(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に電力貯蔵装置には、交流電力と直流電力との相互変換を行う変換器が組み込まれる。前記変換器は、二次電池の充電時には、商用交流電力系統から供給される交流電力を直流電力に変換して二次電池に供給する。一方、二次電池からの放電時には、前記変換器は、二次電池から出力される直流電力を交流電力に変換して構内配電系統に接続された負荷に供給する。つまり、前記変換器は、二次電池の充電時には交流を直流に変換する整流器として機能し、放電時には直流を交流に変換するインバータとして機能する。
【0005】
直流と交流との間の変換を行うと、変換ロスが発生する。従って、交流から直流への変換及びその逆変換が必須となる電力貯蔵装置では、どうしても前記変換器において電力変換ロスが発生してしまう。しかしながら、従来の電力貯蔵装置においては、例えばピークカット時における二次電池の放電動作において、前記変換器における電力変換ロスを考慮した制御は特段行われていない。
【0006】
本発明の目的は、直流電力と交流電力との間の相互変換を行う変換器を用いる電力貯蔵装置において、前記変換器で不可避的に発生する電力変換ロスを可能な限り抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る電力貯蔵装置は、充電及び放電が可能な二次電池と、商用交流電力系統及び負荷が接続された交流配電系統と、前記二次電池とに接続され、前記二次電池の充電時には前記商用交流電力系統の交流電圧を直流電圧に変換して前記二次電池へ供給する第1変換動作と、ピークカット時には前記二次電池の直流電圧を交流電圧に変換して前記交流配電系統へ供給する第2変換動作とを行う変換器と、前記負荷の消費電力量E1を所定のサンプリング周期で取得する計測器と、前記変換器の出力効率が良好となる基準出力電力量Emの設定値を記憶する記憶部と、前記変換器の前記第1及び第2変換動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ピークカット時において、前記ピークカットの実行基準となる設定電力量E0と前記消費電力量E1とを前記サンプリング周期毎に比較して超過電力量ΔEを取得し、該超過電力量ΔEの前記サンプリング周期単位の積算値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングで、前記変換器に前記第2変換動作を実行させる。
【0008】
この構成によれば、前記サンプリング周期毎に取得される超過電力量ΔEに応じて前記変換器の第2変換動作(つまり二次電池の放電動作)が行われるのではなく、超過電力量ΔEの前記サンプリング周期単位の積算値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングで、前記変換器の第2変換動作が実行される。従って、前記変換器は常に出力効率が良好となるレンジで、直流電圧を交流電圧に変換する変換動作を行うことができ、電力変換ロスを抑制することができる。
【0009】
本発明の他の局面に係る電力貯蔵装置は、充電及び放電が可能な二次電池と、商用交流電力系統及び負荷が接続された交流配電系統と、前記二次電池とに接続され、前記二次電池の充電時には前記商用交流電力系統の交流電圧を直流電圧に変換して前記二次電池へ供給する第1変換動作と、ピークカット時には前記二次電池の直流電圧を交流電圧に変換して前記交流配電系統へ供給する第2変換動作とを行う変換器と、前記負荷の消費電力量E1を所定のサンプリング周期で取得する計測器と、前記変換器の出力効率が良好となる基準出力電力量Emの設定値を記憶する記憶部と、前記変換器の前記第1及び第2変換動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記充電時において、前記ピークカットの実行基準となる設定電力量E0と前記消費電力量E1とを前記サンプリング周期毎に比較して使用可能電力量ΔCを取得し、該使用可能電力量ΔCの絶対値の前記サンプリング周期単位の積算値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングで、前記変換器に前記第1変換動作を実行させる。
【0010】
この構成によれば、前記サンプリング周期毎に取得される使用可能電力量ΔCに応じて前記変換器の第1変換動作(つまり二次電池の充電動作)が行われるのではなく、使用可能電力量ΔCの絶対値の前記サンプリング周期単位の積算値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングで、前記変換器の第1変換動作が実行される。従って、前記変換器は常に出力効率が良好となるレンジで、交流電圧を直流電圧に変換する変換動作を行うことができ、電力変換ロスを抑制することができる。
【0011】
本発明のさらに他の局面に係る電力貯蔵装置は、充電及び放電が可能な二次電池と、商用交流電力系統及び負荷が接続された交流配電系統と、前記二次電池とに接続され、前記二次電池の充電時には前記商用交流電力系統の交流電圧を直流電圧に変換して前記二次電池へ供給する第1変換動作と、ピークカット時には前記二次電池の直流電圧を交流電圧に変換して前記交流配電系統へ供給する第2変換動作とを行う変換器と、前記負荷の消費電力量E1を所定のサンプリング周期で取得する計測器と、前記変換器の出力効率が良好となる基準出力電力量Emの設定値を記憶する記憶部と、前記変換器の前記第1及び第2変換動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ピークカットの実行基準となる設定電力量E0と前記消費電力量E1とを前記サンプリング周期毎に比較して、前記設定電力量E0に対する超過分である超過電力量ΔE、又は、前記設定電力量E0に対する未達分である使用可能電力量ΔCを取得し、前記サンプリング周期単位で、前記超過電力量ΔEを正値とし、前記使用可能電力量ΔCを負値として、前記超過電力量ΔE及び前記使用可能電力量ΔCの相殺積算値を求め、前記相殺積算値が正値であって前記基準出力電力量Emと同等又は超過した場合は、前記変換器に前記第2変換動作を実行させ、前記相殺積算値が負値であってその絶対値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過した場合は、前記変換器に前記第1変換動作を実行させる。
【0012】
この構成によれば、前記サンプリング周期毎に超過電力量ΔE又は使用可能電力量ΔCが取得され、相殺積算値が求められる。そして、前記相殺積算値が正値において、若しくは負値における絶対値において、前記基準出力電力量Emと同等又は超過した場合に、前記第2変換動作又は第1変換動作が実行される。従って、消費電力量E1が設定電力量E0を超過したり、下回ったりするような負荷変動がサンプリング周期単位で屡々生じるような負荷状況であっても、前記変換器は常に出力効率が良好となるレンジで、直流電圧を交流電圧に変換する変換動作或いはその逆の動作を行うことができ、電力変換ロスを抑制することができる。
【0013】
本発明のさらに他の局面に係る電力貯蔵装置は、充電及び放電が可能な二次電池と、商用交流電力系統及び負荷が接続された交流配電系統と、前記二次電池とに接続され、前記二次電池の充電時には前記商用交流電力系統の交流電圧を直流電圧に変換して前記二次電池へ供給する第1変換動作と、ピークカット時には前記二次電池の直流電圧を交流電圧に変換して前記交流配電系統へ供給する第2変換動作とを行う変換器と、前記負荷の消費電力量E1を所定のサンプリング周期で取得する計測器と、前記変換器の出力効率が良好となる基準出力電力量Emの設定値を記憶する記憶部と、前記変換器の前記第1及び第2変換動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記二次電池への充電が不要な状態と判定する場合において、前記ピークカットの実行基準となる設定電力量E0と前記消費電力量E1とを前記サンプリング周期毎に比較して、前記設定電力量E0に対する超過分である超過電力量ΔE、又は、前記設定電力量E0に対する未達分である使用可能電力量ΔCを取得し、前記サンプリング周期単位で、前記超過電力量ΔEを正値とし、前記使用可能電力量ΔCを負値として、前記超過電力量ΔE及び前記使用可能電力量ΔCの相殺積算値を求め、前記相殺積算値が正値であって前記基準出力電力量Emと同等又は超過した場合は、前記変換器に前記第2変換動作を実行させる一方、前記相殺積算値が負値であるときには、その絶対値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過した場合であっても、前記変換器に前記第1変換動作を実行させることなく、前記相殺積算値を求める演算を継続する。
