特許第6178173号(P6178173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178173
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/38 20060101AFI20170731BHJP
   F16H 59/04 20060101ALI20170731BHJP
   F16H 61/00 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   F16H63/38
   F16H59/04
   F16H61/00
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-178210(P2013-178210)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-45399(P2015-45399A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】池山 将弘
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−118436(JP,A)
【文献】 特開平07−081448(JP,A)
【文献】 特開平07−253150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/38
F16H 59/04
F16H 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフタと、前記シフタの変位に基づきモータを回転させる制御部と、前記モータに連動するディテント機構と、前記ディテント機構に連動して変速ギアを複数の中から選択するトランスミッションと、を備えるシフト装置において、
前記ディテント機構は、ボス孔を有し前記モータに連動して回転するボス部材と、
前記ボス孔に挿入され、前記ボス部材に連動して回転するマニュアルシャフトと、
前記マニュアルシャフトと一体回転するディテントと、
前記ディテントに前記変速ギアの数と同数の谷部と、谷部同士の間に設けられる山部とからなる被押圧部を前記ディテントの回転中心に向かって常時押圧する押圧部を有するディテントスプリングと、を備え、
前記ボス孔と前記マニュアルシャフトとの間には前記マニュアルシャフトの回転方向に遊びが設定され、その遊び量は、隣り合う山部の頂点と谷部の谷底とがなす複数の中心角のうち最小のものと等しく設定されるシフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフト装置において、
前記ディテント又は前記マニュアルシャフトの回転位置を検出する検出センサと、
前記複数の変速ギアのそれぞれと対応付けられた前記検出センサの検出結果である対応値を記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記記憶部の前記対応値に対応する前記検出センサの検出結果を認識したときに前記モータの回転を停止させるものであって、前記モータの回転を停止させた後における単位時間当たりの前記検出センサの検出結果の変化量が、予め変化がないと判断する設定閾値を下回った場合には、そのときの前記検出センサの検出結果に前記記憶部の前記対応値を更新するシフト装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシフト装置において、
前記ディテント又は前記マニュアルシャフトの回転位置を検出する検出センサと、
前記複数の変速ギアのそれぞれと対応付けられた前記検出センサの検出結果である対応値を記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記検出センサの検出結果が前記対応値に近づくにつれ前記モータの回転速度を遅くするシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機の変速位置を切り替えるシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機とシフト装置とが機械的に分離したいわゆるバイワイヤ方式のシフト装置が周知である。当該シフト装置にあっては、シフタの操作位置を電気信号として検出するとともに、その検出信号に基づき自動変速機の変速位置(接続状態)を切り換える。このようなシフト装置としては、特許文献1に開示されるものがある。
【0003】
特許文献1のシフト装置は、シフタと、シフタの位置の変化に基づいてモータの駆動を制御するECUと、モータに連動してディテントを目標の位置に移動させるディテント機構と、ディテントの位置に応じて変速位置を切り替えトランスミッションと、を備えている。
【0004】
ディテント機構は、ボス部と、マニュアルシャフトと、ディテントと、ディテントスプリングとを備えている。
ボス部は、モータと一体回転する。マニュアルシャフトは、ボス部に設けられるボス孔に挿入されている。ボス孔は、マニュアルシャフトとの間に遊びを備えている。すなわち、マニュアルシャフトは、ボス部が先の遊び分だけ回転した後に当該ボス部に連動する。ディテントは、弧にあたる部位が山と谷とが交互に連続する被押圧部とされた略扇型とされている。ディテントは、扇の要にあたる部位においてマニュアルシャフトに連結されている。ディテントは、マニュアルシャフトと一体回転する。ディテントスプリングは、球状の押圧部を備えている。ディテントスプリングは、押圧部を介して被押圧部をディテントの要に向かって常時付勢する。すなわち、ディテントは、押圧部が被押圧部の谷に収まるように回転する力を受ける。ディテントは、ボス孔とマニュアルシャフトとの間の遊びの分だけ回転が許容されているので、モータが停止しても最大で先の遊びの分だけ回転する。これにより、モータが停止すると押圧部が被押圧部の谷に収まる。被押圧部の谷の位置は、トランスミッションの変速位置と対応しているので、モータが停止すると変速位置が切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3221222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シフト装置は、マニュアルシャフトの回転角度を検出する検出センサを備えている。ECUは、検出センサの検出結果に基づきモータが駆動するために供給している電流を停止する。従って、ECUがモータに供給する電力を停止するタイミングが遅れると、その分ディテントが余分に回るので、シフタの位置とトランスミッションの変速位置とが一致しないおそれがある。
