特許第6178166号(P6178166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178166
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/27 20060101AFI20170731BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20170731BHJP
   G02B 6/38 20060101ALI20170731BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   G01B11/27 H
   G01B11/00 D
   G02B6/38
   G01M11/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-176014(P2013-176014)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-45538(P2015-45538A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢史
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−111124(JP,A)
【文献】 特開平04−115915(JP,A)
【文献】 特開平11−147359(JP,A)
【文献】 特開平09−062048(JP,A)
【文献】 米国特許第05131745(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G02B 6/38
G01M 11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の外面に当接しながら走行して前記測定対象を回転させる走行体と、
前記走行体を撓ませることで、前記走行体の位置を、前記測定対象の外面に当接した測定位置、及び前記測定位置から退避した退避位置に切り替える切替機構と、を備え、
前記測定対象の回転状態に応じた所定の測定値を取得し、
前記切替機構は、前記走行体の走行方向に交差する方向に沿って移動するとともに、前記退避位置に向けて前記走行体を押圧することを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項2】
測定対象の外面に当接しながら走行して前記測定対象を回転させる走行体と、
前記走行体を撓ませることで、前記走行体の位置を、前記測定対象の外面に当接した測定位置、及び前記測定位置から退避した退避位置に切り替える切替機構と、を備え、
前記測定対象の回転状態に応じた所定の測定値を取得し、
前記切替機構は、回転軸周りに公転するとともに、前記退避位置に向けて前記走行体を押圧することを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記切替機構は、前記走行体のうち、前記走行体の走行方向に沿う前記測定対象の両側を前記退避位置に向けて押圧することを特徴とする請求項1又は請求項に記載の測定装置。
【請求項4】
前記走行体は、無端ベルトであることを特徴とする請求項1から請求項の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記測定対象は、フェルールであり、
前記測定値は、前記フェルールの同心度であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプの外面や内面等、真円に可能な限り近づくように円形状に加工することを目的として製造がなされる部品において、その加工された円形(外面や内面)が真円にどの程度近づいたかを示す指標として同心度が知られている。
この同心度とは、基準円(データム円)の中心に対する対象円(例えば、実際に測定された円形状)の中心の誤差(位置の狂い)の大きさ、と一般的に定義されている。この点は、日本工業規格(JIS)のJIS規格番号(B0021)にも同様の定義がされている。
【0003】
そして、上述した部品の1つとして、フェルールが知られている。フェルールは、光ファイバの芯線の端面を正確に位置合わせしながら、光ファイバ同士を接続するための部材である。このフェルールは、その中心軸に沿って貫通孔が形成された円筒状とされ、光ファイバの芯線を貫通孔内に挿通させた状態で例えば光コネクタ部品に装着される。したがって、芯線の端面を正確に位置合わせしながら光ファイバ同士を接続するためには、特にフェルールの同心度の精度が高いレベルで要求されている。
