特許第6178156号(P6178156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178156
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】キー使用可否切替システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
   E05B49/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-161701(P2013-161701)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-31072(P2015-31072A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浅井 智朗
(72)【発明者】
【氏名】西本 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】池山 将弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙祐
(72)【発明者】
【氏名】小縣 修次
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−068419(JP,A)
【文献】 特開2011−247076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末は、キー端末の使用可否を切り替える動作を当該通信端末において実行する第1切替作動部を備え、
前記キー端末は、前記切り替えの動作を当該キー端末において実行する第2切替作動部を備え、
前記第1切替作動部は、前記キー端末の使用可否の切り替えを指示する切替信号を前記キー端末に送信し、前記第2切替作動部は、受信した前記切替信号を基に前記キー端末の使用を許可又は禁止のいずれかに設定し、
前記キー端末は、当該キー端末の動作を主になって制御する主制御部と、前記キー端末における通信動作を制御する通信制御部とを備え、
前記第2切替作動部は、前記主制御部のメモリに書き込まれている使用可否情報、及び前記通信制御部のメモリに書き込まれている使用可否情報を、ともに禁止に書き替えることにより、前記キー端末において実行可能となっているキー照合の全てを禁止にすることを特徴とするキー使用可否切替システム。
【請求項2】
前記キー端末のメモリは、当該キー端末の使用可否を決定する使用可否情報が書き込まれ、
前記第2切替作動部は、前記使用可否情報を許可又は禁止に書き替えることにより、前記キー端末の使用可否を設定することを特徴とする請求項1に記載のキー使用可否切替システム。
【請求項3】
前記第1切替作動部は、前記切替信号を近距離無線により前記キー端末に送信し、
前記第2切替作動部は、前記切替信号を前記キー端末の近距離無線部で受信し、当該切替信号を基に前記キー端末の使用可否を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のキー使用可否切替システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キー端末の使用の許可/禁止を切り替えるキー使用可否切替システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話からキー情報を近距離無線によって電子キーに送信することで、電子キーにキー情報を登録可能とする技術が開示されている(特許文献1等参照)。特許文献1は、例えばユーザAが所持する特定車両をユーザBも使用できるようにするにあたり、ユーザAの携帯電話から、特定車両のキー情報をメール等によってユーザBの携帯電話に送信する。そして、ユーザBの携帯電話で取得したキー情報を、その携帯電話からユーザBの電子キーに送信することにより、特定車両のキー情報をユーザBの電子キーに登録して、ユーザBの電子キーでも特定車両を操作可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−41709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1は、携帯電話からキー情報を電子キーに付与して、車両の使用を許可することしか開示されていない。つまり、電子キーに付与したキー情報の消去については記載がなく、これではキー情報の管理が不徹底であり、車両盗難に対するセキュリティ性の点で問題があった。
