(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、小型・軽量で、かつエネルギー密度が高く、しかも繰り返し充放電が可能なリチウムイオン二次電池の開発、商品化が活発に行われている。特許文献1には、ポリマーで電解液を保持して、小型・軽量化を図ったポリマーリチウム二次電池が開示されている。
このポリマーリチウム二次電池は、活物質、非水電解液及びこの電解液を保持するポリマーを含む正極層が集電体に担持された正極と、活物質、非水電解液及びこの電解液を保持するポリマーを含む負極層が集電体に担持された負極と、これら両極を電気的に隔絶し、非水電解液及びこの電解液を含む電解質シートからなるセパレータとを備えて構成されている。
【0003】
上記特許文献1には、正極等の具体的な製作例が示されている。例えば、正極は、活物質として各種所定の物質をアセトン中で混合してペーストを調製し、その得られたペーストをPETフィルム上に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布し、乾燥させることにより作製されている。また、負極及びセパレータにおいても、所定のフィルム上に所定のペースト状の原料を塗布してそれぞれ作製されていることが示されている。
【0004】
上述のフィルム等の被塗布部材の表面に塗布液を均一、かつ一定幅で塗布する塗工方式としては、スリットノズルを用いるスリットコート式が知られている。このスリットコート式の塗工においては、所定の速度で移動する枚葉状又は帯状の被塗布部材の表面に、所定のスリットコートギャップを有するスリットノズルの吐出口から塗布液を吐出し、被塗布部材の表面に均一、かつ一定幅で塗布するようにしている。
【0005】
図10には、従来のスリットノズル600が示されている。
図10(a)は、スリットノズル600の右半分を断面で示した正面図であり、
図10(b)は、(a)のX3−X3線に沿う断面図である。このスリットノズル600は、第1ノズル半体101と、第2ノズル半体110とを突き合わせて形成されている。
【0006】
第1ノズル半体101における第2ノズル半体110と当接する面には、正面視中央位置よりやや下側の位置に、横方向に延び、かつ両側がそれぞれ閉止された溝条からなる貯留部102が形成されている。また、貯留部102の下辺側から第1ノズル半体101の下端部に達するまで、スリットコートギャップに相当する所定深さ窪んだ平坦面状の吐出流路103が形成されている。さらに、第1ノズル半体101には、貯留部102内に塗布液を導入する導入通路104が形成されている。
突き合わされた第1ノズル半体101と第2ノズル半体110とは、貯留部102、吐出流路103および導入通路104の箇所を避けて、かつ互いに所定の間隔を保って設けられる図示しない複数本のボルトにより固定されている。
【0007】
突き合わされた第1ノズル半体101と第2ノズル半体110との下面、すなわちスリットノズル600の下面には、吐出流路103の幅(
図10(b)における吐出流路103の横方向の長さ)に相当するスリットコートギャップを有する吐出口105が形成されている。
なお、スリットコートギャップの形成は、上述したように第1ノズル半体101の面に窪んだ平坦面状の通路加工を施すことなく、第1ノズル半体101及び第2ノズル半体110の当接面間に、厚さがスリットコートギャップと同じで、かつ、貯留部102及び吐出流路103に対応する部分を切り欠いたパッキン部材を兼ねたシム板(スペーサ)を介在させて形成してもよい。
【0008】
なお、実際のリチウムイオン二次電池製造用のスリットコートギャップは、30〜100μm程度である。つまり、
図10(b)におけるスリットコートギャップは、理解を容易にするために実際の大きさよりも誇張して示している。
【0009】
上記構成からなるスリットノズル600は、導入通路104から電解質等の所定の塗布液が導入されて貯留部102に貯留される。そして、その貯留された塗布液は、吐出流路103を介して吐出口105に導かれて排出(吐出)される。したがって、吐出口105に対向し、かつ移動するように配置されているフィルム等の所定の被塗布部材の表面にはスリット状の吐出口105から排出された塗布液が均一で、かつ一定幅に塗布される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のスリットノズル600は、スリット状の吐出口が下向きのダウンフローで塗工が行われ、かつ間欠塗工で行われるときに、液垂れが発生するという問題がある。すなわち、間欠塗工の場合は、スリットノズル600への塗布液の供給は間欠塗工のタイミングに合わせて供給、停止が繰り返されるが、塗布液の供給が停止されたときに吐出口105(吐出流路103)に保持されている塗布液が不要部分に落下して付着してしまうという問題がある。