【0004】
従来、フェルールの同心度を測定する測定装置として、フェルールを回転可能に載置する測定台と、複数のプーリが回転可能に支持されたプレートと、各プーリ間に架け渡されたベルトと、プレートを上下動可能とする上下シリンダ部と、を備えた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この測定装置では、シリンダ部によりプレートを上下移動させることで、ベルトがフェルール周面に対して接触または離間する。そして、ベルトがフェルールの周面に接触した状態で、ベルトを走行させることで、フェルールを回転させながら、同心度を測定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2992545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の構成にあっては、上下シリンダ部によりプレートを上下動させてベルトをフェルールの周面に対して接触または離間させるため、一般に測定装置の機構が複雑であり、高コストとなっていた。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、低コスト化及び構成の簡素化を図ることができる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明の第一の態様に係る測定装置は、測定対象の外面に当接しながら走行して前記測定対象を回転させる走行体と、前記走行体を撓ませることで、前記走行体の位置を、前記測定対象の外面に当接した測定位置、及び前記測定位置から退避した退避位置に切り替える切替機構と、を備え、前記測定対象の回転状態に応じた所定の測定値を取得することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、切替機構により走行体を撓ませるだけの構成で、走行体の位置を、測定位置と回避位置とに切り替えることができるので、従来のようにベルトを支持するプーリやプレート全体を移動させる場合に比べて、低コスト化及び構成の簡素化を図ることができるとともに、装置のコンパクト化も図ることができる。この場合、例えば手動により切替機構を操作可能とすることで、シリンダ等の複雑な機構を設けることもないので、上述した効果がより奏功される。
【0010】
(2)上記測定装置において、前記切替機構は、前記走行体の走行方向に交差する方向に沿って移動するとともに、前記退避位置に向けて前記走行体を押圧するアームを備えていてもよい。
この構成によれば、走行体の走行方向に対して交差する方向に沿ってアームを操作するだけで、走行体の位置を測定位置と回避位置とに簡単に切り替えることができる。これにより、作業性の向上を図ることができる。
【0011】
(3)上記測定装置において、前記切替機構は、回転軸周りに公転するとともに、前記退避位置に向けて前記走行体を押圧するアームを備えていてもよい。
この構成によれば、切替機構が回転軸周りに公転するアームを備えているので、アームを回転操作するだけで、走行体の位置を測定位置と回避位置とに簡単に切り替えることができる。これにより、作業性の向上を図ることができる。
【0012】
(4)上記測定装置において、前記切替機構は、前記走行体のうち、前記走行体の走行方向に沿う前記測定対象の両側を前記退避位置に向けて押圧してもよい。
この構成によれば、切替機構が、走行体のうち走行体の走行方向に沿う測定対象の両側を押圧することで、退避位置に向けて走行体を安定して撓ませることができる。これにより、退避位置において、走行体と測定対象との間の隙間を確保でき、測定対象のセット作業や取り出し作業等の作業性を向上させることができる。
【0013】
(5)上記測定装置において、前記走行体は、無端ベルトであってもよい。
この構成によれば、走行体として無端ベルトを採用することで、測定位置において無端ベルトを一方向に走行させるだけで、測定対象を連続的に回転させることができる。これにより、測定装置の更なる簡素化を図ることができる。
【0014】
(6)上記測定装置において、前記測定対象は、フェルールであり、前記測定値は、前記フェルールの同心度であってもよい。
この構成によれば、特に光ファイバ同士を接続するためのフェルールの同心度を測定するのに好適な測定装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低コスト化及び構成の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】測定装置ユニットの斜視図である。