【0005】
本発明の目的は、通信端末でキー端末の使用を許可するにあたり、セキュリティ性を確保することができるキー使用可否切替システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するキー使用可否切替システムは、通信端末は、キー端末の使用可否を切り替える動作を当該通信端末において実行する第1切替作動部を備え、前記キー端末は、前記切り替えの動作を当該キー端末において実行する第2切替作動部を備え、前記第1切替作動部は、前記キー端末の使用可否の切り替えを指示する切替信号を前記キー端末に送信し、前記第2切替作動部は、受信した前記切替信号を基に前記キー端末の使用を許可又は禁止のいずれかに設定し、前記キー端末は、当該キー端末の動作を主になって制御する主制御部と、前記キー端末における通信動作を制御する通信制御部とを備え、前記第2切替作動部は、前記主制御部のメモリに書き込まれている使用可否情報、及び前記通信制御部のメモリに書き込まれている使用可否情報を、ともに禁止に書き替えることにより、前記キー端末において実行可能となっているキー照合の全てを禁止にすることが好ましい。
【0007】
本構成によれば、キー端末の使用可否を、通信端末によって自由に切り替えることが可能である。つまり、キー端末の動作状態を、通信端末を通じて、使用許可のみならず使用禁止にも切り替え可能である。よって、通信端末でキー端末の使用を許可するにあたり、セキュリティ性を確保することが可能となる。
また、主制御部及び通信制御部の両方を使用不可に設定するので、キー端末を動作停止にしておくことが可能となる。これにより、キー端末においてキー照合の全てを禁止にすることが可能となる。
さらに、キー端末を使用禁止に切り替えるにあたり、キー端末においてキー照合の全てを実行不可とするので、不正使用に対する高いセキュリティ性が確保される。
【0008】
前記キー使用可否切替システムにおいて、前記キー端末のメモリは、当該キー端末の使用可否を決定する使用可否情報が書き込まれ、前記第2切替作動部は、前記使用可否情報を許可又は禁止に書き替えることにより、前記キー端末の使用可否を設定することが好ましい。この構成によれば、キー端末のメモリ情報を書き替える処理によって、簡単にキー端末の使用可否を設定することが可能となる。
【0009】
前記キー使用可否切替システムにおいて、前記第1切替作動部は、前記切替信号を近距離無線により前記キー端末に送信し、前記第2切替作動部は、前記切替信号を前記キー端末の近距離無線部で受信し、当該切替信号を基に前記キー端末の使用可否を設定することが好ましい。この構成によれば、通信端末でキー端末の使用可否を切り替えるにあたり、通信端末をキー端末にかざさないと通信が確立しないので、キー端末の使用可否の切り替え間違いを生じ難くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信端末でキー端末の使用を許可するにあたり、セキュリティ性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の電子キーシステムの概略図。
図2】キー使用可否切替システムの構成図。
図3】通信端末によりキー端末の使用を許可に切り替えるときの動作図。
図4】使用許可となったキー端末によるスマート通信の動作概要図。
図5】使用許可となったキー端末によるワイヤレス通信の動作概要図。
図6】使用許可となったキー端末によるイモビライザー通信の動作概要図。
図7】通信端末によりキー端末の使用を禁止に切り替えるときの動作図。
図8】使用禁止となったキー端末によるスマート通信の動作概要図。
図9】使用禁止となったキー端末によるワイヤレス通信の動作概要図。
図10】使用禁止となったキー端末によるイモビライザー通信の動作概要図。
図11】別例のキー端末の構成図。
図12】他の別例のキー端末の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、キー使用可否切替システムの一実施形態を図1図10に従って説明する。