この問題を解決するために、吐出口105のスリットコートギャップを小さくして表面張力を高めて液垂れを防止することも考えられるが、スリットコートギャップを小さくすると、所定の塗布厚さが得られにくくなる等の新たな問題点が生じる虞がある。また、液垂れ防止のために粘性を高めた塗布液を用意することも考えられるが、塗布液の粘性は所定の製品性状を得るために決められるもので、これを液垂れ防止のために決めたときは、所定性状の製品が得られなくなる虞がある。さらに、液垂れ防止のために、スリット状の吐出口を上向きのアップフローや横向きのサイドフローで塗工を行うことも考えられるが、粘性の低い塗布液の場合は、塗工後に塗布液が被塗布部材から垂れるという問題が生じる。
【0012】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、下向きのダウンフローで塗工を行う際に、スリット状の吐出口から液垂れの発生しないスリットノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明のスリットノズルは、第1ノズル半体と、第2ノズル半体とを突き合わ
せて形成されるスリットノズルにおいて、前記第1ノズル半体及び前記第2ノズル半体のいずれか一方の突き合わせ面内に設けられた溝条からなる貯留部と、一端が前記貯留部に開口するとともに、他端が外部に開口し、前記貯留部に塗布液を導入する導入通路と、前記第1ノズル半体と前記第2ノズル半体とを突き合わせた状態の下面側で、かつ、その境界面に沿ってスリット状に形成された吐出口と、前記貯留部と前記吐出口との間を連通するとともに、前記貯留部から前記塗布液を前記吐出口に案内する吐出流路と、を備え、前記導入通路又は前記吐出流路に、前記塗布液を上向きに流す上方向流路が形成されて
おり、前記吐出流路に設けられる前記上方向流路は、前記第1ノズル半体及び前記第2ノズル半体の突き合わせ面どうしの間に、前記吐出口のスリットコートギャップに等しい厚さで、かつ互いに開口位置の異なるシム板を複数枚介装させて形成されており、前記複数枚のシム板を突き合わせて密着させることにより前記上方向流路および前記吐出口が形成されていることを特徴としている。
【0014】
このように構成することで、スリットノズル内の導入通路又は吐出流路中には、塗布液を上方向に流す上方向流路を有しているため、スリットノズルがダウンフローで、しかも間欠塗工で用いられても、上方向流路において塗布液の排出を止めることができ、液垂れを防止することができる。
【0016】
また、吐出流路に設けられる上方向流路は、互いに開口位置の異なるシム板を複数枚密着して並設された内部に形成されるため、上方向流路を容易に形成することができる。
【0017】
また、前記吐出流路に設けられる前記上方向流路は、前記第1ノズル半体及び前記第2ノズル半体の突き合わせ面どうしの間に、前記貯留部の下半部を覆う突出体が設けられ、前記貯留部の設けられていない側のノズル半体の突き合わせ面に凹部が形成され、該凹部内に前記突出体を収容しつつ、前記凹部と前記突出体との間に前記吐出流路となる隙間を設けることで形成されていることを特徴としている。
【0018】
このように構成することで、吐出流路に設けられる上方向流路は、突出体と凹部とで形成されるため、上方向流路を容易に形成することができる。
【0019】
さらに、前記導入通路に設けられる前記上方向流路は、該導入通路の前記他端を前記下面側に配することで形成されていることを特徴としている。
【0020】
このように構成することで、導入通路に設けられる上方向流路は、導入通路の他端を下面側に配することで該導入通路を上方向流にして形成することができるため、上方向流路を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スリットノズル内の導入通路又は吐出流路中に、塗布液を上方向に流す上方向流路を有しているため、スリットノズルがダウンフローで、しかも間欠塗工で用いられても、有効に液垂れを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るスリットノズル100について、
図1を用いて説明する。同図(a)はスリットノズル100の右半分を断面で示した正面図、同図(b)は(a)のX1−X1線に沿う断面図であり、ここでは、スリットノズル100は、リチウムイオン二次電池製造用として説明する。