【0007】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、シフタの位置とトランスミッションの変速位置とがずれにくいシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、シフト装置は、シフタと、前記シフタの変位に基づきモータを回転させる制御部と、前記モータに連動するディテント機構と、前記ディテント機構に連動して変速ギアを複数の中から選択するトランスミッションと、を備え、前記ディテント機構は、ボス孔を有し前記モータに連動して回転するボス部材と、前記ボス孔に挿入され、前記ボス部材に連動して回転するマニュアルシャフトと、前記マニュアルシャフトと一体回転するディテントと、前記ディテントに前記変速ギアの数と同数の谷部と、谷部同士の間に設けられる山部とからなる被押圧部を前記ディテントの回転中心に向かって常時押圧する押圧部を有するディテントスプリングと、を備え、前記ボス孔と前記マニュアルシャフトとの間には前記マニュアルシャフトの回転方向に遊びが設定され、その遊び量は、隣り合う山部の頂点と谷部の谷底とがなす複数の中心角のうち最小のものと等しく設定されることを要旨とする。
【0009】
山部の頂点と谷部の谷底との間は、押圧部の押圧方向に対して傾斜している。このため、ディテントは、押圧部によって被押圧部が押圧されることにより押圧部が谷に収まるように回転する力を受ける。ディテントは、ボス孔とマニュアルシャフトとの間の遊びの分だけ回転が許容されているので、押圧部が斜面に位置していればモータが停止しても最大で遊びの分だけ回転する。ここで、上記の構成によれば、遊び量は、隣り合う山部の頂点と谷部の谷底とがなす複数の中心角のうち最小のものと等しく設定されるので、ディテントは、モータが停止してディテントスプリングの押圧力により回転しても押圧部が山部の頂点を乗り越えることはできない。これにより、シフタにより選択された変速ギアとトランスミッションの変速ギアとが異なりにくい。
【0010】
上記構成において、前記ディテント又は前記マニュアルシャフトの回転位置を検出する検出センサと、前記複数の変速ギアのそれぞれと対応付けられた前記検出センサの検出結果である対応値を記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記記憶部の前記対応値に対応する前記検出センサの検出結果を認識したときに前記モータの回転を停止させるものであって、前記モータの回転を停止させた後における単位時間当たりの前記検出センサの検出結果の変化量が、予め変化がないと判断する設定閾値を下回った場合には、そのときの前記検出センサの検出結果に前記記憶部の前記対応値を更新することを要旨とする。
【0011】
ディテントは、ディテントスプリングに常時押圧されているので回転することにより摩耗する。このため、例えば変速ギアの対応値が初期値に固定されている場合、実際に選択された変速ギアに対応しなくなるおそれがある。この点、上記の構成によれば、記憶部に記憶される変速ギアの対応値は、ディテントが停止する度に更新されるので、対応しなくなるおそれがない。ひいては、シフタにより選択された変速ギアとトランスミッションの変速ギアとが異なりにくい。
【0012】
上記構成において、前記ディテント又は前記マニュアルシャフトの回転位置を検出する検出センサと、前記複数の変速ギアのそれぞれと対応付けられた前記検出センサの検出結果である対応値を記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記検出センサの検出結果が前記対応値に近づくにつれ前記モータの回転速度を遅くすることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、制御部がモータを停止させるときの検出センサの検出結果と対応値との差分が小さくなるので、モータの停止後にディテントスプリングの押圧部が山部を乗り越えるようにディテントが回転することをさらに抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシフト装置は、シフタの位置とトランスミッションの変速位置とがずれにくい効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】シフト装置の概略構成を示すブロック図。
図2】アクチュエータの斜視図。
図3】ボス部材の正面図。
図4】ディテントの正面図。
図5】(a)はリバースギアからニュートラルギアに切り替えるときの開始直後の状態を示すボス部材の正面図、(b)は(a)に対応するディテントの正面図、(c)はリバースギアからニュートラルギアに切り替えるときの中間状態(押圧部が山部の頂点を越えるとき)を示すボス部材の正面図、(d)は(c)に対応するディテントの正面図、(e)はリバースギアからニュートラルギアに切り替えるときの終了直前の状態を示すボス部材の正面図、(f)は(e)に対応するディテントの正面図。
図6】(a)はパーキングギアからリバースギアに切り替えるときの開始直後の状態を示すボス部材の正面図、(b)は(a)に対応するディテントの正面図、(c)はパーキングギアからリバースギアに切り替えるときの中間状態(押圧部が山部の頂点を越えるとき)を示すボス部材の正面図、(d)は(c)に対応するディテントの正面図、(e)はパーキングギアからリバースギアに切り替えるときの中間状態(押圧部が山部の頂点を越えて山部と谷部との間の斜面にあるとき)を示すボス部材の正面図、(f)は(e)に対応するディテントの正面図、(g)はパーキングギアからリバースギアに切り替えるときの終了直前の状態を示すボス部材の正面図、(h)は(g)に対応するディテントの正面図。
