで,a+b*m=(5+c)*dである]
の化合物,または式(I)の化合物の配位ポリマーにより達成される。
【0009】
この目的はさらに,式(II):
【化3】
[式中,(A−H)+およびcは,それぞれ上で定義したとおりである]
のモノマー化合物またはその塩を水脱離重縮合することにより得られるポリマーにより達成される。
【0010】
この目的はさらに,式(III−1)または式(III−2):
[(A−H)+m[Mm+(HPO42-m] (III−1)
[(A−H)+m[Mm+(P274-m/2] (III−2)
[式中,(A−H)+,Mおよびmはそれぞれ上で定義したとおりである]
の化合物により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は式(I)の化合物を製造するための反応を示す。
図2図2は式(I)の例示的配位ポリマーを示す。
図3図3は式(II)に由来するさらに別のポリマーを示す。
図4図4は式(II)に由来するさらに別のポリマーを製造するための反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
式(I),(II)および(III)の化合物においては,[(A−H)+]ラジカルが存在しており,これは式(IV)に対応し,イオン性である。脱プロトン化した塩基型は,X=Hであるときメラミンに対応する。ラジカルは,式(I),(II)および(III)の化合物中にその塩基形にしたがって導入される。この文脈において,それ自体またはその縮合生成物は,アンモニアを脱離して用いることができる。メラミンの場合,例えば,メラム(melam),メレム(melem)またはメロン(melon)が存在する。好ましくは,X=Hである。
【0013】
さらに,式(I)および(II)の化合物は,アミノメタンホスホン酸から誘導され,エチレンアンモニウム単位を含んでいてもよい(cはゼロではない)。そのような化合物は,エチレンジアミン,ホルムアルデヒドおよび亜リン酸または亜リン酸塩から簡単に製造することができる。そのような製造は,例えば,J.Org.Chem.(1966),1603−1607に記載されている。
【0014】
好ましくは,上述の式においてcは0または1である。
【0015】
式(I)の化合物は,そのまま用いてもよく,あるいは,熱的に変換してその配位ポリマーとしてもよい。この場合,ポリマー性配位のフレームワークが形成されうるように,リン含有アニオン性リガンドから2つの異なる金属カチオンへの架橋配位結合が存在する。
【0016】
式(I)および(III)の化合物は,金属イオンを含み,これは好ましくはMgまたはAlである。
【0017】
式(II)の化合物は,それ自体知られる単量体から簡単な熱脱水により得ることができるポリマーまたはその塩であり,ここで,残留するOH基をカチオンで脱プロトン化すると塩が形成される。カチオンは,好ましくは式(A−H)+のカチオンであり,特にメラミニウムである。
【0018】
上述の化学式は,イオン性の状態のラジカルを表す限定的な式である。しかし,これは実際の電荷分布と対応している必要はない。さらに,上に示される構造の互変異性型も生ずることができ,これも本発明の範囲内に含まれる。
【0019】
式(I)の新規化合物の例は下記の化合物であり,ここで,Melはメラミンを表す。a) ニトリロトリスメタンホスホン酸(H6−NTPMA,c=0)の誘導体:
[(Mel−H)+3[Mg(HNTMPA)]3- (1)
[(Mel−H)+2[Al(HNTMPA)]2- (2)
[(Mel−H)+4[Mg3(HNTMPA)24- (3)
[(Mel−H)+4[Ca3(HNTMPA)24- (4)
[(Mel−H)+4[Zn3(HNTMPA)24- (5)
[(Mel−H)+3[Mg2Al(HNTMPA)23- (6)
[(Mel−H)+2[MgAl2(HNTMPA)22- (7)
b) エチレンジアミンテトラキスメタンホスホン酸(H8−EDTMP,c=1)の誘導体:
[(Mel−H)+4[Mg(H2EDTMP)]4- (8)
[(Mel−H)+4[Ca(H2EDTMP)]4- (9)
[(Mel−H)+4[Zn(H2EDTMP)]4- (10)
[(Mel−H)+3[Al(H2EDTMP)]3- (11)