【0014】
この構成によれば、前記サンプリング周期毎に超過電力量ΔE又は使用可能電力量ΔCが取得され、相殺積算値が求められる。そして、前記相殺積算値が正値において、前記基準出力電力量Emと同等又は超過した場合には前記第2変換動作が実行される。その一方で、前記相殺積算値が負値であるときは、当該相殺積算値を求める演算が継続され、前記変換器に前記第1変換動作を実行させない。二次電池は、常に充電が必要な状態であるとは限らない。例えば、二次電池が満充電乃至はこれに近い状態であって、現状以上の充電が不要な場合がある。このような場合、前記負値の相殺積算値が増加しても、前記変換器に前記第1変換動作を実行させずに当該相殺積算値を保持することで、その後に正値側の前記超過電力量ΔEが発生した場合における相殺の余裕量を増やすことができる。これにより、二次電池からの放電量を減少させることができる。
【0015】
上記構成において、前記消費電力量E1の評価値が、予め定められた時刻t1〜時刻t2までの単位時間における前記消費電力量E1の平均値で決定される場合において、前記制御部は、前記単位時間の終盤に近い時間帯に制御変更時刻tcを設定し、前記時刻t1〜前記時刻tcの間は上記の制御によって前記第2変換動作を実行させ、前記時刻tc〜前記時刻t2の間は、前記超過電力量ΔEに応じて前記サンプリング周期単位で前記第2変換動作を実行させることが望ましい。
【0016】
上記の通り、本発明では超過電力量ΔEの積算値が、前記基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングを待つ方式を採用する。ここで、消費電力量E1の評価値が、予め定められた時刻t1〜時刻t2までの単位時間における前記消費電力量E1の平均値で決定される場合、前記タイミングを待つ間に時刻t2が到来し、結果的に前記単位時間における前記消費電力量E1の評価値が所定の閾値(設定電力量)を超過してしまうことが起こり得る。この場合、ピークカットを達成できなくなる。上記構成によれば、前記単位時間の終盤に近い時間帯である制御変更時刻tc〜前記時刻t2の間は、前記超過電力量ΔEに応じて前記サンプリング周期単位で前記第2変換動作が実行されるので、前記評価値が所定の閾値を超過することを防止できる。
【0017】
この場合、前記制御部は、前記制御変更時刻tcの到来時点において前記超過電力量ΔEの積算値が残存しているとき、当該残存している積算値の電力量に相当する分だけ、前記変換器に前記第2変換動作を実行させることが望ましい。
【0018】
この構成によれば、前記制御変更時刻tcの到来時点において、前記基準出力電力量Emには至らないが前記超過電力量ΔEの積算値が残存している場合でも、その残存分に相当する前記第2変換動作が実行されるので、前記評価値が所定の閾値を超過することを確実に防止することができる。
【0019】
上記構成において、前記消費電力量E1の評価値が、予め定められた時刻t1〜時刻t2までの単位時間における前記消費電力量E1の平均値で決定される場合において、前記制御部は、前記時刻t2の到来時点において前記使用可能電力量ΔCの積算値が残存しているとき、当該残存している積算値の電力量に相当する分だけ、前記変換器に前記第1変換動作を実行させることが望ましい。
【0020】
この構成によれば、前記時刻t2の到来時点において、前記基準出力電力量Emまでには至らないものの前記使用可能電力量ΔCの絶対値の積算値が残存している場合、つまり、前記変換器に前記第1変換動作を実行させる余裕分が残存している場合に、前記時刻t2の到来時点において前記余裕分を使い切ることができる。
【0021】
上記構成において、前記消費電力量E1の評価値が、予め定められた時刻t1〜時刻t2までの単位時間における前記消費電力量E1の平均値で決定される場合において、前記制御部は、前記単位時間の終盤に近い時間帯に制御変更時刻tcを設定し、前記時刻t1〜前記時刻tcの間は請求項3
又は4に記載の制御によって前記第1又は第2変換動作を実行させ、前記制御変更時刻tcの到来時点において前記正値の相殺積算値が残存しているとき、当該残存している前記相殺積算値の電力量に相当する分だけ、前記変換器に前記第2変換動作を実行させ、少なくとも前記時刻tc〜前記時刻t2の間は、前記超過電力量ΔEに応じて前記サンプリング周期単位で前記第2変換動作を実行させることが望ましい。
【0022】
この構成によれば、前記相殺積算値を求める態様においても、前記制御変更時刻tcの到来時点において前記正値の相殺積算値をリセットし、前記単位時間の終盤に近い時間帯である制御変更時刻tc〜前記時刻t2の間は、少なくとも前記超過電力量ΔEに応じて前記サンプリング周期単位で前記第2変換動作が実行されるので、前記評価値が所定の閾値を超過することを防止できる。
【0023】
或いは、上記構成において、前記消費電力量E1の評価値が、予め定められた時刻t1〜時刻t2までの単位時間における前記消費電力量E1の平均値で決定される場合において、前記制御部は、前記単位時間の終盤に近い時間帯に制御変更時刻tcを設定し、前記時刻t1〜前記時刻tcの間は請求項3
又は4に記載の制御によって前記第1又は第2変換動作を実行させ、前記制御変更時刻tcの到来時点において前記正値の相殺積算値が残存しているとき、当該残存している前記相殺積算値の電力量に相当する分だけ、前記変換器に前記第2変換動作を実行させ、前記時刻tc〜前記時刻t2の間は、前記超過電力量ΔEに応じて前記サンプリング周期単位で前記第2変換動作を実行させる一方、前記使用可能電力量ΔCの絶対値の前記サンプリング周期単位の積算値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングで、前記変換器に前記第1変換動作を実行させ、前記時刻t2の到来時点において、前記使用可能電力量ΔCの積算値が残存し、且つ前記超過電力量ΔEが存在しているとき、当該超過電力量ΔEを正値とし、当該使用可能電力量ΔCを負値として前記時刻t2における相殺値を求め、この時刻t2における相殺値が正値であれば前記第2変換動作を実行させ、負値であれば前記第1変換動作を実行させることが望ましい。
【0024】
この構成によれば、前記時刻t2の時点において放電又は充電の余裕分を完全に精算できるので、効率を最大限に向上させることができる。
【0025】
上記構成において、前記制御部は、前記二次電池に放電動作を行わせない第1の時間帯と、前記二次電池の放電動作を許容する第2の時間帯とを設定し、前記超過電力量ΔEの積算値、使用可能電力量ΔCの積算値、又は前記相殺積算値を求める処理は、前記第2の時間帯に行われることが望ましい。
【0026】
上記第1の時間帯は、例えば割安な夜間電力料金が適用される夜間の時間帯であり、上記第2の時間帯は、例えば通常の電力料金が適用される昼間の時間帯である。上記の電力貯蔵装置は、前記第2の時間帯におけるピークカット時に第1変換動作(つまり二次電池の放電動作)だけではなく、第2変換動作(つまり二次電池の充電動作)をも実行することを前提としている。そして、前記第2変換動作は、超過電力量ΔEの前記サンプリング周期単位の積算値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングで実行されると共に、前記第1変換動作は、使用可能電力量ΔCの絶対値の前記サンプリング周期単位の積算値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングで実行される。従って、前記変換器は常に出力効率が良好となるレンジで、交流電圧から直流電圧への変換、又は直流電圧から交流電圧への変換動作を行うことができ、電力変換ロスを抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、直流電力と交流電力との間の相互変換を行う変換器を用いる電力貯蔵装置において、前記変換器で不可避的に発生する電力変換ロスを可及的に抑制することができる。従って、エネルギーロスの少ない電力貯蔵装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電力貯蔵装置1の概略を示すブロック図である。電力貯蔵装置1は、電力事業者が運営する商用電力系統2(商用交流電力系統)から電力の供給を受ける、電力需要家の構内配線系統1A(交流配電系統)に接続される装置であって、受電電力のピークを下げることによる電気料金の削減効果、さらには、非常用電源や瞬時電圧低下時の電源として活用することを企図して、構内配線系統1Aに組み込まれる装置である。