図7】(a)は第1の実施形態におけるパーキングギアからリバースギア、及びリバースギアからニュートラルギアにそれぞれ切り替えるときの検出値の変化態様を示すグラフ、(b)は第1の実施形態におけるニュートラルギアからリバースギア、及びリバースギアからパーキングギアにそれぞれ切り替えるときの検出値の変化態様を示すグラフ。
図8】メモリに記憶される各変速ギアに対応付けられた対応電圧値及び対応電圧閾値を示す図。
図9】第1の実施形態におけるモータ駆動回路の処理を示すフローチャート。
図10】第2の実施形態におけるモータ駆動回路の処理を示すフローチャート。
図11】(a)は第2の実施形態におけるパーキングギアからリバースギア、及びリバースギアからニュートラルギアにそれぞれ切り替えるときの検出値の変化態様を示すグラフ、(b)は第2の実施形態におけるニュートラルギアからリバースギア、及びリバースギアからパーキングギアにそれぞれ切り替えるときの検出値の変化態様を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、車両に設けられる自動変速機(トランスミッション)の変速位置を切り替えるシフト装置に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
[第1の実施形態]
図1に示すように、シフト装置1は、シフタ2と、シフタセンサ3と、シフトバイワイヤ制御装置4(以下、SBWECU4)と、アクチュエータ5と、トランスミッション6とを備えている。
【0017】
シフタ2は、ユーザに操作される。
シフタセンサ3は、シフタ2の操作位置に応じた操作位置信号を生成する。
SBWECU4は、モータ駆動回路41と、メモリ42と、を備えている。メモリ42には、図8に示すように、後述するトランスミッション6の各変速ギアに対応付けられた対応電圧値及び対応電圧閾値が記憶されている。図1に示すように、モータ駆動回路41は、操作位置信号を通じてトランスミッション6のどの変速ギアが選択されたかを認識するとアクチュエータ5に設けられるモータ51に給電する。また、モータ駆動回路41は、モータ駆動回路41は、アクチュエータ5に設けられる回転角センサ60が生成する回転角信号(検出値)の認識を通じて実際にトランスミッション6のどの変速ギアが選択されたかを認識するとともに、シフタ2の操作位置に対応する変速ギアが選択されたことを認識すると、モータ51への給電を停止する。なお、メモリ42は記憶部に、対応電圧値は対応値に、対応電圧閾値は設定閾値に、SBWECU4は制御部に、それぞれ相当する。
【0018】
アクチュエータ5は、ディテント機構部52を備えている。ディテント機構部52は、モータ51によって回転軸Oを中心に回転するボス部材53と、ボス部材53に設けられるボス孔54に挿入され、同じく回転軸Oを中心に回転するマニュアルシャフト55とを備えている。図3に示すように、マニュアルシャフト55の断面は、6−12時方向が3−9時方向よりも長い小判形とされている。ボス孔54の断面は、回転軸Oの位置では3−9時方向の長さがマニュアルシャフト55の3−9時方向の長さと等しく、回転軸Oから6−12時方向に離れるに従って徐々に3−9時方向の長さが長くなる形状とされている。これにより、ボス孔54の内周壁とマニュアルシャフト55との間には遊びσが設けられる。遊び量は、回転軸Oを中心として後述するディテント56に複数設けられる山部の頂点と谷部の谷底とがなす角度のうち最小角度に設定される。後に詳述するが回転軸Oを中心としてディテント56の山部の頂点と谷部の谷底とがなす角度のうち最小角度は5°であるので、遊びσの遊び量も5°に設定されている。従って、マニュアルシャフト55は、ボス部材53に対して5°だけ自由に回転することができる。
【0019】
また、図2に示すように、ディテント機構部52は、マニュアルシャフト55に接続されるディテント56を備えている。ディテント56は、略扇形に形成されており、マニュアルシャフト55のボス孔54に挿入される側とは反対側の端面は、ディテント56の要にあたる部位に固定されている。これにより、ディテント56は、マニュアルシャフト55と一体回転する。すなわち、ディテント56は、回転軸Oを中心に回転する。ディテント56の弧にあたる部位には、半円状の山部と半円状の谷部とが交互に連続する波部57が形成されている。ここでは、図4に示すように、波部57は、5つの谷部61,62,63,64,65と4つの山部71,72,73,74とが滑らかに連続する構成とされている。なお、波部57は、被押圧部に相当する。
【0020】
第1の谷部61の谷底を0°の位置とすると、第1の山部71の頂点は10°の位置、第2の谷部62の谷底は20°の位置、第2の山部72の頂点は25°の位置、第3の谷部63の谷底は30°の位置、第3の山部73の頂点は35°の位置、第4の谷部64の谷底は40°の位置、第4の山部74の頂点は45°の位置、第5の谷部65の谷底は50°の位置に、それぞれ設定されている。
【0021】
なお、第1の谷部61は、トランスミッション6のパーキングギアの変速位置(P位置)と対応する。第2の谷部62は、トランスミッション6のリバースギアの変速位置(R位置)と対応する。第3の谷部63は、トランスミッション6のニュートラルギアの変速位置(N位置)と対応する。第4の谷部64は、トランスミッション6のドライブギアの変速位置(D位置)と対応する。第5の谷部65は、トランスミッション6のローギアの変速位置(L位置)と対応する。
【0022】