【0024】
このスリットノズル100は、第1ノズル半体1と、第2ノズル半体10との間に、複数(図示の例では5枚)のシム板(スペーサ)20a〜20e(
図1(a)ではシム板20aの一部分が示されている。)を介在させて構成されている。すなわち、このスリットノズル100は、外形形状が横長の直方体状を呈し、その直方体を側面側から見たときには(
図1(b)参照)、中央で縦方向に第1ノズル半体1、第2ノズル半体10、及びシム板20a〜20eに分割された形態を呈していて、その分割された一方側(
図1(b)において右側)が第1ノズル半体1とし、他方側が第2ノズル半体10としている。そして、第1ノズル半体1と第2ノズル半体10とを突き合わせる際に、その間にシム板20a〜20eを介在させてスリットノズル100を構成している。
【0025】
第1ノズル半体1は、第2ノズル半体10と突き合わせる面が高精度の扁平面に形成されている。そして、その扁平面の中央位置より少し下側の位置には、横方向(水平方向)に伸び、かつ両側がそれぞれ閉止されている所定深さの溝条からなる貯留部2が形成されている。また、第1ノズル半体1内には、一端側が貯留部2内に開口し、他端側が第1ノズル半体1の上面(外部)に開口し、塗布液を貯留部2に供給するための導入通路3が形成されている。
【0026】
第2ノズル半体10は、第1ノズル半体1と突き合わせる面の外形形状が第1ノズル半体1と略同一に形成されている。そして、その突き合わせる面は、第1ノズル半体1が第2ノズル半体10と突き合わせる面と同様に、高精度の扁平面に形成されている。
【0027】
シム板20a〜20eは、シム板20aが第1ノズル半体1側で、シム板20eが第2ノズル半体10側となるように順に密着して並設されている。そして、各シム板20a〜20eの平面の外形形状は、第1ノズル半体1及び第2ノズル半体10の突き合わせる面の外形形状と略同一であり、また、各シム板20a〜20eの厚さは、スリットノズル100のスリットコートギャップと略同一の厚さで構成されている。ここで、スリットコートギャップとは、スリットノズル100から塗布液が吐出される吐出口32におけるスリット幅(
図1(b)における左右方向の幅)のことを言う。なお、リチウムイオン二次電池製造用のスリットコートギャップは30〜100μm程度であるため、各シム板20a〜20eの厚さはこの範囲で選ばれる。このように、実際の各シム板20a〜20eは薄板で構成されるが、
図1(b)では、各シム板20a〜20eの存在の理解を容易にするために、各シム板20a〜20eの厚さが各ノズル半体1,10の大きさに比べて誇張して示されている。後述するシム板21〜23についても同様である。
【0028】
図2(a)には、シム板20aの平面図が示されていて、このシム板20aは、第1ノズル半体1に設けられている貯留部2に対向した部分に形成された開口20a1と、その開口20a1の下側の所定位置から下端部まで達する部分を切り欠くように形成された開口20a2と、を備えている。なお、2点鎖線で示される貯留部2は、シム板20aに対向する貯留部2の位置を示している。以下の
図2(b)〜(e)及び
図5においても同様である。
【0029】
図2(b)に示されるシム板20bは、シム板20aの開口20a1に対向して形成された開口20b1と、その開口20b1の下側の所定位置に形成された開口20b2と、を備えている。
図2(c)に示されるシム板20cは、シム板20bの開口20b1の下部部分に対向して形成された開口20c1と、その開口20c1の下側の所定位置に形成された開口20c2と、を備えている。
図2(d)に示されるシム板20dは、シム板20cの開口20c1に対向して形成された開口20d1と、その開口20d1下側の所定位置に形成された開口20d2と、を備えている。
図2(e)に示されるシム板20eは、シム板20dの開口20d1に対向するとともに、開口20d2に対向して形成された開口20e1を備えている。
そして、シム板20dの開口20d2は、シム板20cの開口20c2の下部に対向し、シム板20cの開口20c2の上部は、シム板20bの開口20b2に対向し、その開口20b2は、シム板20aの開口20a2の上部に対向するようにそれぞれ形成されている。
つまり、シム板20a〜20eは、それぞれ開口位置が異なるように形成されている。
【0030】
各シム板20a〜20eには、上述のような開口が形成されているため、それぞれを突き合わせて密着して並設されたシム板20a〜20e内には、
