特許第6178180号(P6178180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178180
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】油性マーキングペン用インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20170731BHJP
【FI】
   C09D11/16
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-189217(P2013-189217)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-54922(P2015-54922A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100079120
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】北口 貴之
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−221479(JP,A)
【文献】 特開2002−205486(JP,A)
【文献】 特開平09−143417(JP,A)
【文献】 特開平11−021492(JP,A)
【文献】 特開平11−029733(JP,A)
【文献】 特開平11−020376(JP,A)
【文献】 特開昭63−317571(JP,A)
【文献】 特開昭62−091574(JP,A)
【文献】 特開平11−043635(JP,A)
【文献】 特開昭58−025375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤、極性有機溶剤、油溶性樹脂、ポリオキシプロピレン変性シリコーン及びパーフルオロアルキル基を有するオリゴマーからなるノニオン界面活性剤を含む油性マーキングペン用インキ組成物であって、上記ポリオキシプロピレン変性シリコーンを0.1〜3.0重量%の範囲で含むと共に、上記パーフルオロアルキル基を有するオリゴマーからなるノニオン界面活性剤を2.5〜7.5重量%の範囲で含む油性マーキングペン用インキ組成物
【請求項2】
上記極性有機溶剤がアルコール類とグリコールエーテル類から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の油性マーキングペン用インキ組成物。
【請求項3】
上記アルコール類が炭素数1〜4の脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の油性マーキングペン用インキ組成物。
【請求項4】
上記グリコールエーテル類がプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の油性マーキングペン用インキ組成物。
【請求項5】
極性有機溶剤がエタノールである請求項1に記載の油性マーキングペン用インキ組成物。
【請求項6】
油溶性樹脂がケトン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ロジン樹脂、スチレン−有機酸共重合体及びポリアクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の油性マーキングペン用インキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油性マーキングペン用インキ組成物に関し、詳しくは、樹脂からなる筆記面に接着性にすぐれる筆跡を形成することができるのみならず、クラフト粘着テープの表面にも接着性よく筆記することができる油性マーキングペン用インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クラフト粘着テープの表面は、シリコーン被膜からなる剥離層が設けられているために、界面張力が小さく、濡れ性が悪いので、着色剤と樹脂と有機溶媒を主成分とする従来の油性マーキングペン用インキ組成物によっては、クラフト粘着テープ表面に筆記しようとしても、インキ組成物が弾かれるので、筆記することができない。
【0003】
そこで、従来、そのような油性マーキングペン用インキ組成物にフッ素系界面活性剤とシランカップリング剤の組み合わせを配合して、クラフト粘着テープ表面に筆記することができるようにした油性マーキングペン用インキ組成物が既に知られている(特許文献1参照)。
【0004】
上記油性マーキングペン用インキ組成物において、有機溶媒は、従来の油性マーキングペン用インキ組成物におけるように、非極性有機溶媒、例えば、トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素溶媒を主成分とするものが用いられていたが、近年、安全性等の面から、油性マーキングペン用インキ組成物における有機溶媒は、アルコール類やグリコールエーテル類のような極性有機溶媒に移行している。
【0005】
しかし、反面、そのように極性有機溶媒を用いる油性マーキングペン用インキ組成物は、極性有機溶媒の使用に由来して、ここにおいても、例えば、上述したような樹脂からなる筆記面に筆記した筆跡が接着性に劣るという問題がある。
【0006】
そこで、着色剤、樹脂及び極性有機溶媒を主成分とする油性マーキングペン用インキ組成物にポリオキシプロピレン変性シリコーンを配合することによって、樹脂からなる筆記面への筆跡の接着性を改善し得ることが提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
しかし、極性有機溶媒を溶媒とする油性マーキングペン用インキ組成物であって、樹脂からなる筆記面に接着性にすぐれる筆跡を形成することができるのみならず、クラフト粘着テープの表面にもインキ組成物が弾かれず、しかも、接着にすぐれる筆跡を形成することができる油性マーキングペン用インキ組成物は、従来、知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−25375号公報