さらに、図2に示すように、ディテント機構部52は、ディテントスプリング58を備えている。ディテントスプリング58は、トランスミッション6のケースに指示される板ばね58aと、板ばね58aの先端部に取り付けられた円柱状の押圧部58bとを備えている。ディテントスプリング58は、押圧部58bを介して波部57を回転軸Oに向かって常時押圧する。従って、押圧部58bが山部の頂点と谷部の谷底との間の斜面に位置する場合には、ディテント56には押圧部58bが谷部に収まるように回転軸O回りに回転する力がかかる。
【0023】
また、ディテント機構部52は、ディテント56とトランスミッション6との間を繋ぐマニュアルバルブ59を備えている。マニュアルバルブ59は、ディテント56が回転することにより移動する。
【0024】
トランスミッション6は、マニュアルバルブ59の位置に応じてパーキングギア、リバースギア、ニュートラルギア、ドライブギア、及びローギアのいずれかに切り替える。
なお、図1に示すように、アクチュエータ5は、マニュアルシャフト55の回転角に応じて電圧値を検出する回転角センサ60を備えている。回転角センサ60は、定期的に検出値に応じた回転角信号を生成する。
【0025】
<ディテント機構部の動き>
シフタ2が操作されることに伴ってトランスミッション6のギアが切り替わる場合におけるディテント機構部52の動きについて説明する。まず、トランスミッション6がリバースギアからニュートラルギアに切り替わるときについて説明する。なお、図5(b)に示すように、ディテントスプリング58の押圧部58bは、第2の谷部62の谷底に位置しているものとする。また、図3に示すように、ボス孔54の内周壁とマニュアルシャフト55との間の遊びσは、マニュアルシャフト55の回転方向両側に設けられているものとする。
【0026】
モータ駆動回路41は、操作位置信号を通じてシフタ2がニュートラルギアに対応する操作位置へ操作されたことを認識すると、ボス部材53を反時計方向に回転させるようにモータ51に給電する。ボス部材53が反時計方向に回転すると、図5(a)に示すように、ボス孔54の反時計方向の内周壁54aとマニュアルシャフト55の時計方向側の側壁55aとが係合する。これ以降、ボス部材53が反時計方向に回転するのに合わせてマニュアルシャフト55も反時計方向に回転する。
【0027】
すると、ディテントスプリング58の押圧部58bが第2の山部72と第2の谷部62との間の斜面を駆け上がる。そして、図5(d)に示すように、押圧部58bは、第2の山部72の頂点に到達する。このとき、図5(c)に示すように、ボス孔54の反時計方向の内周壁54aとマニュアルシャフト55の時計方向側の側壁55aとが係合している。
【0028】
次の瞬間、押圧部58bは、第2の山部72の頂点を乗り越えて第2の山部72と第3の谷部63との間の斜面を押圧する。すなわち、ディテント56には反時計方向に回転させる力がかかる。ボス孔54の内周壁とマニュアルシャフト55との間には5°の遊びσが設定されているので、押圧部58bが第2の山部72の頂点を乗り越えた瞬間、図5(f)に示すように、ディテント56はモータ51による回転速度よりも速い速度で反時計方向に5°回転する。これにより、押圧部58bは、トランスミッション6のニュートラルギアに対応する第3の谷部63の谷底に収まる。こうして、トランスミッション6は、リバースギアからニュートラルギアに切り替わる。また、図5(e)に示すように、ボス孔54の時計方向の内周壁54bとマニュアルシャフト55の反時計方向側の側壁55bとが係合する。これにより、マニュアルシャフト55が更に反時計方向へ回転することが抑制される。
【0029】
なお、ここでは、トランスミッション6をリバースギアからニュートラルギアに切り替える場合におけるディテント機構部52の動きについて説明したが、ディテント56における山部の頂点と谷部の頂点との間隔が等しいギア間を切り替える場合におけるディテント機構部52の動きは、同様である。すなわち、ニュートラルギアからドライブギアに、ドライブギアからローギアに、それぞれ切り替える場合におけるディテント機構部52の動きは、押圧部58bが乗り越える山部と収まる谷部が異なるだけであるので、その説明を省略する。
【0030】
また、トランスミッション6がニュートラルギアからリバースギアに、ドライブギアからニュートラルギアに、ローギアからドライブギアに、それぞれ切り替わる場合は、ボス部材53、マニュアルシャフト55、及びディテント56の回転方向が先の説明の場合と逆になるだけであるので、その説明を省略する。
【0031】
次に、トランスミッション6がパーキングギアからリバースギアに切り替わるときについて説明する。なお、図6(b)に示すように、ディテントスプリング58の押圧部58bは、第1の谷部61の谷底に位置している。また、図3に示すように、ボス孔54の内周壁とマニュアルシャフト55との間の遊びσは、マニュアルシャフト55の回転方向両側に設けられているものとする。
【0032】
モータ駆動回路41は、操作位置信号を通じてシフタ2がリバースギアに対応する操作位置へ操作されたことを認識すると、ボス部材53を反時計方向に回転させるようにモータ51に給電する。ボス部材53が反時計方向に回転すると、図6(a)に示すように、ボス孔54の反時計方向の内周壁54aとマニュアルシャフト55の時計方向側の側壁55aとが係合する。これにより、ボス部材53が反時計方向に回転するのに合わせてマニュアルシャフト55も反時計方向に回転する。
【0033】
すると、ディテントスプリング58の押圧部58bが第1の山部71と第1の谷部61との間の斜面を駆け上がる。そして、図6(d)に示すように、押圧部58bは、第1の山部71の頂点に到達する。このとき、図6(c)に示すように、ボス孔54の反時計方向の内周壁54aとマニュアルシャフト55の時計方向側の側壁55aとが係合している。
【0034】
