【文献】
AACR−EORTC−NCI MOLECULAR TARGETS AND CANCER THERAPEUTICS CONFERENCE,2009,URL<http://www.fiveprime.com/file.cfm/4/docs/2009_AACREORTCNCI_Poster.pdf>, ONLINE, [2015/9/3検索]
【文献】
AMERICAN ASSOCIATION FOR CANCER RESEARCH (AACR) 101ST ANNUAL MEETING,2010,URL<http://www.fiveprime.com/file.cfm/4/docs/FP−1039EndoCaAACRposter.pdf>, ONLINE, [2015/9/3検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記がんが、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、喉頭癌、肝癌、腎癌、神経膠芽細胞腫、または膵臓癌である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
前記ヒトが、前記可溶性FGFR1融合タンパク質の投与の前に、少なくとも10pg/mlのFGF−2血漿中濃度を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、化学療法剤またはVEGFアンタゴニストと組み合わせて投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
前記がんが、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、喉頭癌、肝癌、腎癌、神経膠芽細胞腫または膵臓癌である、請求項11〜17のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
前記ヒトが、前記可溶性FGFR1融合タンパク質の投与の前に、少なくとも10pg/mlのFGF−2血漿中濃度を有する、請求項11〜18のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【発明の概要】
【0010】
本明細書で提供されるデータは、可溶性FGFR1/Fc融合タンパク質のFP−1039が約2mg/kg体重またはそれ以上の濃度でヒト患者に安全に投与でき(すなわち、少なくとも約16mg/kgまで)、このような濃度に耐容性良好であることを初めて示している。実施例で詳細を示すように、一部の態様では、FP−1039を使ったヒトの治療により、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kgまたは10mg/kgを越える用量の毎週またはより少ない頻度の投与が、FGF−2等の標的FGFリガンドの持続的封鎖に充分であることを示す薬物動態学的および薬理学的プロファイルが得られている。
【0011】
一局面では、本発明は、がんを有するヒトの治療方法を提供する。一部の態様では、この方法は、治療有効量の可溶性線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)融合タンパク質をヒトに投与することを含み、融合タンパク質は、融合パートナーに結合した、FGFR1ポリペプチドの細胞外ドメインを含む。一部の態様では、FGFR1融合タンパク質は、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、25、26、28または30mg/kg体重の用量で、または上記用量の内の1つの値から別の値の範囲内の用量で投与される(上記用量は、1.42mL/mg*cmの消衰係数を使って計算されている)。一部の態様では、FGFR1融合タンパク質は、1.11mL/mg*cmの消衰係数を使って計算して、約10mg/kg体重の用量で投与される。他の態様では、FGFR1融合タンパク質は、1.11mL/mg*cmの消衰係数を使って計算して、約20mg/kg体重の用量で、または1.11mL/mg*cmの消衰係数を使って計算して、約10〜約20mg/kg体重の範囲の用量で投与される。一部の態様では、ヒトは、少なくとも6pg/mlの線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)血漿中濃度を有する。一部の態様では、がんは、FGFR2のリガンド依存性活性化変異を特徴とする。一部の態様では、FGFR2のリガンド依存性活性化変異は、S252WまたはP253Rである。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、化学療法剤またはVEGFアンタゴニストと組み合わせて投与される。
【0012】
一部の態様では、FGFR1ポリペプチドは、ヒトFGFR1アイソフォームIIIcである。一部の態様では、融合パートナーはFcポリペプチドであり、これはヒト免疫グロブリンG1(IgG1)のFc領域である。一部の態様では、FGFR1細胞外ドメインは、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を有する。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を有する。
【0013】
一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、約2mg/kg体重〜約30mg/kg体重の用量で投与される。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、約8mg/kg体重〜約16mg/kg体重(または、1.11mL/mg*cmの消衰係数で計算して、約10mg/kg体重〜約20mg/kg体重)の用量で投与される。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、約8mg/kg体重の用量で投与され、一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、約16mg/kg体重(または、1.11mL/mg*cmの消衰係数で計算した場合、それぞれ、約10mg/kg体重または約20mg/kg体重)の用量で投与される。
【0014】
一部の態様では、方法は、FP−1039をがんを有するヒト患者に投与することを含み、ヒトは、少なくとも6pg/mlの線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)の血漿中濃度を有し、FP−1039は、約2mg/kg〜約30mg/kgの用量で投与される。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、約8mg/kg体重の用量で投与される。一部の態様では、FP−1039は、約16mg/kgの用量で投与される。
【0015】
一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、週2回で、毎週で、隔週で、毎週から隔週の間の頻度で、3週毎に、4週毎に、または毎月、投与される。
【0016】
一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、静脈内または皮下に投与される。
【0017】
一部の態様では、がんは、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、喉頭癌、肝癌、腎癌、神経膠芽細胞腫、または膵臓癌である。
【0018】
一部の態様では、ヒトは、可溶性FGFR1融合タンパク質の投与の前に、少なくとも10pg/mlのFGF−2血漿中濃度を有する。一部の態様では、投与7日後、ヒトが4pg/ml未満のFGF−2血漿中濃度を有するような用量で、可溶性FGFR1融合タンパク質が投与される。
【0019】
一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、化学療法剤と組み合わせて投与される。一部の態様では、化学療法剤は、ソラフェニブである。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、VEGFアンタゴニストと組み合わせて投与される。一部の態様では、VEGFアンタゴニストは、VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ、またはVEGFアンタゴニストは、VEGFトラップ、例えば、アフリベルセプトである。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、抗血管新生薬と組み合わせて投与される。
【0020】
本発明は、また、がんを有するヒトの治療方法を提供し、ここで、がんは、リガンド依存性活性化変異を有する線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)を特徴とし、この方法は、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)融合タンパク質を約2mg/kg体重〜約30mg/kg体重の用量でヒトに投与することを含み、融合タンパク質は、Fcポリペプチドに結合した、FGFR1ポリペプチドの細胞外ドメインを含む。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、約8mg/kg体重の用量で投与され、一部の態様では、FP−1039は、約16mg/kg体重(または、1.11mL/mg*cmの消衰係数で計算した場合、それぞれ、約10mg/kg体重もしくは約20mg/kg体重)で投与される。
【0021】
がんがリガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とする場合の一部の態様では、FGFR1ポリペプチドは、ヒトFGFR1アイソフォームIIIcである。がんがリガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とする場合の一部の態様では、Fcポリペプチドは、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)のFc領域である。
【0022】
リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、FGFR1細胞外ドメインは、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む。
【0023】
リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、約2mg/kg体重〜約30mg/kg体重の用量で投与される。リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、約8mg/kg体重〜約16mg/kg体重(または、1.11mL/mg*cmの消衰係数で計算した場合、約10mg/kg体重〜約20mg/kg体重)の用量で投与される。リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、約8mg/kg体重の用量で投与され、リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、約16mg/kg体重(または、1.11mL/mg*cmの消衰係数で計算した場合、それぞれ、約10mg/kg体重もしくは約20mg/kg体重)の用量で投与される。リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、FGFR1融合タンパク質は、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、25、26、28もしくは30mg/kg体重の用量、または、上記用量の1つの値から別の値までの範囲内の用量で、投与される。一部の態様では、投薬は、毎週で、隔週で、毎週から隔週の間の頻度で、3週毎に、4週毎に、または毎月、投与できる。
【0024】
リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、方法は、FP−1039をがんを有するヒト患者に投与することを含み、ここで、がんは、リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とし、また、FP−1039は、約2mg/kg〜約30mg/kgの用量で投与される。一部の態様では、FP−1039は、約8mg/kgで投与され、一部の態様では、FP−1039は、約16mg/kg(または、1.11mL/mg*cmの消衰係数で計算した場合、約10mg/kg体重〜約20mg/kg体重)で投与される。
【0025】
リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、毎週または隔週または毎週から隔週の間の頻度で、投与される。
【0026】
リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、静脈内または皮下に投与される。
【0027】
リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、がんは、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、喉頭癌、肝癌、腎癌、神経膠芽細胞腫、または膵臓癌である。
【0028】
リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、ヒトは、可溶性FGFR1融合タンパク質の投与前に、少なくとも10pg/mlのFGF−2血漿中濃度を有する。リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、投与7日後、ヒトが4pg/ml未満のFGF−2血漿中濃度を有するような用量で投与される。
【0029】
リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、化学療法剤と組み合わせて投与される。一部の態様では、化学療法剤は、ソラフェニブである。リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、化学療法剤、VEGFアンタゴニストまたは抗血管新生薬と組み合わせて投与される。一部の態様では、VEGFアンタゴニストは、VEGF抗体、例えば、ベバシズマブ、またはVEGFアンタゴニストは、VEGFトラップ、例えば、アフリベルセプトである。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、抗血管新生薬と組み合わせて投与される。
【0030】
リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2を特徴とするがんの治療に関する一部の態様では、FGFR2中のリガンド依存性活性化変異は、S252WまたはP253Rである。
【0031】
本発明は、また、がんの治療に使用する可溶性FGFR1融合タンパク質を含む組成物を提供し、組成物は、少なくとも約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、25、26、28もしくは30mg/kg体重の用量、または、上記用量の1つの値から別の値までの範囲内の用量で、投与される。一部の態様では、投薬は、週2回で、毎週で、隔週で、毎週と隔週の間の頻度で、3週毎に、4週毎に、または毎月、投与できる。一部の態様では、ヒトは、少なくとも6pg/mlの線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)血漿中濃度を有する。一部の態様では、がんは、FGFR2のリガンド依存性活性化変異を特徴とする。一部の態様では、FGFR2のリガンド依存性活性化変異は、S252WまたはP253Rである。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、化学療法剤またはVEGFアンタゴニストと組み合わせて投与される。
【0032】