【0030】
電力貯蔵装置1は、制御部10、電力量計31(計測器)、電流・電圧センサ41、交流直流変換部42(変換器)、連系リアクトル43、及び二次電池20を備える。電力需要家の構内配線系統1Aには、電灯、各種電力機器、電動機及び空調機などの負荷3が接続されている。電力量計31は構内配線系統1Aに接続されている。負荷3は、構内配線系統1Aを介して電力貯蔵装置1(二次電池20)に接続されていると共に、商用電力系統2にも接続されている。つまり、負荷3は、商用電力系統2及び二次電池20の双方から、電力の供給を受けることが可能である。二次電池20は、制御部10の制御下において、商用電力系統2から供給される電力によって充電され、また、構内配線系統1Aを通して負荷3への電力供給のために放電する。
【0031】
商用電力系統2は、電力事業者により運営され、50Hz又は60Hzの商用交流電力を供給する送電系統である。本実施形態では、電力事業者は、電力貯蔵装置1を備える電力需要家に対し、昼間電力料金の時間帯(例えば8:00〜22:00/第2の時間帯)においては、通常の電力料金で電力を供給し、夜間電力料金の時間帯(22:00〜翌8:00/第1の時間帯)においては通常の電力料金よりも安価な電力料金で電力を供給する。
【0032】
二次電池20は、充電及び放電からなる充放電サイクルを繰り返して実行可能な電池である。この二次電池20として、完全放電状態と満充電状態との間の特定充放電領域において前記充放電サイクルが行われた場合に、電池寿命が長期化する特性を有する二次電池を用いることが望ましい。このような二次電池としては、例えばリチウムイオン電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ナトリウム硫黄電池等を例示することができる。二次電池20は、実際には多数個の二次電池セルが直列接続された電池モジュールからなる。
【0033】
一般に二次電池は、充放電サイクルを繰り返すことにより劣化して電池容量が低下してゆき、ついには電池寿命を迎える。前記劣化の主な原因は、充放電サイクルによる二次電池の内部抵抗の増加にある。満充電と完全放電とを繰り返す二次電池Aと、満充電よりも所定量だけ少ない充電率を充電の上限とし、完全放電よりも所定量だけ多い充電率を放電の下限として充放電サイクルを行う二次電池Bとの電池寿命を比較すると、二次電池Bの方が二次電池Aよりも相当寿命が長くなる。これは、電池容量の上限までフルに充電する満充電や、完全充電のように放電深度が深い放電が繰り返されると、前記内部抵抗の増加が促進されるためである。従って、二次電池Bの如く、満充電及び完全放電に至らない充放電幅である特定充放電領域において二次電池を使用すれば、当該二次電池の電池寿命を延命させることができ、ひいては二次電池の交換周期を長くすることができる。これにより、電力貯蔵装置1の経済性を高めることができる。
【0034】
電力量計31は、誘導型電力計などを含み、負荷3で消費される消費電力量E1を所定のサンプリング周期で取得する。前記サンプリング周期は、例えば1秒である。サンプリング周期毎の消費電力量E1を示すデータは、制御部10に逐次送られる。
【0035】
電流・電圧センサ41は、二次電池20の充放電時に、二次電池20が充放電する電力の充放電電流値及び充放電電圧値を測定する。
【0036】
交流直流変換部42は、商用電力系統2及び負荷3が接続された構内配線系統1Aと、二次電池20とに接続されている。交流直流変換部42は、二次電池20の充電時には、商用電力系統2から供給される交流電力を直流電力に変換して二次電池20に供給する整流器として機能する(第1変換動作)。また、交流直流変換部42は、二次電池20の放電時には、二次電池20から放電される直流電力を、負荷3に応じた電圧値または電流値もしくは電力値の交流電力に変換して構内配線系統1Aに供給するインバータとして機能する(第2変換動作)。さらに、交流直流変換部42は、商用電力系統2から供給される電力を用いて、定電力・定電流充電方式で二次電池20を充電する。
【0037】
連系リアクトル43は、交流直流変換部42と商用電力系統2との間に設けられている。交流直流変換部42は、交流直流変換部42側の交流電力V2の位相を商用電力系統2側の交流電力V1の位相よりも進ませることで、二次電池20に貯蔵されている電力を構内配線系統1Aに供給する。一方、二次電池20の充電時に交流直流変換部42は、交流電力V2の位相を交流電力V1の位相よりも遅らせることで、商用電力系統2の電力を二次電池20に供給する。なお、交流直流変換部42が、V2の位相とV1の位相とを等しくした場合は、二次電池20は充電も放電もされない待機状態となる。
【0038】
制御部10は、電力貯蔵装置1の動作を統括的に制御するコントローラである。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)を備え、該CPUは所定の制御プログラムを実行することで、ソフトウェア的に負荷監視部11、設定値記憶部12(記憶部)、時間設定部13及び充放電制御部14を備えるように機能する。
【0039】
負荷監視部11は、負荷3で使用されている電力量を監視する。このため負荷監視部11は、電力量計31から消費電力量E1を示すデータを、前記サンプリング周期単位で取得する。
【0040】
設定値記憶部12は、電力貯蔵装置1に対する各種パラメータの設定値の入力を受け付け、これを記憶する。設定値記憶部12は、交流直流変換部42の変換効率が良好となるレンジから選択された1の電力量、或いは変換効率が最高となる電力量を、基準出力電力量Emとして記憶する。実際には、交流直流変換部42の変換効率が最高となる値は、一般に電力量ではなく電力で示されている。このため、基準出力電力量Emは、例えば変換効率が最高となる出力電力と前記サンプリング周期に相当する時間との乗算値として記憶される。また、設定値記憶部12は、当該需要家におけるピークカットの実行基準となる設定電力量E0(ピークカットレベル)を記憶する。この他、設定値記憶部12は、二次電池20の上記特定充放電領域の値を記憶する。具体的には、当該二次電池20の電池寿命の長期化に寄与する充電上限値と、放電下限値の値を記憶する。充放電制御部14は、原則として、この設定値記憶部12に記憶されている特定充放電領域の範囲内で、二次電池20の充放電を行う。
【0041】
時間設定部13は、電力貯蔵装置1に対する各種の時間に関する設定値の入力を受け付ける。時間設定部13は、昼間電力料金の時間帯及び夜間電力料金の時間帯の設定、消費電力量E1を示すデータを取得する前記サンプリング周期の設定、更には、当該需要家における電力使用量がピークカットレベルを超過したか否かを判定する単位時間(通常は30分)の設定を受け付ける。
【0042】
充放電制御部14は、交流直流変換部42を通して二次電池20の充放電動作を制御する。充放電制御部14は、二次電池20の充電時に、商用電力系統2から供給される電力を用いて、定電力・定電流充電方式で二次電池20を充電させる。このとき、充放電制御部14は、交流直流変換部42に設定電力及び設定電流の指示信号を与える。また、充放電制御部14は、二次電池20の放電時に、二次電池20から放電される直流電力を、所定の設定電力および設定電流に変換するよう、交流直流変換部42に指示信号を与える。
【0043】
上記の基本機能に加え、充放電制御部14は、機能的に差分演算部141、差分積算部142、判定部143及び充放電タイミング設定部144を備えている。
【0044】
差分演算部141は、ピークカット時において、設定値記憶部12に記憶されている設定電力量E0と、負荷監視部11が取得する消費電力量E1とを、前記サンプリング周期毎に比較して超過電力量ΔEを算出する。また、差分演算部141は、二次電池20の充電時(ここでの充電は、昼間電力料金の時間帯における充電である)において、前記設定電力量E0と前記消費電力量E1とを、前記サンプリング周期毎に比較して使用可能電力量ΔCを算出する。