[(Mel−H)+2[Mg2(H2EDTMP)]2- (12)
[(Mel−H)+2[Ca2(H2EDTMP)]2- (13)
[(Mel−H)+2[Zn2(H2EDTMP)]2- (14)
[(Mel−H)+][MgAl(H2EDTMP)]- (15)
[(Mel−H)+][CaAl(H2EDTMP)]- (16)
[(Mel−H)+][ZnAl(H2EDTMP)]- (17)
c) ジエチレントリアミンペンタキスメタンホスホン酸(H10−DETPMP,c=2)の誘導体:
[(Mel−H)+5[Mg(H3DETPMP)]5- (18)
[(Mel−H)+5[Ca(H3DETPMP)]5- (19)
[(Mel−H)+5[Zn(H3DETPMP)]5- (20)
[(Mel−H)+4[Al(H3DETPMP)]4- (21)
[(Mel−H)+3[Mg2(H3DETPMP)]3- (22)
[(Mel−H)+3[Ca2(H3DETPMP)]3- (23)
[(Mel−H)+3[Zn2(H3DETPMP)]3- (24)
[(Mel−H)+2[MgAl(H3DETPMP)]2- (25)
[(Mel−H)+2[CaAl(H3DETPMP)]2- (26)
[(Mel−H)+2[ZnAl(H3DETPMP)]2- (27)
[(Mel−H)+][Mg3(H3DETPMP)]- (28)
[(Mel−H)+][Ca3(H3DETPMP)]- (29)
[(Mel−H)+][Zn3(H3DETPMP)]- (30)
[(Mel−H)+4[Mg5(H3DETMP)24- (31)
[(Mel−H)+4[Ca5(H3DETMP)24- (32)
[(Mel−H)+4[Zn5(H3DETMP)24- (33)
[(Mel−H)+2[Mg3Al2(H3DETMP)22- (34)
[(Mel−H)+2[Ca3Al2(H3DETMP)22- (35)
[(Mel−H)+2[Zn3Al2(H3DETMP)22- (36)
d) トリエチレンテトラミンヘキサキスメタンホスホン酸(H12−TETHMP,c=3)の誘導体
[(Mel−H)+6[Mg(H4TETHMP)]6- (37)
[(Mel−H)+6[Ca(H4TETHMP)]6- (38)
[(Mel−H)+6[Zn(H4TETHMP)]6- (39)
[(Mel−H)+5[Al(H4TETHMP)]5- (40)
[(Mel−H)+4[Mg2(H4TETHMP)]4- (41)
[(Mel−H)+4[Ca2(H4TETHMP)]4- (42)
[(Mel−H)+4[Zn2(H4TETHMP)]4- (43)
[(Mel−H)+2[Al2(H4TETHMP)]2- (44)
[(Mel−H)+2[Mg3(H4TETHMP)]2- (45)
[(Mel−H)+2[Ca3(H4TETHMP)]2- (46)
[(Mel−H)+2[Zn3(H4TETHMP)]2- (47)
[(Mel−H)+3[MgAl(H4TETHMP)]3- (48)
[(Mel−H)+3[CaAl(H4TETHMP)]3- (49)
[(Mel−H)+3[ZnAl(H4TETHMP)]3- (50)
[(Mel−H)+][Mg2Al(H4TETHMP)]- (51)
[(Mel−H)+][Ca2Al(H4TETHMP)]- (52)
[(Mel−H)+][Zn2Al(H4TETHMP)]- (53)
【0020】
このような化合物は,一般に,図1に示される反応により得ることができる。例示的配位ポリマーは図2に示される。
【0021】
式(II)の化合物は,例えば,下記の誘導体である。ここでは,ポリマーが2,3,4,5または6個の単量体から形成されることが好ましい。化合物(54)−(57)は,OH基の一部のみが水を脱離して−O−架橋を形成し,残りのOH基がメラミンとともに対応するメラミニウム塩を形成している塩である。
ピロアミノメタンホスホン酸誘導体:
【化4】
【0022】
式(II)の化合物に由来するさらに別のポリマー,およびそのようなポリマーを製造するための反応は,図3および4に示される。
【0023】
式(III)の化合物の例は下記の化合物である:
[(Mel−H)+2[Mg(HPO422- (59)
[(Mel−H)+2[Ca(HPO422- (60)
[(Mel−H)+2[Zn(HPO422- (61)