図2】フェルールの断面図である。
図3】測定装置の斜視図である。
図4図3のA矢視図である。
図5】無端ベルトが初期位置にある状態を示す図4に相当する正面図である。
図6図3のB矢視図である。
図7図3の要部拡大図である。
図8】無端ベルトが退避位置にある状態を示す図4に相当する正面図である。
図9】実施形態の他の構成を示す図4に相当する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
[測定装置ユニット]
図1は測定装置ユニット1の斜視図である。
図1に示すように、測定装置ユニット1は、測定対象であるフェルールF(図2参照)の同心度(所定の測定値)を測定するための装置であって、水平な設置面S上に載置されている。
【0018】
図2はフェルールの断面図である。
図2に示すように、フェルールFは、中心軸Cに沿って図示しない光ファイバの芯線が挿通される貫通孔F1が形成された円筒状に形成されている。貫通孔F1は、フェルールFの一方の端面F2における一部分が、他方の端面F3側から一方の端面F2側に向かうにしたがって漸次拡径する断面テーパ状に形成されている。
【0019】
図1に示すように、測定装置ユニット1は、フェルール同心度測定装置4(以下、単に測定装置4という)と、この測定装置4を収容するケース2と、ケース2内に設けられて測定装置4を制御する制御部7と、を備えている。なお、本実施形態では、設置面Sに対して垂直な方向を上下方向L1とし、設置面Sにおいて互いに直交する方向を前後方向L2及び左右方向L3とする。また、前後方向L2のうち、測定装置4の後述する支持台51側を前方(矢印FW方向)とし、その反対方向(矢印BA方向)を後方とする。
【0020】
ケース2は、全体的に箱型に形成され、その前部(図中の手前側)には測定装置4の一部を露出させ、測定装置4での作業を可能とする作業台2aが構成されている。ケース2には、作業台2aを開け閉めする蓋部3がケース2に対してヒンジ結合されている。この場合、蓋部3の開位置では、作業台2aが開放され、測定装置4へのアクセスが可能となる。一方、蓋部3の閉位置では、作業台2aが蓋部3により覆われ、測定装置4へのアクセスが不能となるとともに、測定装置ユニット1内への塵埃等の進入を抑制している。
【0021】
図3は測定装置4の斜視図である。
図3に示すように、測定装置4は、フェルールFを撮像する撮像部50と、フェルールFを支持する支持台51と、支持台51に支持されたフェルールFを中心軸C周りに回転させる回転部52と、を備えている。なお、測定装置4は、ケース2内において、設置面Sに沿って延びる図示しないベース台を備え、このベース台に各構成品が支持されている。
【0022】
<撮像部>
撮像部50は、前後方向L2に沿って配置され、前方側にレンズ先端部55aが向いた長尺なレンズ鏡筒55と、レンズ鏡筒55の後端部に配設された撮像素子56と、を備えている。なお、撮像部50は、光軸O上であって支持台51を挟んで撮像部50の反対側に、光軸Oに沿ってフェルールFに照明光を照射する図示しないライトユニットを設ける構成としても構わない。
【0023】
レンズ鏡筒55は、内部に図示しない複数の光学系(レンズ等)が内蔵されており、その光軸Oは前後方向L2に一致している。そして、このレンズ鏡筒55は、レンズ先端部55aから撮像した被写体の像を複数の光学系を利用して撮像素子56に結像させている。これにより、レンズ鏡筒55を介して支持台51上のフェルールFを撮像素子56により撮像することが可能とされる。
撮像素子56は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等であり、制御部7からの指示に基づいてフェルールFを撮像し、その撮像画像を制御部7に出力する。
【0024】
<支持台>
支持台51は、前後方向L2に沿って間隔をあけて配置された一対の支持片51A,51Bを備えている。これら支持片51A,51Bは、前後方向L2を厚さ方向とした板状とされ、上下方向L1に沿って互いに平行に延在している。各支持片51A,51Bの上端縁は、同じ高さに位置しており、これら上端縁にはそれぞれV字状の溝部62が形成されている。支持台51は、これら両溝部62を利用してフェルールFを支持することが可能とされている。
【0025】
具体的には、両溝部62内にフェルールFを収納した状態で、フェルールFを第1支持片51A及び第2支持片51B間に架け渡すように支持することが可能とされている。これにより、フェルールFの中心軸Cを前後方向L2に一致させた状態で、フェルールFを支持することが可能とされる。
