(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6178196
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】アラニン含有液状組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20170731BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20170731BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20170731BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20170731BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20170731BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20170731BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20170731BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20170731BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20170731BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K47/46
A61K47/10
A61P1/16
A61P25/32
A61P1/14
A61P17/16
A61P3/04
A61P3/02
A23L2/00 B
A23L2/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-205553(P2013-205553)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67590(P2015-67590A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100120905
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 伸子
(72)【発明者】
【氏名】石田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 礼子
(72)【発明者】
【氏名】向田 直弘
(72)【発明者】
【氏名】金 倫希
(72)【発明者】
【氏名】田岡 幸一
【審査官】
渡部 正博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−120479(JP,A)
【文献】
特開2011−217733(JP,A)
【文献】
特開2011−195552(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/066960(WO,A1)
【文献】
特開2012−170411(JP,A)
【文献】
特開2012−116811(JP,A)
【文献】
特開2004−345986(JP,A)
【文献】
新製品REVIEW,食品工業 第56巻第1号,鎌田 恒男 株式会社光琳,2012年12月15日,第56巻,p100
【文献】
Int Immunopharmacol,2008年 9月,Vol.8,p1272-1281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラニンとウコンエキスとを含有し、アラニンとビサクロンの配合比が質量比で100:0.003〜100:0.042であり、かつ、pHが4.0以下であるアラニン含有液状組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の液状組成物が入れられた、容器詰飲料。
【請求項3】
アラニンとウコンエキスを、アラニンとビサクロンの配合比が質量比で100:0.003〜100:0.042となるように原料液に配合する工程を含む、pHが4.0以下であるアラニン含有液状組成物の製造方法。
【請求項4】
アラニンを含有する原料液に、ウコンエキスを、アラニンとビサクロンの配合比が質量比で100:0.003〜100:0.042となるように配合することによって、アラニン含有液状組成物の旨み及びぬめり感を低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラニン特有の旨み及びぬめり感を低減し、後味のキレ及びしまりが向上したアラニン含有液状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アラニンは、アミノ酸の一種であり、牛や豚のレバーのほか、しじみやあさりなどの貝類に多く含まれ、アルコール代謝の促進や肝機能改善、グルコースの生成、脂肪の分解、皮膚角質層の保護など、様々な機能を有する。そのため、アラニンは、二日酔いの予防や軽減のほか、疲労回復、美肌、痩身などを目的とした医薬品や栄養補助剤(サプリメント)等に使用されている。例えば、特許文献1にはアルコールによる肝機能障害を緩和するためのアラニン入り発泡飲料、特許文献2にはアラニンを含むグルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類、キサンチン誘導体、難消化性デキストリン等を含有するダイエット効果を有する低カロリー飲料、特許文献3にはアラニンを含むグルカゴン分泌亢進作用を有するアミノ酸類、キサンチン誘導体、イソフラボン類、カルニチン類を含有するメタボリックシンドロームの予防・改善または治療組成物がそれぞれ開示されている。アラニンはまた、甘みや旨みを有するため、食品添加物として用いられている(特許文献4等)。しかしながら、アラニンは、アミノ酸特有の風味(旨みやぬめり感)を有するため、後味のキレやしまりを与えることができず、飲料に使用した場合には、アラニンに特有の異質な風味を感じるため、製品に配合しにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-194352号公報
