(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178157
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】硬質表面の処理方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20170731BHJP
C09D 133/02 20060101ALI20170731BHJP
C09D 179/02 20060101ALI20170731BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
C09K3/00 112Z
C09D133/02
C09D179/02
C09D5/16
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-166469(P2013-166469)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34253(P2015-34253A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】石塚 千華
【審査官】
吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−535961(JP,A)
【文献】
特開2001−009362(JP,A)
【文献】
特表2007−506826(JP,A)
【文献】
特開昭52−038545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンイミンをモノマー単位として含む重量平均分子量100,000以上、1,000,000以下の重合体(A)、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩から選ばれるモノマーに由来するモノマー単位を、全モノマー単位中、75モル%以上含む重量平均分子量2,000以上、4,500以下の重合体(B)、及び水を混合して重合体(A)と重合体(B)の複合体を形成させ、該複合体を含む液体混合物を硬質表面に適用する、硬質表面の処理方法。
【請求項2】
重合体(A)、重合体(B)及び水を含有する混合物を調製し、該混合物のpHを低下させることで、重合体(A)と重合体(B)の複合体を形成させる、請求項1記載の硬質表面の処理方法。
【請求項3】
重合体(A)、重合体(B)及び水を含有し、重合体(A)と重合体(B)の合計含有量が0.3質量%以上、5質量%以下であり、重合体(B)/重合体(A)の質量比が0.65以上、3.0以下である透明な混合物を調製し、該混合物のpHを該混合物が白濁するまで低下させることで、重合体(A)と重合体(B)の複合体を形成させる、請求項1又は2記載の硬質表面の処理方法。
【請求項4】
重合体(A)が、エチレンイミンに由来するモノマー単位を、全モノマー単位中、80モル%以上含む重合体である、請求項1〜3の何れか1項記載の硬質表面の処理方法。
【請求項5】
重合体(A)が、重量平均分子量600,000以上、900,000以下のポリエチレンイミンである、請求項1〜4の何れか1項記載の硬質表面の処理方法。
【請求項6】
硬質表面が浴室における硬質表面である、請求項1〜5の何れか1項記載の硬質表面の処理方法。
【請求項7】
硬質表面が疎水性硬質表面である、請求項1〜6の何れか1項記載の硬質表面の処理方法。
【請求項8】
エチレンイミンをモノマー単位として含む重量平均分子量100,000以上、1,000,000以下の重合体(A)とアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩から選ばれるモノマーに由来するモノマー単位を、全モノマー単位中、75モル%以上含む重量平均分子量2,000以上、4,500以下の重合体(B)とから形成された複合体、並びに水を含有する、硬質表面用液体処理剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面の処理方法及び硬質表面用処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
我々を取り巻く住環境設備には、プラスチック、金属等を材料とした各種硬質表面が存在し、これら硬質表面は生活場面に於いて様々な汚れが付着する環境に晒されている。特に水周り設備に於いては、浴室の皮脂・湯垢汚れ、レンジフード、ガスコンロ、シンク周りにおける油汚れなど、日常的に残留し易い汚れが発生しており、これらの汚れを洗浄除去する家事行動は生活者の大きな負担となっている。
【0003】
中でも、疎水性の汚れは除去し難く、残留し易い汚れであることが一般に知られている。疎水性汚れが付着、残留し易く、除去し難い原因のひとつとして、住環境に用いられているポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ステンレスなど硬質表面の多くが疎水性の性質を帯びていることが挙げられる。つまり、疎水性の硬質表面は、疎水性汚れとの親和性が高いために、汚れが残留、蓄積し易く、更には洗浄除去し難い性質を伴うものとなっている。
【0004】
疎水性硬質表面からの疎水性汚れの除去や、疎水性硬質表面への汚れの残留ないし汚れの再付着の防止においてより高い効果を得るための方法として、改質剤を硬質表面に塗布し疎水性の硬質表面を親水性の性質を帯びるように表面改質する方法が考えられる。
