(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、農業分野においては、低コスト化及び省力化を指向した農薬製剤の開発が求められている。低コスト化に関しては、優れた性能を持つ製剤を高い生産性で製造することが求められている。また省力化に関しては、農薬の施用量及び施用回数を削減するような製剤が望まれている。かかる状況下、水稲用農薬としては田植え前の育苗箱に農薬を処理する育苗箱施用法の普及が進んできている。このような施用法では、これまで環境中に流亡する等して有効に植物体へ吸収されなかった農薬活性成分を効率よく植物体へ吸収させることができ、少量の有効成分で長期間の植物体内濃度の維持が可能となり、低コスト化及び環境負荷の低減につながる。更には、従来行っていたような、水田中に作業者が踏み入り、かつ重い散布機等を背負って農薬を散布する必要がなく省力的であり、理想的な施用方法と言える。
【0003】
しかし、このような施用方法においては、農薬活性成分が短期間に放出するような製剤では、効力の持続期間が短くなったり、薬害が発生したりする等、問題となる場合があった。一般的に水田の病害虫は田植え後から長期間発生するため、農薬製剤からの農薬活性成分の放出を長期的にわたって制御する必要がある。
【0004】
このため、農薬活性成分を徐々に溶出させる徐放化に関する製剤又はその製造方法に関しては、これまでに種々の試みが検討され、特に農薬活性成分と熱可塑性材料を含有する農薬組成物が多数開発されている。
【0005】
例えば、農薬活性成分と熱可塑性物質及び吸油能を有する物質を含む組成物(特許文献1)、農薬活性成分と酸価が10〜50mgKOH/gであるエステル系ワックス及び無機系希釈担体を含有する組成物(特許文献2)、農薬活性成分と酸価が25〜100mgKOH/gであるモンタンロウ誘導体混合物及び無機系希釈担体を含有する組成物(特許文献3)等が挙げられる。これらの文献には、農薬活性成分の放出を制御する材料の種類、使用量、製造温度等を組み合わせて、農薬活性成分が一定の放出速度を示す農薬製剤が開示されている。
【0006】
しかしながら、本発明者らが特許文献1記載の方法で実施例を追試した結果、製造時に造粒物がべたついたり、ダンゴ状の造粒物が多くなったりするので、生産効率が低いという難点があった。しかも農薬活性成分の初期の溶出が多く、溶出が途中で止まってしまい、初期溶出を抑えながら後期まで農薬活性成分の放出をさせることは不可能であった。また特許文献2の方法では半円柱状あるいは欠けた形の造粒物の割合が多く、正常な円柱状の造粒物が少なく、生産性が低いものであった。
【0007】
また、その他には、農薬活性成分と粘度鉱物及びワックスからなる造粒物を含む組成物(特許文献4)、薬物活性成分とポリグリセリン脂肪酸エステルと粉体とを加熱・流動させて得られる粒状物(特許文献5)、農薬活性成分と融点が50℃以上130℃未満のワックス及びホワイトカーボンを加熱混合して得られる農薬原末組成物(特許文献6)、農薬活性成分とアルコール型ワックスを含む組成物(特許文献7)、農薬活性成分とワックス及びカルボキシメチルセルロース又はその塩を含有する組成物(特許文献8)、農薬活性成分、熱可塑性樹脂、ポリビニルアルコール及び鉄粉又は銅粉が均一に混合されてなる組成物(特許文献9)、農薬活性成分と酸化ポリエチレンとを水に分散させた分散液を噴霧乾燥して得られる組成物(特許文献10)、農薬活性成分、脂肪酸エステル、粘結剤及び担体を含有する組成物(特許文献11)、農薬活性成分と物性の異なる複数のワックスを含む成分を特定の機器で製造された組成物(特許文献12)等が挙げられる。
【0008】
しかしながら、これらの組成物は製造方法が煩雑であったり、特殊な製造機器を必要とするために生産性が低く、コストの面で好ましくないものであった。また、農薬活性成分の徐放性及び長期間の効力持続性の面でも、必ずしも満足できるものではなかった。
【0009】
一方、特許文献13には化学名(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名ジノテフラン)である化合物が開示されている。この化合物は高い殺虫力を有し、広い殺虫スペクトルを有する。この化合物は水溶性が極めて高いという特徴を有している。そのため、水稲苗箱施用にこの化合物を利用するに際しては殺虫効果を長期間持続させるために、高度な溶出制御技術の確立が必要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、成形性及び生産性に優れ、かつ農薬活性成分が徐々に放出され長期間に渡ってその効力を持続させることができる農薬製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、農薬製剤中に酸化ワックスとエステル系ワックスとを添加することにより、成形性及び生産性に優れ、かつ農薬活性成分の溶出を高度に制御した徐放性農薬製剤が得られことを見出した。すなわち本発明は以下の通りである。
[1]農薬活性成分、酸化ワックス、エステル系ワックス、及び無機系希釈担体を含有することを特徴とする徐放性農薬製剤。
[2]農薬活性成分の20℃における水溶解度が100ppm以上であることを特徴とする上記[1]に記載の徐放性農薬製剤。