【特許文献2】特開平10-191944号公報
【特許文献3】特開2008-291002号公報
【特許文献4】特許4437111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、アラニン特有の旨み及びぬめり感が低減され、後味のキレ及びしまりが向上したアラニン含有液状組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、アラニンとウコンエキス中のビサクロンとを所定の比率で配合することにより、アラニン特有の旨み及びぬめり感が低減され、後味のキレ及びしまりが向上した液状組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)アラニンとウコンエキスとを含有し、アラニンとビサクロンの配合比が質量比で100:0.003〜100:0.042であり、かつ、pHが4.0以下であるアラニン含有液状組成物。
(2)(1)に記載の液状組成物が入れられた、容器詰飲料。
(3)アラニンとウコンエキスを、アラニンとビサクロンの配合比が質量比で100:0.003〜100:0.042となるように原料液に配合する工程を含む、pHが4.0以下であるアラニン含有液状組成物の製造方法。
(4)アラニンを含有する原料液に、ウコンエキスを、アラニンとビサクロンの配合比が質量比で100:0.003〜100:0.042となるように配合することによって、アラニン含有液状組成物の旨み及びぬめり感を低減する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アラニン特有の旨み及びぬめり感が低減され、後味のキレ及びしまりが向上したアラニン含有液状組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1(アラニン:ビサクロン=100:0.003、pH4.0)および比較例1(アラニン単独、pH4.0)の試験飲料の官能試験結果を示す。
【
図2】実施例2(アラニン:ビサクロン=100:0.042、pH4.0)および比較例1(アラニン単独、pH4.0)の試験飲料の官能試験結果を示す(*p<0.1)。
【
図3】実施例3(アラニン:ビサクロン=100:0.003、pH3.0)および比較例1(アラニン単独、pH4.0)の試験飲料の官能試験結果を示す(**p<0.05, *p<0.1)。
【
図4】比較例2(アラニン:グレープフルーツフレーバー=1:0.06、pH4.0)および比較例1(アラニン単独、pH4.0)の試験飲料の官能試験結果を示す。
【
図5】比較例3(アラニン:硫酸キニーネ=1:0.0012、pH4.0)および比較例1(アラニン単独、pH4.0)の試験飲料の官能試験結果を示す(**p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
アラニン
本発明においてアラニンは、食品添加物として使用が認められているDL-アラニンまたはL-アラニンをいう。アラニンは、遊離のアラニンであっても、医薬品や飲食品に許容される塩の形態(ナトリウム塩など)であってもよい。
【0010】
ウコンエキス
本発明においてウコンエキスとは、ショウガ科ウコン属の植物に由来する植物原料の抽出溶媒による抽出物をいい、必要に応じてさらに加熱及び/又は減圧等により抽出溶媒を揮発し、乾燥させたものであってもよい。
【0011】
前記植物原料としては、ショウガ科ウコン属の植物であるCurcuma longa(ウコン)、Curcuma aromatica、Curcuma zedoaria、Curcuma phaeocaulis、Curcuma kwangsiensis、Curcuma wenyujin、及び/又は、Curcuma xanthorrhizaの根茎等の適当な部位を原型のまま、あるいは適当な寸法又は形状にカットしたもの、あるいは粉砕物の形態にしたものを使用することができる。これらの植物原料は適宜乾燥されたものであってよい。
【0012】
植物原料からのウコンエキスの抽出方法は特に限定されない。抽出溶媒としては、水、熱水、または水溶性有機溶媒、または水と水溶性有機溶媒の混合溶媒が挙げられ、アルコール、水、またはアルコールと水の混合溶媒が好ましく、アルコールとしてはエタノールが好ましい。親水性有機溶媒と水との混合溶媒の混合比は特に限定されないが、例えば質量比で10:90〜90:10の範囲が好ましく、20:80〜50:50の範囲がより好ましい。
【0013】
本発明に用いるウコンエキスは、ビサクロンを0.15質量%以上含有することを特徴とする。ウコンエキス中のビサクロンの量は、ウコンエキスを酢酸エチルと混合し、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した液を分析サンプルとして、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付すことにより求めることができる。
【0014】
本発明においてビサクロンとは、ビサボラン型セスキテルペン類に分類される化合物であり、下記の平面構造式を有する化合物又はその塩を意味する。ビサクロンは平面構造式中*印で示した位置に不斉炭素を有し、そのため数種の光学異性体が存在するが、本明細書におけるビサクロンとはそのいずれの光学異性体も包含する概念である。
【化1】
【0015】
アラニンとビサクロンの配合比