【0045】
差分積算部142は、差分演算部141が前記サンプリング周期毎に算出する超過電力量ΔE、又は使用可能電力量ΔCを積算する演算を行い、その積算値をサンプリング周期毎に更新する。他の実施形態では、差分積算部142は、前記サンプリング周期単位で、超過電力量ΔEを正値とし、使用可能電力量ΔCを負値として、超過電力量ΔE及び使用可能電力量ΔCの相殺積算値を求める演算を行う。
【0046】
判定部143は、設定値記憶部12のデータを参照し、差分積算部142が保持している前記積算値が、交流直流変換部42が高効率となる基準出力電力量Emと同等又は超過しているか否かを判定する。そして、前記積算値が基準出力電力量Emと同等又は超過しているとき、判定部143は充電又は放電の実行信号を出力する。他の実施形態では、判定部143は、前記相殺積算値が正値であって前記基準出力電力量Emと同等又は超過しているとき、放電の実行信号を出力する。また、前記相殺積算値が負値であってその絶対値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過しているとき、判定部143は充電の実行信号を出力する。
【0047】
充放電タイミング設定部144は、二次電池20に放電動作を行わせない時間帯と、二次電池20の放電動作を許容する時間帯とを設定する。本実施形態では、前者の時間帯は第1の時間帯(夜間電力料金の時間帯)であり、後者の時間帯は第2の時間帯(昼間電力料金の時間帯)である。換言すると、充放電タイミング設定部144は、第1及び第2の時間帯の双方を、充電動作を許容する時間帯として扱う。
【0048】
さらに、充放電タイミング設定部144は、第2の時間帯において放電又は充電の実行タイミングを決定する。ピークカット時において、判定部143が前記実行信号を出力したタイミング(超過電力量ΔEの積算値≧基準出力電力量Em)で、充放電タイミング設定部144は、二次電池20の放電動作を実行させる。すなわち、交流直流変換部42を、二次電池20から放電される直流電力を交流電力に変換して構内配線系統1Aに供給するインバータとして機能させる。また、充電時において、判定部143が前記実行信号を出力したタイミング(使用可能電力量ΔCの積算値≧基準出力電力量Em)で、充放電タイミング設定部144は、二次電池20の充電動作を実行させる。すなわち、交流直流変換部42を、商用電力系統2から供給される交流電力を直流電力に変換して二次電池20に供給する整流器として機能させる。
【0049】
以上の通り構成された電力貯蔵装置1によれば、第2の時間帯において、前記サンプリング周期毎に取得される超過電力量ΔE又は使用可能電力量ΔCに応じて二次電池20の放電又は充電動作が行われるのではなく、超過電力量ΔE又は使用可能電力量ΔCの前記サンプリング周期単位の積算値が前記基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングで、放電又は充電動作が実行される。従って、交流直流変換部42は常に出力効率が良好となるレンジで、交流電圧から直流電圧への変換、又は直流電圧から交流電圧への変換動作を行うことができ、電力変換ロスを抑制することができる。以下、上記二次電池20の充放電制御を、具体例を挙げてより詳細に説明する。
【0050】
図2は、需要家における電力需要の変位を示す負荷曲線D1の一例(上段)と、二次電池20の充放電制御例(下段)を示すタイムチャートである。
図2では、時刻T1〜T2が第1の時間帯(夜間電力料金の時間帯)、時刻T2〜T3が第2の時間帯(昼間電力料金の時間帯)、時刻T3以降が再び第1の時間帯となるケースを例示している。負荷曲線D1(負荷電力量の推移)は、第1の時間帯では少ないレベルであるが、第2の時間帯における時刻T21〜T22(午前中の負荷ピークに対応する第1のピークカットの時間帯R1)、及び時刻T23〜T24(午後の負荷ピークに対応する第2のピークカットの時間帯R2)に、ピークカットレベルとして設定されている電力量を超過している例を挙げている。
【0051】
このような負荷曲線D1に対して、二次電池20の充放電制御は、次の通り行われる。まず、第1の時間帯に二次電池20の充電動作が行われる。本実施形態では、第1の時間帯に二次電池20をあえて満充電状態(充電率=100%)とはせずに、予め設定された規定充電量(規定充電率Cx)まで充電する充電動作が行われる。また、第2の時間帯において、第1及び第2ピークカットの時間帯R1、R2の間の中間時間帯V(昼休み前後の時間帯)にも、二次電池20に対する充電動作が実行される。
【0052】
図2に示す電池充電率の変位線S1に基づいて二次電池20の充放電制御を具体的に説明する。第1の時間帯の間において、充放電制御部14は二次電池20に対する充電動作を行なう。この際、充放電制御部14は規定充電率Cxを上限として、二次電池20を充電する。規定充電率Cxへ到達した以降は待機状態となり、第2の時間帯を迎える。その後、第1のピークカットの時間帯R1が始まる時刻T21から、充放電制御部14は二次電池20の放電動作を実行させる。この放電動作は、第1のピークカットの時間帯R1が終了する時刻T22まで継続される。
【0053】
中間時間帯Vに入ると、充放電制御部14は二次電池20に充電動作を実行させる。この充電動作は、負荷3の電力消費量が再びピークカットレベルを超過する第2のピークカットの時間帯R2の開始時刻T23まで継続される。時刻T23から、充放電制御部14に、再び二次電池20の放電動作を実行させる。この放電動作は、第2のピークカットの時間帯R2が終了する時刻T24まで継続される。時刻T24以降は、二次電池20は待機状態とされ、第1の時間帯に至る。
【0054】
このように、第1の時間帯においては規定充電率Cxを上限として二次電池20を充電し、第2の時間帯において中間時間帯Vに二次電池20に充電動作を実行させる。従って、前記特定充放電領域の範囲内で二次電池20の充放電サイクルが実行されるので、当該二次電池20の長寿命化を図ることができる。
【0055】
図3は、負荷変動の一例を示す棒グラフであって、ピークカットの考え方を説明するための図である。負荷量は、
図3の例に示すように時々刻々と変化する。
図3の棒グラフは、サンプリング周期単位で負荷変動を表したものである。第1及び第2ピークカットの時間帯R1、R2以外の時間帯であっても、サンプリング周期単位ではピークカットレベルを超過するときがあり、第1及び第2ピークカットの時間帯R1、R2であっても常にピークカットレベルを超過している訳ではない。
【0056】
一般に需要家の電気料金は、基本料金に月毎の電力使用量を加算して算出される。前記基本料金は、過去1年間の受電電力量の最大値によって決定される。過去1年間に、1度でも大量の電力を消費した実績を残してしまうと、それを基準として契約電力が自動的に定められ、次年度の基本料金が決定される。当然、契約電力が高い程、前記基本料金は高くなる。従って、通常ピークカットレベルは、契約電力が現状からランクアップしないレベルに設定される。
【0057】
前記受電電力量は、サンプリング周期単位ではなく、所定の単位時間における消費電力量E1の平均値WAで評価される。現状で運用されている単位時間は、30分である。
図3では、13:00〜13:30の間において取得されたサンプリング周期単位の消費電力量E1の平均値WA、及び13:30〜14:00の間の平均値WAが、ピークカットレベルを下回り、14:00〜14:30の間の平均値WAが、ピークカットレベルを超過しているケースを例示している。この場合において、ピークカットを行わないならば、前記14:00〜14:30の間の実績によって、契約電力がランクアップしてしまうことがある。そこで、本実施形態の如き電力貯蔵装置1を用い、平均値WAがピークカットレベルを超過しないようにすることが、電気料金の予期せぬ上昇の防止に効果的となる。
【0058】
上記の仕組みから理解されるように、要は単位時間(30分)の平均値WAがピークカットレベルを超過さえしなければ、二次電池20の放電タイミングは、単位時間内で任意に設定できる自由度がある。本発明ではこの点に着目し、前記自由度を利用して、交流直流変換部42をなるべく高効率で動作させることができるタイミングで、二次電池20の放電又は充電動作を実行させる工夫をしている。以下、この点について説明する。
【0059】
<放電制御について>
まず、ピークカット時における従来の一般的な放電制御を説明する。