[(Mel−H)+3[Al(HPO433- (62)
[(Mel−H)+2[MgP272- (63)
[(Mel−H)+2[CaP272- (64)
[(Mel−H)+2[ZnP272- (65)
[(Mel−H)+3[Al(P273/23- (66)
【0024】
好ましい化合物は1,2,8,11,12,15,54,55,56,57,58,59,62,63および66である。
【0025】
特に好ましいものは,1,2,8,11,54,55および56である。
【0026】
非常に好ましいものは,54,55および56である。
【0027】
化合物1−53(カテゴリーa)は,錯アニオンをもつメタラアミノホスホネートであり,これは,二座(二極性(bipodal))ホスホネートリガンドとともに少なくとも1つの4価または6価の金属原子(Mg,Ca,Zn,Al)を配位中心として含み,少なくとも1つの三元アンモニウム−ホスホネート−ベタイン構造(内部ホスホネート)を分子中に含む。
【0028】
化合物59−66(カテゴリーb)は,錯アニオンを有する水素ホスファト−またはピロホスファトメタレートを表し,これは,二座リン酸水素またはピロリン酸リガンドとともに,5価または6価の金属原子(Mg,Ca,Zn,Al)を配位中心として有する。
【0029】
化合物54−58(カテゴリーc)は三元アンモニウム−ホスホネート−ベタイン構造をもつピロアミノメタンホスホネートアニオンを含む。
【0030】
カテゴリーa)の化合物は,図1に示されるバリアントA)またはB)にしたがって合成することができる。
【0031】
バリアントA)においては,第1段階はM(H2PO4)2マタハ3の溶液(Ia)への変換を含み,これは,化学量論量の濃H3PO4およびMtO/Mt23,Mt(OH)2マタハ3またはMtCO3から出発し,完全に進行して溶液となる(実施例1を参照)。
【0032】
段階2)においては,このようにして得られた水性溶液をモル量の水性アミノメタンホスホン酸溶液と反応させ,これにより白色固体が沈殿し,これを濾過し,洗浄し,乾燥する(IVa,実施例2を参照)。放出されたリン酸(またはその濃縮溶液)は,濾液を濃縮することにより回収して,反応サイクルに戻すことができる。
【0033】
段階3)においては,最初に(IVa)を,好ましくは水性懸濁液中で50−60℃で加え,メラミン(IIIa)を少しずつ加える。多量の最終生成物(VIa)を吸引して濾別し,洗浄し,乾燥する(実施例5を参照)。
【0034】
240℃で数時間熱処理すると,配位ポリマー(VIIa)が形成される。
【0035】
バリアントB)においては,第1段階は,メラミンアミノメタンホスホネート(Va)への部分的変換を含み,これを濾過し,洗浄し,乾燥する(実施例3を参照)。段階2)においては,(Va)を(Ia)と反応させる。好ましくは,最初に(Ia)を加え,(Va)を50−60℃で少しずつ加える。多量の最終生成物(VIa)を吸引して濾別し,洗浄し,乾燥する(実施例5を参照)。
【0036】
240℃で数時間熱処理すると,配位ポリマーが形成される(図1には示さず)。
【0037】
いずれのバリアントも,ほぼ定量的な収率で(VIa)を与える。
【0038】
バリアントB)が好ましい。
【0039】
カテゴリーa)にしたがう化合物は,図1および2にしたがって合成する。
【0040】
実施例1にしたがえば,反応はH3PO4を用いて行い,水性Mt(H2PO4)2マタハ3溶液を生成し,次にこれを固体メラミン(IIIa)とともにホモジナイズする。あるいは,水性溶液をメラミン上にスプレーし,単量体(XIIa)が形成される−実施例6を参照。
【0041】
240℃で数時間熱処理すると,オリゴマー性またはポリマー性のピロホスファト−ジアルミネートが得られる(XIIIaおよびXIVa)。
【0042】
スプレー法が好ましい。
【0043】
カテゴリーc)にしたがう化合物は,図1および3にしたがって合成する。部分アミノメタンホスホネート(Va)−実施例3を参照−を220℃で数時間加熱することにより単量体のピロアミノメタンホスホネート(Xa)に変換し,次にこれを250−260℃で熱処理することにより,ポリマー性ピロアミノメタンホスホネート(XIa)が形成される(実施例4を参照)。
【0044】