本明細書記載のいずれかの態様またはそれらのいずれかの組み合わせは、本明細書記載の発明の方法のいずれかまたは全てに適用できる。
【0033】
定義
別段の定めが無ければ、本発明に関連して使用される科学的、技術的用語は、当業者により、通常理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈から別義が要求されない限り、単数用語は、複数を含み、複数用語は、単数を含むものとする。
【0034】
本出願では、別段の定めがなければ、「または」の使用は、「および/または」を意味する。複数請求項に従属する請求項の文脈では、「または」の使用は、2つ以上の前出の独立請求項または従属請求項を、選択的にのみ参照することを意味する。
【0035】
本明細書で使われる全ての数字は、近似値であり、測定誤差および有効数字の丸めを考慮に入れて変化してもよい。特定の測定量の前に置かれた「約」の使用は、試料の不純物、測定誤差、人的ミス、および統計的変動、ならびに有効数字の丸めによる変動を含む。
【0036】
本明細書で使われる、「線維芽細胞増殖因子受容体1」または「FGFR1」ポリペプチドは、FGFR1−IIIbおよびFGFR1−IIIc等の既知のFGFR1ポリペプチド、ならびにそれらのいずれかの変異体、前駆物質、または断片のいずれか1つのアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味し、米国特許第7,678,890号;同6,656,728号;同6,384,191号;同6,255,454号;同6,344,546号;同5,288,855号;および同5,229,501号に記載のものが含まれる。FGFR1ポリペプチド配列は、通常、哺乳動物由来、またはそれから誘導される。この哺乳動物には、限定されないが、霊長類、例えば、ヒト;げっ歯類、例えば、ラット、マウス、ハムスター;雌ウシ;ブタ;ヒツジ;ウマ;または他のいずれかの哺乳動物が含まれる。
【0037】
本明細書で使われる「細胞外ドメイン」または「ECD」は、ポリペプチドの膜貫通ドメインを越えて細胞外の空隙中へ伸びたポリペプチドの一部を意味する。一部の態様では、ECDは、FGFR1ポリペプチドのECD、例えば、FGFR1−IIIbおよびFGFR1−IIIc、またはその変異体である。用語「FGFR1細胞外ドメイン」(「FGFR1 ECD」)は、完全長FGFR1 ECD、FGFR1 ECD断片、およびFGFR1 ECD変異体を含む。本明細書で使われる用語「FGFR1 ECD」は、シグナルペプチドを有するか、または有しない細胞内および膜貫通ドメインを欠くFGFR1ポリペプチドを意味する。一部の態様では、FGFR1 ECDは、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を有するECDに実質的に同じアミノ酸配列を含む。一部の態様では、FGFR1 ECDは、SEQ ID NO:1〜6のいずれかのアミノ酸配列を有する。
【0038】
本明細書で使われる「可溶性FGFR融合タンパク質」または「FGFR1融合タンパク質」または「FGFR1 ECD融合分子」は、1つまたは複数の融合パートナーに結合したFGFR1 ECDを含むタンパク質を意味し、可溶性FGFR融合タンパク質は、膜貫通ドメインを欠き(例えば、FGFR1膜貫通ドメイン)、細胞膜に結合していない。
【0039】
本明細書で使われる「融合パートナー」は、FGFR1 ECDに結合する分子で、FGFR1 ECDタンパク質に好ましい薬物動態学および/または薬力学を与える。融合パートナーは、ポリペプチド、例えば、免疫グロブリン分子もしくはアルブミンの断片を含んでもよく、または非ポリペプチド成分、例えば、ポリエチレングリコールを含んでもよい。一部の態様では、融合パートナーは抗体のFcドメインである。
【0040】
用語「シグナルペプチド」は、ポリペプチドのN末端に配置され、哺乳動物細胞からポリペプチドの分泌を促進するアミノ酸残基配列を意味する。シグナルペプチドは、哺乳動物細胞からポリペプチドを搬出する際に切断され、成熟タンパク質を形成することができる。シグナルペプチドは、天然であっても、合成であってもよく、また、付加する相手タンパク質に対し異種であっても、同種であってもよい。代表的シグナルペプチドには、また、異種のタンパク質由来のシグナルペプチドが含まれる。「シグナル配列」は、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を意味する。一部の態様では、FGFR1 ECDは、シグナルペプチドを欠く。一部の態様では、FGFR1 ECDは、少なくとも1つのシグナルペプチドを含み、これは、ネイティブFGFR1シグナルペプチドでも、または異種のシグナルペプチドであってもよい。
【0041】
FGFR2の「リガンド依存性活性化変異」は、FGFR2の生物活性を高める変異、例えば、特定の刺激に応答して、野生型FGFR2に比べて、より急速にFGFR2を活性にする変異を意味し、変異の生物学的影響は、1つまたは複数のリガンドに対するFGFR2の結合に依存する。一例は、FGFR2のリガンド結合特性を変化させる変異である。
【0042】
本明細書で使われる用語「ネイティブFGFR1 ECD」および「野生型FGFR1 ECD」は、同義に使用され、天然に存在するアミノ酸配列を持つFGFR1 ECDを意味する。ネイティブFGFR1 ECDおよび野生型FGFR1 ECDは、また、FGFR1 ECDスプライス変異体またはアイソフォームを含む。本明細書で使われる用語のFGFR1 ECD「スプライス変異体」または「スプライスアイソフォーム」は、同義に使用され、FGFR1 ECDの選択的スプライシング型、例えば、FGFR1−IIIbおよびFGFR1−IIIc ECDを意味する。
【0043】
本明細書で使われる用語「FGFR1 ECD変異体」は、ネイティブFGFR1 ECDに比べてアミノ酸付加、欠失、および/または置換を含むFGFR1 ECDを意味する。FGFR1 ECD変異体は、FGF2に結合する能力を保持する。このような変異体は、親FGFR1 ECDに対し、少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、または99%同じであってもよい。
【0044】
本明細書で使われる用語「完全長FGFR1 ECD」は、細胞外ドメインの最後のアミノ酸までのFGFR1 ECDを意味し、N末端シグナルペプチドを含んでも、含まなくてもよい。本明細書で使われる用語「FGFR1 ECD断片」は、アミノ酸残基がアミノ末端から、および/またはポリペプチドのカルボキシ末端から欠失しているという点で改変されているアミノ酸配列を有するFGFR1 ECDを意味し、断片はFGF2に結合する能力を保持している。本明細書で使われる用語「ネイティブFGFR1 ECD断片」は、FGFR1 ECD配列中の保持された部分が、天然由来であるFGFR1 ECD断片を意味し、断片はFGF2に結合する能力を保持している。
【0045】
本明細書で使われる用語「FGFR1 ECD断片変異体」および「FGFR1 ECD断片の変異体」は、同義に使用され、ネイティブFGFR1 ECDのアミノおよび/またはカルボキシ末端からのアミノ酸欠失のみでなく、FGFR1 ECDの保持された部分内のアミノ酸付加、欠失、および/または置換も含むFGFR1 ECDを意味する。FGFR1 ECD断片変異体は、また、FGF2に結合する能力を保持している。
【0046】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、単鎖または二重鎖型のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーを意味する。特に具体的に限定がなければ、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有し、天然ヌクレオチドと類似の方式で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。特段の規定がなければ、特定の核酸配列は、暗黙的な、保存的に改変されたその変異体(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列、ならびに明示的に示された配列も包含する。特に、縮重コドン置換は、第3の位置の1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンが混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換される配列を生成することにより実現できる(Batzer et al.、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);およびCassol et al.(1992);Rossolini et al.、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。用語の核酸は、遺伝子、cDNA、および遺伝子にコードされるmRNAと同義に使われる。
【0047】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、同義に使用され、本明細書ではアミノ酸残基のポリマーを意味する。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工の化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに当てはまる。この用語は、また、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、およびリン酸化、を含むポリペプチドの翻訳後修飾も含む。ポリペプチドが、特定のアミノ酸配列から「構成される」場合は、例えば、グリコシル化およびシアリル化、等の翻訳後修飾をさらに含むことができる。
【0048】
用語「アミノ酸」は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と類似の方式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を意味する。天然アミノ酸は、遺伝子コードによりコードされるもの、ならびに、後で修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン、である。アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルフォキシド、メチオニンメチルスルホニウムに結合しているγ−炭素、を有する化合物を意味する。このような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的化学構造とは異なるが、天然アミノ酸に類似の方式で機能する構造を有する化学化合物を意味する。
【0049】
アミノ酸は、本明細書では、よく知られた3文字記号で呼ばれても、またはIUPAC−IUB生化学命名法委員会により推奨される1文字記号で呼ばれてもよい。同様に、ヌクレオチドは、一般的に受け入れられている単一文字コードで呼ぶことができる。
【0050】
「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の配列に関して、「保存的に改変された変異体」は、同じまたは基本的に同じアミノ酸配列をコードする核酸を意味するか、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、基本的に同じ配列を意味する。遺伝子コードの縮退のために、いくつかの核酸配列が、いずれかの特定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全て、アミノ酸のアラニンをコードする。従って、アラニンがコドンにより指定されるどの位置でも、コドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、対応するコドンのいずれかに変えることができる。このような核酸変異は、「サイレント変異」であり、保存的変異の一種である。本明細書のポリペプチドをコードする全ての核酸配列は、また、全ての可能な核酸のサイレント変異を表す。当業者なら、核酸の各コドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および、通常、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)は、改変して機能的に同じ分子を得ることができることを理解するであろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異が、それぞれ記載された配列に潜在的に含まれている。
【0051】
アミノ酸配列に関して、当業者なら、コードされた配列中の単一アミノ酸または小さい割合のアミノ酸の変更、付加、または欠失を行う、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個別の置換、欠失または付加は、「保存的に改変された変異」であり、変化が、アミノ酸の化学的に類似のアミノ酸による置換を生ずることを理解するであろう。機能的に類似のアミノ酸を与える保存的置換表は、当技術分野でよく知られている。このような保存的改変変異体は、追加されるものであり、本発明の多形性の変異体、種間相同体、および対立遺伝子を除外するものではない。
【0052】
以下の8群は、それぞれ、相互に保存的置換となるアミノ酸を含む:
(1)アラニン(A)、グリシン(G);
(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
(4)アルギニン(R)、リシン(K);
(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
(7)セリン(S)、トレオニン(T);および
(8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton、Proteins(1984)を参照)。
【0053】
「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウインドウ上で最適に整列された2つの配列を比較することにより求められ、2つの配列の最適整列化のために、比較ウインドウ中のポリヌクレオチド配列の一部が、付加または欠失を含まない参照配列(例えば、本発明のポリペプチド)に比べて、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、両配列中で同じ核酸塩基またはアミノ酸残基が起こる位置の数を決定してマッチした位置の数を求め、マッチした位置の数を比較ウインドウ中の位置の合計数で除算し、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。
【0054】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の存在下で、用語「同一性の(identical)」またはパーセント「同一性(identity)」は、同じ配列である2つ以上の配列または部分配列を意味する。比較ウインドウまたは設計された領域中で最大限一致させるために比較および整列させて、下記の配列比較アルゴリズムの1つを使って、またはマニュアル整列化および目視検査により測定して、2つの配列が指定されたパーセンテージで同じ(すなわち、指定された領域に対し、または領域が指定されていない場合は、参照配列の全体配列に対して、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%配列同一性の)アミノ酸残基またはヌクレオチドを有する2つの配列は、「実質的に同じ」である。本発明は、本明細書で例示されているポリペプチド(例えば、SEQ ID NO:1〜8に例示されているポリペプチド)に実質的に同じであるポリペプチドを提供する。任意選択で、参照配列の、少なくとも約15、25または50ヌクレオチド長の領域にわたり、またはより好ましくは、100〜500または1000以上のヌクレオチド長の領域にわたり、または完全長の領域にわたり、同一性が存在する。アミノ酸配列に関しては、少なくとも5、10、15または20アミノ酸長の領域にわたり、任意選択で、参照配列の、少なくとも約25、30、35、40、50、75または100アミノ酸長の領域にわたり、任意選択で、少なくとも約150、200または250アミノ酸長の領域にわたり、または完全長の領域にわたり、同一性または実質的な同一性が存在可能である。より短いアミノ酸配列、例えば、20以下のアミノ酸のアミノ酸配列に関して、1つまたは2つアミノ酸残基が本明細書で定義された保存的置換に従って保存的に置換される場合に、実質的な同一性が存在する。