【特許文献2】特開平11−21492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の油性マーキングペン用インキ組成物における上述した問題を解決するためになされたものであって、極性有機溶媒を溶媒とする油性マーキングペン用インキ組成物であって、樹脂からなる筆記面に接着性にすぐれる筆跡を形成することができるのみならず、クラフト粘着テープの表面にもよく筆記することができ、しかも、その筆跡が接着性にすぐれる油性マーキングペン用インキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、着色剤、極性有機溶剤、油溶性樹脂、ポリオキシプロピレン変性シリコーン及びパーフルオロアルキル基を有するオリゴマーからなるノニオン界面活性剤を含む油性マーキングペン用インキ組成物が提供される。
【0011】
以下、本発明においては、上記パーフルオロアルキル基を有するオリゴマーからなるノニオン界面活性剤をパーフルオロアルキル界面活性剤という。
【0012】
特に、本発明においては、油性マーキングペン用インキ組成物は、上記ポリオキシプロピレン変性シリコーンを0.1〜3.0重量%の範囲で含むと共に、上記パーフルオロアルキル基を有するオリゴマーからなるノニオン界面活性剤を2.5〜7.5重量%の範囲で含むことが好ましい。
【0013】
更に、本発明においては、上記極性有機溶剤はアルコール類とグリコールエーテル類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
また、上記油溶性樹脂は、ケトン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ロジン樹脂、スチレン−有機酸共重合体及びポリアクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物は、上述したように、着色剤、極性有機溶剤、油溶性樹脂、ポリオキシプロピレン変性シリコーン及びパーフルオロアルキル界面活性剤を含み、ここに、界面活性剤として、パーフルオロアルキル界面活性剤とポリオキシプロピレン変性シリコーンの組み合わせを用いるので、極性有機溶媒を溶媒としながら、樹脂からなる筆記面に接着性にすぐれる筆跡を形成することができると共に、クラフト粘着テープの表面にもよく筆記することができ、しかも、その筆跡は接着性にすぐれている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(着色剤)
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物において、着色剤は特に限定されるものではないが、油溶性染料が好ましく用いられる。しかし、必要に応じて、顔料も用いられる。上記油溶性染料としては、油溶性黒色ニグロシン染料、油溶性黒色染料、油溶性赤色染料、油溶性青色染料、油溶性黄色染料等を挙げることができる。これらの着色剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0017】
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物は、着色剤を1〜15重量%、好ましくは、3〜12重量%の範囲で含む。インキ組成物における着色剤の割合が多すぎるときは、得られるインキ組成物の粘度が高く、筆記性が低下する。しかし、インキ組成物における着色剤の割合が少なすぎるときは、筆跡の濃度が低すぎて、実用性に欠ける。
【0018】
(極性有機溶媒)
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物において、極性有機溶媒としては、アルコール類とグリコールエーテル類から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。上記アルコール類としては、特に、炭素数1〜4の脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1種、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等を挙げることができる。
【0019】
グリコールエーテル類としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
【0020】
本発明においては、これらのなかでも、特に好ましいグリコールエーテル類として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。これらのグリコールエーテル類も、単独で、又は他の極性有機溶媒と組み合わせて用いられる。
【0021】
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物は、このような極性有機溶剤を50〜96重量%、好ましくは、60〜90重量%の範囲で含む。インキ組成物における極性有機溶媒の割合が多すぎるときは、筆跡の濃度が低下する。一方、インキ組成物における極性有機溶媒の割合が少なすぎるときは、得られるインキ組成物の粘度が高く、筆記性に劣る。
【0022】
(油溶性樹脂)
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物において用いる油溶性樹脂は、上記極性有機溶媒に溶解し得るものであれば、特に、限定されない。従って、このような油溶性樹脂として、例えば、ケトン樹脂、フェノール樹脂(例えば、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等)、キシレン樹脂(例えば、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、ロジン変性キシレン樹脂等)、ロジン樹脂、スチレン−有機酸共重合体(例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等)、ポリアクリル酸エステル等が挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0023】
