特許第6178146号(P6178146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178146
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】グリップ
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/06 20060101AFI20170731BHJP
   G05G 9/04 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   G05G1/06
   G05G9/04
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-151964(P2013-151964)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-22643(P2015-22643A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】徳田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山本 真大
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−053789(JP,A)
【文献】 特表2003−525490(JP,A)
【文献】 特開2003−220893(JP,A)
【文献】 特開2000−185574(JP,A)
【文献】 特開2012−127150(JP,A)
【文献】 実開平01−142021(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/06
G05G 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手操作用具(2)の把持操作部(3)を構成していて、手のひらと長指とで把持するグリップ本体(5)に、母指球と当接する母指球面(B)と、手のひらの中部及び小指球と当接する手掌面(C)と、長指と当接する長指面(D)と、手で把持したときに長指の先端と母指球との間に位置して親指が配置可能な開放面(E)とを有するグリップであって、
前記グリップ本体(5)の母指球面(B)と手掌面(C)との間に、手首を掌屈するときに母指球で押圧してグリップ本体(5)に回動力を伝達する掌屈押圧部(G)を形成し、前記グリップ本体(5)の長指面(D)に、手首を背屈するときに長指を引っ掛けてグリップ本体(5)に回動力を伝達する背屈引掛部(H)を形成しており、
前記掌屈押圧部(G)は、グリップ本体(5)の軸中心から当該掌屈押圧部(G)までの最長距離が、前記軸中心から母指球面(B)と開放面(E)との間のコーナ部までの最長距離よりも大きくなるように突出させた部位であり、
前記背屈引掛部(H)は、長指面(D)と開放面(E)との間に、グリップ本体(5)の内側に向けてへこむ凹み(39)を形成することにより、該凹み(39)に連続し且つ隣接して形成された隆起部であることを特徴とするグリップ。
【請求項2】
前記掌屈押圧部(G)に連続する母指球面(B)の部位は、平坦に形成され、この母指球面(B)の平坦に形成した部位と手掌面(C)との間のコーナ部である前記掌屈押圧部(G)の半径は、母指球面(B)と開放面(E)との間のコーナ部よりも小さい半径に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のグリップ。
【請求項3】
記グリップ本体(5)は手操作用具(2)のレバー杆(2a)に対して支持軸体(40)を介して回動自在に嵌合しており、前記支持軸体(40)の下部に前記グリップ本体(5)の回動を検出する回動センサ(9)を設けていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリップ。
【請求項4】
前記グリップ本体(5)の頂部(A)に親指で操作可能なスイッチ(6)を備え、グリップ本体(5)の母指球面(B)の上部にスイッチ(6)を操作するときに親指の腹を沿わせる浅溝状の親指案内部(Ba)を上下方向に長くかつスイッチ(6)に向かって形成しており、
前記親指案内部(Ba)と手掌面(C)との間にスイッチ(6)への手の侵入に抵抗を与える隆起部(Bc)を親指案内部(Ba)に沿って上下方向に形成し、この隆起部(Bc)と前記掌屈押圧部(G)とを繋げていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリップ。