次の瞬間、押圧部58bは、第1の山部71の頂点を乗り越えて第1の山部71と第2の谷部62との間の斜面を押圧する。すなわち、ディテント56には反時計方向に回転させる力がかかる。ボス孔54の内周壁とマニュアルシャフト55との間には5°の遊びσが設定されているので、押圧部58bが第1の山部71の頂点を乗り越えた瞬間、図6(f)に示すように、ディテント56はモータ51の回転速度よりも早く反時計方向に5°回転する。第1の山部71の頂点と第2の谷部62の頂点との間の回転角は10°に設定されているので、図6(f)に示すように、ディテント56は、押圧部58bが第1の山部71の頂点と第2の谷部62の頂点との中間地点に位置するまで回転する。このとき、図6(e)に示すように、ボス孔54の時計方向の内周壁54bとマニュアルシャフト55の反時計方向側の側壁55bとが係合する。これにより、押圧部58bが第1の山部71と第2の谷部62との間の斜面を押圧することによってマニュアルシャフト55が更に反時計方向へ回転することを規制する。
【0035】
その後、ボス部材53はモータ51に連動して更に反時計方向に回転する。この状態では、押圧部58bが第1の山部71の第2の谷部62側の斜面を押圧しているので、すなわち、ディテント56は、反時計方向への力を受けているので、図6(g)に示すように、ボス孔54の時計方向の内周壁54bとマニュアルシャフト55の反時計方向側の側壁55bとが係合している状態でボス部材53に連動して回転する。これにより、図6(h)に示すように、押圧部58bは、トランスミッション6のリバースギアに対応する第2の谷部62の底部に収まる。これにより、トランスミッション6は、パーキングギアからリバースギアに切り替わる。
【0036】
なお、トランスミッション6がリバースギアからパーキングギアに切り替わる場合は、ボス部材53、マニュアルシャフト55、及びディテント56の回転方向が先の説明の場合と逆になるだけであるので、その説明を省略する。
【0037】
<ディテントと回転角センサの検出値との関係>
次に、トランスミッション6が切り替えられるときのディテント56の位置と回転角センサ60が検出する回転角信号(検出値)との関係について図7(a)及び図7(b)を参照して説明する。
【0038】
まず、トランスミッション6がリバースギアからニュートラルギアに切り替えられるときについて説明する。この場合、先にも説明したように、ディテント56は、押圧部58bが第2の谷部62の谷底から第2の山部72の頂点を越えるまで、すなわち20°から25°に回転するまではモータ51に動力により回転する。そして、ディテント56は、押圧部58bが第2の山部72の頂点を越えてから第3の谷部63の谷底に収まるまで、すなわち25°から30°回転するまでは押圧部58bの押圧力によりモータ51による回転速度よりも速い速度で回転する。従って、図7(a)に示すように、回転角センサ60が検出する検出値は、電圧Vから電圧VR+5を検出するまでは一定の傾きで上昇し、電圧VR+5を越えてから電圧Vを検出するまでは先よりも大きい一定の傾きで上昇する。
【0039】
なお、ここでは、トランスミッション6をリバースギアからニュートラルギアに切り替える場合におけるディテント56と検出値との関係について説明したが、ディテント56における山部の頂点と谷部の頂点との間隔が等しいギア間を切り替える場合における検出値の変化態様は、同様である。すなわち、ニュートラルギアからドライブギアに、ドライブギアからローギアに、それぞれ切り替える場合における検出値の変化態様は、電圧値が異なるだけであるので、その説明を省略する。
【0040】
また、トランスミッション6がニュートラルギアからリバースギアに、ドライブギアからニュートラルギアに、ローギアからドライブギアに、それぞれ切り替わる場合の検出値の変化態様は、リバースギアからニュートラルギアに切り替わる場合と同様で、図7(b)に示すように、山部を越える前よりも山部を越えた後が大きくなるだけであるので、その説明を省略する。
【0041】
次に、トランスミッション6がパーキングギアからリバースギアに切り替えられるときについて説明する。この場合、先にも説明したように、ディテント56は、押圧部58bが第1の谷部61の谷底から第1の山部71の頂点を越えるまで、すなわち0°から10°に回転するまではモータ51に動力により回転する。そして、ディテント56は、押圧部58bが第1の山部71の頂点を越えてから第2の谷部62の谷底との中間地点まで、すなわち10°から15°に回転するまでは押圧部58bの押圧力によりモータ51による回転速度よりも速い速度で回転する。さらに、ディテント56は、押圧部58bが第2の谷部62の谷底との中間地点から第2の谷部62の谷底まで、すなわち15°から20°に回転するまではモータ51に動力により回転する。従って、図7(a)に示すように、回転角センサ60が検出する検出値は、電圧Vから電圧VP+10を検出するまでは一定の傾きで上昇し、電圧VP+10を越えてから電圧VP+15を検出するまでは先よりも大きい一定の傾きで上昇する。さらに、検出値は、電圧VP+15を越えてから電圧Vを検出するまでは、電圧Vから電圧VP+10を検出するまでと同じ傾きで上昇する。
【0042】
なお、トランスミッション6がリバースギアからパーキングギアに切り替わる場合の検出値の変化態様は、パーキングギアからリバースギアに切り替わる場合と同様で、図7(b)に示すように、山部を越える前よりも山部を越えて谷部との中間地点に至るまでが大きくなるだけであるので、その説明を省略する。
【0043】
<モータ駆動回路の処理>
次に、図9に示すフローチャートを参照してトランスミッション6のギアを変更するときにおけるモータ駆動回路41の処理について説明する。当該処理は、モータ駆動回路41は、操作位置信号の受信を契機として開始する。なお、モータ駆動回路41は、回転角センサ60を通じて定期的にマニュアルシャフト55の回転角を認識する。
【0044】
モータ駆動回路41は、受信した操作位置信号に対応する変速ギアの対応電圧値である目標電圧値を定める(ステップS1)。次に、目標電圧値と検出値との比較を通じてモータ51の回転方向を決定する(ステップS2)。そして、決定した回転方向に応じてモータ51に給電する(ステップS3)。
【0045】