図4は、需要家における負荷変動の一例(上段)と、比較例に係る二次電池20の放電制御(下段)との関係を示すグラフである。ここで例示している負荷変動は、サンプリング周期T101における消費電力量E1がピークカットレベルを50kW超過(+50kW)し、同様にサンプリング周期T102では+30kW、サンプリング周期T103、T104、T107、T108では+20kW、サンプリング周期T110では+40kWであり、サンプリング周期T105、T106、T109ではピークカットレベルと同じ値である例を示している。
【0060】
このような負荷変動がある場合、
図4の下段に示しているように、各サンプリング周期における超過電力量に各々応じて、二次電池からの放電が実行される。すなわち、サンプリング周期T101=50kW、T102=30kW、T103=20kW、T104=20kW、T105=0kW、T106=0kW、T107=20kW、T108=20kW、T109=0kW及びT109=40kWの放電が実行される。このような放電制御によれば、サンプリング周期単位でピークカットレベルを超過する度に、これを埋め合わせるように二次電池から構内配線系統に向けて放電されるので、上記平均値WAがピークカットレベルを超過することを確実に防止することはできる。
【0061】
しかしながら、交流直流変換部42における、交流−直流変換効率の観点からは望ましいとは言えない。通常、交流−直流変換器には定格出力容量(電力)が設定されており、この定格出力容量、或いは定格出力容量とその7〜8割程度の出力容量との間で変換器を動作させて交流−直流変換を行わせると、最も変換ロスが少ない最大効率を得ることができるものが多い。ここでは簡単化のため、定格出力容量での変換時に最大効率が得られるものと仮定する。
図4に示す事例において、交流直流変換部42の定格容量が50kWであるとすると、最大効率での交流−直流変換を行わせることができるのはサンプリング周期T101における変換だけである。従って、全体として電力の変換ロスが大きくなってしまうという問題がある。
【0062】
図5は、需要家における負荷変動の一例と、本発明の実施形態に係る二次電池の放電制御との関係を示すグラフである。
図5の最上段に示している負荷変動例は、先に説明した
図4の上段の負荷変動例と同一である。この場合、本実施形態の制御部10の充放電制御部14は、次のような放電制御を行う。
【0063】
負荷監視部11がサンプリング周期T101における消費電力量E1を取得すると、差分演算部141は、設定値記憶部12に記憶されている設定電力量E0(ピークカットレベル)と、前記消費電力量E1とを比較し、両者の差分である超過電力量ΔEを求める。事例においてサンプリング周期T101では、消費電力量E1がピークカットレベルを50kW超過しているので、差分演算部141は超過電力量ΔE=「+50kW」を導出する。差分積算部142は、この「+50kW」という値を取得し、超過電力量ΔEの積算値カウンタを「+50kW」に更新する(但し、T101の直前の積算値カウンタ=0とする)。
【0064】
続いて判定部143が、設定値記憶部12に記憶されている基準出力電力量Em(交流直流変換部42の定格容量;本実施形態では50kWとする)と、差分積算部142が保持している前記積算値カウンタの値とを比較する。ここでは、積算値カウンタ=50kW、基準出力電力量Em=50kWであるので、判定部143は放電動作の実行信号を出力する。これを受けて充放電タイミング設定部144は、サンプリング周期T101において二次電池20の放電動作を実行させる。すなわち、交流直流変換部42を、二次電池20から放電される直流電力を交流電力に変換して構内配線系統1Aに供給するインバータとして機能させる。このとき、交流直流変換部42は定格容量の50kWで直流から交流への変換動作を行うので、変換ロスは最小となる。この時点で、差分積算部142の積算値カウンタがリセットされる。
【0065】
次に、サンプリング周期T102では、消費電力量E1がピークカットレベルを30kW超過しているので、差分演算部141は超過電力量ΔE=「+30kW」を導出する。差分積算部142は、積算値カウンタを「+30kW」に更新する。この段階では積算値カウンタの値が基準出力電力量Em=50kWよりも小さいので、判定部143は放電動作の実行信号を出力しない。従って、充放電タイミング設定部144は、サンプリング周期T102において二次電池20の放電動作を実行させない。ここが従来技術と大きく異なる点である。
【0066】
サンプリング周期T103では、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW超過しているので、差分演算部141は超過電力量ΔE=「+20kW」を導出する。差分積算部142は、この「+20kW」を加算して積算値カウンタを「+50kW」に更新する。積算値カウンタの値が基準出力電力量Emと同一となっているので、判定部143は放電動作の実行信号を出力する。これを受けて、充放電タイミング設定部144は、サンプリング周期T103において二次電池20の放電動作を実行させる。この放電動作においても、交流直流変換部42は定格容量で変換動作を行うことができる。この変換動作に伴い、差分積算部142の積算値カウンタがリセット(50kW分のリセット)される。
【0067】
サンプリング周期T104でも、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW超過しているので、差分積算部142は、超過電力量ΔE=「+20kW」を差分演算部141から得て、積算値カウンタを「+20kW」に更新する。しかし、これに続くサンプリング周期T105、T106では、消費電力量E1がピークカットレベルと同じであるため、超過電力量ΔEはゼロとなる。従って差分積算部142は、積算値カウンタを「+20kW」のままに維持する。サンプリング周期T107では、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW超過しており、差分演算部141は超過電力量ΔE=「+20kW」を導出する。差分積算部142は、この「+20kW」を加算して積算値カウンタを「+40kW」に更新する。この段階でも、積算値カウンタは基準出力電力量Emの50kWに到達していないので、判定部143は放電動作の実行信号を出力しない。
【0068】
サンプリング周期T108では、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW超過しており、差分積算部142は、この「+20kW」を加算して積算値カウンタを「+60kW」に更新する。判定部143は、積算値カウンタが基準出力電力量Emを超過したことになるので、放電動作の実行信号を出力する。これを受けて、サンプリング周期T108において二次電池20の放電動作が実行される。この放電動作に伴い、差分積算部142の積算値カウンタが50kW分だけリセットされ、積算値カウンタ=10kWに更新される。
【0069】
サンプリング周期T109では、消費電力量E1がピークカットレベルを超過していないため、積算値カウンタ=10kWに維持される。これに続くサンプリング周期T110では、消費電力量E1がピークカットレベルを40kW超過しており、差分積算部142は、この「+40kW」を加算して積算値カウンタを「+50kW」に更新する。従って、判定部143は、放電動作の実行信号を出力し、サンプリング周期T110において二次電池20の放電動作が実行される。
【0070】
以上の通り、本実施形態によれば、サンプリング周期毎に取得される超過電力量ΔEに応じて二次電池20の放電動作(交流直流変換部42の第2変換動作)が行われるのではなく、超過電力量ΔEのサンプリング周期単位の積算値カウンタが基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングで、二次電池20の放電動作が実行される。従って、交流直流変換部42は常に出力効率が最良となる出力で、直流電圧を交流電圧に変換する変換動作を行うことができ、電力変換ロスを抑制することができる。
【0071】
<充電制御について>
次に、第2の時間帯(昼間電力料金の時間帯)において、例えば中間時間帯Vに実行される充電動作の制御例について説明する。まず、一般的に想定される充電制御について説明する。