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物は、上述した油溶性樹脂を5〜25重量%、好ましくは、10〜20重量%の範囲で含む。インキ組成物における油溶性樹脂の割合が多すぎるときは、得られるインキ組成物の粘度が高く、筆記性が低下する。一方、インキ組成物における樹脂の割合が少なすぎるときは、筆記面に対する筆跡の定着性が悪い。
【0024】
(ポリオキシプロピレン変性シリコーン)
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物は、界面活性剤として、ポリオキシプロピレン変性シリコーンとパーフルオロアルキル界面活性剤の組み合わせを含む点に重要な特徴を有する。
【0025】
ポリエーテル変性シリコーンは、そのポリエーテル鎖がポリオキシエチレン鎖及び/又はポリオキシプロピレン鎖からなるが、本発明においては、ポリエーテル鎖がポリオキシエチレン鎖よりも疎水性の高いポリオキシプロピレン鎖のみからなるポリオキシプロピレン変性シリコーンが用いられる。
【0026】
上述したようなポリオキシプロピレン変性シリコーンとしては、市販品を用いることができる。そのような市販品としては、例えば、東芝シリコーン(株)製「TSF4460」、エボニックデグサジャパン(株)製「TEGO Glide A115」等を挙げることができる。
【0027】
本発明によれば、油性マーキングペン用インキ組成物は、上述したようなポリオキシプロピレン変性シリコーンを0.1〜3.0重量%、好ましくは、0.3〜2.5重量%の範囲で含む。
【0028】
インキ組成物において、パーフルオロアルキル界面活性剤の配合量が本発明で規定する範囲内にあっても、ポリオキシプロピレン変性シリコーンの割合が3.0重量%を超えるときは、クラフト粘着テープ表面に筆記することはできても、筆跡が接着性に劣る。しかし、0.1重量%よりも少ないときも、クラフト粘着テープ表面への筆跡の接着性が劣る。
【0029】
(パーフルオロアルキル界面活性剤)
本発明によるインキ組成物は、界面活性剤として、前述したように、ポリオキシプロピレン変性シリコーンとパーフルオロアルキル界面活性剤の組み合わせを含む点に重要な特徴を有する。
【0030】
上記パーフルオロアルキル界面活性剤としては、例えば、AGCセイミケミカル(株)製の「サーフロン」(商標)S−651を好ましい例として挙げることができる。
【0031】
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物は、上述したようなパーフルオロアルキル界面活性剤を2.5〜7.5重量%の範囲で含む。インキ組成物における上記パーフルオロアルキル界面活性剤の割合が7.5重量%を超えるときは、ポリオキシプロピレン変性シリコーンの配合量が本発明で規定する範囲内にあって、クラフト粘着テープの表面に筆記することができても、接着性が悪く、樹脂からなる筆記面への接着性も悪い。しかし、インキ組成物におけるパーフルオロアルキル界面活性剤の割合が2.5重量%よりも少ないときは、クラフト粘着テープの表面に筆記しようとしても、インキ組成物が弾かれるので、筆記することができない。
【0032】
特に、本発明によれば、油性マーキングペン用インキ組成物は、上記パーフルオロアルキル界面活性剤を3.0〜5.0重量%の範囲で含むことが好ましい。
【0033】
本発明によれば、油性マーキングペン用インキ組成物は、界面活性剤として、パーフルオロアルキル界面活性剤とポリオキシプロピレン変性シリコーンの組み合わせを含み、かくして、パーフルオロアルキル界面活性剤の配合量を比較的少量に抑えて、溶媒が極性有機溶媒でありながら、樹脂からなる筆記面に接着性にすぐれる筆跡を形成することができるのみならず、クラフト粘着テープの表面にもよく筆記することができ、しかも、その筆跡は接着性にすぐれている。
【0034】
(キャップオフ剤)
通常、マーキングペンのキャップを取り外した状態はキャップオフ状態と呼ばれており、マーキングペンを長期間にわたってそのようなキャップオフ状態においた後に筆記を開始するとき、筆跡に掠れを生じたり、場合によっては、筆記できない場合もある。
【0035】
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物も、長期間にわたってキャップオフ状態におかれた後にも、掠れなく、滑らかに筆記し始めることができるように、所謂キャップオフ剤を含むことができる。
【0036】
そのようなキャップオフ剤として、例えば、脂肪酸ポリアミンポリアミド、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0037】
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物は、このようなキャップオフ剤を0.1〜5重量%の範囲で含むことが好ましい。
【0038】
(製造)
本発明による油性マーキングペン用インキ組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、従来、知られている通常の油性マーキングペン用インキ組成物と同じ方法によって製造することができる。
【0039】
一例を挙げれば、樹脂を有機溶媒に加え、必要に応じて加熱下に攪拌混合して、溶解させ、これに着色剤とキャップオフ剤を加え、更に、必要に応じて加熱下に攪拌混合し、この後、得られた混合物に室温下にパーフルオロアルキル界面活性剤とポリオキシプロピレン変性シリコーンを加え、攪拌混合すれば、本発明による油性マーキングペン用インキ組成物を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