【0005】
特許文献1には、アニオン重合体とカチオン重合体及びノニオン重合体を含有し、優れた親水性と持続性を付与できる親水性表面処理膜を提供する親水性表面処理組成物が開示されている。特許文献2には、プラスチックや金属等の硬質表面を処理する組成物が開示されており、汚れはがしの効果が長い期間持続することが記載されている。特許文献3には、プラスチックや金属等の硬質表面洗浄組成物が開示されている。特許文献4には、2種類の共重合体を2段階で処理する硬質表面処理方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−293148号公報
【特許文献2】特表2007−534791号公報
【特許文献3】特表2011−503295号公報
【特許文献4】特開2006−131804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、疎水性硬質表面の防汚性効果の点からは、生活者が満足するレベルの更なる高い防汚効果が期待されていた。また、防汚効果の持続性に優れることも望まれており、例えば、防汚処理された硬質表面が水と接触した後でも防汚効果が維持できることが望まれる。
【0008】
本発明の課題は、疎水性硬質表面を改質して、優れた防汚性を付与でき、且つ防汚性の持続性にも優れた硬質表面の処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エチレンイミンをモノマー単位として含む重量平均分子量100,000以上、1,000,000以下の重合体(A)、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩から選ばれるモノマーをモノマー単位として含む重量平均分子量2,000以上、4,500以下の重合体(B)、及び水を混合して重合体(A)と重合体(B)の複合体を形成させ、該複合体を含む液体混合物を硬質表面に適用する、硬質表面の処理方法に関する。
【0010】
また、本発明は、エチレンイミンをモノマー単位として含む重量平均分子量100,000以上、1,000,000以下の重合体(A)〔以下、重合体(A)という〕、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩から選ばれるモノマーをモノマー単位として含む重量平均分子量2,000以上、4,500以下の重合体(B)〔以下、重合体(B)という〕とから形成された複合体、並びに水を含有する、硬質表面用液体処理剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、疎水性硬質表面に対して優れた防汚性を付与でき、且つ防汚性の持続性にも優れた硬質表面の処理方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<重合体(A)>
重合体(A)は、エチレンイミンをモノマー単位として含む重量平均分子量100,000以上、1,000,000以下の重合体である。重合体(A)は、エチレンイミンに由来するモノマー単位を、全モノマー単位中、80モル%以上、更に90モル%以上含む重合体が好ましい。重合体(A)としては、エチレンイミンのホモポリマーであるポリエチレンイミンが挙げられる。また、エチレンイミン及びエチレンイミンと共重合可能なモノマーの共重合体が挙げられる。エチレンイミンと共重合可能なモノマーとして、アルキレンアミン、アミドアミン、エーテルアミンが挙げられる。重合体(A)は、ポリエチレンイミンが好ましい。エチレンイミンは、下記式(A1)で表される化合物であり、ポリエチレンイミンはそのホモポリマーである。
【0014】
(A)成分は、(B)成分との複合体に耐水性を持たせるという観点から、重量平均分子量が100,000以上であり、また、(B)成分との複合体を含む液体混合物を硬質表面に適用する際の取り扱い性の観点から、重量平均分子量が1,000,000以下である。(A)成分の重量平均分子量は、500,000以上が好ましく、600,000以上がより好ましく、700,000以上が更に好ましく、そして900,000以下が好ましく、850,000以下がより好ましく、800,000以下が更に好ましい。
【0015】
なお、重合体(A)の重量平均分子量は、光散乱法により測定されたものである。
【0016】
重合体(A)は、重量平均分子量600,000以上、900,000以下のポリエチレンイミンがより好ましい。
【0017】
<重合体(B)>
重合体(B)は、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩から選ばれるモノマーをモノマー単位として含む重量平均分子量2,000以上、4,500以下の重合体である。重合体(B)は、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩から選ばれるモノマーに由来するモノマー単位を、全モノマー単位中、75モル%以上、更に80モル%以上含む重合体が好ましい。
【0018】
重合体(B)としては、アクリル酸のホモポリマーであるポリアクリル酸及びその塩から選ばれる重合体が挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの塩から選ばれるモノマーと、これらのモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられる。前記共重合可能なモノマーとして、マレイン酸が挙げられる。