【請求項5】
前記グリップ本体(5)の長指面(D)の上部に人さし指又は中指で操作される押しボタン(7)を備えており、前記長指面(D)の上部の押しボタン周囲には盛り上がった防塁部(Da)を形成しており、この防塁部(Da)の下部と背屈引掛部(H)の上部とを繋げていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のグリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械の手操作用具の把持操作部を構成するグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械の手操作用具の把持操作部を構成するグリップの従来技術においては、特許文献1、2に開示されているように、手のひらと長指で把持するグリップ本体と、このグリップ本体の頂部に配置されていて親指で操作可能なスイッチとを備え、前記グリップ本体に、母指球と当接する母指球面と、手のひらの中部及び小指球と当接する手掌面と、長指と当接する長指面と、手で把持したときに長指の先端と母指球との間に位置して親指が配置可能な開放面とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−53789号公報
【特許文献1】特開2005−120821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術のグリップは、主に手操作用具を揺動操作するための形状であり、母指球面及び長指面が滑らかな円弧面であり、手首を掌屈又は背屈するときにグリップ本体に回動力を伝達するのには適さない形状になっている。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにしたグリップを提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、手首を掌屈するときに母指球で押圧し、手首を背屈するときに長指を引っ掛けて、回動操作が容易にできるようにしたグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
本発明のグリップは、手操作用具2の把持操作部3を構成していて、手のひらと長指とで把持するグリップ本体5に、母指球と当接する母指球面Bと、手のひらの中部及び小指球と当接する手掌面Cと、長指と当接する長指面Dと、手で把持したときに長指の先端と母指球との間に位置して親指が配置可能な開放面Eとを有するグリップであって、
前記グリップ本体5の母指球面Bと手掌面Cとの間に、手首を掌屈するときに母指球で押圧してグリップ本体5に回動力を伝達する掌屈押圧部Gを形成し、前記グリップ本体5の長指面Dに、手首を背屈するときに長指を引っ掛けてグリップ本体5に回動力を伝達する背屈引掛部Hを形成しており、前記掌屈押圧部Gは、グリップ本体5の軸中心から当該掌屈押圧部Gまでの最長距離が、前記軸中心から母指球面Bと開放面Eとの間のコーナ部までの最長距離よりも大きくなるように突出させた部位であり、前記背屈引掛部Hは、長指面Dと開放面Eとの間に、グリップ本体5の内側に向けてへこむ凹み39を形成することにより、該凹み39に連続し且つ隣接して形成された隆起部であることを特徴とする。
また、前記掌屈押圧部Gに連続する母指球面Bの部位は、平坦に形成され、この母指球面Bの平坦に形成した部位と手掌面Cとの間のコーナ部である前記掌屈押圧部Gの半径は、母指球面Bと開放面Eとの間のコーナ部よりも小さい半径に形成されている。
【0007】
また、前記グリップ本体(5)は手操作用具(2)のレバー杆(2a)に対して支持軸体(40)を介して回動自在に嵌合しており、前記支持軸体(40)の下部に前記グリップ本体(5)の回動を検出する回動センサ(9)を設けていることを特徴とする。
また、前記グリップ本体5の頂部Aに親指で操作可能なスイッチ6を備え、グリップ本体5の母指球面Bの上部にスイッチ6を操作するときに親指の腹を沿わせる浅溝状の親指案内部Baを上下方向に長くかつスイッチ6に向かって形成しており、
前記親指案内部Baと手掌面Cとの間にスイッチ6への手の侵入に抵抗を与える隆起部Bcを親指案内部Baに沿って上下方向に形成し、この隆起部Bcと前記掌屈押圧部Gとを繋げていることを特徴とする。
【0008】