図3の矢印で示されるような、水平流、下降流、水平流、上向流、水平流及び下降流からなる屈曲した吐出流路30が形成され、その吐出流路30中には、塗布液が上方向に流れる上方向流路31が形成されている。つまり、吐出流路30は、貯留部2と吐出口32(後に詳述する)との間を連通するように形成されている。なお、本実施形態における塗布液が上方向に流れる上方向流路というときは、吐出口32から吐出される塗布液の排出方向(鉛直下方向)と反対方向(鉛直上方向)の流路を意味している。
【0031】
上記構成からなる第1ノズル半体1と、第2ノズル半体10との間に、シム板20a〜20eを介在させて突き合わされた下部の面、すなわちスリットノズル100の下面には、シム板20aの開口20a2によって構成されたスリット状の吐出口32が形成されている。言い換えれば、第1ノズル半体1と第2ノズル半体10の境界面に吐出口32が形成されている。
【0032】
図示しないが、シム板20a〜20eを介在させて突き合わされた第1ノズル半体1及び第2ノズル半体10は、貯留部2、導入通路3及び吐出流路30の箇所を避けて、かつ互いに所定の間隔を保って設けられる複数本のボルトにより固定されている。したがって、各シム板20a〜20eにもこれら複数本のボルト位置に対応した貫通孔が形成されている。
【0033】
また、図示しないが、第1ノズル半体1及び第2ノズル半体10の突き合わせ面のいずれか一方には、位置決め用のピンが所定の間隔を保って複数本(例えば2本)設けられるとともに、他方には、それら位置決め用のピンが挿入される穴部が形成されている。したがって、各シム板20a〜20eにも、これら位置決め用のピンに対応した位置に貫通孔が形成されている。
上述したスリットノズル100を構成する各部材の固定方法は一例であり、上記方法に限られない。
【0034】
第1ノズル半体1と、第2ノズル半体10との間に、シム板20a〜20eを介在させて突き合わすことで構成されたスリットノズル100は、各ノズル半体1,10の突き合わせ面が高精度の扁平面に形成され、また、各シム板20a〜20eの表裏面が高精度の扁平面に形成されているため、各ノズル半体1,10間がボルトにより強固に固定されたとき、スリットノズル100は、スリット状の吐出口32以外から塗布液が漏出することのない高水密性に形成される。
【0035】
上記構成からなるスリットノズル100は、導入通路3から電解質等の所定の塗布液が供給されると、その供給された塗布液は貯留部2に貯留される。そして、その塗布液は吐出流路30を介して吐出口32側に導かれて排出される。したがって、吐出口32に対向し、かつ移動するように配置されているフィルム等の所定の被塗布部材の表面には、スリット状の吐出口32から吐出した塗布液が均一に、かつ一定幅で塗布される。
【0036】
上記構成からなるスリットノズル100は、スリット状の吐出口32が下向き、横向き、又は上向きのいずれの吹き出し方向でも用いることができるが、特に、吐出口32が下向きのダウンフローで、かつ間欠塗工で行われるときは、スリットノズル100への塗布液の供給は間欠塗工のタイミングに合わせて供給、停止が繰り返されるが、貯留部2から吐出口32までの間の吐出流路30内に上方向流路31を設けたため、塗布液の供給が停止されたときに塗布液が吐出口32から被塗布部材に落下するという、液垂れの発生を効果的に防止でき、製品の歩留まり低下を防止することができる。
【0037】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係るスリットノズル200について、
図4を用いて説明する。
図4(a)はスリットノズル200の右半分を断面で示した正面図、(b)は(a)のX2−X2線に沿う断面図である。なお、上記第1実施形態に係るスリットノズル100と同一の構成要素については同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0038】
スリットノズル200は、第1ノズル半体1と、第2ノズル半体10と、シム板21と、突出体4とを備えている。また、第2ノズル半体10には、突出体4を収容可能な凹部11が形成されている。
【0039】
突出体4は、横長の直方体形状の部材であり、その長手方向の一面が第1ノズル半体1に形成されている貯留部2の開口面全面を覆う大きさで形成されている。そして、その突出体4の一面側がシム板21を介在させて、かつ貯留部2の開口面全面を覆うようにして図示しないボルトを用いて第1ノズル半体1に取り付けられている。なお、突出体4は、貯留部2の少なくとも下半部を覆うように形成されていればよい。
