【文献】
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2001年,Vol.276,No.4,p.2880-2889
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モノクローナル抗体が配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含むモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分である、請求項1又は2に記載の薬剤。
前記モノクローナル抗体が第一の抗体のヒト化バージョンであり、当該第一の抗体が配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、前記モノクローナル抗体がCDRグラフティングによって作成されている、請求項1又は2に記載の薬剤。
癌の治療が必要とされる被験体における癌の治療に使用される医薬の製造のための、IGFBP2に結合し、IGFBP2のIGF1への結合を阻害する薬剤であり、前記薬剤がモノクローナル抗体またはその抗原結合部分であり、前記癌が転移癌であり、前記薬剤が転移癌細胞による内皮細胞動員を阻害する、薬剤の使用。
前記モノクローナル抗体が配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含むモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分である、請求項11又は12に記載の使用。
前記モノクローナル抗体が第一の抗体のヒト化バージョンであり、当該第一の抗体が配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、前記モノクローナル抗体がCDRグラフティングによって作成されている、請求項11又は12に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1a〜fは、内因性miR−126が転移コロニー形成を抑制することを示す図面および写真である。a、miR−126阻害に基づく低転移性乳癌細胞による肺転移の生物発光イメージング。miR−126をターゲットにする短鎖ヘアピン(miR−Zip)または対照ヘアピンを発現する4×10
4MDA−MB−231細胞を免疫不全NOD−SCIDマウスに静脈内注射した。示されている代表マウスは、第49日におけるMDA−MB−231/miR−126KDセット(上部)およびMDA−MB−231/スクランブルセット(下部)に対応する。肺コロニー形成を生物発光イメージングによって定量した。n=5;エラーバーは、s.e.m.を表す;第49日における片側スチューデントt検定に基づくp値。肺を第49日に抽出し、ヒトビメンチンについて免疫組織化学染色した(右)。b、miR−126発現が阻害された低転移性乳癌細胞による全身転移の生物発光イメージング。miR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照ヘアピンを発現する4×10
4MDA−MB−231細胞を無胸腺ヌードマウスに心臓内経路により注射した。示されている代表マウスは、第34日におけるMDA−MB−231/miR−126KDセット(上部)およびMDA−MB−231/スクランブルセット(下部)に対応する。全身コロニー形成を生物発光により測定し、定量した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;第34日における片側スチューデントt検定に基づくp値。c、MDA−MB−231/miR−126KDおよびMDA−MB−231/スクランブル細胞(上部)を心臓内注射したマウスにおいて転移巣の総数を計数した。骨および脳の転移結節の代表画像を示す(下部)。d、miR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照ヘアピンを発現する5×10
5MDA−MB−231細胞を免疫不全マウスの乳房脂肪体に注射した。腫瘍体積を継時的に測定した。n=15;エラーバーは、s.e.m.を示す;第35日における片側スチューデントt検定に基づくp値。e、(a)からの抽出肺をヒト−ビメンチンについて染色し、ImageJを用いる画像分析により各転移結節のサイズを測定した。f、ドキシサイクリン誘導性pre−miR−126カセットを発現する4×10
4Lm2細胞を第0日に尾静脈経由でNOD−SCIDマウスに注射した。第3日に1つのマウス群の飲み水にドキシサイクリン(2mg/mL)およびスクロース(5%)を加え、その他には5%スクロースのみを加えた。第48日に肺を除去し、ヒトビメンチンについて免疫組織化学染色した(右)。各肺における結節の総数を左に示す。
【
図2】
図2a〜2Jは、内因性miR−126非細胞が、転移性乳癌細胞による転移性血管新生を自律的に抑制することを示す図面および写真である。a、
図1aからの肺切片をヒトビメンチンおよびMECA−32について、またはb、ビメンチンおよび静脈内注射したレクチンについて、組織学的に二重染色した。黒色で強調した転移結節の内側のビメンチン染色およびレクチン/MECA−32染色に基づいて各結節の境界を定めた(下方パネル)。次いで、ImageJソフトウェアを使用することにより各結節内のレクチン/MECA−32染色について陽性の面積を決定し、所与の結節の面積あたりのレクチン/MECA−32染色剤によって覆われた面積(血管密度%)として表した。注射したMDA−MB−231対照とmiR−126KD細胞間の血管密度%の分布を累積分率プロットで示す。n=8/群(結果として、対照では合計18の転移結節およびmiR−126KD細胞では合計68の転移結節となる)、コルモゴロフ・スミルノフ検定に基づくp値。c、miR−126または対照ヘアピンを発現する5×10
4LM2細胞をHUVEC単層上に播種し、接着を定量した。HUVEC単層に接着した細胞の画像を得、ImageJソフトウェアを使用して分析した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す。d、miR−126または対照ヘアピンを発現する5×10
5LM2細胞を、該細胞とEGM−2培地を24時間インキュベートすることによって得た。2.5×10
4HUVEC細胞を三重反復で播種し、調整培地で成長させ、播種の5日後に生細胞を計数した。n=3;エラーバーは、s.e.m.を表す。e、2×10
4HUVEC細胞を、miR−126または対照ヘアピンを形質導入した1×10
4LM2細胞と混合し、HUVEC細胞による管腔形成をアッセイした。各ウェルの画像を得、MetaMorphソフトウェアを使用して各画像中の分岐点の数を定量した。n=3;エラーバーは、s.e.m.を表す。スケールバーは、250μmを表す。f、2.5×10
4MDA−MB−231細胞およびLM2細胞を四重反復で播種した。次いで、ImageJを使用して得た画像中のトランスウェルインサートの基底側に移動した細胞の数を計数することにより、5×10
4HUVEC細胞の癌細胞へのトランスウェル移動を評定した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;p値は、スチューデントt検定を用いて得た。g、miR−126または対照ヘアピンを発現するLM2細胞、ならびにmiR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照ヘアピンを発現するMDA−MB−231細胞をHUVEC動員アッセイに付した。インサートの基底側の画像を得、ImageJソフトウェアを使用して細胞を計数した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;p値は、スチューデントt検定を用いて得た。示されている代表画像は、LM2/miR−126OEまたは対照セット(上部)およびMDA−MB−231/miR−126KDまたは対照セット(下部)に対応する。スケールバーは、100μmを表す。h、CN34親細胞およびCN34 LM1a細胞をHUVEC動員アッセイに付した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。i、miR−126または対照ヘアピンを発現するCN34 LM1a細胞、ならびにmiR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照ヘアピンを発現するCN34親細胞をHUVEC動員アッセイに付した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。代表画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。j、miR−126または対照ヘアピンを過発現する5×10
5Lm2細胞、ならびにmiR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照ヘアピンを発現する5×10
5MDA−MB−231細胞をマトリゲルと1:1で混合し、乳房脂肪体に注射した。同サイズの腫瘍を、MECA−32の免疫組織化学染色により血管密度について分析した。各腫瘍について5つの別個の視野を使った。閾値処理したMECA−32染色によってカバーされる各視野の百分率を血管密度%として与える。定量を上部に示し、代表画像を下に示す。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。
【
図3】
図3a〜3fは、転移内皮動員を媒介するmiR−126調節ネットワークの系統的同定を示す図面および写真である。a、miR−126転移シグネチャは、miR−126 OEによってダウンレギュレートされ、miR−126 KDによって誘導された、転移細胞において過発現された遺伝子から成る。このヒートマップは、マイクロアレイおよびqPCR分析に基づく分散正規化発現レベルを表す。カラーマップは、平均からの標準偏差の変化に対応する。b〜d、原発癌がmiR−126の8つの遺伝子シグネチャを過発現した患者(陽性)およびしなかった患者(陰性)の無転移生存を描写する(b)UCSF乳癌コホート(117腫瘍)、(c)NKIコホート(295腫瘍)および(d)NKI/MSK/UCSF総合コホート(494腫瘍)についてのカプラン・マイヤー曲線。マンテル・コックスのログランク検定に基づくP値。e、miR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照KDヘアピンを発現するMDA−MB−231細胞におけるmiR−126転移遺伝子のルシフェラーゼ・レポーター・アッセイ。各miR−126調節遺伝子の3’UTRまたはコーディング配列(CDS)の上流にルシフェラーゼ遺伝子を含有するレポーター構築物を様々な細胞系にトランスフェクトし、トランスフェクションの30時間後にルシフェラーゼ活性をアッセイした。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;p値は、スチューデントt検定を用いて得た。f、前記3’UTR/CDS構築物のmiR−126相補領域を突然変異させ、miR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照ヘアピンを発現するMDA−MB−231細胞におけるこれらの構築物を用いてルシフェラーゼ・レポーター・アッセイを反復した(右)。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;p値は、スチューデントt検定を用いて得た。
【
図4】
図4a〜4eは、IGFBP2、PITPNC1およびMERTKが転移コロニー形成および血管新生を促進したことを示す1セットの図面および写真である。a、IGFBP2、MERTK、PITPNC1、SHMT2をターゲットにするヘアピンまたは対照ヘアピンを発現する2.5×10
4LM2細胞を四重反復で播種した。次いで、癌細胞への5×10
4HUVEC細胞のトランスウェル移動を評定した。トランスウェルインサートを通って移動した細胞の画像を得、ImageJソフトウェアを使用して分析した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。代表画像を示す。スケールバーは、100μmを表す。b、ステージIII(n=29)またはステージIV(n=9)患者と比較したステージI/II(n=53)からのヒト乳腺腫瘍試料におけるIGFBP2、MERTKまたはPITPNC1の相対発現レベルを、qPCRを使用してOriGene TissueScan Breast Cancerアレイから定量した。エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。c〜e、様々なmiR−126調節遺伝子の発現が阻害された肺転移性乳癌細胞による肺転移の生物発光イメージング。対照ヘアピンまたはIGFBP2(c)、PITPNC1(d)およびMERTK(e)をターゲットにする独立した短鎖ヘアピンを発現する4×10
4LM2細胞を免疫不全NOD−SCIDマウスに静脈内注射した。肺コロニー形成を生物発光イメージングによって測定し、定量した。n=5;エラーバーは、s.e.m.を表す;片側スチューデントt検定に基づくp値。
【
図5】
図5a〜5gは、IGFBP2が、内皮細胞におけるIGF1/IGF1Rシグナル伝達を活性化することにより内皮動員を媒介することを示す図面および写真である。a、MDA−MB−231細胞およびLM2細胞を使用するHUVEC動員アッセイ(
図2f)からの調整培地中のIGFBP2レベルをELISAによって定量した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。b、miR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照ヘアピンを発現する2.5×10
4MDA−MB−231細胞、ならびにmiR−126または対照ヘアピンを発現するLM2細胞を、四重反復で播種した。次いで、50ng/mL IGFBP2 Abまたは50ng/mL対照IgG Abの存在下での5×10
4HUVEC細胞の癌細胞へのトランスウェル動員を評定した。トランスウェルインサートの基底側の画像を得、ImageJを使用して移動した細胞の数を定量した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。スケールバーは、100μmを表す。c、miR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照ヘアピンを発現する2.5×10
4CN34 Par細胞、ならびにmiR−126または対照ヘアピンを発現するCN34 Lm1a細胞を、四重反復で播種した。次いで、50ng/mL IGFBP2 Abまたは50ng/mL対照IgG Abの存在下での5×10
4HUVEC細胞の癌細胞へのトランスウェル移動を評定した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。d、e、miR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照ヘアピンを発現するMDA−MB−231細胞への、20μg/mL IGF−1遮断Ab(d)、40μg/mL IGF−2遮断Ab(d)、20μg/mL IGF1R遮断Ab(e)、5μg/mL IGF2R遮断Ab(e)または対照IgG(d、e)と共にインキュベートしたHUVEC細胞のトランスウェル動員をアッセイした。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。f、HUVEC細胞および癌細胞を1時間、20μg/mL IGF1R遮断Abまたは対照IgGAbで前処理した後、HUVEC細胞の癌細胞へのトランスウェル動員を評定した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。g、ウェルの底部で所与の量の組換えIGFBP2タンパク質とマトリゲル(1:1)を混合することにより、IGFBP2勾配をシミュレートした。次いで、20時間後にImageJソフトウェアを使用してトランスウェルインサートの基底側に移動した細胞の数を計数することにより、IGFBP2勾配に沿った1.5×10
5HUVEC細胞の走化性を評定した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。
【
図6】
図6a〜6eは、MERTKがGAS6による動員を媒介することを示す図面および写真である。a、ELISAによって判定した、PITPNC1に対する、対照ヘアピンまたは2つの独立したヘアピンを発現するLm2細胞からの調整培地中のIGFBP2レベル。b、対照ヘアピンまたはmiR−126をターゲットにするヘアピンを発現する2.5×10
4MDA−MB−231細胞を四重反復で播種した。次いで、1ng/mL GAS6および/または10μg/mL MerFcの存在下での5×10
4HUVEC細胞の癌細胞へのトランスウェル移動を、ImageJを使用して得た画像中の多孔質インサートの基底側に移動した細胞の数を計数することによって評定した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;p値は、スチューデントt検定を用いて得た。c、ウェルの底部でrhIGFBP2(520ng)、Gas6(5ng)およびMerFc(10ug)タンパク質をマトリゲルと(1:1)混合することにより、Gas6および分泌MERTKの存在下でのIGFBP2勾配をシミュレートした。次いで、20時間後にImageJソフトウェアを使用してトランスウェルインサートの基底側に移動した細胞の数を計数することにより、前記勾配に沿った1.5×10
