(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.パターン印刷システムの全体構成
図1は、本発明にかかるパターン形成システムの第1実施形態を装備したパターン印刷システムの構成および動作を模式的に示す図である。このパターン印刷システム1は、塗布装置100、転写・剥離装置200および加熱装置900を有しており、有機ELディスプレイ用の基板を製造するためのプロセスを実行する。また、パターン印刷システム1では、図示を省略しているが、ブランケットBL、版PPおよび基板SBをそれぞれ収容する各種ストッカーならびに各ストッカーおよび上記装置の間でブランケットBL、版PPおよび基板SBを搬送する搬送ロボットが設けられている。そして、パターン印刷システム1において、同図中の矢印で示すようにブランケットBL、版PPおよび基板SBが各装置に搬送されながら塗布工程(S1)、第1転写工程(S2)、第1剥離工程(S3)、第2転写工程(S4)、第2剥離工程(S5)およびベーク工程(S6)が実行される。これによって、塗布液で構成される所望のパターン層が基板SBの表面に印刷される。なお、
図1では各工程の理解を助けるための模式図であり、各部の個数、寸法や間隔を一部誇張して示しており、これらは実際の個数や寸法関係を表すものではない。以下、パターン印刷システム1の主要構成である塗布装置100および転写・剥離装置200の構成および概略動作について説明した後で、パターン印刷システム1で実行される各工程について詳述する。
【0015】
B.塗布装置100
図2はパターン印刷システムで採用可能な塗布装置の一例を上方から見た平面図であり、
図3は
図2の塗布装置を正面から見た正面図である。ここでXY平面が水平面、Z軸が鉛直軸を表す。より詳しくは、(+Z)方向が鉛直上向き方向を表している。この塗布装置100は、矩形平板状のブランケットBLの表面に対して塗布液を塗布するためのものである。ここでは、塗布液として、揮発性の溶媒(本実施の形態では、芳香族の有機溶媒)および発光材料としての有機EL材料を含むインクを塗布するためのものである。
【0016】
この塗布装置100は、主として、ブランケットBLを水平に保持するステージ110と、ステージ110を移動させるステージ移動機構120と、ステージ110に保持されたブランケットBLの上面にインクを塗布するための塗布ヘッド130と、塗布ヘッド130にインクを供給するためのインク供給部132R、132G、132Bと、塗布ヘッド130を移動させるヘッド移動機構150とを備える。また、塗布装置100は、装置各部を制御する制御部(図示省略)を有する。
【0017】
ステージ110は、ブランケットBLの平面サイズよりも大きな平面サイズの平板状外形を有している。そして、ステージ110は、その上面でブランケットBLを水平姿勢に載置して保持可能となっている。また、ステージ110の上面には複数の吸引孔(図示省略)が形成されている。これらの吸引孔は真空ポンプ(図示省略)等に接続されており、該真空ポンプの作動によりブランケットBLはステージ110の上面で吸着されてしっかりと保持される。さらに、ステージ110の内部には、ヒータによる加熱機構(図示省略)が配置されており、ステージ110上に載置されたブランケットBLを所定の温度に加熱することが可能となっている。
【0018】
ステージ移動機構120は、ステージ110をブランケットBLの主面に対して平行な所定の方向(すなわち、
図2中のY方向)に水平移動させる。ステージ移動機構120は、モータによりステージ110を回転させる回転機構124と、ステージ110を回転可能に支持する支持プレート123と、支持プレート123を水平に支持する基台121と、基台121をY方向に移動させるY走査機構122とを有している。回転機構124、Y走査機構122は、制御部からの移動指示に応じてステージ110を移動させる。
【0019】
Y走査機構122は、支持プレート123を下方から支持する基台121の下面に取り付けられたリニアモータ1221と、Y方向に延びる一対のガイドレール1222とを有している。このため、制御部から移動指令に応じてリニアモータ1221が作動すると、ガイドレール1222に沿って基台121およびステージ110がY方向に移動する。
【0020】
塗布ヘッド130は複数本のノズル131を備える。本実施形態では、互いに異なる3色のインクを吐出するために、3本のノズル131を設けているが、ノズル本数はこれに限定されるものではなく、塗布すべきインクに応じて適宜設定可能である。
【0021】
塗布ヘッド130は、ステージ110に保持されたブランケットBLの表面に向けて有機EL材料を含むインクを連続的に吐出する。すなわち、塗布ヘッド130はノズル131からインクを液柱の状態で吐出するための吐出部である。また、複数のノズル131は、ブランケットBLの表面に平行であってY方向に垂直な方向(すなわち、
図2中のY方向に垂直なX方向に関して略直線状に離れて配列されるとともに
図2中のY方向に僅かにずれて配置される。なお、本実施形態では、隣接する2本のノズル131の間のY方向に関する距離が、ブランケットBLの塗布領域CR(
図2中において破線で囲んで示す)に塗布すべきラインパターンのY方向におけるピッチの3倍に等しくなるように調整されている。
【0022】
図4はインク供給部の構成を示す図である。インク供給部は有機EL材料を含むインクを塗布ヘッド130へ供給するための機構であり、色ごとに独立して設けられている。つまり、赤色インク、緑色インクおよび青色インクに対応してインク供給部132R、132G、132Bがそれぞれ設けられている。ただし、容器1321に貯留されるインクが異なる点を除いてインク供給部132R、132G、132Bは同一構成を有している。つまり、各インク供給部132では、同図に示すように、インク貯留部として機能するインクを貯留する容器1321が設けられており、その容器1321に対して液供給管1322の一端が接続されている。この液供給管1322には、ポンプ1323、マスフローコントローラ1324、圧力計1325およびフィルタ1326が、容器1321側から(他方の端部に向かって)順に設けられる。液供給管1322の容器1321とは反対側の端部は対応する色のノズル131に接続される。
【0023】
図2に戻って説明を続ける。ヘッド移動機構150は、一対のガイド部151と、ガイド部151に対して摺動可能に配設されるスライダ152と、一対のガイド部151の両端部近傍に配設され、Z軸方向を向く軸を中心に回転可能な一対のプーリ153と、プーリ153に巻回された無端状の同期ベルト154とを備える。
図2に示す2つのガイド部151の間において、ガイド部151の両端部の近傍には、環状の同期ベルト154が掛けられる2つのプーリ153がそれぞれ設けられる。スライダ152は同期ベルト154に固定されており、(−Y)側のスライダ152には塗布ヘッド130が取り付けられている。このため、ヘッド移動機構150では、一方のプーリ153に接続されるモータ(図示省略)が制御部からの移動指令を受けて作動すると、同期ベルト154が時計回りまたは反時計回りに回転し、塗布ヘッド130が(−X)方向または(+X)方向に高速かつ滑らかに移動する。