【0040】
凹部11は、第1ノズル半体1と対向する第2ノズル半体10の面(突き合わせ面)に形成されている。この凹部11は、突出体4が取り付けられた状態の第1ノズル半体1と、第2ノズル半体10とが突き合わされたときに、その突出体4における第1ノズル半体1と突き合わされる面の反対の面側、上面側及び下面側にそれぞれシム板21の厚さと略同一の隙間が生じる大きさに形成されている。
【0041】
シム板21の正面視の外形形状は、第1ノズル半体1及び第2ノズル半体10の外形形状と略同一である。また、シム板21は、スリットノズル200のスリットコートギャップと略同一の厚さで形成されている。リチウムイオン二次電池製造用のスリットコートギャップは30〜100μm程度であるため、シム板21の厚さはこの範囲で選ばれる。
【0042】
図5には、シム板21の正面図が示されている。シム板21は、上述した
図2(a)に示されるスリットノズル100のシム板20aと略同様の開口が形成されている。すなわち、シム板21の面内には、第1ノズル半体1に形成されている貯留部2に対向した部分に対向するとともに、さらにその上方に向けて開けられた開口21aと、その開口21aの下側の所定位置から下端部まで切り欠くように開けられた開口21bと、が形成されている。
【0043】
シム板21には、上述のような開口21a,21bが形成され、また、突出体4における第1ノズル半体1と突き合わされる面の反対の面側及び上下の面側にそれぞれシム板21の厚さと略同一の間隙が形成されているため、
図6の矢印で示されるような上向流、水平流、下降流、水平流及び下降流からなる屈曲した吐出流路30が形成されている。つまり、吐出流路30中に塗布液が上方向に流れる上方向流路31が形成されている。
【0044】
上記構成からなるスリットノズル200の下部の面には、シム板21の開口21bによって構成されるスリット状の吐出口32が形成されている。
【0045】
図示しないが、シム板21を介在させて突き合わされた第1ノズル半体1と第2ノズル半体10とは、貯留部2、導入通路3及び吐出流路30の箇所を避けて、かつ互いに所定の間隔を保って設けられる複数本のボルトにより固定される。したがって、シム板21にもこれら複数本のボルト位置に対応した貫通孔が形成されている。
【0046】
また、図示しないが、第1ノズル半体1及び第2ノズル半体10の突き合わせ面のいずれか一方には、位置決め用のピンが所定の間隔を保って複数本(例えば2本)設けられるとともに、他方には、それら位置決め用のピンの挿入される穴部が形成されている。したがって、シム板21にも、これら位置決め用のピンに対応した位置に貫通孔が形成されている。
上述したスリットノズル200を構成する各部材の固定方法は一例であり、上記方法に限られない。
【0047】
第1ノズル半体1と第2ノズル半体10との間に、シム板21を介在させて突き合わせて構成されたスリットノズル200は、各ノズル半体1,10の突き合わせ面が高精度の扁平面に形成され、また、各シム板21の表裏面が高精度の扁平面に形成されている。したがって、第1ノズル半体1と第2ノズル半体10との間をボルトにより強固に固定したとき、スリットノズル200は、スリット状の吐出口32以外から塗布液が漏出することのない高水密性に形成される。
【0048】
上記構成からなるスリットノズル200は、導入通路3から電解質等の所定の塗布液が供給されると、その供給された塗布液は貯留部2に貯留される。そして、その塗布液は吐出流路30を介して吐出口32側に導かれて吐出される。したがって、吐出口32に対向し、かつ移動するように配置されているフィルム等の所定の被塗布部材の表面には、スリット状の吐出口32から排出された塗布液が均一に、かつ一定幅で塗布される。
【0049】
上記構成からなるスリットノズル200は、スリット状の吐出口32が下向き、横向き、又は上向きのいずれの吹き出し方向でも用いることができるが、特に、吐出口32が下向きのダウンフローで、かつ間欠塗工で行われるときは、スリットノズル200への塗布液の供給は間欠塗工のタイミングに合わせて供給、停止が繰り返されるが、貯留部2から吐出口32までの間の吐出流路30内に上方向流路31を設けたため、塗布液の供給が停止されたときに塗布液が吐出口32から被塗布部材に落下するという、液垂れの発生を効果的に防止でき、製品の歩留まり低下を未然に防止することができる。
【0050】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係るスリットノズル300について、