【0055】
配列比較に関し、典型的には、1つの配列は、参照配列として機能し、それに対し、試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使う場合には、試験および参照配列を、コンピュータに入力し、必要に応じ、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータを使ってもよく、または代わりのパラメータを指定してもよい。次に、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づいて、試験配列の参照配列に対するパーセント配列同一性を計算する。
【0056】
本明細書で使われる「比較ウインドウ」は、20〜600、通例では、約50〜約200、より通例では、約100〜約150からなる群より選択されるいずれか1つの近接の位置の数のセグメントに対する参照を含み、2つの配列を最適に整列させた後で、そのセグメントの中で、配列が近接の位置の同じ数の参照配列に対し比較できる。比較のための配列の整列化方法は、当技術分野でよく知られている。比較のための配列の最適整列化は、例えば、Smith and Waterman、(1970)Adv.Appl.Math.2:482c、のローカルホモロジーアルゴリズム(local homology algorithm)によって、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性整列アルゴリズム(homology alignment algorithm)、Pearson and Lipman(1988)Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA85:2444の類似性探索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実装(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、またはマニュアル整列化および目視検査(例えば、Ausubel et al.、Current Protocols in Molecular Biology(1995 supplement)を参照)によって、行うことができる。
【0057】
パーセント配列同一性および配列類の決定に適するアルゴリズムの2つの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムで、これはAltschul et al.(1977)Nuc.Acids Res.25:3389−3402、およびAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−410にそれぞれ記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationから公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードに整列させて、正の値の閾値スコアTにマッチするか、またはこれを満たす問い合わせ配列中の長さWの短いワードを特定することにより、最初に、高スコアリング配列対(HSP)を特定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(neighborhood word score threshold)と呼ばれる(Altschul et al.、supra)。これらの最初の隣接ワードヒット(neighborhood word hit)は、探索を開始し、それらを含むより長いHSPを見つけるための起点として機能する。累積整列スコアが増加する間は、ワードヒットは各配列に沿って両方向に伸ばされる。ヌクレオチド配列に対しては、累積スコアが、パラメータM(マッチする残基対に与えるリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基に与えるペナルティースコア;常に<0)を使って計算される。アミノ酸配列に対しては、スコアリング行列を使用して、累積スコアが計算される。累積整列スコアが、その最大到達値から量Xだけ低下する;1つまたは複数の負のスコアリング残基整列の蓄積に起因して、累積スコアがゼロ以下になる;またはいずれかの方向の配列が末端に達する;これらの場合に、各方向へのワードヒットの延長は停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、整列化の感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、ワード長(W)=11、期待値(E)=10、M=5、N=−4および両鎖比較、をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列に対しては、BLASTPプログラムは、ワード長=3、および期待値(E)=10、ならびにBLOSUM62スコアリング行列(Henikoff and Henikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915を参照)のアラインメント(B)=50、期待値(E)=10、M=5、N=−4、および両鎖比較、をデフォルトとして使用する。
【0058】
BLASTアルゴリズムは、また、2つの配列間の類似性の統計的分析も行う(例えば、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787、参照)。BLASTアルゴリズムにより得られた1つの類似性の測定値は、最小合計見込(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチングが偶然に発生するであろうという見込みの指標を与える。例えば、試験核酸の参照核酸に対する比較において、最小合計見込が、約0.2未満、もっと好ましくは、約0.01未満、さらに最も好ましくは、約0.001未満の場合、核酸は、参照配列に類似であると見なされる。
【0059】
2つのポリペプチドが実質的に同じである指標は、第1のポリペプチドが、第2のポリペプチドに対し産生された抗体と免疫学的に交差反応性であることである。従って、例えば、2つのペプチドが保存的置換のみにより異なる場合には、ポリペプチドは、通常、実質的に第2のポリペプチドと同一である。
【0060】
用語「がん」および「がん性の」は、通常、未制御の細胞増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的条件を意味するか、または記載する。一部の態様では、がんは、ヒトがんである。がんの例には、限定されないが、細胞腫、肉腫、腺癌、リンパ腫、白血病、固形癌およびリンパ系がん、等が含まれる。別のタイプのがんの例には、限定されないが、膵臓癌、乳癌、胃癌、膀胱癌、口腔癌、卵巣癌、甲状腺癌、肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺扁平上皮癌)、(非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺扁平上皮癌)、前立腺癌、子宮癌、子宮内膜癌、精巣癌、神経芽細胞腫、頭部、頸部、子宮頸部および膣の扁平上皮癌、多発性骨髄腫、軟部組織および骨肉腫、結腸直腸癌、肝癌(すなわち、肝細胞癌)、腎癌、(すなわち、腎細胞癌)、中皮腫、子宮頸癌、肛門癌、胆管癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍(GIST)、食道癌、喉頭癌、胆嚢癌、小腸癌、中枢神経系の癌、皮膚癌、絨毛癌;骨肉腫、横紋筋肉腫、線維肉腫、神経膠腫、神経膠芽細胞腫、黒色腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、単球性白血病、骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、および急性骨髄性白血病、が含まれる。本出願に包含されるがんには、転移性および非転移性がんの両方が含まれる。
【0061】
用語「治療(treating)」または「治療(treatment)」は疾患の抑制、すなわち、疾患もしくはその臨床的症状の発生を抑止または低減;または、疾患の緩和を意味し、例えば、軽減すること、または失われた、欠損した、もしくは不完全な機能の回復もしくは修復や、または非効率的プロセスの刺激によるものが挙げられる。一部の態様では、「治療」は、治療されている個体または細胞の自然経過を変えようとする臨床的介入を意味し、予防の目的で、または臨床的病理学の過程の間に行うことができる。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患のいずれかの直接、間接的病理学的結果の低減、転移の防止、疾患進行速度の遅延化、疾患状態の緩和または改善、および寛解または予後の改善、が含まれる。
【0062】
用語「対象」および「患者」は、本明細書では同義に使用され、限定されないが、げっ歯類、サル、ヒト、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、哺乳類実験動物、哺乳類家畜、哺乳類スポーツアニマル、および哺乳類ペットを含む哺乳動物を意味する。一部の態様では、対象は、ヒトである。
【0063】
「薬学的に許容可能なキャリア」は、当技術分野で対象への投与のための治療薬と一緒に通常に使われる、固体、半固体、または液体充填剤、希釈剤、封入材料、製剤補助剤、またはキャリアを意味する。薬学的に許容可能なキャリアは、採用される投与量および濃度でレシピエントに無毒であり、製剤の他の成分と適合する。薬学的に許容可能なキャリアは、一部は、投与される特定の組成物、ならびに組成物の投与に使用される特定の方法により、決定される。
【0064】
「FP−1039」は、SEQ ID NO:8に設定されたアミノ酸配列を有するタンパク質を意味する。FP−1039は、例えば、FGFR融合分子に関し、米国特許第7,678,890号に一般的に記載されているようにして調製できる。この特許の全開示は、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0065】
用語「抗腫瘍性組成物」は、少なくとも1つの活性治療薬、例えば、「抗がん剤」を含むがんの治療に有用な組成物を意味する。治療薬(抗がん剤)の例には、限定されないが、例えば、化学療法剤、増殖抑制剤、細胞傷害性薬剤、放射線療法に使われる薬剤、抗血管新生薬、アポトーシス性薬剤、抗チューブリン剤、および他のがん治療薬、例えば、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ、アバスチン(登録商標))、抗HER−2抗体(例えば、トラスツズマブ、ハーセプチン(登録商標))、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ、リツキサン(登録商標))、上皮増殖因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、血小板由来増殖因子阻害剤(例えば、グリベック(登録商標)(イマチニブメシレート))、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン;1つまたは複数の次記の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−ベータ、BlyS、APRIL、BCMAまたはVEGF受容体、TRAIL/Apo2に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体);ならびに他の生理活性および有機の化学薬剤、等が含まれる。これらの組み合わせもまた、本発明に含まれる。
【0066】
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、下記が含まれる:アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロスホスファミド(シトキサン(登録商標));スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレントリホスホラミドおよびトリメチロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);Δ9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、マリノール(登録商標));βラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(ハイカムチン(登録商標)を含む)、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、および9−アミノカンプトテシン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼルシンおよびビセレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189およびCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミン酸化物塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンgamma1IおよびカリケアマイシンomegaI1(例えば、Nicolaou et al.、Angew.Chem Intl.Ed.Engl.