【0024】
塗布ヘッド130のX方向への移動が完了するごとに、ブランケットBLを保持するステージ110をY方向に移動させることにより、ブランケットBLの表面の塗布領域CRに対してインクの塗布を実行する。なお、X方向における塗布ヘッド130の走査時には、受液部112の近傍にて加速または減速が完了し、ブランケットBLの上方においては、塗布ヘッド130は、例えば、毎秒3〜5m程度の一定速度で移動する。ここで述べた受液部112とはノズル131から吐出されるインクを受けるための機構であり、塗布ヘッド130の往復移動方向(X方向)に関してステージ110の両側に配設されている。これらを設けた理由は、ブランケットBLに対する塗布処理を行っていない間(待機している間)も塗布ヘッド130からインクを連続的に吐出させるためであり、その内部に多孔性部材を備えるため塗布ヘッド130から吐出されたインクが周囲に液跳ねすることを防止する。
【0025】
塗布装置100は、ブランケットBL上に形成されたアライメントマーク(図示省略)を撮像して検出するための左右一対の撮像部111を備える。この一対の撮像部111には、各々、CCDカメラが配設されている。そして、撮像部111で検出されたアライメントマークの位置に基づき制御部がブランケットBLの位置合わせを実行する。
【0026】
なお、制御部は各種の演算処理を実行しつつ、塗布装置100が備える各部の動作を制御するものであり、例えば各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、ブートプログラム等を記憶する記憶部、各種表示を行うディスプレイ、キーボード、および、マウスなどの入力部、LAN等を介してデータ通信機能を有するデータ通信部、等を有するコンピュータによって構成される。コンピュータにインストールされたプログラムにしたがってコンピュータが動作することにより、以下に説明するように、当該コンピュータが塗布装置100の各部を制御してオペレータに指定されたパターンでインクをブランケットBLの表面に塗布して一次パターン層L1(後で説明する
図11や
図14参照)を形成する。
【0027】
未使用のブランケットBLが
図1の矢印AR1に示すように塗布装置100に搬送されてステージ110にて保持されると、撮像部111がアライメントマークを撮像し撮像部111からの出力に基づいてステージ移動機構120が駆動されてブランケットBLが移動および回転し塗布開始位置に移動する。そして、複数のノズル131からインクの吐出が開始され、さらに、ヘッド移動機構150が制御されて塗布ヘッド130のX方向の移動(すなわち、
図2中の(−X)側から(+X)側への主走査)が開始される。これにより、複数のノズル131のそれぞれからブランケットBLの主面に向けてインクを一定の流量にて連続的に(途切れることなく)吐出しつつ、塗布ヘッド130がX方向に連続的に一定の速度にて移動し、ブランケットBLの塗布領域CRにインクがストライプ状に塗布される。
【0028】
そして、塗布ヘッド130が待機位置である受液部112の上方まで移動することにより、インクによるストライプ状のパターンが形成される。なお、
図2中における塗布領域CRの(−X)側および(+X)側の非塗布領域(並びに、必要に応じて(+Y)側および(−Y)側の非塗布領域)も含めて全面塗布されてもよい。
【0029】
塗布ヘッド130が待機位置まで移動すると、ステージ移動機構120が駆動され、ブランケットBLがステージ110と共に(+Y)方向(すなわち、Y方向)に上記ピッチ
の3倍に等しい距離だけ移動する。このとき、塗布ヘッド130では、複数のノズル131から受液部112に向けてインクが連続的に吐出されている。
【0030】
Y方向におけるブランケットBLの移動が終了すると、ブランケットBLおよびステージ110が塗布終了位置まで移動したか否かが制御部により確認される。そして、塗布終了位置まで移動していない場合には、塗布ヘッド130が複数のノズル131からインクを吐出しつつブランケットBLの(+X)側から(−X)方向(すなわち、X方向)に移動することにより、ブランケットBL上の線状領域にインクが塗布される。その後、ブランケットBLがY方向に移動し、塗布終了位置まで移動したか否かの確認が行われる。
【0031】
塗布装置100では、ステージ110およびブランケットBLが塗布終了位置に位置するまで、塗布ヘッド130のX方向への移動が完了する毎に、ブランケットBLがY方向に相対的に移動され(すなわち、塗布ヘッド130のX方向における移動、および、ブランケットBLの(+Y)側へのステップ移動が繰り返され)、これにより、ブランケットBLの塗布領域CRにおいて、インクがストライプ状に塗布されてラインパターンPT1を形成する。このようにノズル131からインクが連続的に吐出された状態でノズル131とブランケットBLとが相対移動してストライプ状のパターンPT1からなる一次パターン層L1がブランケットBLの表面に形成される。
【0032】
そして、ブランケットBLが塗布終了位置まで移動すると、複数のノズル131からのインクの吐出が停止され、塗布装置100によるブランケットBLに対するインクの塗布が終了する。塗布装置100による塗布が終了したブランケットBLは、
図1の矢印AR2に示すように、転写装置200に搬送される。
【0033】
C.転写・剥離装置200
図5は
図1のパターン印刷システムで採用可能な転写・剥離装置の一例の概略構成を示す図である。また
図6は
図5の転写・剥離装置の主要部を示す図である。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図5に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面、Z軸が鉛直軸を表す。より詳しくは、(+Z)方向が鉛直上向き方向を表している。
【0034】
この転写・剥離装置200は、互いに分離した状態で搬入される2枚の板状体を密着させ、その後に再びそれらを分離させるための装置であり、ブランケットBLの表面に担持される一次パターン層L1を版PPでパターニングして版PPに形成された凸部パターンの反転パターンを有する二次パターン層を形成するパターニングプロセスおよび上記二次パターン層を基板SBに印刷する印刷プロセスを実行する。なお、パターニングプロセスおよび印刷プロセスの詳細については後で述べる。
【0035】
この転写・剥離装置200は、筺体に取り付けられたベース部11の上に取り付けられてブランケットBLを保持する下部保持ブロック3と、ベース部11に取り付けられた転写ローラブロック5と、それらの上部に配置されて版PPおよび基板SB(以下、これらを総称する際には「版PP等」と称する)を保持する上部保持ブロック7とを有している。