以下の実施例及び比較例において用いた成分は下記のとおりである。
(着色剤)
バリファストブラック1821(オリエント化学工業(株)製油溶性ニグロシン染料)
(樹脂)
ジョンクリル682(BASF製スチレン−アクリル酸共重合体)
【0042】
(ノニオン界面活性剤)
「サーフロン」(商標)S−651(AGCセイミケミカル(株)製パーフルオロアルキル基を有するオリゴマーからなるノニオン界面活性剤)
(キャップオフ剤)
第一工業製薬(株)製DKエステルF−50(脂肪酸ショ糖エステル)
マルチケム製CA340.2(脂肪酸トリグリセリド)
(ポリオキシプロピレン変性シリコーン)
エボニックデグサジャパン(株)製「TEGO Glide A115」
【0043】
実施例1
表1に示す割合にて各成分を用いて、以下のようにして、インキ組成物を得た。即ち、エタノール(有機溶媒)と樹脂を50℃で1時間、加熱攪拌混合し、続けて、これに着色剤とキャップオフ剤を加え、更に、50℃で30分間、加熱攪拌混合した。この後、得られた混合物を室温まで冷却して、ノニオン界面活性剤サーフロンS−651とポリオキシプロピレン変性シリコーンを加え、10分間、混合攪拌して、インキ組成物を得た。
【0044】
実施例2〜7
表1に示す割合にて各成分を用いて、実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。
【0045】
比較例1〜10
表1に示す割合にて各成分を用いて、実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。
【0046】
以上のようにして得たそれぞれのインキ組成物について、その物性を以下のようにして評価した。
(クラフト粘着テープ表面への筆記性)
アクリル繊維からなるペン先を備えた筆記具((株)サクラクレパス製油性マーカー「ペンタッチ」にインキ組成物を充填し、クラフト粘着テープ表面に直線を筆記し、1日間、放置乾燥させた後、筆記性を調べた。クラフト粘着テープ表面で筆跡を形成するインキ組成物に弾きがみられなかったときを筆記性がよい(○)、インキ組成物の弾きがみられたときを筆記性が悪い(×)とした。
【0047】
(クラフト粘着テープ表面又は硬質塩化ビニル樹脂製筆記面における筆跡の接着性)
アクリル繊維からなるペン先を備えた筆記具((株)サクラクレパス製油性マーカー「ペンタッチ」にインキ組成物を充填し、クラフト粘着テープ表面又は硬質塩化ビニル樹脂製筆記面に直線を筆記し、1日間、放置乾燥させた後、筆跡の接着性を調べた。
【0048】
硬質塩化ビニル樹脂製筆記面上での筆跡の接着性は、500g荷重を加えながら筆記面上の筆跡を綿棒で擦って、筆跡が筆記面から全く剥がれなかったときを非常によい(◎)とし、筆跡が僅かにのみ、剥がれたときをよい(○)とし、筆跡の50%以上が剥がれたときを悪い(×)とした。
【0049】
クラフト粘着テープの表面での筆跡の接着性は、1000g荷重を加えながらクラフト粘着テープの表面上の筆跡を指で擦って、筆跡が粘着テープの表面から全く剥がれなかったときを非常によい(◎)とし、筆跡が僅かにのみ、剥がれたときをよい(○)とし、筆跡の50%以上が剥がれたときを悪い(×)とした。
【0050】
結果を表1及び表2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1及び表2に示すように、本発明による油性マーキングペン用インキ組成物は、極性有機溶媒を溶媒としながら、界面活性剤として、パーフルオロアルキル界面活性剤とポリオキシプロピレン変性シリコーンを併用することによって、パーフルオロアルキル基を有するオリゴマーからなるノニオン界面活性剤の配合量を比較的少量に抑えて、樹脂からなる筆記面に接着性にすぐれる筆跡を形成することができるのみならず、クラフト粘着テープ表面にも接着性よく筆記することができる。
【0054】
これに対して、表2に示すように、比較例1〜3によるインキ組成物は、界面活性剤として、パーフルオロアルキル界面活性剤とポリオキシプロピレン変性シリコーンの組み合わせを用いることなく、パーフルオロアルキル界面活性剤のみを用いている。
【0055】
比較例1によるインキ組成物は、パーフルオロアルキル界面活性剤の配合量が少ないので、クラフト粘着テープ表面に筆記することができないのみならず、樹脂からなる筆記面に対する筆跡の接着性も悪い。
【0056】
そこで、比較例2及び3のインキ組成物によれば、比較的多量のパーフルオロアルキル界面活性剤を配合することによって初めて、クラフト粘着テープ表面に筆記することができるが、一方において、樹脂からなる筆記面への筆跡の接着性が悪い。
【0057】
一方、比較例4〜6によるインキ組成物は、パーフルオロアルキル界面活性剤とポリオキシプロピレン変性シリコーンの組み合わせを用いることなく、ポリオキシプロピレン変性シリコーンのみを用いている。その結果、樹脂からなる筆記面に対する筆跡の接着性にはすぐれるが、クラフト粘着テープ表面への筆記性に劣っている。
【0058】
比較例7〜10によるインキ組成物はいずれも、パーフルオロアルキル界面活性剤とポリオキシプロピレン変性シリコーンの組み合わせを用いている。しかし、比較例7と8によるインキ組成物は、パーフルオロアルキル界面活性剤の配合量が少なすぎて、クラフト粘着テープ表面に筆記することができない。
【0059】
反対に、比較例9によるインキ組成物は、ポリオキシプロピレン変性シリコーンの配合量が多すぎる結果、クラフト粘着テープ表面に筆記することができても、クラフト粘着テープ表面への筆跡の接着性に劣っている。
【0060】
比較例10によるインキ組成物は、パーフルオロアルキル界面活性剤の配合量が多すぎる結果、クラフト粘着テープ表面に筆記することができても、クラフト粘着テープ表面のみならず、樹脂表面への筆跡の接着性に劣っている。