、33:183−186(1994)を参照);CDP323、経口アルファ−4インテグリン阻害剤;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチン発色団および関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジオリピン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2−ピロリノドキソルビシン、ドキソルビシンHClリポソーム注射剤(ドキシル(登録商標))、リポソームドキソルビシンTLCD−99(MYOCET(登録商標))、ペグ化リポソームドキソルビシン(CAELYX(登録商標))、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC等のマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝物、例えば、メトトレキサート、ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標))、ペメトレキセド(アリムタ(登録商標));テガフール(UFTORAL(登録商標))、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、エポチロン、および5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎物質、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充液、例えば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルニチン;エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;マイタンシノイド、例えば、マイタンシンおよびアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2、2'、2'−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT−2毒素、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、フィルデシン(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシッド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANE(商標))、およびドセタキセル(タキソテール(登録商標));クロランブシル;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金薬剤、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン(例えば、エロキサチン(登録商標))、およびカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、フィルデシン(登録商標))、およびビノレルビン(ナベルビン(登録商標))を含むvincas(チューブリン重合の微小管形成を防ぐ);エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))を含むレチノイド、例えば、レチノイン酸;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE−58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ゾメタ(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(アレディア(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(アクトネル(登録商標));トロキサシタビン(1、3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えば、PKC−アルファ、Raf、H−Ras、および上皮増殖因子受容体(EGF−R)のような異常な細胞増殖性に関わるシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害するもの;ワクチン剤、例えば、THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子治療ワクチン剤、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、ロイベクチン(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチン;トポイソメラーゼ1阻害剤(例えば、LURTOTECAN(登録商標));rmRH(例えば、アバレリックス(登録商標));BAY439006(ソラフェニブ、NEXAVAR(登録商標);Bayer);SU−11248(スニチニブ、スーテント(登録商標)、Pfizer);ペリホシン、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標));CCI−779;ティピファニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;Bcl−2阻害剤、例えば、オブリメルセンナトリウム(ゲナセンス(登録商標));ピクサントロン;EGFR阻害剤(下記定義参照);チロシンキナーゼ阻害剤(下記定義参照);セリン−トレオニンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパマイシン(シロリムス、ラパミューン(登録商標));ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ロナファーニブ(SCH6636、SARASAR(商標)));および上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体;ならびにCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法略称)やFOLFOX(オキサリプラチン(エロキサチン(商標))と5−FUおよびロイコボリンとの組み合わせ療法の略称)のような上記の2つ以上の組み合わせ。
【0067】
本明細書で定義される化学療法剤には、「抗ホルモン薬」または「内分泌治療薬」が含まれ、これらは、がんの増殖を促進できるホルモンの効果を、調節する、減らす、遮断する、または抑制する作用をする。これらはそれら自体ホルモンであってもよく、限定されないが、次記を含む:タモキシフェン(ノルバデックス(登録商標))、4−ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェン(フェアストン(登録商標))、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ラロキシフェン(エビスタ(登録商標))、トリオキシフェン、ケオキシフェン、および選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、例えば、SERM3を含む混合アゴニスト/アンタゴニストプロファイルを有する抗エストロゲン;アゴニスト特性のない純粋な抗エストロゲン、例えば、フルベストラント(ファスロデックス(登録商標))、およびEM800(このような薬剤は、エストロゲン受容体(ER)二量体化を遮断し、DNA結合を阻害し、ER代謝回転を増加させ、および/またはERレベルを抑制できる);ステロイド性アロマターゼ阻害剤、例えば、ホルメスタンおよびエキセメスタン(アロマシン(登録商標))、ならびに非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、例えば、アナストロゾール(アリミデックス(登録商標))、レトロゾール(フェマーラ(登録商標))およびアミノグルテチミド、ならびにボロゾール(RIVISOR(登録商標))、メゲストロール酢酸塩(MEGASE(登録商標))、ファドロゾール、および4(5)−イミダゾール等の他のアロマターゼ阻害剤を含むアロマターゼ阻害剤;リュープロリド(リュープロン(登録商標)およびエリガード(登録商標))、ゴセレリン、ブセレリン、およびトリプトレリンを含む黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト;プロゲスチン、例えば、メゲストロール酢酸塩およびメドロキシプロゲステロン酢酸塩、エストロゲン、例えば、ジエチルスチルベストロールおよびプレマリン、およびアンドロゲン/レチノイド、例えば、フルオキシメステロン、全てのトランス型レチノイン酸およびフェンレチニドを含む性ステロイド;オナプリストン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERD);抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミドおよびビカルタミド;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体;ならびに上記の2つ以上の組み合わせ。
【0068】
「血管新生因子または薬剤」は、血管発生を刺激する増殖因子、例えば、血管新生、内皮細胞増殖、血管の安定性、および/または脈管形成、等、を促進する増殖因子である。例えば、血管新生因子には、限定されないが、例えば、次記が含まれる:VEGFおよびVEGFファミリーのメンバー(VEGF−B、VEGF−CおよびVEGF−D)、PlGF、PDGFファミリー、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンジオポエチン)、エフリン、デルタ様リガンド4(DLL4)、del−1、線維芽細胞増殖因子:酸性(aFGF)および塩基性(bFGF)、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)/分散因子(SF)、インターロイキン−8(IL−8)、レプチン、ミッドカイン、ニューロピリン、胎盤増殖因子(PlGF)、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、血小板由来増殖因子、特にPDGF−BBまたはPDGFR−ベータ、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、形質転換増殖因子−アルファ(TGF−アルファ)、形質転換増殖因子−ベータ(TGF−ベータ)、腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−アルファ)、等。また、創傷治癒を加速する因子、例えば、成長ホルモン、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、VIGF、上皮増殖因子(EGF)、CTGFおよびそのファミリーメンバー、およびTGF−アルファおよびTGF−ベータ、も含まれる。例えば、Klagsbrun and D'Amore(1991)Annu.Rev.Physiol.53:217−39;Streit and Detmar(2003)Oncogene 22:3172−3179;Ferrara & Alitalo(1999)Nature Medicine 5(12):1359−1364;Tonini et al.(2003)Oncogene 22:6549−6556(例えば、表1の既知の血管新生因子のリスト);および、Sato(2003)Int.J.Clin.Oncol.8:200−206、を参照されたい。
【0069】
「抗血管新生薬」または「血管新生阻害剤」は、血管新生、脈管形成、または望ましくない血管透過性を直接、間接的に阻害する、低分子量物質、ポリヌクレオチド(例えば、阻害性RNA(RNAiまたはsiRNA)を含む)、ポリペプチド、単離タンパク質、組換えタンパク質、抗体、またはそれらのコンジュゲートもしくは融合タンパク質、を意味する。抗血管新生薬には、血管新生因子またはその受容体の血管新生活性に結合し、遮断する薬剤が含まれることは理解されよう。例えば、抗血管新生薬は、例えば、次記に示す上記で定義の血管新生薬剤に対する抗体または他のアンタゴニストである:VEGF−Aに結合する融合タンパク質、例えば、ZALTRAP(商標)(アフリベルセプト)、VEGF−Aに対する抗体、例えば、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)またはVEGF−A受容体(例えば、KDR受容体またはFlt−1受容体)に対する抗体、抗PDGFR阻害剤、例えば、グリベック(登録商標)(イマチニブメシレート)、VEGF受容体シグナル伝達を遮断する小分子(例えば、PTK787/ZK2284、SU6668、スーテント(登録商標)/SU11248(スニチニブリンゴ酸塩)、AMG706、または例えば、国際公開第2004/113304号に記載のもの)。また、抗血管新生薬には、ネイティブ血管新生阻害剤、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン、等が含まれる。例えば、Klagsbrun and D'Amore(1991)Annu.Rev.Physiol.53:217−39;Streit and Detmar(2003)Oncogene 22:3172−3179(例えば、表3の悪性黒色腫の抗血管新生療法のリスト);Ferrara & Alitalo(1999)Nature Medicine 5(12):1359−1364;Tonini et al.(2003)Oncogene 22:6549−6556(例えば、表2の既知の抗血管新生因子リスト);および、Sato(2003)Int.J.Clin.dOncol.8:200−206(例えば、表1の臨床試験で使われる抗血管新生薬のリスト)、を参照されたい。
【0070】
本明細書で使われる用語「VEGF」または「VEGF−A」は、165−アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子ならびに関連する121−、189−、および206−アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子を意味し、これらは、Leung et al.(1989)Science 246:1306、およびHouck et al.(1991)Mol.Endocrin、5:1806、中で、天然対立遺伝子およびそのプロセッシング型と一緒に記載されている。用語「VEGF」は、また、非ヒト種、例えば、マウス、ラットまたは霊長類由来のVEGFを意味する。特定の種由来のVEGFは、ヒトVEGFをhVEGF、マウスVEGFをmVEGF、等の用語で示される場合もある。また、用語「VEGF」は、165アミノ酸ヒト血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸8〜109または1〜109を含む切断型のポリペプチドの意味で使用される。いずれかのこのようなVEGFの型への参照は、本出願では、例えば、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」、「VEGF−A
109」または「VEGF165」等の表現により特定できる。「切断型」ネイティブVEGFのアミノ酸の位置は、ネイティブVEGF配列で示されるようにナンバリングされる。例えば、切断型ネイティブVEGF中のアミノ酸位置17(メチオニン)は、また、ネイティブVEGF中の位置17(メチオニン)である。切断型ネイティブVEGFは、ネイティブVEGFに相当する、KDRおよびFlt−1受容体に対する結合親和性を有する。
【0071】
「VEGFアンタゴニスト」は、限定されないが、1つまたは複数のVEGF受容体に対する結合を含む、VEGFの作用を中和、遮断、阻害、抑止、低減または妨害することができる分子を意味する。VEGFアンタゴニストには、限定されないが、抗VEGF抗体およびその抗原結合断片、特異的にVEGFに結合して1つまたは複数の受容体に対する結合を封鎖する受容体分子および誘導体、抗VEGF受容体抗体、VEGF受容体アンタゴニスト、例えば、VEGFRチロシンキナーゼの小分子阻害剤、およびVEGFに結合するイムノアドヘシン、例えば、VEGFトラップ(例えば、アフリベルセプト)、が含まれる。本明細書で使われる用語「VEGFアンタゴニスト」には、特に、VEGFに結合し、VEGF作用を中和、遮断、阻害、抑止、低減または妨害できる抗体、抗体断片、他の結合ポリペプチド、ペプチド、および非ペプチド小分子、等の分子が含まれる。従って、用語「VEGF作用」は、特に、VEGF媒介VEGF生物活性を含む。
【0072】
本明細書で使われる用語「VEGFトラップ」は、タンパク質、例えば、VEGFに結合し、VEGF作用を中和、遮断、阻害、抑止、低減または妨害できる融合分子を意味する。VEGFトラップの例は、アフリベルセプトである。
【0073】
用語「抗VEGF抗体」または「VEGFに結合する抗体」は、充分な親和性と特異性を持ち、ターゲティングVEGFにおける診断薬および/または治療薬として有用な、VEGFに結合できる抗体を意味する。抗VEGF抗体は、ヌードマウス中の種々のヒト腫瘍細胞株の増殖を抑制し(Kim et al.、Nature 362:841−844(1993);Warren et al.、J.Clin.Invest.95:1789−1797(1995);Borgstrom et al.、Cancer Res.56:4032−4039(1996);Melnyk et al.、Cancer Res.56:921−924(1996))、また、虚血性網膜障害モデルの眼内血管新生を抑制する。Adamis et al.、Arch.Ophthalmol.114:66−71(1996)。例えば、抗VEGF抗体は、VEGF活性が関与する疾患または状態のターゲティングおよび干渉における治療薬として使用できる。例えば、米国特許第6,582,959号、同6,703,020号;国際公開第98/45332号;同96/30046号;同94/10202号、同2005/044853号;欧州特許第0666868B1号;米国特許公開第20030206899号、同20030190317号、同20030203409号、同20050112126号、同20050186208号、および同20050112126号;Popkov et al.、Journal of Immunological Methods 288:149−164(2004);および国際公開第2005012359号、を参照されたい。選択された抗体は、通常、VEGFに対する充分強力な結合親和性を有するであろう。例えば、抗体は、100nM〜1pMのK