図1に示すように、通信マスタ(以下、車両1と記す)は、電子キー2と無線によりID照合を行う電子キーシステム3を備える。電子キーシステム3は、車両1からの通信を契機に狭域無線によりID照合を行うキー操作フリーシステムと、電子キー2からの通信を契機に狭域無線によりID照合を行うワイヤレスキーシステムと、車両1からの通信を契機に近距離無線によりID照合を行うイモビライザーシステムとがある。狭域無線は、例えば通信距離が数mの通信をいい、通信に電子キー2の電源を必要とする。近距離無線は、例えばRFID(Radio Frequency IDentification)の通信が好ましく、通信に電子キー2の電源を不要とする。
【0016】
図2に示すように、電子キー2は、メインキー位置付けの通信端末4と、サブキー位置付けのキー端末5とがある。通信端末4は、例えば携帯電話(高機能携帯電話)が好ましい。これは、今後、高機能携帯電話が車両1のメインキーとして使用されることを想定している。メインキーは、例えば制限なく車両1を操作することができるキーである。キー端末5は、一般的な車両専用キーであり、例えばサブキーである。これは、高機能携帯電話がメインキーとして使用されるようになると、これまで使用してきた一般的な電子キーがサブキーとして使用されることを想定している。サブキーは、例えば車両1の使用に制限がかかったキーである。
【0017】
通信端末4は、通信端末4の動作を制御する端末制御部6と、各種画面を表示可能でタッチ操作が可能なタッチパネル7と、例えば広域無線が可能な第1通信部8と、近距離無線が可能な第2通信部9とを備える。広域無線は、例えば電話回線やインターネット通信などがある。近距離無線は、例えばRFIDの一種であるNFC(Near Field Communication)や、ブルートゥース(R)の通信を使用するのが好ましい。
【0018】
端末制御部6のメモリ(図示略)には、操作対象を車両1とする電子キーIDが書き込み保存されている。この電子キーIDは、例えばインターネット通信等を通じてサーバ等からダウンロードすることにより、通信端末4に登録される。
【0019】
キー端末5は、キー端末5の動作を制御するキー制御部10と、ある周波数の電波を送受信可能な第1アンテナ11と、第1アンテナ11とは異なる周波数の電波を送信可能な第2アンテナ12とを備える。キー制御部10は、キー制御部10の動作を制御する主制御部13と、第1アンテナ11に接続された第1通信制御部14と、第2アンテナ12に接続された第2通信制御部15とを備えることが好ましい。主制御部13は、例えばマイクロコンピュータであることが好ましい。第1通信制御部14及び第2通信制御部15は、例えば通信ICであることが好ましい。第1アンテナ11は、例えばLF(Low Frequency)帯の電波を送受信可能であることが好ましい。第2アンテナ12は、例えばUHF(Ultra High Frequency)帯の電波を送信可能であることが好ましい。
【0020】
主制御部13のメモリ16には、例えばキー操作フリーシステムやワイヤレスキーシステムのID照合で使用する電子キーIDが書き込み保存されている。第1通信制御部14のメモリ17には、イモビライザーシステムのID照合で使用するトランスポンダIDが登録されている。なお、主制御部13及び第1通信制御部14は、図示のように別体に限らず、一体としてもよい。
【0021】
キー端末5は、通信端末4の第2通信部9と近距離無線が可能な近距離無線部18を備える。近距離無線部18は、第1アンテナ11及び第2アンテナ12とは異なる周波数の電波を送受信可能な第3アンテナ19と、第3アンテナ19に接続された第3通信制御部20とを備える。第3通信制御部20は、キー制御部10の主制御部13に電気接続されている。第3通信制御部20は、例えば近距離無線ICが好ましい。
【0022】
電子キーシステム3は、通信端末4からキー端末5の使用可否を切り替え可能とするキー使用可否切替機能(キー使用可否切替システム21)を備える。キー使用可否切替システム21は、通信端末4とキー端末5との無線通信により、キー端末5の使用許可/禁止を切り替える。これは、本例の場合、高機能携帯電話等の通信端末4をメインキーとして使用することを想定しており、サブキー位置付けのキー端末5の使用を、必要なときにのみ有効に切り替えて、キー端末5による車両操作を一時的に許可するためである。