次に、モータ駆動回路41は、検出値変化速度が頂点超え変化速度を上回るか否かを判断する(ステップS4)。なお、頂点超え変化速度は、メモリ42に予め記憶されている。また、検出値変化速度は、回転角センサ60を通じて検出される検出値と1回前の検出値である前回検出値との差分を検出周期で割って求められ、次式(1)で示される。
【0046】
(検出値変化速度)=|(検出値)−(前回検出値)|/(検出周期)・・・(1)
ステップS4でNO、すなわち、検出値変化速度が頂点越え変化速度以下である場合には、押圧部58bが山部の斜面を駆け上がっている最中であるので、当該処理を繰り返す。
【0047】
ステップS4でYES、すなわち、検出値変化速度が頂点超え変化速度を上回る場合には、押圧部58bが山部の頂点を越えてディテント56を回転させたものであるので、検出値が目標電圧値の対応電圧値域に含まれるか否かを判定する(ステップS5)。
【0048】
ステップS5でNO、すなわち、検出値が目標電圧値の対応電圧値域に含まれない場合には、さらに押圧部58bが隣の山部の頂点を越える必要があるので、当該処理をステップS4へ移行する。これにより、モータ51の回転が継続される。
【0049】
ステップS5でYES、すなわち、検出値が目標電圧値の対応電圧値域に含まれる場合には、検出値が電圧Vを下回るか否かを判定する(ステップS6)。
ステップS6でYES、すなわち、検出値が電圧Vを下回る場合には、リバースギアとパーキングギアとの間を切り替えている途中である。この場合、図6(f)に示すように、押圧部58bが山部と谷部との間の斜面に位置している。モータ駆動回路41は、押圧部58bが谷部に近づくようにディテント56を回転させるべく給電を続ける。次に、モータ駆動回路41は、図9に示すように、検出値が一定となるか否かを判断する(ステップS7)。ステップS7でNO、すなわち、検出値が変化している場合には、押圧部58bが谷部の底部に到達していないので、当該処理を繰り返す。
【0050】
ステップS7でYES、すなわち、検出値が一定となった場合には、押圧部58bが谷部の底部に到達しているので、モータ51への給電を停止する(ステップS8)。そして、メモリ42の対応電圧値を一定となった検出値に更新して(ステップS9)、一連の処理を終了する。
【0051】
なお、ステップS6でNO、すなわち、検出値が電圧Vを上回る場合には、リバースギアとニュートラルギアとの間、ニュートラルギアとドライブギアとの間、ドライブギアとローギアとの間のいずれかを切り替えている途中である。この場合、モータ51が回転していなくても押圧部58bが山部と谷部との間の斜面を押圧することによってディテント56が回転することにより押圧部58bが谷部の底部に向かうので、モータ51への電流の供給を停止する(ステップS10)。そして、検出値が一定となるか否かを判断する(ステップS11)。ステップS11でNO、検出値が変化している場合には、押圧部58bが谷部の底部に到達していないので、当該処理を繰り返す。
【0052】
ステップS11でYES、すなわち、検出値が一定となった場合には、押圧部58bが谷部の底部に到達しているので、ステップS9にその処理を移行する。
なお、波部57は、押圧部58bと摺動することにより摩耗する。このため、回転軸Oに対して谷部の谷底の位置(角度)が変化するおそれがある。これにより、変速ギアの対応電圧値が実際に選択されたトランスミッション6の変速ギアに対応しなくなるおそれがある。その点、この実施形態では、対応電圧値をディテント56が停止して検出値が一定となる度に当該検出値に更新する。シフタ2により選択された変速ギアとトランスミッション6の変速ギアとが異なりにくい。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)ボス孔54の内周壁とマニュアルシャフト55の側壁との間に、マニュアルシャフト55の回転方向に対応する遊びσを設けた。そして、その遊び量を、ディテント56の回転軸Oに対する隣り合う山部の頂点と谷部の谷底とがなす複数の中心角のうち最小のものである5°に設定した。これにより、マニュアルシャフト55と一体回転するディテント56は、モータ51が停止してディテントスプリング58の押圧力により回転しても許容される回転は遊び量に相当する5°分だけである。従って、ディテントスプリング58の押圧部58bは、ディテント56がディテントスプリング58の押圧力によって回転しても山部を乗り越えることはできない。これにより、シフタ2により選択された変速ギアとトランスミッション6の変速ギアとが異なりにくい。
【0054】
(2)メモリ42の対応電圧値を一定となった検出値に更新するようにした。これにより、波部57が押圧部58bと摺動することにより摩耗しても、シフタ2により選択された変速ギアとトランスミッション6の変速ギアとが異なりにくい。
【0055】
[第2の実施形態]
次に、シフト装置1の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と第2の実施形態との主たる相違点は、トランスミッション6の変速ギアを切り替えるときにおけるモータ51の回転速度である。そのため、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
<モータ駆動回路の処理>
次に、図10に示すフローチャートを参照してトランスミッション6のギアを変更するときにおけるモータ駆動回路41の処理について説明する。当該処理は、モータ駆動回路41は、操作位置信号の受信を契機として開始する。
【0057】
モータ駆動回路41は、受信した操作位置信号に対応する変速ギアの対応電圧値である目標電圧値を定める(ステップS21)。次に、目標電圧値と検出値との比較を通じてモータ51の回転方向を決定する(ステップS22)。そして、決定した回転方向に応じてモータ51にデューティー100%で給電する(ステップS23)。
【0058】
次に、検出値が電圧Vと電圧Vとの間にあるか否かを判定する(ステップS24)。