5HUVEC細胞の走化性を評定した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。d、肺切片をビメンチンおよびMECA−32について二重染色した。黒色で強調した転移結節の内側のヒト−ビメンチン染色およびMECA−32染色に基づいて各結節の境界を描いた(下方パネル)。次いで、ImageJを使用することにより各結節内のMECA−32染色について陽性の面積を決定し、所与の結節の面積あたりのMECA−32染色剤によって覆われた面積(血管密度%)として表した。IGFBP2、PITPNC1、MERTKをターゲットにするヘアピンまたは対照ヘアピンを発現する注射LM細胞間の血管密度%の分布を累積分率プロットで示す。n=4;コルモゴロフ・スミルノフ検定に基づくp値。e、IGFBP2、PITPNC1およびMERTKとの相互作用による内皮動員および転移コロニー形成のmiR−126調節の概略図。
【
図7】
図7は、miR−Zip miRNA−アンチセンスshRNA系がMDA−MB−231細胞におけるmiR−126発現を安定的に阻害したことを示す図である。miR−126をターゲットにするmiR−Zip構築物、またはいずれの公知マイクロRNAもターゲットにしない前記構築物のスクランブルバージョン(SYSTM BIOSCIENCES、カリフォルニア州マウンテンビュー)のいずれかを発現するレンチウイルスをMDA−MB−231細胞に形質導入した。次いで、qPCRを使用して成熟miR−126の発現レベルを試験した。
【
図8】
図8は、乳癌細胞発現miR−126が転移結節における灌流を調節することを示す1セットの写真および図面である。miR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンまたは対照ヘアピンを発現する4×10
4MDA−MB−231細胞を免疫不全NOD−SCIDマウスに静脈内注射した。第59日にFITC標識低分子量デキストラン(10.000MW)溶液を静脈内注射した。それらのデキストラン分子を15分間、循環させた後、マウスを安楽死させ、肺を切除した。凍結切片を調製し、ヒトビメンチンについて染色して転移結節を局在定位し、ImageJを使用して一定閾値で結節内のFITCシグナルを定量した。n=5;エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。
【
図9】
図9a〜9bは、内因性miR−126が内皮の接着、増殖または管腔形成を抑制しなかったことを示す1セットの図面である。a、miR−126 KDまたは対照KDベクターを発現する5×10
4MDA細胞をHUVEC単層上に播種し、接着を定量した。HUVEC単層に接着した細胞の画像を得、ImageJソフトウェアを使用して分析した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す。b、5×10
5MDA miR−126 KDまたはMDA対照KD細胞からの調整培地を、該細胞とEGM−2培地を24時間インキュベートすることによって得た。2.5×10
4HUVEC細胞を三重反復で播種し、調整培地で成長させ、播種の5日後に生細胞を計数した。n=3;エラーバーは、s.e.m.を表す。c、2×10
4HUVEC細胞を1×10
4MDA miR−126 KDまたはMDA対照KD細胞と混合し、HUVEC細胞による管腔形成をアッセイした。各ウェルの画像を得、MetaMorphソフトウェアを使用して各画像中の分岐点の数を分析した。n=3;エラーバーは、s.e.m.を表す。
【
図10】
図10a〜10cは、1セットの図面、ならびに内因性miR−126が血管新生を調節するが、CD45陽性リンパ球およびMac−2陽性マクロファージ動員を調節しないことを示す図面である。a〜c、対照ヘアピンまたはmiR−126をターゲットにするヘアピンを発現する5×10
5MDA細胞をマトリゲルと1:1比で混合し、乳房脂肪体に注射した。屠殺する5分前にビオチン化レクチンを尾静脈に注射した。同サイズの腫瘍を切り取り、機能性血管を、注射したレクチンの染色によって検出し(a)、抗CD45によってCD45
+リンパ球を検出し(b)、および抗Mac−2によってMac−2
+マクロファージを検出した。
【
図11】
図11は、推定miR−126ターゲット遺伝子を同定する結果となった統合実験経路を示すベン図である。miR−126過発現で1.6倍より大きくダウンレギュレートされた遺伝子のトランスクリプトームのプロファイリングを、親MDA細胞と比較して転移LM2細胞において1.4倍より大きくアップレギュレートされた遺伝子とオーバラップさせた。これは、23個の可能性のあるmiR−126ターゲット遺伝子の同定をもたらした。qPCRにより、これらの23個の遺伝子のうちの8個は、MDA−MB−231乳癌細胞系と初代CN34細胞系の両方においてmiR−126によって変調された。これら8個の遺伝子を、ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイによりmiR−126による直接調節について機能試験した。
【
図12】
図12a〜12bは、miR−126が、3’UTR相互作用によりIGFBP2およびMERTKを、ならびにCDS相互作用によりPITPNC1およびSHMT2を調節したことを示す図面である。a、b、miR−126をターゲットにする短鎖ヘアピンおよび対照KDヘアピンを発現するMDA−MB−231細胞におけるmiR−126転移遺伝子セットのルシフェラーゼ・レポーター・アッセイ。ABCB9、IGFBP2、MERTK、PITPNC1、PSAT1、PYBG、SHMT2およびVIPR1の3’UTR(a)およびCDS(b)の上流にルシフェラーゼ遺伝子を含有するレポーター構築物を様々な細胞系にトランスフェクトし、トランスフェクトの30時間後にルシフェラーゼ活性をアッセイした。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す;p値は、スチューデントt検定を用いて得た。
【
図13】
図13a〜13dは、独立したヘアピンが、LM2細胞におけるIGFBP2、PITPNC1およびMERTKの発現レベルをダウンレギュレートしたことを示す1セットの図面である。対照ヘアピンまたはIGFBP2、PITPNC1もしくはMERTKをターゲットにする短鎖ヘアピン構築物を発現するレンチウイルスをLM2細胞に形質導入した。それらのターゲット遺伝子の発現レベルをqPCRによって分析した。
【
図14】
図14は、miR−126ターゲット遺伝子の増殖分析を示す図面である。対照ヘアピンまたはIGFBP2、PITPNC1もしくはMERTKをターゲットにする短鎖ヘアピンを発現する2.5×10
4LM2細胞を三重反復で播種し、播種の5日後に生細胞を計数した。n=3;エラーバーは、s.e.m.を表す。
【
図15】
図15は、IGFBP2がHUVEC移動を促進したことを示す図面である。HUVEC細胞を所与の量の組換えヒトIGFBP2タンパク質および抗IGF1R Ab(10μg/mL)で40分間刺激し、トリプシン処理し、5×10
4細胞を多孔質トランスウェルインサートに播種した。それらの細胞を24時間放置して移動させた後、膜を横断して移動した細胞の数を定量した。n=6;エラーバーは、s.e.m.を表す;p値は、スチューデントt検定を用いて得た。
【
図16】
図16は、MERTKのエクトドメインが切断され、MDA−MB−231細胞によって分泌されたことを示す、MDA−MB−231細胞溶解産物および調整培地中のMERTKのウエスタンブロット分析の写真である。
【
図17】
図17は、GFBP2、PITPNC1およびMERTKが転移性血管新生を促進したことを示す1セットの写真および図面である。肺切片をヒトビメンチンおよび静脈内注射したレクチンについて組織学的に二重染色した。転移結節の内側のビメンチン染色およびレクチン染色に基づいて結節境界を定めた。ImageJを使用して、各結節内のレクチン染色について陽性の面積を決定した。血管密度%は、所与の結節の面積あたりのレクチン染色によってカバーされる面積を表す。対照ヘアピンまたはIGFBP2、PITPNC1もしくはMERTKをターゲットにする短鎖ヘアピンを発現する注射LM2細胞間の血管密度%の分布を累積分率プロットで示す。n=5。コルモゴロフ・スミルノフ検定に基づくp値。
【
図18】
図18は、HUVEC細胞における内因性miR−126発現が、他のHUVEC細胞の動員を抑制しなかったことを示す図面である。miR−126をターゲットにするantagomiRまたは対照antagomiRをHUVEC細胞にトランスフェクトした後、HUVEC動員アッセイに付した。インサートの基底側の画像を得、ImageJソフトウェアを使用して細胞を計数した。n=4;エラーバーは、s.e.m.を表す。
【
図19】
図19は、miR−126レベルが抑制されたHUVEC細胞における可能性のあるmiR−126ターゲットの発現を示す図面である。miR−126をターゲットにするantagomiRまたは対照antagomiRをHUVEC細胞にトランスフェクトし、トランスフェクトした細胞における可能性のあるターゲットの相対発現を、qPCRを使用して定量した。エラーバーは、s.e.m.を表す;スチューデントt検定を用いて得たp値。
【
図20】
図20は、IGFBP2中和抗体の結合特性を特性づけするために用いた抗体捕捉ELISAアッセイからのデータを示す1セットの図面である。この図は、組換えIGFBP2全ペプチドを接種した動物から産生されたハイブリドーマライブラリーの1つ(wo6663−1)からの上清が、IGFBP2に高親和性で結合する抗体を含有することを示す。
【
図21】
図21は、IGFBP2中和抗体の結合特性を特性づけするために用いた抗体捕捉ELISAアッセイからのデータを示す1セットの図面である。この図は、ハイブリドーマwo6663−1からの上清が、IGFBP2に結合して、IGFBP2へのIGF1結合を中和する抗体を含有することを示す。ハイブリドーマwo6663−1からの抗体がIGFBP2に特異的に結合し、他のIGFBPファミリーメンバー(IGFBP3、IGFBP4)には結合しないことにも注目されたし。
【
図22】
図22は、ハイブリドーマライブラリーwo6663−1から単離した単一ハイブリドーマクローンから回収したIGFBP2中和モノクローナル抗体の結合特性を特性づけするために用いた抗体捕捉ELISAアッセイからのデータを示す1セットの図面である。M1、M4、M6、M9、M13、M14、M15およびM16をはじめとする、前記IGFBP2中和モノクローナル抗体のうちの幾つかは、IGFBP2に高親和性で結合してIGF1へのその結合を中和することができた。
【
図23】
図23は、生理濃度のモノクローナル抗体M14を含有する組成物が、転移性乳癌細胞による内皮動員を阻害できることを示す図面である。上で説明した実験の場合と同様に、トランスウェル移動アッセイを用いて、転移細胞による内皮動員を定量した。高転移性LM2ヒト乳癌細胞をボイデンチャンバーの底部に配置し、そこで多孔質トランスウェルインサートを通してHUVECSを動員するそれらの能力をアッセイした。少量の生理濃度のM14の前記トランスウェルへの添加は、陰性対照(IgGおよびM5抗体)に対して、HUVEC細胞の動員および移動(視野あたりの移動した細胞)を有意に阻害することができた(移動細胞の50%低減)。エラーバーは、s.e.m.を表す。
【
図24】
図24は、生理濃度のモノクローナル抗体M14を含有する組成物が、マウスモデルにおいてインビボで乳癌腫瘍進行を阻害できることを示す図面である。PBSまたはモノクローナルM14のいずれかで処置した動物における2000個のMDA−MB−231ヒト乳癌細胞による乳房腫瘍成長の生物発光イメージング。第14日に腫瘍進行は、PBS処置マウスと比較してM14での処置により有意に阻害された(腫瘍進行の7から11倍低減)。シグナルを第0日からのシグナルに正規化した。有意性は、両側スチューデントT検定に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本記載発明は、転移などの病的血管新生を特徴とする障害を処置するための試薬および方法を提供する。
【0020】
本明細書に開示するように、転移および転移性血管新生を系統的分析し、着目することが、転移癌の処置の可能性を有する治療的阻害のターゲットとしての、分泌IGFBP2、トランスフェラーゼPITPNC1、キナーゼMERTKおよびmiR−126をはじめとする多数の分子の同定につながった。新たに発見した経路は、IGFBP2、PITPNC1およびMERTK−発現の点でヒト転移と相関する血管新生促進遺伝子−を協調させる。これらの遺伝子は、転移性内皮動員および血管新生の調節因子に相当する。例えば、IGFBP2(転移細胞によって分泌されるタンパク質)は、内皮細胞上のIGFI型受容体のIGF1媒介活性化を変調されることにより内皮を動員する。
【0021】
内皮動員は、新たな血管の産生または既存の血管の再構築、すなわち血管新生、のために、被験体体内で、内皮細胞またはそれらの前駆細胞が起動され、一定の部位または領域にホーミングする過程である。上述の新規経路によるこの過程の阻害を用いて、病的血管新生を阻害することができ、およびそれによって、転移などの病的血管新生を特徴とする障害を処置することができる。
【0022】
内皮動員および結果として生ずる血管形成の阻害を、それを必要とする被験体において行うために、IGFBP2、IGF1、IGF1R、MERTK、PITPNC1、ABCB9、PSAT1、PYGB、SHMT2およびVIPRから選択されたタンパク質の発現または活性を阻害する薬剤を該被験体に投与することができる。これらのタンパク質のアミノ酸配列を下に列挙する。前記薬剤は、核酸、ポリペプチド、抗体または小分子化合物であり得る。
【0023】
阻害剤(すなわち、阻害因子)または活性化剤(すなわち、活性化因子)は、核酸、ポリペプチド、抗体または小分子化合物であり得る。好ましくは、それは単離された薬剤であるが、被験体の細胞内の内因性分子(マイクロRNA)ではない。一例として、それは、ヒト細胞内の内因性であるマイクロRNA、例えばmiR−126、miR206、または/およびmiR−335、を除外する。別の例として、前記阻害剤または活性化剤は、転写レベル、mRNA安定性レベル、翻訳レベル、タンパク質安定性/分解レベル、タンパク質修飾レベルおよびタンパク質結合レベルで機能する。
【0024】
核酸は、DNA分子(例えば、これらに限定されないが、cDNAもしくはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、これに限定されないが、mRNA)、またはDNAもしくはRNA類似体を指す。DNAまたはRNA類似体は、ヌクレオチド類似体から合成することができる。核酸分子は、一本鎖であることもあり、または二本鎖であることもある。「単離された核酸」は、その構造が、任意の天然に存在する核酸のものおよび天然に存在するゲノム核酸の任意の断片のものと同一でない核酸である。したがって、この用語は、例えば、(a)天然に存在するゲノムDNA分子の一部分の配列を有するDNAだが、その分子が天然に存在する生物のゲノムにおいて該分子の該部分に隣接している両方のコーディング配列が隣接していないDNA;(b)結果として生ずる分子がいずれの天然に存在するベクターおよびゲノムDNAとも同一でないような様式でベクターにまたは原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組込まれている核酸;(c)単独の分子、例えば、cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生産された断片、または制限酵素断片;および(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち、融合タンパク質をコードしている遺伝子、の一部である組換えヌクレオチド配列を包含する。
【0025】
用語「RNA」、「RNA分子」、および「リボ核酸分子」は、本明細書では交換可能に用いており、リボヌクレオチドのポリマーを指す。用語「DNA」または「DNA分子」または「デオキシリボ核酸分子」は、デオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。DNAおよびRNAは、天然に(例えば、それぞれ、DNA複製またはDNAの転写によって)合成されることがある。RNAは、翻訳後修飾されることがある。DNAおよびRNAを化学合成することもできる。DNAおよびRNAは、一本鎖(すなわち、それぞれ、ssRNAおよびssDNA)であることもあり、または多鎖(例えば、二本鎖、すなわち、それぞれ、dsRNAおよびdsDNA)であることもある。
【0026】
核酸配列は、上述の遺伝子の1つ以上をターゲットにしてその発現または活性を阻害する低分子干渉RNA(例えば、RNAi剤)をコードしていることがある。用語「RNAi剤」は、RNA干渉を指示するのに十分なターゲットRNAの配列相補性を有するRNA、またはその類似体を指す。例としては、RNAを作製するために使用することができるDNAも挙げられる。RNA干渉(RNAi)は、ターゲット分子(例えば、ターゲット遺伝子、タンパク質またはRNA)をダウンレギュレートする配列特異的または選択的過程を指す。一般に、干渉RNA(「iRNA」)は、特定のmRNAの触媒分解を生じさせるものであって、遺伝子発現を低下させるまたは阻害するために使用することもできる、二本鎖の短鎖干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、または一本鎖マイクロRNA(miRNA)である。