d値でhVEGFと結合できる。抗体親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴法ベースアッセイ(例えば、国際出願第2005/012359号に記載のBIAcoreアッセイ);酵素免疫測定法(ELISA);および競合アッセイ(例えば、RIAの)、により測定できる。抗体は、例えば、治療薬としての有効性を評価するために、他の生物活性アッセイに供してもよい。このようなアッセイは、当技術分野で既知であり、標的抗原および目的の抗体の用途に依存する。例には、HUVEC抑制アッセイ;腫瘍細胞増殖抑制アッセイ(例えば、国際公開第89/06692号に記載のような);抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体媒介細胞傷害(CDC)アッセイ(米国特許第5,500,362号);およびアゴニスト活性または造血アッセイ(国際公開第95/27062号、参照)、が含まれる。抗VEGF抗体は、通常、他のVEGF相同体例えば、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−DまたはVEGF−Eにも、他の増殖因子、例えば、PlGF、PDGFまたはbFGF、にも結合しない。
【0074】
一態様では、抗VEGF抗体は、ハイブリドーマATCC HB10709により産生されたモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1;限定されないが、「ベバシズマブ」(「rhuMAbVEGF」または「アバスチン(登録商標)」としても知られる)として知られる抗体を含む、組換え型ヒト化抗VEGFモノクローナル抗体(Presta et al.(1997)Cancer Res.57:4593−4599、参照)、と同じエピトープと結合するモノクローナル抗体を含む。アバスチン(登録商標)は、現在市販されている。ベバシズマブで治療できる非制限的代表的がんには、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、乳癌、腎癌、卵巣癌、多形神経膠芽腫、小児科の骨肉腫、胃癌および膵臓癌、が含まれる。ベバシズマブは、ヒトVEGFのその受容体に対する結合を遮断するマウス抗体A.4.6.1由来の抗原結合相補性決定領域および変異ヒトIgG1フレームワーク領域を含む。ベバシズマブおよび他のヒト化抗VEGF抗体は、米国特許第6,884,879号、および同7,169,901号、にさらに記載されている。さらなる抗VEGF抗体は、国際公開第2005/012359号および同2009/073160号;米国特許第7,060,269号、同6,582,959号、同6,703,020号;同6,054,297号;WO98/45332号;同96/30046号;同94/10202;EP0666868B1号;米国特許公開第2006009360号、同20050186208号、同20030206899号、同20030190317号、同20030203409号、および同20050112126号;ならびにPopkov et al.、Journal of Immunological Methods 288:149−164(2004)、に記載されている。
【0075】
「有効量」または「治療有効量」は、対象の疾患または障害の治療に有効な薬剤の量を意味する。特定の態様では、有効量は、投薬時、および必要な時間の間、所望の治療または予防の結果を得るために有効な量を意味する。治療有効量の本発明のFGFR1融合タンパク質は、例えば、それぞれの疾患状態、年齢、性別、および体重ならびに個体中で物質/分子、アゴニストまたはアンタゴニストの所望の応答を誘発する能力、等の因子に応じて変化してもよい。治療有効量は、また、FGFR1融合タンパク質の有毒なまたは有害な効果のいずれかより、治療薬効が勝るような量である。がんの場合には、薬剤の有効量は、がん細胞の数を減らす;腫瘍の大きさを減らす;がん細胞の末梢器官への湿潤を抑制する(すなわち、ある程度遅らせ、典型的には停止させる);腫瘍転移を抑制する(すなわち、ある程度遅らせ、典型的には停止させる);ある程度、腫瘍増殖を抑制する;腫瘍の治療を可能とする、および/または1つまたは複数の障害関連症状をある程度軽減することができる。増殖を防ぐ、および/または現存がん細胞を死滅させることができる範囲で、薬剤は、細胞増殖抑制性および/または細胞傷害性であってもよい。
【0076】
「予防的有効量」は、投与時および必要な時間の間、所望の予防の結果を実現するのに有効な量を意味する。必ずではないが、典型的には、予防の用量は、疾患の早期段階の前に、またはその段階で対象に使用されるので、予防的有効量は、治療有効量よりも少なくなる。
【0077】
本明細書における「同時(concurrent)」投薬は、2つの治療用分子の8時間以内の投与を意味する。一部の態様では、2つの治療用分子は、同じ時間に投与される。各治療用分子の少なくとも一部の用量が、1時間以内に投与される場合、2つの治療用分子は、同じ時間(すなわち、同時に)投与されると見なされる。少なくとも1つの用量が同時に投与される場合で、たとえ、1つまたは複数の他の用量が同時に投与されない場合でも、2つの治療用分子は、同時に投与されることになる。一部の態様では、同時投与には、1つまたは複数の他の治療用分子の投与の中断後に、1つまたは複数の治療用分子の投与が継続される場合の投与計画を含む。
【0078】
1つまたは複数の追加の治療薬と「組み合わせた」投与は、同時(一斉投与を含む)および任意の順番の逐次(すなわち、順次)投与を含む。
[本発明1001]
がんを有するヒトの治療方法であって、
該ヒトが、少なくとも6pg/mlの線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)血漿中濃度を有し、
該方法が、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)融合タンパク質を、少なくとも約2mg/kg体重の用量で該ヒトに投与する工程を含み、
該融合タンパク質が、融合パートナーに結合した、FGFR1ポリペプチドの細胞外ドメインを含む、方法。
[本発明1002]
前記融合パートナーが、Fcポリペプチドである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記FGFR1細胞外ドメインが、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、本発明1001、1002または1003の方法。
[本発明1005]
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、約2mg/kg体重〜約20mg/kg体重の用量、例えば、約8mg/kg体重〜約16mg/kg体重の用量で投与される、本発明1001〜1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、約8mg/kg体重の用量で投与される、本発明1005の方法。
[本発明1007]
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、約16mg/kg体重の用量で投与される、本発明1005の方法。
[本発明1008]
前記がんが、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、喉頭癌、肝癌、腎癌、神経膠芽細胞腫、または膵臓癌である、本発明1001〜1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
前記ヒトが、前記可溶性FGFR1融合タンパク質の投与の前に、少なくとも10pg/mlのFGF−2血漿中濃度を有する、本発明1001〜1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、化学療法剤またはVEGFアンタゴニストと組み合わせて投与される、本発明1001〜1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
がんを有するヒトの治療方法であって、
該がんが、リガンド依存性活性化変異を有する線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)を特徴とし、
該方法が、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)融合タンパク質を、少なくとも約2mg/kg体重の用量で該ヒトに投与する工程を含み、
該融合タンパク質が、融合パートナーに結合した、FGFR1ポリペプチドの細胞外ドメインを含む、方法。
[本発明1012]
前記融合パートナーが、Fcポリペプチドである、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記FGFR1細胞外ドメインが、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む、本発明1011または1012の方法。
[本発明1014]
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む、本発明1011または1012の方法。
[本発明1015]
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、約2mg/kg体重〜約20mg/kg体重、例えば、約8mg/kg体重〜約16mg/kg体重の用量で投与される、本発明1011〜1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、約8mg/kg体重の用量で投与される、本発明1015の方法。
[本発明1017]
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、約16mg/kg体重の用量で投与される、本発明1015の方法。
[本発明1018]
前記がんが、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、喉頭癌、肝癌、腎癌、神経膠芽細胞腫または膵臓癌である、本発明1011〜1017のいずれかの方法。
[本発明1019]
前記ヒトが、前記可溶性FGFR1融合タンパク質の投与の前に、少なくとも10pg/mlのFGF−2血漿中濃度を有する、本発明1011〜1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
前記可溶性FGFR1融合タンパク質が、化学療法剤またはVEGFアンタゴニストと組み合わせて投与される、本発明1011の方法。
[本発明1021]
がんの治療に使用するための、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)融合タンパク質を含む組成物であって、
ヒトが、少なくとも6pg/mlの線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)血漿中濃度を有し、
該組成物が少なくとも約2mg/kg体重の用量で投与され、かつ、
該融合タンパク質が、融合パートナーに結合した、FGFR1ポリペプチドの細胞外ドメインを含む、組成物。
【発明を実施するための形態】
【0080】
発明の詳細な説明
I.緒言
ここで提供されるデータは、可溶性線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)/Fc融合タンパク質、FP−1039を、約0.5mg/kg体重(すなわち、少なくとも約16mg/kgまで)の濃度でヒト患者に安全に投与でき、また、このような濃度に耐容性良好であることを初めて示す。従って、本発明は、約2mg/kg体重〜少なくとも約30mg/kgの用量の濃度のFP−1039(すなわち、SEQ ID NO:8)のヒト個体、例えば、がん患者への投与を提供する。これらの新規データを考慮すれば、他の可溶性FGFR1融合タンパク質も、これらの同じ高い濃度で、例えば、がんの治療用として、ヒトに安全に投与可能であると考えられる。
【0081】
II.治療方法
本発明は、がんを有するヒトを治療する方法を提供し、この方法は、本明細書記載の可溶性FGFR1融合タンパク質(例えば、FP−1039)を約2mg/kg体重〜約30mg/kg体重の用量でヒトに投与することを含む。
【0082】
一部の態様では、がんを有するヒトは、がんでないヒトの平均FGF−2血漿中濃度以上のFGF−2血漿中濃度を有する。一部の態様では、がんを有するヒトは、可溶性FGFR1融合タンパク質の投与の前に、少なくとも6pg/mlまたは少なくとも10pg/mlのFGF−2血漿中濃度を有する。一部の態様では、本明細書で使われるように、FGF−2レベルは、電気化学発光(ECL)アッセイ(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD)による測定により求められ、この方法は、抗FGF−2抗体(Meso Scale Discovery)を一次抗体として利用し、ルテニウム金属キレート(Sulfo−Tag)抗ヒト増殖因子抗体混合物を二次抗体として利用する。検出は、MSD SI2400リーダー(Meso Scale Discovery、Sector Image 2400、Model#1250)等の読み取り装置を使って行われる。FGF−2レベルの検出は、次の変更を伴い、メーカーのインストラクションに従って行う:Assay Diluent GF1はCalibrator Diluent GF1に代えられる。
【0083】
別の局面では、がんを有するヒトの治療方法は、投与後7日またはそれ以降後でも血漿中で持続的ターゲット結合をもたらす用量の可溶性FGFR1融合タンパク質(例えば、FP−1039)を投与することを含む。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、投与後7日またはそれ以降後でも血漿中での標的FGF−2との持続的結合をもたらす用量で投与される。従って、一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、投与7日後に、ヒトが4pg/ml未満の遊離FGF−2血漿中濃度を有するような用量で投与される。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、投与7日後に、ヒトが3pg/ml未満の遊離FGF−2血漿中濃度を有するような用量で投与される。一部の態様では、この段落で記載のように、可溶性FGFR1融合タンパク質は、SEQ ID NO:8から構成されるか、またはSEQ ID NO:8を含む。
【0084】
A.治療に適する状態
本発明の可溶性FGFR1融合タンパク質(限定されないが、FP−1039を含む)は、転移性および非転移性型のがんの両方の治療に使用される。これらのがんには、限定されないが、次記が含まれる:膵臓癌、乳癌、胃癌、膀胱癌、口腔癌、卵巣癌、甲状腺癌、肺癌、前立腺癌、子宮癌、子宮内膜癌、精巣癌、神経芽細胞腫、頭部、頸部、子宮頸部および膣の扁平上皮癌、多発性骨髄腫、軟部組織および骨肉腫、結腸直腸癌、肝癌(すなわち、肝細胞癌)、腎癌、(すなわち、腎細胞癌)、中皮腫、子宮頸癌、肛門癌、胆管癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍(GIST)、食道癌、喉頭癌、胆嚢癌、小腸癌、中枢神経系の癌、皮膚癌、絨毛癌;骨肉腫、横紋筋肉腫、線維肉腫、神経膠腫、神経膠芽細胞腫、黒色腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小細胞リンパ腫、大細胞型リンパ腫、単球性白血病、骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、ならびに急性骨髄性白血病。一部の態様では、治療されるがんは、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、子宮内膜癌、頭頸部癌、喉頭癌、肝癌、腎癌、神経膠芽細胞腫または膵臓癌、である。