ステップS24でYES、すなわち、検出値が電圧Vと電圧Vとの間にある場合には、パーキングギアとリバースギアとの間を切り替えていることが確定する。そして、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧VP+8を、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には電圧VR−8を、検出したか否かを判断する(ステップS25)。ステップS25でNO、すなわち、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧VP+8を、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には電圧VR−8を、検出していない場合には、当該処理を繰り返す。
【0059】
ステップS25でYES、すなわち、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧VP+8を、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には電圧VR−8を、検出した場合にはモータ51への給電をデューティー70%に設定する(ステップS26)。これにより、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には図11(a)に示すように、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には図11(b)に示すように、デューティー100%のときと比較して電圧値の変化速度が遅くなる。
【0060】
次に、図10に示すように、モータ駆動回路41は、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧VP+15を、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には電圧VR−15を、検出したか否かを判断する(ステップS27)。ステップS27でNO、すなわち、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧VP+15を、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には電圧VR−15を、検出していない場合には、当該処理を繰り返す。
【0061】
ステップS27でYES、すなわち、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧VP+15を、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には電圧VR−15を、検出した場合にはモータ51への給電をデューティー50%に設定する(ステップS26)。これにより、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には図11(a)に示すように、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には図11(b)に示すように、デューティー100%のときと比較して電圧値の変化速度が遅くなる。
【0062】
次に、図10に示すように、モータ駆動回路41は、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧Vを、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には電圧Vを、検出したか否かを判断する(ステップS29)。ステップS29でNO、すなわち、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧Vを、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には電圧Vを、検出していない場合には、当該処理を繰り返す。
【0063】
ステップS29でYES、すなわち、パーキングギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧Vを、リバースギアからパーキングギアに切り替えている場合には電圧Vを、検出した場合にはモータ51への給電を停止する(デューティー0%に設定する)(ステップS30)。モータ51への給電の停止直前は、給電の開始時と比較して電圧値の変化速度が遅くなっている、すなわち、ディテント56の回転速度が遅くなっているので、押圧部58bが谷部の谷底に収まりやすい。換言すれば、押圧部58bが隣の山部の頂点を越えにくいので、シフタ2により選択された変速ギアとトランスミッション6の変速ギアとが異なりにくい。
【0064】
なお、ステップS24でNO、すなわち、検出値が電圧Vと電圧Vとの間にない場合には、リバースギアとニュートラルギアとの間、又はニュートラルギアとドライブギアとの間、又はドライブギアとローギアとの間を切り替えていることが確定する。
【0065】
そして、リバースギアからニュートラルギアに切り替えている場合には電圧VR+3を、ニュートラルギアからドライブギアに切り替えている場合には電圧VN+3を、ドライブギアからローギアに切り替えている場合には電圧VD+3を、ニュートラルギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧VN−3を、ドライブギアからニュートラルギアに切り替えている場合には電圧VD−3を、ローギアからドライブギアに切り替えている場合には電圧VL−3を、検出したか否かを判断する(ステップS31)。ステップS31でNO、すなわち、リバースギアからニュートラルギアに切り替えている場合には電圧VR+3を、ニュートラルギアからドライブギアに切り替えている場合には電圧VN+3を、ドライブギアからローギアに切り替えている場合には電圧VD+3を、ニュートラルギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧VN−3を、ドライブギアからニュートラルギアに切り替えている場合には電圧VD−3を、ローギアからドライブギアに切り替えている場合には電圧VL−3を、検出していない場合には、当該処理を繰り返す。