図7の縦断面図を用いて説明する。この縦断面図は、スリットノズル300の正面中央を断面で示したもので、上述の
図1(b)及び
図4(b)と略同じ箇所を示している。後述する
図8及び
図9についても同様である。このスリットノズル300は、第1ノズル半体1、第2ノズル半体10及びシム板22を備えている。
なお、上述したスリットノズル100,200と同一の構成要素については同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0051】
第1ノズル半体1に形成された導入通路3は、上述したスリットノズル100,200に形成された導入通路3とは流れ方向が逆になるように構成されている。すなわち、スリットノズル100,200に形成されている導入通路3の流れ方向は、下降流で塗布液が貯留部2に導入されているのに対して、スリットノズル300では、塗布液が上方向に流れて貯留部2に導入されるように構成されている。したがって、スリットノズル300の導入通路3は、塗布液が上方向に流れる上方向流路31を兼ねている。
なお、本実施形態では、塗布液をスリットノズル300に導入する導入口が下面に形成されて、導入通路3が鉛直上方に向かうように形成されているが、導入口が貯留部2よりも下方に形成されていれば導入通路3の少なくとも一部に上方向流路31が形成されるため、
図7に示した構成に限られないことは言うまでもない。
【0052】
シム板22は、図示しないが、第1ノズル半体1と第2ノズル半体10とが突き合わされる面の外形形状と略同一で形成されている。また、シム板22は、スリットノズル300のスリットコートギャップと同一の厚さで形成されている。リチウムイオン二次電池製造用のスリットコートギャップは30〜100μm程度であるため、シム板21の厚さはこの範囲で選ばれる。そして、このシム板22の面内には、図示しないが貯留部2に対向する部分及びその貯留部2の下辺側から下端にかけて切り欠くように開口されている。シム板22には、このような開口が形成されているため、下降流からなる吐出流路30が形成されている。
【0053】
上記構成からなるスリットノズル300の下部の面には、シム板22の開口によって形成されるスリット状の吐出口32が形成されている。
【0054】
図示しないが、シム板22を介在させて突き合わされた第1ノズル半体1及び第2ノズル半体10は、貯留部2、導入通路3及び吐出流路30の箇所を避けて、かつ互いに所定の間隔を保って設けられる複数本のボルトにより固定されている。したがって、シム板22にもこれら複数本のボルト位置に対応した貫通孔が形成されている。
【0055】
また、図示しないが、第1ノズル半体1及び第2ノズル半体10の突き合わせ面のいずれか一方には、位置決め用のピンが所定の間隔を保って複数本(例えば2本)設けられるとともに、他方には、それら位置決め用のピンの挿入される穴部が形成されている。したがって、シム板22にも、これら位置決め用のピンに対応した位置に貫通孔が形成されている。
【0056】
第1ノズル半体1と、第2ノズル半体10との間に、シム板22を介在させて突き合わすことで構成されたスリットノズル300は、各ノズル半体1,10の突き合わせ面が高精度の扁平面に形成され、また、シム板22の表裏面が高精度の扁平面に形成されているため、各ノズル半体1,10間がボルトにより強固に固定されたとき、スリットノズル300は、スリット状の吐出口32以外から塗布液が漏出することのない高水密性に形成される。
【0057】
上記構成からなるスリットノズル300は、導入通路3から電解質等の所定の塗布液が供給されると、その供給された塗布液は貯留部2に貯留される。そして、その塗布液は吐出流路30を介して吐出口32側に導かれて排出される。したがって、吐出口32に対向し、かつ移動するように配置されているフィルム等の所定の被塗布部材の表面には、スリット状の吐出口32から吐出した塗布液が均一に、かつ一定幅で塗布される。
【0058】
上記構成からなるスリットノズル300は、スリット状の吐出口32が下向き、横向き、又は上向きのいずれの吹き出し方向でも用いることができるが、特に、吐出口32が下向きのダウンフローで、かつ間欠塗工で行われるときは、スリットノズル300への塗布液の供給は間欠塗工のタイミングに合わせて供給、停止が繰り返されるが、導入通路3に上方向流路31が形成されているため、塗布液の供給が停止されたときに塗布液が吐出口32から被塗布部材に落下するという、液垂れの発生を効果的に防止でき、製品の歩留まり低下を防止することができる。