図5では装置の内部構造を示すために筐体の図示を省略している。また、図示を省略するが、これらの各ブロックの他に、この転写・剥離装置200は各ブロックを制御する制御ブロックを備えている。
【0036】
下部保持ブロック3は、アライメントステージ30上に複数の昇降ハンドユニットがX方向およびY方向に配列された構造を有している。より具体的には、アライメントステージ30の(+X)側端部に沿って、複数の(この例では6個)の昇降ハンドユニット310,320,330,340,350,360がY方向に配列されている。またこれと同数の昇降ハンドユニット315,325,335,345,355,365がアライメントステージ30の(−X)側端部に沿ってY方向に配列されている。
【0037】
各昇降ハンドユニットは同一構造を有している。例えば昇降ハンドユニット310は、上部が水平方向に延びてその上面がブランケットBLの下面に当接することでブランケットBLを下方から支持するハンド311と、該ハンド311を支持するとともに上下方向(Z方向)に昇降させるハンド昇降機構312とを備えている。ハンド昇降機構312は、制御ブロックに設けられたハンド昇降制御部(図示省略)からの制御信号に応じてハンド311を昇降させる。
【0038】
他の昇降ハンドユニットも同様であり、ここでは、昇降ハンドユニット315,320,325,330,335,340,345,350,355,360,365に備えられたハンドにそれぞれ符号316,321,326,331,336,341,346,351,356,361,366を付す。また、昇降ハンドユニット315,320,325,330,335,340,345,350,355,360,365に備えられたハンド昇降機構にそれぞれ符号317,322,327,332,337,342,347,352,357,362,367を付す。
【0039】
アライメントステージ30の(+X)側端部に配置された昇降ハンドユニット310,320,330,340,350,360は、それぞれハンドの先端を(−X)側に向けて、またアライメントステージ30の(−X)側端部に配置された昇降ハンドユニット315,325,335,345,355,365は、それぞれハンドの先端を(+X)側に向けて設置されている。すなわち、(+X)側端部に配置された昇降ハンドユニットと、(−X)側端部に配置された昇降ハンドユニットとは、ハンドを内向きにして互いに向かい合って配置されている。
【0040】
アライメントステージ30の(+X)側端部および(−X)側端部のそれぞれで最も(−Y)側に配置された昇降ハンドユニット310,315は、Y方向において同一位置に配置されている。したがって、昇降ハンドユニット310のハンド311と昇降ハンドユニット315のハンド316とはY方向において同一位置にある。また、これらのハンド311,316は常時互いに同一高さ(Z方向位置)に位置決めされ、ハンド昇降制御部からの制御信号により一体的に昇降する。すなわち、Y方向における位置が同じである1対の昇降ハンドユニット311,315はハンドユニット対(第1ハンドユニット対)31をなす。
【0041】
同様に、Y方向位置が互いに同じである昇降ハンドユニット320,325は第2ハンドユニット対32を、昇降ハンドユニット330,335は第3ハンドユニット対33を、昇降ハンドユニット340,345は第4ハンドユニット対34を、昇降ハンドユニット350,355は第5ハンドユニット対35を、昇降ハンドユニット360,365は第6ハンドユニット対36を、それぞれなしている。
【0042】
各昇降ハンドユニット310〜365に設けられたハンド311〜366が同一高さに位置決めされることにより、これらのハンド311〜366が一体的にブランケットBLを水平姿勢に保持することができる。なお、各ハンドユニット対に含まれる1対のハンド(例えばハンドユニット対31における1対のハンド311,316)は常時同じ高さとされる一方、異なるハンドユニット対の間では、ハンド昇降制御部はそれらに含まれるハンドの高さを互いに独立して制御することが可能である。
図6では、一例として第2ハンドユニット対32のハンド321,326が他のハンドよりも下方に位置した状態が示されている。
【0043】
以下の説明では、第Nハンドユニット対(N=1〜6)に含まれるハンドの対を「第Nハンド対」と称する。すなわち、第1ハンドユニット対31に含まれる1対のハンド311,316を「第1ハンド対」と称し符号301を付す。同様に、第2ハンドユニット対32に含まれる1対のハンド321,326を第2ハンド対302と、第3ハンドユニット対33に含まれる1対のハンド331,336を第3ハンド対303と、第4ハンドユニット対34に含まれる1対のハンド341,346を第4ハンド対304と、第5ハンドユニット対35に含まれる1対のハンド351,356を第5ハンド対305と、第6ハンド対ユニット36に含まれる1対のハンド361,366を第6ハンド対306と、それぞれ称する。また、これらのハンド対301〜306の集合体を「ブランケット保持機構」と総称し、符号300を付す。
【0044】
図6に示すように、6対のハンドユニット対31〜36のうち、Y方向の両端部に位置するものを除いた中央部のハンドユニット対32〜35は、これらのハンドユニット対に含まれるハンド321〜356が版PP等の平面サイズに対応する領域に分散配置されるような配置とされる。なお、本実施形態では、版PPおよび基板SBの平面サイズは同一である。一方、Y方向の両端部に位置するハンドユニット対31,36については、これらのハンドユニット対に含まれるハンド311,316,361,366がY方向におけるブランケットBLの端部近傍の下面に当接する位置に配置される。
【0045】
また、アライメントステージ30は、ベース部11に取り付けられた複数のアライメント機構37により支持されている。アライメント機構37は例えばクロスローラベアリングからなる可動機構である。制御ブロックのアライメント制御部(図示省略)からの制御信号に応じて複数のアライメント機構37が協働することにより、アライメントステージ30をXY平面(水平面)内およびZ軸(鉛直軸)周りに所定範囲で移動させることができる。
【0046】
アライメントステージ30にはさらに、ベース部11から立設された柱部材(図示省略)に取り付けられた2基のアライメントカメラ381,382が設けられている。アライメントカメラ381,382は上向きに設置されており、ブランケットBLに予め形成されたアライメントマークを撮像する。アライメント制御部は、これらのアライメントカメラ381,382の撮像結果からブランケットBLの位置検出を行い、必要に応じてアライメント機構37を作動させることで、装置内でのブランケットBLの位置調整を行う。
【0047】