図6は、需要家における負荷変動の一例(上段)と、比較例に係る二次電池20の充電制御(下段)との関係を示すグラフである。ここで例示している負荷変動は、サンプリング周期T201における消費電力量E1がピークカットレベルと同等、サンプリング周期T202では−20kW、サンプリング周期T203及びT204では−30kW、サンプリング周期T205及びT206ではピークカットレベルと同等、サンプリング周期T207では−10kW、サンプリング周期T208では−20kW、サンプリング周期T209では0kW、サンプリング周期T210では−40kWとなっている例を示している。
【0072】
一般的に想定される充電制御では、このような負荷変動がある場合、
図6の下段に示しているように、各サンプリング周期における使用可能電力量ΔCに各々応じて、二次電池に対する充電が実行される。使用可能電力量ΔCとは、消費電力量E1とピークカットレベルとの差分である。この例では、サンプリング周期T202=20kW、T203及びT204=30kW、T205及びT206=0kW、T207=10kW、T208=20kW、T209=0kW、T210=40kWの充電が実行される。このような充電制御によれば、サンプリング周期単位で使用可能電力量ΔCに応じた分だけ二次電池に充電されるので、余裕電力を最大限に活用して充電動作を行わせることができる。
【0073】
しかしながら、交流直流変換部42における、交流−直流変換効率の観点からは望ましいとは言えない。先に述べた放電と同様に、交流直流変換部42の効率を考慮していないからである。
図6に示す事例において、交流直流変換部42の定格容量が50kWであるとすると、最大効率での交流−直流変換を行わせることができるタイミングは存在しない。従って、電力の変換ロスが大きくなってしまうという問題がある。
【0074】
図7は、需要家における負荷変動の一例と、本発明の実施形態に係る二次電池の充電制御との関係を示すグラフである。
図7の最上段に示している負荷変動例は、先に説明した
図6の上段の負荷変動例と同一である。この場合、本実施形態の制御部10の充放電制御部14は、次のような充電制御を行う。
【0075】
負荷監視部11がサンプリング周期T201における消費電力量E1を取得すると、差分演算部141は、設定値記憶部12に記憶されている設定電力量E0(ピークカットレベル)と、前記消費電力量E1とを比較し、両者の差分である使用可能電力量ΔCを求める。事例においてサンプリング周期T201では、消費電力量E1がピークカットレベルと同じであるので、差分演算部141は使用可能電力量ΔC=「0kW」を導出する。差分積算部142は、この「0kW」という値を取得し、使用可能電力量ΔCの積算値カウンタに加算して更新するのであるが、この場合は結果的に積算値カウンタの値は「0kW」となる(但し、T201の直前の積算値カウンタ=0とする)。当然、判定部143も、充電動作の実行信号を出力しない。
【0076】
次に、サンプリング周期T202では、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW下回っているので、差分演算部141は使用可能電力量ΔC=「−20kW」を導出する。差分積算部142は、差分の絶対値加算を行って、積算値カウンタを「+20kW」に更新する。この段階でも、積算値カウンタの値が基準出力電力量Em=50kWよりも小さいので、判定部143は充電動作の実行信号を出力しない。従って、充放電タイミング設定部144は、サンプリング周期T202において二次電池20の充電動作を実行させない。
【0077】
サンプリング周期T203では、消費電力量E1がピークカットレベルを30kW下回っているので、差分演算部141は使用可能電力量ΔC=「−20kW」を導出する。差分積算部142は、この「−20kW」を絶対値加算して積算値カウンタを「+50kW」に更新する。積算値カウンタの値が基準出力電力量Emと同一となっているので、判定部143は充電動作の実行信号を出力する。これを受けて、充放電タイミング設定部144は、サンプリング周期T203において二次電池20の充電動作を実行させる。すなわち、交流直流変換部42を、商用電力系統2から供給される交流電力を直流電力に変換して二次電池20に供給する整流器として機能させる。このとき、交流直流変換部42は定格容量で交流から直流への変換動作を行うので、変換ロスは最小となる。この時点で、差分積算部142の積算値カウンタがリセットされる。
【0078】
サンプリング周期T204でも、消費電力量E1がピークカットレベルを30kW下回っているので、差分積算部142は、使用可能電力量ΔC=「−30kW」を差分演算部141から得て、積算値カウンタを「+30kW」に更新する。しかし、これに続くサンプリング周期T205、T206では、消費電力量E1がピークカットレベルと同等であるため、使用可能電力量ΔCは発生していない。従って差分積算部142は、積算値カウンタを「+30kW」のままに維持する。サンプリング周期T207では、消費電力量E1がピークカットレベルを10kW下回っており、差分演算部141は使用可能電力量ΔC=「−10kW」を導出する。差分積算部142は、この「−10kW」を絶対値加算して積算値カウンタを「+40kW」に更新する。この段階でも、積算値カウンタは基準出力電力量Emの50kWに到達していないので、判定部143は充電動作の実行信号を出力しない。
【0079】
サンプリング周期T208では、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW下回っており、差分積算部142は、この「+20kW」を加算して積算値カウンタを「+60kW」に更新する。判定部143は、積算値カウンタが基準出力電力量Emを超過したことになるので、充電動作の実行信号を出力する。これを受けて、サンプリング周期T208において二次電池20の充電動作が実行される。この充電動作に伴い、差分積算部142の積算値カウンタが50kW分だけリセットされ、積算値カウンタ=10kWに更新される。
【0080】
サンプリング周期T209では、消費電力量E1がピークカットレベルと同等であるので、積算値カウンタ=10kWに維持される。これに続くサンプリング周期T210では、消費電力量E1がピークカットレベルを40kW下回っており、差分積算部142は、この「−40kW」を絶対値加算して積算値カウンタを「+50kW」に更新する。従って、判定部143は、充電動作の実行信号を出力し、サンプリング周期T210において二次電池20の充電動作が実行される。
【0081】
以上の通り、本実施形態によれば、サンプリング周期毎に取得される使用可能電力量ΔCに応じて二次電池20の充電動作が行われるのではなく、使用可能電力量ΔCのサンプリング周期単位の積算値が基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングで、二次電池20の充電動作が実行される。従って、交流直流変換部42は常に出力効率が最良となる出力で、交流電圧を直流電圧に変換する変換動作を行うことができ、電力変換ロスを抑制することができる。
【0082】
<相殺積算値を用いた充放電制御について>
続いて、消費電力量E1が設定電力量E0を超過したり、下回ったりするような負荷変動がサンプリング周期単位で屡々生じるような負荷状況に好適な実施形態について説明する。
図8は、需要家における負荷変動の一例と、本発明の他の実施形態に係る二次電池の充電制御との関係を示すグラフである。
図8の最上段に示している負荷変動例は、需要家における負荷変動の一例であって、サンプリング周期単位の消費電力量E1がピークカットレベルを跨いで変動している例である。この場合、制御部10の充放電制御部14は、超過電力量ΔEと使用可能電力量ΔCとをサンプリング周期毎に相殺する次のような充放電制御を行う。
【0083】
負荷監視部11がサンプリング周期T301における消費電力量E1を取得すると、差分演算部141は、設定値記憶部12に記憶されている設定電力量E0(ピークカットレベル)と、前記消費電力量E1とを比較し、両者の差分を求める。サンプリング周期T301では、消費電力量E1がピークカットレベルを50kW超過しているので、差分演算部141は超過電力量ΔE=「+50kW」を導出する。差分積算部142は、この「+50kW」という値(正値)を取得し、相殺積算値カウンタを「+50kW」に更新する(但し、T301の直前の積算値カウンタ=0とする)。ここでは、積算値カウンタ=50kW、基準出力電力量Em=50kWであるので(相殺積算値が正値であって基準出力電力量Emと同等)、判定部143は放電動作の実行信号を出力する。これを受けて充放電タイミング設定部144は、サンプリング周期T301において二次電池20に放電動作を実行させる。その後、差分積算部142の相殺積算値カウンタがリセットされる。