【0023】
通信端末4は、通信端末4においてキー使用可否切替動作を実行する第1切替作動部22を備える。第1切替作動部22は、例えば端末制御部6に設けられるのが好ましい。第1切替作動部22は、例えばサーバ等からキー使用可否切替用のアプリケーションを通信端末4にダウンロードすることにより、機能が実現される。
【0024】
キー端末5は、キー端末5においてキー使用可否切替動作を実行する第2切替作動部23を備える。第2切替作動部23は、例えば主制御部13に設けられるのが好ましい。第1切替作動部22及び第2切替作動部23が協同して作動することにより、キー端末5の使用可否が切り替えられる。
【0025】
キー端末5は、キー端末5の使用可否を決定する使用可否情報24がメモリに書き込み保存されている。使用可否情報24は、例えばフラグのような、いまキー使用が許可/禁止のいずれにあるのかを設定することができる情報である。主制御部13及び第1通信制御部14が別体の場合、主制御部13のメモリ16に使用可否情報24aが書き込まれ、第1通信制御部14のメモリ17に使用可否情報24bが書き込まれる。
【0026】
第1切替作動部22は、使用可否情報24の設定を切り替えるための切替信号Sを、近距離無線によってキー端末5に送信するよう作動する。切替信号Sは、例えば使用許可/禁止のコマンドと、通信端末4に登録された電子キーIDとを含む信号である。第2切替作動部23は、受信した切替信号Sにおいて電子キーIDの正当性を確認できれば、切替信号S内のコマンドに基づき使用可否情報24a,24bを書き替えて、キー端末5の使用可否を設定する。
【0027】
次に、図3図10を用いて、キー使用可否切替システム21の動作を説明する。
[キー端末を使用許可に切り替える動作]
図3に示すように、キー端末5を有効に切り替えるにあたり、まず、通信端末4に操作画面を立ち上げ、この操作画面にキー使用許可切替要求を入力する。第1切替作動部22は、操作画面においてキー使用許可切替要求が入力されると、キー使用許可への切り替え指示として切替信号Saを、通信端末4から近距離無線により送信させる。この切替信号Saは、例えばキー使用許可切替要求コマンドと、通信端末4に登録された電子キーIDとを含む信号である。キー端末5は、通信端末4から送信された切替信号Saを第3アンテナ19で受信する。受信された切替信号Saは、第3通信制御部20を経由して主制御部13に出力される。
【0028】
第2切替作動部23は、通信端末4から切替信号Saを取得すると、まず切替信号Sa内の電子キーIDの正当性を確認する。つまり、主制御部13は、切替信号Sa内の電子キーIDと、キー端末5に登録されている電子キーIDとが一致するか否かを確認する。主制御部13は、電子キーID照合が成立することを確認すると、切替信号Saのキー使用許可切替要求コマンドを基に、メモリ16,17の使用可否情報24a,24bを「使用許可」に書き替える。これにより、キー端末5の使用が許可されるので、通信や照合の動作が実行可能となる。
【0029】
続いて、図4に、使用が許可されたキー端末5によるキー操作フリーシステムの具体的動作を図示する。車両1がリクエスト信号Srqを車外に送信するとき、キー端末5がリクエスト信号Srqの通信エリアに進入してリクエスト信号Srqを第1アンテナ11で受信すると、車体においてスマート通信を開始し、ID信号Sidを第2アンテナ12から車両1に送信する。具体的には、車両1から定期送信されたウェイク信号をキー端末5が受信すると、キー端末5が起動してアックを返信し、続く通信課程において、車両コード照合、チャレンジレスポンス認証、電子キーID照合等の各種照合を実行する。車両コード照合は、車両1の固有IDである車両コードをキー端末5に送信し、キー端末5に車両コードを認証させる照合である。チャレンジレスポンス認証は、送信の度にコードが毎回変わるチャレンジコードを車両1からキー端末5に送信し、キー端末5においてチャレンジコードをキー端末5の暗号鍵に通してレスポンスコードを演算させて、これを車両1に返信させ、車両1において同様に演算したレスポンスコードにより、キー端末5のレスポンスコードの正当性を確認する照合である。電子キーID照合は、キー端末5に登録された電子キーIDの正当性を確認する照合である。