また、ベース部11にはさらに、転写ローラブロック5が設けられている。転写ローラブロック5は、ベース部11に固定されてY方向に延設されるガイドレール51と、ガイドレール51に沿ってY方向に移動自在に構成されたローラユニット50とを備えている。
【0048】
ローラユニット50は、X方向に延設された円柱形状の転写ローラ(ローラ部材)501と、転写ローラ501のX方向両端部を回転自在に支持する支持フレーム502と、支持フレーム502のX方向略中央部で下向きに延びる支持脚503と、支持脚503を支持するとともにガイドレール51に係合されてY方向に移動するベース部504とを備えている。支持脚503のX方向における寸法は、各ハンド対を構成するハンドの先端間の間隔よりも小さい。図示を省略しているが、ベース部504は支持脚503を昇降させる昇降機構を備えている。支持脚503の昇降により、これに支持される転写ローラ501がZ方向に移動し、ブランケット保持機構300に保持されたブランケットBLに対して近接・離間移動する。ガイドレール51に沿ったベース部504のY方向への移動およびベース部504による支持脚503の昇降は、制御ブロックに設けられたローラ駆動部(図示省略)により制御される。
【0049】
一方、上部保持ブロック7は、下面が版PP等とほぼ同じ平面サイズの保持平面となった上ステージ71と、上ステージ71を上下方向(Z方向)に昇降させるステージ昇降機構72とを備えている。図示を省略しているが、上ステージ71の下面には版PP等を吸着保持するための機構として吸着孔、吸着溝および吸着パッドの少なくとも1つが設けられており、該吸着機構に、制御ブロックに設けられた負圧供給部(図示省略)から供給される負圧が制御バルブ(図示省略)を介して付与される。したがって、上ステージ71はその下面に版PP等の上面を吸着保持することができる。
【0050】
ステージ昇降機構72は、制御ブロックの上ステージ制御部(図示省略)からの制御信号に応じて上ステージ71を昇降させ、ブランケット保持機構300により保持されたブランケットBLの上面に近接対向する近接位置と、ブランケットBLから上方に大きく離間した離間位置との間で、上ステージ71に保持された版PP等を移動させる。
【0051】
図7はハンド先端の構造をより詳しく示す拡大図である。ここでは代表的にハンド311の構造について説明するが、前記した通り各ハンド311〜366の構造は同じである。
図7(a)に示すように、X方向に沿って延びるハンド311の先端部では、その上面311aが平坦に仕上げられてブランケットBL下面に当接する当接面となるとともに、開口径の異なる2種類の貫通孔が穿設されている。より詳しくは、ハンド311には、開口径が比較的大きい複数の第1の貫通孔311bがX方向に一定間隔で設けられており、各貫通孔311bには、上端313aが例えばシリコンゴムのような弾性部材により形成された吸着パッド313が挿通されている。各吸着パッド313は、制御部の制御バルブV2を介して負圧供給部に接続されている。
【0052】
各吸着パッド313は図示しない駆動機構により一体的に昇降可能となっており、
図7(b)に示すように吸着パッド313の上端313aがハンド311の上面(当接面)311aよりも下方に後退した後退位置と、
図7(c)に示すように吸着パッド313の上端313aがハンド311の上面311aよりも上方に進出する吸着位置との間を移動することができる。吸着パッド313が吸着位置に位置決めされたとき、負圧供給部から供給される負圧により、ブランケットBLを吸着パッド313で強力に吸着保持することができる。
【0053】
一方、他方の貫通孔311cは貫通孔311bより開口径の小さい貫通孔であり、上記のようにX方向に等間隔で配列された貫通孔311bの間に設けられている。貫通孔311cは制御ブロックの制御バルブV3を介して負圧供給部に接続されている。このため、各貫通孔311cに負圧が供給されることでブランケットBLの下面を吸着する吸着孔として機能する。ブランケットBLを吸着する力は吸着パッド313よりは弱い。
【0054】
このように、ハンド311に吸着孔として機能する貫通孔311cと吸着パッド313とを併設し、それぞれへの負圧供給を独立して行うことにより、ハンド311によるブランケットBLの吸着力を多段階に設定することが可能である。
【0055】
次に、上記のように構成された転写・剥離装置200の動作について説明する。前記したように、この転写・剥離装置200はパターニングプロセスおよび印刷プロセスを実行する。以下、パターニングプロセスについて説明するが、印刷プロセスの動作も基本的に同じである。
【0056】
図8ないし
図10は転写処理の各段階における装置各部の位置関係を模式的に示した図である。なお、
図8ないし
図10では各部の位置関係を明示するために、各部の寸法や間隔を一部誇張して示しており、これらは実際の寸法関係を表すものではない。
【0057】
搬送ロボットがパターニングのための凸部PJを有する版PPを転写・剥離装置200内に搬送し(
図1中の矢印AR3)、凸部PJが形成された転写面を下向きにして上ステージ71にロードする。これに続いて、搬送ロボットが、塗布装置100により形成された一次パターン層L1を担持するブランケットBLを転写・剥離装置200内に搬送し(
図1中の矢印AR2)、上記第1パターン層L1を担持する担持面を上向きにしてブランケット保持機構300にロードする。このとき、各ハンドの吸着パッド313は
図7(b)に示す後退位置にあり、ブランケットBLは貫通孔311cに付与される負圧により吸着保持される。なお、ロードの順序はこの逆でもよいが、上面に一次パターン層L1を担持するブランケットBLの搬入を後にすることで、版PPをロードする際にブランケットBL上の第1パターン層L1を傷つけたり異物が落下したりする不具合を回避することができる。
【0058】
図8(a)は版PPおよびブランケットBLが装置に搬入された後の状態を示している。これらの搬入の際、上ステージ71はブランケット保持機構300から上方に大きく離間した位置に位置決めされ、これにより上ステージ71とブランケット保持機構300との間に大きく開いた空間を介して版PPを搬入することができる。一方、ブランケットBLが搬入される際、各ハンド対301〜306を上昇させた位置に位置決めすることで、ブランケットBLの下面を支持する搬送ロボットの搬送用ハンドによる搬入が可能となる。また各ハンド対を同一高さにすることで、ブランケットBLを水平姿勢に保持することができる。
【0059】
こうして版PPおよびブランケットBLが搬入されると、上ステージ71を下降させて、版PPとブランケットBLとを所定のギャップを隔てて近接対向させる。この目的のために、搬入に先立って版PPおよびブランケットBLの厚みが計測されることが望ましい。
図8(b)に示すように、このとき調整された版PPとブランケットBLとのギャップGは、例えば数百μm程度である。
【0060】