しかも、レンズ鏡筒55における光軸Oと、支持台51上におけるフェルールFの中心軸Cとが一致するように、第1支持片51A及び第2支持片51Bの高さが調整されている。なお、溝部62の形状としては、V字状に限定されるものではなく、フェルールFの形状に対応して半円形状等でも構わない。
【0026】
第2支持片51Bには、フェルールFの後方への移動を規制する規制プレート63が設けられている。規制プレート63には、フェルールFの外径よりも小さく、かつ光軸Oと同軸に配置された図示しない透孔が形成されている。
【0027】
<回転部>
回転部52は、フェルールFを単に回転させるだけでなく、フェルールFを支持台51との間で押さえ込みながら光軸O回りに回転させることが可能とされている。具体的に、回転部52は、フェルールFを回転させる無端ベルト71(走行体)と、無端ベルト71を回転させる駆動プーリ72及び従動プーリ73と、これらプーリ72,73が取り付けられたプレート74と、を備えている。
【0028】
プレート74には、レンズ鏡筒55におけるレンズ先端部55aとの干渉を回避するための切欠き部74aが下方に向けて開口している。そして、プレート74は、切欠き部74a内にレンズ先端部55aを収容した状態で、レンズ先端部55aと前後方向L2において同等の位置に配置されている。
【0029】
プレート74における前面(支持台51側)には、切欠き部74aを間に挟んで左右方向L3に並ぶように、上述した駆動プーリ72と従動プーリ73とが配置されている。
駆動プーリ72は、プレート74の後面(レンズ鏡筒55側)に取り付けられた駆動モータ75の出力軸に連結されている。つまり、駆動プーリ72は、駆動モータ75を介してプレート74に取り付けられており、駆動モータ75の駆動に伴って回転する。なお、駆動モータ75は、制御部7によって作動が制御されている。
【0030】
一方、従動プーリ73は、駆動プーリ72と同じ高さに位置しており、図示しない軸部を介してプレート74の前面に連結されているとともに、軸部に回転可能に支持されている。
【0031】
図4及び図5図2のA矢視図であって、図4は無端ベルト71が測定位置にある状態を示し、図5は無端ベルト71が初期位置にある状態を示している。
図3図4に示すように、無端ベルト71は、可撓性を有し、上述した駆動プーリ72と従動プーリ73との間に所定の張力で架け渡されるように両プーリ72,73に巻回されている。無端ベルト71は、前後方向L2に沿うベルト幅がフェルールFの全長よりも小さく、かつ第1支持片51Aと第2支持片51Bとの間の隙間よりも小さく設定されている。そして、図5に示す初期位置(フェルールFが支持台51にセットされていない状態)において、無端ベルト71のうち、駆動プーリ72及び従動プーリ73の下方の架け渡された部分(以下、下側走行部71aという)は、第1支持片51Aと第2支持片51Bとの間に位置している。
【0032】
一方、図4の例において、下側走行部71aは、支持台51上に支持されているフェルールFの外周面に当接するとともに、支持台51の溝部62内に向けてフェルールFを押さえ込んでいる(以下、図4の状態を測定位置という)。
これにより、無端ベルト71は駆動プーリ72の回転に伴って左右方向L3(走行方向)に沿う一方向に走行することで、支持台51上に支持されているフェルールFを溝部62内に収納したまま光軸O(中心軸C)周りに回転させることが可能とされる。なお、図4に示す測定位置において、無端ベルト71の下側走行部71aは、フェルールFの外周面に倣って上方に僅かに撓んだ状態となっている。
【0033】
図6図3のB矢視図である。
なお、図6に示すように、上下方向L1から見た平面視において、無端ベルト71は、左右方向L3に沿う従動プーリ73側から駆動プーリ72側に向かうに従い後方に向けて傾斜するように、各プーリ72,73間に架け渡されている。この場合、無端ベルト71の走行方向に沿う走行ベクトルV1のうち、左右方向成分VL3がフェルールFに対して左右方向L3に向けて作用するので、フェルールFが上述のように回転する。
一方、走行ベクトルV1のうち、前後方向成分VL2がフェルールFに対して後方に向けて作用するので、フェルールFが後方に移動し、フェルールFの一方の端面F2が規制プレート63に常に突き当たるようになっている。これにより、フェルールFの前後方向L2に沿う位置ずれを抑制できる。
【0034】
<切替機構>
図7図3の要部拡大図である。