[3]酸化ワックスの融点が60℃以上、及びエステル系ワックスの融点が60℃以上であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の徐放性農薬製剤。
[4]酸化ワックスが酸化ポリエチレン、及びエステル系ワックスがポリグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の徐放性農薬製剤。
[5]農薬活性成分が、ジノテフラン(N−メチル−N’−ニトロ−N’’−[(テトラヒドロ−3−フラニル)メチル]グアニジン)であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の徐放性農薬製剤。
[6]酸化ワックスの酸価が0〜50mgKOH/g、及びエステル系ワックスの酸価が0〜50mgKOH/gであることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の徐放性農薬製剤。
[7]酸化ワックスとエステル系ワックスの重量比が9:1〜1:9であることを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の徐放性農薬製剤。
[8]エステル系ワックスの酸価が1〜10mgKOH/gであることを特徴とする上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の徐放性農薬製剤。
[9]酸化ワックスとエステル系ワックスの合計量が徐放性農薬製剤に対して5〜25重量%であることを特徴とする上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の徐放性農薬製剤。
[10]農薬活性成分、酸化ワックス、エステル系ワックス、及び無機系希釈担体を加熱しながら混合し、造粒することを特徴とする徐放性農薬製剤の製造方法。
[11]農薬活性成分を0.1〜30重量%、融点が60℃以上で酸価が0〜50mgKOH/gである酸化ポリエチレン及び融点が60℃以上で酸価が0〜50mgKOH/gであるポリグリセリン脂肪酸エステルを1:9〜9:1(重量比)で含む混合物を5〜25重量%、及び無機系希釈担体を50〜94.9重量%を加熱しながら混合し、造粒することを特徴とする徐放性農薬製剤の製造方法。
[12]農薬活性成分の20℃における水溶解度が100ppm以上であることを特徴とする上記[10]又は[11]に記載の徐放性農薬製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の農薬製剤は、高い製品収率及び高い生産能力で得ることができるため、製造コストを低く抑えることが可能である。また種々の農薬活性成分の水中溶出速度を制御でき、作物に対する薬害も無く、長期に渡り薬効を保つことが可能となり、さまざまな作物や地域に適合する農薬製剤を農家に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の具体的な実施例、比較例及び試験例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
【0015】
本発明における農薬活性成分は、殺生物活性を有し、農園芸用に使用される任意の化合物である。農薬活性成分として好ましいのは、20℃における水溶解度が100ppm以上のものである。本発明に使用できる農薬活性成分として、次に示すものが挙げられる。殺虫剤ではアセフェート、バミドチオン、DMTP、ジメチルビンホス、CVP、BPMC、エチオフェンカルブ、カルタップ、チオシクラム、イミダクロプリド、チアクロプリド、シロマジン、ホスチアゼート、アセタミプリド、チアメトキサム、NAC、クロチアニジン、ピメトロジン、N−メチル−N'−ニトロ−N”−[(テトラヒドロ−3−フラニル)メチル]グアニジン(一般名ジノテフラン)等が挙げられる。殺菌剤ではピロキロン、ブラストサイジンS、プロベナゾール、フェリムゾン、トリシクラゾール、カスガマイシン、フサライド、フラメトピル、バリダマイシン等が挙げられる。除草剤ではモリネート、プロパニル、アラクロール、メトラクロール、ベンスルフロンメチル、アジムスルフロン、シメトリン、シアナジン、ベンフレセート、メソトリオン等が挙げられる。農薬活性成分は通常、1種に限定されることはなく、これらを組み合わせて使用してもよい。農薬活性成分として更に好ましくは、20℃における水溶解度が5000ppm以上の農薬活性成分である。本発明に係わる農薬活性成分としては具体的にはN−メチル−N'−ニトロ−N”−[(テトラヒドロ−3−フラニル)メチル]グアニジン(一般名ジノテフラン)が好ましく例示できる。本発明の徐放性農薬製剤中の農薬活性成分の含有量は、活性成分の物性、適用場面によって決まるが、通常0.01重量%から50重量%であり、好ましくは0.1重量%から30重量%の範囲である。
【0016】
本発明において、酸化ワックスとは炭化水素を酸化させたワックスをいう。酸化ワックスとしては炭化水素ポリマーの酸化物である酸化ポリマー等が挙げられ、酸化ポリマーとして、ポリエチレン又はポリプロピレンの酸化物である酸化ポリエチレン又は酸化ポリプロピレン等の酸化ポリオレフィンや、パラフィンワックス又はマイクロクリスタリンワックスの酸化物である酸化パラフィンワックス又は酸化マイクロクリスタリンワックスが挙げられるが、酸化ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0017】