【0085】
一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質で治療されるヒトは、リガンド依存性活性化変異を有する線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)を特徴とするがんを有する。リガンド依存性活性化変異は、FGFR2のリガンド結合特性の変化を起こす変異等の、その生物学的影響が、FGFR2の1つまたは複数のそのリガンドに対する結合に依存するFGFR2変異である。子宮内膜腫瘍細胞中で観察されたFGFR2変異は、S252Wであり、症例の約7%に認められる。さらに、P253R変異が、子宮内膜癌の症例の約2%で発生する。これらのS252WおよびP253R変異は、遺伝性疾患アペール症候群の患者の生殖系列中で見つかったものと同じ変異で、頭蓋骨癒合症および合指症の原因である。FGFR2 S252W変異体の受容体の構造的および生化学的調査から、S252WおよびP253R変異体が、FGFR2タンパク質が通常結合するFGFリガンドに、より緊密に結合し、さらに、それが通常は結合しない他のFGFリガンドに結合する原因となることが示唆されている。K.Yu et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:14536−41(2000);O.A.Ibrahimi et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:7182−87(2001)、を参照されたい。
【0086】
一部の態様では、リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2の発現は、がんを生検し、がんの腫瘍細胞の核酸を分析することにより検出される。リガンド依存性活性化変異が検出可能なように核酸中で発現している否かは、限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量PCR、RT−PCR、または配列解析、等の当技術分野で既知のいずれかの方法を使って分析できる。一部の態様では、リガンド依存性活性化変異を有するFGFR2の発現は、腫瘍細胞で、Dutt et al.、PNAS 105(25):8713−7(2008)に記載のプライマー配列を使って、PCR増幅およびゲノムFGFR2遺伝子のエキソン7の配列解析により検出される。
【0087】
B.投薬量、製剤および持続期間
本発明の組成物は、良質の医療のための原則に従った方法で処方、用量決定、さらに投与される。これに関連して考慮すべき因子には、限定されないが、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個別患者の臨床的状態、障害の原因、薬剤送達の部位、投与方法、投与計画、および開業医に既知の他の因子が含まれる。疾患の予防または治療のために、本発明のFGFR1融合タンパク質の適切な投与量(単独で、または1つもしくは複数の他の追加の治療薬と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、FGFR1融合タンパク質の投与の目的(予防か治療か)、治療計画の目的とする積極性、前治療、患者の臨床的病歴およびFGFR1融合タンパク質に対する応答、ならびに、主治医の自由裁量に依存する。
【0088】
投与用組成物は、通常、薬学的に許容可能なキャリア、例えば、水性キャリア中に溶解された可溶性FGFR1融合タンパク質(すなわち、限定されないが、FP−1039等のFcポリペプチドに結合されたFGFR1ポリペプチドの細胞外ドメイン)を含む。例えば、緩衝食塩水、等の種々の水性キャリアが使用可能である。これらの溶液は、無菌で、一般的に望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の、よく知られた滅菌技術で滅菌してもよい。組成物は、近似的生理学的条件の必要に応じ、薬学的に許容可能な補助物質、例えば、pH調整剤および緩衝剤、毒性調節剤、等、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、カルシウム塩化物、乳酸ナトリウム、等を含んでもよい。これらの製剤中の可溶性FGFR1融合タンパク質の濃度は、広範に変化してもよく、主に、選択された特定の投与形式および患者のニーズに一致する液量、粘度、体重、等に基づいて選択される。
【0089】
従って、典型的な投与用医薬組成物は、薬剤および投与方法(例えば、静脈内または皮下)に応じて変化する。実際の非経口的に投与可能な組成物の調製方法は、当業者には既知、または明らかであり、また、Remington's Pharmaceutical Science、15th ed.、Mack Publishing Company、Easton、Pa.(1980)、等の出版物にさらに詳細に記載されている。
【0090】
本発明で使われる医薬製剤は、所望の純度の可溶性FGFR1融合タンパク質を任意選択の薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤または安定剤と混合して調製できる。このような製剤は、凍結乾燥製剤または水性溶液であってもよい。受容可能な賦形剤、または安定剤は、使用される投与量と濃度でレシピエントに対し無毒である。受容可能なキャリア、賦形剤または安定剤は、酢酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸);防腐剤;低分子量ポリペプチド;血清アルブミンまたはゼラチン等のタンパク質、またはポリビニルピロリドン等の親水性高分子;ならびにアミノ酸、単糖類、二糖類、およびブドウ糖、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート化剤;ならびにイオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート);ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤、であってもよい。
【0091】
一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質(限定されないが、FP−1039を含む)が、約2mg/kg体重〜約30mg/kg体重の用量で投与される。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質(限定されないが、FP−1039を含む)は、約8mg/kg体重〜約20mg/kg体重の用量で投与される。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質(限定されないが、FP−1039を含む)は、約8mg/kg体重、約10mg/kg体重、約11mg/kg体重、約12mg/kg体重、約13mg/kg体重、約14mg/kg体重、約15mg/kg体重、約16mg/kg体重、約17mg/kg体重、約18mg/kg体重、約19mg/kg体重、約20mg/kg体重、約24mg/kg体重、もしくは約30mg/kg体重の用量、または上記の1つの値から別の値の範囲の用量で、投与される。一部の態様では、投薬は、週2回で、毎週で、隔週で、毎週〜隔週の間の頻度で、3週毎に、4週毎に、または毎月、投与できる。
【0092】
特定の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質の投与量は、使用される消衰係数(EC)に応じて、2つの方法で計算できる。消衰係数は、タンパク質のグリコシル化を考慮するかどうかに応じて異なる。一態様では、FP−1039のアミノ酸組成物に基づく消衰係数は、例えば、1.42mL/mg*cmである。別の態様では、FP−1039の炭水化物成分ならびにタンパク質成分を考慮すると、消衰係数は、1.11mL/mg*cmである。1.11mL/mg*cmのECを使ったFP−1039用量の計算は、表1に示すように、計算結果の用量を28%増加させる。2つの消衰係数を使って計算した用量は異なるが、モル濃度、または実際の投与される薬剤量は、同じである。特に断りのない限り、本明細書で考察する用量は、それぞれ、グリコシル化を考慮しない消衰係数を使って計算される。FP−1039に関しては、この消衰係数は、1.42mL/mg*cmである。これらの投与量を、グリコシル化を考慮した消衰係数を使ったものとの比較を表1に示す。表1から解るように、1.42mL/mg*cmのECを使った8mg/kg(例えば、7.8と8.0mg/kg)の投与量は、1.11mL/mg*cmのECで計算した場合の10mg/kg(例えば、10.0と10.2mg/kg)の投与量に相当する。本明細書で、1.42mL/mg*cmのECを使った16mg/kg(例えば、15.6と16.0mg/kg)の投与量は、1.11mL/mg*cmのECで計算した場合の約20mg/kg(例えば、20.0と20.5mg/kg)の投与量に相当する。上記「定義」セクションで述べたように、本明細書で提供される測定された数字は、近似値であり、追加の丸められた有効数字を有する値を含む。例えば、8mg/kgは、2つの有効桁数を有する値、例えば、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、および8.45を包含する。これらの数値は、それぞれ、8に丸められる。同様に、16mg/kg、等の数値は、16に丸められる3桁の有効数字を持つ値、例えば、15.6および16.0を包含する。
【0093】
(表1)FP−1039の用量の変換
a 用量:mg/kgで示す。
【0094】
一部の態様では、患者は、FGFR1融合タンパク質(例えば、FP−1039)および1つまたは複数の他の治療薬との組み合わせを使って治療される。組み合わせ投与には、別々の製剤または単一の医薬製剤を使った同時投与(coadministration)または同時投与(concurrent administration)、および、どちらかを先に投与する逐次投与が含まれ、任意選択で、両方の(または全)活性薬剤が同時にそれらの生物活性を発揮する時間帯が存在する。FGFR1融合タンパク質と組み合わせて投与される治療薬の治療有効量は、医師の、または獣医師の自由裁量であろう。投与量の投与と調整は、治療される状態の最大の治療成果を達成するように行われる。用量は、さらに、使われる治療薬のタイプ、治療される患者の特異性といった因子に依存するであろう。
【0095】
一部の態様では、患者は、FGFR1融合タンパク質(例えば、FP−1039)およびVEGFアンタゴニストの組み合わせで治療される。一部の態様では、VEGFアンタゴニストは、VEGFトラップ、例えば、アフリベルセプトである。一部の態様では、VEGFアンタゴニストは、VEGF抗体である。一部の態様では、VEGF抗体は、ベバシズマブである。ベバシズマブの1つの代表的投与量は、約0.05mg/kg〜約20mg/kgの範囲であろう。従って、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kgまたは15mg/kg(またはそれらのずれかの組み合わせ)の内の1つまたは複数の用量が患者に投与できる。このような用量は、断続的に、例えば、毎週、2週毎に、または3週毎に投与できる。
【0096】
一部の態様では、FGFR1融合タンパク質(例えば、FP−1039)は、別の治療薬、例えば、化学療法剤または抗血管新生薬と組み合わせて、その治療薬の推奨された、または処方された投与量および/または頻度で投与される。
【0097】
C.投与方法
本発明の可溶性FGFR1融合タンパク質は、静脈内投与、例えば、ボーラスとしてまたはある期間にわたる持続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、鞘内の、経口、局所的、または吸入経路、等による既知の方法に従って、ヒト患者に投与される。投与は、局所的でも、全身性であってもよい。一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質は、静脈内に投与される。本明細書記載の方法は、可溶性FGFR1融合タンパク質のヒト患者への30分間にわたる持続注入としての投与に基づいている。しかし、本発明は、また、可溶性FGFR1融合タンパク質を、より短いまたはより長い期間にわたり、例えば、1時間にわたり投与することを意図している。
【0098】
本発明のFGFR1融合タンパク質を含む組成物は、必要に応じ、対象に投与できる。特定の態様では、有効量の本発明のFGFR1融合タンパク質は、1回または複数回、対象に投与される。種々の態様では、有効量の本発明のFGFR1融合タンパク質は、少なくとも月1回、少なくとも月2回、週1回、週2回、または週3回、対象に投与される。種々の態様では、有効量の本発明のFGFR1融合タンパク質は、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、または少なくとも1年、対象に投与される。
【0099】
D.併用療法
本発明のFGFR1融合タンパク質は、単独でも、または他の方法の治療と一緒に適用してもよい。これらは、他の方法の治療、例えば、手術、化学療法、放射線療法、または、例えば、小分子および他の生物学的製剤、例えば、抗体医薬を含む他の治療の適用の前に、実質的に同時に、または後で提供してもよい。
【0100】
一部の態様では、本発明のFGFR1融合タンパク質は、患者に投与される唯一の治療活性薬剤である。特定の態様では、FGFR1融合タンパク質は、限定されないが、抗血管新生薬、化学療法剤、サイトカイン、増殖抑制剤、抗ホルモン薬、キナーゼ阻害剤、細胞傷害性薬剤、心臓保護剤、または他の治療薬を含む1つまたは複数の他の治療薬と組み合わせて投与される。FGFR1融合タンパク質は、1つまたは複数の他の治療法と同時に投与してもよい。一部の態様では、FGFR1融合タンパク質は、1つまたは複数の抗体と組み合わせて投与できる。
【0101】
がんに関連する抗血管新生治療法は、腫瘍増殖を支援する栄養素の供給に必要な腫瘍血管の発生を抑制することを狙ったがん治療戦略である。一部の態様では、血管新生が原発性腫瘍増殖および転移の両方に関与するために、本発明により提供される抗血管新生治療法は、原発部位での腫瘍の増殖を抑制し、さらに2次部位への腫瘍の転移を防ぐことができ、従って、他の治療薬による腫瘍への攻撃を可能とする。本発明の一態様では、抗がん剤または抗がん治療薬は、抗血管新生薬である。別の態様では、抗がん剤は、化学療法剤である。
【0102】
多くの抗血管新生薬が特定され、当技術分野で既知である。これらには、本明細書で、例えば、定義の下部にリストされたもの、および、例えば、Carmeliet and Jain、Nature 407:249−257(2000);Ferrara et al.、Nature Reviews:Drug Discovery、3:391−400(2004);およびSato、Int.J.Clin.Oncol.、8:200−206(2003)、によるものが含まれる。また、米国特許第20030055006号も参照されたい。一部の態様では、本発明のFGFR1融合タンパク質に加えて、患者に2つ以上の血管新生阻害剤を、任意選択で同時投与してもよい。
【0103】
一部の態様では、FGFR1融合タンパク質と組み合わせることができる他の治療薬は、VEGFアンタゴニストまたはVEGF受容体アンタゴニストである。一部の態様では、FGFR1融合タンパク質との組み合わせ腫瘍療法に有用なほかの治療薬には、腫瘍増殖に関与する他の因子のアンタゴニスト、例えば、EGFR、ErbB2(Her2としても知られる)ErbB3、ErbB4、またはTNFが含まれる。一部の態様では、FGFR1融合タンパク質は、1つまたは複数のチロシンキナーゼ受容体、例えば、VEGF受容体、FGF受容体、EGF受容体およびPDGF受容体を標的にする小分子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(RTKI)と組み合わせて使用できる。多くの治療用小分子RTKIが当技術分野で知られており、これらには、限定されないが、バタラニブ(PTK787)、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、OSI−7904、ZD6474(ZACTIMA(登録商標))、ZD6126(ANG453)、ZD1839、スニチニブ(スーテント(登録商標))、セマキサニブ(SU5416)、AMG706、AG013736、イマチニブ(グリベック(登録商標))、MLN−518、CEP−701、PKC−412、ラパチニブ(GSK572016)、ベルケイド(登録商標)、AZD2171、ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標))、XL880、およびCHIR−265、が含まれる。