【0027】
用語「短鎖干渉RNA」または「siRNA」(「低分子干渉RNA」としても公知)は、RNA干渉を指示または媒介できる、長さが約10〜50ヌクレオチド、好ましくは長さが約15〜25ヌクレオチドの間、さらに好ましくは長さが約17、18、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチドのRNA剤、好ましくは二本鎖の薬剤、であって、それらの鎖が、例えば1、2または3つのオーバーハングヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)を含むオーバーハング末端を場合により有するRNA剤を指す。天然に存在するsiRNAは、より長いdsRNA分子(例えば、長さが>25ヌクレオチド)から細胞のRNAi機構(例えば、ダイサーまたはその相同体)によって生成される。
【0028】
用語「miRNA」または「マイクロRNA」は、RNA干渉を指示または媒介できる、長さが約10〜50ヌクレオチド、好ましくは長さが約15〜25ヌクレオチドの間、さらに好ましくは長さが約17、18、19、20、21、22、23、24または25ヌクレオチドのRNA剤、好ましくは一本鎖の薬剤を指す。天然に存在するmiRNAは、ステム・ループ前駆体RNA(すなわち、プレmiRNA)からダイサーによって生成される。本明細書において用いる場合の用語「ダイサー」は、ダイサーはもちろん、dsRNA構造をsiRNA、miRNA、siRNA様またはmiRNA様分子にプロセッシングできる任意のダイサーオルソログまたはホモログも含む。天然に存在するマイクロRNA(または「miRNA」)は一過的様式で(例えば、発達中に)発現されることが判明していることに基づき、用語マイクロRNA(または「miRNA」)を用語「小分子一過性RNA」(または「stRNA」)と交換可能に用いる。
【0029】
本明細書において用いる場合の用語「shRNA」は、相補配列の第一および第二領域を含むステム・ループ構造を有するRNA剤であって、前記領域の相補性度および配向度が、該領域間で塩基対合が発生するのに十分なものであり、前記第一および第二領域が、ループ領域によって連結されており、前記ループが、前記ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対合の欠如の結果として生ずるものであるRNA剤を指す。
【0030】
したがって、RNA分子の(例えば細胞内での)分解を特徴とするRNAiの利用も本発明の範囲内である。分解は、酵素的、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって触媒される。RNAiを指示するためにターゲットRNA配列(例えば、上述の遺伝子の1つ以上)に対して十分相補的な配列を有するRNA剤は、該RNA剤が、ターゲットRNA配列との少なくとも50%の相同性(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または100%の相同性)を有し、したがって、それら2つが、互いに、ハイブリダイズしてRNAi機構(例えば、RISC複合体)または過程によるターゲットRNAの分解を誘発するのに十分相補的であることを意味する。「RNAiを指示するのに十分にターゲットRNA配列に相補的な配列」を有するRNA剤は、該RNA剤が、RNAi機構または過程によってターゲットRNAの翻訳阻害を誘発するのに十分な配列を有することも意味する。RNA剤は、ターゲットDNA配列をクロマチンサイレンシングさせるために、該ターゲットDNA配列によってコードされているターゲットRNAに十分相補的な配列を有することもある。言い換えると、前記RNA剤は、転写遺伝子サイレンシングを誘導するのに十分な、例えば、ターゲットDNA配列でのまたは付近での遺伝子発現を、例えば該ターゲットDNA配列でのまたは付近でのクロマチン構造変化を誘導することにより、下方変調するのに十分な、配列を有する。
【0031】
当該技術分野において公知の高分子、生体分解性微粒子またはマイクロカプセル送達装置を使用して、上述のポリヌクレオチドを送達することができる。前記ポリヌクレオチドの摂取を果たすためのもう1つの方法は、標準的な方法によって調製されたリポソームの使用である。前記ポリヌクレオチドをこれらの送達ビヒクルに単独で組み込むことができ、または組織特異的抗体と一緒に共組み込みすることができる。あるいは、静電力または共有結合力によってポリ−L−リシンに付いているプラスミドまたは他のベクターで構成されている分子コンジュゲートを調製することができる。ポリ−L−リシンは、ターゲット細胞上の受容体に結合することができるリガンドに結合する(Cristianoら、1995、J.Mol.Med.73:479)。あるいは、当該技術分野において公知である組織特異的転写調節要素の使用により、組織特異的ターゲティングを果たすことができる。筋肉内、皮内または皮下部位への裸のDNAの(すなわち、送達ビヒクルなしでの)送達は、インビボ発現を果たすためのもう1つの手段である。
【0032】
siRNA、miRNAおよびasRNA(アンチセンスRNA)分子を当該技術分野において周知の方法によって設計することができる。任意のRNAを一意的に分解するために必要な配列特異性をもたらすのに十分な相同性を有するsiRNA、miRNAおよびasRNA分子を、AMBION,Inc.およびDHARMACON,Inc.のウェブサイト上で管理されているものをはじめとする(しかしこれに限定されない)当該技術分野において公知のプログラムを使用して設計することができる。当業者は、siRNA、miRNAおよびasRNA配列の最適化のための幾つかの設計種の系統的試験を常例的に行うことができる。短鎖干渉核酸分子を設計する際の考慮事項としては、生物物理的、熱力学的および構造的考慮事項、センス鎖内の特定の位置での塩基優先性、および相同性が挙げられるが、これらに限定されない。これらの考慮事項は、当該技術分野において周知であり、上述のRNA分子を設計するための指針となる。
【0033】
一例として、前記ポリペプチドは抗体である。用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその免疫グロブリン活性部分、すなわち抗原結合部位、を指す。例としては、少なくとも1つまたは2つの重(H)鎖可変領域(V
H)と、少なくとも1つまたは2つの軽(L)鎖可変領域(V
L)とを有する部分が挙げられるが、これに限定されない。前記V
HおよびV
L領域を、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより高度に保存される領域が散在する、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる高可変性領域にさらに細分することができる。本明細書において用いる場合、用語「免疫グロブリン」は、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされている1つ以上のポリペプチドから成るタンパク質を指す。認知されているヒト免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1およびIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。
【0034】
抗体の「抗原結合部分」(または「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、IGFBP2、IGF1、IGF1R、MERTK、PITPNC1、ABCB9、PSAT1、PYGB、SHMT2またはVIPR)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能が完全長抗体の断片によって遂行され得ることは証明されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)Fab断片、すなわち、V
L、V
H、C
LおよびC
H1ドメインから成る一価断片;(ii)F(ab’)
2断片、すなわち、ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)V
HおよびC
H1ドメインから成るFd断片;(iv)抗体のシングルアームのV
LおよびV
Hドメインから成るFv断片;(v)V
Hドメインから成るdAb断片(Wardら、(1989)Nature 341:544−546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、すなわちV
LおよびV
H、は、別々の遺伝子によってコードされているが、組換え法を用いて、合成リンカーによりそれらを連結させることができ、それにより、それらを、V
L領域とV
H領域が対合して一価分子を形成している単一タンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883参照)のようにすることができる。かかる一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語の中に包含されると解釈される。これらの抗体断片を当業者に公知の従来の技法を用いて得、それらの断片をインタクト抗体であるのと同じ手法で有用性についてスクリーニングする。
【0035】
上述のターゲットタンパク質の1つに特異的に結合する抗体を、当該技術分野において公知の方法を用いて作ることができる。この抗体は、ポリクローナル抗体であることもあり、またはモノクローナル抗体であることもある。かかる抗体の例としては、下の作業実施例において説明するものが挙げられる。1つの実施形態では、前記抗体を組換え生産することができ、例えば、ファージディスプレイによってまたはコンビナトリアル法によって生産することができる。もう1つの実施形態では、前記抗体は、完全ヒト抗体(例えば、ヒト免疫グロブリン配列から抗体を生産するように遺伝子改変されたマウスにおいて作られた抗体)、ヒト化抗体、または非ヒト抗体、例えば、これらに限定されないが、齧歯動物(マウスもしくはラット)、ヤギ、霊長類(例えば、これに限定されないが、サル)、ウサギもしくはラクダ抗体である。抗体のヒト化バージョンを産生させるための方法の例としては、CDRグラフティング(Queenら、米国特許第5,585,089号明細書;Riechmannら、Nature 332:323(1988))、鎖のシャフリング(米国特許第5,565,332号明細書);およびベニアリングまたはリサーフェイシング(欧州特許第592,106号、同第519,596号明細書);Padlan、Molecular Immunology 28(415):489−498(1991);Studnickaら、Protein Engineering 7(6):805−814(1994);Roguskaら、PNAS 91:969−973(1994))が挙げられるが、これらに限定されない。完全ヒト抗体を産生させる方法の例としては、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるマウスからの抗体の産生、ならびにヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーを産生およびスクリーニングするためのファージディスプレイ技術の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体を指すと解釈される(例えば、IGFBP2、IGF1、IGF1R、MERTK、PITPNC1、ABCB9、PSAT1、PYGB、SHMT2またはVIPRを特異的に結合する単離された抗体は、かかる抗原以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的にない)。しかし、前記抗原を特異的に結合する単離された抗体は、他の種からの他の抗原、例えば、IGFBP2、IGF1、IGF1R、MERTK、PITPNC1、ABCB9、PSAT1、PYGB、SHMT2またはVIPR分子、に対する交差反応性を有することがある。さらに、単離された抗体には、他の細胞材料および/または化学物質が実質的にないことがある。
【0037】
本明細書において用いる場合の用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を提示する。
【0038】
本明細書において用いる場合の用語「ヒト抗体」は、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むと解釈される。さらに、前記抗体が定常領域を含有する場合、その定常領域もヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によってまたはインビボで体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含むことがある。しかし、本明細書において用いる場合の用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳類の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされた抗体を含まないと解釈される。
【0039】
用語「ヒトモノクローナル抗体」は、フレームワーク領域とCDR領域の両方がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一結合特異性を提示する抗体を指す。1つの実施形態において、前記ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子と不死化細胞に融合している軽鎖導入遺伝子とを含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウス、から得たB細胞を含むハイブリドーマによって生産される。
【0040】
本明細書において用いる場合の用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって調製、発現、生成および単離されるすべてのヒト抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子の導入遺伝子を持つまたは導入染色体を持つ動物(例えば、マウス)から単離されたまたは該動物から調製されたハイブリドーマから単離された抗体(下でさらに説明する)、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから、単離された抗体、(c)組換え、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、生成または単離された抗体を含む。かかる組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかし、一定の実施形態において、かかる組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(または、ヒトIg配列の導入遺伝子を持つ動物を使用するときには、インビボ体細胞突然変異誘発)を受けることがあり、したがって、該組換え抗体のV
HおよびV
L領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系V
HおよびV
L配列に由来し、関連付けられるが、天然にはインビボでヒト抗体生殖細胞系レパートリー中に存在しない。
【0041】
本明細書において用いる場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされている抗体クラス(例えば、IgMまたはIgG1)を指す。
【0042】
句「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」は、本明細書では用語「抗原に特異的に結合する抗体」と交換可能に用いている。
【0043】
本明細書において用いる場合、IgG抗体についての「高親和性」という用語は、ターゲット抗原に対して10
-7M以下、好ましくは10
-8M以下、さらに好ましくは10
-9M以下、およびさらにいっそう好ましくは10
-10M以下のK
Dを有する抗体を指す。しかし、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプについては様々であり得る。例えば、IgMアイソタイプについての「高親和性」結合は、10
-7M以下、さらに好ましくは10
-8M以下のK
Dを有する抗体を指す。
【0044】
一例として、IGF1へのIGFBP2結合を阻害することによりIGFBP2機能を中和するモノクローナル抗体を含む組成物を記載する。1つの実施形態において、この抗体は、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、または非ヒト抗体、例えば、これらに限定されないが、齧歯動物(マウスもしくはラット)、ヤギ、霊長類(例えば、これに限定されないが、サル)、ウサギまたはラクダ抗体であり得る。1つの実施形態では、このモノクローナルモノクローナル抗体の1つ以上のアミノ酸を置換して、その物理的特性を変更することができる。これらの特性としては、結合特異性、結合親和性、免疫原性、および抗体アイソタイプが挙げられるが、それらに限定されない。上記抗体の完全ヒトまたはヒト化バージョンを含有する医薬組成物を使用して、病的血管新生の障害を処置することができる。
【0045】
一例として、IGF1がIGFBP2に結合するのを阻害するIGFBP2中和抗体を含む組成物は、インビボで乳癌腫瘍進行および腫瘍量を抑制する。この例では、上記抗体の投与は、ヒト癌のマウスモデルにおいてインビボでヒト乳癌の腫瘍量を低減させる。