酸化ポリエチレンとしては例えば、SUNFOL LE−718(SFC社製、融点99℃、酸価16mgKOH/g)、L−C301E(Lion Chemtech社製、融点95℃、酸価16mgKOH/g)、A−C656A(Honeywell社製、融点94℃、酸価15mgKOH/g)、A−C629A(Honeywell社製、融点100℃、酸価15mgKOH/g)、ハイワックス4202E(三井化学社製、融点101℃、酸価16mgKOH/g)、ハイワックス220MP(三井化学社製、融点110℃、酸価1mgKOH/g)、PED−521(Clariant社製、融点107℃、酸価17mgKOH/g)、PED−522(Clariant社製、融点107℃、酸価25mgKOH/g)等が挙げられる。
【0018】
また、その他の酸化ポリマーとしては例えば、カーディス36(ベーカー・ペトロライト社製、融点82℃、酸価33mgKOH/g)、カーディス314(ベーカー・ペトロライト社製、融点87℃、酸価18mgKOH/g)、カーディス320(ベーカー・ペトロライト社製、融点91℃、酸価36mgKOH/g)、ペトロナウバC(ベーカー・ペトロライト社製、融点93℃、酸価26mgKOH/g)等が挙げられる。
【0019】
本発明における酸化ワックスの融点は、性能面から60℃以上のものが好ましい。尚、ここで言う融点とは、固体のワックスを加熱したときに、該ワックスが溶ける温度をいう。
【0020】
本発明における酸化ワックスの酸価は好ましくは0〜100mgKOH/g、特に好ましくは0〜50mgKOH/gである。尚、ここで言うワックスの酸価とは、ワックス1gに含まれる遊離カルボン酸を中和するために必要な水酸化カリウムの量をいう。
【0021】
本発明において、エステル系ワックスとは分子内にエステル結合を有するワックスである。エステル系ワックスとして、例えば、多価アルコール脂肪酸エステル、モンタン酸エステルワックス、一価高級脂肪族アルコールの高級脂肪酸エステル等が挙げられ、多価アルコール脂肪酸エステル、中でも特にポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0022】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンを重合したポリグリセリンと脂肪酸のエステル化生成物であり、モノエステル、ジエステル又はポリエステルのいずれであってもよい。
【0023】
ポリグリセリンは、例えば下記式
【化1】
(式中、nは重合度を示し、2以上の整数である)で表される化合物等が使用できる。nは、通常、2〜50、好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜10である。なお、ポリグリセリンは、直鎖状に限らず、分岐していてもよい。
【0024】
このようなポリグリセリンの具体例としては、例えば、ジグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン等が挙げられる。また、脂肪酸には、例えば、炭素数8〜40、好ましくは12〜22の飽和又は不飽和高級脂肪酸等が含まれる。このような脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、リシノール酸、カプリル酸、カプリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、ジグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン又はデカグリセリンのステアリン酸又はベヘン酸とのモノ〜デカエステルがあり、例えば、ジグリセリンテトラベヘネート、テトラグリセリンモノステアレート、テトラグリセリントリステアレート、テトラグリセリンペンタステアレート、ヘキサグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリントリステアレート、ヘキサグリセリンペンタステアレート、デカグリセリンヘプタベヘネート、デカグリセリンデカステアレート等が挙げられる。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、1種又は2種以上の混合物として用いられる。
【0025】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、理研ビタミン社からリケマールB−74、リケマールTB−75等の名称で各種のポリグリセリン脂肪酸エステルが市販されている。
【0026】
ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の多価アルコール脂肪酸エステルとしては例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール又はトリペンタエリスリトールのステアリン酸又はベヘン酸等の高級脂肪酸とのモノ、ジ又はポリエステルが挙げられ、具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサベヘネート(融点84℃、酸価1.5mgKOH/g)、ペンタエリスリトールテトラベヘネート(融点86℃、酸価2mgKOH/g)等が挙げられる。