また、前記グリップ本体5の長指面Dの上部に人さし指又は中指で操作される押しボタン7を備えており、前記長指面Dの上部の押しボタン周囲には盛り上がった防塁部Daを形成しており、この防塁部Daの下部と背屈引掛部Hの上部とを繋げていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、手首の掌屈と背屈とでグリップ本体の回動操作が容易にできる。
即ち、グリップ本体5の母指球面Bと手掌面Cとの間に、手首を掌屈するときに母指球で押圧してグリップ本体5に回動力を伝達する掌屈押圧部Gを形成し、前記グリップ本体5の長指面Dに、手首を背屈するときに長指を引っ掛けてグリップ本体5に回動力を伝達する背屈引掛部Hを形成しているので、手首を掌屈するときに母指球で掌屈押圧部Gを押圧してグリップ本体5を回動でき、手首を背屈するときに長指を背屈引掛部Hに引っ掛けてグリップ本体5を回動でき、グリップ本体5の回動操作が容易にできる。
【0010】
また、親指案内部Baと手掌面Cとの間にスイッチ6への手の侵入に抵抗を与える隆起部Bcを親指案内部Baに沿って上下方向に形成し、この隆起部Bcと前記掌屈押圧部Gとを繋げているので、手首を掌屈するときに母指球が押圧する掌屈押圧部Gの上下範囲が広くなり、グリップ本体5の掌屈回動がより確実かつ容易になる。
また、長指面Dの上部の押しボタン周囲には盛り上がった防塁部Daを形成し、この防塁部Daの下部と背屈引掛部Hの上部とを繋げているので、背屈引掛部Hが長指を押しボ
タン7に導く案内部となり、押しボタン7が長指を背屈引掛部Hへの指掛けの目安となり、グリップ本体5の背屈回動がより確実かつ容易になる。
【0011】
また、グリップ本体5は手操作用具2に対して回動自在に嵌合していて、グリップ本体5の下部に手操作用具2との間の回動を検出する回動センサ9を設けているので、グリップ本体5の回動操作を簡単かつ確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態を示す操作者から見た正面図である。
図2】同斜視図である。
図3】同背面図である。
図4】グリップの右側面図である。
図5】同左側面図である。
図6】同平面図である。
図7図5のX−X線断面図である。
図8図5のY−Y線断面図である。
図9図5のZ−Z線断面図である。
図10】グリップの装着状態の右側面図である。
図11】バックホー操縦部の手操作用具に適用した平面図である。
図12】バックホーの全体側面図である。
図13】ドーザの動きを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図10〜13において、産業機械としてバックホー21を例示している。バックホー21は左右クローラ式走行部22を有する走行機体23に旋回台24を縦軸回り旋回自在に設け、走行機体23の前部にドーザ装置26を支持し、旋回台24の上に操縦部27を設けている。
【0014】
操縦部27には、運転席28の左右に、旋回台24に旋回動作を、ブーム31に昇降動作を、アーム32に揺動動作を、バケット33に掬い・ダンプ動作をそれぞれさせるための作業部操作装置34、35が配置され、フロア36の前部に走行操縦装置37等が配置され、運転席28の右前方にドーザ装置26のブレード26Aを動作させる手操作用具2(操作レバー)に、把持操作部3を構成するグリップ1を設けている。
【0015】
前記手操作用具2は、レバー杆2aの上端にグリップ1を取り付けていて、グリップ1を前後方向に揺動操作することにより、ドーザ装置26のブレード26Aを昇降動作(図13のα方向)させ、グリップ1をレバー杆2a回りに回動することにより、ドーザ装置26のブレード26Aをアングル動作(図13のβ方向で示すブレード26Aの左右側部の前後動作)させ、頂部のスイッチを親指で押動操作することにより、ブレード26Aをチルト動作(図13のγ方向で示すブレード26Aの左右側部の上下動作)させ、背面(運転席28に着座した操作者から見て)の押しボタンを人さし指で押動操作することにより、バックホー21の走行速度を高低に切り替える変速動作をさせる。
【0016】
図1〜10において、グリップ1は、手操作用具2のレバー杆2aに対して支持軸体40を介して回動自在に嵌合していて、手のひらと長指(人さし指、中指、薬指及び小指を含む)で把持するグリップ本体5と、このグリップ本体5の頂部Aに配置されていて親指(母指)で操作可能なシーソ式スイッチ6と、グリップ本体5の前面上部(運転席28に着座した操作者から見て背面)に配置されていて人さし指又は中指で操作される押しボタン7と、グリップ本体5の下部と支持軸体40との間に設けられていて、グリップ本体5の回動を検出する回動センサ9とを備えている。