【0084】
次に、サンプリング周期T302では、消費電力量E1がピークカットレベルを30kW超過している。差分演算部141は超過電力量ΔE=「+30kW」を導出し、差分積算部142は、相殺積算値カウンタを「+30kW」に更新する。続くサンプリング周期T303では、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW超過している。従って、差分演算部141は超過電力量ΔE=「+20kW」を導出し、差分積算部142は、この「+20kW」を加算して積算値カウンタを「+50kW」に更新する。これを受けて、判定部143は放電動作の実行信号を出力し、充放電タイミング設定部144は、サンプリング周期T303において二次電池20の放電動作を実行させる。その後、差分積算部142の相殺積算値カウンタがリセットされる。
【0085】
サンプリング周期T304でも、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW超過しているので、差分積算部142の相殺積算値カウンタは「+20kW」となる。しかし、これに続くサンプリング周期T305では、消費電力量E1がピークカットレベルを10kW下回っているので、差分演算部141は使用可能電力量ΔC=「−10kW」という値(負値)を導出する。差分積算部142は、現状の相殺積算値カウンタの値「+20kW」に「−10kW」を加算する演算を行って、相殺積算値カウンタを「+10kW」に更新する。サンプリング周期T306においては、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW下回っている。従って、使用可能電力量ΔC=「−20kW」となり、差分積算部142は、相殺積算値カウンタを「−10kW」に更新する。
【0086】
サンプリング周期T307、T308では、超過電力量ΔE=「+30kW」、「+20kW」がそれぞれ導出されるので、差分積算部142は、現状の相殺積算値カウンタの値「−10kW」に、順次「+30kW」、「+20kW」を加算する演算を行って、相殺積算値カウンタを「+40kW」に更新する。一方、サンプリング周期T309では、使用可能電力量ΔC=「−10kW」が導出されるので、相殺積算値カウンタの値は「+30kW」に減少することになる。
【0087】
次のサンプリング周期T310では、消費電力量E1が大きく上昇し、ピークカットレベルを40kW上回っている。このため、超過電力量ΔE=「+40kW」が導出され、相殺積算値カウンタの値は一気に「+70kW」に増加する。これを受けて、判定部143は放電動作の実行信号を出力し、充放電タイミング設定部144は、サンプリング周期T310において二次電池20の放電動作を実行させる。その後、差分積算部142の相殺積算値カウンタが「+50kW」分だけリセットされる。サンプリング周期T311では、消費電力量E1がピークカットレベルと同じであるので、積算値カウンタの値は「+20kW」となる。
【0088】
図8では、超過電力量ΔEの方が比較的多い負荷パターンを例示したため、二次電池20の放電動作だけが実行されるケースとなっている。しかし、サンプリング周期において使用可能電力量ΔCが比較的多く発生する負荷パターンでは、二次電池20の充電動作も実行される。例えば、サンプリング周期T307、T308で各々使用可能電力量ΔC=「−20kW」が導出された場合は、サンプリング周期T308において差分積算部142の積算値カウンタが「−50kW」となる(相殺積算値が負値であってその絶対値が基準出力電力量Emと同等)。この場合、サンプリング周期T308において、二次電池20の充電動作も実行されることになる。
【0089】
<相殺積算値を用いた充放電制御の他の実施形態>
続いて、相殺積算値を用いた充放電制御についての他の実施形態を、
図9に基づいて説明する。二次電池20は、常に充電が必要な状態であるとは限らない。例えば、二次電池20が満充電乃至はこれに近い状態であって、現状以上の充電が不要な場合がある。この場合、
図8に示した実施形態のように、差分積算部142の積算値カウンタ(相殺積算値)が負値であってその絶対値が基準出力電力量Emと同等に至った場合に必ず二次電池20の充電動作を実行させるシーケンスとすると、無益な充電動作を行ってしまうことになる。ここでは、二次電池20への充電が不要な場合における、望ましい実施形態を例示する。
【0090】
図9に示す実施形態は、サンプリング周期単位で、超過電力量ΔEを正値とし、使用可能電力量ΔCを負値として、超過電力量ΔE及び使用可能電力量ΔCの相殺積算値を求める点、及び、前記相殺積算値が正値であって基準出力電力量Emと同等又は超過した場合に、二次電池20の放電動作を実行させる点では、
図8に示す実施形態と同じである。しかし、
図9に示す実施形態は、前記相殺積算値が負値であるときには、その絶対値が基準出力電力量Emと同等又は超過した場合であっても、二次電池20の充電動作を実行させることなく、前記相殺積算値を求める演算を継続する点で、
図8に示す実施形態とは異なる。
【0091】
図9は、需要家における負荷変動の一例と、本実施形態に係る二次電池の充電制御との関係を示すグラフである。
図9の最上段に示している負荷変動例は、需要家における負荷変動の一例であって、サンプリング周期単位の消費電力量E1がピークカットレベルを跨いで変動している例である。ここでは、制御部10の充放電制御部14が、二次電池20の充電状態を検知する機能及び充電の要否を判定する機能を有し、当該充放電制御部14が二次電池20への充電が不要な状態であると判定している場合を想定する。この場合、充放電制御部14は、次のような充放電制御を行う。
【0092】
負荷監視部11がサンプリング周期T401における消費電力量E1を取得すると、差分演算部141は、設定値記憶部12に記憶されている設定電力量E0(ピークカットレベル)と、前記消費電力量E1とを比較し、両者の差分を求める。サンプリング周期T401では、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW下回っているので、差分演算部141は使用可能電力量ΔC=「−20kW」を導出する。差分積算部142は、この「−20kW」という値(負値)を取得し、相殺積算値カウンタを「−20kW」に更新する(但し、T401の直前の積算値カウンタ=0とする)。
【0093】
次に、サンプリング周期T402でも、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW下回っている。差分演算部141は超過電力量ΔE=「−20kW」を導出し、差分積算部142は、相殺積算値カウンタを「−40kW」に更新する。さらに、サンプリング周期T403でも、消費電力量E1がピークカットレベルを20kW下回っているため、差分積算部142は、相殺積算値カウンタを「−60kW」に更新する。この相殺積算値カウンタの値の絶対値は、基準出力電力量Em=50kWを超過している。しかしながら、本実施形態では、充放電制御部14が二次電池20への充電不要と判定しているので、判定部143は充電動作の実行信号を出力しない。従って、サンプリング周期T403において二次電池20の充電動作は実行されない。ここが、
図8に示す実施形態と相違する点である。本実施形態では、このタイミングで充電動作を行わないことで、相殺積算値カウンタに、正値側の超過電力量ΔEを相殺する余力が蓄えられることになる。
【0094】
サンプリング周期T404では、消費電力量E1がピークカットレベルと同じであるので、差分積算部142の相殺積算値カウンタは「−60kW」のままとなる。続くサンプリング周期T405、T406では、消費電力量E1がピークカットレベルをそれぞれ10kW、30kWずつ超過している。差分演算部141は、それぞれ超過電力量ΔE=「+10kW」、「+30kW」を導出し、これを受けて差分積算部142は、相殺積算値カウンタを「−50kW」、「−20kW」に順次更新する。サンプリング周期T407では、消費電力量E1がピークカットレベルを40kW超過しているので、差分積算部142の相殺積算値カウンタは「+20kW」となり、相殺積算値が正値になる。