【0066】
ステップS31でNO、すなわち、リバースギアからニュートラルギアに切り替えている場合には電圧VR+3を、ニュートラルギアからドライブギアに切り替えている場合には電圧VN+3を、ドライブギアからローギアに切り替えている場合には電圧VD+3を、ニュートラルギアからリバースギアに切り替えている場合には電圧VN−3を、ドライブギアからニュートラルギアに切り替えている場合には電圧VD−3を、ローギアからドライブギアに切り替えている場合には電圧VL−3を、検出した場合には、モータ51への給電をデューティー70%に設定する(ステップS32)。これにより、図11(a)及び図11(b)に示すように、デューティー100%のときと比較して電圧値の変化速度が遅くなる。
【0067】
次に、図10に示すように、モータ駆動回路41は、リバースギアとニュートラルギアとの間を切り替えている場合には電圧VR+5を、ニュートラルギアとドライブギアとの間を切り替えている場合には電圧VN+5を、ドライブギアとローギアとの間を切り替えている場合には電圧VD+5を、検出したか否かを判断する(ステップS33)。ステップS33でNO、すなわち、リバースギアとニュートラルギアとの間を切り替えている場合には電圧VR+5を、ニュートラルギアとドライブギアとの間を切り替えている場合には電圧VN+5を、ドライブギアとローギアとの間を切り替えている場合には電圧VD+5を、検出していない場合には、当該処理を繰り返す。
【0068】
ステップS33でYES、すなわち、リバースギアとニュートラルギアとの間を切り替えている場合には電圧VR+5を、ニュートラルギアとドライブギアとの間を切り替えている場合には電圧VN+5を、ドライブギアとローギアとの間を切り替えている場合には電圧VD+5を、検出した場合には、ステップS30に処理を移行する。ステップS33でYESの場合、山部の頂点を越えているのでモータ51の駆動が停止しても押圧部58bの押圧力によりディテント56が回転して、押圧部58bが谷部の谷底に収まる。また、モータ51が駆動していないので、押圧部58bが谷部を通過して隣の山部を越えるおそれもない。
【0069】
以上詳述したように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて以下に示す効果が得られる。
(3)モータ51への給電の停止直前のデューティーを給電の開始時と比較して小さくした。これにより、モータ51への給電の停止直前は、給電の開始時と比較して電圧値の変化速度が遅くなっている、すなわち、ディテント56の回転速度が遅くなっているので、押圧部58bが谷部の谷底に収まりやすい。換言すれば、押圧部58bが隣の山部の頂点を越えにくいので、シフタ2により選択された変速ギアとトランスミッション6の変速ギアとが異なりにくい。
【0070】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1の実施形態において、モータ駆動回路41は、対応電圧値は更新しなくてもよい。このように構成した場合でも、上記第1の実施形態の(1)の効果を認識することができる。
【0071】
・上記第1の実施形態において、モータ駆動回路41は、図9のステップS5の処理を省略してもよい。この場合、モータ駆動回路41は、例えばパーキングギアからリバースギア、さらにリバースギアからニュートラルギアというように2つ以上のギアを連続して切り替える場合でも、中間のリバースギアで一旦モータ51への給電を停止する。そして、対応電圧値を更新する。このように構成しても上記第1の実施形態の(1)及び(2)の効果を得ることができる。
【0072】
・上記第2の実施形態において、モータ51へ給電するときのデューティーはディテントが停止する回転位置に向かうに従って徐々に回転速度が低下するようにすれば、任意に変更してもよい。
【0073】
・上記第2の実施形態において、ステップS26、ステップS27を省略してもよい。このように処理する場合であっても、上記第2の実施形態の(3)の効果を得ることができる。
【0074】
・上記各実施形態において、波部57の各山部の頂点と隣り合う各谷部の谷底との間の角度は10°若しくは5°に設定されたが任意に変更してもよい。各山部の頂点と隣り合う各谷部の谷底との間の角度のうち最小の角度に対応するようにボス孔54とマニュアルシャフト55との間の遊びσの遊び量を設定すればよい。
【0075】
・上記各実施形態において、マニュアルバルブ59は、ディテント56ではなくマニュアルシャフト55に固定されていてもよい。
・上記各実施形態において、トランスミッション6は、パーキングギア、リバースギア、ニュートラルギア、ドライブギア、及びローギアの5つの変速ギアを備えるものであったが変速ギアの数はこれに限定されない。谷部の数が変速ギアの数に対応していれば変速ギアの数は適宜変更してもよい。
【0076】
・上記各実施形態において、シフタ2は、ニュートラルギアを選択できない構成としてもよい。この場合、たとえばトランスミッション6の変速ギアニュートラルギアに切り替えるニュートラルスイッチを別途に設ける。
【0077】
・上記各実施形態において、シフタ2は、レバータイプであってもよいし、回転式であってもよいし、ボタン式であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…シフト装置、2…シフタ、3…シフタセンサ、4…シフトバイワイヤ制御装置(SBWECU)、5…アクチュエータ、6…トランスミッション、41…モータ駆動回路、42…メモリ、51…モータ、52…ディテント機構部、53…ボス部材、54…ボス孔、55…マニュアルシャフト、56…ディテント、57…波部、58…ディテントスプリング、58b…押圧部、59…マニュアルバルブ、60…回転角センサ、61〜65…谷部、71〜75…山部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11