【0027】
モンタン酸エステルワックスとしては例えば、LUWAX E(BASF社製、融点83℃、酸価21mgKOH/g)、LUWAX OP(BASF社製、融点82℃、酸価11mgKOH/g)等が挙げられる。
一価高級脂肪族アルコールの高級脂肪酸エステルとしては、カルナバワックス(融点83℃、酸価9mgKOH/g)等が挙げられる。
【0028】
本発明におけるエステル系ワックスの融点は、性能面から60℃以上のものが好ましい。尚、ここで言う融点とは、固体のエステル系ワックスを加熱したときに、該ワックスが溶ける温度をいう。
【0029】
本発明におけるエステル系ワックスの酸価は、好ましくは0〜100mgKOH/g、より好ましくは0〜50mgKOH/g、更に好ましくは1〜10mgKOH/gである。尚、ここで言うエステル系ワックスの酸価とは、エステル系ワックス1gに含まれる遊離カルボン酸を中和するために必要な水酸化カリウムの量をいう。
【0030】
徐放性農薬製剤においては、農薬活性成分及び無機系希釈担体に、酸化ワックスとエステル系ワックスとをそれぞれ単独で添加し用いてもよいし、農薬活性成分及び無機系希釈担体に、酸化ワックスとエステル系ワックスとを混合後融点以上の温度で加熱溶融させて冷却することにより製造した溶融混合品を添加し用いても良い。
【0031】
酸化ワックスとエステル系ワックスの溶融混合品としては、例えばリケマールNY−970(理研ビタミン社製;酸化ポリエチレンとリケマールB−74が40:60の比率で混合されたワックス)が挙げられる。
【0032】
ここで、本発明で用いられる酸化ワックス、エステル系ワックス及び酸化ワックス、エステル系ワックス溶融混合品の融点は、SII社製DSC EXSTAR6000を用いて以下の条件で測定し、2回目昇温時に得られたピークトップ温度を採用する。
[測定条件]
セル:アルミニウム
温度プログラム:0℃ (昇温10℃/分) → 150℃ (1分固定) →150℃ (降温10℃/分) → 0℃(1分固定) →0℃(昇温10℃/分) → 150℃
標準物質:なし
キャリアーガス:窒素(100ml/分)。
【0033】
ここで、本発明で用いられる酸化ワックス、エステル系ワックス及び酸化ワックス、エステル系ワックス溶融混合品の酸価は、「日本油化学会基準油脂分析試験法2003年版2.3.1」に準拠して測定することができる。また、前記で例示した又は実施例で用いた酸化ワックス、エステル系ワックス及び酸化ワックス、エステル系ワックス溶融混合品の酸価を測定する際に用いた測定溶剤は以下のものである。
[測定溶剤]
ジグリセリンテトラベヘネート、ジペンタエリスリトールヘキサベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネートには、測定溶剤として2−プロパノールを使用した。
LUWAX E、LUWAX OP、カルナバワックスには、測定溶剤としてトルエン、2−プロパノール、水の50.049.5:0.5混合溶液を使用した。
SUNFOL LE−718、ハイワックス1105A、ハイワックス220MP、ハイワックス4202E、カーディス36、カーディス314、カーディス320、ペトロナウバC、A−C629A、A−C656A、L−C301E、PED−521、PED−522には、測定溶剤としてエチルアルコール、ベンゼンの1:2混合溶液を使用した。
酸化ワックスとエステル系ワックスの溶融混合品には、測定溶剤としてトルエン、2−プロパノールの1:1混合溶液を使用した。
尚、上記測定溶剤の配合比は、容量比である。
【0034】
本発明の徐放性農薬製剤への酸化ワックスとエステル系ワックスの合計の添加量は、添加される農薬活性成分の濃度、得られる農薬粒剤の施用場面、希釈担体の物性によって決まるが、徐放性農薬製剤に対して、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上である。添加量の上限は、好ましくは経済的な面から25重量%である。
【0035】
本発明の徐放性農薬製剤において、酸化ワックスとエステル系ワックスの重量比は特に制限はないが、農薬製剤の製造性から、好ましくは1:9〜9:1、更に好ましくは2:8〜8:2の範囲である。また農薬活性成分の水への溶解度や、目的とする放出量及び放出速度に合致するよう重量比を任意に変えて目的とする農薬製剤とすることができる。
【0036】
本発明において、無機系希釈担体とは、本発明の徐放性農薬製剤中の農薬活性成分の有効濃度を調整するために添加される無機の希釈担体である。無機系希釈担体としては、特に限定されるものではなく、例えば、クレー、珪石、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウム、軽石、ケイソウ土、バーミキュライト、パーライト、アタパルジャイト及び非晶質二酸化珪素、通称ホワイトカーボン等が挙げられ、通常農薬粉剤や粒剤に利用される、いわゆる増量剤や担体が1種又は2種以上を併用できる。