【0030】
主制御部13は、スマート通信時、メモリ16に書き込まれた使用可否情報24aの判定結果を基に、ID信号Sidの送信を実行するか否かを決定する。ここでは、使用可否情報24aが「使用許可」となっているので、スマート通信時、キー端末5によるID信号Sidの送信が許可される。具体的には、レスポンスコードの演算後、使用可否情報24aが判定され、これが「使用許可」となっていれば、レスポンスコードの送信が実行される。なお、使用可否判定には、第1通信制御部14のメモリ17に書き込まれた使用可否情報24bを判定材料に加えてもよい。車両1は、前述した各種照合が成立することを確認すると、車外のスマート照合が成立したと判断し、例えば車両ドアの施解錠を許可/実行する。
【0031】
キー端末5が車内に進入すると、今度は車内においてスマート通信が開始される。車両1は、車内のキー端末5との間で、車外と同様のスマート照合を行い、この照合が成立すれば、例えば車両電源の遷移操作(エンジン始動操作)を許可する。
【0032】
続いて、図5に、使用が許可されたキー端末5によるワイヤレスキーシステムの具体的動作を図示する。キー端末5で操作部25が操作されると、キー端末5は、動作要求信号Swlを送信する動作に入る。このワイヤレス通信時、主制御部13は、メモリ16に書き込まれた使用可否情報24aの判定結果を基に、動作要求信号Swlの送信を実行するか否かを決定する。ここでは、使用可否情報24aが「使用許可」となっているので、キー端末5による動作要求信号Swlの送信が許可される。なお、使用可否判定には、第1通信制御部14のメモリ17に書き込まれた使用可否情報24bを判定材料に加えてもよい。
【0033】
主制御部13は、このように状態が「使用許可」となっているとき、操作部25の操作を契機に、動作要求信号Swlを第2アンテナ12から車両1に送信する。ちなみに、操作部25は、例えば車両ドアの施錠ボタンや解錠ボタン等がある。動作要求信号Swlは、操作された操作部25に応じたコマンドと、キー端末5に登録された電子キーIDとを含む信号である。車両1は、キー端末5から動作要求信号Swlを受信すると、動作要求信号Swl内の電子キーIDの正当性を確認する。車両1は、電子キーID照合が成立することを確認すると、動作要求信号Swl内のコマンドに準じた動作(例えば、車両ドアの施解錠)を実行する。
【0034】
続いて、図6に、使用が許可されたキー端末5によるイモビライザーシステムの具体的動作を図示する。イモビライザーシステムの通信を確立するには、例えば車内に設けられたイモビライザーアンテナ26にキー端末5をかざす操作をとる。イモビライザーアンテナ26は、キー端末5の電源になり得る駆動電波Svを、定期又は不定期に間欠送信する。駆動電波Svは、例えばLF電波であることが好ましい。
【0035】
第1通信制御部14は、イモビライザーアンテナ26から微少エリアに送信される駆動電波Svを第1アンテナ11で受信すると、駆動電波Svを電源に作動して、ID信号Strを第1アンテナ11から車両1に返信する動作に入る。このイモビライザー通信時、第1通信制御部14は、メモリ17に書き込まれた使用可否情報24bの判定結果を基に、ID信号Strの送信を実行するか否かを決定する。ここでは、使用可否情報24bが「使用許可」となっているので、第1通信制御部14によるID信号Strの送信が許可される。なお、使用可否判定には、主制御部13のメモリ16に書き込まれた使用可否情報24aを判定材料に加えてもよい。
【0036】
第1通信制御部14は、このように状態が「使用許可」となっているとき、駆動電波Svの受信を契機に、ID信号Strを第1アンテナ11から負荷変調によりイモビライザーアンテナ26に返信する。ID信号Strは、例えばトランスポンダIDを含む信号である。車両1は、イモビライザーアンテナ26でID信号Strを受信すると、ID信号Str内のトランスポンダIDの正当性を確認する。車両1は、トランスポンダID照合が成立することを確認すると、例えば車両電源の遷移操作(エンジン始動操作)を許可する。
【0037】
[キー端末を使用禁止に切り替える動作]