【0019】
重合体(B)としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びそれらの塩から選ばれる重合体が好ましく、ポリアクリル酸及びその塩から選ばれる重合体がより好ましい。なお、重合体(B)の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。
【0020】
本発明の(B)成分は、重量平均分子量が2,000以上、4,500以下である。重合体(B)の重量平均分子量は、耐水性の観点から、2100以上が好ましく、2200以上がより好ましく、2300以上が更に好ましく、そして、(A)成分との混合性を高める観点から、4000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、2500以下が更に好ましい。
【0021】
なお、重合体(B)の重量平均分子量は、0.2mol/Lリン酸バッファー/アセトニトリル=9/1(容量比)を溶離液とし、カラムはG4000PWXLおよびG2500PWXLを2本連結して、ゲルパーミェーションクロマトグラフィーでポリアクリル酸Naを標準物質として求めた値である。
【0022】
<硬質表面の処理方法>
本発明では、重合体(A)、重合体(B)、及び水を混合して、重合体(A)と重合体(B)の複合体(以下、複合体という場合もある)を形成させ、該複合体を含む液体混合物を硬質表面に適用して硬質表面を処理する。重合体(A)と重合体(B)は、静電相互作用による複合体を形成し、これが系から析出することによって、処理対象の硬質表面に付着し、当該硬質表面の親水性を向上させる。なお、前記液体混合物は、本発明の硬質表面用液体処理剤組成物として使用できるものである。また、前記液体混合物は、複合体、水の他に、重合体(A)及び/又は重合体(B)を含有していてもよい。また、前記液体混合物は、複合体、水、重合体(A)、重合体(B)以外の成分を含有していてもよい。
【0023】
複合体を形成するにあたり、重合体(A)と重合体(B)の質量比は、(B)/(A)で、0.65以上、3.0以下が好ましい。この質量比は、重合体(A)及び重合体(B)の電荷の比率がおよそ0.5以上、2以下となる組成である。
【0024】
また、重合体(A)、重合体(B)、及び水を混合して得られる、複合体を形成させるための混合物では、重合体(A)と重量比(B)の合計の含有量は、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。また、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0025】
本発明では、重合体(A)、重合体(B)及び水を含有する混合物のpHを変化させることにより、重合体(A)と重合体(B)の複合体を形成させることが好ましい。更に、本発明では、重合体(A)、重合体(B)及び水を含有する混合物のpHを低下させることにより、重合体(A)と重合体(B)の複合体を形成させることが好ましい。すなわち、本発明では、重合体(A)、重合体(B)及び水を含有する混合物を調製し、該混合物のpHを低下させることで、重合体(A)と重合体(B)の複合体を形成させることが好ましい。
【0026】
本発明では、重合体(A)、重合体(B)及び水を含有する透明な混合物を調製し、該混合物のpHを、該混合物が白濁するまで低下させることで、重合体(A)と重合体(B)の複合体を形成させることができる。重合体(A)と重合体(B)と水とを、(B)/(A)の質量比が0.65以上、3.0以下で混合する場合、混合物のpHを10.4以下にすることで、複合体が形成される。
【0027】
重合体(A)、重合体(B)及び水を含有する混合物について、「透明」とは、波長600nmで1cmの光路長における透過率が水に対して50%以上であることをいう。
また、重合体(A)、重合体(B)及び水を含有する混合物について、「白濁」とは、波長600nmで1cmの光路長における透過率が水に対して50%未満、更に30%以下、更に10%以下であることをいう。
透過率の測定は、例えば、U−3200 Spectrophotometer(HITACHI製)、石英セルを用いて、600nmにおける精製水の透過率を100%として測定することができる。
【0028】
本発明では、重合体(A)、重合体(B)及び水を含有し、重合体(A)と重合体(B)の合計含有量が0.3質量%以上、5質量%以下であり、重合体(B)/重合体(A)の質量比が0.65以上、3.0以下である透明な混合物を調製し、該混合物のpHを該混合物が白濁するまで低下させることで、重合体(A)と重合体(B)の複合体を形成させることができる。
【0029】
本発明では、重合体(A)、重合体(B)及び水を含有し、重合体(A)と重合体(B)の合計含有量が0.3質量%以上、5質量%以下であり、(B)/(A)の質量比が0.65以上、3.0以下であり、pHが10.4超である透明な混合物を調製し、該混合物のpHを10.4以下に低下させて白濁させることで、(A)と(B)の複合体を形成させることができる。
【0030】