続いて、版PPとブランケットBLとを位置合わせするためのアライメント調整を実行した後で、転写ローラブロック5の転写ローラ501を所定の初期位置に位置決めする。
図8(b)に示すように、転写ローラ501の初期位置は、上下方向にはブランケットBLから下方に離間した位置であり、またY方向には第1ハンド対301と第2ハンド対302との間で版PPの(−Y)側端部の直下位置である。なお、転写ローラ501は当初からこの位置にあってもよく、またブランケットBL等の搬入の際にブランケット保持機構300から退避させておき、搬入後に初期位置に移動させる構成であってもよい。
【0061】
そして、転写ローラ501を上方へ移動させてブランケットBLの下面に当接させ、
図8(c)に示すように、ブランケットBLを版PP側に押し遣って版PPに当接させる。ブランケットBL下面のうち、このとき転写ローラ501が当接する位置を「当接開始位置」と称する。ブランケットBLにパターン(
図1の符号PT1)が担持されているとき、パターンが版PPの凸部PJに密着する。次に、転写ローラ501をブランケットBLに当接させた状態のまま、転写ローラ501を(+Y)方向に移動開始させ、その後は一定速度で(+Y)方向へ進行させる。これにより、ブランケットBLと版PPとが当接する領域が、(+Y)方向に広がってゆく。
【0062】
転写ローラ501から見て(+Y)側を、転写ローラ501が進行してゆく進行方向の前方または下流側と称する。また、転写ローラ501からみて(−Y)側を、転写ローラ501の進行方向の後方または上流側と称する。
【0063】
続いて、転写ローラ501の上流側に位置する第1ハンド対301の吸着パッドを
図7(c)に示す吸着位置に上昇させ、負圧供給部からの負圧を供給して吸着パッドによる吸着を開始するとともに、第1ハンド対301の下降を開始する。ブランケットBLを吸着パッドにより強力に吸着しながらハンド対301が下降することで、ブランケットBLの(−Y)側端部が下方へ引き下げられる。これにより、ブランケットBLと版PPとの間は版PPの(−Y)側端部から次第に離間し、両者の剥離が開始される。
【0064】
以後、転写ローラ501は(+Y)方向へ進行するが、その前方では各ハンド対302〜306がブランケットBL下面を支持しており、転写ローラ501の進行と干渉する。これを回避するため、転写ローラ501の進行に合わせて各ハンド対を下降させ、転写ローラ501と干渉しない退避位置へ退避させる。具体的には次のようにする。
【0065】
第Nハンド対(N=2〜5)のそれぞれに対応して、当該ハンド対の下降を開始するべきタイミングを規定する転写ローラ501の位置が下降開始位置として予め定められる。この下降開始位置の意味するところは、(+Y)方向へ進んでくる転写ローラ501が当該下降開始位置に到達したときに第Nハンド対の下降を開始させれば、転写ローラ501が到達する前に第Nハンド対を転写ローラ501と干渉しない退避位置まで退避させることができるということである。
【0066】
各ハンド対はブランケットBLを下方から当接することでブランケットBLを水平姿勢に保持するとともに版PPとのギャップGを一定に保つ機能を有している。したがって、ハンド対を下降させるタイミングが早すぎるとブランケットBLが撓んでギャップ変動が生じる。これを回避するために、下降開始位置は、転写ローラ501とハンド対との干渉が生じない範囲でできるだけハンド対に近い位置であることが望ましい。
【0067】
このように設定された下降開始位置に転写ローラ501が到達すると、当該下降開始位置に対応する第Nハンド対の下降を開始させる。当該ハンド対に設けられた吸着孔による吸着については、下降を開始する直前に解除する。これにより、ブランケットBLがハンド対の下降に追随して撓むのを防止することができる。弾性部材を用いた吸着パッドによる吸着では、負圧供給が停止されてから吸着が完全に解除されるまでに時間遅れがあり、これによりハンド対がブランケットBLを吸着したまま下降することがあり得るが、吸着孔による吸着とすることでこの問題は回避される。
【0068】
図9(a)は第2ハンド対302が退避位置まで下降した状態を示している。退避位置は、ハンド上面が転写ローラ501の支持フレーム502の下面よりも下方となるようなハンドのZ方向位置である。第2ハンド対302を構成するハンド521,526は先端部同士がX方向に離隔して配置されているから、転写ローラ501の支持脚503がハンド間の隙間を通って移動することができる。そして、転写ローラ501およびその支持フレーム502はハンドの上方を通過する。したがって、転写ローラ501と第2ハンド対302との干渉は回避される。
【0069】
こうして第2ハンド対302が退避することで、転写ローラ501はさらに(+Y)方向へ移動することができる。転写ローラ501の通過後、第2ハンド対302は再び上昇し、ブランケットBLの下面に再当接する。上昇とともに、第2ハンド対302のハンド321,326の吸着パッドが吸着位置に進出し、負圧供給部92からの負圧供給が開始される。これにより、ブランケットBLの下面に再当接した第2ハンド対302は吸着パッドによりブランケットBLを離間前よりも強力に吸着する。吸着パッドによる吸着が開始された後、第2ハンド対302は再び下降に転じる。これにより、転写ローラ501の上流側においてブランケットBLがさらに下方へ引き下げられ、版PPからの剥離がさらに進行する。
【0070】
より下流側に配置されたハンド対についても同様である。すなわち、転写ローラ501が版PPの(+Y)側端部よりも(+Y)側に設定された終了位置に到達するまで上記処理を繰り返すことで、各ハンド対303〜305は、転写ローラ501が当該ハンド対に対応して設定された下降開始位置まで近づいてきたタイミングでブランケットBL下面から離間して退避位置へ下降する。そして、転写ローラ501の通過後に再び上昇してブランケットBLを吸着した後、再度下方へ移動する。下降後のハンド対については、版PPから下方へ十分に離間した位置まで到達し、より下流側に位置するハンド対によるブランケットBLの剥離が開始された後はその位置に留まってよい。
【0071】
図9(b)は、転写ローラ501の通過後に第2ハンド対302がブランケットBLに向かって上昇する一方、転写ローラ501の接近を受けて第3ハンド対303が退避位置まで下降した状態を示している。また、
図9(c)は、転写ローラ501が第3ハンド対303の位置を通過し、第3ハンド対303がブランケットBLに向けて上昇する一方、転写ローラ501の前方にある第4ハンド対304が退避位置への下降を開始した状態を示している。なお、
図9(c)中の符号θは、転写ローラ501とブランケットBLとが当接する当接領域の上流側端部、つまり剥離済み領域と未剥離領域との境界で版PPとブランケットBLとがなす角を示している。
【0072】
また