【0046】
上記抗体の完全ヒトまたはヒト化バージョンを含有する医薬組成物を使用して、転移細胞による内皮動員を阻害することによりヒト患者における乳癌転移を障害することができる。もう1つの実施形態では、これらの抗体の完全ヒトまたはヒト化バージョンを含有する医薬組成物を使用して、他のタイプの血管腫瘍を処置することができる。この組成物で処置することができる典型的な血管新生化腫瘍としては、酸素および栄養の供給のために血管要素を必要とする固形腫瘍、特に癌腫が挙げられる。例示的固形腫瘍としては、肺、乳房、骨、卵巣、胃、膵臓、咽頭、食道、精巣、肝臓、耳下腺、胆管、結腸、直腸、子宮頚、子宮、子宮内膜、腎臓、膀胱、前立腺、甲状腺の癌腫、扁平上皮癌腫、腺癌、小細胞癌腫、黒色腫、神経膠腫、膠芽腫、神経芽腫、カポジ肉腫および肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
もう1つの実施形態において、前記ポリペプチドは、上述の経路に干渉する、したがって、内皮動員および血管新生を阻害する、上述のタンパク質の突然変異体型である。用語「突然変異体」は、天然に存在する突然変異体、ならびに化学的におよび/または組換えDNA法を用いて生成された突然変異体を包含する。上述の野生型ポリペプチドの1つについての突然変異体は、1つ以上のアミノ酸の変更、例えばトランケーション、伸長、置換、欠失または挿入、に起因し得る。前記変更は、修飾アミノ酸、例えば翻訳後修飾を含むもの、を有することもある。突然変異体の血管新生促進活性は、本明細書に記載するまたは当該技術分野において公知のアッセイを用いて測定して、あったとしても野生型ポリペプチドの活性より少なくとも約20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%)実質的に低い。一例は、IGF1−Rの細胞外ドメインを有するが、細胞内ドメインを欠くポリペプチドである。IGF−1についての競合により、この突然変異体は、ドミナントネガティブ様式で上述の経路および血管新生促進活性を阻害することができる。
【0048】
上述の抗体またはポリペプチドのアミノ酸組成物は、それぞれの抗原またはターゲットに結合する能力(例えば、親和性)の破壊に伴ってまたはそれには関係なく変わることがあり、およびそれぞれの細胞応答を誘発することもあり、または阻害することもある。例えば、それらは、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含有することがある。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、例えば配列番号9または10において、予測される非必須アミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置き換えることができる。あるいは、それらの配列のすべてまたは一部分に沿ってランダムに、例えば飽和突然変異誘発により、突然変異を導入することができ、得られた突然変異体を、それぞれの抗原に結合してそれぞれの細胞応答を誘発する能力についてスクリーニングして、その活性を保持する突然変異体を同定することができる。
【0049】
組成物
適する担体と上記薬剤の1つ以上とを含有する組成物は、本発明の範囲内である。前記組成物は、医薬的に許容され得る担体を含有する医薬組成物、飲食に許容され得る適する担体を含有する飲食用組成物、または化粧品的に許容され得る担体を含有する化粧品組成物であり得る。
【0050】
用語「医薬組成物」は、インビボまたはエクスビボでの診断または治療用途に特に適している組成物を作る、不活性または活性の担体と活性薬剤の組み合わせを指す。「医薬的に許容され得る担体」は、被験体へのまたは対する投与後、望ましくない生理作用を生じさせない。医薬組成物中の担体は、活性成分と相溶性であり、それを安定させることが可能であり得るという意味でも、「許容され得」なければならない。1つ以上の可溶化剤を活性化合物の送達のための製薬用担体として用いることができる。医薬的に許容され得る担体の例としては、剤形として使用可能な組成物を実現するための生体適合性ビヒクル、アジュバント、添加剤および希釈剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の担体の例としては、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、およびD&Cイエロー#10が挙げられる。
【0051】
病的血管新生を特徴とする障害を処置するために上記組成物を上記の形態のいずれかで使用することができる。有効量は、処置する被験体に治療効果を付与するために必要とされる活性化合物/薬剤の量を指す。有効用量は、当業者には認識されているように、処置する疾患のタイプ、投与経路、賦形剤使用量、および他の治療的処置との併用(co−usage)の可能性に依存して変わるであろう。
【0052】
本発明の医薬組成物を非経口、経口、経鼻、直腸内、局所または頬側投与することができる。本明細書において用いる場合の用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内(intrmuscular)、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病巣内または頭蓋内注射、ならびに任意の適する注入法を指す。
【0053】
滅菌注射用組成物は、非毒性で非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の溶液または懸濁液であり得る。かかる溶液としては、1,3−ブタンジオール、マンニトール、水、リンガー溶液、および等張食塩液が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、固定油(例えば、合成モノまたはジグリセリド)が溶媒または懸濁化媒体として適便に用いられる。脂肪酸、例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体(しかしこれらに限定されない)は、注射剤の調製に有用であり、同様に、天然の医薬的に許容され得る油、例えば、オリーブ油またはヒマシ油(しかしこれらに限定されない)、それらのポリオキシエチレン化バージョンも有用である。これらの油性溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロース(しかしこれに限定されない)、または類似の分散剤を含有することがある。医薬的に許容され得る固体、液体または他の剤形の製造に一般に使用される、他の一般に使用される界面活性剤、例えば、TweenもしくはSpanまたは他の類似の乳化剤もしくは生物学的利用能強化剤(しかしこれらに限定されない)も、調合のために使用することができる。
【0054】
経口投与用の組成物は、カプセル、錠剤、エマルジョンおよび水性懸濁液、分散液および溶液をはじめとする、任意の経口的に許容され得る剤形であり得る。錠剤の場合、一般に使用される担体としては、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム(しかしこれに限定されない)も典型的に添加される。カプセル形態での経口投与に有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが挙げられるが、これらに限定されない。水性懸濁液またはエマルジョンを経口投与するときには、乳化または懸濁化剤と併せた油相に活性成分を懸濁または分散させることができる。必要に応じて、一定の甘味剤、着香剤または着色剤を添加することができる。
【0055】
本記載発明による局所投与用の医薬組成物は、溶液、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、ペースト、ゲル、スプレー剤、エアロゾルまたはオイルとして調合することができる。あるいは、局所製剤は、1つ以上の賦形剤または希釈剤を場合によっては含むことがある活性成分(単数または複数)を含浸させたパッチまたはドレッシングの形態であり得る。一部の好ましい実施形態において、前記局所製剤は、皮膚または他の罹患エリアへの活性薬剤(単数または複数)の吸収または浸透を増進するであろう材料を含む。前記局所組成物は、皮膚の障害、例えば、黒色腫および一定の炎症性障害の処置に有用である。
【0056】
局所組成物は、安全かつ有効な量の、皮膚への適用に適する、皮膚科学的に許容され得る担体を含有する。「化粧品的に許容され得る」または「皮膚科学的に許容され得る」組成物または成分は、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応およびこれらに類することを伴わない、ヒト皮膚に接触させる使用に適している組成物または成分を指す。前記担体により、活性薬剤および自由選択の成分を適切な濃度(単数または複数)で皮膚に送達することが可能になる。したがって、前記担体は、確実に活性材料を適切な濃度で選択ターゲット上に均一に塗布するまたは分布させるための希釈剤、分散剤、溶媒またはこれらに類するものとして作用することができる。前記担体は、固体であることもあり、半固体であることもあり、または液体であることもある。前記担体は、ローション、クリームもしくはゲルの形態であることがあり、特に、活性材料が沈殿しないようにするために十分な濃さおよび降伏点を有するものであり得る。前記担体は、不活性であることもあり、または皮膚科学的利点を有することもある。それは、本明細書に記載する活性成分と物理的におよび化学的に相溶性でなければならず、ならびにその組成物に関連した安定性、効力または他の使用上の利点を過度に損なわせてはならない。
【0057】
処置方法
本記載発明は、被験体における血管新生性障害または血管新生の障害を処置するための方法を提供する。
【0058】
用語「血管新生性障害」、「血管新生の障害」および「血管新生障害」は、本明細書では交換可能に用いており、病的血管新生を特徴とする障害を指す。病的血管新生を特徴とする障害は、異常または異所性血管新生が、単独でまたは他のものとの組み合わせで、該障害の因果関係、起因または症状に寄与する障害を指す。この障害の例としては、様々な癌(例えば、血管新生化腫瘍)、眼障害、炎症性障害などが挙げられる。
【0059】
本方法で処置することができる典型的な血管新生化腫瘍としては、酸素および栄養の供給のために血管要素を必要とする固形腫瘍、特に癌腫が挙げられる。例示的固形腫瘍としては、肺、乳房、骨、卵巣、胃、膵臓、咽頭、食道、精巣、肝臓、耳下腺、胆管、結腸、直腸、子宮頚、子宮、子宮内膜、腎臓、膀胱、前立腺、甲状腺の癌腫、扁平上皮癌腫、腺癌、小細胞癌腫、黒色腫、神経膠腫、膠芽腫、神経芽腫、カポジ肉腫および肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
癌以外の多数の障害または病態も上記方法で処置することができる。例としては、関節炎、関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、グレーブス病、血管再狭窄(血管形成術後の再狭窄を含む)、動静脈奇形(AVM)、髄膜腫、血管腫、血管新生緑内障、慢性腎疾患、糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎疾患、間質性肺疾患、肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫、自己免疫性肝炎、慢性炎症性肝疾患、肝硬変、皮膚T細胞リンパ腫、酒さ、および基底細胞癌腫が挙げられる。
【0061】
他の処置ターゲットとしては、例えば、米国特許出願公開第2009/004297号、同第2009/0175791号および同第2007/0161553号明細書に記載されているもの、例えば、血管線維腫、アテローム斑、角膜移植片新生血管形成、血友病関節症、肥厚性瘢痕、オスラー・ウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、後水晶体線維増殖症、強皮症、トラコーマ、血管接着、滑膜炎、皮膚炎、様々な他の炎症性疾患および障害、ならびに子宮内膜症が挙げられる。
【0062】
「被験体」は、ヒトおよび非ヒト動物を指す。非ヒト動物の例としては、すべての脊椎動物、例えば、哺乳動物、例えば非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類(特に、高等霊長類)、イヌ、齧歯動物(例えば、マウスまたはラット)、モルモット、ネコおよびウサギ、ならびに非哺乳動物、例えば鳥類、両生類、爬虫類などが挙げられる。1つの実施形態において、被験体はヒトである。もう1つの実施形態において、被験体は、実験動物、または疾患モデルとして適する動物である。障害について処置すべき被験体を該障害についての標準的診断法によって同定することができる。
【0063】
場合により、前記被験体を、処置前に、当該技術分野において公知のまたは上で説明した方法により上述の遺伝子またはタンパク質の1つ以上についての突然変異、発現レベルまたは活性レベルについて検査することができる。前記被験体が、前記遺伝子の特定の突然変異を有する場合、または前記遺伝子発現または活性レベルが、例えば、該被験体からの試料におけるほうが正常な人からの試料におけるものより高い場合、該被験体は、処置の候補である。
【0064】
阻害または処置を確認するために、前記投与段階の前および/または後に、当該技術分野において公知の技術を用いて内皮動員または結果として生ずる血管新生の阻害を評価および/または検証することができる。例示的技術としては血管造影または動脈造影が挙げられ、血管および身体の器官の内部または内腔を可視化するための医療イメージング法は、一般に、放射性不透過性造影剤を血管に注射し、蛍光透視法などのX線に基づく技法を用いてイメージングすることにより行われ得る。
【0065】
「処置すること」または「処置」は、障害を有する被験体への、該障害、該障害の症状、該障害の二次的な疾病状態または該障害の素因を治癒する、緩和する、軽減する、治療する、それらの発症を遅延させる、それらを予防するまたは改善するための、化合物または薬剤の投与を指す。
【0066】
「有効量」または「治療有効量」は、処置する被験体において医学的に望ましい結果を生じさせることができる前記化合物または薬剤の量を指す。前記処置方法をインビボでまたはエクスビボで、単独でまたは他の薬物もしくは療法と共に行うことができる。治療有効量を1回以上の投与、適用または投薬で施すことができ、および治療有効量は、特定の製剤または投与経路に限定されないと解釈される。
【0067】
前記薬剤をインビボでまたはエクスビボで、単独で、または他の薬物もしくは療法と共に、すなわちカクテル療法で、投与することができる。本明細書において用いる場合、用語「共投与」または「共投与される」は、少なくとも2種の薬剤(単数または複数)または療法の被験体への投与を指す。例えば、腫瘍、特に血管新生化悪性腫瘍、の処置の場合、前記薬剤を単独で使用することができ、または例えば化学療法剤、放射線療法剤、アポトーシス(apoptopic)剤、抗血管新生剤、および/または免疫毒素もしくはコアグリガンド(coaguligand)と併用することができる。
【0068】
一部の実施形態において、2種以上の薬剤/療法の共投与は、同時的である。他の実施形態では、第一の薬剤/療法を、第二の薬剤/療法の前に投与する。用いる様々な薬剤/療法の製剤および/または投与経路が様々であり得ることは、当業者には理解される。
【0069】
インビボアプローチでは、化合物または薬剤を被験体に投与する。一般に、前記化合物を医薬的に許容され得る担体(例えば、これに限定されないが、生理食塩水など)に懸濁させ、経口投与または静脈内注入により投与するか、皮下に、筋肉内に、髄腔内に、腹腔内に、直腸内に、膣内に、鼻腔内に、胃内に、気管内にまたは肺内に注射するまたは埋め込む。
【0070】
必要な投薬量は、投与経路の選択;製剤の性質;患者の病気の性質;被験体のサイズ、体重、表面積、年齢および性別;投与される他の薬物;ならびに担当医の判断に依存する。適切な投薬量は、0.01〜100mg/kgの範囲である。利用できる化合物の多様性、および様々な投与経路の異なる効率にかんがみて、必要投薬量の変動を予想することができる。例えば、経口投与は、i.v.注射による投与より高い投薬量を必要とすると予想されよう。当該技術分野において十分理解されているような最適化のための標準的経験的常例手順を用いて、これらの投薬レベルの変動を調整することができる。適する送達ビヒクル(例えば、ポリマー微粒子または埋め込み可能装置)内への化合物の封入は、送達の、特に経口送達についての、効率を増すことができる。
【0071】
診断
本記載発明は、診断キットおよび方法も提供する。癌細胞または腫瘍形成しやすい細胞を有する被験体を、該被験体からの試験試料中の上記遺伝子またはポリペプチドの1つ以上についての発現または活性に基づき、診断することができる。前記ポリペプチドおよび核酸を、癌細胞または腫瘍形成しやすい細胞の存在または不在を示すマーカーとして使用することができる。本記載発明の診断および予後アッセイは、前記ポリペプチドまたは核酸の発現レベルを評定するための方法を含む。
【0072】
試験試料中の前記ポリペプチドまたは核酸の存在、レベルまたは不在を、試験被験体から試験試料を得、その試験試料と該ポリペプチドまたは核酸を検出できる化合物または薬剤(例えば、mRNAプローブ、ゲノムcDNAプローブまたはcDNAプローブ)と接触させることによって評価することができる。「試験試料」としては、被験体から単離された組織、細胞および生体液、ならびに被験体体内に存在する組織、細胞および流体を挙げることができる。前記遺伝子の発現レベルを多数の方法で測定することができ、それらの方法としては、該遺伝子によってコードされているmRNAの測定、該遺伝子によってコードされているポリペプチドの量の測定、または該遺伝子によってコードされているポリペプチドの活性の測定が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