【0017】
前記グリップ1は右勝手用を示しており、下部から上部へ前傾姿勢に配置され、グリップ本体5は合成樹脂で左右2つ割りに形成され、中心線(割り面)Sで合体してネジ止めするとともに、支持軸体40に軸心回り回動自在に嵌合している。
図4、7〜10に示すように、支持軸体40は角材(六角)製の手操作用具2に嵌合してネジ44で止められており、その上部に戻りバネ41を有し、下部に左右一対の回動センサ9を取り付けている。
【0018】
前記戻りバネ41はコイル部が支持軸体40内に位置し、その両端が支持軸体40の溝40aから径外方向に突出し、その突出両端にグリップ本体5が係合しており、グリップ本体5が一方向に回動すると、支持軸体40の溝40aの範囲内で戻りバネ41の一端を移動する。グリップ本体5は、戻りバネ41の端部の移動可能範囲で回動角度が設定されており、戻りバネ41の復元力で回動位置から元位置へ復帰可能になっている。
【0019】
グリップ本体5は、下部に左右回動センサ9と択一的に当接する作動片42を有し、回動することにより、一方の作動片42が左右一方の回動センサ9を作動して、回動方向を検出できるようになっている。
前記ネジ44はグリップ本体5に設けた蓋45で目隠しされており、この蓋45を取ってネジ44を着脱することにより、手操作用具2に対してグリップ本体5を支持軸体40とともに着脱することができる。
【0020】
グリップ本体5は概ね、頂部Aを有する頭部5cが球形であり、胴部5dが頭部5cより直径の小さい断面略楕円形(円形、長円形でもよい。)であり、下部が胴部5dより直径の大きい断面略円形の拡大筒部5eとなっており、胴部5dから拡大筒部5eまで末広がり(テーパ形状)の傾斜面Nで接続されており、全体形状が頭球胴楕円下拡大形状である。
【0021】
グリップ本体5は、胴部5dを手のひら及び中指で握った状態で、母指球が傾斜面Nに当接し、親指及び人さし指を頭部5cに回せる形状となっており、頂部Aのスイッチ6は親指の指先が到達できる位置にあり、押しボタン7は長指の指先が到達できる位置にある。
このグリップ本体5を把持する適正位置は、操作する人の手の大きさにもよるが、一般的に、親指の第1関節から先端側の腹がスイッチ6に載置される位置であり、胴部5dに手のひらを宛がって、親指と長指とを丸めて回す状態となり、手のひらの上部及び人さし指の付け根は頭部5cにかかる状態になり、母指球の下側が傾斜面Nに当接し、手首が拡大筒部5eとオーバラップする位置である。
【0022】
グリップ本体5は適正位置で把持するときに最も握り易く、手の各部位がしっくりと馴染むようなフィット感を受ける人間工学に基づいた形状であるが、手操作用具2でドーザ装置26のブレード26Aの昇降のみを頻繁に行うときは、レバー比を大きくして操作力を軽減するために、グリップ本体5の頭部5cに手を被せたり、又は頭部5cを把持して操作することがある。
【0023】
グリップ本体5には、胴部5dから頭部5cにかけて、母指球と当接する正面(操作する人から見える面)側の母指球面Bと、手のひらの中部及び小指球と当接する右側面側の手掌面Cと、長指と当接する背面(操作する人から見えない面、走行方向で前面)側の長指面Dと、手で把持したときに長指の先端と母指球との間に位置して親指が配置可能な左側面側の開放面Eとを有する。
【0024】
図1、2、6において、グリップ本体5の母指球面Bは、下部が母指球と当接し、上部はスイッチ6を操作する際の親指と当接する。頭部5cの内、母指球面Bの上部に対応す
る部分だけは球形でなく切り欠かれていて、母指球面Bは下部から上部へ水平断面で円弧凸状から円弧凹状に変化している。これは、図6において、中心線Sと直交する2点鎖線との比較で示している。
【0025】
母指球面Bの上部は円弧凹状になっていることにより、親指の腹を沿わせる浅溝状の親指案内部Baが形成されている。この親指案内部Baは、浅溝の底がシーソ式スイッチ6の操作体6aの枢支部表面と略面一になるように連続している。
母指球面Bの上部が円弧凹状の浅溝であることにより、親指の第1関節及び第2関節がより広範囲で接触でき、しかも親指の腹が長手方向に凹凸を感じることなくスイッチ6の操作体6aまで至ることができる。
【0026】
グリップ本体5の頂部Aに形成した平坦面Aaはスイッチ6を取り囲んでいて、操作体6aの確実な操作を可能にしており、スイッチケース6bの表面(上面)が手前よりも前方が平坦面Aaから大きく突出する前上向き傾斜配置であることにより、親指案内部Baに配置された親指が操作体6aの表面まで円滑に延伸させることができる。