本発明の徐放性農薬製剤中の無機系希釈担体の含有量は、活性成分の物性、適用場面等によって決まるが、徐放性農薬製剤に対して、通常30〜94.99重量%であり、好ましくは50〜89.9重量%の範囲である。
【0037】
また、本発明に係わる徐放性農薬製剤には、本発明の目的と効果を損なわない範囲で、酸化防止剤や紫外線吸収剤、帯電防止剤等の各種添加剤を用いて粒剤となすこともできる。
該酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤や、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤等が挙げられる。
【0038】
紫外線吸収剤としては、二酸化チタン等の無機化合物系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾールやベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエート、サリシレート等の有機化合物系紫外線吸収剤等が挙げられ、これら酸化防止剤や紫外線吸収剤は農薬活性成分の物理化学的性質によって選択すればよく、またその効果が認められる量を配合すればよい。
【0039】
該帯電防止剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の無機化合物、リン酸カルシウム系化合物等が挙げられる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル系界面活性剤も帯電防止剤として使用することができる。尚、該帯電防止剤は必要に応じて使用すればよく、その配合量も本発明の目的と効果を損なわない範囲で、帯電防止効果が認められる量とすればよい。
【0040】
更に、本発明に係わる徐放性農薬製剤には、本発明の目的と効果を損なわない範囲で、界面活性剤、水溶性高分子を含有させることもできる。これらは農薬製剤中に含まれる農薬活性成分の徐放化速度を微調整するためや、止水効果による農薬活性成分の効果安定化のために使用できる。
【0041】
本発明に係わる徐放性農薬製剤に使用できる界面活性剤としては、農薬製剤に通常使用される非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0042】
例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン性界面活性剤、リグニンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アリールスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリカルボン酸塩、アルキル硫酸塩、メチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸塩等の陰イオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤及びアルキルベタイン、アミンオキサイド等の両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種でもよいが、同種のものあるいは異種のものを併用してもよい。
【0043】
本発明に係わる徐放性農薬製剤に使用できる水溶性高分子としては、例えばアクリル系高分子、ビニル系高分子、ポリオキシアルキレン等の合成高分子、セルロース誘導体、加工デンプン、リグニン誘導体等の半合成高分子、天然高分子等が挙げられる。アクリル系高分子としてはポリアクリル酸ソーダ、ポリメタクリル酸ソーダ等が、ビニル系高分子としてはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル共重合体等が、またポリオキシアルキレンとしてはポリオキシエチレンやポリオキシプロピレン等が挙げられる。セルロース誘導体としてはカルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられ、加工デンプンとしては変性デンプン、カルボキシメチルデンプン、可溶性デンプン等が、またリグニン誘導体としてはリグニンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。天然高分子としてはアラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ソーダ等の多糖類や、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン等のタンパク質類等が挙げられる。これら水溶性高分子の中でも特に、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガムが好ましく、その分子量は通常5000〜5000000、好ましくは10000〜3000000である。これらの水溶性高分子は、1種でもよいが、同種のものあるいは異種のものを併用してもよい。
【0044】