図7に示すように、キー端末5を無効に切り替えるにあたり、まず通信端末4に操作画面を立ち上げ、この操作画面にキー使用禁止切替要求を入力する。第1切替作動部22は、操作画面においてキー使用禁止切替要求が入力されると、キー使用禁止への切り替えの指示として切替信号Sbを、通信端末4から近距離無線により送信させる。この切替信号Sbは、例えばキー使用禁止切替要求コマンドと、通信端末4に登録された電子キーIDとを含む信号である。この切替信号Sbは、通信端末4において第3アンテナ19で受信され、第3通信制御部20を経由して主制御部13に出力される。
【0038】
第2切替作動部23は、通信端末4から切替信号Sbを取得すると、有効に切り替えるときと同様に、切替信号Sb内の電子キーIDの正当性を確認する。主制御部13は、電子キーID照合が成立することを確認すると、切替信号Sb内のキー使用禁止切替要求コマンドを基に、メモリ16,17の使用可否情報24a,24bを「使用禁止」に書き替える。これにより、キー端末5の使用が禁止されるので、通信や照合の動作が実行不可となる。
【0039】
図8に示すように、主制御部13は、キー操作フリーシステムの通信において、車両1からリクエスト信号Srqを受信しても、「使用禁止」が書き込まれた使用可否情報24aの判定結果から、ID信号Sidを送信する動作はとらない。つまり、主制御部13は、状態が「使用禁止」となっているとき、スマート通信を実行しない。よって、使用が禁止されたキー端末5では、スマート通信による車両ドアの施解錠操作や車両電源の遷移操作を不正に実施させずに済む。
【0040】
図9に示すように、主制御部13は、ワイヤレスキーシステムの通信において、操作部25が操作されても、「使用禁止」が書き込まれた使用可否情報24aの判定結果から、動作要求信号Swlを送信する動作はとらない。つまり、主制御部13は、状態が「使用禁止」となっているとき、ワイヤレス通信を実行しない。よって、使用が禁止されたキー端末5では、ワイヤレス通信による車両ドアの施解錠等を不正に実施させずに済む。
【0041】
図10に示すように、第1通信制御部14は、イモビライザーシステムの通信において、イモビライザーアンテナ26から駆動電波Svを受信しても、「使用禁止」が書き込まれた使用可否情報24bの判定結果から、ID信号Strを送信する動作はとらない。つまり、キー端末5は、状態が「使用禁止」となっているとき、イモビライザー通信を実行しない。よって、使用が禁止されたキー端末5では、イモビライザー通信による車両電源の遷移操作等を不正に実施させずに済む。
【0042】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)キー端末5は、使用可否情報24a,24bをメモリ16,17に持つ。キー端末の使用可否を切り替えるにあたっては、通信端末4をキー端末5にかざし、近距離無線によって切替信号Sを通信端末4からキー端末5に送信する。キー端末5は、通信端末4から切替信号Sを受信すると、通信端末4に登録された電子キーIDを確認し、IDが正当であれば、切替信号Sに基づき、キー端末5の使用可否を切り替える。このように、本例の場合、キー端末5の動作状態を、通信端末4を通じ、使用許可のみならず使用禁止にも切り替えることが可能である。よって、通信端末4でキー端末5の使用を許可するにあたり、セキュリティ性を確保することができる。
【0043】
(2)電子キーシステム3にキー使用可否切替機能(キー使用可否切替システム21)を設けるにあたり、車両1側にシステム変更が必要ないので、製造コストを低く抑えることができる。
【0044】
(3)今後、高機能携帯電話等の通信端末4がメインキーとして使用されることを想定すると、車両1を第三者へ貸し出すとき、どのキーを貸し出せばよいのかが問題になってくる。そこで、キー端末5をサブキー位置付けのキーとし、車両1を第三者に貸し出すときには、通信端末4でキー端末5を有効に切り替えれば、このキー端末5で第三者は車両1を操作することができる。
【0045】
(4)例えば、キー端末5をバレーキーとして車内のグローブボックス内に常時収納しておく使用態様をとっても、キー端末5を使用禁止にしておけば、仮にキー端末5が盗難に遭っても、盗難されたキー端末5で車両1を操作されることはない。よって、車両盗難に対するセキュリティ性も確保することができる。