ここで、図7に示すように、本実施形態の測定装置4は、無端ベルト71を上方に向けて押さえ付けて無端ベルト71を撓ませることで、無端ベルト71の位置を、上述した測定位置(図4参照)と、測定位置から退避してフェルールFの外周面と無端ベルト71とを離間させる退避位置(図8参照)と、に切り替える切替機構80を備えている。
切替機構80は、上述した支持台51よりも前側に設けられたものであって、ベース台に固定されたベースプレート81と、ベースプレート81に対して上下動可能とされたアーム82と、アーム82を操作するレバー87と、を備えている。
【0035】
ベースプレート81は、前後方向L2を厚さ方向とする板状とされ、上下方向L1に沿って延在している。ベースプレート81には、前後方向L2に沿って貫通するガイド孔83が上下方向L1に沿って延在している。なお、ガイド孔83の上端縁は、上述した支持台51よりも上方に位置している。
【0036】
アーム82は、ベースプレート81の後側に配置され、上下方向L1から見た平面視でU字状とされている。具体的に、アーム82は、左右方向L3に沿って延びる基部85と、基部85の両端部から後方に向けて二股状に延在する一対の分岐アーム86と、を備えている。
分岐アーム86は、支持台51を間に挟んで左右方向L3に沿う両側に配置されるとともに、上下方向L1に沿う平面視において無端ベルト71と重なる位置まで延在している。
【0037】
レバー87は、基部85の中央部から前方に向けて延在する棒状とされ、ベースプレート81のガイド孔83内に上下方向L1に沿って移動可能に支持されている。レバー87の前端部は、ガイド孔83を通ってベースプレート81よりも前方に突出している。作業者は、切替機構80の前側からレバー87を把持し、レバー87をガイド孔83に沿って上下方向L1に沿って移動させることで、アーム82を上下方向L1に沿って移動させることができる。このとき、アーム82は上下動に伴い、無端ベルト71の下側走行部71aに下方から接触または離間可能となっている。
【0038】
<制御部>
図1に示すように、制御部7は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、各種インターフェース等に加え、不図示の記録媒体を有しており、CPUが記録媒体に記録される各種プログラムを適宜実行することで、上記した各種構成品を総合的に制御してフェルールFの同心度の測定を行う。制御部7は、例えば測定装置ユニット1に設けられた不図示のスイッチのON及びOFFを認識して、測定装置4によるフェルールFの測定の開始及び停止を行う。また、本実施形態の制御部7は、撮像素子56から送られてきたフェルールFの撮像画像に基づいて同心度を測定し、さらにこの測定結果に基づいて、フェルールFの品質を所定のランクに判別する。これにより、作業者は、測定されたフェルールFを品質ランクに対応して分類することができる。
【0039】
[作用]
続いて、上述した測定装置ユニット1の作用について説明する。以下では、一のフェルールFの同心度の測定及び品質ランクの分類が終了した後、支持台51からの一のフェルールFの取り出し作業から他のフェルールFの測定を行うまでの動作について主に説明する。なお、以下の説明では、無端ベルト71(下側走行部71a)は、図4に示す測定位置に配置されているものとする。
【0040】
図1に示すように、まず作業者は、一のフェルールFの測定が終了したのを確認した後、測定装置ユニット1の蓋部3を開位置として、作業台2aを開放する。これにより、測定装置4へのアクセスが可能となる。
【0041】
次に、図8に示すように、作業者は、切替機構80を操作し、無端ベルト71を退避位置に移動させる。具体的には、レバー87を把持し、ガイド孔83に沿ってレバー87を上方に引き上げ、アーム82を上昇させる。すると、アーム82が、無端ベルト71の下側走行部71aに対して下方から接触して、下側走行部71aを上方に向けて押し上げる。これにより、下側走行部71aが上方に向けて撓み変形することで、下側走行部71aがフェルールFの外周面から離間する。なお、無端ベルト71の退避位置は、支持台51上で支持されるフェルールFを作業者が交換可能な位置、すなわち、支持台51と無端ベルト71との間に上下方向L1で十分な隙間が形成される位置であれば構わない。
【0042】
次に、作業者は、レバー87を把持して、無端ベルト71を退避位置に保持したまま、フェルールFの交換作業を行う。すなわち、一のフェルールF(フェルール同心度測定工程で同心度の測定及び品質ランクの分類が終了したフェルールF)を支持台51の溝部62から取り出し、品質ランクに基づいて所定の収納ボックス等に収納するとともに、次に測定する他のフェルールFを支持台51の溝部62にセットする。