本発明の徐放性農薬製剤には、更に農薬活性成分を溶解したり、製剤の物理性を改良したりするために、溶剤として、1,2−ジメチル−4−エチルベンゼン、メチルナフタレン、1−フェニル−1−キシリルエタン、1−キシリル−1,3−ジフェニルブタン等の芳香族炭化水素、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、流動パラフィン等のパラフィン系炭化水素、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソデシル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジエチルヘキシル、トリメット酸2−エチルヘキシル、トリメット酸トリデシル等の多塩基酸アルコールエステル、2−エチルヘキサン酸セチル、ヤシ脂肪酸セチル、ラウリン酸メチル、オレイン酸メチル等の脂肪酸アルコールエステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコール脂肪酸エステル、オクチルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール等を使用してもよい。
本発明の徐放性農薬製剤は、農薬活性成分、酸化ワックス、エステル系ワックス、及び無機系希釈担体を加熱しながら混合し、造粒することにより製造できる。混合は、混合ミキサー等の通常の混合装置により、例えば60〜90℃の温度で行なうことができる。造粒は、押出し機等の通常の造粒装置により、例えば60〜100℃の温度で行なうことができる。
本発明の徐放性農薬製剤は、好適には、20℃における水溶解度が100ppm以上の農薬活性成分を0.1〜30重量%、融点が60℃以上で酸価が0〜50mgKOH/gである酸化ポリエチレン及び融点が60℃以上で酸価が0〜50mgKOH/gであるポリグリセリン脂肪酸エステルを1:9〜9:1(重量比)で含む混合物を5〜25重量%、及び無機系希釈担体を50〜94.9重量%を加熱しながら混合し、造粒することにより製造できる。
徐放性農薬製剤を製造する場合は、前述した通り、酸化ワックスとエステル系ワックスとをそれぞれ単独で添加し用いてもよいし、酸化ワックスとエステル系ワックスそれぞれを混合後融点以上の温度に加熱溶融させて冷却することにより製造した溶融混合品を添加し用いても良い。酸化ワックスとエステル系ワックスの溶融混合品としては、例えばリケマールNY−970が挙げられる。
本発明の徐放性農薬製剤は、上記の製造方法により製造された粒剤の形態が好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に実施例、比較例及び試験例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。尚ここで示す配合割合はすべて重量部とする。
【0046】
[実施例1]
ジノテフラン3.0部、SUNFOL LE−718(酸化ポリエチレン、SFC社製、融点99℃、酸価16mgKOH/g)6.4部、ジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)9.6部、カープレックス80−D(非晶質二酸化ケイ素、エボニックデグサジャパン株式会社製)3.5部、Sタルク(タルク、日本滑石製錬株式会社製)10.0部、NS#100(炭酸カルシウム、日東粉化工業株式会社製)67.5部をヘンシェルミキサーに投入して加熱混合し、79℃で粉体の状態で排出した。この粉体を90℃に保持したスクリュー式押出し機(目開き0.8mmのスクリーン)を用いて押し出し造粒した。得られた造粒物を解砕機で解砕後、710〜1180μmの篩で篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0047】
[実施例2]
ジノテフラン3.0部、SUNFOL LE−718を40%及びジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)を60%含有する溶融混合品(融点71℃、酸価9mgKOH/g)16.0部、カープレックス80−D 3.5部、Sタルク 10.0部、NS#100 67.5部をヘンシェルミキサーに投入して加熱混合し、79℃で粉体の状態で排出した。この粉体を実施例1と同様にして造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0048】
[実施例3]
実施例2において、ヘンシェルミキサーの排出温度を69℃とし、スクリュー押出し機の温度を65℃に変えた以外は実施例2と同様に行い、本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0049】
[実施例4]
実施例1において、各成分の含量をジノテフラン3.0部、溶融混合品16.0部、カープレックス80−D 3.5部、NS#100 77.5部に変えた以外は実施例1と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0050】
[実施例5]