本発明の難燃剤は,合成ポリマー,特に熱可塑性ポリマーに難燃性を付与するのに特に適している。
【0045】
本発明は,ポリマー,好ましくは熱可塑性ポリマー,特にポリアミド,ポリウレタン,ポリスチレン,ポリオレフィンまたはポリエステル,または熱硬化性ポリマー,特にエポキシ樹脂における,本発明の化合物の難燃剤としての使用を提供する。
【0046】
したがって,本発明はさらに,本発明の化合物を含むポリマーを提供する。本発明の複数の化合物を用いることも可能であることが理解されるであろう。
【0047】
さらに,ポリマーは本発明の化合物の他にさらに別の化合物を含んでいてもよい。その例としては,メラミン,リン酸メラミニウムまたはシアヌル酸メラミンが挙げられる。
【0048】
したがって,本発明の好ましい態様は,メラミン,リン酸メラミニウムおよびシアヌル酸メラミンからなる群より選択される化合物の少なくとも1つをさらに含むポリマーに関する。
【0049】
そのような合成ポリマーの例は次のとおりである:
1.モノオレフィンおよびジオレフィンのポリマー,例えば,ポリプロピレン,ポリイソブチレン,ポリブテン−1,ポリ−4−メチルペンテン−1,ポリビニルシクロヘキサン,ポリイソプレンまたはポリブタジエン,およびシクロオレフィン,例えば,シクロペンテンまたはノルボルネンのポリマー,およびポリエチレン(架橋されたものを含む),例えば,高密度ポリエチレン(HDPE)または高分子量(HDPE−HMW),超高分子量の高密度ポリエチレン(HDPE−UHMW),中密度ポリエチレン(MDPE),低密度ポリエチレン(LDPE)および線状低密度ポリエチレン(LLDPE),(VLDPE)および(ULDPE)。
【0050】
2.ポリスチレン,ポリ(p−メチルスチレン),ポリ(α−メチルスチレン)。
【0051】
3.ポリブタジエン−スチレンまたはポリブタジエンおよび(メタ)アクリロニトリルのコポリマーおよびグラフトコポリマー,例えば,ABSおよびMBS。
【0052】
4.ハロゲン化ポリマー,例えば,ポリクロロプレン,ポリ塩化ビニル(PVC),ポリ塩化ビニリデン(PVDC),塩化ビニル/塩化ビニリデン,塩化ビニル/酢酸ビニルまたは塩化ビニル/酢酸ビニルのコポリマー。
【0053】
5.ポリ(メタ)アクリレート,ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリアクリルアミドおよびポリアクリロニトリル(PAN)。
【0054】
6.不飽和アルコールおよびアミンのポリマーまたはそれらのアシル誘導体またはアセタール,例えば,ポリビニルアルコール(PVA),ポリビニルアセテート,ステアレート,ベンゾエートまたはマレエート,ポリビニルブチラール,ポリアリルフタレートおよびポリアリルメラミン。
【0055】
7.環状エーテルのホモポリマーおよびコポリマー,例えば,ポリアルキレングリコール,ポリエチレンオキサイド,ポリプロピレンオキサイドおよびこれらのビスグリシジルエーテルとのコポリマー。
【0056】
8.ポリアセタール,例えば,ポリオキシメチレン(POM),およびポリウレタン修飾ポリアセタールおよびアクリレート修飾ポリアセタール。
【0057】
9.ポリフェニレンオキサイドおよびスルフィド,およびこれらとスチレンポリマーまたはポリアミドとの混合物。
【0058】
10.ジアミンとジカルボン酸から,および/またはアミノカルボン酸または対応するラクタムから誘導されるポリアミドおよびコポリアミド,例えば,ナイロン4,ナイロン6,ナイロン6/6,6/10,6/9,6/12,12/12,ナイロン11,ナイロン12,m−キシリレンジアミンおよびアジピン酸から誘導される芳香族ポリアミド,およびEPDMまたはABSで修飾されたコポリアミド。ポリアミドおよびコポリアミドの例としては,ε−カプロラクタム,アジピン酸,セバシン酸,ドデカノン酸,イソフタル酸,テレフタル酸,ヘキサメチレンジアミン,テトラメチレンジアミン,2−メチルペンタメチレンジアミン,2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン,2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン,m−キシリレンジアミンまたはビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンから誘導されるものが挙げられる。