【0043】
続いて、作業者は、切替機構80のレバー87を下方に引き下げ、アーム82を下方に移動させる。すると、図4に示すように、無端ベルト71は、その復元力によってアーム82とともに下降する。これにより、無端ベルト71の下側走行部71aが、フェルールFの外周面に上方から当接するとともに、支持台51に向けてフェルールFを押さえ込み、上述した測定位置となる。
【0044】
次に、作業者は、支持台51にセットされた他のフェルールFに対して、同心度の測定及び品質ランクの分類を行う(フェルール同心度測定工程)。具体的には、図1に示すように、測定装置ユニット1の蓋部3を閉位置に戻し、作業台2aを閉塞した後、不図示のスイッチをON操作する。これにより、測定装置4によるフェルールFの同心度の測定を開始する。すなわち、図3に示すように、駆動モータ75の駆動により無端ベルト71が走行することで、無端ベルト71に当接するフェルールFも中心軸C周りに回転する。また、撮像部50は、中心軸C周りに回転するフェルールFの撮像を開始して、複数の撮像画像を取得する。制御部7(図1参照)は、撮像画像に写り込んだフェルールFの貫通孔F1に基づいて、フェルールFの同心度の測定を行うとともに、測定結果に基づいてフェルールFの品質ランクを例えばAランク〜Eランクの5段階に分類する。以上で、フェルール同心度測定工程が終了する。
【0045】
そして、作業者は、上述した作業を繰り返し行うことにより、複数のフェルールFの同心度を順次測定することができる。なお、測定装置ユニット1の使用後、支持台51からフェルールFが取り出された状態では、無端ベルト71は図5に示す初期位置に戻る。
【0046】
このように、本実施形態では、無端ベルト71を撓ませることで、無端ベルト71の位置を、フェルールFの外周面に当接した測定位置、及び測定位置から退避した退避位置に切り替える切替機構80を備える構成とした。
この構成によれば、切替機構80により無端ベルト71を撓ませるだけの構成で、無端ベルト71を測定位置と回避位置とに切り替えることができるので、従来のように無端ベルトを支持するプーリやプレート全体を移動させる場合に比べて、低コスト化及び構成の簡素化を図ることができるとともに、装置のコンパクト化も図ることができる。この場合、例えば手動により切替機構80を操作可能とすることで、シリンダ等の複雑な機構を設けることもないので、上述した効果がより奏功される。
【0047】
また、切替機構80が、無端ベルト71の走行方向(左右方向L3)に対して直交する方向(上下方向L1)に沿って無端ベルト71を押し上げるアーム82を備えているので、アーム82を上下動させるだけで、無端ベルト71を測定位置と回避位置とに簡単に切り替えることができる。これにより、作業性を向上させることができる。
【0048】
しかも、アーム82が、無端ベルト71においてフェルールFの両側を上方に向けて押し上げることで、退避位置に向けて無端ベルト71を安定して撓ませることができる。これにより、退避位置において、無端ベルト71とフェルールFとの間の隙間を確保でき、支持台51へのフェルールFのセット作業や、支持台51からのフェルールFの取り出し作業等の作業性を向上させることができる。
さらに、フェルールFを回転させる走行体として、無端ベルト71を採用することで、測定位置において無端ベルト71を一方向に走行させるだけで、フェルールFを連続的に回転させることができる。これにより、測定装置4の更なる簡素化を図ることができる。
【0049】
そして、本実施形態では、上述した切替機構80を備えているので、特に光ファイバ同士を接続するためのフェルールFの同心度を測定するのに好適な、測定装置4を得ることができる。
【0050】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
例えば、切替機構80は、無端ベルト71を撓ませることで、無端ベルト71の位置を測定位置と退避位置との間で切り替える構成であれば、適宜設計変更が可能である。この場合、上述した実施形態では、レバー87を上下方向L1に沿って操作することで、アーム82を上下動させる構成について説明したが、これに限られない。例えば、アーム82に摺接するカムを設け、カムを回転させることによりアーム82を上下動させる構成等、適宜設計変更が可能である。
【0052】