ジノテフラン3.0部、溶融混合品16.0部、NS#100 81.0部をヘンシェルミキサーに投入して加熱混合し、69℃で粉体の状態で排出した。この粉体を65℃に保持したスクリュー式押出し機(目開き0.8mmのスクリーン)を用いて押し出し造粒した。得られた造粒物を実施例1と同様にして解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0051】
[実施例6]
実施例5において、各成分の含量をジノテフラン3.0部、溶融混合品16.0部、Sタルク 10.0部、NS#100 71.0部に変えた以外は実施例5と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0052】
[実施例7]
実施例1において、各成分の含量をジノテフラン3.0部、SUNFOL LE−718 9.6部、ジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)6.4部、カープレックス80−D 3.5部、Sタルク 10.0部、NS#100 67.5部に変えた以外は実施例1と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0053】
[実施例8]
実施例1において、各成分の含量をジノテフラン3.0部、SUNFOL LE−718 3.2部、ジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)12.8部、カープレックス80−D 3.5部、Sタルク 10.0部、NS#100 67.5部に変えた以外は実施例1と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0054】
[実施例9]
実施例1において、各成分の含量をジノテフラン3.0部、SUNFOL LE−718 12.8部、ジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)3.2部、カープレックス80−D 3.5部、Sタルク 10.0部、NS#100 67.5部に変えた以外は実施例1と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0055】
[実施例10]
実施例1において、SUNFOL LE−718をハイワックス220MP(酸化ポリエチレン、三井化学社製、融点110℃、酸価1mgKOH/g)に変えた以外は実施例1と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0056】
[実施例11]
実施例1において、SUNFOL LE−718をカーディス36(酸化ポリマー、ベーカー・ペトロライト社製、融点82℃、酸価33mgKOH/g)に変えた以外は実施例1と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0057】
[実施例12]
実施例1において、ジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)をジペンタエリスリトールヘキサベヘネート(融点84℃、酸価1.5mgKOH/g)に変えた以外は実施例1と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0058】
[実施例13]
実施例1において、ジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)をジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価18mgKOH/g)に変えた以外は実施例1と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0059】
[実施例14]
実施例1において、ジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)をジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価38mgKOH/g)に変えた以外は実施例1と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0060】
[実施例15]
実施例1において、成分の含量をジノテフラン3.0部、溶融混合品20.0部、カープレックス80−D 3.5部、Sタルク 10.0部、NS#100 63.5部に変えた以外は実施例1と同様にして、加熱混合、排出、造粒、解砕、篩別して本発明の徐放性農薬製剤を得た。
【0061】
[比較例1]
成分の含量をジノテフラン3.0部、SUNFOL LE−718 16.0部、カープレックス80−D 3.5部、Sタルク 10.0部、NS#100 67.5部をヘンシェルミキサーに投入して加熱混合し、89℃で粉体の状態で排出した。この粉体を100℃に保持したスクリュー式押出し機(目開き0.8mmのスクリーン)を用いて押し出し造粒したが、押し出し機への負荷が非常に高く、製造できなかった。
【0062】
[比較例2]
ジノテフラン3.0部、ジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)16.0部、カープレックス80−D 3.5部、Sタルク 10.0部、NS#100 67.5部をヘンシェルミキサーに投入して加熱混合し、79℃で粉体の状態で排出した。この粉体を90℃に保持したスクリュー式押出し機(目開き0.8mmのスクリーン)を用いて押し出し造粒したが、造粒物が大きくべたついた状態で押し出され、造粒物同士が融着した状態となった。