【0046】
(5)キー端末5を使用禁止にするにあたり、第1通信制御部14のメモリ17の使用可否情報24bを使用禁止に書き替えることにより、キー端末5においてイモビライザーシステムを使用不可に設定することができる。よって、スマート通信のみならず、イモビライザー通信も禁止に設定可能となるので、セキュリティ性が向上する。
【0047】
(6)キー端末5の使用可否の切り替えは、メモリ16,17の使用可否情報24a,24bを書き替えることで実現される。よって、キー端末5のメモリ情報を書き替える処理によって、簡単にキー端末5の使用可否を設定することができる。
【0048】
(7)通信端末4とキー端末5との間の通信は、近距離無線通信である。よって、通信端末4でキー端末5の使用可否を切り替えるにあたり、通信端末4をキー端末5にかざさないと通信が確立しないので、キー端末5の使用可否の切り替え間違いを生じ難くすることができる。
【0049】
(8)キー端末5を使用禁止に切り替えるにあたり、キー端末5においてキー照合の全て(スマート照合、ワイヤレス照合、イモビライザー照合)を実行不可とするので、不正使用に対するセキュリティ性を確保することができる。
【0050】
(9)主制御部13のメモリ16の使用可否情報24aと、第1通信制御部14のメモリ17の使用可否情報24bとの両方を、使用不可に書き替えることにより、キー端末5を動作停止にする。これにより、キー端末5においてキー照合の全てを禁止にすることができる。
【0051】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・キー端末5は、例えばイモビライザー通信の機能を省略することにより、スマート通信及びワイヤレス通信のみ実行可能なキーとしてもよい。また、キー端末5は、ワイヤレス通信及びイモビライザー通信のみ実行可能なキーとしてもよい。さらに、キー端末5は、スマート通信及びイモビライザー通信のみ実行可能なキーとしてもよい。
【0052】
図11に示すように、キー端末5は、ワイヤレス通信のみ実行可能なキーとしてもよい。
図12に示すように、キー端末5は、メカニカルキー31にトランスポンダ32を設けることにより、イモビライザー通信のみ実行可能なキーとしてもよい。
【0053】
・キー端末5は、スマート通信のみ実行可能なキーとしてもよい。
・キー端末5は、通信端末4から切替信号Sを受信する度、使用許可及び使用禁止が交互に切り替わる構成としてもよい。
【0054】
・キー端末5が使用禁止になったとき、スリープ状態(電源オフ状態)に入り、全く動作しないこととしてもよい。これは、電源の省電力化に有利である。
・キー端末5は、例えばバレーキーでもよい。
【0055】
・通信端末4及びキー端末5の通信は、近距離無線通信に限らず、他の通信方式に変更可能である。
・使用可否情報24bが「使用禁止」のとき、第1通信制御部14において受信電波を受け付けなくすることで、スマート通信の禁止を実現してもよい。
【0056】
・車両1には、キー操作フリーシステム、ワイヤレスキーシステム及びイモビライザーシステムが搭載されているが、これらシステムのうち、少なくとも1システムの使用可否を切り替えることができればよい。
【0057】
・通信端末4は、高機能携帯電話に限らず、一般的な携帯電話やタブレット端末等に変更可能である。また、キー端末5は、車両1のキーとなり得るものであれば、どのような端末を使用してもよい。
【0058】
・使用禁止は、例えばキー機能の一部のみが使用不可となっていることも含む。
・使用禁止は、例えば主制御部13や第1通信制御部14をスリープや電源オフとすることにより実現してもよい。
【0059】
・キー使用可否切替システム21は、車両1に適用されることに限らず、他の機器や装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…通マスタの一例である車両、2…電子キー、4…通信端末、5…キー端末、13…主制御部、14…第1通信制御部(通信制御部)、16,17…メモリ、18…近距離無線部、22…第1切替作動部、23…第2切替作動部、24(24a,24b)…使用可否情報、S(Sa,Sb)…切替信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12