複合体を含む液体混合物のpHは、硬質表面に適用する際の作業性などの観点から、7以上、更に8以上が好ましく、複合体を形成し防汚性を高める観点から、10以下、更に9以下が好ましい。なお、pHは、本発明の処理方法を実施する際の液体混合物の温度におけるものでよく、又は20℃で測定されたものであってもよい。
【0031】
pHの低下により複合物を形成させる場合は、硬質表面に適用する複合体を含む液体混合物のpHが前記範囲となるように、pHの低下の度合いを調整することが好ましい。
【0032】
本発明では、重合体(A)及び重合体(B)から形成された複合体を含む液体混合物を、例えば、台所の硬質表面、浴室の硬質表面などで用いられている疎水性の硬質表面に接触させて複合体を付着させることによって該硬質表面を改質し、親水性を向上させるものである。本発明の処理方法の対象となる硬質表面は、浴室の硬質表面が好ましい。
【0033】
重合体(A)及び重合体(B)から形成された複合体を含む液体混合物を硬質表面に適用する方法は、前記液体混合物を硬質表面に塗布する方法、前記液体混合物を硬質表面に噴霧する方法、前記液体混合物に硬質表面を有する物品を浸漬する方法などが挙げられる。前記液体混合物を適用した後、所定時間、例えば、1分以上、更に3分以上、更に5分以上静置することが好ましい。静置後、水洗することによって、親水性を付与することができる。
【0034】
本発明の硬質表面の処理方法には、重合体(A)と重合体(B)とから形成された複合体、並びに水を含有する、硬質表面用液体処理剤組成物を用いることができる。硬質表面用液体処理剤組成物のpHは、20℃で、7以上、更に8以上が好ましく、10以下、更に9以下が好ましい。また、前記硬質表面用液体処理剤組成物の前駆組成物として、重合体(A)、重合体(B)、及び水を含有する処理剤用組成物を用いることができる。処理剤用組成物を用いる場合は、硬質表面上で重合体(A)と重合体(B)との複合体を形成させることができる。
【0035】
本発明の対象となる硬質表面としては、プラスチック、セラミックス及び金属から選ばれる材質からなる疎水性の硬質表面が挙げられる。具体的には、プラスチックとして、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS、ポリアミドが挙げられる。また、金属として、ステンレスが挙げられる。ここで、疎水性の硬質表面とは、硬質表面に1μlのイオン交換水の水滴を処理表面に着滴させ、着滴3秒後から1秒間隔で10回接触角を測定し、その平均値が60°以上である硬質表面をいう。静止接触角の測定は、全自動接触角計を用いて行うことができる。一例として、協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM−500が挙げられる。
【実施例】
【0036】
<実施例1>
表1の重合体(A)を0.21質量%、重合体(B)を0.29質量%、残部の水を含有する水溶液(pH11.4)を調製した。この水溶液は透過率が50%以上であった。この水溶液に、1MのHCl水溶液を滴下してpHを低下させていくと、pH10.4で複合体が析出し、白濁した。この混合物は透過率が50%未満であった。pHが8.5になるまで1MのHCl水溶液を滴下した。この白濁したpH8.5の混合物を、以下の親水化性能の評価に用いた。このpHは25℃で測定されたものであった。
【0037】
<比較例1〜3>
表1の重合体(A)、(B)を合計で0.5質量%、残部の水を含有する混合物を、以下の親水化性能の評価に用いた。該混合物は白濁した外観を呈していた。なお、重合体(A)、(B)は、系中の正負の電荷比率が等比となるように配合した。また、表1には、便宜的に重合体(A)、(B)に該当しない重合体もそれらの欄に示した(以下同様)。
【0038】
<比較例4〜7>
表1重合体(A)と重合体(B)の欄の化合物とを、対象基板に滴下、混合して、以下の親水化性能を評価した。その際、同体積の重合体(A)水溶液と、重合体(B)の欄の化合物の水溶液の2液を混合すると、ちょうど系中の電荷比が重合体(A)の電荷に対して、重合体(B)の欄の化合物の電荷が2倍となり、かつ重合体(A)濃度が0.5質量%となるよう、それぞれの水溶液の濃度を調整し、ピペットを用いて0.5mlずつ採取し、同時に対象基板に滴下した。
【0039】
<親水化性能(接触角)>
PVC板(株式会社エンジニアリングテストサービス製、形状は25mm×75mm×1mm)に、実施例又は比較例の混合物又は水溶液を合計1ml塗布ないし滴下して5分間静置した後、25℃のイオン交換水で10秒間すすぎ、自然乾燥させた。25℃40%RHに調温調湿された測定室にて、上記処理を行ったPVC板のイオン交換水に対する静止接触角(初期静止接触角とする)を測定した。測定には協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM−500を使用し、1μlのイオン交換水の水滴を処理表面に着滴させ、着滴3秒後から1秒間隔で10回接触角を測定し、その平均値をデータとして記載した。さらに、初期接触角を測定した後のPVC板を、25℃の水道水(流速50ml/秒)で60秒間すすいだ後に、同様に静止接触角(追加すすぎ後の接触角とする)を測定した。初期接触角が小さいほど、親水性が高く防汚性に優れることを意味する。また、追加すすぎ後の接触角が、初期静止接触角に近いほど、耐水性に優れ、防汚性の持続性にも優れることを意味する。なお、処理前のPVC板の静止接触角は、85°であった。
【0040】
【表1】