細胞中の前記遺伝子に対応するmRNAのレベルをインサイチュー形式およびインビトロ形式、両方によって判定することができる。試験試料から単離されたメッセンジャーRNAを、サザンまたはノーザン分析、PCR分析およびプローブアレイを含む(しかしこれらに限定されない)、ハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにおいて使用することができる。例えば、mRNAレベルの検出のための1つの診断方法は、単離されたmRNAと、前記遺伝子によってコードされている該mRNAにハイブリダイズすることができる核酸プローブとを接触させることを伴う。前記プローブは、完全長核酸またはその一部分、例えば、長さが少なくとも10ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであって、ストリンジェントな条件下でmRNAまたはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドであり得る。
【0074】
1つの形式では、例えば、単離されたmRNAをアガロースゲル上で遊走させ、そのゲルからそのmRNAをニトロセルロース膜などの膜に転写することにより、mRNA(またはそれから調製したcDNA)を表面に固定化し、プローブと接触させる。もう1つの形式では、例えば遺伝子チップアレイで、プローブを表面に固定化し、mRNA(またはcDNA)をプローブと接触させる。当業者は、前記mRNAレベルの検出に公知のmRNA検出方法を適応させることができる。
【0075】
上述の遺伝子の1つ以上によってコードされている試料中のmRNA(またはそれから調製したcDNA)のレベルを、例えば、標準的なPCR(米国特許第4,683,202号明細書)、RT−PCR(Bustin S.、J Mol Endocrinol.25:169−93、2000)、定量的PCR(Ong Y.ら、Hematology.7:59−67、2002)、リアルタイムPCR(Ginzinger D.、Exp Hematol.30:503−12、2002)およびインサイチューPCR(Thaker V.、Methods Mol Biol.115:379−402、1999)または任意の他の核酸増幅法による核酸増幅、続いてそれらの増幅された分子について当該技術分野において公知の技法を用いる検出で、評価することができる。本明細書において用いる場合、「増幅プライマー」は、遺伝子の5’または3’領域(それぞれ、プラスおよびマイナス鎖、逆もまた然り)にアニールすることができる1対の核酸分子であって、それらの間に短い領域を含有するものである1対の核酸分子と定義する。適切な条件下で適切な試薬を用いると、かかるプライマーにより、該プライマーが隣接したヌクレオチド配列を有する核酸分子を増幅することができる。
【0076】
インサイチュー法については、細胞または組織試料を調製し、支持体、例えば、これに限定されないが、スライドガラス、に固定化し、その後、染色体上のゲノムDNAにまたは対応するポリペプチドをコードしているmRNAにハイブリダイズすることができるプローブと接触させることができる。
【0077】
もう1つの実施形態において、本記載発明の方法は、対照試料と、mRNAまたはゲノムDNAを検出できる化合物または薬剤とを接触させること、および該対照試料中のmRNAまたはゲノムDNAの存在と試験試料中のmRNAまたはゲノムDNAの存在とを比較することをさらに含む。
【0078】
上記核酸ベースの診断方法は、被験体が、異所性遺伝子発現および異所性血管新生に関連した疾患、例えば癌、を有するかどうか、または該疾患の素因を有するかどうかを判定するための定性的および定量的情報をもたらすことができる。
【0079】
様々な方法を用いて、上述のポリペプチドの1つ以上についてのレベルを判定することができる。一般に、これらの方法は、前記ポリペプチドに選択的結合する薬剤、例えば抗体、と接触させて、試料中のポリペプチドのレベルを評価することを含む。抗体は、ポリクローナル抗体であってよいし、またはモノクローナル抗体であってよい。インタクト抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)
2)を使用することもできる。もう1つの実施形態において、前記抗体は、検出可能な標識を保有する。プローブまたは抗体に関しての用語「標識された」は、検出可能な物質をプローブまたは抗体に物理的に連結させることによるプローブまたは抗体の直接標識はもちろん、検出可能物質との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識も包含すると解釈される。例えば、ウサギFc領域を有する抗体は、該ウサギFc領域に対する二次抗体であって、検出可能な物質とカップリングしている二次抗体を使用して、間接的に標識することができる。検出可能な物質の例をここで提供する。適切な検出可能な物質または標識としては、放射性同位体(例えば、これらに限定されないが、
125I、
131I、
35S、
3H、もしくは
32P)、酵素(例えば、これらに限定されないが、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、もしくはβ−ガラクトシダーゼ(β−glactosidase))、蛍光部分またはタンパク質(例えば、これらに限定されないが、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、GFP、もしくはBFP)、または発光部分(例えば、これに限定されないが、カリフォルニア州パロアルトのQuantum Dot CorporationによるQdot(商標)ナノ粒子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
前記検出方法を用いて、生体試料中の上述のポリペプチドの1つ以上をインビトロではもちろんインビボでも検出することができる。前記ポリペプチドのインビトロ検出法としては、ELISA、免疫沈降法、免疫蛍光法、EIA、RIA、およびウエスタンブロット分析が挙げられる。前記ポリペプチドのインビボ検出法としては、標識抗体の被験体への導入が挙げられる。例えば、上で説明したような検出可能な物質で抗体を標識することができる。被験体におけるその検出可能物質の存在および位置を、標準的イメージング法によって検出することができる。
【0081】
本明細書に記載する診断方法により、上述のポリペプチドの1つ以上についての異所発現または活性に関連した疾患または障害を有する被験体または発現するリスクのある被験体を同定することができる。ここに記載するような、かかる疾患または障害の例としては、上で説明したものが挙げられる。
【0082】
本明細書に記載する予後アッセイを用いて、被験体が、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチドミメティック、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、または他の候補薬)を投与して癌などの障害を治療するのに適しているかどうかを判定することができる。例えば、かかるアッセイを用いて、被験体に細胞傷害性薬物を投与して障害を処置することができるかどうかを判定することができる。
【0083】
上記アッセイの実施から得られる情報は、個体の健康状態に影響を及ぼす疾患および他の有害な状態の予後判定、該疾患および状態の進行の同定、ならびに該疾患および状態の臨床管理に有用である。一部の実施形態において、上述の診断アッセイは、異常な病的血管新生を特徴とする悪性病変(癌)の予後判定、該悪性病変の進行の同定、および該悪性病変の管理に有用な情報をもたらす。より具体的には、前記情報は、罹患した哺乳動物、例えばヒト、の身体からかかる悪性病変を根絶するための化学療法または他の処置レジメを計画する際に臨床家の助けになる。
【実施例1】
【0084】
方法および材料
本実施例は、実施例2〜8において使用する一般的な方法および材料を説明するものである。
【0085】
細胞培養
すべての細胞系を、Tavazoie,S.F.ら、Nature 451(7175)、147(2008)に記載されているとおりに増殖させた。293T細胞は、10%FBSを補足したDMEM培地で培養し;H29細胞は、10%FBS、20ng/mL ドキシサイクリン、2μg/mL ピューロマイシンおよび0.3mg/mL G418を補足したDMEM培地で培養し;ならびにHUVEC細胞は、EGM−2培地(CC−3162、Lonza、スイス国バーゼル)で培養した。MDA−MB−231およびCN34乳癌細胞系ならびにその転移誘導体LM2、BoM2およびLm1aは、Minn,A.J.ら、Nature 436(7050)、518(2005)に記載されている。
【0086】
動物研究
すべての動物実験は、The Rockefeller Universityの施設内動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee:IACUC)により承認されたプロトコルに従って行った。同齢の雌NOD/SCIDマウス(週齢6〜8週)を、同所性乳房脂肪体腫瘍開始アッセイ(Minn,A.J.ら、Nature 436(7050)、518(2005)と肺転移アッセイ(Tavazoie,S.F.ら、Nature 451(7175)、147(2008))の両方に使用した。8週齢同齢雌無胸腺マウスを全身転移アッセイ(Kang,Y.ら、Cancer Cell 3(6)、537(2003)およびYin,J.J.ら、J Clin Invest 103(2)、197(1999))に使用した。
【0087】
pTripzベクター(Thermo Scientific、アラバマ州ハンツヴィル)を含有するtet−ONにプレmiR−126をクローニングすることにより、誘導性miR−126発現を実現した。第3日に、5%スクロースを含有する飲み水に2mg/mL ドキシサイクリン(Sigma Aldrich)を添加した。対照マウスには、5%スクロースを有する飲み水を与えた。
【0088】
レンチウイルス、レトロウイルス、ノックダウンおよび過発現細胞の産生
レンチウイルスの産生のために、1×10
6293T細胞を10cmプレートに播種し、24時間インキュベートした。その後、40μLのTRANSIT(登録商標)−293トランスフェクション試薬(MIR2700、MIRUS BIO LLC、ウィスコンシン州マディソン)を使用して、12マイクログラムのベクターK(Gag/Pol)、6μgのベクターA(Env)および12μgの適切なshRNAプラスミドを293T細胞にコトランスフェクトした。16時間後、培地を、10%FBSを補足した新たな抗生物質不含DMEMと交換した。さらに24時間後、5分間、1,500gでの回転によりウイルスを回収し、その後、0.45μmフィルターによって濾過した。レトロウイルスの産生のために、H29細胞を10cmプレートに播種し、放置して集密度90%まで成長させた。その後、60μLのLIPOFECTAMINE(商標)2000トランスフェクション試薬(カリフォルニア州カールズバッドのLIFE TECHNOLOGIESによる11668−019、INVITROGEN)を使用して、10マイクログラムの適切なプラスミドをH29細胞にトランスフェクトした。16時間後、培地を、10%FBSを補足した新たな抗生物質不含DMEMと交換した。さらに48時間後、5分間、1,500gでの回転によりウイルスを回収し、0.45μmフィルターによって濾過した。2ミリリットルの適切なウイルスを使用して、10μg/mLのポリブレン(TR−1003−G、MILLIPORE、ビルリカ、A)の存在下で50K癌細胞に形質導入した。24時間後、培地を、10%FBSと選択のために2μg/mL ピューロマイシン(レンチウイルス)または10μg/mL ブラスチシジンとを補足したDMEMに交換した。さらに72時間後、細胞を洗浄し、放置してD10Fで成長させ、qPCRによって対象となる遺伝子のノックダウンについて試験した。
【0089】
内皮動員
動員アッセイ開始のおおよそ24時間前に癌細胞(25,000個)を24ウェルプレートに播種した。0.2%FBSを補足したEGM−2培地で24時間、HUVEC細胞を血清飢餓させた。その後、HUVEC細胞を、CELLTRACKER Red CMTPX色素(C34552、INVITROGEN)で45分間標識し、2%FBSを補足したEGM−2培地で30分間レスキューした。その間に、癌細胞をPBSで洗浄し、1mLの0.2%FBS EGM−2培地を各ウェルに添加した。その後、各ウェルに3.0μm HTS FLUROBLOCKインサート(351151、BD FALCON、カリフォルニア州サンホゼ)を取り付けた。抗体実験のために、その後、適切な濃度の各抗体を各ウェルに添加した:50ng/mL 抗IGFBP2(AF674、R&D SYSTEMS、ミネソタ州ミネアポリス)、20μg/mL 抗IGF−1(AF−291−NA、R&D SYSTEMS)、40μg/mL 抗IGF−2(MAB292、R&D SYSTEMS)、20μg/mL 抗IGF1R(MAB391、R&D SYSTEMS)、5μg/mL 抗IGF2R(AF2447、R&D Systems)および抗IgG(AB−108−C、R&D SYSTEMS)。抗体とのプレインキュベーションを必要とする内皮動員アッセイについては、その後、HUVEC細胞または癌細胞のいずれかを20μg/mL 抗IGF1Rまたは対照IgG抗体と共に1時間インキュベートし、PBSで1回洗浄した。その後、HUVEC細胞を1時間、血清飢餓させた後、1mLにつき100KのHUVECで0.2%FBS EGM−2に再懸濁させた。その後、その再懸濁液(0.5mL)を各FLUOROBLOCKインサートに添加し、動員アッセイを16時間、進行させた。アッセイ完了後、FLUOROBLOCKインサートを4%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、VECTASHIELD封入剤(H−1000、VECTOR LABORATORIES、カリフォルニア州バーリンゲーム)でスライドにマウントした。各インサートについて3画像を撮り、IMAGEJ(NIH)を用いて画像を分析した。
【0090】
走化性アッセイ
所与の量のウシ血清アルブミン(A2153、Sigma Aldrich)、rhIGFBP2(674−B2、R&D Systems)、rhGas6(885−GS、R&D Systems)、抗IGF1R(MAB391、R&D Systems)およびMerFc(891−MR−100、R&D Systems)を含有する、マトリゲル(250μL、BD BIOSCIENCES、#356231)を、24ウェルプレートの底部で30分間放置して凝固させた後、0.2%FBSを含有する250μL HUVEC培地を添加した。その後、3.0μm HTS Fluroblockインサート(351151、BD Falcon)を各ウエルに配置した。HUVEC細胞をCellTracker Red CMTPX色素(C34552、Invitrogen)で標識した後、0.2%FBS EGM−2の1mLにつき300KのHUVECを再懸濁させた。その後、0.5mLのその再懸濁液を各Fluoroblockインサートに添加し、アッセイを20時間、進行させた。その後、それらのインサートを15分間、4%パラホルムアルデヒドで固定し、VectaShield封入剤(H−1000、Vector Laboratories)でスライドにマウントした。その後、各インサートの基底側の5視野を撮像し、ImageJ(NIH)を使用して分析した。
【0091】
移動アッセイ
HUVEC細胞を集密度90%に成長させ、0.2%FBSを含有するHUVEC培地中の所与の濃度のウシ血清アルブミン(Sigma Aldrich、#A2153)、rhIGFBP2(674−B2、R&D Systems)および抗IGF1R(MAB391、R&D Systems)中で40分間、37℃で刺激した。その後、それらの細胞をトリプシン処理し、50K細胞をHTS Fluroblockインサート(351151、BD Falcon)に添加した。5%CO
2で37℃で24時間後、それらのインサートを除去し、膜を切除し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。膜の基底側に移動したHUVEC細胞をDAPIで可視化し、ImageJ(NIH)を使用して膜1枚につき5視野に関して計数した。
【0092】
内皮接着
HUVEC細胞を6cmプレートに播種し、放置して集密になるまで成長させた。0.2%FBSを補足したDMEM培地中で30分間、癌細胞を血清飢餓させ、CELLTRACKER Green CMFDA色素(C7025、Invitrogen)で45分間標識し、10%FBSを補足したDMEM培地中で30分間インキュベートした。その後、癌細胞をトリプシン処理し、10%FBS/DMEMに再懸濁させて10K細胞/mLにした。その後、5ミリリットルのその再懸濁液をHUVECの各プレートに添加し、プレートを37℃で10分間インキュベートした。その後、プレートをPBSで穏やかに洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで15分間、固定した。その後、各プレートを1mLのPBSで処理し、各プレートから6画像を撮った。その後、IMAGEJを使用して、HUVEC細胞に接着した癌細胞の数を定量した。
【0093】
内皮増殖