図10(a)は、転写ローラ501通過後の第4ハンド対304が上昇に転じる一方、第5ハンド対305が退避位置に向けて下降し、また第3ハンド対303がブランケットBLを吸着しながら下降している状態を示している。さらに
図10(b)は、転写ローラ501が第5ハンド対305の位置を通過して版PPの(+Y)側端部近傍まで到達した状態を示している。この状態では、ブランケットBLから版PPへのパターン転写がほぼ終了している。
【0073】
図10(c)に示すように、転写ローラ501が版PPの(+Y)側端部またはそれよりさらに(+Y)側の終了位置まで到達すると、版PPの全体について、ブランケットBLの当接および剥離が完了する。転写ローラ501が版PPの(+Y)側端部に到達するまでブランケットBLの姿勢を維持するために、版PPの(+Y)側端部よりもさらに(+Y)側でブランケットBLを支持する第6ハンド対306が必要である。
【0074】
転写ローラ501が終了位置に到達すると、転写ローラ501の移動を停止するとともに、転写ローラ501を下方へ移動させてブランケットBLから離間させる。ここでは、ブランケットBL下面のうち、転写ローラ501が最後に当接する位置を「当接終了位置」と称する。さらに、各ハンド対301〜306を同じ高さに位置決めする。
【0075】
この時点で、ブランケットBLは版PPから完全に離間されて、ブランケット支持機構300の各ハンド対301〜306により支持された状態である。なお、版PPによるパターニングを完了した時点ではハンド対の吸着パッドによる吸着を継続して基板SBへの印刷プロセスに備える。一方、上ステージ71については上方に離間させてパターニング後の版PPを搬出して回収する。なお、ここでは版PPによるパターニングプロセスを実行する場合について説明したが、基板SBへの印刷プロセスを行った場合には、ハンド対の吸着パッドによる吸着を解除し、吸着パッドを後退位置へ後退させる。そして、搬送ロボットにより二次パターン層が形成された基板SBを加熱装置900に搬送してベークし、二次パターン層を硬化させるとともに、印刷プロセスに使用したブランケットBLを回収装置(図示省略)に搬出する。
【0076】
D.パターン形成およびパターン印刷動作
次に、上記のように構成されたパターン印刷システム1で実行される各工程を
図1、
図11および
図12を参照しつつ説明する。
図11は、
図5に示す転写・剥離装置によるパターニングプロセスを模式的に示す図である。なお、同図(および後で説明する
図14)では、塗布装置100により形成された一次パターン層L1を構成するパターンPT1の特徴を明示するとともに一次パターン層L1と二次パターン層L2との関係を明示するために、各部の寸法や間隔を一部誇張して示しており、これらは実際の寸法関係を表すものではない。この点については後で説明する実施形態においても同様である。
【0077】
パターン印刷システム1では、図示を省略する搬送ロボットが
図1中の矢印AR1に示すように未使用のブランケットBLを塗布装置100に搬入し、ステージ110上に載置する。そして、インクをストライプ状に塗布してラインパターンPT1をブランケットBLの表面に形成する。こうして、ストライプ状のパターンPT1からなる一次パターン層L1をブランケットBLの表面に形成する(塗布工程S1)。このブランケットBLを
図1中の矢印AR2に示すように搬送ロボットにより塗布装置100から転写・剥離装置200に搬送し、第1パターン層L1を担持する担持面を上向きにしてブランケット保持機構300にロードする。なお、この実施形態では、塗布装置100は、最終的に基板SB上に印刷するストライプ状のパターンPT2(
図11(c)参照)よりも若干幅広形状のストライプ状のパターンPT1を形成する。これは、塗布装置100で形成されるパターンPT1の膜厚特性を考慮したものである。
【0078】
図12は
図2の塗布装置によりブランケットの表面に塗布したストライプ状のパターンの膜厚特性を示すグラフであり、同図(a)はパターンPT1の縦断面形状の膜厚プロファイルを示し、同図(b)はパターンPT1の横断面形状の膜厚プロファイルを示している。同図中の各グラフの横軸は位置を示し、縦軸は膜厚を示している。これらのグラフからわかるように、パターンPT1の周縁部はショルダー形状を有しており、膜厚の均一性が担保されていない。これに対し、周縁部から中央部側に一定距離だけ進んだ領域では、膜厚の変動は5%以下に抑制され、優れた膜厚均一性が示されている。そこで、本実施形態では、
図11に示すように転写・剥離装置200を用いてパターンPT1の対応したパターンで凸部PJが予め形成された版PPを用いて二次パターン層L2を形成している。より具体的には、以下のようにパターニングプロセスを実行する。
【0079】
図1中の矢印AR3に示すように版PPを転写・剥離装置200に搬入し、凸部PJが形成された転写面を下向きにして版PPを上ステージ71により保持するとともに、第1パターン層L1を担持する担持面を上向きにしてブランケットBLをブランケット保持機構300により保持する(
図11(a))。そして、凸部PJと第1パターン層L1とを互いに対向させた状態のまま版PPとブランケットBLとの間隔を所定のギャップGに調整する。それに続いて、版PPとブランケットBLとを位置合わせする。
【0080】
本実施形態では、版PPの転写面に対し、Y方向に所定の間隔Daだけ離間して設けられた一対の凸部PJが3組Y方向にピッチDbで設けられている。ここで、間隔DaおよびピッチDbはパターンPT1の各部寸法に応じて設定されている。つまり、パターンPT1の周縁部、つまりショルダー部PT1sのY方向サイズを幅Wsとし、パターンPT1のY方向サイズを幅Wtとすれば、パターンPT1の中央部、つまり膜厚が均一なフラット部PT1fのY方向の幅Wfは、
Wf=Wt−2×Ws
となる。そこで、本実施形態では、一対の凸部PJの間隔Daを
Da=Wf=Wt−2×Ws
に設定している。
【0081】
また、Y方向において、凸部PJ対のピッチDbをパターンPT1のピッチDcと一致させている。さらに、各凸部PJのY方向の幅Wjをショルダー部PT1sのY方向の幅Wsよりも広く設定している。したがって、上記したように版PPとブランケットBLとのアライメント調整を行うことで、凸部PJの下面がそれぞれ対応するパターンPT1のショルダー部PT1sと対向するとともに、一対の凸部PJで挟まれた空間がそれぞれ対応するパターンPT1のフラット部PT1fと対向する。
【0082】
そして、アライメント調整を実行した後で、上記したように転写ローラ501の移動動作とハンド対の移動動作を連係させることで、
図11(b)に示すように、部分的にブランケットBLと版PPとを互いに密着させて一次パターン層L1の一部、つまりショルダー部PT1sを凸部PJの下面に転写する(一次転写工程S2)。また、この転写動作に引き続いて、