【0059】
11.ポリウレア,ポリイミド,ポリアミドイミド,ポリエーテルイミド,ポリエステルイミド,ポリヒダントインおよびポリベンズイミダゾール。
【0060】
12.ジカルボン酸とジアルコール,および/またはヒドロキシカルボン酸または対応するラクトンから誘導されるポリエステル,例えば,ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート,ポリアルキレンナフタレート(PAN)およびポリヒドロキシベンゾエート,ポリ乳酸エステルおよびポリグリコール酸エステル。
【0061】
13.ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネート。
【0062】
14.ポリケトン。
【0063】
15.上述のポリマーの混合物またはアロイ,例えば,PP/EPDM,PA/EPDMまたはABS,PVC/EVA,PVC/ABS,PBC/MBS,PC/ABS,PBTP/ABS,PC/AS,PC/PBT,PVC/CPE,PVC/アクリレート,POM/熱可塑性PU,PC/熱可塑性PU,POM/アクリレート,POM/MBS,PPO/HIPS,PPO/N6,6およびコポリマー,PA/HDPE,PA/PP,PA/PPO,PBT/PC/ABSまたはPBT/PET/PC。
【0064】
16.熱硬化性材料,例えば,PF,MFまたはUFまたはこれらの混合物。
【0065】
17.エポキシ樹脂−熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂。
【0066】
18.フェノキシ樹脂。
【0067】
19.木材−プラスチック複合材料(WPC)。
【0068】
ポリマー中の本発明の難燃剤の濃度は,好ましくは加工すべきポリマーに基づいて0.1−60重量%である。
【0069】
難燃剤は,例えば,混合機中で粉体および/または顆粒の形で予備混合し,次に均一化してポリマーメルトとすることにより,配合(ツインスクリュー押し出し機等の装置で)することにより製造することができる。難燃剤はまた,加工工程の途中で直接加えてもよい。
【0070】
このようにして難燃性となった材料は,繊維,フィルム,注型品に加工することができ,表面処理に用いることができる。
【0071】
難燃剤は,繊維,フィルム,テキスタイルまたは他の工業材料の表面処理(含浸)に用いることもできる。
【0072】
金属表面のコーティングは,防食保護効果も達成することができる。
【0073】
本発明のポリマー調製物は,さらに別の既知の相乗作用剤および共成分,例えば,アリールまたはクロロアルキルリン酸塩,アリーレン二リン酸塩,ビスフェノールA(F)二リン酸塩,ポリマー性アリールリン酸塩,ビスアジンペンタエリスリチル二リン酸塩,ヘキサ−アリールオキシトリホスファゼン,ポリアリールオキシホスファゼンおよびシロキサン(R2SiO)rまたは(RSiO1,5r,特にPOSS化合物(かご型オリゴマー性シルセスキノキサン),および金属ホスフィン酸塩または金属次亜リン酸塩(金属:Mg,Ca,ZnおよびAl),またはチャー形成剤,例えば,ペンタエリスリトール,ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールまたはそれらのエステル,またはそれらの促進剤とともに提供することができる。
【0074】
さらに,下記の添加剤を挙げることができる:金属水酸化物,例えば水酸化アルミニウムまたはマグネシウム,金属ホウ酸塩,例えば,ホウ酸カルシウム,マグネシウム,マンガンまたは亜鉛,金属酸化物,例えば酸化マグネシウム,アルミニウム,マンガン,亜鉛およびアンチモン,または二酸化チタン,二酸化ケイ素;金属リン酸塩,例えば,リン酸マグネシウム,カルシウム,亜鉛およびアルミニウム;粘土鉱物,例えば,カオリナイト,白雲母,パイロフィライト,ベントナイトおよびタルク,または他の無機材料,例えば珪灰石,石英,雲母,長石または無機アニオン交換剤,例えばハイドロタルサイトまたは他のマグネシウム−アルミニウムヒドロキソカーボネートまたはカルシウム−アルミニウムヒトロキソカーボネート。
【0075】