【0063】
[比較例3]
ジノテフラン3.0部、パラフィンワックス150(パラフィンワックス、日本精鑞社製、融点72℃、酸価0mgKOH/g)18.0部、Sタルク 10.0部、NS#100 69.0部をヘンシェルミキサーに投入して加熱混合し、66℃で粉体の状態で排出した。この粉体を80℃に保持したスクリュー式押出し機(目開き0.8mmのスクリーン)を用いて押し出し造粒したが、押し出し機への負荷が高く、製造が困難であった。得られた造粒物を実施例1と同様にして解砕、篩別して比較例3の農薬製剤を得た。
【0064】
[比較例4]
ジノテフラン3.0部、LUWAX E(モンタン酸エステルワックス、BASF社製、融点83℃、酸価21mgKOH/g)16.0部、カープレックス80−D 3.5部、Sタルク 10.0部、NS#100 67.5部をヘンシェルミキサーに投入して加熱混合し、79℃で粉体の状態で排出した。この粉体を90℃に保持したスクリュー式押出し機(目開き0.8mmのスクリーン)を用いて押し出し造粒したが、造粒物がきれいな円柱とはならず、円柱の一部あるいは大部分が欠けた状態の粒を多く含む状態であった。
【0065】
[比較例5]
ジノテフラン3.0部、カルナバワックス(融点83℃、酸価9mgKOH/g)24.0部、ポリビニルアルコール 2.0部、カープレックス80−D 5.0部、NS#100 66.0部をヘンシェルミキサーに投入して加熱混合し、85℃で粉体の状態で排出した。この粉体を95℃に保持したスクリュー式押出し機(目開き0.8mmのスクリーン)を用いて押し出し造粒したが、造粒物がべたついた状態で押し出され、かつ造粒機からの排出が極めて遅く、製造に多大な時間を要した。得られた造粒物を実施例1と同様にして解砕、篩別して比較例5の農薬製剤を得た。
【0066】
[比較例6]
ジノテフラン3.0部、ハイワックス1105A(酸変性ポリエチレン、融点107℃、酸価60mgKOH/g)9.6部、ジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)6.4部、カープレックス80−D 3.0部、Sタルク 10.0部、NS#100 68.0部をヘンシェルミキサーに投入して加熱混合し、79℃で粉体の状態で排出した。この粉体を90℃に保持したスクリュー式押出し機(目開き0.8mmのスクリーン)を用いて押し出し造粒したが、造粒機の負荷が高く、少量のみの製造しか出来なかった。得られた造粒物を実施例1と同様にして解砕、篩別して比較例6の農薬製剤を得た。
【0067】
[比較例7]
ジノテフラン3.0部、パラフィンワックス150(融点72℃、酸価0mgKOH/g)9.6部、ジグリセリンテトラベヘネート(融点76℃、酸価4mgKOH/g)6.4部、カープレックス80−D 3.0部、Sタルク 10.0部、NS#100 68.0部をヘンシェルミキサーに投入して加熱混合し、75℃で粉体の状態で排出した。この粉体を90℃に保持したスクリュー式押出し機(目開き0.8mmのスクリーン)を用いて押し出し造粒したが、造粒物がきれいな円柱とはならず、円柱の一部あるいは大部分が欠けた状態であった。得られた造粒物を実施例1と同様にして解砕、篩別して比較例7の農薬製剤を得た。
【0068】
実施例1〜15及び比較例1〜7の製造状態についての結果を表1にまとめた。造粒性に関しては、押し出された粒の形状が円柱状であり、造粒機の負荷も低く、かつ造粒能力も高いものを○とし、粒の形状が円柱でないものや造粒機の負荷が高いもの、造粒性が低いものを×とした。実施例はいずれも、造粒時の造粒機負荷は低く、造粒能力も高いものであった。また、実施例で得られた造粒物はいずれもきれいな円柱であり、収率も良好であった。一方比較例では造粒機の負荷が高く造粒不能であったり、造粒機からの排出が極めて遅く造粒能力が低い、又は造粒物が一部若しくは大部分が欠けていたり造粒物同士が融着(ベタツキ)したりして収率が低いものであった。
【0069】
【表1】
【0070】
[試験例1](農薬製剤の溶出試験)
実施例1〜3、実施例5〜7、実施例11、実施例14、及び比較例3、比較例5〜7で得られた農薬製剤を、標準3度硬水25mLを入れた50mLの密栓付きサンプル管に、農薬活性成分として800ppm相当の量を投入して水中に沈め、25℃下所定時間静置後、全量を濾別し、濾液中の農薬活性成分量をHPLCにて測定した。測定より下記式に基づき溶出率を計算した。
溶出率=(濾液中の農薬活性成分量/粒剤中の農薬活性成分量)×100
結果を表2に示した。
【0071】
【表2】
【0072】
表2の結果から明らかなように、実施例はいずれも有効成分の処理直後の溶出は抑制され、約二ヶ月かけて徐々に溶出させることが可能であった。一方比較例では処理直後の溶出は抑制するものの後半の溶出量が少ないもの(比較例3、比較例6)、処理直後にある程度の量が溶出してしまい後半の溶出も少ないもの(比較例5)、処理直後の溶出が抑えられず速やかに溶出してしまうもの(比較例7)等、徐放性が不十分であった。