【0059】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係るスリットノズル400について、
図8を用いて説明する。このスリットノズル400において上記スリットノズル300と異なる点は、第1ノズル半体1に、上述したスリットノズル200と同じ突出体4をシム板23を介在させて取り付けるとともに、第2ノズル半体10にその突出体4を受け入れる凹部11を形成したことにある。
【0060】
このスリットノズル400で用いられるシム板23は、上述したスリットノズル300のシム板22と同様に、その平面内には貯留部2に対向する部分が開口されている。そして、その貯留部2の下辺側から突出体4の下辺位置までは閉じられ、それより下側が下端まで切り欠くように開口されている。したがって、貯留部2と吐出口32との間に形成される吐出流路30は、突出体4を迂回するように形成されている。
【0061】
第1ノズル半体1及び第2ノズル半体10は、シム板23を介在させた状態で、上述したスリットノズル300と同様に、図示しないボルトにより固定され、その固定によりスリットノズル400が組み立てられる。
【0062】
上記構成からなるスリットノズル400は、導入通路3から電解質等の所定の塗布液が導入されると、その導入された塗布液は貯留部2に貯留される。そして、その塗布液は吐出流路30を介して吐出口32に導かれて排出される。したがって、吐出口32に対向し、かつ移動するように配置されているフィルム等の所定の被塗布部材の表面には、スリット状の吐出口32から排出された塗布液が均一に、かつ一定幅で塗布される。
【0063】
上記構成からなるスリットノズル400は、スリット状の吐出口32が下向き、横向き、又は上向きのいずれの吹き出し方向でも用いることができるが、特に、吐出口32が下向きのダウンフローで、かつ間欠塗工で行われるときは、スリットノズル400への塗布液の供給は間欠塗工のタイミングに合わせて供給、停止が繰り返されるが、導入通路3に上方向流路31が形成されているとともに、貯留部2と吐出口32との間に形成される吐出流路30が突出体4を大回りするように形成されているため、塗布液の供給が停止されたときに塗布液が吐出口32から被塗布部材へ落下するという、液垂れの発生をより効果的に防止でき、製品の歩留まり低下を防止することができる。
【0064】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態に係るスリットノズル500について、
図9を用いて説明する。このスリットノズル500において上述したスリットノズル300と異なる点は、導入通路3中の一部に上方向流路31を形成したことにある。
【0065】
すなわち、第1ノズル半体1に形成された導入通路3は、上述したスリットノズル100,200と同様の下降流を有するとともに、その下降流の終端側から貯留部2に至る箇所に塗布液を上方向に流す上方向流路31を含んで形成されている。
【0066】
スリットノズル500のシム板22の形状は、上述したスリットノズル300のシム板と同じである。したがって、スリットノズル500の吐出流路30の形態は、スリットノズル300の吐出流路30と同じ形態となる。
【0067】
第1ノズル半体1及び第2ノズル半体10は、シム板22を介在させた状態で、上述したスリットノズル300と同様に、図示しないボルトにより固定され、その固定によりスリットノズル500が組み立てられる。
【0068】
上記構成からなるスリットノズル500は、上述したスリットノズル300,400と同様に導入通路3中に上方向流路31が形成されているため、スリットノズル300,400と同様の効果を得ることができる。すなわち、スリットノズル500は、スリット状の吐出口32が下向きのダウンフローで、かつ間欠塗工で行われるときは、スリットノズル500への塗布液の供給は間欠塗工のタイミングに合わせて供給、停止が繰り返されるが、導入通路3が上方向流路31を含んで形成されているため、塗布液の供給が停止されたときに塗布液が吐出口32から被塗布部材へ落下するという、液垂れの発生を効果的に防止でき、製品の歩留まり低下を防止することができる。
【0069】
なお、このスリットノズル500においても、上述したスリットノズル400に設けられている突出体4及び凹部11を設けるようにしてもよい。この場合は、シム板22は、スリットノズル400で用いられているシム板23を用いればよい。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。