発泡剤としては,メラミン,メラミン−ホルムアルデヒド樹脂,シアヌル酸メラミン,ポリリン酸メラミン;尿素誘導体,例えば尿素,チオウレア,グアナミン,ベンゾグアナミン,アセトグアナミンおよびスクシニルグアナミン,ジシアンシアミド,グアニジンおよびスルファミン酸グアニジンおよび他のグアニジン塩,またはアラントイン,グリコールウリルおよびイソシアヌル酸トリスヒドロキシエチルが挙げられる。
【0076】
本発明のポリマー調製物は,さらにアンチドリップ剤,特にポリテトラフルオロエチレン系のものを含んでいてもよい。そのようなアンチドリップ剤の濃度は,加工すべきポリマーに基づいて0.01から15重量%である。
【0077】
さらに,別の成分,例えば,増量剤および補強剤,例えば,グラスファイバー,ガラスビーズまたは無機添加剤,例えば白亜を配合物に加えてもよい。追加の添加物としては,例えば,抗酸化剤,光安定剤,潤滑剤,顔料,核形成剤および帯電防止剤が挙げられる。
【実施例】
【0078】
実施例1−前駆体
アルミニウムトリス二水素ホスフェート(Ia)の製造:23.4g(0.3mol,湿潤)の水酸化アルミニウムを,88.2g(0.9mol,85%)のリン酸に,撹拌および加熱しながら溶解した。
【0079】
実施例2−前駆体
(IVa)の製造:実施例1にしたがって製造した(Ia)の溶液に,89.7g(0.3mol)のアミノトリメタンホスホン酸(IIa)(Dequest 2000,50%溶液,SOLUTIAより)を徐々に加えた。沈殿した白色固体を濾別し,洗浄し,一定重量となるまで乾燥した(二水素アミノトリメタンホスホナトアルミネートベタイン(IVa))。
収率:87g(理論値の約90%);m.p.:>300℃
【0080】
実施例3−前駆体
ビスメラミニウム三水素アミノトリメタンホスホネートベタイン(Va)の製造:89.7g(0.3mol)のアミノトリメタンホスホン酸(IIa)を含む水性溶液(Dequest 2000,50%溶液,SOLUTIAより)に,75.7g(0.6mol)のメラミン(IIIa)を,撹拌し加熱しながら少しずつ加えた。数分後,多量の白色沈殿物が形成され,これを吸引により濾別し,一定重量となるまで乾燥した。
収率:155g(理論値の約94%);m.p.:>300℃
【0081】
実施例4−本発明
(Va)を200−220℃に加熱することにより,ピロアミノメタンホスホネートベタイン(Xa)を得ることができ,これを30−250℃で数時間加熱することによりポリマー性ピロアミノメタンホスホネートベタイン(XIa)が形成される。
【0082】
実施例5−本発明
ビスメラミニウム水素アミノトリメタンホスホナトアルミネートベタイン(VIa)の製造:
バリアントA:(IVa)+(IIIa)
32.3g(0.1mol)の(IVa)を800mlの水に懸濁し,撹拌しながら50−60℃に加熱した。この懸濁液に,25.3g(0.2mol)のメラミン(IIIa)を少しずつ加えた。数分以内に多量の白色沈殿物が形成され,これを吸引濾別し,一定重量となるまで乾燥した。
収率:52.0g(理論値の約90%);m.p.:>250℃。
【0083】
バリアントB:(Ia)+(Va)
実施例1にしたがって製造した0.15molの(Ia)の溶液を,最初に800mlの水に加え,撹拌しながら50−60℃に加熱した。この溶液に,82.7g(0.15mol)の(Va)を少しずつ加えた。約4時間後,多量の生成物が形成され,これを吸引濾別し,一定重量となるまで乾燥した。
収率:78.0g(理論値の約90%);m.p.:>300℃。
【0084】
いずれの生成物も,230−250℃で数時間加熱することにより,配位ポリマー(VIIa)に変換することができる。
【0085】
実施例6−本発明
トリスメラミニウムトリス水素ホスファトアルミネート(XIIa)の製造:318.0g(1.0mol)の(Ia)の水性溶液を,378.4g(3.0mol)のメラミン(IIIa)上にスプレーした。乾燥後,生成物の収率はほぼ定量的である;m.p.:>300℃。
【0086】
230−250℃で数時間加熱すると,ヘキサメラミニウムトリスピロホスファトジアルミネート(XIIIa)が形成され,これをさらに加熱することにより,ポリヘキサメラミニウムビスピロホスファトホスファトジアルミネート(XIVa)に変換した。
図1
図2
図3
図4