癌細胞(1×10
6)を10cmプレートに播種し、24時間放置して成長させた。その後、癌細胞をPBSで穏やかに洗浄し、2%FBSを補足したEGM−2培地を各プレートに添加した。そのEGM−2調整培地を24時間後に回収した。HUVEC細胞(25K)を6ウェルプレートに三重反復で播種し、16時間放置して成長させた。その後、HUVEC細胞をPBSで穏やかに洗浄し、3mLのEGM−2調整培地を各ウェルに添加した。48時間後、その調整培地を別の3mLの調整培地で置換した。さらに48時間後、細胞をトリプシン処理し、血球計数器を使用して計数した。
【0094】
管腔形成アッセイ
製造業者のプロトコル(354149、BD BIOCOAT(商標)ANGIOGENESIS SYSTEM−Endothelial Cell Tube Formation)に従って、管腔形成アッセイを行った。簡単に言うと、0.2%FBSを補足したEGM−2培地中で24時間、HUVEC細胞を血清飢餓させた。その後、HUVEC細胞を、CELLTRACKER Red CMTPX色素(C34552、INVITROGEN)で45分間標識し、その後、2%FBSを補足したEGM−2培地で30分間処理した。この間に、管腔形成アッセイプレート(これは、96ウェル形式であった)を37℃で30分間インキュベートした。癌細胞およびHUVEC細胞をトリプシン処理し、2%FBSを補足したEGM−2培地にそれぞれ400K/mLおよび800K/mLで再懸濁させた。その後、癌細胞懸濁液とHUVEC細胞懸濁液を1:1比で混合し、50μLの各混合物を管腔形成アッセイプレートの各ウェルに播種した。そのアッセイプレートを37℃で16時間インキュベートした。各ウェルの画像を撮り、METAMORPH分析ソフトウェア(MOLECULAR DEVICES,Inc.)を使用してそれらの画像を処理して、1画像あたりの分岐点の数を得た。
【0095】
miRNAおよびmRNA発現の分析
MIRVANAキット(AM1560、APPLIED BIOSYSTEMS、テキサス州オースティン)を使用して、様々な細胞系から全RNAを抽出した。TAQMANマイクロRNAアッセイ(4427975−0002228、APPLIED BIOSYSTEMS)を使用して、Tavazoie,S.F.ら、Nature 451(7175)、147(2008)に記載されているように成熟miRNAの発現レベルを定量した。mRNAの定量のために、cDNA First−Strand Synthesis Kit(18080−051、INVITROGEN)を使用して400ngの全RNAを逆転写した。その後、おおよそ4ngの得られたcDNAをSYBRグリーンPCR MASTER MIX(4309155、APPLIED BIOSYSTEMS)および適切なプライマー(表1)と混合した。ABI PRISM 7900HT Real−Time PCR System(APPLIED BIOSYSTEMS)を使用して定量的mRNA発現データを得た。Smad4を正規化のための内因性対照として使用した。TISSUESCAN qPCR Array Breast Cancer Panels 2および3(BCRT102 & BCRT103、ORIGENE、メリーランド州ロックヴィル)を使用して、様々な病期におけるヒト乳癌の発現分析を行った。
【0096】
【表1】
【0097】
miR−126ターゲット予測
次の3セットのマイクロアレイプロファイルを用いることにより、可能性のあるmiR−126ターゲットを同定した:miR−126を過発現するLM2細胞に対するLM2対照細胞(GSE番号23905)、ならびにMDAおよびLM2細胞の2反復アレイ(GSE番号23904およびMinn,A.J.ら、Nature 436(7050)、518(2005))。これらのアレイで、次の基準を用いて、可能性のあるmiR−126ターゲット遺伝子を同定した:(1)LM2細胞においてmiR−126過発現により1.6倍より大きくダウンレギュレートされた遺伝子、および(2)2つのLM2のうちの一方においてMDAアレイに対して1.4倍より大きくアップレギュレートされた遺伝子。その後、可能性のあるすべてのターゲットをqPCRによって検証した。
【0098】
ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイ
ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイは、Tavazoie,S.F.ら、Nature 451(7175)、147(2008)に記載されているとおりに行った。簡単に言うと、ABCB9、IGFBP2、MERTK、PITPNC1、PSAT1、PYGB、SHMT2およびVIPR1の完全長3’UTRおよびCDSをpsiCheck2二重ルシフェラーゼレポーターベクター(C8021、PROMEGA、ウィスコンシン州マディソン)にクローニングした。前記CDSおよび3’UTRの配列を下に列挙する。
【0099】
対照ヘアピンまたはmiR−126をターゲットにするヘアピンのいずれかを発現する
MDA−MB−231細胞にそれぞれの特異的レポーター構築物をトランスフェクトした。トランスフェクションの30時間後、細胞を溶解し、二重ルシフェラーゼアッセイ(E1910、PROMEGA)を使用してウミシイタケルシフェラーゼ発現のホタルルシフェラーゼ発現に対する比を決定した。クローニングプライマー配列を下の表2に示す。
【0100】
【表2】
【0101】
遺伝子内の可能性のあるmiR−126部位を、相補miR−126配列5−TTACTCACGGTACGA−3へのアラインメントにより同定し、QUICKCHANGE Multi Site−Directed Mutagenesis Kit(200514、AGILENT TECHNOLOGIES、カリフォルニア州サンタクララ)を使用して突然変異誘発を行った。UCSCゲノムブラウザに基づき、MERTKの3’UTRを位置5において(GTTからCACへ)突然変異させ、IGFBP2の3’UTRを位置246において(GGTからCACへ)突然変異させ、PITPNC1のCDSを開始コドンからの位置709において(TACからGTAへ)突然変異させ、およびSHMT2のCDSを位置1126において(GGTからCACへ)突然変異させた。突然変異誘発プライマーを下の表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
癌細胞増殖
対照ヘアピンまたはIGFBP2、PITPNC1もしくはMERTKをターゲットにする短鎖ヘアピンを発現するLM2細胞(2.5×10
4)を6ウェルプレートに三重反復で播種し、播種の5日後に生細胞を計数した。
【0104】
組織学的検査
4%パラホルムアルデヒドを血管系におよび気管に灌流させる灌流固定により肺を準備した。切除後、肺を一晩、4%パラホルムアルデヒド中に置き、パラフィンに包埋した。固定の5分前に100mgのビオチン化レクチン(B−1175、VECTOR LABORATORIES)を尾静脈経由で循環に注射した。注射したビオチン化レクチンの検出のために、5マイクロメートル厚パラフィン切片をMECA−32に対する一次抗体(Developmental Studies Hybridoma Bank、The University of Iowa、アイオワ州)、ビメンチン(VP−V684、VECTOR LABORATORIES)、およびFITC標識アビジン(B−1175、VECTOR LABORATORIES)で染色した。様々なAlexa Flour色素コンジュゲート二次抗体を使用して、一次抗体を検出した。ZEISSレーザー走査共焦点顕微鏡(LSM510)を使用して蛍光を得た。転移結節の血管新生化を判定するために、IMAGEJを使用してMECA−32およびレクチンシグナルを定量し、その一方で、転移結節の抽出物をヒトビメンチンでの共染色によって判定した。血管に覆われた総面積を、バックグラウンド(1ピクセルの回転球半径)を引くことにより、および所定の閾値をカットオフとして用いることにより決定した。血管密度は、転移結節の全面積と比較した血管によって覆われた面積の百分率として得られる。2000μm
2より上の全面積を有するビメンチン染色について陽性の面積によって転移結節を定義した。
【0105】
乳房脂肪体腫瘍を切除し、24時間、4%パラホルムアルデヒドに浸漬した。固定された組織をパラフィンに包埋し、1枚5μmの厚さの切片にした。MECA−32に対する抗体(Developmental Studies Hybridoma Bank)、Mac−2に対する抗体(CL8942AP、Cederlane、Burlington)およびCD45に対する抗体(550539、BD Biosciences)を使用して免疫検出を行った。様々なビオチン化二次抗体(Vector Laboratories)を使用して一次抗体の検出を行った。その後、ABCキット(Vector Laboratories)を使用してシグナルを増幅し、DAB(3,3’−ジアミノベンジジン)を使用して検出した。マウント前に、スライドをヘマトキシリンで対比染色した。
【0106】
Arnoldら、2010 Dis Model Mech 3(1−2)、57(2010)に記載されているように、しかしわずかに変更して、デキストラン透過性を判定した。簡単に言うと、滅菌PBS中の10mg/mL ローダミンB標識低分子量デキストラン(1×10
4kDa:D1824、INVITROGEN)の静脈内ボーラスを注入した。15分後、マウスに麻酔し、肺をOCTで灌流し、除去し、ドライアイスで凍結させた。10マイクロメートル切片に切り、転移結節内のデキストラン透過性を−ビメンチン染色によって判定する場合−蛍光顕微鏡によって測定した。IMAGEJを使用して、本閾値を用いてデキストラン透過性レベルを判定した。転移結節内の閾値面積の平均百分率として結果を提供する。
【0107】
ELISA
調整培地中のIGBFP2レベルを、IGFBP2 ELISA(AAHBLG−1−2、RAYBIOTECH、ジョージア州ノークロス(Norgross))を用いて判定した。
【0108】
ウエスタンブロッティング
プロテアーゼ阻害因子を含有する1mL氷冷RIPA緩衝液(ROCHE、ドイツ国マンハイム)に細胞を溶解することにより、MDA−MB−231細胞から細胞溶解物を調製した。無血清培地中でMDA−MB−231細胞を24時間インキュベートすることにより調整培地を調製した。その後、その培地を回転濾過によって20倍濃縮した。その後、40μgタンパク質を4〜12%SDS−PAGEで分離し、PVDF膜に転写した。ヒトMERTKに対するモノクローナル抗体(CVO−311、CAVEO THERAPEUTICS、コロラド州オーロラ)を使用してMERTKを検出した。
【0109】
無転移生存分析
統合分析により8つのmiR−126調節遺伝子を同定することで、これらの遺伝子の発現が全体としてヒト臨床的転移と相関するかどうかを判定した。UCSF46、NKI47およびMSKCC13からのシリーズの公開マイクロアレイデータを使用して、プローブレベル発現値を得た。多数のプローブによって表された遺伝子については、独立したデータセットにおいて十分なシグナル強度はもちろん、高い変動係数(情報価値が最も高い)も提示するプローブを使用した。8遺伝子の発現値のZスコアの合計がその集団の平均より高かった場合、各乳癌をmiR−126シグネチャ陽性と分類した。GRAPHPAD PRISM 5ソフトウェア(GRAPHPAD Software,Inc.、カリフォルニア州ラホーヤ)を使用して、カプラン・マイヤー無転移生存曲線を生成した。GRAPHPAD Prism 5ソフトウェアを使用してマンテル・コックス・ログランク検定を用いて患者の生存曲線間の差についての統計学的有意性を判定した。
【0110】
血管密度分析
physics.csbsju.edu/stats/KS−test.htmlで公的に入手できるソフトウェアを使用して、コルモゴロフ・スミルノフ検定を用いて、MECA−32染色とレクチン染色両方についての血管密度の差の有意性を判定した。
【実施例2】
【0111】
内因性Mir−126は全身転移コロニー形成を抑制した
本実施例では、miR−126機能喪失の設定で転移進行を分析するためのアッセイを行った。これにより、対照細胞とmiR−126ノックダウン(KD)細胞の間のインビボ転移事象を比較して、転移コロニー形成への内因性miR−126の影響を明らかにすることができる。
【0112】
miR−Zipアンチセンス・ヘアピン・マイクロRNA阻害系を使用して、miR−126が安定的にノックダウンされた(94%ノックダウン;
図7)MDA−231乳癌細胞系を産生させた。miR−126 KDおよび対照KD細胞を免疫不全マウスに注射し、尾静脈コロニー形成アッセイで転移コロニー形成能力について評価した。低転移性細胞におけるmiR−126サイレンシングは、定量的生物発光イメージング(
図1a)によって評定して肺転移コロニー形成を4.2倍増加させ(P=0.0073)、肉眼的組織学的検査(
図1a)で転移コロニー形成を劇的に増加させた。さらに、MDA miR−126 KDおよび対照KD細胞の心臓内注射は、miR−126ノックダウン設定での脳および骨などの多数の器官のコロニー形成増進(
図1b〜c;P=0.0232(b)、P=0.0119(c))によって証明されるように、全身転移を抑制する内因性miR−126を明示した。
【0113】
次に、miR−126阻害に伴って観察される転移コロニー形成の劇的増加がどの程度、腫瘍成長に対するmiR−126の効果に起因するのかを検査するためのアッセイを行った。このために、miR−126 KDおよび対照KD細胞を免疫不全マウスの乳房脂肪体に注射し、腫瘍体積をモニターした。miR−126阻害は、転移増進に対するmiR−126阻害の効果より小規模である腫瘍体積の増加(39.4%)をもたらした(
図1d)−これは、転移に対するmiR−126の効果が単に腫瘍成長抑制に対するその効果の結果でないことを示す。
【0114】
転移コロニー形成に対するこのmiRNAの役割をよりよく理解するために、すべての転移の数およびサイズを対照およびmiR−126 KDマウスからの肺の画像分析によって定量した(
図1e)。これにより、対照肺に比べてmiR−126 KD肺における転移結節の合計数の実質的な増加が明らかになった(13.6±3.2対4.9±1.8;P=0.03)。この増加は、小結節と大結節両方について示され(
図1e)、他の器官への転移数の増加を反映していた(
図1c)。重要なこととして、結節数の増加は、小さい結節サイズのほうが大きいものより顕著であった。これは、主として、樹立した転移の成長の増加ではなく転移の開始の増加と一致する。理論に縛られるものではないが、細胞が転移ニッシェにおいて転移を開始させるような転移開始有利性をmiR−126サイレンシングが細胞にもたらすならば、転移形成の初期相におけるその導入は、転移結節数を低減させるはずである。これを試験するために、条件付きtet−onシステムを使用して、このmiRNAのサイレンシングを提示する転移性乳癌細胞(LM2)において、miR−126発現を誘導した。これと一致して、LM2細胞が肺内で血管外遊出した後(第3日)のLM2細胞のmiR−126発現の回復は、転移コロニー形成を有意に低減させた(
図1f)。例えば、この転移開始初期相でのこのニッシェにおけるmiR−126発現の回復は、第49日に可視化される結節数を有意に低減させた。
【0115】
上述の発見により、miR−126サイレンシングが転移形成効率を向上させて多数の転移をもたらすことが実証された。したがって、これらの発見により、内因性miR−126が転移阻害および転移コロニー形成の抑制因子であることが明らかになった。
【実施例3】
【0116】
miR−126は乳癌細胞による転移性内皮動員を抑制する
上述の発見は、miR−126サイレンシングが、転移コロニー形成中に転移細胞および初期転移に利点をもたらすことができることを示唆している。この利点の基礎を考究しているとき、肺H&E組織切片の顕微鏡可視化に基づき、miR−126ノックダウン転移が、より高い血管密度を提示することに気づいた。これを定量するために、MDA−231乳癌細胞を標識するヒトビメンチン、および対照またはmiR−126 KD乳癌細胞のいずれかを注射したマウスの肺における転移結節内の内皮密度の定量を可能にする内皮マーカーMECA−32について、共免疫染色を行った。画像分析および定量により、miR−126 KD細胞に由来する転移のほうが有意に高い内皮密度を有することが明らかになった(
図2a;35%増加;P=0.02)。
【0117】
miR−126 KD転移における増大した内皮密度が、機能性血管を表すかどうかを判定するために、マウスの循環に糖結合レクチンを注射した後、肺を抽出し、そしてその後、その注射したレクチンについて染色した。レクチン細胞化学検査により、miR−126ノックダウン転移が機能性血管の密度増加を提示することが明らかになった(
図2b;33%増加;P=0.001)。
【0118】
最後に、静脈灌流およびその後の低分子量デキストラン(1×10
4kDa)の可視化によって、miR−126が転移への血行力学的灌流を調節するかどうかを判定しようと努めた。実際、miR−126 KD転移は、対照転移に比べて有意に増加した灌流を提示した(
図8;P=0.02)。
【0119】
したがって、これらの独立した相補的な方法により、miR−126がインビボで機能的転移性血管新生および灌流を抑制することが明らかになる。これらの発見は、血管新生進行の選択的利点を転移にもたらすmiR−126サイレンシングと一致する。
【実施例4】
【0120】
mir−126はインビトロで癌内皮動員を抑制する
本実施例では、観察されたmiR−126依存性血管新生表現型について細胞的基礎を決定しようと努めた。
【0121】