前記グリップ本体5の頂部Aは前記平坦面Aaの周囲を略球面Abに形成されており、この略球面Abの延長内に前記スイッチ6のスイッチケース6bの表面が配置されている。
【0027】
前記母指球面Bの上部には、親指案内部Baと開放面Eとの間及び親指案内部Baと手掌面Cとの間に、前記スイッチ6への手の侵入(スイッチ操作範囲への越境)に抵抗を与える隆起部を形成している。
この隆起部は、親指案内部Baと開放面Eとの間の第1隆起部Bbと、親指案内部Baと手掌面Cとの間の第2隆起部Bcとを有する。
【0028】
前記第1隆起部Bbは、母指球面Bで下側から上側へ次第に高く隆起し、スイッチ6の下側近傍で最も高くなっており、中心線Sと略平行な第1稜線L1を有する。この第1隆起部Bbは、親指を開放面Eに配置している状態から親指案内部Baへ移行するときに抵抗を与えて、意識的に行うときの乗り越え移行感覚を認識させ、無意識に行うときの侵入感覚を認識させて侵入防止を図ることができるようにしている。
【0029】
前記第2隆起部Bcは、母指球面Bで下側から上側へ次第に高く隆起し、スイッチ6の下側近傍で最も高くなっており、中心線Sを境にして略対称状の第2稜線L2を有する。この第2隆起部Bcは、特に、手でグリップ本体5の頂部Aを覆うような握り方をした場合に、母指球の上部又は母指球と人さし指との間がスイッチ6に覆い被さることがあり、それらの部位がスイッチ6に被さっていることを認識させるとともに、スイッチ6を押動するのに抵抗感を与えて注意を喚起させるようにしている。
【0030】
開放面E側の第1稜線L1と手掌面C側の第2稜線L2とは、下部から上部にいくに従って左右外側へ移行して間隔が広がるように形成して、親指を左右に移動して、操作体6aの左右位置での押動を十分確実に行なわせるようにしてもよい。
図1、2、7、8において、前記グリップ本体5の胴部5dの下部の母指球面Bと手掌面Cとの間には掌屈押圧部Gが形成されている。この掌屈押圧部Gは、母指球面Bの下部を平坦にし、母指球面Bと手掌面Cとの間のコーナ部を小半径のアールに形成することにより、グリップ本体5の軸中心からコーナ部までの距離を、母指球面B及び手掌面Cまでの距離よりも離れさせて突出形状にした部位であり(これは、図7において、支持軸体40の軸心を中心する2点鎖線円との比較で示している。)、手首を掌屈(手を手のひら側に捻る)するときに母指球(特に母指球の右外側)が当接してこれを押圧し、それによりグリップ本体5に掌屈の回動力を伝達することができる。
【0031】
前記掌屈押圧部Gは、親指案内部Baと手掌面Cとの間の第2隆起部Bcと上下方向略直線的にかつ一体的に繋がっており、従って、第2隆起部Bcの下部も母指球が当接する掌屈押圧部を構成していることになる。特に、グリップ本体5の上部を把持したときは、第2隆起部Bcが掌屈押圧部となって、手からグリップ本体5への掌屈による回動力を伝達できる。
【0032】
図2〜5、7、8において、前記グリップ本体5の長指面Dは、上部が下部よりも前側に膨出されており、上部に人さし指又は中指で操作される押しボタン7が備えられている
。この上部の押しボタン周囲には盛り上がった防塁部Daが形成されており、この防塁部Daの高さは押しボタン7の押し面7aより高く又は略同高さになっている。
前記長指面Dには、中心線Sに沿って上下方向に長い背屈引掛部Hが形成されている。この背屈引掛部Hは防塁部Daの下部と一体的に繋がっており、幅は上部から下部へ次第に狭くなっている。
【0033】
この背屈引掛部Hは、図7に記載した目安の2点鎖線円から明らかなように、長指面Dと開放面Eとの間に上下方向に長い凹み39を形成することにより、相対的に長指面D側に上下方向に長い隆起部が形成され、前記凹み39に長指の指先を宛がうと、隆起部である背屈引掛部Hが長指と引っ掛るようになっており、主に中指、薬指等の長指を引っ掛けて、手首を背屈(手を手の甲側に反らせる)すると、グリップ本体5に背屈の回動力を伝達することができる。
【0034】
前記グリップ本体5は、下部に左右回動センサ9を内蔵しかつ雨水から保護する拡大筒部5eを有する。この拡大筒部5eの外周面と、胴部5dの母指球面B、手掌面C、 長指面D及び開放面Eの下部とを傾斜面Nで接続している。