また、上述した実施形態では、基部85と分岐アーム86との上下方向L1に沿う長さを同等に形成した場合について説明したが、分岐アーム86に対して基部85の上下方向L1に沿う長さを拡大することで、その分ベースプレート81の上下方向L1に沿う長さを短縮できる。これにより、支持台51にアクセスし易くなる。
さらに、上述した実施形態では、支持台51の前方に切替機構80を設ける構成について説明したが、切替機構80の設置位置は適宜設計変更が可能である。
また、切替機構80は、アーム82に限らず、ローラ等を用いても構わない。
【0053】
また、図9に示す切替機構100のように、アーム103を回転させることで、無端ベルト71の位置を測定位置と退避位置とに切り替えても構わない。図9に示すアーム103は、例えば上下方向L1から見た平面視でL字状とされている。具体的に、アーム103は、左右方向に沿って延在する基部103aと、基部103aの左右方向L3に沿う一端部から後方に向けて延在する延在部103bと、を有している。
【0054】
基部103aには、アーム103を操作する回転レバー104が連結されている。回転レバー104は、ベースプレート101に形成された貫通孔101a内に挿通され、回転レバー104の中心軸M周りに回転可能に支持されている。
延在部103bは、回転レバー104の中心軸Mと平行で、かつ上下方向L1に沿う平面視において無端ベルト71と重なる位置まで延在している。
【0055】
この構成によれば、回転レバー104を中心軸M回りに回転(例えば前後方向L2から見て反時計回り)させることで、延在部103bが中心軸M周りに公転する。これにより、アーム103の延在部103bが、無端ベルト71の下側走行部71aに対して下方から接触して、下側走行部71aを上方に向けて押し上げる。これにより、下側走行部71aが上方に向けて撓み変形することで、上述した退避位置(図8参照)に移動する。
一方、例えば回転レバー104を逆転させることで、延在部103bが無端ベルト71に対して下方に向けて移動する。これにより、無端ベルト71は、その復元力によってアーム103とともに下降することで、上述した測定位置(または初期位置)となる。
このように、回転レバー104を回転操作するだけで、無端ベルト71の位置を、退避位置と測定位置とに切り替えることができるので、作業性の向上を図ることができる。
【0056】
また、上述した実施形態では、切替機構80を手動で操作する場合について説明したが、自動で操作しても構わない。この構成においても、従来のように無端ベルトを支持するプーリやプレート全体を移動させる場合に比べて、低コスト化及び構成の簡素化を図ることができる。
また、上述した実施形態では、無端ベルト71を上下方向L1に沿って撓ませる場合について説明したが、これに限らず、無端ベルト71の走行方向に交差する方向に撓ませれば構わない。
【0057】
また、上述した測定装置ユニット1及び測定装置4は、一例であり、上述した実施形態の構成に限定されない。例えば、上述した測定装置ユニット1では、切替機構80により、無端ベルト71を測定位置から退避位置に切り替えた後、支持台51からの一のフェルールFの取り出し、支持台51への他のフェルールFのセットを手動により行っていたが、例えば自動で取り出し及びセット可能なフェルール回収装置やフェルール供給装置を設けてもよい。
【0058】
上述した実施形態では、走行体として無端ベルト71を例にして説明したが、これに限らず、可撓性を有した上で、フェルールFの外周面に当接するとともに、フェルールFを回転させることができればよい。例えば、往復走行可能な帯状、棒状のものであっても構わない。
さらに、上述した実施形態では、無端ベルト71のうち、支持台51を挟んで両側に位置する部分を押圧する構成について説明したが、これに限らず、無端ベルト71を退避位置及び測定位置に切替可能であれば、任意の位置を押圧することが可能である。
【0059】
さらに、上述した実施形態では、本発明の測定装置を、測定対象をフェルールFとし、測定値としてフェルールFの同心度を測定する測定装置4に適用した場合について説明したが、測定対象はフェルールFに限定されない。したがって、例えば金属パイプの同心度を測定する装置についても、本発明に係る測定装置を適用できる。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
4…フェルール同心度測定装置(測定装置)
71…無端ベルト(走行体)
80,100…切替機構
82,103…アーム
F…フェルール(測定対象)
M…中心軸(回転軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9