様々な癌−内皮相互作用、例えば内皮接着、内皮増殖および管腔形成、を調節するmiR−126の能力を、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と共培養中のLM2転移細胞(元々は低転移性MDA−231集団に由来する;Minn,A.J.ら、Nature 436(7050)、518(2005))において分析した。miR−126のサイレンシングを提示するLM2細胞のmiR−126発現の回復は、内皮細胞への転移細胞の接着(
図2c)、内皮細胞の増殖(
図2d)、および分岐点の自動定量によって評定して管腔形成(
図2e)を抑制しなかった。これと一致して、MDA−231細胞におけるmiR−126の阻害は、これらの血管新生表現型をいずれも増さなかった(
図9a〜c)。
【0122】
転移細胞への内皮細胞の動員の調節におけるmiR−126の役割を調査した。ボイデンチャンバーの底部に配置した転移LM2細胞は、多孔質トランスウェルインサートを通してHUVECSを強力に動員し、それらの低転移性親系統と比較して有意に強化された内皮動員能力を提示した(
図2f)。転移細胞による内皮動員は、miR−126過発現により強力に阻害(47%低減)された(
図2g)。逆に、低転移性親MDA−231集団におけるmiR−126のノックダウンは、内皮動員を有意に増加させた(146%増加;
図2g)。CN34LM1a系統、すなわち、CN34原発性悪性集団のインビボ選択によって以前に得られた高肺転移性誘導体(Tavazoieら、Nature 451(7175)、147(2008))(転移性乳癌を有する患者の胸膜液から得られた独立した原発性悪性集団Guptaら、Nature 446(7137)、765(2007))も、その低転移性親系統と比較して有意に強化された内皮動員能力を提示した(
図2h)。機能獲得実験および機能喪失実験の両方が、miR−126がCN34集団による内皮動員も有意に抑制することを明示した(
図2i)。これらの発見により、転移性乳癌集団の重要な特徴である強化された内皮動員能力が明らかになり、内因性miR−126がこの過程の主調節因子として同定される。
【0123】
次に、内因性miR−126が、乳癌細胞への内皮動員を乳癌細胞の位置に関係なく選択的に調節することができるかどうかを判定しようと努めた。かくて、対照ヘアピンを発現するまたはmiR−126を過発現する転移性乳癌細胞をマウスの乳房脂肪体に埋め込んだ。サイレンシングされたmiR−126発現を提示する転移細胞は、乳腺において低転移性細胞に比べて高い血管密度を提示した。乳房脂肪体内の転移細胞への内皮動員は、miR−126発現によって阻害された(
図2j)が、低転移性細胞におけるmiR−126ノックダウンは、それぞれmeca−32染色(
図2j)およびレクチン染色(
図10a)によって判定して、乳房脂肪体内で成長する乳腺腫瘍への内皮動員および該腫瘍内の機能性血管含有量を有意に増加させた。miR−126サイレンシングは、乳房腫瘍において白血球密度(
図10b)およびマクロファージ密度(
図16c)を増加させなかったので、この動員効果は、内皮細胞に対して選択的であった。
【0124】
上述の発見により、miR−126は、乳癌細胞への内皮動員を乳癌細胞の解剖学的位置に関係なく選択的に調節することが明らかになった。
【実施例5】
【0125】
mir−126レギュロンは内皮動員を促進する
本実施例では、内皮動員および転移コロニー形成を媒介するmiR−126の分子ターゲットを同定するために系統的検索を行った。具体的には、miR−126を過発現するLM2細胞のトランスクリプトーム分析を行い、低転移性MDA−231細胞および高転移性LM2細胞への全転写産物変化を比較した。
【0126】
理論に縛られるものではないが、転移の阻害におけるmiR−126の役割にかんがみて、miR−126の生物学的媒介因子は転移細胞において発現増加を提示する、およびそれらはこのmiRNAによって抑制されると仮定した。1セットの23遺伝子は、miR−126過発現により抑制される(>1.6倍、
図11;表4)、および転移細胞において親MDA−231系統に比べて(>1.4倍)アップレギュレートされる(
図11)と確認された。
【0127】
これらの遺伝子のうち14個は、MDA−231対照およびmiR−126 KD細胞ならびにLM2対照およびmiR−126過発現細胞の定量的リアルタイムPCR(qPCR)によって有意に変化することが確証された。このリストの信頼度をさらに増すために、独立したCN34系統の転移性誘導体を試験し、8遺伝子は、多数の転移性CN34誘導体においてそれらの親系統より有意に増加した発現を提示すると確認された(
図3a)。
【0128】
これら8遺伝子のヒト転移への寄与を、原発性ヒト乳癌におけるそれらの過発現が遠位転移のない生存と相関するかどうかを判定することによって確かめた。原発性乳癌がそれらの過発現を提示した患者は、癌がこれらの遺伝子の過発現を提示しなかった患者より、遠位転移を発現する可能性が有意に高く、短い無転移生存を経験した(
図3b〜d)。この関連性は、UCSF(n=117;P<0.0165)、NKI(n=295;P<0.0005)およびMSK/NKI/UCSF総合コホート(n=494;P<0.0004)において有意性を提示した。例えば、miR−126は、ヒト転移再発と正の強い相関関係がある1セットの8遺伝子の発現を抑制した。
【0129】
次に、miR−126の直接ターゲットを同定するためのアッセイを行った。このために、8個すべてのmiR−126調節遺伝子の3’非翻訳領域(3’−UTR)およびコーディング配列(CDS)をクローニングし、それらを使用してルシフェラーゼ融合構築物を生成した。この全セットでのルシフェラーゼ・レポーター・アッセイにより、miR−126は、IGFBP2およびMERTKの発現をそれらの3’−UTRとの相互作用により、ならびにPITPNC1およびSHMT2の発現をそれらのコーディング領域との相互作用により調節することが明らかになった。MDA−231細胞における内因性miR−126のノックダウンが、これらのルシフェラーゼ融合遺伝子の発現を増進したからである(
図3eおよび
図12)。IGFBP2およびMERTKの3’UTRにおけるmiR−126相補配列の突然変異は、ルシフェラーゼ発現のmiR−126媒介調節を無効にし(
図3f)、その一方でPIPNC1およびSHMT2のCDSの突然変異は、miRNA媒介ターゲティングを無効にした(
図3f)。
【0130】
【表4】
【0131】
このように、結合タンパク質IGF結合タンパク質2、受容体キナーゼMERTK、ホスファチジルイノシトール輸送タンパク質PITPNC1、およびヒドロキシメチルトランスフェラーゼ酵素SHMT2は、ヒト乳癌におけるmiR−126の1セットの直接ターゲットを構成する。
【実施例6】
【0132】
IGFBP2、PITPNC1およびMERTKは内皮動員および転移を促進する
本実施例では、miR−126ターゲット遺伝子のいずれかが癌細胞による内皮細胞の動員を調節するかどうかを検査するためのアッセイを行った。これら4遺伝子のうち、独立した短鎖ヘアピンを使用するIGFBP2、MERTKまたはPITPNC1のノックダウンは、内皮細胞を動員する転移性LM2細胞の能力を有意に抑制した(
図4aおよび
図13)。重要なこととして、これらの遺伝子のノックダウンは、結果として細胞増殖の有意な減少をもたらさなかった(
図14)。
【0133】
miR−126ターゲット遺伝子の内皮動員に対する頑強な効果にかんがみて、これらの遺伝子の発現レベルが、ヒト癌の転移の傾向と個々に相関するどうかを検査した。かくて、cDNAを入手できた96ヒト乳癌細胞の完全独立セットにおいてこれらの各々の遺伝子の発現レベルをqPCRにより分析した。
【0134】
ステージIIIおよびステージIV乳癌を有する患者は、局所的転移性播種および遠位転移をそれぞれ提示し、総括して、ステージIおよびII患者よりはるかに高い率で遠位再発を発現する者を含む。興味深いことに、IGFBP2(P<0.0003)、MERTK(P<0.002)およびPITPNC1(P<0.004)の発現レベルは、ステージIおよびII患者に比べてステージIIIおよびIV患者の原発癌において個々に有意に増加された(
図4b)。転移細胞による内皮動員にそれらが必要であること、ならびにmiR−126によるそれらの直接ターゲティングにかんがみて、miR−126ターゲット遺伝子のいずれかが転移コロニー形成に必要とされるかどうかを判定しようと努めた。
【0135】
重要なこととして、独立した短鎖ヘアピンを使用するIGFBP2のノックダウンは、肺への転移コロニー形成を有意に抑制することが判明した(sh
1:10倍;sh
2:6.25倍;
図4c)。加えて、PITPNC1およびMERTKのノックダウンも、転移コロニー形成を有意に阻害した(PITPNC1sh
1:7.69倍;PITPNC1sh
2:4.55倍、
図4d;MERTKsh
1:3.91倍;MERTK1sh
2:3.08倍、
図4e)。使用したshRNA配列を下の表5に収載する。
【0136】
これらの発見により、miR−126直接ターゲット遺伝子IGFBP2、PITPNC1およびMERTKは、それぞれ独立して内皮動員および転移コロニー形成に必要とされ、ならびに発現の点でヒト転移進行と個々に相関することが明らかになった。
【0137】
【表5】
【実施例7】
【0138】
IGFBP2は内皮細胞のIGF1/IGF1R活性化による動員を媒介する
miR−126ターゲットのうち、IGFBP2は分泌因子であり、然るが故に、転移癌細胞と内皮細胞との細胞間情報伝達を媒介する態勢が整っている。したがって、転移細胞が増加されたレベルのIGFBP2を分泌するかどうかを検査した。実際、ELISA分析は、転移性LM2細胞が低転移性MDA−231親系統より2.1倍高いレベルのこの因子を分泌することを明示することが判明した(
図5a)。
【0139】
IGFBPファミリーのメンバーは、様々なインスリン様成長因子(IGF)との相互作用によりそれらの効果を発揮し、IGF受容体へのそれらの結合を変調させる(Baxter,R.C.、Horm Res 42(4−5)、140(1994)およびJones,J.I.ら、Endocr Rev 16(1)、3(1995))。転移性内皮動員が分泌IGFBP2によって媒介されるかどうかを判定するために、IGFへのIGFBP2結合をIGFBP2中和抗体とのインキュベーションによって阻害した。
【0140】
トランスウェル動員アッセイにおけるIGFBP2の抗体媒介阻害は、転移細胞内皮動員をmiR−126過発現で得られるものに匹敵するレベルに有意に阻害すること(
図5b)、およびまたmiR−126依存性動員を防止すること(
図5b)が判明した。したがって、IGFBP2抗体による内皮動員の阻害はmiR−126過発現により妨げられるので、これらの効果はmiR−126/IGFBP2経路に特異的であった(
図5b)。IGFBP2の抗体媒介阻害は、独立したCN34悪性系統のCNLM1A誘導体による内皮動員も抑制し、結果として、miR−126依存性内皮細胞動員の統計的に有意な低減を生じさせた(
図5c)。これらの発見により、分泌IGFBP2が、転移細胞によるmiR−126依存性内皮動員のための細胞間シグナル伝達媒介因子であることが明らかになった。
【0141】
IGFBP2が細胞外間隙内でIGF1およびIGF2両方を結合してそれらのシグナル伝達活性を変調させることは公知である(Jones,J.I.ら、Endocr Rev 16(1)、3(1995);Arai,T.ら、Endocrinology 137(11)、4571(1996);Rajaram,S.ら、Endocr Rev 18(6)、801(1997);およびHoflich,A.ら、FEBS Lett 434(3)、329(1998))。どのIGFがmiR−126依存性内皮動員を媒介するかを判定するために、IGF1に対する遮断抗体、IGF2に対する遮断抗体、または免疫グロブリン対照で細胞を処理した。IGF2ではなくIGF1の抗体媒介阻害は、miR−126ノックダウンの結果として生ずる内皮動員を有意に低減させた(
図5d)。
【0142】
次に、miR−126依存性内皮動員を媒介する受容体を決定しようと努めた。IGF1型受容体(IGF1R)のIGF1R遮断抗体とのインキュベーションによる阻害は、miR−126ノックダウンの結果として生ずる内皮動員を有意に低減させたが、IGF2R中和は効果がなかった(
図5e)。これらの発見により、miR−126/IGFBP2/IGF1経路が内皮細胞上のIGF1Rを活性化することが実証された。
【0143】
miR−126依存性動員が−癌細胞上ではなく−内皮細胞上のIGF1Rによって媒介されることを確かめるために、内皮動員アッセイの前にHUVEC内皮または癌細胞をIGF1R抗体と共にプレインキュベートした。これにより、癌細胞とのプレインキュベーションによる動員に対する効果がなかったので、内皮細胞のIGF1R抗体プレインキュベーションのみがmiR−126媒介内皮動員を阻害することが明らかになった(
図5f)。
【0144】
上述の発見は、細胞外間隙内でIGF1を結合して内皮細胞上のIGF1受容体のIGF1依存性活性化を増進するmiR−126ターゲット遺伝子IGFBP2の分泌の結果として生ずる転移性内皮動員と一致する。そしてまた内皮細胞上のIGF1R活性化増進が転移性乳癌細胞への内皮移動を刺激する。このモデルと一致して、組換えIGFBP2タンパク質は、用量に依存して、IGF1R依存的様式での内皮走化性(
図5g)および移動(
図15)の促進に、十分なものであった。
【実施例8】
【0145】
MERTKはGAS6による動員を媒介する
本実施例では、他のmiR−126ターゲット遺伝子PITPNC1およびMERTKが内皮動員を媒介するメカニズムを調査するためのアッセイを行った。
【0146】
IGFBP2の、この表現型を媒介する分泌miR−126依存性因子としての同定にかんがみて、癌細胞からのこの因子の分泌の調節におけるPITPNC1またはMERTKの役割を調査した。独立したヘアピンを用いるPITPNC1のノックダウンは、乳癌細胞からのIGFBP2分泌を低減させることが判明した(
図6a)−これは、一部はIGFBP2分泌の正の調節により媒介される、内皮動員のPITPNC1調節と一致する。しかし、MERTKのノックダウンは、IGFBP2分泌減少をもたらさなかった。これは、このmiR−126ターゲット遺伝子が動員を媒介するIGFBP2非依存性経路を示唆している。
【0147】
MERTK受容体が動員を媒介するメカニズムを決定するために、その可溶性リガンドGAS6の癌媒介内皮動員に対する影響を試験するためのアッセイを行った。共培養系への−ヒト血清中で見いだされる生理濃度(Balogh,I.ら、Arterioscler Thromb Vasc Biol 25(6)、1280(2005))での−組換えGAS6の添加は、miR−126依存性動員を強く低減させた(
図6b)。これは、GAS6が内皮動員の阻害因子として作用することを示唆している。MERTK受容体は、細胞外ドメインが切断された膜結合および可溶性両方の形態で存在し、それ故、一般に、デコイ受容体として作用して、それを発現する細胞上でのMERTK受容体活性化を負に調節すると考えられている(Sather,S.ら、Blood(3)、1026(2007))。可溶性MERTKがMDA−MB−231細胞の調整培地において検出された(
図16)。理論に縛られるものではないが、癌細胞から放出される可溶性MERTKは、GAS6の結合および阻害による内皮動員を促進することができる。これと一致して、組換え可溶性形態のMERTK細胞外ドメイン(MerFc)の付加は、癌細胞による内皮動員の血清GAS6媒介阻害ばかりでなく外因性阻害も抑制した(
図6b)。重要なこととして、この効果は、miR−126依存性であった(
図6b)。これらの発見は、転移細胞からの分泌MERTKが、GAS6のデコイ受容体として作用し、その結果、内皮細胞動員に対するGAS6の抑制効果を低減させることを示唆している。3つのGAS6アイソフォームを下に列挙する。
【0148】
転移細胞によって発現される組換え形態のIGFBP2およびMERTK、ならびにヒト血清中に存在するGAS6が、内皮走化性を調節するのに十分なものであるかどうかを判定するために、内皮細胞のこれらの因子への走化性移動を定量するためのトランスウェル走化性アッセイを行った。低い、生理的用量での組換えGAS6は、組換えIGFBP2への内皮走化性を阻害した(
図6c)。重要なこととして、組換え可溶性MERTKエクトドメインは、内皮走化性に対するGAS6抑制効果を抑止した(
図6c)。内皮細胞とGAS6のプレインキュベーションは、内皮移動に影響を及ぼさなかった。これは、GAS6が走化性移動を阻害することを示唆している。これらの発見は、IGFBP2が、IGF1型受容体による内皮細胞への陽性移動および走化性シグナルを媒介し、その一方で可溶性MERTK受容体が、GAS6によって媒介される阻害性走化性シグナルに拮抗することを明示する。
【0149】
インビトロでの内皮動員およびインビボでの転移コロニー形成におけるIGFPB2、PITPNC1およびMERTKの役割にかんがみて、これらの遺伝子がインビボ内皮動員を調節するかどうかを検査するためのアッセイを行った。このために、対照およびノックダウン乳癌細胞を注射したマウスから肺を用いてMECA−32染色を行って、転移血管密度によって測定してインビボで内皮動員を定量した。独立した短鎖ヘアピンを個々に使用するIGFPB2、PITPNC1およびMERTKの阻害は、転移内皮密度を有意に低減させた(
図6d;shIGFBP2についてはP<0.0001およびP=0.002、shPITPNC1についてはP=0.01およびP=0.02、ならびにshMERTKについてはP<0.0001およびP=0.005)。加えて、レクチン灌流および細胞化学検査により、機能性転移血管含有量の有意な低減も明らかになった(