この傾斜面Nは拡大筒部5eの周方向において、手掌面Cの中途部から長指面Dを経て開放面Eの中途部までは比較的角度の急な傾斜面であり、手掌面Cの中途部から母指球面Bを経て開放面Eの中途部までは比較的角度の緩やかな傾斜面であり、特に、母指球面Bの下側の母指傾斜面Nbは長指面Dの下側の前傾斜面Nd及び開放面Eの下側の傾斜面Neより滑らかでかつ緩やかな小傾斜角度に形成されている。
【0035】
また、母指傾斜面Nbが緩やかな小傾斜角度であることにより、母指傾斜面Nbが拡大筒部5eの上下方向中途部まで侵入していて、前記長指面Dの下側の前傾斜面Ndから手掌面Cの下側の手掌傾斜面Ncを経て母指球面Bの下側の母指傾斜面Nbまで次第に上下幅が広く形成されている。
前記グリップ1は次のように操作されかつ作用を奏する。
【0036】
グリップ1は操作レバーである手操作用具2の把持操作部3を構成していて、例えば、右手で把持して、操作レバーとともに前後揺動操作し、手首を掌屈(手を手のひら側に捻る)又は背屈(手を手の甲側に反らせる)することにより操作レバーに対して回動操作し、また、スイッチ6を備えている場合には右親指で操作し、押しボタン7を備えている場合には右長指で操作する。
【0037】
グリップ本体5は、母指球面Bと手掌面Cと長指面Dと開放面Eとを有し、かつ、下部に回動センサ9を内蔵保護する大径の拡大筒部5eを有し、頭球胴楕円下拡大形状であり、スイッチ操作をする場合は、通常、胴楕円形状部分を親指、手のひら及び長指を丸くしながら握り、母指球の手首近くが拡大筒部5eに当接する状態になる。
この握り状態は、母指球面Bに母指球を当接し、手掌面Cに手のひらの中部及び小指球を当接し、長指面Dに長指を当接し、開放面Eに親指、母指球及び長指の先端を回す状態となり、母指球及び長指の薬指、小指で実質的にグリップ本体5の把持をし、親指及び人差し指もしくは中指は、グリップ本体5の把持から離れてスイッチ6及び押しボタン7の操作ができるように、自由移動が可能な状態になる。
【0038】
グリップ本体5は、手操作用具2に対して回動自在に嵌合していて、手首の掌屈及び背屈で回動操作が可能であり、このグリップ本体5の手操作用具2との間の回動を拡大筒部5eに内蔵した回動センサ9で検出する。
前記右手の母指球、長指の薬指及び小指でグリップ本体5を把持した状態では、操作レバーを前後揺動操作するとき、母指球の手首近くが拡大筒部5eに接離するが、この拡大筒部5eの外周面と母指球面Bの下部との間には傾斜面Nが形成されており、この母指球面Bの下側の母指傾斜面Nbは長指面Dの下側の前傾斜面Ndより緩やかな小傾斜角度に形成されていて、母指球の手首近くが当接しても違和感なく、従って操作レバーを前後揺動操作が抵抗を感じることなくかつ容易にできる。
【0039】
また、グリップ本体5の母指球面Bと手掌面Cとの間の掌屈押圧部Gが、母指球の右外側部分と当接しており、右手首を掌屈すると、母指球で掌屈押圧部Gを押圧してグリップ本体5に掌屈の回動力を伝達し、グリップ本体5の長指面Dの背屈引掛部Hが長指と引っ
掛かっており、右手首を背屈すると、長指で背屈引掛部Hを介してグリップ本体5に背屈の回動力を伝達する。
【0040】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1〜13に示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、グリップ1はバックホーのドーザの操作レバーだけでなく、トラクタその他の建設機械、土木機械の操作レバーに適用してもよく、左右反対勝手の形状にして左手用に形成してもよい。
【0041】
また、グリップ1はスイッチ6及び/又は押しボタン7を備えないもの、スイッチ6を押しボタンのものにすることも可能である。
レバー杆2a回りに回動するグリップ1に、ドーザ装置26のブレード26Aをチルト動作させたり、バックホー21の走行速度を高低に切り替える変速動作をさせたりすることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 グリップ
2 手操作用具
2a レバー杆
3 把持操作部
5 グリップ本体
5c 頭部
5d 胴部
5e 拡大筒部
6 スイッチ
7 押しボタン
7a 押し面
9 回動センサ
21 バックホー
26 ドーザ装置
40 支持軸体
B 母指球面
Ba 親指案内部
Bc 第2隆起部
C 手掌面
D 長指面
Da 防塁部
E 開放面
G 掌屈押圧部
H 背屈引掛部
N 傾斜面
Nb 母指傾斜面
Nc 手掌傾斜面
Nd 前傾斜面
S 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図13