【0104】
一部の態様では、FGFR1融合タンパク質および1つまたは複数の他の治療薬が、腫瘍の発生または再発、休眠中の腫瘍、または微小転移を減らすか、または除くのに充分な量と時間で、同時に(concurrently)、一斉に(simultaneously)、または逐次的に投与できる。FGFR1融合タンパク質および1つまたは複数の他の治療薬は、腫瘍の再発の可能性を防ぐか、または減らすための維持療法薬として投与できる。
【0105】
III.可溶性FGFR1融合タンパク質
A.FGFR1 ECD融合分子
可溶性FGFR1融合タンパク質またはFGFR1 ECD融合分子は、少なくとも1つの融合パートナーに結合したFGFR1 ECDポリペプチドを含むタンパク質を意味し、可溶性FGFR1融合タンパク質は、膜貫通ドメイン(例えば、FGFR1膜貫通ドメイン)を欠き、細胞膜に結合していない。融合パートナーは、FGFR1 ECDポリペプチドのN末端またはC末端に結合できる。融合パートナーがポリペプチドの場合には、FGFR1 ECDは、融合パートナーのN末端またはC末端に結合できる。
【0106】
B.FGFR1 ECD
FGFR1 ECD分子が提供される。一部の態様では、FGFR1 ECDは、ネイティブFGFR1 ECD、FGFR1 ECD変異体、IIIbおよびIIIcから選択されたIgドメインIIIを含むFGFR1 ECD、ネイティブFGFR1−IIIbECD、ネイティブFGFR1−IIIc ECD、FGFR1−IIIbECD変異体、FGFR1−IIIc ECD変異体、FGFR1 ECD断片、ネイティブFGFR1 ECD断片、FGFR1 ECD断片の変異体、FGFR1 ECDグリコシル化変異体、およびFGFR1 ECD融合分子、ならびに非ヒトFGFR1 ECDから構成される。全てのFGFR1 ECDは、FGF−2に結合できる。一部の態様では、FGFR1 ECDは、FGFR1由来の、もしくは別のFGFR由来の、または別のタンパク質由来のシグナルペプチドを含む。他の態様では、シグナルペプチドは、含まれない。
【0107】
本発明のFGFR1 ECDタンパク質は、野生型FGFR1−IIIbまたは野生型FGFR1−IIIc ECDを含む全てのFGFR1 ECD、または例えば、FGF−2に結合する能力を保持しているFGFR1 ECDの変異体もしくは断片(例えば、野生型FGFR1 ECDに対し少なくとも95%アミノ酸配列同一性を有する変異体もしくは断片)を含むことができる。一部の態様では、ネイティブFGFR1 ECDの変異体、例えば、最初の免疫グロブリンドメインを欠いている変異体が提供される。例えば、米国特許第6,384,191号を参照されたい。一部の態様では、およびSEQ ID NO:1のネイティブFGFR1 ECDのC末端から数えて22アミノ酸残基までの1つまたは複数の欠失を有するネイティブFGFR1 ECDの変異体が提供される。一部の態様では、FGFR1 ECDは、C末端の最後の22のアミノ酸欠失を有し、一方、他のものでは、FGFR1 ECDは、SEQ ID NO:1に比較して、最後の19、14、9、8、または4個のC末端アミノ酸欠失を有する。例えば、SEQ ID NO:2〜6を参照されたい。
【0108】
一部の態様では、本発明のFGFR1 ECDは、野生型FGFR1−IIIc ECD(SEQ ID NO:1)に対し、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに高いアミノ酸配列同一性を有する。一部の態様では、FGFR1 ECDは、野生型FGFR1−IIIc ECD(SEQ ID NO:1)に対し、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも95%、本発明の少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらに高いアミノ酸配列同一性を有し、FGF−2に結合する能力を有する。
【0109】
非制限的な例としてのFGFR1 ECD断片には、アミノ酸339(成熟型の最初のアミノ酸から数えて;シグナルペプチド無しの場合)で末端となるヒトFGFR1 ECDが含まれる。一部の態様では、FGFR1 ECD断片は、アミノ酸339〜アミノ酸360(成熟型の最初のアミノ酸から数えて;シグナルペプチド無しの場合)の間のアミノ酸で末端となる。
【0110】
FGFR1 ECD断片の例には、ネイティブFGFR1−IIIbまたはFGFR1−IIIcに比較して、C末端アミノ酸残基
の欠失を有するものが含まれる。さらなる例には、ネイティブFGFR1−IIIbに比較して、C末端アミノ酸残基
の欠失を有するもの、またはネイティブFGFR1−IIIcに比較して、
の欠失を有するものが含まれる。FGF−2結合活性が保持されている限り、点変異、切断、またはECDアミノ酸配列内での内部欠失もしくは挿入が、FGFR1 ECD内で作られてもよい。
【0111】
C.融合パートナーおよびコンジュゲート
特定の態様では、FGFR1 ECDタンパク質に好ましい薬物動態学および/または薬力学を付与する融合パートナーが選択される。例えば、特定の態様では、対応する融合パートナーのないFGFR1 ECDに比べ、FGFR1 ECD融合分子の半減期を延長する融合パートナーが選択される。分子の半減期を延長することにより、少ない用量および/または少ない投与頻度計画の治療で充分となる可能性がある。さらに、得られたFGFR1 ECD血清レベルの変動の低下により、FGFR1 ECDベース治療薬の安全性と耐容性が改善できる。
【0112】
多くの異なるタイプの融合パートナーが当技術分野で知られている。当業者なら、目的の用途に応じて適切な融合パートナーを選択できる。非制限的代表的融合パートナーには、ポリマー、ポリペプチド、親油性成分、およびサクシニル基が含まれる。代表的ポリペプチド融合パートナーには、血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミンまたはHSA)および抗体Fcドメインが含まれる。代表的ポリマー融合パートナーには、限定されないが、分岐および/または直鎖を持つポリエチレングリコール等のポリエチレングリコールが含まれる。
【0113】
D.オリゴマー化ドメイン融合パートナー
種々の態様では、限定されないが、オリゴマー化は、多価性、増加した結合強度、および異なるドメインの組み合わせ機能、等の特定の機能的利点を融合タンパク質に与える。従って、特定の態様では、融合パートナーは、オリゴマー化ドメイン、例えば、二量体化ドメインを含む。代表的オリゴマー化ドメインには、限定されないが、アルファヘリックスコイルドコイルドメインを含むコイルドコイルドメイン;コラーゲンドメイン;コラーゲン様ドメイン;および特定の免疫グロブリンドメイン、が含まれる。特定の代表的コイルドコイルポリペプチド融合パートナーには、テトラネクチンコイルドコイルドメイン;軟骨オリゴマーのマトリックスタンパク質;アンジオポエチンコイルドコイルドメイン;およびロイシンジッパードメイン、が含まれる。特定の代表的コラーゲンまたはコラーゲン様オリゴマー化ドメインには、限定されないが、コラーゲン中に見つかったもの、マンノース結合レクチン、肺界面活性剤タンパク質AおよびD、アディポネクチン、フィコリン、コングルチニン、マクロファージスカベンジャー受容体、およびエミリン(emilin)が含まれる。
【0114】
E.抗体Fc免疫グロブリンドメイン融合パートナー
融合パートナーとして使用可能な多くのFcドメインが当技術分野で既知である。当業者なら、目的用途に応じて、適切なFcドメイン融合パートナーを選択できる。特定の態様では、融合パートナーは、Fc免疫グロブリンドメインである。Fc融合パートナーは、天然の抗体に含まれる野性型Fc、その変異体、またはその断片であってもよい。非制限的代表的Fc融合パートナーには、ヒトIgG、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のヒンジおよびCH2およびCH3定常ドメインを含むFcが含まれる。一部の態様では、Fc融合パートナーは、Fcヒンジ部を含まない。特定の追加のFc融合パートナーには、限定されないが、ヒトIgAおよびIgMが含まれる。特定の態様では、Fc融合パートナーは、C237S変異を含む。特定の態様では、Fc融合パートナーは、米国特許第6,900,292号に記載のように、P331S変異を含むヒトIgG2のヒンジ、CH2、およびCH3ドメインを含む。
【0115】
F.アルブミン融合パートナーおよびアルブミン結合分子融合パートナー
特定の態様では、融合パートナーは、アルブミンである。特定の代表的アルブミンには、限定されないが、融合相手のポリペプチドの血清半減期を延長、またはバイオアベイラビリティを高めることができるヒト血清アルブミン(HSA)およびHSAの断片が含まれる。特定の態様では、融合パートナーは、アルブミン結合分子、例えば、アルブミンに結合するペプチド、または脂質とコンジュゲートする分子、またはアルブミンと結合する他の分子である。特定の態様では、HSA含有融合分子は、例えば、米国特許第6,686,179号に記載のように調製される。
【0116】
G.ポリマー融合パートナー
特定の態様では、融合パートナーは、ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは、分岐および/または直鎖を含んでもよい。特定の態様では、融合パートナーは、少なくとも1つの結合PEG成分を有する化学的に誘導体化されたポリペプチドを含む。ポリペプチドのペグ化は、当技術分野で既知のいずれかの方法で行うことができる。当業者なら、ポリペプチドの目的の用途を考慮して、特定のポリペプチドをペグ化する適切な方法を選択できる。特定の代表的PEG付加方法には、例えば、欧州特許第0401384号;Malik et al.、Exp.Hematol.、20:1028−1035(1992);Francis、Focus on Growth Factors、3:4−10(1992);欧州特許第0154316号;欧州特許第0401384号;国際公開第92/16221号;および国際公開第95/34326号、に記載の方法が含まれる。非制限的例として、ペグ化は、アシル化反応またはアルキル化反応により行うことができ、アシルまたはアルキル基を介して1つまたは複数のPEG成分の付加が得られる。特定の態様では、PEG成分は、1つまたは複数のアミノ酸のα−またはε−アミノ基を介してポリペプチドに結合されるが、当技術分野で既知の他のいずれかの結合点も意図されている。
【0117】
アシル化によるペグ化は、典型的には、PEG成分の活性化エステル誘導体とポリペプチドを反応させることを含む。非制限的代表的活性化PEGエステルは、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)にエステル化されたPEGである。本明細書で使われるアシル化は、限定されないが、ポリペプチドとPEGの間の以下のタイプの結合を含むことが意図されている:アミド、カルバマート、およびウレタン。例えば、Chamow、Bioconjugate Chem.、5:133−140(1994)、を参照されたい。アルキル化によるペグ化は、典型的には、還元剤の存在下での、PEG成分の末端アルデヒド誘導体とポリペプチドとの反応を含む。非制限的代表的反応性PEGアルデヒドには、水に安定なPEGプロピオンアルデヒド、およびモノC1〜C10アルコキシまたはそのアリールオキシ誘導体、が含まれる。例えば、米国特許第5,252,714号を参照されたい。
【0118】
特定の態様では、ペグ化反応は、ポリペグ化ポリペプチドを生ずる。特定の態様では、ペグ化反応は、モノ、ジ、および/またはトリペグ化ポリペプチドを生ずる。さらに、特に、透析、塩析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、および電気泳動、等の、当技術分野で既知の種々の精製技術を使って、所望のペグ化種を、他のペグ化種および/または未反応出発材料を含む混合物から分離できる。
【0119】
H.融合パートナーの典型的結合
融合パートナーは、共有結合でまたは非共有結合で、FGFR1 ECDのアミノ末端またはカルボキシ末端に付加できる。また、結合は、例えば、アミノ酸側鎖(例えば、システイン、リシン、ヒスチジン、セリン、またはトレオニンの側鎖)を介して、アミノ末端またはカルボキシ末端以外のFGFR1 ECD内の位置でも起こりうる。
【0120】
共有結合、または非共有結合の態様では、リンカーは、融合パートナーとFGFR1 ECDの間に挿入してもよい。このようなリンカーは、アミノ酸または化学成分から構成できる。融合パートナーをFGFR1 ECDに共有結合させる代表的方法には、限定されないが、融合パートナーおよびFGFR1 ECDを単一のアミノ酸配列として翻訳、および融合パートナーのFGFR1 ECDへの化学的付加が含まれる。融合パートナーおよびFGFR1 ECDが単一のアミノ酸配列として翻訳される場合は、追加のアミノ酸は、融合パートナーおよびFGFR1 ECDの間にリンカーとして含むことができる。特定の態様では、リンカーは、融合パートナーおよび/またはFGFR1 ECDの単一発現構築物への挿入を促進するために、それをコードするポリヌクレオチド配列に基づいて選択される(例えば、特定の制限酵素部位を含むポリヌクレオチドを、融合パートナーをコードするポリヌクレオチドおよびFGFR1 ECDをコードするポリヌクレオチドの間に配置することができ、この場合、制限酵素部位を含むポリヌクレオチドが短いアミノ酸リンカー配列をコードする)。
【0121】
融合パートナーとFGFR1 ECDが、化学的手段により、共有結合でカップリングする場合、通常、カップリング反応の間に、種々の大きさのリンカーを含むことができる。ポリペプチドと他の分子(すなわち、融合パートナー)を共有結合でカップリングする方法がいくつか知られている。ポリペプチドと融合パートナーは、また、非共有結合でカップリングできる。融合パートナーをFGFR1 ECDに非共有結合で結合させる代表的方法には、限定されないが、結合対を介した付加が含まれる。代表的結合対には、限定されないが、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジン、抗体とその抗原、等が含まれる。
【0122】
I.FGFR1融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
FGFR1 ECDおよび/または可溶性FGFR1融合タンパク質をコードする核酸分子は、化学的方法により合成でき、また当技術分野でよく知られた技術で調製できる。例えば、Sambrook、et al.、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Vols.1−3、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY(1989)、を参照されたい。
【0123】
一部の態様では、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、これは、翻訳されると、FGFR1ポリペプチドのアミノ末端に融合される。他の態様では、ヌクレオチド配列は、シグナルペプチドをコードする配列を含まない。上記で考察のように、シグナルペプチドは、ネイティブシグナルペプチドでも、FGFR1、FGFR2、FGFR3、もしくはFGFR4のシグナルペプチドであっても、または別の異種のシグナルペプチドであってもよい。代表的シグナルペプチドは、当技術分野で既知であり、例えば、国際公開第2006/081430号に記載されている。