図11(c)に示すように、互いに密着したブランケットBLと版PPとを剥離させてショルダー部PT1sを構成していたインクをブランケットBLから凸部PJに移行させる(第1剥離工程S3)。この結果、ブランケットBLの表面にはフラット部PT1fのみが残存し、これが新たなパターンPT2となり、二次パターン層L2を構成する。
【0083】
版PPの全体についてパターニングプロセスが完了すると、ハンド対の吸着パッドによるブランケットBLの吸着を継続する一方、上ステージ71については上方に離間させてパターニング後の版PPを搬出して回収する。なお、回収した版PPについては洗浄処理を施した後で再利用に供してもよいし、そのまま廃棄してもよい。
【0084】
版PPの搬出後、
図1中の矢印AR4で示すように、基板SBを転写・剥離装置200に搬入し、パターンを印刷すべき被印刷面を下向きにして基板SBを上ステージ71により保持する。これにより、被印刷面は、ブランケットBLの表面に担持されている二次パターン層L2と対向する。そして、パターニングプロセスと同様に、ギャップ調整、位置合せ、転写および剥離を実行する。すなわち、被印刷面と二次パターン層L2とを互いに対向させた状態のまま基板SBとブランケットBLとの間隔を所定のギャップGに調整する。それに続いて、基板SBとブランケットBLとを位置合わせする。そして、転写ローラ501の移動動作とハンド対の移動動作との連係によりブランケットBLと基板SBとを密着させて二次パターン層L2を構成するパターンPT2(フラット部PT1f)を基板SBの下面(被印刷面)に転写する(二次転写工程S4)。また、この転写動作に引き続いて、互いに密着したブランケットBLと基板SBとを剥離させてパターンPT2をブランケットBLから基板SBの被印刷面に移行させる(第2剥離工程S5)。この結果、基板SBに二次パターン層L2が印刷される。
【0085】
基板SBの全体について印刷プロセスが完了すると、ハンド対の吸着パッドによるブランケットBLの吸着を解除し、転写・剥離装置200から搬出して回収装置で回収する。一方、上ステージ71については上方に離間させて二次パターン層L2が印刷された基板SBを
図1中の矢印AR5に示すように加熱装置900に搬送し、当該加熱装置900により基板SBをベークして二次パターン層L2を構成するパターンPT2を硬化させる(ベーク工程S6)。そして、ベーク処理後に、加熱装置900から搬出して次のプロセス装置に搬送する。
【0086】
E.作用効果
以上のように、第1実施形態によれば、ブランケットBLの表面にインクを塗布して一次パターン層L1を形成した後、版PPを用いて一次パターン層L1をパターニングして二次パターン層L2を形成している。したがって、一次パターン層L1を構成するパターンPT1の一部(ショルダー部PT1s)が不要となり、破棄対象となるが、ブランケットBLの表面全体にインクを塗布した上でパターニングする特許文献1に記載の発明に比べて破棄すべきインク量を抑制することができる。つまり、より少ないインク量で所望の二次パターン層L2を形成することができる。また、このようにインク消費量の抑制により、二次パターン層L2を有する基板SBの製造コストを低減することができる。
【0087】
また、第1実施形態では、ノズル131からインクを液柱状に連続吐出しながらノズル131とブランケットBLとを相対移動させてブランケットBLの表面にパターンPT1を形成している。このため、パターンPT1は膜厚均一性に優れており、これをパターニングして得られるパターンPT2(PT1f)の膜厚も均一なものとなる。特に、第1転写工程(S2)および第1剥離工程(S3)によってパターンPT1のショルダー部PT1sを取り除き、フラット部PT1fのみで二次パターン層L2を形成しているため、高品質な二次パターン層L2を形成することができる。
【0088】
このように、本実施形態では、塗布工程(S1)、第1転写工程(S2)および第1剥離工程(S3)からなるパターニングプロセスが本発明の「パターン形成方法」および「パターン形成工程」の一例に相当している。また、第2転写工程(S4)および第2剥離工程(S5)の組み合わせが本発明の「印刷工程」の一例に相当しており、これらを塗布工程(S1)、第1転写工程(S2)および第1剥離工程(S3)と組み合わせたものが本発明の「パターン印刷方法」の一例に相当している。
【0089】
また、本実施形態では、塗布装置100が本発明の「塗布手段」の一例に相当している。また、転写・剥離装置200が本発明の「転写手段」および「剥離手段」として機能している。そして、塗布装置100および転写・剥離装置200を組み合わせたシステムが本発明の「パターン形成システム」および「パターン形成手段」の一例に相当している。もちろん、転写・剥離装置200の代わりに、転写処理のみを行う転写装置を本発明の「転写手段」として設けるとともに剥離処理のみを行う剥離装置を本発明の「剥離手段」として設けてもよい。また、ローラ部材(本実施形態では転写ローラ501)を用いた転写方式や剥離方式に限定されるものではなく、例えば特許文献1に記載の発明で採用されている転写方式を用いてもよい。これらの点については後の実施形態においても同様である。
【0090】
F.その他
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記第1実施形態では、
図1に示すように転写・剥離装置200により第1転写工程(S2)、第1剥離工程(S3)、第2転写工程(S4)および第2剥離工程(S5)を行っているが、2台の転写・剥離装置を準備し、そのうちの一方で第1転写工程(S2)および第1剥離工程(S3)を実行し、他方で第2転写工程(S4)および第2剥離工程(S5)を行うように構成してもよい。また、2台の転写・剥離装置200のうち少なくとも一方の代わりに、転写処理のみを行う転写装置を本発明の「転写手段」として設けるとともに剥離処理のみを行う剥離装置を本発明の「剥離手段」として設けてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、転写・剥離装置200によりパターニングプロセスを実行することで版PPに形成されたパターンの反転パターンPT2を有する二次パターン層L2をブランケットBLに形成しているが、版PPに形成された凸部PJのパターンと同一のパターンを有する二次パターン層L2を版PPに形成してもよい。そして、二次パターン層L2を版PPから基板SBに転写してパターン印刷を行うようにしてもよい。以下、
図13および
図14を参照しつつ本発明の第2実施形態について説明する。
【0092】