図17)。したがって、インビボでの転移性内皮動員にはmiR−126ターゲット遺伝子IGFBP2、PITPNC1およびMERTKが個々に必要とされる。
【0150】
インビトロでの癌細胞媒介内皮動員および組換えタンパク質媒介動員アッセイの両方ならびにインビボ分析を含む、上述の発見により、癌によって発現されるIGFBP2およびMERTKは、内皮細胞動員の媒介に必要かつ十分なものであり、転移癌細胞から発出する平行経路に依存することが実証された(
図6e)。
【実施例9】
【0151】
転移性血管新生を媒介するmiRNAレギュロン
上記発見により、癌細胞において発現されるmiRNAは、転移性内皮動員および血管灌流の複合過程を、IGFBP2、MERTKおよびPITPNC1(血管新生および転移遺伝子の新規セット)の協調的調節によって非細胞自律的に調節することができることが明らかになった。
【0152】
これらの転移性血管新生遺伝子の発現増加は、低転移性細胞に比べて強化された内皮動員能力を高転移性乳癌細胞に授けることが判明した。これらの遺伝子を過発現する転移細胞は、有効なコロニー形成に必要な血管をより容易に樹立することができる。転移性内皮動員にこれらの3つすべての遺伝子が必要であることを実証したが、それらのうちの1つ、すなわち分泌IGFBP2は、この表現型の経細胞媒介因子(trans−cellular mediator)である。
【0153】
加えて、転移細胞内皮動員の媒介因子としてIGF1シグナル伝達経路(癌細胞によって分泌されるIGFBP2によって変調され、ついには内皮細胞上のIGF1Rが活性化する)を発見し、癌細胞中のmiR−126をこの経路の調節因子として同定した。生物および細胞成長におけるIGF1およびIGF2の役割は報告されている(Laviola,L.ら、Curr Pharm Des 13(7)、663(2007)およびVarela−Nieto,I.ら、Curr Pharm Des 13(7)、687(2007))が、様々な組織におけるこれらの成長因子およびそれらの受容体の偏在的発現、ならびに正常な生理にそれらが必要とされることが、それらの治療的応用を制限している(Varela−Nieto,I.ら、Curr Pharm Des 13(7)、687(2007))。
【0154】
IGFBP2は、IGFBPファミリーの16のメンバーのうちの1つである;Schmid,C.、Cell Biol Int 19(5)、445(1995);Hwa,V.ら、Endocr Rev 20(6)、761(1999);およびFirth,S.M.ら、Endocr Rev 23(6)、824(2002)参照。IGFBP2の転移の促進因子としての同定、転移性ヒト乳癌におけるその過発現、および転移細胞による内皮動員に対するその抗体媒介阻害の頑強な効果が、乳癌進行および癌血管新生におけるIGF経路の治療ターゲティングに特異的ハンドルをもたらす。
【0155】
IGFBP2がこの過程の正の調節因子(IGF1)のその活性化による内皮動員の正の調節因子と確認された一方で、MERTKもまた、内皮走化性の負の調節因子(GAS6)のその阻害による動員の促進因子と分かった。したがって、単一のmiRNAが、現象の正と負両方の調節因子を変調させることにより、複雑な表現型を制御することができる。
【0156】
転移抑制因子miRNAとしてのその同定の後、内皮細胞において発達の過程で発現されるmiR−126に対する遺伝子ターゲティングをマウスにおいて行った。miR−126欠失は、部分的胚致死、血管完全性の喪失、および出血につながることが判明した(Wang,S.ら、Dev Cell 15(2)、261(2008))。かくて、内皮で発現されるmiR−216は、マウスおよびゼブラフィッシュ系において正常な発達の血管新生の促進因子であることが判明した(Nicoli,S.ら、Nature 464(7292)、1196(2010)およびFish,J.E.ら、Dev Cell 15(2)、272(2008))。
【0157】
血管新生促進因子としてのその役割にかんがみて、miR−126はまた、本明細書に開示するような、例えば乳癌における、血管新生を抑制することができると予想された。miR−126は、少なくとも2つの異なる方法で作用し得ると予想された。一方では、本願に開示するような病的血管新生を抑制するような細胞タイプ特異的様式で作用する。本願に開示するように、miR−126は、転移への病的内皮移動を抑制した。もう一方では、発達している間、miR−126発現は血管完全性を維持する。実際、内皮miR−126は、乳癌細胞においてmiR−126によって有意に調節されない遺伝子であるSpred−1およびPIK3R2のターゲティングによって、発達の血管新生を調節することが証明された(Wang,S.ら、Dev Cell 15(2)、261(2008)およびFish,J.E.ら、Dev Cell 15(2)、272(2008))。表6参照。逆に、内皮細胞におけるmiR−126阻害は、内皮細胞による内皮動員を増進せず(
図18)、乳癌細胞においても同様であることが判明した。これと一致して、内皮細胞におけるmiR126阻害は、PITPNC1、MERTKまたはIGFBP2の発現を変更しなかったが、確定された内皮miR−126ターゲットSPRED1およびPIK3R2の発現を増加した(
図19)。
【0158】
【表6】
【実施例10】
【0159】
任意の体組織の転移癌コロニー形成を調節する遺伝子またはノンコーディングRNAの同定
本実施例は、体組織の転移癌コロニー形成を調節する遺伝子またはノンコーディングRNAを同定するための2つのアプローチを記載するものである。
1. レンチ−miRアプローチ
レンチ−miRライブラリーの細胞への形質導入および動物への注射
レンチ−miRライブラリー(SYSTEM BIOSCIENCES、Cat # PMIRHPLVAHT−1)をこのアプローチでは使用した。このライブラリーは、全ヒトゲノムを代表する前駆体マイクロRNAを含有するレンチウイルスのプールから成る。SW620およびLS174T細胞系の親集団(2×10
5細胞)に前記ライブラリーを1の感染多重度(MOI)で形質導入して、個々の細胞が異なるマイクロRNAを過発現する親細胞の不均一プールを得た。形質導入後、各マイクロRNA前駆体がおおよそ50Xで提示された。形質導入の4日後、形質導入細胞の半分を取っておいて、Qiagen DNeasyキットを使用してゲノムDNAを抽出した。これは、肝臓コロニー形成の選択圧前のゲノムDNAの参照プールであった。その残りの半分の集団をNOD/SCIDマウスの肝臓に注射した。注射の3〜5週間後、それらの肝臓において形成された腫瘍からゲノムDNAを抽出した。形質導入および注射を両方の細胞系に反復して行った。
【0160】
肝臓コロニー形成を変調させるマイクロRNAの同定
ライブラリー特異的T7促進因子含有プライマー(フォワードプライマー:5’−GAAATTAATACGACTCACTATAGGGCCTGGAGACGCCATCCAC GCTG −3’;リバースプライマー:5’:GATGTGCGCTCTGCCCACTGAC−3’)を使用する参照ゲノムDNAおよび腫瘍ゲノムDNAに対する線形範囲内のPCR増幅により、ゲノムDNAからレンチ−miR由来のマイクロRNA前駆体を回収した。400ngのゲノムDNAをテンプレートとして使用して、1試料につき4回のPCR反応を行い、プールして、形質導入前駆体マイクロRNAの妥当な提示を確保した。
【0161】
得られたPCRアンプリコンは、異なる前駆体マイクロRNAとT7促進因子配列の混成体であり、それらをインビトロ転写にテンプレートとして使用して、ビオチン化前駆体ライブラリーを得た。参照プールおよび腫瘍から得たビオチン化ライブラリーをCy3およびCy5でそれぞれ標識し、マイクロRNA配列を検出するために設計されたマイクロアレイ(Genosensor)にハイブリダイズさせた。ダイスワップ実験を行って、色素バイアスを制御した。
【0162】
参照プールと肝臓コロニー形成中の選択圧後のものとの各マイクロRNA前駆体の存在量の比を、マイクロアレイシグナルの正規化後に計算した。参照プールと比較して腫瘍集団において過剰提示されたマイクロRNAを促進因子と見なし、過小提示されたマイクロRNAを肝臓コロニー形成の抑制因子と見なした。
2. レンチプレックス(lentiplex)アプローチ
レンチプレックスライブラリーの細胞への形質導入および動物への注射
レンチプレックス全ゲノムshRNAライブラリー(SIGMA−ALDRICH、Cat # SHPH01)をこのアプローチで使用した。このライブラリーは、全ヒトゲノムをターゲットにするおおよそ150,000のshRNAを含有するレンチウイルスのプールライブラリーであり、3〜5個の独立したshRNAが各ゲノムをターゲットにする。
【0163】
細胞系SW620、LS174TおよびWiDRの親集団(2×10
6細胞)に1のMOIで前記ライブラリーを形質導入し、結果として、個々の細胞が単一shRNAを発現する不均一集団のプールを得た。各shRNAをおおよそ100X表示で形質導入した。形質導入の48時間後、形質導入細胞を48時間、ピューロマイシンで選択して、非形質導入細胞を除去した。抗生物質選択後、後続の実験の前に1週間、残りの細胞を放置して回復させた。選択された細胞の半分を取っておいて、ゲノムDNAを抽出した。これは、肝臓コロニー形成の選択圧前のゲノムDNAの参照プールであった。その残りの半分の集団をNOD/SCIDマウスの肝臓に注射した。注射の3〜5週間後、それらの肝臓において形成された腫瘍からゲノムDNAを抽出した。形質導入および注射を3つすべての細胞系に反復して行った。
【0164】
全ゲノムプールshRNAスクリーニングによる肝臓コロニー形成を変調させる新規遺伝子の同定
ゲノムDNAからshRNAライブラリー配列の複合プールを回収するために、PCRアプローチ、続いてPCRアンプリコンのSolexaディープシークエンシングを用いた。ウイルスベクターに特異的なプライマー(フォワードプライマー:5’−TGGACTATCATATGCTTACCGTAACT−3’;リバースプライマー:5’−AAAGAGGATCTCTGTCCCTGT−3’)を使用し、続いてSolexaディープシークエンシングに必要とされる配列を有するプライマー(フォワードプライマー:5’−AATGATACGGCGACCACCGAG
ATCTACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTGTATTCTTGGCTTTATATATCTTGTGGAAAGGAC−3’;リバースプライマー:5’−CAAGCAGAAGACGGCATACGAGCTCTTCCGATCTGGATGAATACTGCCATTTGTCTCGAGGTCGA−3’)を使用して500ngのゲノムDNAに対する初期PCR増幅を行って、shRNA配列を含有するアンプリコンを得た。5ugのゲノムDNAと等価の10のPCR反応をゲノムDNAの各セットについて行い、シークエンシングのためにそれらの産物をプールして、shRNAの妥当な提示を確保した。
【0165】
プールしたアンプリコンは、ゲノム全体のshRNA配列の混成体に相当し、ディープシークエンシングを行って、腫瘍から増幅したプールと比較して参照プールにおける各shRNA種の提示を判定した。各shRNA種についての計数値を、得られた配列の合計数に対して正規化し、それらの遺伝子ターゲットを、Sigmaによって提供されているデータベースへのマッチングによって同定した。shRNAが腫瘍プールにおいて過剰表示された遺伝子ターゲットを肝臓コロニー形成の抑制因子と見なし、逆もまた同じである。shRNAサイレンシングの非特異的効果を説明するために、3以上の独立したshRNA「ヒット」によって同定された遺伝子ターゲットのヒットのみを推定抑制因子または促進因子と見なした。
【実施例11】
【0166】
IGFBP2機能を中和するモノクローナル抗体は転移性ヒト乳癌細胞による内皮動員を阻害した
本実施例は、IGFBP2に結合してIGFBP2へのIGF1の相互作用(結合)を阻害することにより転移性乳癌細胞による内皮動員を阻害するモノクローナル抗体を実証する。IGFBP2へのIGF1結合を遮断することにより、このモノクローナル抗体は、転移性ヒト乳癌細胞による内皮動員を阻害できる。IGFBP2に対する中和抗体の産生に用いる方法は、当該技術分野において一般に公知のものである。
要するに、マウスを組換えIGFBP2全ペプチドで免疫してポリクローナル抗体応答を生じさせた。次に、その免疫処置マウスから単離したB細胞の骨髄腫細胞系への融合により、ハイブリドーマライブラリーを産生させた。その後、これらのハイブリドーマからの上清を単離して、抗体捕捉競合ELISAアッセイを用いて、IGFBP2を高親和性で結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、同定した(
図20)。同定したら、抗体捕捉競合ELISAアッセイを用いて、IGFBP2に対して高い親和性を有する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングして、IGFBP2がIGF1を結合するのを阻害できる抗体を産生するものを同定した(
図21)。ハイブリドーマライブラリーwo6663−1は、IGFBP2に結合してIGF1結合を中和する抗体であって、他のIGFBPファミリーメンバーIGFBP3およびIGFBP4には結合しない抗体を含有した(
図20および21)。単一クローン(モノクローナル)ハイブリドーマ細胞を単離するために、ハイブリドーマライブラリーwo6663−1に対する分離およびスクリーニングを行った。2000個の単一ハイブリドーマクローン(モノクローナル)をこのライブラリーからスクリーニングして、高親和性でIGFBP2に結合してIGF1結合を中和するモノクローナル抗体を産生するものを同定した。
図22中の表は、上のスクリーニングからの幾つかのモノクローナル抗体であって、モノクローナル抗体IGFBP2_14(M14)(
図22中の断続線囲み枠)を含めて、その多くがIGFBP2への親和性を有し、IGFBP2へのIGF1結合を阻害した(
図22)モノクローナル抗体についての抗体捕捉ELISA競合因子アッセイデータを収載するものである。その後、トランスウェル内皮動員アッセイを用いて、これらのIGFBP2中和モノクローナル抗体をスクリーニングして、転移細胞による内皮動員を阻害できるものを同定した。モノクローナル抗体IGFBP2_M14(M14)は、ヒト転移性乳癌細胞による内皮動員を阻害した:
内皮動員を阻害し得るモノクローナル抗体を同定するために、上記スクリーニングで産生されたIGFBP2中和モノクローナル抗体を、トランスウェルを用いるインビトロ内皮動員アッセイで試験した。高転移性LM2ヒト乳癌細胞をボイデンチャンバーの底部に配置し、そこで多孔質トランスウェルインサートを通ってHUVECSを動員するそれらの能力をアッセイした。少量の生理濃度のIGFBP2中和抗体(M1、M4、M6、M9、M13、M14、M15およびM16を含む(
図22から))をトランスウェルに生理濃度で個々に添加した。試験したすべての抗体のうち、M14(
図22中の断続線囲み枠)は、陰性対照抗体IgGおよびM5に対してHUVEC細胞の動員(移動細胞/視野)を有意に阻害できた(移動細胞の50%低減)(
図23)。これは、ヒト転移癌細胞によるヒト内皮細胞動員を阻害するモノクローナル抗体M14の能力を実証する(
図23)。
【0167】
M14をさらに特性づけするために、該抗体の重鎖および軽鎖可変領域をシークエンシングした。M14の重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方のアミノ酸配列を表7に提供する。
【0168】
【表7】
【実施例12】
【0169】
モノクローナルM14はインビボでヒト乳癌の腫瘍進行を阻害した。
【0170】
本実施例は、IGFBP2中和抗体M14がヒト乳癌のマウスモデルにおいてインビボで腫瘍進行および腫瘍転移を阻害できることを実証するものである。
【0171】
モノクローナル抗体M14が、インビボで腫瘍量を低減できるかどうかおよび腫瘍進行を阻害できるかどうかを試験するために、2000個のルシフェラーゼ発現MDA−MB−231ヒト乳癌細胞を成長因子低減マトリゲルと1:1比で混合し、NOD−SCIDマウスの乳房脂肪体の両側に注射した。注射後直ちにルシフェリンを注射し、癌細胞生物発光シグナルを定量して、腫瘍量の第0日ベースラインシグナルを確立した。その後、マウスを無作為に次の二群に分けた:PBSのみで処置した対照群、およびM14モノクローナル抗体で処置したM14群。PBSおよびM14抗体(250マイクログラム)の腹腔内注射を第0日に直ちに各群のマウスにそれぞれ施して、その後は隔週に注射を施した。M14処置マウスとPBS処置対照マウスの両方における腫瘍量を、ルシフェラーゼレポーターからの生物発光(bioluminensence)によって週2回追跡した。第14日の時点で、腫瘍進行は、PBS処置マウスと比較してM14での処置により有意に阻害された(腫瘍進行の7から11倍低減)(
図24)。
【0172】
好ましい実施形態の上記実施例および説明は、本請求項によって定義される本発明を限定するものではなく、例証するものと考えるべきである。本明細書に引用するすべての出版物は、それら全体が参照により本明細書に援用されている。容易に理解されるだろうが、上で述べた特徴の非常に多数の変形および組み合わせを、本請求項に示す本発明から逸脱することなく用いることができる。かかる変形は、本発明の範囲からの逸脱とは見なされず、すべてのかかる変形は、以下の請求項の範囲内に含まれると解釈される。