本発明の液状組成物におけるアラニンとビサクロンの配合比は、質量比で100:0.003〜100:0.042、好ましくは100:0.0075〜100:0.03である。アラニンとビサクロンの配合比がこの範囲内であると、アラニン特有の旨みやぬめり感が感じられず、後味のキレやしまりが向上し、アラニン含有液状組成物の風味や味を良好なものとすることができる。また、本発明の液状組成物におけるアラニンとウコンエキスの含有量は、アラニンとウコンエキス中のビサクロンの配合比が上記の範囲である限り特に限定はされない。例えば、アラニンの含有量は、組成物全量に対し、0.1〜10.0重量%、好ましくは1.0〜6.0重量%が例示できる。また、本発明の液状組成物におけるウコンエキスの含有量は、好ましくは一回の経口摂取量当たり、ウコンエキスをビサクロンの量にして0.15mg以上である。本発明において「一回の経口摂取量」とは、本発明の液状組成物が一度に経口摂取される量、あるいは短い時間間隔(例えば10分以下、好ましくは5分以下の時間)をおいて連続的に複数回で経口摂取される総量を意味する。例えば、50ml〜500ml(典型的には50ml、100ml、150ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400ml、450ml又は500ml)がその量であり、ゼリー状の形態である場合には例えば50g〜500g(典型的には50g、100g、150g、200g、250g、300g、350g、400g、450g又は500g)がその量である。
【0016】
他の成分
本発明の液状組成物は、水に上記のアラニンとウコンエキスを含有するものであるが、一又は複数の他の成分を更に含有してもよい。他の成分は飲食品や医薬品などの最終的な形態において許容される成分であって、経口摂取可能な成分であれば特に限定はされないが、例えば、甘味料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤などが挙げられる。また、必要により、色素、香料、保存料、防腐剤、防かび剤などを添加してもよい。
【0017】
甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、パラチノース、トレハロース、キシロース等の単糖や二糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合異性化糖等)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、ソルビトール、還元水飴等)、はちみつ、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム等)などが挙げられる。
【0018】
酸味料としては、たとえば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フィチン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、またはこれらのナトリウム塩、カルシウム塩もしくはカリウム塩等が挙げられる。
【0019】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、ナイアシン、イノシトールなどが挙げられる。
【0020】
ミネラル類としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、カリウムなどが挙げられる。
【0021】
増粘剤としては、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、アラビアガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0022】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、植物性ステロール、サポニン等が挙げられる。
【0023】
酸化防止剤としては、ビタミンC、トコフェロール(ビタミンE)、酵素処理ルチン、カテキン等が挙げられる。
【0024】
上記他の成分は、それぞれ当業者が飲料等の液状組成物に通常採用する範囲内の量で適宜配合することができる。
【0025】
本発明の液状組成物のpHは5以下であれば特に限定されないが、pH4以下が好ましい。本発明においてpH値は品温20℃で測定された値を指す。pH値が5よりも高い場合にはアラニン特有の旨みやぬめり感の低減効果が得られず、また、ウコンエキスに起因する不快な呈味が感じられるという問題がある。また、本発明の組成物が清涼飲料水の形態である場合には、当該pH値の上限をpH 4.0未満とすることができる。食品衛生法の食品別規格基準によれば、清涼飲料水の殺菌・除菌の方法はpH 4.0を境に大きく異なっており、pH4.0未満のものの殺菌は、中心部温度を65℃10分間加熱することが求められるのに対して、pH4.0以上のものの殺菌は、中心部温度を85℃、30分間加熱することが求められる。故に、pH値の上限をpH 4.0未満とすることによって、殺菌工程におけるエネルギー消費を抑えることができ、また殺菌工程によるウコンエキスへの負荷を小さくすることができ好ましい。pH値の下限は特に限定されず、2.3以上、好ましくは3.0以上、さらに好ましくは3.1以上とすることができる。
【0026】
本発明の組成物のpHの調整は、上記原料を混合し、必要に応じて適宜酸味料を加えることにより行う。酸味料としては、前記の一般的に使用される有機もしくは無機の食用酸またはそれらの塩を用いればよい。酸味料の使用量は、所望のpHとすることができ、かつ組成物の風味に影響がない範囲であれば特に限定されない。
【0027】
本発明の液状組成物は、液状食品(飲料)として提供されてもよいし、液状の経口投与用の医薬品(内服液)として提供されてもよいが、好ましくは飲料である。また、飲料は、嗜好性により、炭酸を含む炭酸飲料、ゲル化剤(デンプン、寒天、増粘剤等)を含むゼリー飲料としてもよい。
【0028】
本発明の液状組成物は、水を基調とする組成物であり、上記の各成分を水と混合して製造することができる。本発明の液状組成物の製造方法は、アラニンとウコンエキスを、アラニンとビサクロンの配合比が質量比で100:0.003〜100:0.042となるように原料液に配合する工程を少なくとも含んでいればよく、その他の工程は飲料の通常の製造方法に従う。各成分を配合した原料液は、必要によりpHを4.0以下に調整し、65〜100℃に加熱して殺菌処理を行い、飲料用容器に充填密封することにより加熱殺菌済みの殺菌された容器付詰め液状組成物製品とすることができる。