図13は、本発明にかかるパターン形成システムの第2実施形態を装備したパターン印刷システムの構成および動作を模式的に示す図である。第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、凸部PJと同一のパターンを有する二次パターン層L2を版PPに形成している点と、版印刷装置400を用いて版PPが担持する二次パターン層L2を基板SBの表面に印刷している点であり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。したがって、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。また、版印刷装置400は、凸部PJに付着したインクを基板SBの被印刷面に転写して基板SBへのインクの印刷を行う装置であるが、その構成および動作は従来より公知であるため、それらの説明については省略する。以下、上記のように構成されたパターン印刷システム1で実行される各工程を
図13および
図14を参照しつつ説明する。
【0093】
図14は、第2実施形態におけるパターニングプロセスを模式的に示す図である。第2実施形態においても、第1実施形態と同様にしてパターニングプロセスを実行する。つまり、図示を省略する搬送ロボットが
図13中の矢印AR1に示すように未使用のブランケットBLを塗布装置100に搬入し、ステージ110上に載置する。そして、インクをストライプ状に塗布してラインパターンPT1をブランケットBLの表面に形成する。こうして、ストライプ状のパターンPT1からなる一次パターン層L1をブランケットBLの表面に形成する(塗布工程S1)。このブランケットBLを
図13中の矢印AR2に示すように搬送ロボットにより塗布装置100から転写・剥離装置200に搬送し、第1パターン層L1を担持する担持面を上向きにしてブランケット保持機構300にロードする。ただし、第2実施形態では、第1実施形態と同一の二次パターン層を形成するのであるが、二次パターン層をブランケットBLではなく、版PPに形成する。このために、第2実施形態では、第1実施形態と異なるパターンを有する凸部PJが版PPの転写面に予め設けられている。より詳しくは、
図14(a)に示すように、版PPの転写面に対し、パターンPT1のピッチDcと同一ピッチDbで凸部PJが形成されている。また、各凸部PJのY方向の幅WjをパターンPT1におけるフラット部PT1fのY方向の幅Wfと一致させている。
【0094】
次に、凸部PJと第1パターン層L1とを互いに対向させた状態のまま版PPとブランケットBLとの間隔を所定のギャップGに調整する。それに続いて、版PPとブランケットBLとを位置合わせする。これによって、
図14(a)に示すように、凸部PJがそれぞれ対応するパターンPT1のフラット部PT1fと対向する。
【0095】
そして、上記したように転写ローラ501の移動動作とハンド対の移動動作を連係させることで、
図14(b)に示すように、部分的にブランケットBLと版PPとを互いに密着させて一次パターン層L1の一部、つまりフラット部PT1fを凸部PJの下面に転写する(一次転写工程S2)。また、この転写動作に引き続いて、
図14(c)に示すように、互いに密着したブランケットBLと版PPとを剥離させてフラット部PT1fを構成していたインクをブランケットBLから凸部PJに移行させる(第1剥離工程S3)。この結果、版PPの転写面にフラット部PT1fのみが転写され、これが新たなパターンPT2となり、二次パターン層L2を構成する。一方、ブランケットBLの表面にはショルダー部PT1sのみが残存する。
【0096】
版PPの全体についてパターニングプロセスが完了すると、ハンド対の吸着パッドによるブランケットBLの吸着を解除するとともに、上ステージ71については上方に離間させてパターニング後の版PPを
図13中の矢印AR4で示すように版印刷装置400に搬送する。なお、回収したブランケットBLについては洗浄処理を施した後で再利用に供してもよいし、そのまま廃棄してもよい。
【0097】
二次パターン層L2を有する版PPの版印刷装置400への搬送と前後して、
図13中の矢印AR5で示すように、基板SBを版印刷装置400に搬入する。そして、版印刷装置400により、版PPと基板SBとを密着させて二次パターン層L2を構成するパターンPT2(フラット部PT1f)を基板SBの表面(被印刷面)に転写する(二次転写工程S4)。また、この転写動作に引き続いて互いに密着した版PPと基板SBとを剥離させてパターンPT2を版PPから基板SBの被印刷面に移行させる(第2剥離工程S5)。この結果、基板SBに二次パターン層L2が印刷される。
【0098】
基板SBの全体について印刷プロセスが完了すると、版印刷装置400から版PPを搬出して回収装置で回収するとともに、二次パターン層L2が印刷された基板SBを
図13中の矢印AR6に示すように加熱装置900に搬送し、当該加熱装置900により基板SBをベークして二次パターン層L2を構成するパターンPT2を硬化させる(ベーク工程S6)。そして、ベーク処理後に、加熱装置900から搬出して次のプロセス装置に搬送する。
【0099】
以上のように第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果、つまり少ないインク量で所望の二次パターン層L2を版PPに形成することができ、二次パターン層L2を有する基板SBの製造コストを低減することができる。また、二次パターン層L2を構成するパターンPT2を優れた膜厚均一性で形成することができ、高品質なパターン層L2を有する基板SBを製造することができる。このように第2実施形態では、第2転写工程(S4)および第2剥離工程(S5)を実行する版印刷装置400が本発明の「印刷手段」の一例に相当している。
【0100】
また、上記実施形態では、本発明にかかるパターン形成システムをパターン印刷システム1内にレイアウトしているが、パターン印刷システム1から分離独立した形でパターン形成システムをレイアウトしてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、一次パターン層L1および二次パターン層L2をストライプ状のパターンで構成しているが、本発明がストライプ状パターンを形成する場合に限定されるものではない。つまり、任意形状、例えばブロック状や島状などのパターンを担持体や版に形成するパターン形成技術全般ならびに当該技術を用いて基板に上記パターンを印刷するパターン印刷技術全般に対して本発明を適用することができる。
【0102】
また、上記実施形態では、転写・剥離装置で転写工程と剥離工程を行うように構成しているが、転写工程と剥離工程をそれぞれ別装置で行ってもよい。つまり、転写装置で担持体と版を密着して転写を行い、相互に密着した担持体および版を一体的に剥離装置に搬送し、当該剥離装置で剥離工程を行うようにしてもよい。
【0103】
さらに、上記実施形態では、有機EL材料を含むインクを塗布液としてパターンを形成するパターン形成技術、ならびに当該パターン形成技術により形成されたパターンを有機ELディスプレイ用の基板SBに印刷する技術に本発明を適用しているが、本発明の適用範囲はこれらに限定されるものではない。つまり、塗布液により所望パターンを形成するパターン形成技術全般ならびに当該技術を用いて基板に上記パターンを印刷するパターン印刷技術全般に対して本発明を適用することができる。