【0124】
一部の態様では、可溶性FGFR1融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子は、選択宿主細胞中での発現に適した発現ベクターである。一部の態様では、FGFR1 ECDポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、SEQ ID NO:1〜6のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)が、リンカー部位で発現ベクター中に挿入され、融合パートナーポリペプチド(例えば、ヒトIgG1のFcポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)をコードするポリヌクレオチドが、FGFR1 ECDの後ろの部位に挿入され、それにより、核酸分子が転写、翻訳されるときに、FGFR1 ECDおよびFc成分がインフレームになる。
【0125】
J.FGFR1融合タンパク質の産生および精製
可溶性FGFR1融合タンパク質を産生する細胞株および方法は、米国特許第7,678,890号に記載されている。
【0126】
本発明のFGFR1融合タンパク質は、宿主細胞中のベクターから発現できる。一部の態様では、CHO−SまたはCHO−S由来細胞中でのポリペプチドの発現用に最適化されたベクターが選択される。代表的なこのようなベクターは、例えば、Running Deer et al.、Biotechnol.Prog.20:880−889(2004)、に記載されている。一部の態様では、ベクターは、ヒトを含む動物中での本発明のポリペプチドのインビボ発現用に選択される。一部の態様では、ポリペプチドの発現は、組織特異的方式で機能するプロモーターの制御下にある。
【0127】
適切な本発明のFGFR1融合タンパク質発現用の宿主細胞には、例えば、細菌性細胞等の原核細胞;または真菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞等の真核細胞、が含まれる。ポリペプチドの発現に使用可能な代表的真核細胞には、限定されないが、Cos7細胞を含むCos細胞;293−6Eおよび293−T細胞を含む293細胞;CHO−SおよびDG44細胞を含むCHO細胞;ならびにNS0細胞、が含まれる。
【0128】
核酸ベクターの所望の宿主細胞への導入は、いずれかの当技術分野で既知の方法により実現できる。これらの方法には、限定されないが、リン酸カルシウム形質移入、DEAE−デキストラン媒介形質移入、カチオン性脂質媒介形質移入、電気穿孔、形質導入、感染、等、が含まれる。特定の代表的方法は、例えば、Sambrook et al.、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、3
rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)、に記載されている。核酸は、当技術分野で既知の方法を使って、一時的にまたは長期的に所望の宿主細胞中へ形質移入できる
【0129】
一部の態様では、ポリペプチドは、当技術分野で既知の方法を使って、操作された、またはポリペプチドをコードする核酸分子を形質移入された動物中でインビボ産生可能である。
【0130】
本発明のFGFR1融合タンパク質は、当技術分野で既知の種々の方法で精製できる。このような方法には、限定されないが、アフィニティーマトリックス、イオン交換クロマトグラフィー、および/または疎水性相互作用クロマトグラフィー、の使用が含まれる。適切な親和性リガンドには、FGFR1 ECDまたは融合パートナーのいずれかのリガンド、またはそれに対する抗体が含まれる。例えば、融合タンパク質の場合には、タンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/G、または抗体アフィニティーカラムを使って、Fc融合パートナーに結合させ、本発明のポリペプチドを精製できる。本発明のポリペプチドに対する抗体は、また、本発明のポリペプチドの精製に使用できる。疎水性のインタラクティブクロマトグラフィー、例えば、ブチルまたはフェニルカラムは、特定のポリペプチドの精製に適する可能性がある。多くのポリペプチドの精製方法が当技術分野で知られている。
【0131】
FGFR1 ECD用のDNAコード配列、ベクター、および宿主細胞の構築方法、ならびにFGFR1 ECDの発現と精製方法は、また、例えば、国際出願第2007/014123号、ならびに、米国特許出願第12/535,479号および国際出願第PCT/US09/52704号(両方共2009年8月4日に出願)に記載されている。
【実施例】
【0132】
以下の実施例は、例示のために提供されているが、請求発明を限定するものではない。上述の一般的説明を考慮すれば、種々の他の態様を採用できることは理解されよう。
【0133】
実施例1:進行悪性腫瘍の患者におけるFGFR1−Fc融合タンパク質FP−1039の安全性および耐容性を評価するための用量設定試験
FP−1039(SEQ ID NO:8)は、高度にグリコシル化され、二量体化された、ヒトIgG
1のFc領域に結合したヒトFGFR1の切断型細胞外ドメインから構成される可溶性融合タンパク質である。前臨床の調査では、FP−1039は、種々の異なる異種移植モデルで、有意な抗腫瘍活性;細胞傷害性または標的化抗がん薬剤と組み合わせた場合に、強化された抗腫瘍活性;ならびにFGF−およびVEGF−媒介血管新生の抑制を示した。
【0134】
FP−1039を用いた第I相臨床試験を、0.5mg/kg体重〜16mg/kg体重の投薬コホートで行った。選択規準には、組織学的もしくは細胞学的に転移性または局所的に進行した切除不能固形腫瘍で、標準的治療法、または緩和療法が存在しないか、またはもはや有効ではない対象;Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータスグレード0〜2(Oken et al.、Am.J.Clin.Oncol.5:649−655(1982)を参照。本文献は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる);および前の抗がん治療薬の失格者を含めた。
【0135】
FP−1039を、対象に、週1回、30分間の静脈内注入を4回投与し、続けて、2週間の観察期間をおいた。1mg/kgを投与した3人の対象の2種の用量規制毒性(DLT)の観察(1人は腸穿孔と敗血症を発症、およびもう1人はグレード3好中球減少症を発症)に基づいて、0.5mg/kgおよび0.75mg/kgの用量について調査した。6人の対象に0.5mg/kgを投与し、6人の対象に0.75mg/kgを投与した。下表3に示すように、有害作用には、0.5mg/kgで観察された1つの有害作用(グレード1紅斑)、および0.75mg/kgで観察された1つの有害作用(グレード2蕁麻疹)を含めた。他の有害事象が観察されたが、有害作用による対象の治療の中止の原因とはならなかった。
【0136】
プロトコルで規定のDLTは、1mg/kgと0.75mg/kgの用量の患者で観察されたが、漸増投与を1mg/kgを越えて続け、対象のコホートを、2.0mg/kg、4.0mg/kg、8.0mg/kg、および16.0mg/kgのFP−1039用量レベルで試験した。全体で、33人の対象が現在まで投与を受けている(上述の対象を含む)。臨床試験に登録された対象の腫瘍タイプを表2に示す。
【0137】
(表2)治療対象のコホートと割り付け
a 組み合わせ: 脂肪肉腫、脚の肉腫、平滑筋肉腫、軟骨肉腫、および混合ミュラー管肉腫
b 組み合わせ: 肝細胞癌および胆管肉腫
c 組み合わせ: 結腸の腺癌および直腸細胞腫および小腸腺癌
d 組み合わせ: 唾液腺癌および腺様嚢胞癌
【0138】
安全性
各コホートに対し、FP−1039を週1回、30分間を、静脈内に4回注入投与し、続けて、2週間の観察期間をおいた。投薬レベルの安全性を、各来院時に有害事象を査定することにより評価した。有害事象を有害事象共通用語基準v3.0(CTCAE)によりグレード付けした。DLTをCTCAEグレード3以上のいずれかのFP−1039関連有害事象として定義した。最初の治療と観察期間の完了後、4回注入後に疾患進行またはDLTの証拠のない対象を追加のFP−1039毎週注入の適格者とした。対象コホートおよび割り付けまたは各コホートの最大応答を表3に示す。
【0139】
(表3)治療対象のコホートおよび傾向
AE:有害事象; PD:進行性疾患; SAE:重篤有害事象; SD:安定疾患
a カラムは、最大応答、または対象がAEにより治療を中止した場合を示す
b 腸壁に腫瘍を有する患者の腸穿孔 および 敗血症
c グレード1 紅斑
d アレルギー病歴のある患者のグレード2 蕁麻疹
【0140】
一般的に、FP−1039は、薬剤関連体重減少、高血圧症、または軟部組織石灰化が認められず、16mg/kgまでの用量で耐容性良好であった。2mg/kg〜16mg/kgを投与された15人の対象で、DLTは認められなかった。
【0141】
薬物動態学
FP1−1039投薬コホート(0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、および8mg/kg)の薬物動態学を複数の時点で分析した。最初の注入後の種々の時点、8、15、および22日目の投薬直後、および22日目の投薬後の種々の時点で血漿試料を採取した。試料捕集に関しては、一般的に、全血をK
2EDTAチューブに集め、血漿に加工し、いくつかの0.5mlの容積に分注して、70℃以下で貯蔵した。その後、集めた試料をドライアイスと共にPrevalere Life Sciences(Rome、NY)に輸送した。別の一定分量を、下記で考察する各パラメータ(薬物動態学、薬力学、抗薬剤抗体、および中和抗体)の分析用に調製した。Prevalereで受領された試料は、分析まで、70℃以下で保持された。
【0142】
対象由来の血漿中FP−1039濃度をK
2EDTA血漿中の遊離の活性FP−1039を測定する定量酵素イムノアッセイ法を使って測定した。簡単に説明すると、試料および対照を、過剰ヘパリンを含むアッセイ希釈剤で希釈し、組換え型ヒトFGF−2で予めコートされ、予めブロッキングされたプレート上に置いた。1時間のインキュベーション後、プレートを洗浄し、標準的比色ELISA検出を使って結合FP−1039を検出するための抗ヒトIgG−Fc西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抗体を加えた。Prevalere Life Sciencesでの臨床試料の試験に先立ち、生化学分析方法検証ガイドラインおよび優良試験所基準(GLP)に従って、方法を検証した。
【0143】
血漿中濃度−時間曲線を生成した。WinNonlinプロフェッショナルバージョン5.2.1(Pharsight Corporation、Mountain View、CA.)またはPK Solutions 2.0(商標)ソフトウェア(バージョン2.0.6:Windows、Excel 2002エディション用;Summit Research Services、Montrose、CO)、を使ってノンコンパートメント解析を行った。時間ゼロから最後の測定可能時点までの曲線下面積(AUC
0−t)を、台形法を使って推定した。最後の3つ以上の時点の直鎖回帰を使って、消失速度定数(λ)を推定し、これを使って終末相半減期(t
1/2)およびゼロから無限大までのAUC(AUC
0−∞)を、下記の式に従い推定した:
t
1/2=ln(2)/λ
AUC
0−∞=AUC
0−t+C
t/λ
式中、C
tは、最後の測定可能濃度である。血漿クリアランス(CL)は、下記の式から求められる:
CL=用量/AUC
0−∞
最大濃度(C
max)および最大濃度の注入開始からの時間(T
max)は、データから直接求めた。
【0144】
図1に示すように、標準偏差データと共に各用量コホートに対する平均血漿中濃度を時間に対しプロットした。FP−1039の薬物動態学的プロファイルは、初期分布相および第2の(終末/消失)相を有する大型タンパク質の特色をよく示している。
図1から解るように、血漿コンパートメント中で、薬剤露出の直線的用量依存増加が認められた。8mg/kg体重の用量で、個別対象の終末相半減期(t
1/2)は、22日目の4回目の投与後、113〜120時間の範囲で、平均117時間(4.9日)であった。薬物動態学的パラメータのC
max、C
min、およびAUCは、用量に比例して増加した。
図1に示すように、FP−1039の血漿中濃度は、投薬の1週間後でも、10μg/ml超残存する。さらに、1日目および22日目の投与(第1と、第4の投与)の間のC
max、C
min、およびAUCデータを比較すると、血漿中にFP−1039の蓄積が認められた。要約すれば、FP−1039の薬物動態学的プロファイルは、週2回、毎週、またはより少ない頻度の投薬を支持する。
【0145】
薬力学
種々の用量のFP−1039でのFGF−2のターゲット結合を、複数の時点で測定した。投与前(1日目)、最初の投与の24時間後(2日目)、および36日目(4回目/最後の投与後14日目)に血漿試料を採取した。
【0146】
血漿中遊離FGF−2レベルを、改良した市販イムノアッセイキット(Meso Scale Discovery、MSD)を使って測定した。このアッセイは、FGF−2検出用の対形成抗体に基づく電気化学発光(ECL)技術を利用する。検出系は、ECL標識としてルテニウム金属キレート(SULFO−TAG)抗体を採用している。血漿または血清試料中の天然FGF−2の相対質量値が、キットに用意された組換えタンパク質標準を使って測定される。簡単に説明すると、試料と対照をアッセイ希釈剤で希釈し、FGF−2に対する抗体で予めコーティングし、予めブロッキングされたプレートにおいた。2時間のインキュベーション後、プレートを洗浄し、検出抗体(Sulfo−Tag抗ヒト増殖因子検出抗体混合物)を加えた。2時間のインキュベーション後、プレートを洗浄し、MSD SI2400リーダー(Meso Scale Discovery、Sector Image 2400、モデル#1250)で読み取り、データを解析した。
【0147】
FGF−2レベル:FP−1039治療に先立ち、臨床対象は、正常なドナーに比べ高い平均FGF−2血漿中濃度であった。
図2〜3に示すように、FP−1039による治療は、遊離血漿FGF−2の減少を生じ、FP−1039が血液中に存在するFGF−2を捕捉することを示唆する。
図2は、FP−1039投薬後48時間以内に、血漿FGF−2レベルの顕著な減少が認められることを示している。
図2〜3に示す全ての投薬レベルの中で、がん患者の血漿中遊離FGF−2レベルが、投与前レベルに比べて減少した(76%の全平均減少)。このデータは、FP−1039が、血漿中で高度のターゲット結合を示すことを実証している。さらに、ターゲット結合は、毎週投薬の投薬計画中、維持される。データは、さらに、ターゲット結合は、2週後にも維持でき、より少ない頻度の投薬を支持していることを示唆している。
【0148】
免疫応答
患者が、FP−1039に対する免疫応答を生じたかどうかを評価するために、最初の投与後の1日目、15日目、36日目、および3ヶ月毎に、試料を採取した。対象血漿試料中のFP−1039に対する抗薬剤抗体を、ルテニウム金属キレート(Sulfo−Tag)をECL標識として採用したMeso Scale Discovery(MSD)技術を利用して、電気化学発光のイムノアッセイ(ECLA)により分析した。
【0149】
抗薬剤抗体の予備分析は、15日目に、約33%の対象が、一過性の、低力価抗体を有していたことを示した。ADAのPK、ターゲット結合、または安全性の観察に対する関連性は認められなかった。
【0150】
非公式配列表
【0151】
本明細書記載の実施例および態様は、例示的目的のみのためであり、これらを考慮すると、当業者には、種々の改変または変更が考えられ、これらは本出願の趣旨および添付の請求項の範囲に含まれるであろうことは理解されよう。本明細書で引用された全ての出版物、特許、および特許出願は、これによる参照によってその全体が、あらゆる目的のために組み込まれる。