【0095】
サンプリング周期T408でも、消費電力量E1がピークカットレベルを40kW超過しているので、差分積算部142の相殺積算値カウンタは「+60kW」となる。この相殺積算値カウンタの値は、基準出力電力量Em=50kWの値を超過している。従って、判定部143は放電動作の実行信号を出力する。これを受けて充放電タイミング設定部144は、サンプリング周期T408において二次電池20に放電動作を実行させる。その後、相殺積算値が「+50kW」分だけリセットされ、差分積算部142の相殺積算値カウンタは「+10kW」となる。
【0096】
サンプリング周期T409、T410では、超過電力量ΔE=「+30kW」、「+20kW」がそれぞれ導出されるので、差分積算部142は相殺積算値カウンタを「+40kW」、「+60kW」に順次更新する。サンプリング周期T410において、相殺積算値カウンタの値は、基準出力電力量Emの値を超過しているので、判定部143は放電動作の実行信号を出力する。これを受けて充放電タイミング設定部144は、サンプリング周期T410においても、二次電池20に放電動作を実行させる。
【0097】
以上の通り、
図9に示す実施形態では、相殺積算値が正値において、基準出力電力量Emと同等又は超過した場合には、二次電池20の放電動作が実行される一方で、相殺積算値が負値であるときは、たとえその絶対値が基準出力電力量Emと同等又は超過するに至っても、当該負値の相殺積算値が保持され、二次電池20の充電動作が実行されない。このように、前記負値の相殺積算値が増加しても、二次電池20の充電動作を実行させずに当該相殺積算値を求める演算を継続させることで、その後に正値側の超過電力量ΔEが発生した場合における相殺の余裕度を増やすことができる。
【0098】
具体的には、サンプリング周期T403において充電動作が行われないので、この時点の相殺積算値カウンタは「−60kW」に維持される。
図8の実施形態では、二次電池20の充電要否に拘わらず充電動作が行われるので、この時点の相殺積算値カウンタは「−10kW」に減少する。このため、その後に発生する超過電力量ΔEを相殺する余裕度が低下する。これに対し、
図9の実施形態では、負値の相殺積算値が積算されるので、超過電力量ΔEを相殺する余裕度が大きくなる。従って、二次電池20からの放電量を減らすことができ、その後のピークカットのために電池容量を温存することができる。
【0099】
<変形実施形態>
上述の実施形態では超過電力量ΔEの積算値が、前記基準出力電力量Emと同等又は超過したタイミングを待つ方式を採用する。ここで、受電電力量の評価値は、上述の通り30分の単位時間における消費電力量E1の平均値で決定される。従って、前記タイミングを待つ間に1つの単位時間の終了時刻が到来し、結果的に前記単位時間における前記消費電力量E1の評価値が契約電力を超過してしまうことが起こり得る。以下、この問題を解消できる放電制御の変形実施形態を説明する。
【0100】
図10は、需要家における負荷変動の他の例と、本発明の変形実施形態に係る二次電池の放電制御を示すタイムチャートである。ここでは、1つの単位時間として、15:00(時刻t1)〜15:30(時刻t2)の間における負荷変動を示している。変形実施形態では、この単位時間を2つの時間帯、すなわちメイン時間帯TAと終盤時間帯TBに区分し、メイン時間帯TAでは上述の積算値カウンタを用いた放電制御を行い、終盤時間帯TBでは超過電力量ΔEに応じてサンプリング周期単位で放電動作を実行させる。
【0101】
メイン時間帯TAは、1つの単位時間の開始時刻から該単位時間の終盤に近い時刻までの間の時間帯に設定される。終盤時間帯TBは、メイン時間帯TAに続いて、前記単位時間の終盤に近い時間帯に設定される。
図10の例では、15:00〜15:25がメイン時間帯TA、15:25〜15:30が終盤時間帯TBであり、15:25が放電制御の方式が変更となる制御変更時刻tcである。この制御変更時刻tcは、時間設定部13に設定される。
【0102】
メイン時間帯TAの25分間においては、先の実施形態で説明した通り、サンプリング周期ごとに超過電力量ΔEを求め、超過電力量ΔEの積算値が交流直流変換部42の効率が最大となる基準出力電力量Emに到達したときに(図中のTA1〜TA5の各サンプリング周期)、二次電池20の放電動作が実行される。これに対し、制御変更時刻tc以降の終盤時間帯TBにおける5分間では、超過電力量ΔEが生じる度に(図中のTB1〜TB5の各サンプリング周期)、そのサンプリング周期において二次電池20の放電動作が実行される。
【0103】
この変形実施形態によれば、終盤時間帯TBでは交流直流変換部42の効率が落ちるものの、当該終盤時間帯TBの間は、超過電力量ΔEに応じてサンプリング周期単位で確実に二次電池20の放電動作が実行される。つまり、超過電力量ΔEに相当する放電が行われずに積算されることがないので、消費電力量E1の平均値が契約電力を超過することを防止できる。なお、制御変更時刻tcの到来時点において、積算値カウンタに残存している電力量に相当する放電を行わせ、終盤時間帯TBの開始時点において積算値カウンタをリセットすることが望ましい。これにより、消費電力量E1の平均値が契約電力を超過することを確実に防止できる。
【0104】
上記変形実施形態に係る放電制御の考え方は、充電制御にも適用可能である。この場合、
図10の例と同様に、例えば15:00〜15:25をメイン時間帯TA、15:25〜15:30を終盤時間帯TBとし、15:25を充電制御の方式が変更となる制御変更時刻tcとする。そして、メイン時間帯TAでは上述の積算値カウンタを用いた充電制御を行い、終盤時間帯TBでは使用可能電力量ΔCに応じてサンプリング周期単位で充電動作を実行させる。
【0105】
この場合、充放電制御部14は、前記制御変更時刻tcの到来時点(15:25)において差分積算部142の積算値カウンタに前記使用可能電力量ΔCの絶対値の積算値が残存しているとき、当該残存している積算値を所定のメモリに記憶し、前記時刻t2の到来時点(15:30)において、前記記憶させた積算値の電力量に相当する分だけ充電動作を実行させることが望ましい。このような制御を行うことで、前記制御変更時刻tcの到来時点で残存している充電動作の余裕分を、前記時刻t2の到来時点において使い切ることができる。
【0106】
さらに、上述の変形実施形態に係る放電制御及び充電制御の考え方は、
図8及び
図9に示した相殺積算値を用いた充放電制御にも適用できる。この場合、
図10の例と同様に、例えば15:00〜15:25をメイン時間帯TA、15:25〜15:30を終盤時間帯TBとし、15:25を充電制御の方式が変更となる制御変更時刻tcとする。そして、メイン時間帯TAでは上述の相殺積算値カウンタを用いた充放電制御を行い、終盤時間帯TBでは超過電力量ΔE又は使用可能電力量ΔCに応じてサンプリング周期単位で放電又は充電動作を実行させる。
【0107】
なお、制御変更時刻tcの到来時点において差分積算部142の相殺積算値カウンタに正値が残存しているとき、当該残存している前記相殺積算値の電力量に相当する分だけ、二次電池20に放電動作を実行させる。これにより、消費電力量E1の平均値が契約電力を超過することを確実に防止できる。また、前記時刻tc〜前記時刻t2の間においても、使用可能電力量ΔCだけは積算を行い、積算値カウンタが「−50kW」に到達した時点で、充電動作を実行させるようにしても良い。
【0108】
この場合、前記時刻t2の到来時点(15:30)において、使用可能電力量ΔCの積算値が残存しているときは、その積算値の電力量に相当する分だけ充電動作を実行させることが望ましい。なお、この時刻t2において、超過電力量ΔEが存在する場合は、使用可能電力量ΔCの残存値と超過電力量ΔEとの残存値とを相殺し、その相殺値が正値であれば二次電池20に放電動作を実行させ、負値であれば二次電池20に充電動作を実行させることが望ましい。この実施形態によれば、時刻t2の時点において放電又は充電の余裕分を完全に精算できる利点がある。
【0109】
以上説明した通り、本発明に係る電力貯蔵装置1よれば、直流電力と交流電力との間の相互変換を行う交流直流変換部42を用いる電力貯蔵装置1において、交流直流変換部42で不可避的に発生する電力変換ロスを可及的に抑制することができる。従って、エネルギーロスの少ない電力貯蔵装置1を提供することができる。