【0029】
飲料用容器としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、ガラス瓶が挙げられ、容器の形態は特に限定されない。また、容器の容量は特に限定されないが、例えば50ml〜500ml(典型的には50ml、100ml、150ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400ml、450ml又は500ml)、好ましくは100ml〜200mlとすることができる。液状組成物を容器に収容する手段は任意である。
【0030】
本発明の液状組成物はアラニン特有の旨み及びぬめり感が低減され、後味のキレ及びしまりが向上したアラニン含有組成物である。本発明の液状組成物は、例えば、アルコール摂取後の起床時のいわゆる二日酔い症状(特に、頭重感、アルコール残り感、胃の不快症状)の軽減作用、滋養強壮作用、肥満予防作用を有する飲食品組成物や医薬品組成物として使用できる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
【0032】
(1)ウコンエキスの調製
ウコンエキスは、ウコン(Curcuma longa)の根茎部分を水にて抽出し、得られた抽出液を減圧加熱乾燥して水分を除去することにより調製した。ウコンエキス中のビサクロンの量は、ウコンエキス溶液と酢酸エチルを混合し、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した液を分析サンプルとして、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付すことにより求めた。HPLCは以下の条件で行なった。
【0033】
カラム:Thermo ODS HYPERSIL(登録商標) 250mm×φ4.6mm(サーモサイエンティフィック社製)
移動相:65%アセトニトリル(20min)⇒80%アセトニトリル(5min)⇒65%アセトニトリル(10min)
流速:0.7ml/min
温度:40℃
検出波長:242nm
その結果、ウコンエキス中のビサクロンの量は約0.15質量%であった。
【0034】
(2)試験飲料の調製
各試験飲料は、表1、2に示す配合量にて、水以外の成分(粉末原料)を混合した後、水に添加溶解して、液体原料を投入して全量100gの水溶液とした。各試験飲料のpHはクエン酸にて調整した。表中のpH値は品温20℃で測定された値を示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
(3)試験(官能評価)方法
試験は、20歳以上50歳以下の健常な男女5名をパネラーとして選定し、官能評価を行なった。パネラーは各試験飲料を摂取し、「旨み」、「ぬめり感」、「後味のキレ」、「後味のしまり」の項目について0〜10段階(0:弱い 10:強い)での評価を行なった。なお、結果は、各試験飲料におけるパネラー評価の平均値を示した。
【0038】
(4)結果
(4−1)アラニンとウコンエキスの配合比
実施例1(アラニン:ビサクロン=100:0.003、pH4.0)、実施例2(アラニン:ビサクロン=100:0.042、pH4.0)の試験飲料のパネラーによる官能評価試験の結果をそれぞれ
図1、
図2に示す。各実施例の結果は、同量のアラニンを含有し、ウコンエキスは含まない試験飲料(比較例1)と比較し、同じ図に示した。
図1、2に示すように、アラニンとともにウコンエキスを配合した試験飲料(実施例1、2)では、いずれもアラニン特有の「旨み」や「ぬめり感」が低減され、「後味のキレ」や「後味のしまり」が向上し、アラニン特有の異質な風味が改善された。これらの結果から、アラニンとビサクロンの配合比が質量比で100:0.003〜100:0.042である場合に効果があるといえる。
【0039】
(4−2)pHの範囲
実施例3(アラニン:ビサクロン=100:0.003、pH3.0)の試験飲料のパネラーによる官能評価試験の結果を
図3に示す。本実施例の結果は、同量のアラニンを含有し、ウコンエキスは含まない試験飲料(比較例1)と比較し、同じ図に示した。
図3に示すように、アラニンとともにウコンエキスを配合し、かつpHを3.0に調整した試験飲料(実施例3)では、アラニン特有の「旨み」や「ぬめり感」が低減され、「後味のキレ」や「後味のしまり」が向上し、アラニン特有の異質な風味が改善された。前記実施例1、2と上記の結果から、pHが4.0以下である場合に効果があるといえる。
【0040】
(4−3)他のマスキング剤の効果
ウコンエキスと同様に苦味のあるグレープフルーツフレーバー(ナリンギン13〜15.5%含有)、硫酸キニーネの効果を試験した。比較例2(アラニン:グレープフルーツフレーバー=1:0.06、pH4.0)、比較例3(アラニン:硫酸キニーネ=1:0.0012、pH4.0)の試験飲料のパネラーによる官能評価試験の結果をそれぞれ
図4、
図5に示す。各試験の結果は、同量のアラニンのみを含む試験飲料(比較例1)と比較し、同じ図に示した。
図4、
図5に示すように、グレープフルーツフレーバー、硫酸キニーネには、ウコンエキスのように、アラニン特有の「旨み」や「ぬめり感」を低減し、「後味のキレ」や「後味のしまり」を向上させ、アラニン特有の異質な風味を改善する効果は認められなかった。これらの結果より、単なる苦味成分を配合するだけではアラニンの異質な風味をマスキングできないといえる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、アラニン特有の「旨み」や「ぬめり感」が低減され、「後味のキレ」や「後味のしまり」が向上したアラニン含有液状組成物が提供される。従って、本発明は、飲料や内服液の製造分野において利用できる。